きょうのコラム「時鐘」 2010年6月28日

 氷室(ひむろ)まんじゅうの販売開始が、年々早まっている。7月1日の「一日勝負」だったのは遠い昔の話で、最近は6月末の今日あたりがピークである

加賀の殿様が将軍家に雪を献上したそうですね、いい風習ですねと、よその人から言われると悪い気はしない。だが、この暑さの中で北陸の雪が解けずに江戸に届いたと考えるのは無理だ。江戸の加賀藩邸にあった氷室の雪を届けたのが真相らしい

金沢では湯涌温泉の氷室開きが恒例である。雪の少ない年には消滅していることもある。藩政期、氷室は城内や街中にいくらもあった。尾山神社や兼六園裏にも藩政期の氷室の跡が残っている。当時は周囲を戸室石で囲んだ地下室だったという

そこで提案したい。本当の「氷室」を造ればどうか。上越市の山里で現役の氷室を見たことがある。小体育館ほどで内壁に断熱材を張った穴蔵があるだけ。電気で冷やすのと違って湿気が保て、農作物はすばらしい保存状態になるという

各地で城郭の復元が人気である。それならば、氷室の復元があってもいい。安く造れて実利もある。雪国の先人の知恵も思い出す。