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自殺:「薬の処方、注意して」患者の通院先に書面

 「薬の処方を考え直してもらえませんか」。横浜市立大付属市民総合医療センター(同市南区)は、向精神薬の過量服薬で自殺を図って救急搬送された患者の通院先に対し、書面で注意を促している。同じ処方を繰り返せば自殺の既遂につながるおそれが強まるためで、まれに「処方の中止」を依頼することもある。こうした自殺予防策は全国でも珍しいが、同センターの精神科医は「過量服薬した場合の副作用を知らない医師が大半だ」と警告している。【江刺正嘉】

 同センターは重症者専門の3次救急病院。外科医や内科医のほか、精神科医が常駐し、救命後の治療やケアに当たる。精神科医を救急の現場に置いている救命救急センターは全国でも数カ所しかない。精神科医による迅速な未遂者ケアが自殺防止に有効だと考えているためだ。精神科医は患者の回復後、飲んだ薬の種類や量、過去に自殺を図ったことがあるかなどを聞き取る。こうした情報を患者が通っていた医療機関に文書で知らせ、その後の治療に役立ててもらっている。

 この際、安全性が比較的低い薬を処方されていたり、再び過量服薬で自殺を図る可能性が高いと判断した場合は、通院先の主治医に「同じ薬をまた飲み過ぎると命に危険が及ぶ可能性が高い。処方の再考をお願いできませんか」と連絡。処方薬の種類や量に注意を払うよう求める。それでも同じ薬の処方が繰り返され、患者が搬送されると、「この薬の処方は中止していただけませんか」と依頼することもまれにあるという。

 センターの山田朋樹医師は「精神科医は用法、用量を守って薬を飲んだ場合の副作用については勉強している。しかし、過量服薬した時の危険性は大学でもほとんど教えられていないので、知識があまりない」と指摘。「まず医学部でもっときちんと教えるべきだ」と提言している。

 同センターが03年から05年にかけ、自殺を図って搬送された患者の中で、医師の聞き取り調査に応じた320人について手段別にまとめたところ、男女とも過量服薬(男36%、女57%)が最も多かった。

毎日新聞 2010年6月27日 14時29分

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