法人住民税には、均等割額・法人税割額・利子割額があることは、今まで述べてきましたが、ここではそれぞれの税額計算方法をみていきましょう。
均等割額
(1)税額
法人住民税の均等割額は、次のように計算されます。
※この計算により百円未満の端数は切捨てとなります。
(2)均等割額
都道府県民税の均等割額は、資本金等の金額に応じて金額が決まっています。
市区町村民税は、資本金等の金額と従業員に応じて金額が決まっています。
※都道府県民税は、上記の表で間違いありませんが、市町村民税については、標準税額のみを記載していますので、一度市区町村に確認してみてください。
なお、東京都特別区の都民税とは、特別区のみに主たる事務所・寮等を有している場合で、道府県分に市町村分を加算した金額となっています。
(3)事務所等を有していた月数
均等割額を計算する上での「事務所等を有していた月数」とは、その事業年度のうち
都道府県・市町村に事務所等を有していた月数をいいます。この場合、1ヶ月未満の端数は切り捨てますが、全体が1ヶ月に満たない場合は1ヶ月として計算します。
(4)具体例
例えば1000万円の資本・従業員5名・事業年度の月数12ヶ月の会社では、市町村民税(標準税率)の均等割額は50,000円、道府県民税の均等割額は20,000円となります。
法人税割額
(1)税額
法人住民税の法人税割額は、次のように計算されます。
法人税割額として納付する金額=法人税額を基礎とした課税標準×税率
※十円未満切捨て
(2)課税標準
法人税割額の課税標準の基礎となる法人税額は、法人税申告書の「法人税額計」の金額を使用し、これに法人税と住民税との取り扱いの違いにより加算・減算による調整を行って計算されます。
- 計算式
法人税割額の課税標準は、原則として次のように計算されます(普通法人を前提)。
- 法人税申告書の別表一(一)の「法人税額計」
- 加算項目
- 試験研究費の増加の場合の法人税額の特別控除
- 退職年金等積立金に係る法人税額
- 減算項目
- みなし配当の25%相当額の控除額
- 還付法人税額の控除額
1. + 2. − 3. = 法人税割額の課税標準(千円未満切捨)
※現況としては、加算・減算の調整項目がなく「法人税額計」が課税標準となる会社が多く見うけられます。
(3)税率
法人税割額を計算する上で使用する税率は、都道府県・市区町村により異なりますが、
次の標準税率によるところが多いようです。
また、その標準税率のほかに最高の税率ということで、制限税率が設けられています。
|
道府県民税 |
市町村民税 |
標準税率 |
5% |
12.3% |
制限税率 |
6% |
14.7% |
東京都の場合には、次のようになっています。
|
税率 |
不均一課税適用法人 |
特別区(23区)に事務所等がある場合 |
20.7% |
17.3% |
市町村に事務所等がある場合 |
6.0% |
5.0% |
※不均一課税適用法人
資本の金額または出資金額が1億円以下で、かつ法人税額が年1000万円以下の法人。この場合の 法人税額は、法人税割額の課税標準の基礎となる法人税額により判定します。
(4)税額控除
法人税割額として計算した税額から、次の3つの税額控除を控除します。
- 外国の法人税等の額の控除額
- 仮装経理に基づく法人税割額の控除額
- 利子割額の控除額
利子割額
都道府県民税である利子割額は、法人税法においても損金とならないものでした。この利子割額は、都道府県民税の法人税割額から控除されることになります。法人税割額が利子割額より少ない場合は、利子割額の超過分については、還付されることになります。
(1)税額
利子割額 = 利子等の額 × 5%
※所得税の利子等の源泉徴収される税率は、15%です。
(2)利子等の内容
利子割額の対象となる利子等は、所得税法等により規定されていますが、次のようなものです。
- 対象となるもの
- 期間按分が必要でないもの
- 期間按分が必要なもの
- 対象とならないもの
利益の配当・剰余金の分配
※これらのものは、利子割額の5%の都道府県民税が徴収されないものです。
(3)控除対象利子額の計算
前記の期間按分が必要な利子割額のうち、控除対象となる金額は、その事業年度の所有していた期間に相当する部分のみとなります。この所有期間に応じて按分する方法には、個別法と銘柄別簡便法の2つの方法があります。
(4)計算書
この利子割額を計算する書類は、第六号様式別表四の四「利子割額の控除・還付に関する明細書」・第九号のニ様式「利子割額の都道府県別明細書」になります。
分割法人の法人住民税
(1)概要
- 分割法人の意味
法人も営業活動の拡大や経営戦略上等から、2つ以上の事務所等を有している場合も少なくないと思います。こうした事務所等が、2つ以上の地方公共団体(都道府県・市区町村)にある法人のことを「分割法人」といいます。
- 注意点
同じ都道府県内で2つ以上に分割されている法人は、道府県民税の分割法人にはなりません。但し、同一都道府県内で2つ以上の市区町村に事務所等を有している場合には、
市町村民税の分割法人となります。なお、同一市区町村内で2つ以上の事務所等を有している法人は、分割法人となりませんので注意してください。
(2)分割基準
分割法人の場合は、課税標準となる法人税額を決算日における従業員の数により按分することになります。中間決算の場合は、中間決算日における従業員の数によります。なお、この従業員の数には、源泉徴収の対象となったアルバイトの数も含めて按分します。
按分式は、次の通りです。
※従業員は、分割基準の対象となった従業員に限ります。
(3)計算明細書
分割法人は、第十号様式「課税標準の分割に関する明細書」を法人住民税の確定申告書に添付しなければなりません。
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。