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菅首相:誕生 「脱小沢」本物か=専門編集委員・山田孝男

 幹事長を辞任することによって小沢一郎氏は失脚したのか。そうではなく、潜行、延命したのか。政変のポイントはここだ。

 菅直人政権は、前首相の「幹事長道連れ辞任」で民主党の権力構造が流動化し、新しいバランスへ移行する踊り場に生まれた。

 このまま菅体制が固まるのか、幹事長ポストは手放しても150人の国会議員を率いる小沢氏が巻き返すのか。攻防の帰結はなお予断を許さない。

 注目の民主党代表選挙で耳目を集めた菅氏のセリフがある。小沢氏は「国民にある種の不信を招いた」のだから「しばらく静かにして」という出馬会見の一節である。

 言わずもがな、政治資金疑惑を引きずる小沢氏にクギを刺したわけだが、リアリストを自任する菅氏は、単に理想主義的な潔癖さから小沢氏に注文をつけたわけではない。

 90年代の政界再編過程で政党の運営に苦労した経験から、菅氏は小沢流のパワーポリティクス(政治の本質は権力の獲得・維持・拡大である--と割り切る考え方)に学ぼうと努めてきた。

 その菅氏が、しかも全党的支持を必要としたはずの菅氏が、なぜ小沢批判に踏み切ったのか。小沢問題が、もはや単に党のイメージを傷つけているという段階を超え、屋台骨をむしばみ始めたと考えたからに違いない。

 ゼネコンから多額の政治資金を受け取っていながら、なぜもらえるのか、何に使うのかという問いには一切答えない。「違法ではない」の一点張りで、それ以上は聞く方がおかしいと開き直る。

 公共事業予算の「個所付け」情報を党から地域に流す一方、選挙になると、「民主党に投票してくれれば高速道路をつくります」式の露骨な利益誘導を繰り広げる。

 けたはずれの政治資金集めと利益誘導選挙は、子飼いの秘書を大量動員して子飼いの新人議員を大量当選させる「小沢システム」の両輪である。

 このシステムは、非力な民主党にエネルギーを与え、新しい政治を生み出す強壮剤なのか。そうではなく「なにごとも小沢次第」の新インサイダー政治をはびこらせる毒薬ではないのか。この疑問が広がった果てに菅政権が生まれた。

 新首相は国会随一の論客だ。真骨頂は官僚の腐敗・暴走に対する批判にある。官僚の情報独占による国会軽視、国民主権の空洞化に対する批判にある。

 鋭い官僚批判を巧みな官僚操縦に転化できるか。小沢氏が生み出す権力に頼らない政権運営ができるか。「脱小沢」の真贋(しんがん)が問われている。

毎日新聞 2010年6月5日 東京朝刊

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