【激震2010 民主党政権下の日本】野党時代に廃案にした独法の余剰金返納 枝野行刷相は姑息

2010.03.12

 10日の衆議院内閣委員会で面白い議論があった。中川秀直議員(自民党)の質問に対する枝野幸男行政刷新相の答弁だ。枝野行政刷新相は、独立行政法人が基金や余剰資産などを原資に購入した国債の保有残高が、2008年度末で約4兆5000億円に上ることを明らかにし、「国からのお金をためこんで国債を買っているのは、あってはならない」と述べ、貿易保険や共済関係など運用事業をしている一部の独立行政法人を除き、原則として返還させる方針を示した。

 独立行政法人で国債を保有するのは国費の投入が多すぎるためなので独立行政法人の余剰資金を国庫に返納させるのは当然だ。ちなみに、福田政権時代に独立行政法人通則法改正案が出され、その中で国庫への返納が規定されていた。しかし、当時の野党民主党は反対し、その法案は廃案になってしまった。それを与党になった民主党が、鳩山政権のもとで国庫返納規定を含む通則法改正案を今国会で提出しているのだから皮肉なモノだ。

 しかし、福田内閣時代にはあった独立行政法人のファミリー法人への天下り規制条項が鳩山政権の法案では抜け落ちている。その点を中川氏に指摘されると、枝野行政刷新相は、「ファミリー企業への天下りはやめさせる」と答弁した。これは事業仕分けで扱って、その成果としてアピールしたいのであろうが、それは姑息(こそく)だ。そうであれば、鳩山政権で提出している通則法改正案を修正して、天下り規制を盛り込むべきだ。

 また、枝野行政刷新相は、特別民間法人、公益法人については「国債保有残高の総額を把握していない」と述べ、4月下旬に実施する「事業仕分け」で取り上げる意向を示した。3日発行の夕刊フジで指摘したように、天下りは特別会計の下に、32の特殊法人、38の特別民間法人、98の独立行政法人、6700の公益法人がぶら下がっているのだ。

 ところが枝野行政刷新相は、50の公益法人を事業仕分けの対象とすると言っている。公益法人へ投じられた国費は3500億円ほどなので、50だけを対象にしても数十億円のムダが省けるかどうかだ。このほかにも、国費投入が大きい特殊法人、特別民間法人、独立行政法人も対象としなければダメだ。

 さらに問題なのは、国費を流し出す特別会計だ。民主党は一般受けを狙って、数が多い公益法人を狙い撃っているようだが、上の蛇口の特別会計と下の受け皿の特殊法人、特別民間法人、独立行政法人、公益法人を網羅的にやらないと国民が望むことにならない。

(元内閣参事官・高橋洋一 政策工房会長)