消毒用の消石灰がまかれた事務所前で出陣式をする候補者=24日、宮崎市、溝脇正撮影
家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)の被害が続く宮崎選挙区(改選数1)では、発生地域を中心に異例の「静かな」選挙戦が始まった。
24日朝。自民現職の松下新平氏(43)の出陣式があった宮崎市内の神社では、駐車場の入り口近くに消毒マットが置かれた。消毒車2台も待機した。
県選挙管理委員会は公示前、各陣営に「握手の自粛」や「選挙カーから降りないこと」などを要請したが、松下氏に手をさしのべる支援者も。「求められれば、しないわけにもいかない」。松下氏は握手に応じ、次の街頭演説に向かう前には、消毒剤で手を洗った。
「到着が遅れて申し訳ありません」。民主新顔の渡辺創氏(32)の陣営幹部はこの日午後、日向市で候補者を待つ支持者に頭を下げた。遅刻の原因は選挙カーの消毒だった。
川南など6町の全域と宮崎市など4市の一部では、感染拡大を防止するためにポスター張りもやめた。名前も顔も売り込めない。民主県連は選管に、ポスター張りを代行してくれるよう求めたが、認められなかった。陣営幹部は「知名度が低い新顔にとって不利になった」。
共産新顔の馬場洋光氏(41)の陣営も、大きな集会は自粛し、発生農場付近で名前を連呼しないなど配慮する。
「(選挙期間は)農家にとって大切な時期だ」と話すのは都城市の畜産農家の男性(59)。ウイルスを持ち帰らないよう外出は極力控えているが、「できるだけ候補者の意見は聴きたい。これまで以上に、新聞やテレビでの討論に期待したい」。
各自治体の選管も対応を迫られている。川南町は、職員が防疫作業にとられて人繰りがつかず、投票所を前回参院選の17カ所から13カ所に減らした。開票所となる町農村環境改善センターには、防疫作業にあたる自衛隊員約120人が宿泊している。今月中に、近くの県立農業大学校(高鍋町)に移ってもらう予定だ。