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[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第70話  拠点ふぇーず。更新。
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2010/06/26 19:57
真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第0話

はじめに

注意


うp主は文章書いたことありません。
国語は常に成績1か2です(一番下
時代・世界・年号などの考証もまったく無いです。きっと。
文章力?ははは、こやつめ。
思いついたことだけを書いてるような稚拙な作品です。   
当初はこんな作品になるとは思いもしませんでした。
ギャグになるの・・・かな?シリアスのシの字もありません。本当なんだから! 
話の辻褄を合わせるために無理やりな部分も多いです。
このSSではオリキャラはほとんど出てきません。そう思っていた時期が私にもありました。むっちゃ出てきてます。
最初はそれほど主人公が強くもないので俺TUEEEEEEな無双にはなりにくいはず。   多分。
でも馬は強いです(?)
一刀?誰それ?おいしいの?
史実を折り曲げたりするのが大好きですが地味に史実設定を盛り込んでアーッ!
ベースは恋姫です・・・よ?
ご都合主義・・・ですよ?
最後の最後に禁じ手使用して見放される可能性極大。
ソレがいやなら回れ右を推奨DEATH。
こんな駄作でもお付き合いくださるとありがたく思います。
最後に。
批判はかまいませんが、ただの誹謗中傷をする方に読んでいただきたいとは思いませんし、そういった感想を残す方もいらっしゃいますが、それは感想ではなくただの嫌がらせです。
そのような方は万人を楽しませる作品でも何でも書いてください。
別に止めもしませんので。
というか、感想残さず帰ればいいじゃない。


それではどうぞ!





~~~ぷろろぅぐ~~~

面倒なことは特に何の前触れも無くやってくるものだ。
 
気がついたら赤ん坊になってました、俺。
俺、普通に社会人です。会社行って働いて家に帰って食って寝て会社行って。の現代社会の負のスパイラルの中で疲れるだけの日常を送ってる人のはずです。
転生というのか?・・・それとも夢見てるのか?俺死んでないよ?普通に寝たの覚えてるし。
でもなぁ、夢にしちゃ随分世界の作りがしっかりしてる。
夢だったら第三者的な視点で状況見えたりするはずだし、唐突に世界が切り替わったりなんてこともざらだ。
そーいうことも無いしな。
そもそも、体があまり言うこと聞きません。
天井見てることしかできないんですよ。
言葉も喋れない。おぎゃーおぎゃーと泣くことしかできない。
どう考えても赤ん坊。
夢であって欲しいよなぁ・・・。
で、俺が赤ん坊と仮定して、前世?これが未来かどうかまでは解らないけど、俺がいた時代の記憶もおれ自身の記憶も残ってます。
やっぱ生まれ変わり?でも待て、やっぱ夢の可能性も。
うあ、眠い・・・・・・あとお腹すいた。
「おお、元気な男の子じゃないか!」とか「ええ、無事に生まれてきて本当に良かった・・・」とか周りで仰ってますが眠気に負けました。視界暗転。

で、次目覚めたとき、いかついおっさんが俺の顔見てるわけです。
「おお、目を覚ましたぞ!?」

誰ですかあなた。
俺、このおっさんに抱き上げられてるんでしょうか。
背中に布団の感触とかないです。
背中に腕の感触ありますが、なんか浮遊してる感じ。
「あなた、あまり乱暴にしないでくださいね?それと」
「おお、すまんすまん。」
というお話をしてます。

で、おっさんが女性に俺を渡して・・・あ、この女性偉い美人。
話の流れで行けばおっさんが父親でこの女性が母親なのかなぁ。
で、俺を抱いてる女性が胸をはだけて・・・・・・ナニシテルノ?
うおおおおい!おっきなおっぱいが近づいてくる!!
これもしかして授乳とか言うものうわああああああ柔らかーい。

OK、落ち着くんだ俺。今の俺は赤ん坊。母親は俺に母乳を与えてるだけ。
吸えば良いんです。そうじゃないと俺栄養不足で死ぬし!

以下略。

そんなこんなで、しばらく時間が経って・・・・・・やっぱ夢じゃない。
いつまでたっても赤ん坊のままですよ。
父親が俺を抱き上げる。母親が子守唄を歌ってくれたりする。
聴覚・嗅覚・味覚。その他諸々。
最初にも言ったけど夢にしちゃ感覚がリアルすぎる。
夢だったら嬉しいのだけどね。でも俺のこと見つめて嬉しそうな父親とか母親の顔見てると、現実でもいいかなとも思っちゃうわけで。
本気で嬉しそうだもん、この人たち。
いかつい顔してるけど俺を抱き上げてるときは嬉しさのあまり顔がにやけてる父親。
でもって、柔和そうな、そのうえすっげー美人でやさしい母親。

参ったなぁ。
でね、話し変わるんだけど赤ん坊って本当不便。
意思疎通がまともにできません。ほとんど自力で移動できません。
泣いて意思を伝えることしかできんのですよ。お腹が空こうとお手洗いだろうと。

以下略。

そして1年が過ぎ2年が過ぎいつの間にか10歳を超え・・・。
なんとなく解ってきたことがあります。
まずここ。国は中国みたいです。
父上が洛陽がどうとか西涼がどうとか言ってるのが聞こえました。
中国といえば三国志くらいしか思い浮かびません。
ゲームとかでけっこう齧ってるし、武将の名前もかなり暗記してます。漢字書けないけど。
言葉は・・・。「俺中国語喋れないよ、どうしよう」とか思ってたんですが、なんか普通に理解できます。
俺が生まれたときに父上が「目を覚ましたぞ!」とか言ってるの理解できちゃったんだよね。
どうして日本語なんだろうと思いますが、考えたところで解らないので無理やり「あー、そーいうもんなんだ」と思うことにしました。


あと、この家は「高」姓で俺の名は順です。



つまり俺の名前は・・・・・「高順」。













マヂデスカ?








~~~楽屋裏~~~

どうも、恥めまして。
UP主のあいつです。
やっちまった、投稿しちゃったよ。こんなお目汚し確定作品をorz

それは置いといて。

プロローグなのであまり長めにしないように、と思って書いたんですが・・・・・・短すぎるような気が。
本当ゴメンナサイ。 
色々と描写が足りてないと自分でも思いますが・・・足りないところは脳内補完をお願いします(オヒ
主人公視点のみで綴られてるわけではないので混乱するかもしれませんが、ご容赦を。
ご意見・ご感想お待ちしております。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第1話(少しだけ修正)
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2010/04/02 23:50
高順伝 第1話 幼年期すっとばしてもう大人。

時は後漢、霊帝の時代。
場所は并州、上党。

ここに1人の男がいる。
歴史に名前を残さないだろう、多くの人に知られるわけではないだろう、しかし確かに存在した男が。
彼の名は高順。
飛将と呼ばれた、後漢最強の将「呂布」の元で戦い、時代を駆け抜けた猛将――――


