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家族の喫煙で肺がん死は約2倍に

2010年6月28日

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悩み・不調解消受動喫煙タバコ


4月1日、神奈川県で全国初の受動喫煙防止条例が施行された。これにより、病院などの
公共施設では全面禁煙が、レストランやホテルなどの不特定多数の人が出入りする場所では
禁煙または分煙が義務づけられた。最近では、喫煙によるリスクはよく知られるところだが、
受動喫煙についても、様々な病気のリスクを高めることがわかっている。

 喫煙は、様々ながんやメタボリックシンドローム、インフルエンザの発症の危険性を高めることがわかっている。一方、こうしたリスクは、喫煙者本人だけのものではない。

 実は、たばこから立ち上る副流煙中のニコチンや発がん物質などの有害物質の濃度は、喫煙者が吸いこむ煙(主流煙)の数倍から数十倍と濃く、受動喫煙のリスクは高い。「副流煙中の有害物質の粒子は小さく、長時間空気中に浮遊するだけでなく、肺の奥深くまで入りこんでしまう」と禁煙外来で禁煙指導をする東京農工大学の阿部眞弓准教授は指摘する。

 また、たばこから立ち上る副流煙だけでなく、喫煙者が吐き出す呼気にも有害物質は含まれる。一酸化炭素や揮発性有機化合物などの有害物質は、喫煙後数十分にわたって呼気中に残り、周囲の空気を汚染する。つまり、「家庭内に喫煙者がいる場合、『たばこはベランダで吸っているから大丈夫』とはいえないということ。家族へのたばこの害を軽減するためには、屋外で吸った場合にも、喫煙後30分程度は家の中に入らない配慮が必要だ」と阿部准教授は警鐘を鳴らす。ちなみに、空気清浄機を使っても、有毒なガス成分は除去できないという。

 受動喫煙を続けると、様々な疾病のリスクが高まる。最も象徴的なのが肺がんだ。非喫煙者の妻が、1日20本以上の喫煙をする夫を持つ場合、非喫煙者の夫を持つ人に比べて肺がんで死亡する率が約2倍も高くなってしまう。このほか、乳がんやぜんそく、早産、子供の中耳炎、歯周病などの危険性も高まる。

 女性にとってさらに不都合なのは、受動喫煙による色素沈着だ。口腔(こうくう)内の喫煙の影響を研究する愛知学院大学の稲垣幸司教授は、「受動喫煙で歯ぐきの色素沈着が進行し、加えて歯周病のリスクも高まる」と話す。喫煙では、肌の色素沈着やかさつきが多くなることもわかっており、受動喫煙でも同様の影響が出ることが考えられる。

 家族内に喫煙者がいるなら、今年10月に予定されるたばこ税増税も機に、禁煙を勧めてはどうだろうか。

喫煙する夫を持つ妻は肺がんリスクが高まる

たばこを吸わない9万1540人の妻を14年間追跡調査し、肺がんで死亡する率を夫の喫煙状態ごとに調べた。その結果、たばこを吸わない夫を持つ妻の肺がん死のリスクを1とすると、1日20本以上喫煙する夫を持つ妻の肺がん死のリスクは1.9だった。(データ:British Med J,282(17),1981)

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