楽天とファーストリテイリングが社内の公用語を英語にする方針を明らかにしました。
ファーストリテイリングは米英仏を始めとして、中国、香港、シンガポールなどに進出しており店舗網の世界展開のスピードが早まっています。また、楽天も今年に入って、インドネシア地場大手と組んで同国でEC事業に進出、米国有数のEC事業者Buy.comを完全子会社化、仏最大のECサイト運営会社を買収することを発表しており世界展開が急加速しています。
社内公用語を英語化する動きは、多国籍展開している企業やこれから世界展開しようと考える企業で増えていくかもしれません。
多国籍化した企業は多様な母語集団を抱えることになるため、企業集団としての一体性を保持するため「社内公用語」で文書や話語を一本化することは確かに合理的だと思います。その手段として、母語が日本語である日本人に英語を学ばせる方が、母語が非日本語の外国人に日本語を学ばせるよりも手っ取り早いということもあります。全く日本語を学んだことがない外国人が日本語を一から学ぶのは困難です。
私は、楽天やファーストリテイリングの社内公用語化は、多国籍化に伴なう人材確保やマネジメントの一本化以外にも、別の狙いがあるのではないかと思っています。それは、日本人社員への
温情と
意識付け、そして、
ふるい落としです。
三木谷会長は
インタビューで、「インド人、中国人も積極採用し、幹部候補生として育てている」と言っています。これまではライバルは日本人社員だけだったのが、これからは世界中の人材と同一線上で評価されざるをえなくなります。技能やマネジメント能力は抜きん出ていても、英語ができないというだけで、外国人社員に遅れをとってしまう可能性があります。「だから英語を励め」と発破を掛けているんだなと、部外者の私には思えきます。見方によっては日本人社員への温情のようにも思えるし、厳しい姿勢を示すことで社員全体に対してグローバル化への強烈な意識付けにもなるでしょう。
一方で、この際、「できない」社員のふるい落としも企図しているのかもしれません。日本人は中学、高校、そして大学まで進学すれば10年間は英語を勉強してます。辞書引いても英語が読めず(読もうともせず)、簡単な日常会話すら話せないような人は、グローバル企業で生きていくには厳しいです。三木谷氏は、猶予期間を設け英語の習得を促しています。しかし、厳しい言葉とは裏腹に、求めるレベルはそう困難なものではありません。
三木谷会長は、社員に求められる英語レベルを以下のように発言しています。
入社3年目程度でTOEICのスコア600点以上、管理職級で700点、執行役員候補級では750点以上が求められる。
「週刊東洋経済」 (2010年6月19日号)
大卒後3年間を本気で勉強して600点取れないようであれば、何やっても駄目な人でしょう。また、社命なのに「本気」になれないような人には、早く去ってもらう方が会社にとってハッピーでしょうし、その人自身にとっても将来を考えたらさっさと辞めた方が身のためです。
個人的には、楽天にしてもファーストリテイリングにしても、グローバル化に対応する意気込みは伝わりますが、本気度を疑っています。楽天の役員構成は20人中20人が日本人ですし、ファーストリテイリングも10人中10人が日本人です。真のグローバル企業を目指すというのであれば、社員にあれこれ言う前に、期間を区切って役員の外国人受け入れ割合を示して組織ガバナンスにイノベーションを起こすべきだと思います。まず隗より始めよと言いたいです。
また、本気でグローバル化を志向し公用語も英語にするのであれば、本社機能を海外に移した方が手っ取り早いと思うのですが、なぜそうしないのでしょうか。都合のいいところだけの「グローバル化」なのであれば、それは三木谷氏が脱したいと言った「
ガラパゴス状態」の進化系に過ぎません。中途半端な「グローバル化」は会社に混乱をもたらすだけのような気がしますが、どうでしょうか。
この件については、ネット上ではいろいろな意見があるようです。