の、はずだったんだけど・・・・・・。



~~~并州・上党~~~

政庁のとある一室。
椅子に座った1人の男が自分の目の前にある机に山積みにされた竹簡を見てため息をつく。
(あれだけこなしたのにまだこんなに残ってるのか・・・・。)
黒髪をざんばらに刈り込んでいるものの、前髪が眼を覆ってしまいそうなほどに長い。
身長は173か4センチ程度。この時代で言えば7尺5寸程度。
この時代の中国であればまあ、高いほうである。
体つきは割りと筋肉質で、こういった・・・・書状やら書簡やらの問題を片付ける手合いの文官にはどうも見えない。
文官の仕事をしていると言うのに安っぽい兵士の鎧を着たままだ。
やはりどう考えても文官には見えない。
それは本人も理解しているところだが、主君に「やれ」と言われた以上・・・・・

嫌だと言ってもやらなければいけないのであった。



「高順ー。兵糧の計算できたー?」
「ああ、計算して数出してあるから。あそこに置いてある竹簡持ってってくれ。」
部屋に入ってきた女性兵士のほうを向くことなく高順は返事をする。
竹簡に眼を通し、数に不備が無いか確かめる。
今こなしているのは今期の兵糧の支出と、金銭的な収入、それに付随してくる諸々。
兵糧が減ったのならまた買って増やせばいいのだが、どうにも収入が安定しない。というか減っている。
(やっぱ、人が少ないんだよな・・・。少ないってことはそれだけ収入が減るし、作物の出来高にも悪影響・・・いや、何で俺みたいな立場の人間がこんな心配を・・・)
そこまで考えたところでまた別の、今度は兵士ではなく男の文官が部屋に入ってきた。
「高順、武具と馬の数がどうも合わんのだ。一度見てやって欲しいのだが。」
「だぁぁあああっ!なんで俺にそーいう仕事持ってくんの!?ほかに算術できる人はいないの!?あと一度に仕事持ってこないでください!!」
「ひゃっ!?」
いきなり叫んだことに驚いたのか、女性兵士が運んでいた竹簡を取り落とす。
「びっくりしたなぁ、もう・・・。いきなり叫ばないでよ、驚くじゃない!」
「ご、ごめん・・・。」
こんなやり取りを聞いてた文官が苦笑しつつ「すまんな」と言う。
「いないわけではないが、忙しい。そしてお前が一番正確に、かつ早く終わらせれる。」
「俺だって忙しいですよ!?この机の上に溜まってるものが見えますか!?これから訓練がありますし!他の人にも数え方教えてありますよ!?」
「まあそう言うな。時間が無いのですぐに頼む。あと訓練も遅れるなよ。」
「無理だろ常識的に考えて!誰か助けてー!」


どうも、高順です。



一兵士なのになんで兵糧計算とか物資点検とか1人でこなすんでしょうね?
普通は訓練一筋でしょう。こーいうのは文官さんの仕事なのに。


ただ・・・この時代、普通の兵士は文字の読み書きとか簡単な計算とかできない人が多かったようです。
蜀の名将の1人、王平も文字の読み書きできなかったという話もあるくらいです。
そして、何故か志願とはいえ兵士になってる俺。
なるつもり無かったんですよ?警備兵として働くのが目的だったんですよ?
なのに何故なったかって?

母上のせいですorz


うちの大将・・・・丁原さんって言う人ですが、兵士募集の立て札たてた時にですね、「志願兵のほかに文字の読み書き、簡単な計算ができる者も求む」
という項目を追加してたんですよ。
立て札立てると言うか、兵士募集するのは刺吏の仕事じゃないですけどね。
それ見た俺が父上と母上に「そんな立て札たってたよー」と言ったのです。
それが自らの首を絞めることになるとは思わず。
「お前は教えたことも無いのに算術を理解してたし、少し教えるだけで文字を覚えた。志願してみてはどうか?」とか言い出しましたよ。 
「嫌です、俺は父上と同じように警備兵になるつm」
「なりません。このような時のために母はあなたに武を教えたのです。あなたとてこのような田舎で終わるつもりは無いでしょう?」
「いえ、望むところdヘブゥッ!?」
「終わるつもりは無いでしょう?」
「いや、むしろ終わらせtハブゥッ!?」
「無・い・で・しょ・う!?」
「・・・・息子よ、従うのだ。兵士になる前に死ぬぞ?(小声で」
「無いですよね?」
「・・・はい」
「ま、まあ・・・息子よ、お前の武芸の腕は相当なものだ。よほど無茶をしない限りは大丈夫だろう。」
「はぁ。」


そんな流れでした。母上にむっさ全力で殴られました。
ちなみに警備兵になりたかった理由。
簡単なことで「このまま行くと俺死ぬことになるだろ?」と言う事です。
丁原さんは義理の息子である呂布に暗殺されます。(史実じゃ親子じゃないよね)
そして高順はその後呂布が死ぬまで部下として従い、そして呂布に殉じて処刑された人です。

俺がその歴史上の高順と同一人物になるのかどうかは知りませんが・・・このままだとそうなる可能性もあるんですよ。
なので自分の死亡フラグべっきぼきに折りたたむために警備兵。
他の職業も考えたんですが、商人とかいうのは柄じゃないし。
母上に相当鍛えられたんで、そこらの人々よりは強い、ということを鑑みての考えだったのですが・・・。

生存フラグを母上に叩き折られました。

嫌だ、死にたくない・・・orz

で、志願兵として申し込みをしたところあっさりOK。(計算ができるとかは言いませんでした。余計な仕事回されても嫌だし。)
人材が足りないという事もあったんでしょうが、そも兵士の数がそれほど多くないみたいです。
やっぱ戦乱の時代ですしね。少しでも多く兵士が欲しいのでしょう。
え?計算とか文字のこと言ってないのに、何故一番最初の状況になってるのか?だって?
・・・少し前の話になるんですが、訓練中に「馬の数が合わないー!」とか叫んでる物資確認役のおじさんがいまして、「早くしないと丁原様ににお仕置きされてしまう!」とか言ってたんです。
で、放置すればよかったんですが涙目になってたので少し可哀想だと思ってしまって。
数え方聞いたら「1頭ずつ数えてる。」そりゃ時間かかります。
なので少しだけ知恵を貸したのですよ。

「たとえば10頭ずつ並べて、10頭を1として、それがどれだけ出来るか計算すれば少しは計算速くなるんじゃないですか?」
「それだっ!」

確認役のおじさん、喜び勇んで確認に向かいました。
簡単な掛け算ですよ。
こーいうことがまだ解らない時代・・・だったのかなぁ?
そこらへんの商人のほうが余程頭が良くなるぞ。
ま、あのおじさんの頭の出来がそれほどじゃない、ってことで納得しました。
これで話が終わるはずだったのに、その後丁原様に呼び出し食らいました。
最初に上官が呼ばれてたんですが、どういうわけか俺自身にも呼び出しがきたんです。
何かお知らせがあるのならどんな用件でも上官を通じて来ると思うのですが・・・・わざわざ本人を呼ぶなんてね。
で、上官曰く「お前に直接会ってみたいと仰せだ。」と。
そして「俺何か悪いことしたかなぁ?」と考えつつ太守の執務室へ向かうことに。

~執務室~
大して広くも無い部屋に、申し訳程度の調度品が置かれている。
それなりに品のいい机に乱雑に置かれた書簡の束。割と高級な絨毯。
そしてその机の向こうに丁原・・・・并州の刺吏がいた。
窓の方を向き外の景色に眼をやっている。
白く、長い髪を腰あたりで綺麗に切り揃えているのだが、政務の真っ最中のはずなのに何故か鎧を着込んでいる。
ここから見える風景は、それほど良いという訳ではない。
活気はあるが乱雑に建てられた家々。
汗を流し、訓練を続ける多くの兵士達。
だが、彼女自身はこの風景を気に入っていた。
自分が与えられ、守り、大きくしてきた場所だ。
他国から見れば裕福でもなく、土地の実りも少ない。
あるのは山国に近い故にその方面で鍛えられた山岳騎兵や、賊の横行する中で戦い、実戦で鍛えた兵士ぐらいなものだ。
他者に自慢できるようなものなど何も無い。
それでも、彼女はこの風景が、そしてこの地が好きだった。
そこまで考えたあたりで入り口のほうから声が聞こえてきた。
どうやら、先ほど呼びつけた者が来たらしい。



「かまわん、入れ。」
と返事が返ってきたので俺は入り口を開け、失礼します、と言いつつ入室する。


ここで初めて丁原様を間近で見たんですが・・・女性です。
歳は30代前半ってところですが、割と美人です。
武将っぽくて・・・というか完全に猛将な感じで官吏っぽいところがまったく無いです。
この人本当に刺史なのだろうか?
いや、ここ政務室なのになんで武装しておられるんだろう、俺何かやった?
そんなことを考えてたら、丁原様が
「よく来てくれた。すまんな、訓練中に。お前は・・・高順と言ったな。物資確認任せた奴がお前に随分感謝してたぞ。いつもより早く終えることが出来た、と。」
「いえ、そんな事は・・・。なんだか、お仕置きされる、とか叫んでおりましたので。」
「お仕置き?・・・はは、少し叱る程度なのにな。大袈裟な。」
と言って丁原様は苦笑する。
あのおじさん、俺の名前出したのかな?とも思ったんですが後で聞いたところ俺の上官に名前と顔を確認してもらって、丁原様に報告したのだそうな。
余計なことを。
「今、我が軍は人手不足でだな。」
「はあ。」
「少しでも多く人材が欲しいわけだ。文武に秀でた者がな。」
この言葉に俺は少しだけ、違和感を覚える。
丁原様は一応、中央。つまり、後漢王朝から正式に并州の刺史に任命されてるからだ。
丁原様が刺史になる以前にも他の刺史がいたし、県令と言う・・・俺がもともと生きてた世界で言う市長とか知事とか、そういうものに該当するはず。
太守、というものよりもっと上の立場だ。人手がそこまで不足するとも思えない。
「あの、身分を弁えずの言葉ですが。宜しいでしょうか?」
「うん?構わんぞ。言ってみろ。」
「本当に、人材が少ないのですか?」
「・・・ふむ?なぜそう思う?」
「いえ。立て札に計算や文字云々が書いてありましたので。」
「ほう、そこを見ていたのか。ならはっきりと言おう。少ない。中央に近い場所や、栄えている土地であればいざ知らず。このような田舎ではな。」
「そんなはずは無いでしょう。刺史といえば太守などより格上の存在。郡を束ね太守を束ねている存在ですよ?小さな郷にだって人がいない訳ではない筈。それなのに」
「解っているさ、それくらいはな。」
少し苛立ったのか丁原様の声が少し荒々しくなる。だがそれは俺に向けての怒りではないようだった。
「・・・いや、すまん。」
「いえ、申し訳ありません。一兵士の分際で・・・」
「構わぬ。そもそもお前に怒ったわけではないしな。」
ふう、とため息をつき丁原は話を続ける。
「さて、お前の疑問に答えてやろう。なぜ人手、いや、人材がいないのか?ということだ。簡単さ、人が少なくなってきているだけだ。」
「人が少ない、ですか?」
「ああ、ここのところ太平道というものが民の間で流行っていてな。知らないか?」
「・・・名前だけなら。」
きたか、このイベントが。もうそろそろ来るかなぁ、とは思ってたけど。
太平道。黄巾の乱。
三国志を知ってる人間にとっては「ここから三国志が始まった」と言えるほど時代を動かすきっかけになった争乱だ。
「教祖が張角というらしいが。どんな手を使ったかは知らないが民を手懐け、手勢に加えてしまうのだそうだ。自分の住んでいる土地を捨てるわけにも行かないから全部が全部とは言わないが。」
全く、忌々しい。と、丁原が悪態をつく。
なるほど、そうやって民が離散するってことか。
でも史実じゃ病を癒したりとかしてたと思うのだけどな。作物が不作だったり、賊に襲われたりとかいろいろな要因もあるはずだけどね。
「中央から回されて来る人間も、全員というわけではないがな。たいしたことの出来ない連中ばかりでな。保身に回るわ収賄を繰り返すわ、その上で仕事をしないわでこっちの苦労が・・・うぐぐっ」
胃のあたりを抑えて丁原が呻く。
「だ、大丈夫ですか?」
「案ずるな。くっ・・・くそ。つ、つまりだ。計算できる奴がいてもそいつは中央から来る人間ばかりで、仕事をまともにしない。人を集めようにも、人がそもそもいない。だから負担が増えていく。きっちり仕事をする奴もいるが・・・どうにもな。」
心の中で(ああ、官吏としての才能はなさそうだけど人の上に立ってるんだよな。苦労も多いのだろうな)とか考えながら俺は口を開く。
「だから自分で集めれる人間からそれなりの人材が出てくれれば、ということですか?」
「そうだ、お前だってわかる筈だろ?たかが馬の数を数えるだけだぞ。実際の数と合うかどうか。それだけの仕事をあれだけ時間がかかって、まともにできん者ばかりなのだ。そこいら辺の商人にすら劣る。」
「むう・・・。」
「もっとも、拒否することは許さんぞ?文官に似たような仕事だがこれも嫌でもやってもらう。」
そりゃそうだろう。この時代に人権というものは正直に言うと無い・・・いや待て。ちょっと待て。
「あの、丁原様、もう1つ質問です。」
「何だ、質問の多い奴だな。」
「今、文官に似た仕事「も」とか仰られました?」
「言ったな。」
「俺・・・じゃなくて、私は兵士ですよ?訓練とかするんですよ?そこに更に仕事ですか?」
「ああ、案ずるな。そこまで難しい仕事はお前の元には行かない。さっき言ってた軍事物資の計算とかその程度だ。給料もその分支払う。」
「・・・。えーと、たかが兵士n「うるさい黙れ」申し訳ありません。」
「まったく、男の癖にうだうだと。案ずるなと言ったぞ?決済やら住民の嘆願書やらの処理を任せるわけじゃないんだ。さっきも言ったが簡単な計算さ。」
簡単なんてさっき一言も言ってねえじゃん!
でも、何言っても聞いてくれそうにないよこの人。俺にやらせる気満々だし。
「解りました、やらせていただきます・・・・・・。」
「うむ、そう言ってくれると思っていたぞ。」
「無理やりの癖に(ボソリ」
「ん?何だ?」
「いいいええええ、何でもありません!・・・あ、そうだ、ついでにもう1つ」
「またか・・・。今度は何だ?」
「馬の頭数、実数と計算された数と合致したんですか?」
「合ってなかった。」
「・・・・・・。えーと・・・。」
「まあ、誰かがちょろまかしたのかもしれんな。良くある話さ。」


いや、駄目だろ。良くあることって・・・


そして、結果的に最初の状況になってるわけです。
最初はただの計算って言ったくせに。
無謀だろ、兵糧の支出計算とか・・・。






追伸:父上の言う「お前の武芸の腕は相当な・・・」というものですが、母上にみっちりと仕込まれました。
剣。槍。弓。馬術。その他。

自分の身は最低限自分で守れるように、という配慮でもありますが、こうでもしないと生きていくのが辛い時代なんです。
もう少しすれば住む場所によってはある程度安定してくるんでしょうけどねえ。

で、母上。チートすぎます。
最初は父上から教わったのですよ。
素手での護身術とか棒術。
警備兵になるつもりだし、そこまで強くなくてもいいのだろうな。
と思って教わってたんですが途中で母上が「あなたも男の子なら剣くらい使えなくてどうします!」とか言い出してそのまま教師が父上から母上にバトンタッチ。
マヂスパルタだった・・・。地獄の日々です。あんなに柔和で優しい母上が特訓のときだけはまさかの鬼教官。

まずは体力作りの走り込みから始まって筋力トレーニングやらされて剣の素振りとか槍の使い方だとか馬術とか。
これが基本の形ですから更にいろいろな要素増やしてくれます。
あと父上警備兵で、給料も多いわけじゃないのに母上が馬買って来たのには驚きました。
「なんで馬あるの!?高いのに!維持費どうするのさ!?」と叫んだのですが母上曰く「こんな事もあろうかと」ずっと昔からヘソクリしてたみたいです。
その影で父上泣いてましたけど。
維持費とか購入資金のために小遣い削られてたんだろうな。

そして何度か手合わせしたんですよ。
でも全戦全敗。剣でも槍でも弓でも。
どれ1つとして母上に敵いませんでした。
兵士としてお勤めする前日にもう1度だけ手合わせしたんですが、やはり勝てません。
服に掠らせるだけで精一杯でしたよ・・・。


・・・母上が兵士になってれば良かったのでは?


~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。
プロローグだけでは駄目かな?と考えて1話も投下します。
最初に書いたものは分量が少ないので色々書き足してみたのですが・・・グダグダもいいところです。
とりあえず、この場で書きたかったのは丁原さんところの人材不足 です。
でも、こんな低レベルな計算ができないような時代ではなかったと思いますけどね・・・w
あと、この時代の女性はやっぱチートです(ぁ
ご感想、お待ちしております。




[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第2話 楽屋裏のみ言い訳と言う名の修正
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2010/03/01 22:39
どうも皆さん、高順です。

俺の役職、レベルアップしました。
どんな風に?

兵士→兵士(物資点検も兼ねる)→親衛隊という名前の丁原様の小間使い



なんかどんどん兵士から離れていく・・・死亡フラグ折るはずが全然違うほうに行く・・・orz



第2話 やっと話が前に進んだ。俺の苦労も加速度的に増えた。





小間使いになった理由、というのは簡単なものでして。
自分の仕事をせこせこやってたら、丁原様に「身の周りの仕事を助けるのが欲しいからお前やれ。」
少し前に物資点検やれ、と言ったのにもうジョブチェンジですか。フリーダム過ぎる。
この人横暴なんだけど逆らったら殺されかねんし、逃げたら逃げたで家族に迷惑かかるしなぁ。
兵士になる前から逃げろといわれればそれまでだけど・・・。
母上が地の果てまで追ってきそうな気がします。

ま、フリーダムは置いておくにしても、小間使いです。
物資点検はどうなったって?
それは俺が不要になっただけです。
俺に色々仕事頼んでくる人もいれば、どう数えればいいの?と聞きに来る人もいるんです。
それに対していちいち対応してればそれこそキリが無いのですが・・・。
いちいち教えていくうちに、聞きに来てた方々も内容を心得たみたいです。
掛け算割り算の仕様を覚えてくれたんだろうな。
そしてそれを他の人々に伝えていったらしいので、簡単な計算できる人が多くなりました。
そうなると、必然的に俺の仕事が減っていきます。
そこに目を付けられたようで「お前暇だろ?いや暇に決まってる。だから私の仕事を手伝え。」

なんつー俺様主義ですか、丁原様。
ちなみにどんな仕事かというと・・・。
「おい、高順。酒買ってきてくれ。」
「高順、酒のつまみがないぞ。ほかに無いのか?」
「ううっ・・・昨日は飲みすぎたか・・・高順、水もってこい・・・・・・」
「高順、この書類に判子押しとけ」
・・・ぜんぜん兵士としての仕事してないんですけど?
あと、判子は本人で押してください。

だから小間使い。最初は秘書?とか思いましたけど、買い物いきーの酒仕入れーの以下省略。

ちくしょう|||orz

そんな関係が半年続き1年続き。丁原様の声色1つである程度何して欲しいか理解できるようになりました。
慣れって怖いなぁ。
1年ほど側に仕えて解ったことも色々あります。
まず、丁原様。武人としても指揮官としても優秀ですが官吏としてはそれほどじゃないです。
ただ、人を差別しない方ですし身分に捉われずに意見を聞いたりもしてくれます。
政治方面に自分が向いてないというのも自覚してるようで、周りの意見に頼りたがるっていう側面もありますが部下としては仕えやすい部類ではないでしょうか??
こういう人だと解ってれば・・・。いや、やっぱ斬られるような気がする。
まあ、側で見ないと理解できない面も多々あるものです。

前にも、
「なぁ、高順。」
「はい?何でしょう?」
「もっと、農作物の出来がよくならんものかなぁ・・・」
というやり取りがありました。
そういえば、このあたりの時代で・・・・韓浩ですっけ?流民を引き入れて農業に従事させるという屯田制度を曹操に提言した人がいます。
王朝の末期になると大抵反乱やら賊の横行やらで農作物の出来が悪くなり、先祖伝来の土地を離れて一村まるまる人がいなくなる、とかそういうことが多いのですよ。
もちろん、今の後漢もそうなのです。実際には前に丁原様が言ってた「人が少ない」時代とでも言いますか。「人が土地に集まらない」と言っても良いのかもしれません。
屯田というのは軍屯と民屯という2つの状況がありまして、今は軍屯のほうが主流です。
その流れを民屯へ向けたのが韓浩さんという訳。
俺自身も物資点検という名目の文官さんの仕事押し付けられてたのでその辺りは憂慮していたところです。
韓浩さんの言ってたのと似たようなことを言いました。
「この地域に限らず、流民が多いから引き入れましょう。最初の2年か3年は税なし、農具はこちらから貸し出し、牛馬を自分で持ってきた人は税率を下げる。という形で。」
「悪くない案だと思うが流民を引き入れることができんぞ?彼ら全員を受け入れる食料もないし、土地も無い。」
「全員でなくても良いのです。街の外には荒れた土地がいくらでもあるでしょう。少しずつ開墾していけばいいのです。収入が増えていけば少しずつでも街の規模を広げて、開墾地を増やしましょう。」
「ふむ・・・しかし、それでは最初のほうは収支が減るのではないか?」
「引き入れてから1年2年は収益が少なくなるかもしれませんが、長期的に見れば必ず収入は増えます。生産力が上がれば軍屯だけの今より食糧事情を改善できると思います。」
「ふーむ・・・。だが荒れてる土地と解ってるんだぞ?肥料はどうするんだ?そんなに大量に用意できるわけではないぞ。」
「馬や牛、鶏の糞を使用する物は時間がかかりますね・・・草や木を燃やした灰でもある程度代用できます。」
「灰で?ほう、それは初耳だな・・・。」
「あとは魚を干し、それを砕いたもの。石や貝殻、それと骨を細かく砕いたもの。こういったものを混ぜ合わせれば肥料にもなるんです。ただ、灰や石を砕いた物を使う場合はたい肥なども使用しなくては土地が痩せていきますけど・・・。」
「おい、高順。」
「はい?」
「お前、そんな知識をどこで得た?」
「え・・・、あ。その、それは・・・。」
…しまった。調子に乗りすぎたか。
この時代にある知識かどうか考えて言うべきだった。
灰や魚粉ならともかく、石やら貝殻が肥料の代わりになるなんてこの時代の人々が知るはずも無い。
「いや、そのー。前にどこぞの本にそんなことが書いてあったような無いような・・・。」
やばい、ぜんぜん言い訳になってないよ。どうする俺。
「・・・まあ、いいか。どこでそんな知識を得たかは知らんが・・・使い物になるんだな?」
「は、はい。間違いありません。」
丁原は、ふふ、と少しだけ笑い、高順の目を見て言った。
「お前の案、採用しよう。しかし結果が出なければ・・・。」
「もちろん出せます。ただ、結果が出るのはどうしても先になってしまいますが。(危なかった!追求されたらもう本当どうしようかと!)」

と、こんなやり取りをしたのです。
正直めっさ疑われてると思います。
でも、一応はやらせてくれるんですよ。
一度やらないと結果が出るかどうかすらも分からないですからね。
あれ、やっぱ仕えやすいじゃん?

その後も色々とありました。
肥料作ってる人々に意見求め、改良点が無いか調べたり、丁原様が贔屓にしてる酒処の酒(酒処・桃園とかいう名前。どっかで聞いたような)を買い求めたり、流民を少しずつ領内に引き入れて、土地を耕して、酒処(ry
あと、流民を引き入れて、開墾して。肥料撒いて。
大変でしたが1年後2年後が楽しみです。
あと、個人の欲求としてですが味噌汁欲しいです。確か大豆から作るはずだったから・・・。
材料何とかなるかな?とか考えてたり。



・・・やっぱ兵士として働いてないような。
とか考えてたらまたも丁原様から呼び出しくらいました。
何かやったかなぁ?と考えて政庁に向かったのですが開口一番、
「そろそろ兵士として働きたいだろ?いや働きたいに決まってる。そこで賊の討伐に向かう。賊討伐の嘆願書も近隣の村々から幾度か出ていたし、兵の訓練の成果も見たい。てわけで準備しろ。」



俺の死亡フラグ、再び。
本来ならこんなところで死なないから大丈夫だよね・・・?

そして何がなにやらわからぬままに出陣用意。
軍需物資や輜重の用意などは専用の文官さんがやってくれるので楽チンです。
俺のやることといえば自分の装備とかきっちり確認するくらいなものです。
ただ、用意だけで数日かかるのは仕方ないですね。
つれてく兵士の数がそうは多くないからまだ楽なほうですが。

そう思ってた時期が俺にもありました。

出陣1日前のこと。
政庁にて。
「おい、高順!」
「はひっ!?何ですか丁原様!」
「こんなところで何をしてる!」
「何って・・・自分の用意が終わったので何するかな?と・・・」
といいつつ俺が持ってるのは濡れ雑巾。
だって掃除してくれる人少ないんだもの・・・。
濡れ雑巾で汚れてる壁とか床を必死こいて拭いてます。
今度、パートタイマー制度の導入を進言してみよう、うん。
明日出陣だというのに随分と気楽だなぁ、と自分でも思いますけどね。
・・・現実逃避してるだけです。
「そんなもんは他の誰かにやらせておけ、お前にはもっと大事な仕事がある!」
「いや、ほかに誰もやってくれないから自分でyメメタァッ!?」
「口答えするな!」
めっさ全力で殴られましたよ、ええ。
母上を思い出します。下邳で処刑されるより暴力で死にそうですが・・・逃げれないよなぁ、きっと。
