作業迅速化を重視 埋却地確保有効策出せず

(2010年6月26日付)

 本県の口蹄疫問題を受け、農林水産省が「防疫措置実施マニュアル」を策定した。初動防疫の遅れが感染拡大を招いたとの教訓から24時間以内の殺処分完了などスピードを意識した内容となっている。一方で、課題の埋却地確保には有効な対策が見られない。

 「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」を補完する位置付けにあり、マニュアル策定の意図は病性の判定に顕著だ。農場で撮影された写真と情報により「直ちに病性を判定する」とある。これまでは農場で採取した検体を、東京都小平市の動物衛生研究所海外病研究施設へ空輸して遺伝子検査しており、農家の通報から判定まで1日前後の時間差は避けられなかった。

 遺伝子検査結果を待たない所見判定は、2004年に公表された防疫指針でも規定。県と農水省はこれに基づき、今月1日から写真判定を始めたが、既に発生から40日余りが経過、感染疑いは250例以上を数えていた。しかし、検査で所見の感染疑い判定が覆ったケースはなく、今回のマニュアル化につながったと考えられる。

 判定後24時間以内の殺処分完了は、早期終息に成功した「えびの方式」に倣う。その環境整備として「獣医師の指導下で」という条件付きで、獣医師以外の殺処分従事を促す。県外から獣医師の派遣を受けた今回のような大規模感染では作業の迅速化が期待される。

 一方で、埋却地確保には公有地の利用以外に有効策を打ち出せなかった。公有地は今回も西都市で共同埋却に使用したケースなどがあった。しかし、自前で用意する農家との公平性という課題もあり、決め手となり得なかった。

 山田正彦農相は「周辺住民の同意は必要ない。理解を求めてくれと言ってきた」としているが、同意のない埋却は地域社会での摩擦を生む危険性をはらむ。さらに踏み込んだ埋却地対策が必要だ。

 都城市で試行した、発生農家周辺での抗体検査も明記された。まん延の兆候を調べる、いわば「攻めの防疫」。県畜産課は「今回の県内発生においては症状が顕著で、抗体検査をしなくても目視で目的は達成できる」としていた。しかし「症状の出方はウイルスのタイプによってさまざま」と指摘する識者もいる。再発に備える意味では有効といえそうだ。(口蹄疫取材班・野辺忠幸)