「ううっ・・・だ、大事な仕事って何ですか?」
頬をさすりながら呻くように聞いてみる。
実際一兵士のやることなんかそうは無い物だ。
自分の武具を用意して出陣を待つだけ。
戦闘になったらそりゃ大変なんだが。
でも、本当に何か大事な仕事あった?と考えてみる。
・・・駄目だ、思いつかん。
「申し訳ありません、何も思い浮かびません。」
この言葉が癪に障ったのか、いや、もともと機嫌が悪いからか、丁原の表情が険しくなる。
「ええい、気の利かん奴だなっ・・・。酒だ、酒。酒を買い占めて来い!」
この発言にはさすがに驚きです。
明日出陣なのに酒盛りする気ですかあなた。何処の酔っ払いかと。
「あの。酒買い占めて来いって?桃園の酒なのは解り切ってますが、明日出陣ですよ?今日酒盛りするつもりなんですkパウッ!?」
「だーれーがー今日酒盛りするといった!?出陣中に私が飲む酒が無いだろうが!?」
いや、兵士に与える酒で我慢しろよ・・・。と思ったがこれ以上は言わないでおこう。死ぬかもしれん。

割と何事にも無頓着な主君ではあるが、酒・・・とりわけ「酒処・桃園」に対しての拘りは半端ではなかった。
高順はあまり酒を飲まないので他の酒とどう違うか全く解らなかったが、本人曰く「他の酒よりも飲み慣れてる上に、いい酒でな。少し味が変わっただけですぐ解る。」
それの何がいいのか解らないが、「味が変わればその良し悪しを判断できる。旨くなってればよし、不味くなれば一言言いに行く。あそこの主とも長い付き合いだ。ある程度わがままを通せるんだよ。」とも言う。
付き合いというわけではなく、ある程度気心の知れた間柄というところか。
そのあたりは自分に合う味にしてくれるから、と高順は解釈していた。しかし。だからって。
「しくしく・・・何も殴らんでも・・・・・・。」
「私はな、桃園の酒意外口にするつもりは無いぞ。無論、戦いの最中は控えはするがな。そういうわけだ、とっとと買って来い。」
ほんっきで俺様主義だな。なにが「そういうわけ」か全然解らんし。
自分で行けよ、と思うが正直に言うと小間使いなんだよな、俺。
これ以上口答えしても全力で殴られるだろうし、痛いの嫌だから従おう。
「解りましたよ。そうですねえ・・・3,40瓶あればいいですか?」
「買い占めろといっただろう?まあ、あまったらそれはそれで構わん。帰還した後で飲む。」
独り占めか、この人は。
「はぁ。では行って来ます。」
「おう、早く行け。」

こんな緊張感の欠片もないやり取りを終えて―― 
一晩たった今、丁原率いる6000の兵が上党から出陣しようとしていた。
政庁の近くに軍勢が集結している。
その軍勢のすぐ目の前に丁原と、数十人の親衛隊、そして高順もその中に混じっていた。
側仕えに近いといっても高順はあくまでただの兵士であった。
それが少し前に丁原に「今のままじゃ立場上都合が悪いだろ?だから今から親衛隊な。」とか通達されたのである。
親衛隊の扱いで丁原の側にいるのは、彼が丁原だけでなく他の者から認められている、という事実があったし、丁原の小間使いという立場は言い換えれば個人秘書のようなものだ。
それがいつまでも一般兵士のままでは、という丁原なりの配慮だった。
肥料のことに関してもそうだが、簡単ではあるが学の無い兵士でもある程度数字計算できるようにしたのは他ならぬ高順だった。
穏やかな性格でほとんどといってもいいほど人の言うことを聞かない丁原に(理不尽な暴力に晒されても)諌言、助言の類が出来る数少ない人物。
そして、これはあまり知られていないことだったが・・・。
武のほうでも割りと優秀な部類である。
高順にとっては、軍に入ってからの訓練というものが温く感じる程度のものだったようだ。
そう感じるのは彼が幼少期から体験した、母親の「マヂスパルタ」訓練が原因のようだが・・・。
そのおかげか彼自身の武術は相当なものだった。
母親からかなりの武才を引き継いでいたのかもしれないが、本人もそれ相応の努力をしているのである。
最初はそのことを知らなかった丁原も正直に感心するほどの才だった。
武の才覚に恵まれ、丁原に対して一歩も引かず諌言し、才知もあり、穏やかな人柄で万人に慕われる。
間違っているかもしれないがこれが高順の周りにいる人々の、高順に対しての評価。
ただ、それを後に聞いた本人は「過大評価過ぎる」と頭を悩ませる事になった。

「全軍、集まりました!」
丁原の副将である老齢の男が報告をする。
その言葉に丁原は頷き、口を開く。
「うむ。・・・皆、よく聞け。これより我らは晋陽方面へ向かう。皆もよく知ってると思うが、このところ賊の数が増えている。晋陽のほうでも幾度も賊を鎮圧するために出陣しているようだが、此度は数が多く、幾らかの村が占領されており・・・・自力で鎮定できない故、我らが出陣することとなった。」
その言葉に兵たちは僅かに動揺し、ざわめく。
晋陽は上党ほど規模の大きい都市ではないが、それでも相当な規模の兵力はあるはずだ。
それなのに何故?
それほど規模の大きい賊だというのか?
兵士の動揺に対し、丁原は眼を閉じしばらく無言だったが「静まれ。」と、一言を発する。
その発言だけで兵士たちは口を閉じ、姿勢をただし丁原のほうへと向き直る。
「皆の疑問も尤もである。だが!!!恐れることは無い。数が多いと言っても烏合の衆。お前たちが日々行ってる訓練を思い出せ。我等が負けるはずが無い。負ける道理などありはしない。負ける要素など何1つ無い!」
この言葉に兵士たちの表情が今まで以上に引き締まる。
「全軍、騎乗せよ!」
丁原が、高順が、兵士たちが。
馬に跨り、槍を携える。
「全軍、出陣っっ!!」



向かうは北。
晋陽と上党を結ぶ街道よりも大きく外れた村々。




上党と晋陽を結ぶ街道より離れた村々。そしてそこから更に数理ほど南に、陣を張っている軍勢がいた。
その陣には6千ほどの兵士が行きかい、夕餉の支度をしたり、陣幕を立てたりしている。
一番豪華な陣幕に、いうまでもなく総大将の陣幕なのだが、その中で苛々としている人物がいた。
「ああ、くそ。苛々する・・・・。」
「まあそう仰らないでください。総大将がそうだと部下も不安になりますよ?」
「あー、うるさいうるさい。…あのくそ太守め。自分の責任を果たさんとはいい度胸だ…!」
そう言いつつ、陣幕の中で酒を煽る女性。そして、その女性を宥める若い男。
女性は言うまでもなく丁原で、男は高順だった。
なぜ丁原がイラついているのか?それは晋陽の太守に原因があった。

数日前のことである。


上党より出陣した丁原軍であったが、彼女らはあくまで「応援部隊」という形での出陣だった。
何故かと言うと、これは晋陽方面で起きた騒ぎだからだ。
丁原は并州の刺史である。
并州は上党と晋陽の2都市を擁する土地の総称で、上党には丁原。そして晋陽にも、もう1人の太守が存在する。
丁原は立場として「并州の責任者」という位置づけになるので、その太守よりも位が上ということになり・・・請われれば出陣はするのが当然なのだが血の気の多い彼女からすればむしろ望むところだったりする。
するのだが、この問題はあくまで晋陽の問題だ。
上党周辺の治安状況は、丁原が赴任した頃は盗賊の類が多かったものの幾度も征伐に乗り出し、その成果か今は割りとおとなしいほうだ。
治安がよくなり生活も不安が少なくなった為、たまに出没するとしても近隣の村々に幾度か、という程度だ。
しかし、今はその「近隣」というのが上党よりも晋陽側になっている。
丁原もその辺りを憂慮して何度と無く賊討伐を早急に行うように指示をしていた。
が、返ってきた返事が「我々も努力していますが何分にも賊の数が多く手出しもしにくくて…なにとぞお助けください」的な情けないものだったらしい。
そんな情けない返事に対して「じゃあ応援部隊出してやるからどれだけ出して欲しいか言え。それとそちらが捻出できる兵の数も教えろ」と怒りを抑えつつ(ついでに胃の辺りも押さえつつ)また指示を出した。
その返事が「賊の数も多いので出来るだけ多く出してください。こちらからは500くらいしか出せません。あと、見せしめのために全滅させてください」という、すさまじく自分本位というか面の皮の厚い内容だった。


このあまりといえばあまりな内容に、丁原は本気で機嫌を損ねたのである。(出陣前に高順に当たってたのは、これがほとんどの原因だったりする。)


合流してみたらしてみたで、当初500と言っていたにも関わらず、実際には誰も送って来ない。
非常識なことに500を送るのも渋っているらしい。
丁原がイラつくのも、無理の無いことだった。

そのせいで当り散らされる高順や、親衛隊にとっては不運なことこの上ないのだが。


「ところで、丁原様。」
「ん、何だ?」
酒を煽りつつ、丁原は投げやりに応える。
「それ何杯目ですか、自重sいや、そうじゃなく。賊の規模とか、誰が先導しているかは知っておられるんですか?」
「ああ・・・。一応な。賊の名は…なんと言ったか。えー…」
「黒山賊。首領の名は張牛角、ですな。」
そう言って陣幕の中に入ってきたのは丁原の副将。朱厳という名の老人だった。
「これは、朱厳様。」
拱手し、高順が出迎える
「おい、治心。私が今言おうとしたことをだな…。」
「ほっほっほ、申し訳ございません。齢をとると、空気が読めませんでな。」
そこまで言って高順が椅子を用意したことに気がつき、「ああ、すまんの。…どっこらせ」と老人くさい言葉を口にしつつ座り込む。
朱厳、字は治心。
丁原の副将であり、齢60をゆうに超える老将。并州の勇者と呼ばれる人物だ。
老人であるが、武才は全く衰えておらず、寧ろ老境に入ってからその技は更に磨きがかかっている、と言われる人物である。
外見的には白い顎鬚をたっぷりとたくわえた好々爺で、穏やかな性格、普段の生活で声を荒げるようなところを高順は見たことがない。
それでいて戦場では勇猛果敢、神速果断といえるほどの鋭さを見せ付ける。
戦場指揮は当然の事ながら、得意の二刀流で眼前の敵を切り飛ばし畳んで行く。
高順から見て上党で彼に適う者はいないだろうな、と思うほどの腕前だ。
実際何度か稽古をつけてもらったものの彼に勝てた事は一度もない。
いや・・・・・・自分の母親なら勝てるかも、と思ったのは内緒だ。

丁原が物心つく前から仕えているらしく、彼女が唯一といっていいほど頭が上がらない存在である。
まさに上党、丁原軍最強・最良の存在。

「数は・・・・聞いたところだと3000程、とわしは聞きましたな。」
「ああ、そうだ。あのくそ太守の報告ではな。」
「丁原様、くそ、とは何です?くそ、とは。そのような言葉遣いは治して欲しいとあれほど申しておりまするに。」
ああ、わかったわかった、と手を振りつつ丁原は投げやりに応える。
「まったく、幼い頃はワシのことを「ちしん、ちしん」と呼んで後ろをついて来るほどの、それはもう眼に入れても痛くないほどの・・・」
「あー!あー!うるさい!昔の話はするんじゃない!!!」
「皆の者、丁原様も昔は可憐でなぁ。」
「わーーー!!言うな、解った、口の悪さは治すから!それ以上言うなーーーーー!」
「ほっほっほ、解ってくだされば良いのです。」
回りにいる者はこんなやり取りは慣れているためか苦笑するのみ。
高順も最初は「あの傍若無人な丁原様が!?」と驚きはしたもののもう見慣れてる光景だ。
朱厳の横まで歩き「どうぞ」と言って酒と杯を差し出す。
すまんの、と言いつつ話を続ける。
「しかし、おかしなものですな。晋陽の兵力は総兵力で約7000。他の賊を鎮圧してる様子でもないというのに送ってきた兵士は皆無。」
「ああ、おかしすぎる。…どうせ、私に厄介ごとを押し付けて、自分はのうのうとしてるとか、そんな程度だろうさ。こっちは6000出してるんだぞ?守備兵力除けば半数近く出してやってるんだ。くそっ・・・」
そこまで言って、丁原はまた酒を呷る。
「・・・ふぅ。守備に3000使おうが4000使おうが構わんがな。結局軍を送ってこないとは。職務放棄と受け取られても仕方ないだろう。」
「ほっほっほ、丁原様の言うとおり、厄介ごとを避けて通りたいのでしょうな。」
「まあ、構わんさ。奴のお願いどおりきっちり全滅させてから・・・・。」
職務怠慢という責任を追及してやる、どこまでもな。と殺意も露に言った。
(さすがに刺史になるだけあって、こういうときの迫力は凄いな。)
高順たちは丁原たちのやり取りを横で聞くだけだったが、普段と違う迫力を見せる主君を頼もしい思いで見つめていた。


夜が明け、丁原軍は当初の目的地である村の1つに向かう。
斥候を幾度か放ったので、ある程度の数にも目星がついている。
目の前の村と、その西と北にある3つの村に賊の痕跡あり。という内容だ。
目の前にある村の周りでは賊の被害が出てなかったようだが、他2つの村の周辺では被害が発生している。
もしかしたら、ここが賊の本拠かもしれない。
ただ・・・進発する前の軍議だが、情報を掴んだものの、正直頭をかしげる様な情報がいくつかあった。
「報告によれば目前にある村にいる賊の数は800から1000程度ということだ。装備も不揃いで、おかしなことに…女子供もいるらしい。」
「女子供、ですか。妙な話ですな?」
「ああ、妙だ。どこかから連れ去られてきたか?と思ったのだがな。どうも、その村で生活しているらしい。」
「生活・・・?そこで自炊して、生活を営んでると?」
「うむ。斥候に出した者も頭を傾げていたがな。もう少し詳しく言えば、男たちは武装をしているが女子供は強要されて生活を営んでるということではないようだ。」
「つまり、彼らにとっては男はともかく、それ以外は普段どおりの生活をしている、といったところですか?」
「ああ、住み慣れた土地に住んでいる、といった感じか。」
「本拠地であれば、不思議ではないでしょう。しかし、聞いた限りでは賊とは縁のないような生活ですね。」
その場にいた全員が考え込む。
男は武装しているが、女性や子供といった非戦闘員は普段どおりの生活をしている?
「1つ、よろしいでしょうか?」
「ん、高順か。かまわんぞ。」
「彼らは本当に賊ですか?賊であればその…堕落した生活をするでしょう?子供も殺し、女性には乱暴をする、とか。なのに、男性はともかう、それ以外はごく普通の生活をしているというのは・・・。」
「だな、やはりそう思うか…。一度、自分たちで見たほうが早そうだな。」
丁原は立ち上がり、軍勢の割り振りをしていく。



まず、丁原率いる2000の兵で村に入る。
その間に朱厳率いる3000で村の入り口を固め、逃げられないようにする。
残りの1000は輜重部隊であるから直接的な戦闘には参加しないが、もしも襲われるようなことがあったとしても自衛できる程度の装備と能力はある。
ちなみに、高順は丁原率いる第1陣に属する。
彼らが賊であると判明すれば殲滅、賊でないと判断すれば何が起こってるのかということを詳しく聞く。
大まかに言えばこんなものだ。

「では治心よ、頼んだぞ。」
「はは、お任せを。」

こうして、丁原率いる第1陣が村へ向かった。
村のほうでも、丁原軍が来たことを察知し、官軍が来たか!?とか、くそ、もう来やがったか!とか、女子供は家に篭るんだ!とかそういう声が飛び交う。
村が騒然とした頃に、村にある一際大きな家から1人の少女が扉を開け、広場へとやって来る。
まだ幼い少女だ。年の頃12,3といったところか。
黒く長い髪を結い上げており快活な感じだが、服装は上品なもので、良家の子女を思わせる。
「もう・・・・来た?」
幼いにも関わらず、周りが慌てる中で唯1人落ち着いている。
少女に気がついた周りの誰かが、危ないです、なにとぞ家にお入りください。と言っているが、彼女は聞いていなかった。
「行かないと…!」
少女は走り出した。後ろからお待ちください!とか何とか聞こえてくるが、聞くわけには行かない。
こちらに向かってくる官軍―――
誰が来たのかは知らないけど、話を聞いて貰わないと。



同じ頃、村からやってきた数百人の男たちが思い思いの武器を手に取り、丁原軍の前に立ちはだかっていた。
「くそ、この村に官軍は入れねぇぞ!」
「そうだ、これ以上行かせるな!」
など、随分と士気が高い。
そして、武器をかざし丁原軍に威嚇を続ける。
そんな光景にも丁原は恐れもせず、馬から下りる。高順を始め、親衛隊も馬から下り、丁原の周りを固めようとする。
それを片手で制し、信じられないくらいの殺気を放ちつつ、
「我が名は丁原!この并州の刺史である!賊がこの村を襲い、支配していると聞き討伐に来た!」
と一喝する。

その一喝だけで村の男たちは怯み、それ以上何も言えなくなってしまう。
「そんな…俺たちは悪くないじゃないか…。」
「そ、そうだ…。お前たちが悪いくせに…。」
今までの威勢が嘘の様だった。

「ほう、私たちが悪い、と?何がどう悪いのだ。詳しく言ってみろ。」
「それは…それは」
武器を構えてる一人の男が声を震わせて反論しようとする。だが、その後方からざわめきが起こる。
そして、道を開けるかのように皆下がっていく。
「む…。」
こちらにやって来たのは一人の少女だった。
少女が丁原の目の前まで進み、頭を下げた。
「お初にお目にかかります、丁原様。どうか、皆の無礼をお許しください。」
「ふむ、無礼か。」
少女の謝罪を聞いた丁原から殺気が薄れていく。
声色から、上辺や偽りで謝罪をしている訳ではない。そう感じたからだ。
高順たちは警戒を解いていないようだが、こちらが指示するか、向こうから行動を起こさない限り無用なことはしないだろう。
「いや、こちらこそ脅すような真似をして済まなかった。娘よ、名を聞かせていただこうか?」
その言葉に安堵したのか、いや最初から恐れてもいなかったのか。
微笑を浮かべ、少女は応える。
「性は褚、名を燕と申します。丁原様。」










~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。
出ないようなことを言っておいて、あっさり出ましたオリキャラ。もうほんとごめんなさい。
でもまだ1人目だよ?1人くらいならいいよね!?
と、言い訳をしつつ。
最後に出てきた褚燕はどうだって?さぁ・・・・?(笑

白状しちゃうと、朱厳さんは後漢の将で実在した人物、朱儁がモチーフです。
史実でも・・・・ゴニョゴニョ(ぉ
高順の武力ですが、恋姫基準で言えば現状ではそれなりにあると思ってください。
無双できるほどではありませんが、恋姫で出てくる男性として考えたら、もうあれです(あれって何
1年も仕えれば、普通に高順の訓練を丁原さんも見たでしょう。
その辺りまで書くと余計に長くなるかな、と思いまして省きましたが・・・・。
でも書いたほうがよかったのかなー。

彼が逃げないのは感想でも書きましたが逃げたほうが酷い目に合わされるから、と考えてるからです。
実際こんな理不尽な人がいたら逃げますねw
この時代は兵士が逃げた場合、その家族に累が及ぶという時代ですから両親大好きな高順くんは逃げるに逃げれないのでしょうね

自分で「兵士募集の立て札あったよ」と迂闊なことを言っちゃうから・・・w
ところで。
今第7話くらいの途中まで書いていたのですが気づきました。

「あれ?恋姫キャラ1人も出てなくね?」

・・・・・・・。
書き直しぢゃああああああああっっっ!!!(涙
てなわけでどっかに恋姫キャラ押し込むために書き直し中。
こんな作品に期待してくれてる人はあまりいないでしょうがもう少しお待ちくださいませ(涙

ご意見・ご感想、お待ちしてます。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第3話(ちびっと誤字脱字修正)
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/10 22:37
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第3話

第3話 褚燕様ガチで強かった。なんでこの世界は女性ばかり強いのですか?orz




褚燕と自己紹介をした少女は、その場に集結していた村の男性たちを落ち着かせ、丁原の軍勢が
敵ではないことを説明。
警戒は溶けていないものの多少は安心したのか、彼らはぞろぞろと帰っていった。
丁原も朱厳の元へ伝令を出し、攻撃の中止、ならびにそのまま村の「外」に対し警戒するように伝えた。

自身の連れてきた軍勢にも朱厳と合流するように命じ、丁原自身は数人の親衛隊と残る。

「さて、褚燕とか言ったな。お前には色々と説明して欲しいことがあるのだが?」
人が少なくなった村の一角で、丁原は褚燕と名乗った少女に言った。
「ええ、こちらが知っていることをお話いたします。ただ、このような屋外では失礼に当たります。窮屈ではありますが、どうぞ我が家へお越しください。」
「ふっ、私は外でも構わんが…まあ良い。そちらの好意に甘えるとしよう。おい、高順。お前がついて来い。」
この言葉に言われた本人、高順が驚き声を上げる。
「は?私だけですか?」
「そうだ、あまり多人数でいっても警戒されるだけだろ?それに今この場に残ってる中で一番腕が立つのはお前だ。回りの者も文句あるまい?」
と、話を振られた幾人かの親衛隊は皆一様にうなずき、その通りです。と苦笑しつつ答える。
「はは、別にお前らの腕が悪いといってるわけではないぞ。この中で、というだけのことだ。ああ、朱厳にも伝えておいてくれ。」
「ははっ。何卒お気をつけて。」
と、高順を除いた親衛隊の者たちは拱手をし、そのまま朱厳の待機する村の外へ向かっていった。
「……。」
「おい、高順。何をボサっとしてる。早く行くぞ。」
「はぁ…。」

あいつら、少しくらい反論してくれよ…。

褚燕に案内されて歩いていく二人。
たどり着いた先は「ほほう、個人の持ち物としてはそこそこ大きな家だな。」と丁原が感心するほど立派な家だった。
この村の規模も思った以上に大きく、最初800前後の人数が生活していると聞いていたのだがもう少し多い1000人ほどだな、と高順は考えていた。
褚燕に聞いたところ、やはり1000人前後が生活を営んでるという。
「数ヶ月前まではもっと多かったのですが…。さあ、どうぞ。」
そして、そのまま家に上がりこもうとしたところその家の門に立っていた、おそらく門番だろう。
その門番が「申し訳ありませんが、武器をお預け願いたい。」と言ってきた。
丁原たちがもしも褚燕に害意を持っていたら、ということを危ぶんでの発言だろうが、丁原の立場としては「武器の無い状況で襲われたらどうする?」ということになる。
「うーむ、参ったな…。」
武器を渡すかどうか悩むが、そこに褚燕が一言「この方たちなら大丈夫です。このまま入っていただきます。」と言った。
「そんな、彼らがもし褚燕様に」「大丈夫です。この方たちは敵ではありません。もしも彼らが本気になれば、我々はもう生きてはいませんよ?」
と、一言で切って捨てた。
門番としても、そこまで言われれば反論できず小声で、解りました、と呟くのみであった。
「ごめんなさい、私の身の安全を考えての発言だと解っています。ただ、彼らについてはそのような心配は不要です。…では、どうぞ。」
と、丁原と高順を促して褚燕は進んでいった。

褚燕の家は外観から見ても立派なものだったが、内側もまた立派だった。
調度品やら絨毯やらが、豪華極まりない。
丁原の政務室よりもよほど品の良いものばかりだ。
これが本当に彼女の家なら、褚燕、或いは彼女の一族は相当な名士なのかもしれない。
そして、通された部屋もまた豪華な調度品やら何やら。
褚燕が丁原たちに、どうぞお座りください、と促して椅子に腰をかける。
丁原は違和感無くそのまま褚燕の目の前に座った。
高順はそのまま丁原の後ろで直立不動の姿勢で立っている。
「あの、お連れの方もお座りいただければ。」
褚燕は気を利かせるものの丁原に「彼に気遣いは不要です。」とだけ言い、事情の説明を求めた。何故、この村が賊の住処として報告されたか、ということを。
褚燕もどう言えばいいものかと悩んでいるようだったが、やはり隠し事はしないほうがいいかと思い直し、全て伝えることにした。
「まず、何故我々が賊とされてしまったかですが…。正直に言って濡れ衣でしかないんです。」
「ほう、濡れ衣?」
「はい。事の発端は3年以上前になります。」
それから褚燕は淡々と説明を続けた。
晋陽の太守が今の太守に変わってから、段々と税の値を吊り上げていったということ。
ありもしない橋の修繕費、神像への供物。些細な理由をつけては税を取り立てていったのだ、と。
それはこの村に限ったことではなく、他の地域に対してもそうなのだという。
1年前に褚燕の父親が他の村々との連名で太守に税を下げて欲しいという嘆願書を出したが無視され、それどころか漢朝の決定に逆らったとして連行され処刑されたということ。
そして、叔父の張牛角が不満を持ちこの当たりの村落を纏め上げようとしていること。
おとなしく聞いていた丁腹と高順だったが、怒りがこみ上げてきていた。
丁原にとってはそんな事があったというのは初耳だったし、高順にとってもその話は聞くだけで胸糞の悪くなるような話だった。
税を上げるのならば刺史である自分に「こんな理由で、どう使用するから、どれだけの期間、税を上げたい」とか、そういった相談があって当然だ。
それもせず、勝手に税を上げて、民からの意見を聞かず一方的に罪人扱いをして処刑だと?
「ふざけおって!!」
丁原が目の前の机に拳を叩きつけ、真っ二つに粉砕した。
「………。」
「あ。」
「丁原様…。」
 
三者三様の反応だった。


「おい、高順。」
割れた机をそのままに、後ろに振り返り丁原は高順に語りかける。
「はい、何でしょう。」
「お前から何か聞きたいことはあるか?」
丁原にとっては、晋陽太守が自身の利益のためだけに動いている、という情報を察知しただけで十分だったようだ。
あとは調べを進めて徹底的に追い詰めてやる。とでも思っているだろう。
「しかし、私のような立場で疑問を口にするのは。」
「構わん。少しくらいのことなら私は気にしないし、私に対しての無礼はいつものことだろうが。隣に座らせるつもりは無いけどな。」
この言葉に高順は苦笑し、それならと思い自分の疑問を口にする。
「褚燕様、私からもいくつか聞いてよろしいでしょうか?」
「ええ。かまいませんよ。それと褚燕、と呼び捨てでも構いませんよ?」
「さすがにそれは。では褚燕様、あなたの叔父の、張牛角…と言いましたか?性が違いますがこれは?」
「それは、慣わしです。」
「慣わし?」
「はい。我々の元の出はここからも遠い黒山というところです。私の一族は代々そこで生活を営んでいました。ですが一族の数が多くなって、各地に散っていったのです。」
「晋陽各地に?」
「いえ、上党にもいると思います。そして、この辺りで根を張ったのが我々や叔父の一族なんですが…。代々の慣わしで、男子であっても女子であっても成人するか、子を成すまでは張性を名乗らないんです。」
「成人するまでですか?ですがそれは・・・。」
「さきほど、父が・・・処刑されたと言いましたね。私も処刑されるはずだったのでしょうけど、褚性を名乗っていたので連座せず、命拾いをいたしました。過去にも似たようなことがあったそうです。」
褚燕が辛そうな表情で話す。
褚燕は年の頃12,3といったところだ。
この年頃なのに、泣きもせずよく我慢して話せるものだなと感心しつつ、悪いことを聞いてしまった、と後悔する気持ちがない交ぜになる。
「いや、申し訳ないことを聞きました。お許しを。」
「いえ。・・・ほかに何か?」
「それではもう1つ。叔父の張牛角ですが。彼がこの騒ぎの1つの本題である賊の頭領なのですね?」
「・・・!」
「ほう?」
褚燕の表情が心なしか蒼くなり、丁原が感心したような声を上げる。
「高順、何故そう思う?遠慮をする必要はない。思ったことを言え。」
高順は褚燕を見つつ、辛いな、と思いながらも自分の考えを喋り始める。
「まず1つ。この村は被害を出しておらず、生活を見るに・・・賊ではないようです。ただ、他の村には被害が出ているという報告もありますね。この村も賊の住処として教えられた以上、何らかの繋がりがあるのでは?と。」
「ふむ。」
「この村の西と北に1つずつ規模の大きな村があると聞いています。そして、その村の周りで被害が多発していませんでしたか?その2つの村のどちらかが張牛角の住処で、もう1つはこの騒ぎに乗じた、といったところでしょうか。」
「・・・と、私の部下がこんなことを言っているが、実際のところはどうなのだ。褚燕?」
「・・・。仰るとおりです。」
褚燕は項垂れて、認めた。
「やれやれ、もう1つの重要なところを隠すとは。感心しないな。」
「申し訳ありません。隠し立てをする・・・いえ、隠していたのです。私は。」
そして、まだ迷いがあるようだが、顔を上げる。
「1つ、お願いがあります。隠し事をしていた私にこんなことを言う資格などないのは承知していますけど。」
「言ってみろ。」
「はい、叔父の、張牛角のことです。彼は、このあたりの黒山から出てきた者たちを1つに纏めるべきだ、常々そう言っていました。」

こういった、役人の要求を突っぱねるためには力を結集するしかない。それには指導者が必要だ。
そしてその指導者には自分が相応しい。周りの黒山出身のものは俺に従うべきだ。
張牛角の言い分はこうだった。

だが、それに反発したのがこの村を治める褚燕の父だった。
褚燕の父は良識のある人物だったらしく、力ではなく言葉で意思を伝えるべきだ。
上のものがそうだからと言って下にある我々までが力にたより続けては結局同じことだ、力に対して力で対抗するのは我々の仕事ではない とこう主張したのである。
張牛角よりも褚燕の父親のほうがこの近辺では影響力があったようで、張牛角に賛同するものはその時点でほとんどいなかったのである。
渋々、自分の意見を引っ込めて従う振りはしていたものの、やはり不満はあったようだ。
だが3年前に太守が変わり、1年前に褚燕の父が処刑された。
そのために、張牛角がまた同じことを言い出したのだ。
褚燕の父の末路を知った人々の多くが張牛角に賛同し、彼の元へと集まっていった。
残された褚燕も、最低限自衛のために村の人々を説得し武器などを持たせていたが、それを叔父のように、外へ向けるつもりは無かった。
そして数ヶ月前に、叔父は従おうとしなかった近隣の村へ攻め入ったのだった。

「その時に、叔父は見せしめだと申して村1つを焼き、住人を皆殺しにしたのです・・・。これでは晋陽太守と何も変わりません。」
褚燕は辛そうに言う。
「なるほどな。で、お願いというのは?」
「叔父を・・・牛角を止めてください。本来ならば私の役目かもしれませんが、今となってはどうにも・・・。」
丁原の後ろで聞いていた高順もそれはそうだろう、と考える。
当初、張牛角の勢力にある兵数は3000程度という報告だった。
おそらくは、今自分たちのいるこの村の人数も含まれる形での報告だ。
そしてこの村にいる人数は約1000人。その人数を引けば張牛角の手元には2000程度。
この村の全員が武器を取ったところで倍の数。手出しが出来るはずもない。
だからこそ、自衛の為に男性が武器を持っているのだろう。
褚燕は何も言わないが、この村はおそらく・・・晋陽に狙われている。
晋陽の太守にとって、上司である丁原には黒山賊発生の元となったこの村には出来れば関わって欲しくなかった筈だ。
何らかの間違いで、黒山賊が発生したのは自分のせいだと知られたら(政治的にも物理的にも)首を落とされるのが解りきっている。
自分の手持ちの戦力で片を付けたいところだったが、規模の大きい戦いになるのは解っていたし、自力で鎮圧できる自信も無い。
そこで自分の不利になることは言わず、彼ら全員が反乱を起こした賊である、と報告をした。
そのまま一気に進み、一気に殲滅さえしてくれれば、自分の非は明るみに出ることなく、また自分の懐を潤すことが出来る。
血の気の多い丁原ならば問題あるまい、という安易な考えだったに違いない。
だが丁原は、血の気が多いのは事実だが決して人の話を聞かない愚鈍な人間ではなかった。
そこが晋陽の太守にとっての盲点だったのだ。
褚燕が自衛のために村の武装化を進めたのは、張牛角に対してではなく、晋陽軍に対してのものだったということだ。

褚燕が本当のことを言ってるかどうかまでは解らなかったが、晋陽で今頃暢気にしてるであろうクソ太守にしても、全部が全部事実を報告したとは考えられない。
まあいい。奴は締め上げればすぐに洗いざらい吐くだろう。
考えを纏めたところで、丁原は褚燕に問う。
「褚燕、張牛角を止めて欲しいと言ったな。」
「はい。」
刺すような視線に怖じることなく、褚燕は丁原の眼を見つめ返して応えた。
「私には奴と交渉をするつもりは無い。それを解って言っているのだな?」
「・・・はい。」
「今の返事、覚悟の上だな?」
「無論です。」
丁原は質問をしたのではなく、確認をした。褚燕の覚悟を聞いたのだった。
要は「お前の叔父は止めてやろう。ただし命を取るという形でだ。賊にも、賊に加担した者にも見せる慈悲など私には無い」ということだ。
褚燕もその意味を理解して、覚悟をして返事をしたのだ。
しばらくの間、誰も、何も喋らなかった。
「・・・ふぅ。」
丁原がため息をついた。
「解った、いいだろう。褚燕よ。お前の願いは聞き入れた。我々は後日発つ。詳しい事が決まったら伝令を寄越す。」
この言葉に褚燕は頷く。
では、と一言を残し丁原は部屋を出て行き、その後ろに高順も続く。
一度だけ高順は振り向き、褚燕のほうへ一礼して―――慌てて丁原のあとを追いかけていったがまたすぐ戻ってきた。
「机の修繕費出しますので後日請求を!」
「え?」
眼をぱちくりとさせる褚燕にまた一礼し、今度こそ高順は去っていった。

館を出た2人はそのまま朱厳の陣へと向かう。
幾人の村の住人とすれ違うが、その誰もが暗く沈んだ表情だった。
気になった高順は丁原の後ろにつきつつも、周りに視線を巡らせる。
荒れて、ひび割れた大地。その大地に水を撒き、鍬で掘り起こす人々。
彼らの姿を見て、高順は何かできることはないだろうか・・・と考えていた。
「おそらく、元々は農地だったのだろうな。」
高順が周りを見ていることに気づいていた丁原が歩行速度を落とさず語りかけた。
「何故彼らがこんな所でこんな事をしていると思う?」
「晋陽の軍か、黒山賊に攻撃されたか。或いは・・・。搾取され、生活を維持できず、去っていった人々の残した土地。諦めきれないのではないでしょうか?」
「まあ、そうだろうな。で、今お前は何を考えていた?」
ぎくっ。
「はい?何のことですか?」
高順は白を切るが、丁原にとってはお見通しだったようだ。
「とぼけるな。肥料を分けてやりたいとか、ここに軍勢残して開墾を手伝うとか出来ないだろうか?とか、甘っちょろいことを考えていたんだろう?」
ぎくぎくっ。
「あー・・・。」
「あのな。そんな甘いことでどうする?農地が荒れて困ってるのはここだけじゃないぞ。お前は聖人君子か。誰も彼も助けることが出来ると思っているのか?馬鹿が。」
「ですが、何らかの形で助けることは出来るのではないでしょうか。」
「そりゃ、あるだろうな。」
「ならば」
高順も食い下がるが丁原としては取り合うつもりも無いのか冷淡に応えるのみだ。
「馬鹿。今ここで助けてみろ。他からも「自分たちにも肥料をください、困ってるんですー」とか来るのは解り切ってる。損得を考えろ。心を開けば向こうも心を開くわけじゃないんだ。お前の考えていたのはただの自己満足でしかない。」
「丁原様・・・。」
「お前の気持ちは解らんでもない。しかしな、困ってる者全員を助けることなど出来るはずがないだろうが。諦めろ。」
これは、丁原の本音だ。
助けてやりたいのは山々だが、あれこれと助け続けていては先が見えない。
損得がどうと言っていたが、それも人の上に立つ以上、切るべき所は切り捨て、拾うべきところを拾う、という考えなのだ。
そうでなければこの先やっていくことはできんぞ、という高順への忠告である。
その気持ちは解るのだが、だからと言って見捨てるということが高順には出来なかった。
自分ひとりでは大したことが出来ないのもよく解ってはいたが。
高順は考えた。なんとかこの村の力になりたい。
褚燕は何も言わなかったが、税率を上げられ、取り立てられ、財政的にも苦しいだろうし何より食料も残りが少ないはずだ。
だからこそ、村の人々の表情が晴れないのだ。
自己満足でも構わない。
自分の考えを纏め、口を開いた。
「ならば、1つ提案があります。」
「なんだ。」
「この村のことです。」
「おい、高順・・・。」
まだこの話を続けるつもりか、と後ろを振り向いたが、高順の眼は真剣だった。
「どうかお聞きください。」
「・・・はぁ。解った。言うだけ言ってみろ。」
「まず、この村に、戦力を残しては如何でしょう?」
「はぁ?何故そんなことをする必要がある?」
「ありますよ。自身の悪政を証言できる人々が残っているんですよ?晋陽側は彼らを消したいと思ってるはずではありませんか?」
「それは解っている。ならばこそ早急に張牛角を討つ必要がある。それに、狙われていると言ってもこの村には自衛戦力・・・。」
そこまで言ったところで丁原は、いや・・・なるほどな、と言い直した。
「・・・。そうか。そうくるか。」
「援軍は出さなかったのではなく、出せなかったのでは?我らに合流させるつもりが、向こうが思っていた以上に早く村に入られた為に、合流することが出来なくなったのです。」
あくまで予想ですが、と断った上で話を続ける。
「晋陽側はそのまま攻撃して欲しいと思ったでしょうが、そうはならなかった。丁原様が彼らの事情を聞きましたからね。そうなれば反乱を起こした「理由」を知られてしまいます。本当か嘘かはともかく、自分が疑われる。丁原様のいうクソ太守の目論見はここで崩れています。」
「だから予定を変更した、か。では最初に言っていた晋陽の援軍は我々を監視する為の物だった?」
「恐らくは。もし丁原様が彼らと話をしようとする素振りを見せたのなら、自分たちが攻撃を仕掛け戦端を開いていたのかもしれませんね。」
「なるほどな。そうなれば・・・なし崩し的に戦いが開始されてしまい、殲滅戦になってしまうからな。」
「はい。我らがこの村に入ったことは向こうでも掴んでいるでしょう。クソ太守にとっては我々全員がこの村を出て行くことを願っているはず。我々がいなくなれば残るのは500程度のこの村の戦力のみ。2000も出せば事足ります。」
一度言葉を切り、更に続ける。
「ここに1000程度の軍勢を残せば、晋陽側も迂闊に手を出せないはず。規模の大きい軍勢なら収集にも時間がかかるでしょうしね。そうやって時間を稼ぐ間に丁原様率いる本隊で黒山賊を討ち、帰還する。そうすれば」
「太守が無用な搾取と減税の嘆願をした民を殺した。その事実を知る人々も生き残り、クソ太守を追い詰める布石になる、か。」
「それだけではありません。もし攻撃をされたとしたら、「上党より来た援軍に何故攻撃をしたか。」という事と「戦力があるのに援軍を出さなかったのは何故か。」ということを追加する形で問い詰めることが出来ます。もし「そちらが余りに早く到着したので」とか言っても攻撃をされた場合、事実は変わりません。」
ついでに、丁原様が民を助け、悪辣な政治を行った太守を断罪した。ということを喧伝すれば人気が高まるでしょう。とも付け加える。
「ふ。は、ふはははは!なるほどな、いい所に気がつくじゃないか!」
最後まで聞いていた丁原だったが、いきなり笑い始めた。
これは良い、と言いつつ大笑いする丁原に、その喜びようを見て唖然とする高順。
まさか。まさかとは思うが。
「丁原様・・・。もしかして、俺を試しました?」
「ふふふ、さあ、どうかな?はっはっは!私のことがついでか、これは良い。ふふふ、そこまでは考え・・・はは、はっははは!」
どうも、自分の人気のことまでは考えが行ってなかったようだ。
最初に言ったところに気がついてるなら、自分の声望に繋がる位は理解していると思っていたのだが、どうもその辺りのことは気にしてなかったらしい。
(相変わらずこういうことには無頓着だなぁ・・・)
心の中で呟く高順だった。
「ふふ、いいだろう。ここに歩兵600、騎兵400。あと輜重隊を200ほど残す。」
すこし落ち着いたのか、それとも機嫌が良くなったのか。おそらくその両方だろうが、丁原は笑顔で話す。
「あ、ありがとうございます!」
「気にするな。あと、主将に治心を残す。暴れることが出来なくなるかもしれんから不満はあるだろうがな。ふふ、賊よりも官軍のほうが骨があるといって喜ぶかも知れんな。肥料についても許可を出そう。与える名目は考えてあるのだろ?」
参ったな、お見通しか。と、高順は人差し指で頬をかく。
丁原はにやりと笑うのみだったが
「ああ、あと開墾云々はお前が朱厳に直接言え。自分で治心を納得させてみるのだな。」
思い出したかのように付け加えるのだった。


数日後、丁原が率いる4800(うち800は輜重)が、西に向けて出撃していった。

褚燕は最初「兵士と食料を残す。村の防衛を手伝おう」と伝えてきた伝令の言葉を疑った。
わざわざ自分から丁原の元まで足を運び、確認をするほどに。
丁原自身から説明を受け事実だと知ったときに褚燕は驚きのあまり、その場で数分ほど固まってしまった。
我に返った褚燕は、その場で平伏し、何度も何度も「ありがとうございます」と繰り返していた。
丁原は苦笑しつつ兵士を護衛につけ送り返したが、そのときこっそり「礼ならば高順に。あいつが案を出したんです」と耳打ちした。
残った朱厳率いる部隊はそのまま村に残り、柵などを作り防御を固める。
やることが無い兵士は休ませていたが、しばらくして荒れた土地の開墾を交代制で手伝い始めた。
褚燕は朱厳に礼を言おうと(そして高順に礼を言おうと)、朱厳の元までやって来るがそこでまた「やることの無い兵を開墾にまわして欲しいと嘆願してきたのは高順でしてな。」と返す。
その合間に高順は朱厳の許可を得て上党へ使いを送り、相当な量の肥料を運ばせる。
肥料がたどり着いた頃、ちょうど褚燕が自分の元まで礼を言う為に来ていたので「使ってくれ」とばかりに全て渡した。
褚燕はまたも高順に驚かされる羽目になるのだが、疑問に思っていたことを口にした。
「何故この村の為にそこまでしてくださるのですか?」と。
「何故って?簡単です。この村が苦しい思いをしたのは直接には晋陽太守のせいです。しかし、彼の悪政に気がつかない我々にも非があるわけでしてね。」
その罪滅ぼしですよ、と屈託無く笑うのだった。
そんな彼に褚燕が何度と無く感謝したことは言うまでもない。

その後、20日ほどが過ぎるが、上党軍と村の人々はおおむね仲良くやっていた。
上党側が開墾の手伝いをしてもらっていたのもあるが、上党側が食料と肥料を提供したことが大きな理由だった。
丁原が「すぐ終わらせる」と言いつつも「もしもの時のために」と糧食を多めに用意した為、余裕があったし、村の食糧事情も相当厳しいことが解っていたからである。
その間兵士たちは開墾の手伝い、住民の手を借りて防衛力強化といった作業に余念が無かったが、1人だけ他と違うことをしている者がいた。
高順である。
もちろん、兵士と同じように鍬を振るい、落とし穴を掘ったりなどの作業はしていたが特別に許しを得て、ある人に稽古をつけてもらっていたのである。
その相手は・・・・・・褚燕。
場所は、村の広場よりも少し離れた位置にある公園のような場所。
公園と言っても、木が植えてあり、野草を刈って更地にした程度のものだ。
昼間は子供たちがこの辺りで走り回っているのだという。
もっとも、彼らが稽古をするのは夕方から夜にかけてだから誰の迷惑にもならない。
「遅いです!!」
バキィッ!
「ぐっはぁぁあっ!」
「まだ遅いですよ!」
ボキィッ!
「く、くそ!」
「さきほどよりも良くなりましたが・・・まだ!!」
ボギャアッ!
「グフゥッ!?」
・・・・・・・・・・・・



「いつつつつ・・・・・・死にそう。」
水で濡らした布を頭にあてがう高順。
「ご、ごめんなさい。」
そして謝る褚燕。
「あの、1つ質問があるのですけど。」
「はい?何です?」
「何故、私に稽古をつけて欲しい、と仰られたのです?」
これは褚燕にとっては何故?と思うことだった。
朱厳に手合わせをしてもらえばいいはずだし、他の兵士で暇な人をつかまえてつき合わせればいいはずなのに。
「褚燕さんが強そうだったから?」
「・・・私、そんなに強そうな外見してますか?」
「普通ですよ?」
「むー。」
高順の知識として、褚燕が強いということを知ってのことだが、それを素直に言うことはさすがにまずい。
高順はこの時代から見ればずっと未来の知識を持ってる存在である。
三国志のことをそこそこに知ってる彼は褚燕がどういう人物なのか、というのを知識として知っていた。
その強さを知るからこそ、手合わせを頼み込んだのだが・・・少々、強すぎた。
何せ、動きが早いのだ。すばしっこいとか、そういうレベルじゃない。
拳の動きが見えないわ、蹴られたと思ったときには既に体が吹き飛ばされてるとか。
反撃すれば超反応で避けられ、また手痛い反撃を食らう。
これでは手合わせも何もあったものじゃない。
どうしたものか、と悩む高順に褚燕が遠慮がちに声をかける。
「あの・・・。」
「え、はい?何ですか?」
「どうして自分の攻撃が当たらないのか?と思っておられます?」
「よくお分かりで。・・・うーん、俺には才能が無いって事なんですかねー。」
「才能が無い?高順様が?・・・・・・ぷっ、うふふふ・・・」
こんな愚痴をこぼす高順に褚燕は何故か妙な面白さを感じてつい噴出してしまった。
「ひどいなぁ、笑うなんて。」
「ふふ、ごめんなさい。逆なんですよ?」
「えー?」
「才能はあると思いますよ。ただ、それを活かしきれてないだけと思います。」
実際、褚燕は高順の武力に感心していた。
手合わせで槍の攻撃を見せてもらっただけだが、槍で突く速さ、薙ぎ払う速さ、振り下ろす速さ。
そのどれもが相当なものだと思っていた。
当てられたことが無いので威力は解らないが、本気で当てられたら一撃で勝負がつくはずだ。
自分も本気を出しているわけではないので実際に戦場で戦わなければ解らないものはある。
「活かしきれてない、かぁ。」
「ええ、高順様はなんと言うか・・・攻撃が素直すぎます。」
「素直って?」
「戦ってる最中に自分が狙ってるところをじっと見つめ続けてるんです。あれではすぐに避けられてしまいますよ?」
そのまま攻撃を繰り出してくるのですから、避けるのは易いことです。とも付け加える。
「高順様はまずその癖を直すべきです。あとは、実戦に出なければ何とも言えませんね。」
「うーん、もっと別のところを狙うべきですか。」
「うぅん・・・。簡単に言えば、相手の肩を見ながら足を打つ。足を見ながら胸を突く。とかそんなところでしょうか。」
褚燕がフェイントという言葉を知っていたらそう言っただろう。
「援軍が来ると思う場所に援軍を出さず、来ないだろうと思う場所に不意に援軍を繰り出す、か。」
「はい?」
「相手の意表をつく、とかそんな意味です。ああ、他にどんな所が悪いと感じました?」
「動きに無駄が多いです。」
「ぐはぁ」
一言で切って捨てられた。
「高順様の攻撃はとても早いです。私もさっきは来るのが解ってても避けるのに苦労しましたから。私の速度に体がついてこれるようになった、ということですね。」
「おお、初めて褒められた!」
「うふふっ。ただ、攻撃は早いですけど、どうも無駄があるように見受けられました。」
「だから無駄が多い、ですか。たとえば?」
「これは言葉では何とも言えませんけど・・・。」
そうですね、と小首を傾げて考えてから褚燕は続ける。
「高順様にちょっとした課題を出しましょう。これから毎日、ご自分の気が済むまで「突き・薙ぎ払い・振り下ろし」の3つだけを徹底的にこなしてください。」
「3つだけ、ですか?」
「はい。高順様は小手先の技術などに頼らない戦いをしたほうがよほど強いと思います。その3つの動作をとことんまで鍛え上げて、練り上げて・・・。技術など後からいくらでもついてきますよ。」
「・・・そんなものなのでしょうか。」
「どんな武器や戦い方でも、必要な動作を最大限まで鍛えることが出来ればまずは十分です。相手の意表も大事ですけど。高順様はまずそこから始めましょう。」
「・・・わかりました。ですが明日からじゃ遅い。今からです。」
「え?」
「ありがとうございました、褚燕様。これから課題ををこなしてきます!」
立ち上がり、高順はそのままどこかへ走って行った。これからまだ続けるつもりなのだろうか。
褚燕は一人残される形になったが・・・。
「おかしな人・・・。」
と、苦笑交じりに呟き帰路に着いた。




そして・・・晋陽の軍勢が村に攻撃を仕掛けてきたのは、その4日後のことだった。









~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。少し長いかな?と思ったのですが・・・


そんなことは無かったぜ!(むしろ文章考えるのに数日もかかってこの出来。吊るしかない

というか、これだけ書いてもまだ黄巾に突入しない・・・・
自分の文才の無さに絶望した!orz

何度も読み返して誤字とかチェックしてるのに何故又見つかるのか・・・

ご意見、ご感想お待ちしておりますっ。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第4話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/15 19:25
高順伝
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第4話


彼女達は遅れてやって来た。やっぱり名を残す人はチートなんですね?




「ほっほっほ。来るだろうとは思っていたが、案外遅かったのう。」
「そうですね。この遅さは有難いですが、なんと言うか。」
村より少し北に布陣した晋陽軍を見据えて話す朱厳と高順。
晋陽軍が布陣したことを察知し、陣を敷いて3日。
正直、これほど晋陽太守が無能だとは思わなかった。
丁原が出陣して既に20日以上。
それだけの時間が過ぎてからやっと出陣とは。
多少考えれる頭があるならもっと早く行動を起こしただろう。
丁原が出陣してすぐに攻められれば準備の整ってない状況で迎え撃つ羽目になっていただろう。
黒山賊にしても、動員できるだけの兵力を差し向け殲滅すればそれこそ自身の暴政など知られるはずが無かっただろうに。
他人任せにするからこうなるのだ。よほど自分で考えるのが嫌なのだろうか?
まあ、その無能さが朱厳たちにとっては有利な状況を作り出したのだから何とも言いようのないものがあった。
既に上党と住民たちの混成部隊は所定の位置についている。
村の方は、住人が柵を何重にも設置し、内側から槍でけん制しつつ後ろから弓矢で応戦。
保険もかねて輜重隊200人の兵士もつけている。彼らはあくまで防衛部隊だ。
村の外には朱厳率いる騎兵400、歩兵が600。
歩兵とは言っても、全員が弓を持っているし、騎兵の中にも弓を所持している者がいる。
向こうが攻撃でこちらが防衛だから当然といえば当然だが。
そして何故か・・・朱厳の本陣に褚燕も混じっていたのだった。

~~~数十分前~~~
「危ないですって!危険ですから下がっててくださいよ!!」
「大丈夫です!私の実力は高順様が一番良くご存知でしょう!?」
「知ってますけど、そういう問題じゃないんですって!」
「じゃあどういう問題ですか!」
「わざわざあなたが戦う理由が無いんです!」
「あります!父の敵を討つ。十分すぎる理由ですよ!?ちゃんと武器も所持していますし、足手まといにはなりませんから!」
「そういう問題じゃなくってー!朱厳様も何とか言ってくださいよー!?」

こんなやり取りが朱厳の陣幕内で行われていた。
晋陽軍が攻めてきた。という話を聞きつけた褚燕が出向いてきた。
それだけなら良かったのだが、その時に彼女はこう言ったのだ。
自分も部隊に参加させて欲しい、と。
これに反発したのが高順だった。
別に彼女が幼いから、とか戦争は戦争屋に任せろ、とかそういうことを言いたいわけではない。
彼女の実力はよく理解しているし体力面に不安があるものの、この戦いでどうにかなるということも無いだろうと踏んでいる。
だが、戦に限らないことだが命のやり取りに絶対など無いのだ。もし流れ矢が飛んできたら?戦が終わったと安堵したところを襲われたら?
彼女はこの一連の騒動での被害者であり、彼女の証言は晋陽太守を追い詰めるのに必要なものの1つである。
高順自身、彼女に死んで欲しくないという気持ちもある。
そのあたりを考えてを反対をしているのだが・・・。
こんなやり取りを繰り返しているが、まったく話が先に進まない。

「まあまあ・・・。高順よ、本人が仰っているのだし、参加していただいてはどうかな?」
「朱厳様までそんなことを・・・!」
「しかし。我が軍と共に突撃、ということはしてはいけませぬ。このような状況では村に敵を引き込んで戦う事になります。その時に力をお貸し下され。」
「朱厳様・・・。いえ、ありがとうございます。」
「はぁ・・・。」
こうして、朱厳の賛成案の為に高順が引き下がらざるを得ない形になってしまったが朱厳も注意を忘れなかった。
「高順の言うとおり、あなたは体力が無い。村人を前面に押し出して戦うつもりはありませんが・・・。無理だと思ったらすぐにお退き下され。」
褚燕もこれには言い返す言葉も無く頷くのみであった。

そして今。
「彼らは何をしてるんでしょうね?攻めかかって来るわけでも無し。」
「さあのう。大方向こうの大将が混乱でもしとるのではないかの?」

~~晋陽軍~~~
「おい、なんで俺たちの目の前に上党の兵士が布陣してるんだ?」
「俺たちの任務は賊征伐じゃ・・・。」
「出陣が取りやめになったと思ったらまた出陣とか・・・くそ、あの豚太守め。」
村の北部に布陣した晋陽軍だが、兵士たちからはこんな声が上がっていた。
それを聞いたこの軍の総大将は近習に「静かにさせろ」と怒鳴るばかりだった。
実際彼自身も自分に与えられた任務に疑問がないわけではなかった。いや、疑問しかなかった。
最初に500で出陣しろとか、それを準備が終わった頃に取りやめ。
そしてまた出陣。
上党側が援軍なのに、本隊である自分たちが500で出陣しろ。何の冗談だ。
そこで急に2000で出陣しろ。くそ、ふざけやがって。
そんなことを思って進軍したのだが。
目的地に着いたら着いたで、またも彼は苛立ちを覚える状況に遭遇した。
目の前にいるのはどう見ても賊じゃなく自分たちと同じく官軍。その上自分たちの援軍として来た筈の上党軍じゃないか。
上はいったい何を考えてるんだ!
布陣して1日が過ぎ、目の前の部隊が上党軍と悟った彼は「自分たちの目の前にいるのはどう見ても上党軍だ。なのに何故攻撃をする必要があるのか?」と太守に伝令を出した。
返って来た返事は「それは偽官軍だ。賊が変装しているに違いない。そんなことを考えてる必要があるなら早く攻撃して全滅させろ。」
放った密偵も「村の守備をしている軍は上党軍に間違いありません。その上指揮を取っているのは朱厳様のようで・・・。」と言って来た。
朱厳様だと?冗談じゃない!俺たちが束になっても勝てるお人じゃないぞ!!
その上、布陣してるのは1000程度とはいえ、こちらより錬度も装備も上の上党兵だ。
それを1人残らず全滅させろ?
くそ、あの豚め。戦いの事を知らないくせに無茶苦茶言いやがって。
「将軍・・・。」
「何だ。」
「その、また伝令が手紙を・・・。」
「ああ?・・・見せてみろ。何々・・・『早く攻撃しろ、さっさと行け。さもなくば後詰で繰り出した精鋭部隊1500にお前たちの背後を攻撃させるぞ』」
「・・・・・・。」
「・・・・・・あ・・・あっんのクソ豚は・・・!!!」
「しょ、将軍!落ち着いてください!」
「落ち着けるか馬鹿野郎!」
「ちょっとmぎゃあー!?」
「おい、誰か!将軍がご乱心だ!?」
「将軍!どうか、どうか落ち着いてー!?」
「あーもう!こうなったら破れかぶれだ!通達だ!先鋒部隊は突撃!時間を置いて我らも出陣るぞ!」


こんな感じだった。




~~~上党軍~~~

「攻めて来ませんね。」
「来ないのう。」
「来ないですね。」
高順、朱厳、褚燕が同じようなことを同時に口にする。
彼らが布陣してから3日。睨み合いばかりで衝突には至っていない。
時間をかけるのは晋陽軍にとっては不利になるばかりだというのに。
今こうしてる間にも丁原は黒山賊と戦ってるか、追い詰めてるかのどちらかだ。
その丁原が軍勢を引き連れて帰還すれば晋陽側には打つ手が無くなる。
攻めかかかって来ないのは戦いたくないからか。目の前にいたのが賊でなく自分たちと同じ官軍だからか。
それとも、何か考えがあってのことか。援軍でも来るのだろうか?
だが、援軍が来るにしては遅い気もする。
3日も睨み合いをしていては兵士たちが緊張状態に慣れて精神的に弛緩するのだろうが朱厳がきっちりと引き締めているため、油断をしているような兵士はいない。
そこまで考えたところで、晋陽軍が慌しく陣を整えてるのが見えた。
「ほっほっほ、奴さん、攻めて来るようじゃな。・・・伝令!」
さっきまでの穏やかな感じは何処へやら、朱厳の表情が一気に引き締まる。
「はっ!」
「歩兵隊に伝えよ!これより敵が攻めてくる。軽々しく討って出ず、守りを固め、突撃してくる部隊をけん制せよと!騎兵部隊300は一当てしてすぐに退け!」
「承知!」
「高順!」
「ははっ!」
「おぬしは騎兵100を率いて村へ入るのじゃ。」
「わ、私が・・・ですか?」
「うむ、敵部隊はおそらく時間差で攻めてくるじゃろう。敵全軍が攻めてきたらば、我らは一度村まで下がり防戦に徹する。その間に他の出口より抜け、一気に敵の横腹を突くのじゃ。」
「しかし、私は指揮などしたことが・・・」
「なに、先頭でお主が勇を振るえば良い。それだけで兵は着いてくるものよ。無論そこそこ指揮もするべきじゃがな。然る後、反撃に移る。」
ほっほっほ、と笑い朱厳は高順の肩を叩く。
「戦場を見よ。個人の眼でなく、全体を見る眼でじゃ。なあに、今はまだ解らずともいずれ解る。よいか、機を見誤るなよ。」
「は・・・はい!」
「うむ。では行くのじゃ。褚燕様は村にお残りくだされ。」
「え?私も高順様と共に・・・。」
「なりませぬ。約束致しましたな?残っていただきます。どうかお下がりくだされ。高順が攻撃を開始するまで村内部で戦う事になるでしょう。その時に」
朱厳の言葉に褚燕は唇をかみ締める。
今、高順と共に行って、万が一のことがあってはいけない、という配慮。約束もある。それは解っている。解っているのだが。
「褚燕様、我々が突撃するときに形勢が逆転するということでしょう。その時までの我慢です。兵数に差があるのですから最初は仕方が無いとお思いください。」
「・・・。解りました。高順様?」
褚燕は両手で高順の手を包む。
「きょ、褚燕様?」
「どうかご無事で。決して無理をなさらぬように。そして・・・お願いします。」
そのまま、褚燕は頭を下げた。
「・・・お任せを。」
彼女の手を握り返す。褚燕は安心したのか、そっと手を放した。
「では、行って参ります!」

~~~同時刻、村より北東に4里ほど進んだところ~~~

「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「くっ、まだ追ってくる?」
「はぁ、ふぅ・・・疲れたのですよー。」
「まだだ、あと少し西に行けば村落があるはず。急げ!」

3人の女性がひたすらに西に向かって走っていた。
1人は青みがかった髪に胸元の開いた白い服の少女。目の前を走る2人の少女の足の遅さに焦れるが、こればかりは仕方が無い。
彼女たちは智謀の士ではあるが、体力は一般の女性のものと変わらない。
3里も4里も延々全力で走りぬけ、というのは相当辛いに違いない。
だが捕まれば何をされるか解らない。自分1人ならば渡り合う事も可能だろうが誰かを守りながらという条件付では厳しいものがあった。
そしてその後ろに追いすがる40人ほどの男たち。

盗賊か山賊かとしかいいようのない風貌で、交渉というか話そのものが通じそうに無い連中だ。
「ひゃっはー!待ちやがれええええっ!」
「いい女が3人もいるぜぇ!」
「おいテメェら!あの3人を捕まえた奴にゃあ褒美をくれてやるぜぇ!」
「さすがお頭ぁ!売っちまうつもりですね!?」
「あれだけの上玉だぁ、高く売れるぜえ!」
「その前にお楽しみも・・・グフフフ。」
「さすがお頭、あくどい!そこに痺れる憧れるぅ!」
『ヒャッハー!』×40



「・・・だ、そうだぞ!2人とも!人気者は辛いな!?」
青い髪の少女が前を走っている2人の少女に語りかける。
「じょ、冗談ではありません!」
「おー、このまま捕まれば美味しく食べられそのまま・・・。ぐぅ。」
「こんなときに寝るな!しかも走ったままとかどんな器用さだ!?」
「おおっ!?襲い来る悪意についつい現実逃避を」
1人は茶髪に眼鏡をかけた少女。
もう1人は金髪碧眼。頭の上になんだかよく解らない妙な生物(?)を乗せている。その頭の上の生物(?)は何故か手に飴を持っている。
「おい、2人とも!漫才は後にするべきだと思うぞ!?」
「「まぁ、勘弁してくれよお嬢ちゃん。こいつはまだまだ若いんだぜ。若さゆえの過ちって言葉、知ってるかい?」と、そう申しておりますのでどうか1つ。」
「・・・。それ、喋れたのか?」
「そんなことを言っている場合では!星殿、あなたの武勇で何とかならんのですか!?」
星と呼ばれた少女はその言葉にやれやれ、といった感じで首を横に振る。
「私1人ならまだしも、2人を庇いながらではとても力を発揮できませぬな。私が30人と戦ってる間に10人が2人のもとへ行けばどうにもならぬ!それよりも、2人の自慢の知恵でなんとかならぬのか!?」
意地の悪い笑顔で問い返す。
「くっ・・・。」
「おー、稟ちゃん、頑張るのです。」
「お前も考えろぉぉぉぉっ!」
「風はとてもお疲れでその上眠くて頭が働かないのです。・・・ぐぅ。」
「そう言ってる割には足はちゃんと動いてるな!?あと寝るな!!!」
「・・・・・・2人とも、漫才をしている元気があるならもっと早く走っていただきたいですな!」
「言われずとも!」

星、稟、風。
お互いを真名で呼び合う彼女たち。
星と呼ばれた少女は趙雲。
稟と呼ばれた少女は戯志才。
風と呼ばれた少女は程立。
稟と風はその後名前を変え、稟は郭嘉、風は程昱と名乗る事になる。


そんな彼女らが向かうのは今まさに戦闘が開始されようとしている褚燕の村。



英傑たちと高順の出会いが、刻一刻と近づいていた。






~~~楽屋裏~~~

短いですねぇ・・・

それはそうとついに出ましたね、恋姫のキャラが。

本当はもっと遅く出すつもりだったんですが「恋姫キャラまだ?」みたいな空気だったので無理やり(ぉ
上党というか晋陽は幽州のお隣だし趙雲たちが旅で立ち寄っても多分大丈夫だよね?
色々プロットを考えては棄却しーの却下しーの。大変です。


ご感想お待ちしております。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第5話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2010/02/06 14:30
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第5話

メジャーな方々と出会いました。でも全員女性でした。嬉しいやら悲しいやら・・・。




「はぁ、はぁ、はぁ!」
「あともう少しだ、走れ!」
「風はもう駄目です。後はよろしく・・・ぐぅ。」
「ああ、もうまた寝始める・・・。諦めないでください、風!」

こんなやり取りをしつつ褚燕の村へひた走る趙雲達。
途中に岩場があり、彼女たち3人はそこを素早く抜けたが、後方の盗賊たちは数が多いためかそこで少し渋滞し、ある程度距離を稼ぐことが出来た。
「はぁ、ふぅ。しかし星殿!あの村・・・何かおかしいぞ!」
「ああ、どうも戦ってる真っ最中に見えるな!」
村に近づくにつれ、どうにも様子がおかしいことに気がつく。
何重にも柵をはり、騎兵やら歩兵やらが村の内外に陣を展開している。
あれは官軍だろうか。
そしておそらく村人だと思うが・・・柵の内側で槍を構え、弓を構え、こっちを見ている。

「風もそう思いますねえ。こっちに対しても殺気満々。「おう、姉ちゃん達。もしかして誤解されてるんじゃあねえかい?」と言っておりますよ?」
「・・・だから漫才は後にしてください、風。」
「戦闘中か・・・。だが、入り込めば何とかなるのではないかな?少なくとも」
最後尾を走る趙雲じゃ後ろをチラッと振り返る。
そこには40人ほどの盗賊たちが
『ヒャッハー!』×40
「・・・・・・。こんな状況からは抜け出せると思うのだが!?」
「それに関しては同意です!とにかく、どうにかして村に入れてもr「ぐぅ。」寝るなーーーー!!!」

趙雲達は必死だった。(特に戯志才が。


「高順、高順ーーー!!」
黒髪を三つ編みにして肩から垂らしている女性兵士が走りながら高順の名を叫ぶ。
「どうした!?・・・って何だ、郝萌?」
郝萌と呼ばれた少女が不満そうな表情になる。
「何だ、ですって?何か不満あるの!?」
「いや、そんな息せき切って走ってくるからさ。もう内部まで攻め込まれたのかと。」
「はぁぁぁ・・・。ま、いいけどさ。もう。」
彼女の姓は郝、名は萌。
この物語の1話において、いきなり高順が叫んだことに驚いて竹簡を取り落とした人だ。彼女も親衛隊であり高順から見れば先輩に当たる。
2人とも齢が近く(郝萌のほうが年下だが)、よく一緒に仕事をする間柄のせいか良い友人関係だったりする。
高順よりも年齢が下だが彼よりも早く親衛隊に抜擢され、優秀な人なのである。
ただ、影が薄いのか派手さが無いのか、微妙に目立たない人であった。
「で、何があったのさ?」
「あ、そうそう。何かね、村の人から聞いた話なんだけど。東のほうから盗賊がこっちに向かってるんだって。」
「何?盗賊?・・・まさか敵の援軍?」
「でも、数が40人ほどだそうよ。これじゃ援軍にならないでしょ?それに、その先頭を3人の少女が走ってて・・・どうも、追われてるみたい。」
「その3人が盗賊ってことはないよな?」
「そこまでは。でも先頭の3人は必死になって逃げてるみたいだし、服装からして盗賊には見えないって聞いたよ?村の人もどうしようって。」
うーん、と高順は腕組みをして考える。
厄介のときに厄介なことがやってくるとは言うものの。
こんな状態じゃなければ迎えてやりたい所だが・・・。
しかし、このままではどっちにしても戦闘に巻き込まれるだろう。
いっその事村の中へ避難してもらったほうがまだ生き残れる確率も高いだろう。
賊の討伐も官軍の仕事だ、と思うし。
ただ、自分の指揮権はあくまで与えられた100の騎兵だけ。
機を見て一気に敵の横腹を突け、と言われている以上、ここで勝手に部隊を動かすわけにも行かない。この場合、一度朱厳に伝令を出し許可を得るべきだな。と高順は考えた。
「よし、郝萌。悪いんだが・・・。」
「朱厳様にも伝令出したわ。」
「・・・流石だね姉者。」
「へ?何よそれ?」
「いや、何でも。」
相変わらずよく解ってるな、と高順は感心した。
指揮官は朱厳だから当然と言えば当然だ。
この場合、一番近くで部隊を展開できるのは高順。
なので朱厳にも高順にも知らせるのが一番最良だ、と考えたのだろう。
ほどなくして朱厳のもとから伝令が来る。
「高順殿!朱厳様よりの言伝を預かってまいりました!」
「ご苦労様です。して、朱厳様は何と?」
「村の方々に先頭を走る女性3人を村へ避難させるように伝えよ、と。そして騎兵隊を率い盗賊どもを追い散らせ、とのこと!」
「承りました。」
「では、私はこれにて!」
伝令は慌しく帰っていった。
「郝萌!村の人々に説明を!」
「解ったわ!」
高順は後ろに控えていた部下達のほうへ振り返る。
「皆、聞いていたな!?これより我らは盗賊どもを殲滅する!面倒かもしれんが付いて来てくれ!・・・全兵、騎乗せよ!!」
「おう!」

~~~村東部~~~
「おい、二人とも!見えるか!?」
「ええ、あれは官軍の騎馬隊ですね!」
「おおー、助けてくれるのですねー。」
村のほうから騎馬隊がこちらに向かってくるのが趙雲たちからも見える。
「ただ、問題は・・・。」
「私達も盗賊と思われてるかもしれませんけどね・・・。」
「・・・・・・。」

そうだった。
もし彼らが自分達を盗賊と勘違いしてたら?
挟み撃ちにされる形になるか。というか疑われたら、自分達が盗賊ではないと証明する手立てが無い。
「ま、まあそこは智謀の士である二人に任せるとして!」
「おお、星ちゃんが全部丸投げにしてきましたよ。というわけで稟ちゃん頑張るのです。ぐぅ。」
「あなたも丸投げするつもりですか!?」

割と考えなしの3人だった。
そうこうしているうち、騎馬隊がこちらへと走ってくる。
これはまずいか?と思う趙雲達だったが・・・。
先頭を走ってきた男、高順だが――速度を落とし「そこの3人!」と呼びかけてきた。
先頭の男に倣って周りの騎兵達も速度を落とし始める。
そこで稟が機先を制する形で「官軍の方ですね!盗賊に追われております、どうかお助けを!」と叫んだ。
「俺の上党の・・・って、くそ、名乗る暇は無いよな。貴方達、早く村の中へ!」
「え・・・?」
その言葉にきょとん、とする趙雲達。
「え?じゃなくて!早く逃げてください!」
「その・・・そんなあっさり信じるなんて・・・我々の事を疑わないのですか?」
「そんな事はいいから早く!・・・誰か!彼女達を護衛して村に!」
「解った!さあ、早く!」
「あ、ああ・・・。」
「わ、解りました。」
「おお、助かったのです。」
とか何とかいいながら10人ほどの騎兵に付き添われ村の方へと走って行った。
高順はそれを見届け、再度盗賊たちのほうへ馬を駆けさせる。
「突撃!生かして返すなあっ!」
「おおーーー!!!」

盗賊たちも盗賊たちで今更ながらにどうするべきか悩んでいた。
狙ってた娘達は官軍に保護されてしまったし、ほとんどの騎兵がこちらに向かってくる。
目先の欲に囚われすぎて引き際を完全に見誤ってしまった。
今の彼らに出来ることは3つあった。
真っ先に逃げること、降伏すること、戦って死ぬこと。
最後の1つだけはありえない。あと2つ、どっちが生き残れるかと考えたせいで。
逃げれる可能性を失った。

「斉射用意!・・・放てっ!」
何十本もの矢が盗賊たちに飛んでいく。
「う、うわ・・・に、逃げおげあっ!?」
「お、お頭ぁっ!?ぎゃああっ!!!」
始めの射撃のみで盗賊頭が射抜かれ、周りにいた十人ほどの賊も巻き添えになる形で死んだ。
「ひ、ひぃぃ。逃げろ!」
盗賊たちは一目散に逃げ出したが趙雲達を何里も走って追い続けた彼らは体力が残っていなかった。
先頭を走る高順は槍で数人の賊を刺し貫いた。
逃げようとして背を向けた瞬間に槍で貫かれる者。矢で射抜かれる者。剣で斬られる者。
様々だったが、高順たちは盗賊たちをただの一人も残さず殲滅した。

盗賊を殲滅した騎馬隊は、休むことなくまた村へと駆けて行く。
その一番後ろを進むのは高順と途中で追いついてきた郝萌だ。
その高順は凄まじく顔色が悪い。というか吐きそうな顔をしている。
「・・・高順?」
「・・・・・・うぅっ。」
(やっぱそうなるよね・・・。)
郝萌ははぁ、とため息をついた。
別に高順が軟弱だとか、そんな感想を持ったわけではない。これは兵士という人を殺す職業なら大抵誰もが通る道だ。
郝萌も初めて戦場に出て人を殺したときは思い切り吐いてしまった。
(辛そうだなぁ。・・・よし。)
郝萌は高順より先行し、回りの者に話しかける。高順には聞かれないように。
「ごめん、皆。ちょっと先行っててくれる?」
「お?どうかしたのか?」
「あー、ちょっと高順が。その、ね?」
「あぁ・・・。そっか、わかった。じゃあ先に行ってるぜ!」
行こうぜ、とか何とか言いながら高順と郝萌を除いた騎兵達はすぐに村へと駆けて行った。
「お、おい・・・あいつ、ら。う、うぅっ・・・。」
郝萌が高順と同じくらいの位置にまで戻ってきて、馬を並べ心配そうに言う。
「高順、皆気を使ってくれたんだよ。ほら、馬から下りて。」
「うぐ、そ、そんな心配しなくても・・・・・・。おぅ・・・。」
「無理しないの。別に恥ずかしいことじゃないんだからさ。そこの岩陰あたりで吐いて。」
「う・・・。」
駄目だ。もう限界だ。くそ・・・。
高順は馬を止めそのまま下りる。もう歩く気力が無いらしく、その場で蹲ってしまった。
心配した郝萌が肩を貸し、岩陰まで連れて行く。
「す、すまん・・・。み、見ないでく・・・おぅぅっ」
「大丈夫だって、ほらほら。」
そう言ってしゃがみ込み、郝萌は高順の胸の辺りを小突いた。
ただでさえ限界だったのにそこまでされたらどうしようもなく、高順はそのまま吐き上げてしまった。
郝萌はそのまま高順の背中をとんとんと叩いている。
「うう・・・。な、情けない・・・・・・。」
嘆く高順に、郝萌は自分の水筒の蓋を開け、差し出した。
「ほら、これで口ゆすいで。少しは気分良くなるよ。」
「あ、ああ。すまない。」
口をつけ水を含み口をゆすぎ、ぺ、っと吐き出した。
水筒を返そうとしたが、そのまま返すのは失礼だよな?と考えた高順は口をつけていない自分の水筒を変わりに差し出す。
「ぷっ。そんなの気にする必要ないのに。」
笑う郝萌に、俺が気にするんだよ、と言い返し無理やり水筒を手渡した。
はいはい、と苦笑して水筒を受け取る郝萌。
吐けるものを全て吐いたからかもしれないが、高順の具合はすぐに元に戻った。
人前で醜態を晒したのを気にしているのか、少し落ち込んでるように見える高順だが、郝萌は少しも恥ずべきでは無いと思っていた。
人を殺したのだ。それも自分の手で。気分が悪くなって当然だ。
「あまり気にする必要は無いわ。」と言うのみだったが、その優しさが辛いような嬉しい様な、微妙な気分を味わう高順だった。

村に帰還した高順たちだったが、まだ本命の晋陽軍との戦いが終わったわけではない。
朱厳が村の外で粘っている。
すぐに伝令を出し、民間人の保護と盗賊を殲滅し終えたことを伝えた。
これで朱厳様も退かれるだろう、と思い、また出撃の準備をしていると。
「もし、そこの御仁。」
「・・・?」
呼びかけられた高順が振り向くと、先ほど村に避難した3人が立っていた。
「おや、あなた方は・・・・・・。あ、先ほどは失礼しました。名乗りもせず、その上馬上から偉そうに。俺の姓は高、名を順と申します。」
と拱手をする高順。
「いえ、そのような。助けていただいたことに感謝しております。」
と、3人は頭を下げた。
「私の姓は趙、名を雲と申す。」
「私は姓を戯、名を志才と言います。」
「私は程、名を立と言いますよ、お兄さん。」
「・・・。・・・・・・はい?」
何?と言った感じで聞き返す高順に、趙雲達も何か?と言った感じで首を傾げる。
ちょううん?ぎしさい?ていりつ?

OK。ちょっと待て。考えろ俺。
趙雲といったらあれだ。演義で蜀の五虎将か何かの人で長坂をただ一騎で駆け抜けた勇者。もうメジャーすぎるくらいメジャーな人だ。
戯志才は・・・ちとマイナーだが曹操の信頼が篤く、死後、荀彧だかに「何とか後任を探してくれまいか」と言わせるほどの智謀の人だったよな?
程立は、確か曹操のブレーンの1人で夢で日輪掲げたとか十面埋伏とかの、これまた智謀の人じゃないか。

・・・・・・もしかして、本人達?
もしかして俺、三国時代を彩った英傑を目の前にしてる?


なんか、また性別が女性だけど。

「あー・・・・・・。えー、どうしたものか。」
「???」
高順の挙動がおかしな感じになって更に首を傾げる3人。
「ああ、駄目だ。埒が明かん。・・・すいません、お三方。質問させてもらっていいです?」
「え?はぁ、どうぞ。」
「まず、青い髪のあなた。趙雲さん、ですよね?」
「そうだが、それが・・・?」
「字は子龍って言いますか?」
「何と!?何故私の字を知っておられる!?」
「本物!?じゃあ常山の昇り龍本人か!」
「何!?そんな通り名は初めて聞いたが・・・ふむ、中々の響きですな。常山の昇り龍。ふふふ。・・・良い!」
うわ、やっぱだ。ビンゴ。大当たり。
なんか常山の昇り龍っていうのが偉く気に入ったのか身悶えしてるし。
「戯志才さんは・・・あまり知りませんけど。すごく頭のいい人ですよね?策に自信があります?」
「え?ええ、すごくかどうかまでは解りませんけど・・・。それなりに自信はあります。」
おお、こっちも当たり。あとはこの・・・なんだろう、お子ちゃま?
「「おう、兄ちゃん。今ものすごく無礼な考え事しなかったかい?」と、この子が言っております。」
そう言って頭の上に乗ってる謎生物(?)を指差す程立。
「うお、ごめん。・・・えーと、程立・・・さん?あなた、字は仲徳・・・で良かったっけ。」
「おおっ!私の字まで知ってるとは・・・。お兄さん、お目が高いねぇ。」
お目が高いって何だ?と思うがそれは受け流して。
うわー、すごいよ本物だよ。丁原様初めて見たときも感動したけど。
まさかこんな有名人にまで会えるとは思わなかった。
「あの、高順殿?如何しました?」
「ふぉっ!?ああ、すいません。あなた達ほどの英傑に会えたことが嬉しかっただけです。」
「ほほぅ、我らを英傑とは・・・。お目が高い、と言いたいところですが少し過大評価ではありませぬかな?」
趙雲がにやりと笑う。
「おお、それよりも。こちらからもお聞きしたいことがあったのです。」
「趙雲殿たちから?」
「ええ。・・・何故、我らをお助けになられた?盗賊の一味であるかも知れぬ我らを。」
今までの雰囲気は何処へやら。趙雲が真面目な表情で聞いてくる。程立も戯志才も同じ疑問を持っているのか、やはり真面目な顔つきになっている。
「何故、か。まあ、簡単に言えば・・・貴方達が逃げるのに必死だったとしても、この村が今戦闘に巻き込まれてるのは理解できましたよね?」
「無論。」
「この村の物資が目的としても、軍勢がぶつかり合ってるときに好き好んでやってくる盗賊はいない。そう思いませんか?」
「それは確かに。」
「そんな状況でも村に向かってくる。それだけ貴方達が追い詰められていると思っただけです。たとえ戦闘に巻き込まれるとしても、賊に捕まるよりはまだましだ、ということかな?それに。」
「それに?」
「賊がらみとかで困ってる人々を助けるのが官軍の仕事でしょ?誰も彼にも手を差し伸べることが出来なくても、少しくらいなら。自己満足もいいところなんですけどね・・・。」
高順は苦笑して人差し指でこめかみの辺りをぽりぽりとかいた。
「主君にもその甘さを何とかしろ、みたいなことを言われたのですが・・・。性分でして。」
俺みたいなのはなんて言うのかな。ただの偽善者かなぁ。と無邪気に笑う高順。
そうして笑う彼の事を戯志才と程立は勿論、物事を皮肉に見ることが多い趙雲ですら好意的に受け止めた。
そういう人間がどう呼ばれるのか。それは趙雲達はなんとはなしに理解できたが、それは彼が自分で理解するべきことで、今言うべきことではないのだろう。
「では、皆さん。ここから先は官軍の仕事です。3人とも、安全・・・は無いかもしれないですが、戦闘が終わるまで村の中で待っていてください。」
「お待ちを。私達もお手伝いいたします。」
「そうですね~。戦力比がどの程度のものかは知りませんけどー。私達もお手伝いできると思いますよ~?」
「左様。高順殿。我らも戦列にお加えくだされ!」
と、三者三様に頼み込む。
だが、高順は首を横に振った。
「駄目です。少なくとも今は。」
「高順殿!」
「さっきまでずっと走り続けてお疲れでしょう。それに俺には貴方達を戦列に加えるとかそんな権限が無いんです。ただ、気持ちだけは受け取っておきます。」
「ですが・・・。」
戯志才がなおも言い募るが、議論するつもりは無いとばかりに高順は頭を下げ、周りに待機していた兵達に出陣する旨を伝えた。
その言葉に兵士達は騎乗し、持ち場へと駆けて行った。
「・・・。どうします、星ちゃん?」
「決まっておろう?我らは我らのやりたいようにするさ。ふふっ、楽しくなってきたな。」

そのころ、朱厳たちは――――

「ぐわぁあぁっ!」
朱厳の双剣で切り裂かれた晋陽兵が悲鳴を上げる。
「ほっほっほ。この程度かの?」
余裕の体で朱厳は笑う。
その朱厳の前には重症、軽症、そして死亡したもの。
数十人の晋陽兵が転がっていた。
上党兵も晋陽側に比べれば数は少ないものの、錬度と士気の高さによって善戦していた。
幾人かは倒れ重軽傷を負っている者もいたが、尚士気は衰えることなく戦い続けている。
「く、くそぉ・・・。やっぱ、あいつら上党軍かよ?」
「じゃあ、本物の朱厳様なのか・・・?」
「冗談じゃない、勝てるわけ無いぞ・・・!」
「俺はやだぞ、なんで上党軍と戦わないといけねーんだ!」
何人かの兵が自陣に向かって逃げていった。
それに釣られるように更に多くの兵が武器を捨て逃亡し、または降伏し・・・遂には先鋒部隊全体が士気を喪失。完全に瓦解していったのだった。


~~~晋陽軍~~~

「将軍!先鋒部隊500が壊乱!」
「な、こんなに早く!?しかも壊乱とは・・・!」
時間を稼ぐことも兼ねて同数の兵を当てたのだこうも早くとは・・・。あと少しで突撃準備が整うというのに。
これでクソ太守も余裕が無くなるだろう。コレまで以上にせっついて来るだろうな。
しかし、上党軍と戦って勝てるか?
彼らの被害はほとんど・・・?
何だ、村へと退いて行く・・・。朱厳様は何を考えてるのだろう。
我々を村に引き込んで叩くというのか?
しかし、ほとんど被害を出していないのに退くとは。
いったい何を考えている?
そこへ、また伝令が駆け込んでくる。
「将軍!後方から進軍してきた部隊ですが・・・。」
「何だ、どうした。」
「その部隊を指揮する方が将軍にお会いしたいと。」
「ふん、どうせ早く攻撃しろ、というお達しだろうが。」
「・・・解っているなら早くしていただこうか?」
「・・・・・・入って良いとは一言も言ってないのだが?」
いつの間にか陣幕に1人の男が入って来ていた。
真っ赤な鎧に、嫌らしい笑みを浮かべた頭の禿げ上がった男だ。
名前までは覚えていないが武の才に恵まれており、それを普段から自慢し続けてるいけ好かない奴だ。
武将としては自分より格下も格下なので言葉遣いに気をつける必要も無い。
「太守殿は早く攻撃しろ。と仰っておられるのですぞ?」
「言葉に気をつけろよ貴様。貴様に指図を受ける覚えは」
それ以上彼は言葉を口にすることが出来なかった。いや、出来なくなった。
目の前の禿げ男の突き出した剣に胸を刺し貫かれたからだ。
「ぐぶぉお・・・き、きさ、ま・・・」
「まったく、五月蝿い男だ。やれと言われた以上とっととやれば良かったんだよ。」
剣を引き抜く。将軍はそのまま血反吐を吐きながら倒れ伏した。
「しょ、将軍!?なんという事を!」
「おい、そこのお前。将軍殿は名誉の戦死を遂げられた。指揮権は太守様の命令により俺が引き継ぐ。用意が整い次第全軍突撃だ、兵士どもにそう伝えろ。」
「くっ・・・。」
「とっとと行け。それともお前も名誉の戦死を遂げるか?えぇ?」
わかりました、と憎憎しげに呟いて兵士が陣幕を出て行く。
その態度に多少腹を立てた禿男だったが、すぐに気を取り直した。
ようやく機会が回ってきたんだ。のし上がるためにこの状況を利用してやる、と。
彼は解り易いくらいに権力というものを妄信する男だった。
男は自分が新たな将軍であると触れ回った。
そんな彼を兵士達は「自称将軍」と、平気で陰口を叩くのだった。



~~~上党側~~~

「よし、こんなものじゃな。退け!」
朱厳の指示の下、兵士達は負傷者を収容し村内部へと退いていく。
高順に騎兵を預けたものの、出番が来る前に終わってしまったようだ。
まず、初戦は大勝利といって良い。
これで退けば晋陽側も「何故有利なのに退くのか?」と思うだろう。
元々戦意が高くない上、自分達の任務に疑問を抱いてる様子だ。
このまま時間を稼げればそれで良し。朱厳はこう考えた。
この時点での彼の思惑は成功していたし、晋陽側の混乱までは知る由が無かった。

そして同じ頃、数日前に張牛角を斬った丁原がこちらに向かっていることを知る者もいなかった。

~~~褚燕の村~~~

「朱厳様、ご無事でしたか!」
「当然じゃ。あの程度のこと造作も無いわ。」
喜ぶ高順とそう言って笑う朱厳。
「申し訳ありません、盗賊を片付けるのに時間がかかってしまいまして・・・。」
「なぁに、構わぬ。今日に限って言えばお主らの出番が来る前に終わってしまったからの。」
出番を取ってしまって悪かったの、朱厳は笑う。

村の中に兵士を収容し終えた朱厳は「まずは良し」と考えた。
夜も更けた頃、部隊の主だった者を陣幕に集め次の策を練る。
時間を稼げば良いだけだし、晋陽側もどうも戦意が低いのか積極的に攻めてこない。
今現状で言えば兵力もこちらが負けてはいるものの、守るだけならば問題はないだろう。
そう考え、さてどうするか、と考え始めたところに伝令が朱厳のもとまで駆けて来た。
「朱厳様!」
「おう、どうした?」
「先ほど放った斥候より急報!「敵に援軍あり!」。その数・・・1500ほど!それと・・・指揮官が変わったと。」
「む・・・。1500?しかし指揮官が変わったとは。どうしてじゃ?」
「その、援軍として派遣された将が先ほどまで我々と戦っていた将軍を殺したとか・・・まだ詳しいことまでは解りません。」
回りの者も多少は驚いた顔つきになる。
「それが本当であれば・・・少々見くびっておったかな?このような強硬手段に出るとは。これで敵の軍勢が3000ほどにまで膨れ上がったしまったか。」
「こちらも被害が無かった訳ではありませんし・・・。今戦える兵士は輜重隊の方々も総動員して1100程度ですか。」
今回の戦いで上党側の兵も100人ほどが死傷していた。
全員が全員戦えぬわけではないが、無理をさせることも出来ない。
「この村に砦並みの堅牢さを期待することは出来ません・・・。指揮官が変わった以上、積極的に攻めてくるのは眼に見えている。村人にも戦ってもらわなくては。」
「村の人々まで前線に出すのか?それは・・・。」
誰かの言った言葉に反対しようとする高順だが、それを朱厳が手で制する。
「高順よ、お主の気持ちは解らんでもない。しかし、時と場合を考えるのじゃ。村人を巻き込むのは得策とは言えぬがな。その当たりはまだまだ若いの。」
「ぬぅ・・・。」
確かに朱厳の言う通りである。
朱厳自身も村の人々を盾にして戦うつもりは無いようだが、この戦力差はかなり大きい。
今日の戦いは相手が様子見をするような感じだったのであっさりと勝てはしたが、全軍で攻め込まれれば・・・。
守りきれないかもしれない。さて、どうするべきか。
皆が腕組みしたところで兵士が陣幕に入ってきた。
兵士が一礼し、朱厳に報告をする。
「朱厳様。褚燕様がお越しになられました。お会いになられますか?」
「ふむ、褚燕殿が?よし、お会いしよう。」
はっ、と返事をした兵士が陣幕の外へ出て誰かに、どうぞ。というのが聞こえた。
そして陣幕に褚燕と・・・3人の少女が一礼し入ってきた。
その3人を見た恭順が驚く。
「・・・趙雲殿?それに戯志才殿に程立殿まで!?」
「何じゃ?知り合いか?」
「はい、盗賊たちに追われていた方々で・・・。」
「朱厳様、皆様。このような時間に失礼いたします。実はこの方々がどうしても、と。」
褚燕が言葉を切り、趙雲達がその場で跪く。
「私は姓を趙、名を雲と申します。賊から助けて頂き、感謝しております。」
戯志才も程立も名乗り、感謝の意を伝える。
「この方々が何故このような戦いをしているのかどうしても知りたい、と仰るのでお教えしたところ、義勇兵として参加させて欲しいと申しまして。」
「民を守る立場のものが民を苦しめる。そのような暴挙、許しがたし!」
「どうか、我らも参加させていただきたい。」
「皆さんの力になれると思いますよー?」
褚燕の言葉に続き言い募る趙雲達。
朱厳もふうむ、と唸りどうしたものかと考える。
義勇兵はともかく、彼女達の腕を知らないのだから何とも応えようがないのだが。
「それがしは槍の腕に多少の自信がございます。戯志才と程立は智謀の士。必ずやお役に立って見せまする!」
趙雲が尚も続ける。
「うーむ。」
「多少、ではなぁ・・・。」
「それに、あの程立とやらはまだ子供ではないか。子供に何が・・・」
上党の兵たちもぼそぼそと疑問やら何やらを口にし、不安そうな表情をする。
だが、3人は特に表情を変えるわけでもなかった。
正直こんな扱いは慣れている。
女の分際で、とかそんな事は言われなかったがやはり大抵の人は疑ってくるものだ。
やはり、認められることは無いのだろうか?
我々のような流れ者がいきなりこんなことを言っても信用はしてもらえないかな、と趙雲が自嘲的な思いに駆られるが・・・思わぬ援護が入る。
「良いのでは?」
「高順殿・・・?」
後押しする高順を3人が不思議そうな顔で見る。
「高順、お主は彼女らの実力を知っているのか?」
「ええ、知っています。趙雲殿と言えば幽州随一の槍の使い手と聞き及んでいます。戯志才殿も程立殿も智者としてその名を幾度か。自分達から手を貸すと言って下さってるのですから断る道理はありません。」
その言葉に朱厳はまたも、ふうむ、と唸る。
正直、今の状況ならば一人でも多くの兵士が欲しい。問題は趙雲達の実力を知らないということだが・・・高順は必要とあらば嘘をつくが必要ではない嘘をつくような男ではないことを朱厳は知っていた。
「・・・そうじゃな。村人にも力を貸していただこうというのに断る必要も無いな。では、お三方。参加を認めましょう。」
「感謝いたします!それと、1つ我侭をお許しいただきたい。」
「我侭?」
「はい。それがしは・・・高順殿の下で戦いたく思います。他2人は策で貢献いたしますゆえ。」
「ちょ、ちょっとお待ちを。」
趙雲の言葉に高順は慌てる。
「俺の下、と言われても俺は指揮権のない兵士ですよ?それを」
「それでもです。高順殿に命を助けていただいた恩があるのですから。今度は私が命をかけて高順殿をお守りいたします。」
「・・・・・・。」
何故か郝萌が高順を思い切り睨み付ける。
そして何故か回りの者もニヤニヤとする。

俺、何も悪いことしてないよね・・・?

「・・・あー、じゃあお願いしますね、趙雲殿。戯志才殿も程立殿も無理をなさらぬように。」
その言葉に満面の笑みを浮かべる趙雲達だった。

こうして、一時的にではあるが趙雲達が共に戦う事になったのであった。



~~~陣幕の外~~~
「高順殿。」
軍議が解散され、陣幕から出た高順を趙雲が呼び止める。
「なんです、趙雲殿。」
「ふふ、あなたもお人が悪い。昼は出しゃばるなといい、今は我々が参戦することを後押しとは・・・。」
「ああ・・・そうですね、悪いと思ってますよ。」
高順は苦笑する。
「ただ、昼と夜でこうも状況が変わるとは思わなかったので。正直、お三方が手伝ってくれると聞いて驚きましたよ。」
「ほう、我らが恩義を返さぬままどこへなりと去っていくような者に見えたと?」
「意地悪だなぁ・・・。そんなじゃないですよ。」
「では、どのような?」
「簡単に言えば・・・あなた達のような英傑と肩を並べて戦う事になるとは。と、そんなところですよ。」
高順はしごく真剣な表情で言う。
「・・・ふ、あっはっはっはっはっは!!!」
「ど、どうしました?」
「くっく・・・英傑云々は先ほど聞きましたが。そこまで期待されているとは思いませんので。・・・ふふふ。」
「別に笑わなくてもいいじゃないですか・・・。」
「・・・正直、感謝したいのはこちらです。」
さきほどの高順か、それ以上に真面目な表情で趙雲が応える。
「我々は幾度も同じような状況を見たことがあります。たとえば盗賊に悩まされ、山賊に悩まされ、泣き寝入ることしか出来ない人々の苦しみ。」
「・・・。」
「そんな人々を助けるためにこの槍を振るい、力を尽くそう。そして仕えるべき主君を探そう。そう考えて旅をしているのです。ですが誰も・・・私のような女のことを最初から打算無しで信頼し、仕事を任せようとしてくれた人などいなかった。高順殿、あなたを除いて。」
「俺だけ、ですか?」
「はい。故に、あなたの言葉が嬉しゅうございました。あなたの期待に応えたいと思ったのです。恩を返すというのも理由ですが・・・」
「・・・そうですか。」
「もっとも・・・誰でも彼でもそうやって信じようとなさる部分はまだ甘いですかな?」
そう言ってまた笑う趙雲。
いや。この甘さこそが彼たる所以なのだろう。
趙雲はこの甘さは嫌いになれそうにないな、と思う。
「ぬう・・・。」
「ふふ。それでは私はこれにて失礼いたす。明日からよろしく。」
「ええ、こちらこそ。」
高順に拱手し、趙雲は待たせていた戯志才・程立と共にしばらくの間宿として使用させてもらえるようになった褚燕の館へと歩いていく。
「星ちゃん?」
「ん?何かな、風殿?」
「なんだか嬉しそうなのです。」
「ふむ、私にもそう見えますね。予想はつきますけどね。」
「ふっ、ならばその予想が当たったと思えば良いさ。」

趙雲は空を見上げる。
自分の旅は弱き者を助けるために。そして乱世を鎮める主君を見出すための旅だった。
それほどの大器を持つ者は未だに目の前に現れてはいない。


だが思う。自分が仕えたいのはどこかの太守や王なのか?
否。一武将でも良いのだ。
歴史に名を残したいとか表舞台で戦いたいとか、そんな野望は持ち合わせていない。
自分の仕える存在が、どこかの誰かに仕えていても構わない。
自身の使える何者かが乱世平定の原動力たる者であれば。

趙雲は高順の優しさ、いや、もうどうしようもないほどの甘さに何か感じ入るものがあった。
彼のような手合いは、太守とか政治的な意味で人の上に立つ立場には絶対になれないだろう。
なったとしてもあの甘さを誰かに利用されて潰されるのがオチだ。

だが、あの甘さ。嫌いではない。
まだ将としての実力自体は解らないが・・・もし、あるのなら。その力がこれからも伸びるのだとすれば。
彼が将たるものとして一皮向ければ。
高順という男を自分の可能性の1つとして考える。

「・・・ふふ。面白い出会いがこうも立て続けにあるとは。この2人に出会い、高順殿と出会い。世界というものは本当に広い。」



その呟きは誰にも聞かれること無く、中空に溶けていった。







~~~楽屋裏~~~
どうも、うp主のあいつです。
いやぁ、またやってしまいました。
新しい武将。つうても実在の武将ですけどねw
郝萌なんてマイナー武将誰が知ってor覚えてるやら。

つか、晋陽ネタいつまで引っ張るんだ自分。
文才が平凡以下だからいつまでも長くなってしまうのでしょうね(遠

ご意見、ご感想、お待ちしておりまする。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第6話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/19 20:28
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第6話



「しっかし、この作戦で上手くいくのかなぁ。」
郝萌がそんなことを口にする。
「なんだ、まだ不満があるのか?」
「そりゃあねぇ・・・ぽっと出の・・・戯志才と程立だっけ?いきなり指図されるような形になったしぃ・・・。」
「良いじゃないか。それで生き残れるかもしれないんだからさ。」
不満を口にする郝萌と、それを宥める高順。
彼らの今いる場所は褚燕の村より東・・・いや、どちらかと言えば東北になるか・・。2里ほど離れた丘のすぐ近く。
丘と言っても「小高い」程度で、周りが岩場になっている。
徒歩の盗賊から徒歩の趙雲達がなんとか逃げ切れたのは、こういった大人数が一度に通りにくい場所を利用したからだ。
それがこんな形で役に立つとは高順は勿論趙雲達も思いもしなかっただろう。
今この場所には彼らのほかに騎兵200ほどと輜重隊100ほどが待機している。その中には趙雲もいる。
あれからすでに3日が経過していた。
本来ならすぐに晋陽軍の総攻撃が始まっていたのだろうが、それが遅れていた。
そうなった理由は戯志才と程立の立てた作戦。

彼女達の策は単純なものだった。
まず、最初の戦いで捕虜にしていた晋陽兵に偽情報を掴ませて帰陣させる。
その内容は「近日中に丁原が軍勢を率いてここに来る。」という、ただそれだけ。
明確な日時も解らなければ、どれだけの兵士を率いてくるかも解らない。
自分達に攻撃を仕掛けてくるのは解りきっていることだが・・・これを知らされた晋陽兵士は混乱した。
更に追加で「丁原が朱厳に伝令を出していた。内容は「自分が着陣するまでに降伏したものは許す。降伏しなかった者は全員殺す」という苛烈なものだ」という内容の情報。
これだけでは終わらない。
「黒山賊は既に丁原が殲滅した」とか「すでに晋陽に攻め入ったらしい」とか、嘘か本当か判別しにくい情報まで流す。
これらの情報で更に晋陽側は混乱をした。
指揮官が不当な交代をし、更に色々な情報が飛び交い何が嘘で何が本当かわからない。
実は高順たちも丁原が実際にこちらに向かっているということを知らなかった。
すぐそこまで伝令が向かってきており、朱厳もその情報を知るのはこの後である。
なので黒山賊が殲滅されたのは事実だが・・・それを知る者は丁原と、彼女の率いる軍勢だけだった。
そういう意味では戯志才と程立の流した偽情報は全て「嘘」だったのである。

そして、その日のうちに彼女達は足の速い騎兵全てと、歩兵としての輜重隊50ずつを村の外へ出すことを提案してきた。
勿論夜影にまぎれて、である。
まず、輜重隊50と騎兵200を村の東側、つまり高順たちの今いる場所に少しずつ送る。
この場所は村からでも見えにくい場所だ。
村人が、逃走していた趙雲達を発見するのが遅れた理由もそこにある。
そして斥候を放ち、村の西側に同じように隠れる場所が無いかどうかを探す。
もしあったらそこにも輜重隊50と騎兵200を同じように配置する。
運よく西側にも同じような場所があったが、東側よりも位置が遠いのが問題だった。
だがその問題は朱厳本陣の奮戦でなんとかなる、と戯志才達は考えた。
朱厳率いる歩兵500と村人500で村の南に下がり応戦。
その途中には多くの罠がある。
侵入してくる可能性は低いと思うが、東と西の入り口を封鎖。北からのみ侵入できるようにもって行けばいい。
その裏工作をするのは褚燕と彼女の個人的な部下達だ。
褚燕はその時まで喋らなかったが、彼女の言う「個人的な部下」は彼女の一族に古くから仕える人々で、個人戦闘力はそれほどではないが密偵・撹乱など裏の仕事で高い能力を発揮する人々らしい。
本格的な戦になった場合にのみ使おうと決めていたらしいが、それが今だと判断したのだ。
褚燕自身も本来はそういった戦い方をする手合いである。
何度かこちらへ放たれた斥候を排除するのも彼女達がやっていたらしい。
残りの輜重隊100と負傷者、そして村の非戦闘員は既に南に向かっている。


そして、晋陽側というと・・・軍団長が交代したことと色々な情報に惑わされて逃亡する兵が後を絶たなかった。
武器を捨て、上党軍へ降伏した者も少なくない。
こういう事態では統率する者の技量と、兵士達が将を信頼しているか否かが分かれ目となる。
武の才に恵まれていても、凶暴なだけの力自慢では統率力など無いに等しい。
逃げようとする兵士を斬り捨て、見せしめにしたが余計に兵士達が逃げるだけの状況に陥った。
そのために当初は3000近かった兵士も3日経った頃には2500程度にまで減っていたのだった。
そこに追い討ちがかかる。
夜中、多くの兵士が寝静まる中で放火騒ぎが起こった。
褚燕の「個人的な部下」が侵入し、陣幕に手当たり次第に松明を投げ込んでいったのだ。
将軍の陣幕にも投げ込まれ、すぐに消し止めたものの・・・ただでさえ低い士気が更に低下した。
このままでは埒が明かない。日を置けば置くほど不利になる。
そう考えた「自称将軍」は明朝、どのような状況であろうと全軍で突撃することを通達。
兵士達も渋々といった感じで持ち場につき始めたが・・・戦意など何処を探しても無かった。

そして、夜が明ける。
褚燕の村と晋陽軍本陣の距離は約3里(1・3km前後)。その間には何1つ邪魔をする物は無いただの平地だ。
「自称将軍」はおそらく、村に本隊が待ち構えているだろうと予測した。
晋陽軍から見て南一直線に褚燕の村。南東、南西は岩場があり、そこに勢を隠しているだろう。
特に南西側にはこちらから見て、小高い丘がある。村に攻め寄せれば東西から出撃して攻め込んだ部隊を挟撃しようというのだろうが・・・。
どうせ、向こう側はこちらより戦力が少ないのだ。村の人間を動員したとしてたかが知れている。
不審なのはこちらから放った斥候が誰一人帰還していないことだが・・・まあ良い。
全戦力で攻め、1人残らず抹殺してくれる。

晋陽軍2500、全軍が布陣する。
「いいか、貴様ら。この戦いに勝てば褒美は思いのままだ。太守様も大層お喜びになるだろう。前任の無能と俺が違うことを見せてやる!・・・男は皆殺しにしろ!女は好きにしろ!行け!進めぇっ!」
この言葉。賊とどう違うというのか。兵士達は鬨の声を上げるが・・・・・・こんな言葉で戦意が出るはずも無かった。
「全軍突撃だーーーー!」
威勢がいいのは自称将軍ただ1人。

「来たか・・・!」
晋陽軍が突撃を開始した。
2500程度とはいえ、流石に迫力がある。岩場に隠れていた高順達に気づいているだろうが、こちらには一兵も攻めてこないようだ。
おそらく、西側にも兵を寄越さないだろう。朱厳率いる本隊にのみ焦点を絞ったということか。
「ふっ、読みとしては悪くない。悪くないが・・・我々を甘く見すぎているようですな。」
晋陽軍の突撃を見守る高順の後ろから趙雲がそんな感想を漏らした。
「伏兵に気づいているのならまずそちらを優先して叩くべきでしょうに。そう思いませぬかな?」
「そりゃあね・・・。全軍で一気に落とす、というのも悪くないとは思うけど。どうにも向こう側の戦意が低いし、動きも遅い。本気で戦おうとしてるの、1割もいないんじゃないか?」
もし本気で村を落とすのなら進軍速度も速いだろうし、こちらにも兵を派遣するだろう。
派遣しないとしても、指揮官に誰かが諌言するはずだ。誰も何も言わなかったのか。それとも回りの意見を聞こうとしない無能なのか。
「どっちにしても。」
2人の間に割り込むかのように郝萌が話しかけてくる。
「向こうの指揮官が無能でこっちが助かるってだけよ。」
「ははは、確かに。」
郝萌の言葉に趙雲がさもありなん、といった感じで笑いながら頷いた。
「戯志才と程立だったっけ。あの人たちの策がこうも簡単に決まるとも思ってなかった。大したもんよね。・・・高順、そろそろ攻め込むべきかな?」
「いや、まだだな。まだ敵全軍がこの岩場を越えていない。まだ時間がかかるさ。・・・っておい。」
「何よ?」
高順の言葉に郝萌が首を傾げる。
「今回、この部隊を率いるのは郝萌だろ。何で俺に聞くのさ?」

そうなのだ。
今回、部隊を率いるように言われたのは郝萌である。
前に高順が部隊を率いたから次は郝萌。というわけではなく、これは丁原親衛隊に所属するものなら誰もが通る道だったりする。
今回のこの戦いで朱厳に従う形で残された親衛隊は約半数。
親衛隊に所属すると最低でも1人1回は小規模ながら部隊指揮をさせられるのである。
これは丁原軍の武将、人材不足が顕著であるというのが原因だったりする。
彼らの為でもあるし、主君である丁原、あるいは副将である朱厳がいればいいが、両者共にいない場合親衛隊が部隊の指揮をしなくてはならないのだ。
そういった状況でも自分の意志で動けるように。少しでも早く慣れさせよう、と言うのが大きな理由だった。

「えー、別にいいじゃない?周りの人の進言にも耳を傾けるべきなんでしょ?」
「いや、そりゃそうだが。趙雲殿とか他に人がいるでしょ。」
「なーによ。さっきから趙雲殿趙雲殿ってー。そんなにあたし頼りにならないー?」
「なんでそういう話になるのさ!?つかその言い方じゃ俺が趙雲殿にべったりな感じになるだろ!」
「違うの?」
「違うわー!」
「ふふふっ、二人とも。私の取り合いも結構ですがその前に為すべき事がありますぞ?」
「「取り合ってない!!」」
「おやおや、つれませんなぁ・・・。」

こんな頭の緩いやりとりをしている3人だった。

朱厳率いる部隊は良く戦っていた。
正面で戦う朱厳が強かったのもあるが、兵たちも槍衾を展開し敵を寄せ付けない。
火矢を使ってくるものもいたが、弓が得意な兵と村人の混成部隊で優先的に仕留めていく。
何より褚燕とその部下による戦闘の効果が高かった。
褚燕はともかく、部下達は戦闘力自体は然程高くない。
彼らはそれを補うために上党軍から弩を借り受けていた。
村の構造を熟知している彼らのゲリラ戦法で、少しずつ、だが確実に晋陽兵が討たれていく。
また、褚燕自身の戦い方も晋陽兵にとっては恐怖の的だった。
褚燕は流線型手甲をつけておりそれが彼女の武器なのだが・・・どちらかと言えば、関節技を多様していた。
それも確実に殺す関節技。首を「へし折る」のである。
手甲で攻撃をそらし、殴りつけ、ひるんだところに掴みかかり首を折る。
腕や足の関節を極め無効化することもあったが、見せしめに首を折り戦意を鈍らせようという考えである。
まだ幼い少女がそんな戦い方をする。晋陽兵は恐怖した。
一進一退の戦いをしているように見えるが、攻めている側の晋陽兵が逆に押される場面も少なくない。
どちらがどう有利かもわからぬまま戦いは続いていた。

今村を攻めている晋陽兵は2200ほど。
「自称将軍」は供回り300程度と共に本陣に控えていたが戦況が一向に有利に傾かないことを理解したのか、自分自身が出撃しようとしていた。


「高順殿・・・。敵本陣が動きましたぞ。」
趙雲が高順に呼びかける。
「こちらでも確認しましたよ・・・。郝萌、そろそろ動く時間だぞ。」
「う、うん・・・。」
「なんだ、自信ないのか?」
「うん・・・。だってさ、あたし達が突入時期誤ったら、って思うと・・・。皆の命預かってるって立場だし。」
「大丈夫だって。俺達が突入したら西側のほうも突撃を開始する。見たとこ本陣の兵士はそう多くない。村からも幾ばくかの部隊が反転してくるだろうが・・・それまでに大将討ち取ればいいだけさ。」
「そうですな、どうもやる気があるのは敵大将のみ。残りは無理に戦わされているようですから・・・敵将を討ちさえすればすぐに終わるでしょう。」
「そういうこと。」
それで終わる。心配するなって。と郝萌の肩をぽんっと叩く。
「・・・そっか。わかった。やるだけやってみる。」
「その意気だ。・・・そろそろ部隊に号令かけときなよ?」
「うん。」
返事をして、伝令を走らせる。
「ふふ、お優しいですな?」
「そーかなぁ。普通ですよ?」
「いやいや、戦場であのような心遣いをなさるとは。ただ、私から見れば少々甘さが過ぎますかな?」
「いま戦闘中ってわけでもないですしね。流石に斬り合いしてるときには無理。」
「ははは。まあ、その甘さ・・・私は嫌いではありませぬな。ただ、ご注意を。高順殿がお優しいのは理解いたしましたが・・・その甘さがいつの日か御自身の身を危うくするやもしれませぬ。どうかご注意を。」
「わかってますよ。まだ死にたくありませんしね・・・。」
なら軍人にならなきゃ良かったんだけどね。こんな時代だ。戦いから無縁な場所なんて少ないだろうし。
それを知ってるから母上も父上も俺を鍛えてくれたのだろう。
武将として強くなって・・・徐州で起こるだろう戦を引っくり返せば。もしかして、とは思ってるんだけど。
よく考えたら俺が呂布に仕えるかどうかすらわからんし。まだ上党にいないみたいだし。実際のところはまだまだわからんのだよなぁ・・・。
それ以前に死ぬかもしれんし。
「こーじゅん?こーじゅんてば!」
「ひょわっ!?」
「何呆けてんの?そろそろ出撃なんでしょ。気合を入れて、ほら!」
そう言って郝萌が高順の背中をばしばし叩く。
「そうだな・・・俺もまだまだ死にたくないし。」
そのために人を殺さなければならんのは嫌だけどね。


自称将軍は怒っていた。
その怒りは自軍の兵士に対してのものだ。
彼に言わせれば「俺が直々に指揮してやってるのに、何故あんな小さな村1つ落とせんのだ!!」である。
指揮と言ってもただ突撃ーと言っただけだし、自分は300ほどの兵に囲まれているだけなのに。
現在村を攻めている晋陽軍は彼が連れてきた1500の兵士含め2500ほど。
だが、その1500も最初からやる気が無い。
軍全体が「こんな戦やりたくないよ・・・」と、そういう考えなのだが彼にはその辺りがよくわかってないらしい。
この数日間、周りで待機している兵も彼の乱暴さや喧しさに内心辟易としている。
(早く上党軍攻めて来ないかなぁ、そしたらこいつ置いて逃げるのに)とか思うほどに。
「ええい、もう良い!俺が敵将の首を直々にあげてやる!」
そうなれば兵士も発奮するだろう、とか叫びながら単騎で突撃しようとしていた。
周りの兵も内心うんざりしながら、嫌そうに馬を駆けさせたのだった。


来た。
高順は内心で敵将軍の頭の悪さに感謝していた。
全軍突撃から数時間が経過していたが、晋陽軍は村側の守りを崩せないでいた。
戦術としては悪くないのだが・・・自軍の統率も取れず、士気も上がらない状況で突撃したところで良い結果が出るとは思わない。
その上こうも簡単に本陣を前方に動かすとは。
「郝萌、あと少しだ。号令をかけるのはお前だ、しっかりな?」
「わかってる・・・!」
晋陽軍があと少しで自分たちの目の前を通り過ぎる。
あと少しだ。郝萌が心の中で数える。
4・・・3・・・2・・・1・・・

「今っ!突撃っっっ!!!」
郝萌の号令を合図に上党騎馬隊200と歩兵(輜重)50が飛び出した。

その突撃は移動している晋陽本陣からも見えた。
「しょ、将軍!東より上党軍です!!数はおよそ200ほど!」
「うるさい!見ればわか・・・」
「西からも上党軍が現れました!その数200・・・?いや、もっと多い!?」
「な、何っ・・・?400だと!?こちらよりも数が多い!くそ、退くぞ!貴様らは敵を食い止めろ!」
「そんな、無理です!」
「俺は将軍だぞ!貴様らは俺を守るのが仕事だろうが!?」
「くそ、やってられるか!」
「俺はもう嫌だ!降伏する!」
「な、逃げるな!戦えい!」

郝萌・趙雲・高順が先頭を走り、その後ろを二百数十の兵が追従していく。
歩兵は少し離されているものの良くついてきている。
誰の眼から見ても目の前の晋陽軍は混乱しているのが解った。
もっとだ、もっと早く!もっと疾く!
あと少しで弓が届く位置だ。郝萌が隣で「弓、用意!」と叫んでいる。
その声にあわせ、趙雲と高順は同じタイミングで弓に矢を番えた。
狙いは一本。敵将のみ!
「・・・斉射用意!放てーーーっ!!」
その言葉に従い騎兵部隊は矢を放つ。
一寸遅れ、「向こう側」の上党軍も矢を撃ち始める。
その射撃で晋陽軍の右翼・左翼共に数人の兵が倒れる。
高順の放った矢も将軍の側にいた兵士の肩を射抜いていた。その場に倒れたがまだ死んではいないようだ。
「ちっ、狙いを外したか!」
「ふむ、私も外してしまいましたな。」
趙雲も外したらしく、少し残念そうだった。
(やっぱ、鐙いるかな・・・。重心がうまく取れんから狙いが・・・。って、そんな場合じゃないな!)
「高順殿!奴らの動き、少しおかしくないか!?」
「どこがおかしい・・・って、ん?」
高順は何が?と思っていたが、確かに何かがおかしい。
戦闘を走っていた将軍の周りの兵が我先に逃げていく。
踏みとどまろうとしているのは20人もいない。
何かの策か?と思ったが・・・どうも、本気で逃げてるようだ。
「・・・趙雲殿。あれはおかしいというか単純に逃げてるだけでは?」
「ふむ、やはりそう見えますかな?」
ならば、と思い高順は側にいた郝萌に声をかける。
「郝萌!予定通りに行くとは思わなかったが・・・。」
「ええ、敵将のみに狙いをつける!皆、行くわよっ!」
「ああ!」
「心得た!」
郝萌の号令に従って上党兵が逃げ惑う晋陽兵を無視して将軍に突撃を仕掛ける。
向こうも逃げられないと悟ったかこちらに向かってくる。
「郝萌!抜かるなよ!?」
「言われなくても!」
言いつつも高順は弓を構え、矢を放つ。
その矢がきっちりと敵兵の首を射抜く。
首を射抜かれた兵は「ぐがぁっ」と呻き、馬から落ちていった。
射抜かれた時点でもそうだが、このような人馬入り乱れる乱戦時に馬から振り落とされれば助かることは無いだろう。
(くそっ・・・やっぱ、気分のいいもんじゃないよな・・・。)
前に人を死なせたときのように吐き気が襲ってくるということは無かったがそれでも複雑な気分だった。
「・・・!高順殿!」
「え?って、おわっ!?」
隣を走る趙雲の槍が高順の目前を薙ぎ払う。
カキィッ、という音と共に一本の矢が折れ、弾かれた。
「注意不足ですぞ!」
「あ、ああ・・・助かりました。」
危ないところだった。もう少しで今自分が死なせた兵士と同じ運命を辿るところだった。
「どれだけの腕を持とうと、油断は死に繋がる。ゆめゆめお忘れなきよう。」
「ええ、感謝します。」
その言葉に笑顔で返し、趙雲は自分に突撃してきた敵騎兵を一撃で「馬ごと」屠った。
「・・・すごい。」
「ふっ、この程度のこと造作もありませぬな。」
いや、この程度って。槍を横薙ぎしただけで馬ごと吹き飛ばすってどれだけ膂力あるんですか趙雲さん。
どう見ても10メートル以上は吹き飛んでったし。半端ない。
晋陽の兵もほとんどが逃げ、将軍を守ろうと向かってきた兵士もある程度先頭を駆ける郝萌・趙雲・高順によって討たれた。
「あまり強くないわ。これなら!」
「油断するなって!」
「油断してたのは高順のほうでしょ?一緒にしないでくれる!?」
「ぬぅ・・・。」

そんなことを言いつつも敵将が目前まで迫っていた。
どうも郝萌に狙いをつけたらしく、一直線に彼女の元へ突っ込んでいく。
郝萌も受けて立つつもりのようで速度を落とすことなく向かっていく。
「そこの女っ!この俺様と勝負しろぉっ!」
「望むところよっ!」


「でぇいっ!」
「んぅっ!」
馬のすれ違いざまに敵将が槍を突き出し、郝萌は腰に帯びた剣を抜き、槍を下から切り上げる。
馬上である上、よほどタイミングが合わなければできないような技だが郝萌は目立たないだけで優秀な武将だった。
その一撃で槍の穂先が斬り飛ばされる。
「くっ。ぐぅ・・・貴様よくも・・・」
馬首を返しながら呻き、自称将軍も剣を抜く。
郝萌も馬首を返し、さらに切り込もうとするが・・・。
その時、郝萌の馬の頭に一本の矢が突き刺さった。
「えっ!?」
馬首を返そうとしていた郝萌の馬がそのまま力を失い勢いよく倒れ、郝萌が振り落とされる。
自称将軍に従ってこちらに向かってきた兵の1人が弓で狙っていたのか。それとも流れ矢か。
一騎打ちとは言ってもまだ周りで戦いが続いていたのでそこまでは解らなかった。
「んぐ・・・げほっ!」
「郝萌!くそ、まだ誰か残っていたか!?」
郝萌は受身を取り損ねたのか背中を強打したらしい。仰向けに倒れ咳き込むばかりで立ち上がることが出来ない。
これ幸いとばかりに自称将軍が剣を振りかざし駆けて来る。
「はーっはっはっはぁっ!死ねえっ!」
「ちっ!」
高順が馬を駆けさせ、間に入ろうとするが・・・その必要は無かった。
趙雲のほうが先に動いていたからだ。
「高順殿!あなたは郝萌殿を!」
「了解したっ!」
応えつつも高順は馬の速度を緩めない。
敵の兵士がほとんど討たれたとは言え、戦うことの出来ない郝萌がいつ狙われるか解らないのだ。
高順は回りに眼を配らせる。敵の兵士がどこかに潜んでいないか。
・・・いる。馬の死体の陰に隠れて郝萌を弓で狙っている兵士が!
高順は弓を構え兵士を狙う。
(くそ、振動が大きすぎて狙いが上手く定まらないが・・・!当たれ!)
そう念じて矢を放つ。
ひゅおっ、と空気を切り裂き矢が一直線に飛んでいく。
直後、「ぐあっ!?」という叫びと共に兵士が弓を取り落とした。
仕留める事は出来なかったが、腕に当てたらしい。
充分だ、と安堵しつつ馬から下りて郝萌に駆け寄る。
「おい、しっかりしろ!郝萌!生きてるか!?」
「ぐ・・・ごほっ、勝手に・・・ころ、さないで・・・よ・・・けほっ」
「なんとか生きてるな。よし、掴まれ。」
「ん・・・あり、がと・・・」
郝萌を抱え起こし「趙雲殿は?」と向き直る。
彼女の腕ならば心配する必要は無いだろう。
しかし、もしもということはあり得るのだ。心配してもしすぎというわけではない。
だが、やはりその心配は必要が無かった。
高順が向き直ったときにはすでに趙雲は自称将軍を討ち取っていたのだ。
どんな内容の戦いだったかは知らないが、おそらく一方的な戦いだったのだろう。
もしかしたらさっきみたいに一撃で終わらせたのかもしれない。
「はぁ・・・本当おっかない人だよ。」
自称将軍に従った兵もほとんど討たれるか、無力化されたようだ。
趙雲も馬から下りてこちらに駆け寄ってくる。
汗をかいてはいるが返り血は一滴もついていない。
「あれだけの戦いで返り血なしとは。趙雲殿にとっては楽な戦いでしたかね?」
「まさか。まあ、苦戦はしませんでしたな。そんなことより郝萌殿、大丈夫ですかな?」
「え、ええ・・・ありがとう。」
「いやいや。無事でなにより。さ、戦いは終わりました。あとは兵をまとめ帰還するだけですな。」
そう言って村のほうへ向き直る。
村のほうでも将軍が討たれたのを知ったのか晋陽兵は武器を捨て降伏をしはじめているようだった。
戦いは終わったがこれからのほうが大変だ。
村の復興もある。この件での後始末もある。
さて、丁原様はどうするつもりかな。そこまで考えたところで高順は1つ大事なことを思い出した。
まだこの場所で遣り残したことがあるだろう、と。
「いえ、趙雲殿。まだあなたには1つ大きな仕事がありますよ?」
この言葉に趙雲は少し驚き、「な、何か遣り残したことが?」と返す。
「ええ、それはもうとっても大事なことが。」
「しかし・・・今私がやることなど何1つ無いような?」
「あるじゃないですか。名乗りです。」
「あ・・・。」
そう。名乗りである。
流浪の武将というのはこうやって名を上げて行く。
そうすれば武勇があるとか、或いは知略があるとかで評価され仕官する時などに有利になる。
どこかの太守の下で義勇兵として戦い功績を挙げて、名を上げ、位の高い人々との繋がりを持つ。
他の方法もあるが武官はそうやって自分にとって有利な状況を作る。
どの時代でもどんな世界でも、それは代わることの無いルールの1つだ。
趙雲は今、間違いなく功績を残したのだからここで名乗りを上げる権利がある。高順はそう言っているのだ。
「いや、しかし・・・郝萌殿が彼奴の槍を叩き切ったことが有利に働いた事実もあるわけでして。」
「それが無くてもあなたが勝ってましたよ。それで納得できないなら2人の功績にすればいいでしょう?郝萌はどうだ?」
抱えている郝萌に問いかけてみる。
「こほっ、うん、私もそう思う。って、あ、あたしも!?」
「ああ、郝萌も趙雲殿も誇れることをしたんだ。堂々と胸を張ればいいんだよ。」
「高順殿・・・。」
「ふう。ま、郝萌はこんな状態で大きな声出せないでしょうけどね。趙雲殿がやりたくないなら俺がやっちゃいます。」
「え?ちょ、ちょっと」
趙雲が抗議しようとするが高順はすう、と息を吸い込み高らかに宣言する。
「敵将!常山の昇り龍・趙子龍と上党の郝萌が討ち取った!」

その場にいた上党兵が手にしていた武器を高く掲げ歓声を上げる。
郝萌も趙雲もこんな展開になるとは思わず、あたふたとしていた。
周りの人々が歓声を上げる中、高順もまた手にした槍を掲げる。
趙雲たちが力を貸してくれた。敵の士気の低さ、行動の遅さにも救われた。
褚燕も村人達も団結して協力してくれた。上党の皆も死力を尽くして戦った。
幸運が重なった、というのが一番しっくりと来るかもしれない言い方ではあったものの。
それでも。戦いは終わった。俺達は勝てた。生きて帰る事が出来るのだ、と。



~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。
やっと序章が終わりに近づいてまいりました。
むしろこんだけ書いてやっと・・・というところに私の文才の無さがorz
さてさて、高順君はこれからどうなるのか?

まだ筆者にもワカリマセン(駄目

あと1つ。
1日2日で1話書き上げるのは流石に無茶だと思った。反省している|||orz

ご感想お待ちしております。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第7話 (なんか修整)
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/20 23:08
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第7話


丁原、十常侍との確執を深める也。





戦いが終わってから2日ほどで丁原が帰還した。
そこまで規模の大きな戦いになるとは思っていなかったようで、「治心行かせて私が残れば良かったぁぁぁっ!」とか叫んでいたが、高順達にしてみれば「勘弁して欲しい」言葉ではあった。
ただ、状況は思わしくない。というのには2つほどの理由があった。
1つ。晋陽太守であるが「お咎めなし」となったのである。それは何故か?
丁原は帰還してすぐ中央(洛陽)に晋陽太守の悪政を糾弾、並びに今回の官軍同士の戦いがどのような理由によるものか、ということを使者を通して説明をした。
だが、返って来た言葉は「お咎めなし」ただこの一言。
悪政を行い、官軍同士の戦いを招いた事実があるにも拘らず、である。
丁原も・・・いや、この戦いに関わったすべてが耳を疑うような結果だった。
むしろ、そのような戦いを行った原因が上党側にあるとまで返される始末。
洛陽からの使者曰く「黒山賊を討ち果たした功績により不問に処すが次は無いと思え。」とまで言われてしまう。
勿論丁原も、そして高順たちも怒り心頭に達するのだが・・・その使者に問題があった。
それはまた後にしようと思う。

それと、この時点では誰も知らないが晋陽太守は十常侍に莫大な賄賂を渡しており、その為にこのような形の結末になったのだ。
それを知った丁原は十常待を憎み、少しずつ確執を広めていくことになる。

もう1つ。褚燕たちの処遇について。
これが高順たちにとって一番辛い結果になった。
使者曰く「今住んでいる村を放棄させ、黒山へ帰らせる」。つまり追放だった。
勿論晋陽太守の差し金である。
それを伝える使者として赴いたのは高順だが内心「どう言えばいいっていうんだよ・・・」と、暗澹とした気持ちになったのは言うまでもなかった。
高順の言葉を聴いたときの褚燕の愕然とした表情。なんでこんなことに?と騒ぐ村人達。
幸いなのは誰1人として「上党軍のせいで」ということを口にする人がいなかったということくらいだろう。
褚燕も「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」と頭を下げてきた。
謝りたいのはこっちだというのに。
しばらくして周りの人々に立ち退きの準備を始めるよう命令する褚燕。

浮かばれないのはこの戦いの犠牲者だ。
上党・晋陽の兵士、そして褚燕の村の人々。
全部合わせれば相当数の被害が出ている。
にも関わらず上党が逆に糾弾され、被害者でしかない褚燕達には更に被害が降りかかる。
いったいあの戦いは何だったというのか。誰のための戦いだったというのか。
高順は褚燕に「何かあったら知らせて欲しい。出来る限りの力になる」と、気休めにもならない台詞しかいえなかった。
その言葉に、悲しそうな笑顔で「ありがとうございます。」と褚燕は返したが・・・。

後に高順はこの気休めの約束を果たすことになるが、この時点では両者共に知るべくも無いことだった。


そして、いい話。
これは高順や趙雲たちにとって、という程度のものでしかないのだが。
まず、高順。
丁原と朱厳率いる部隊が合流した後、若干の部隊を残して上党軍は帰還する。
帰還する兵たちの中には義勇兵として参加した趙雲達も含まれていた。
その後、上党政庁で「今回の戦いの功労者に褒美を授ける」という話になったのだが、そこに高順も出ることになった。
正直に言うと、今回の戦いは何かを得るという戦いではない。
あくまで自領内の紛争という形だ。
本来なら褒美を与えるような情況ではないのだろうが、丁原は「功績を立てたものにはそれだけの褒賞があって当然だ」と言い張りこのような運びになったのである。
今回の一番の功労者は敵将を討った郝萌と趙雲である。
郝萌はかなりの額の金子を与えられていた。
趙雲は褒美などいらないと言っていたのだが、旅をするには金が必要だろう?と丁原に諭され半ば無理やりに金を受け取らされている。
戯志才と程立は「我々は作戦を立てただけで大したことはしていない」と言い張って結局受け取ろうとはしなかった。
その後、丁原は趙雲達に仕官の話を持ちかけてみたが、これは断られた。
丁原も朱厳や高順に彼女達の活躍を聞いていたので、残念そうではあったが・・・。
「無理強いはできんしな。だが、もし何かあったら遠慮なく頼ってくれ。」と言い、これには彼女達も素直に頷いた。
朱厳や、ほかに功績を立てたものにも褒美が与えられていく。
そして、高順の番。

「高順、前へ出よ。」
丁原に呼ばれ、歩き出す。
椅子に座る丁原。その前まで進み、高順は跪く。
「高順、お前は今回少数ではあるが部隊を率いて盗賊を殲滅し、他にも数人の敵兵を討ったそうだな。」
「は。しかし、私個人の手柄ではないと思います。回りの皆が頑張ってくれただけです。」
「謙遜するな。結果を出せるように人間を動かしたのはお前だろう?謙遜は構わんがそれも過ぎれば嫌味になるぞ。」
「はぁ・・・。」
「まあいいさ。お前には・・・そうだな。これをやろう。」
そう言って丁原は立ち上がり・・・槍のようなものを高順に渡す。
槍だが、先端が3つに分かれている。三叉槍というべきだが少し形状が変わっている。
3本の刃がついているが、そのうち1本が直線的な槍の形状。1本が薙刀のような反り気味の刃。残り一本が横に伸びた刃。
この時代には無いはずであるが、高順の知識で言えばそれは(多少形状が違うものの)間違いなく「戟」という武器だった。
「これは・・・?」
「黒山賊を討伐した時に首領の張牛角が持っていたものでな。振るう前に本人が死んでしまったのだが。中々いい武器だろう?」
いや、討伐した賊の首領が所持してたって・・・嫌がらせですか?
そんな気持ちがそのまま表情に出ていたのか、高順の顔を見た丁原が噴出した。
「ぷっ・・・くくく・・・。いや、そんな顔をするな。縁起が悪いとかそういうわけでもあるまい?しかし、面白い顔を・・・くっくっく・・・」
この人絶対Sだ・・・いや、前から知ってるけど。
「ふふ、まあいいさ。その武器・・・たしか、三尖刀と言ってたかな?どう見ても戟なんだがなぁ。ま、呼び名はお前の好きにするといい。」
「・・・ははっ。ありがとうございます。」
どう見ても刀じゃないよな…。そうだなぁ、三刃戟とでも呼ぶかな?
「うむ。下がっていいぞ。・・・以上だ。皆、ご苦労だった。」

退出する間際、(そういえば三尖刀って袁術のとこの将軍・・・ええと、紀霊?とか言う人の武器だったような?)と高順は頭を傾げた。
なんだか今の世界は・・・自分の知ってる三国志という歴史から少しずつ外れている状態のようだ。
(まさか俺が影響与えてるとは思わないけど。でも三尖刀っていうのも演義だけの話だよね。じゃあ問題ないかかも?)
こんな感じで褒章授与式は終わった。

その後、高順は郝萌と趙雲たち3人娘を誘い、酒処「桃園」へと繰り出した。
ささやかではあるが戦勝祝いである。
その数日後に丁原が正式に戦勝祝いの宴を開くが、その話も次回にしよう。

高順達の座る席に所狭しと料理が置かれている。
高順がこほん、と咳をして水の注がれた杯を掲げる。
「さて、皆揃ったね?・・・えー、ささやかではありますが大将首上げた郝萌と、趙雲殿。そして策で多大な貢献をしてくださった戯志才殿と程立殿に感謝の証として、このような宴を開かせていただきました。前置きはこの程度にして、と。それでは皆さん・・・乾杯!」
『かんぱーい!』
全員が杯を掲げ、一気に中身を煽る。
「・・・ぷはぁ~。いや、いい酒ですな。店主殿、お代わりを!」
「趙雲殿、えらい飲みっぷりですね・・・。」
「って、高順?あんたねえ、こんなときくらい酒飲みなさいよ?」
「俺は酒駄目なんだよ。飲めないわけじゃないけど強くないの。」
「おお、中々美味しい料理です。」
「ちょっと、そんながっつかなくてもいいでしょう。料理は逃げませんよ。」
「むー。」
思い思いに宴を楽しむ。
そんな中、全員がある1つの品に興味を持った。
「高順お兄さん、この・・・なんでしょう?茶色・・・?の暖かい汁は。」
「お、それに気がつきましたか。・・・ふふふ。それはですね。味噌汁というものです。」
『みそしる?』
聴き慣れない言葉に4人が首を傾げる。
「作るのに偉く苦労しましたよ。作り方はある程度知ってましたが、どの菌までか詳しく覚えてませんでしたし塩も高いし。職人さん達にお願いしてやっとここまでこぎ着けました。ふっふっふ・・・」
「こ、高順殿?随分顔がおかしなことに・・・それに菌?って何ですか?」
「うむ。相当苦労したというのがよく解る表情ですな・・・。」
「何があったのか知らないけど・・・で、このみそしる?っていうの・・・食べても大丈夫なの?」
この言葉に高順が過剰なまでの反応を示す。
「当然!食えるとも!」
「ひえっ!?」
「何度も何度も作り直して職人さんたちと顔を突き合わせてあーでもないこーでもないと散々苦労してやっとある程度納得できるまでの味にしたんだ食べることができなきゃ話にならないだろうさあ食べてみてくれでもって感想をきk・・・げふっ、はぁはぁはぁ・・・」
なんというか肺活量を凄まじく必要としそうな言い方ではあったが、本当に自信があるようだ。
「正直に言うと、さ。外部の人に出すのはコレが初めてなんだよ。だから、正直な感想が聞きたいんだ。別に実験台にするって訳じゃないけど。」
「・・・では、いただくのです。」
「え、ちょっと、程立?」
不安そうな戯志才だが、程立は気にすることなくお碗を手に取る。
「高順お兄さんの目は真剣なのです。冗談とか嫌がらせをするような感じではありません。だから飲んでみるのです。」
そして、お碗の中身の味噌汁の匂いをくんくん、と嗅いで「今まで嗅いだことのない匂いです。でも良い匂い」と言って、お碗に口をつけそのまま流し込んだ。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・どうです?」
不安そうにしている3人と、高順。
違和感無く味噌汁を飲み込んだ程立だったが開口一番
「あひゅいれふ(熱いです)。」
「がくっ・・・」
全員が机に突っ伏した。
「あ、相変わらずですね・・・感想が美味しい不味いではなく熱い、とは・・・」
「・・・普通に美味しいのです。」
「なっ!?」
「ほ、本当ですか!?」
「うそ、こんな得体の知れない汁が!?」
「ちょ、郝萌!お前今なんつった!?」
「美味しいのです。皆も試してみるのです。」
と言いつつ更に味噌汁をすすり始める程立。
高順を除く全員が不審そうな顔をしていたが、意を決して口にし始めた。
「お・・・おお?」
「あれ?お、美味しい・・・?」
「これは・・・今まで口にしたことの無い味ですが・・・悪くありませんね・・・。」
「うむ、なんと言うか白米が欲しくなる味だ・・・。」
 
思った以上に評価が高いのに満足したのか高順はガッツポーズをして「やったぁぁぁっ!」とか叫ぶ。

後の話になるが高順は味噌を量産し、この味を広めようと試みる。
塩が高いのでどうしても高めの値段設定になってしまうのだが・・・。
しかしながらこれが思った以上に上手くいき・・・いや、行き過ぎることになる。
肥料の事もあるが、この為に凄まじい額の金が高順の懐に入り込むことになり、その金を元手に彼は私設軍を作ることになる。
ただ、入ってくる金額が半端ではないレベルで・・・正直どうしようか?と高順は悩むことになったり。

その後、宴も終わり帰路につくが、郝萌はともかくも趙雲たちは泊まる場所を確保していなかったので高順の家に泊まることになった。
家には両親がいるし、まあ変なことにはならないだろう。
いや・・・母親が凄まじく勘違いをする予感がするが。
「ふぁあぁあ~・・・世界が4つに分かれてるぅ~・・・」
「郝萌、飲み過ぎだって。だから飲みすぎるなって言っただろー?」
「ははは、高順殿も苦労いたしますな。」
飲みすぎて完全に駄目な人になった郝萌を抱える高順と、その姿を笑う趙雲。
「そう思うなら手伝ってくださいよ。」
「何を仰る。私のようなか弱い女にそんな力仕事が出来るはずがないでしょう?」
「・・・本当に?」
「・・・・・・真顔で返さないでいただきたい。」
そう軽口を叩くが、趙雲自身も眠ってしまった程立と、いきなり鼻血を噴いて昏倒した戯志才を抱えていた。
「しっかし・・・戯志才殿には驚きましたよ。酒で酔って変な妄想をしつつ鼻血噴き散らかして撃沈とは・・・。」
掃除が大変だった、と高順がぼやく。
「ふっ、確かに妙な御仁ではありますな。鼻血を噴くのは良くあることですが。」
「あるんだ・・・って、つきましたよ。ほら、起きなって。」
「んあうぅ~?ここ、あたしの家・・・?」
「俺の家だって。・・・おーい、父上ー、母上ー。いませんかー?・・・郝萌、寝てるよ・・・。すごい寝つきの良さだな。」
戸をとんとんと叩きながら高順が叫ぶ。
しばらくして戸が開かれた。
顔を出したのは母親だった。相変わらず元気そうだ。
「あらあら、お帰りなさい順。久しぶり・・・って。」
「ただいま、母上。・・・どうしたの?」
「じ・・・順が・・・女の子を家に連れて帰って来た!?あの朴念仁の順が!?」
「おおい!?こんな夜更けに何言ってるのしかも大声で!?酔っ払いより性質悪いよ!!近所に変な風に思われたらどうするの!!」
「いつか郝萌ちゃんを連れて来るだろうとは思ってたけど・・・こんなに可愛い人たちを追加で3人も!しかも1人はまだ成人もしてないような幼女!」
「人の話を聞けええええっ!4人ともそんな関係じゃないって!」
「あの、母君?」
遠慮がちに趙雲が声をかける。
「このような時間に大声で喚くのはよくありませぬ。話は家に入れて頂いてから、ということで。」
「そうですよ、その通りです母上!」
その言葉に母親も我に返ったらしい。
良かった。変な誤解をされないですむ。
「え、ええ。その通りね。ええと・・・あなたのお名前は?」
「ああ、これは失礼を。私は趙雲と申します。高順殿の妻1号です。」
「ぶふーーーー!!??」
「な・・・なんですって・・・妻!?もうそこまで!?」
「ちなみに私が抱えている眼鏡をかけた酔っ払いが戯志才。2号です。」
「ちょちょちょちょ、趙雲殿!?あーたいきなり何を!?」
趙雲は抗議する高順を無視して話を続ける。
「そして今私が背負ってるのが程立。」
そこにタイミングよく起きて来たのか、程立が挙手して「初めまして、お母様。3号なのです。」
「何言ってるの!?違う!違いますから!」
「・・・・・・順。」
「・・・はい。」
嫌な予感がします。むしろ嫌な予感しかしません。これは仕様ですか?
「あなたという息子は・・・母はあなたをそんなスケコマシに育てた覚えは・・・!」
や、やばい。やばすぎる。何か母上ワナワナ震えてるし。拳握り締めてるし。つかスケコマシっていう言葉この時代にあったの!?
「ちょ、趙雲殿!冗談にしちゃやりすぎですよ!はやく弁解を」
ここまで言ったところで趙雲が戯志才と程立を離し、高順にしなだれかかる。
「ちょ、趙雲殿!?胸!胸あたってますから!」
「当てておるのです。それよりも・・・ひどいではありませぬか。高順殿?あれほど私を真名で呼んで欲しいとお願いしたではありませぬか・・・?」
「なにぃぃいいぃ!?初耳です!聞いてない!!そんなこと一言も言ってないですよ!?」
「ふふ、酒に酔って忘れておるのですな?・・・我が真名は「星」。さあ、高順殿・・・。」
そのまま高順の胸あたりでのの字を書き始める趙雲。
「あああああああ、わかりましたっ。真名で呼びますから!だから離してー!星殿ー!」
「順っ!座りなさい!この母があなたの性根を叩きなおしてあげましょう!」
「いやちょっと待ってください母上!母上のは物理的に叩きなおすと言うか叩き潰すって感じでそもそも俺は無実です何も悪くあrぎょえあああああっっ!?」




・・・神様。もしおられるのでしたら教えてください。
何故俺はこうも巻き込まれなくても良いことにばかり巻き込まれて一方的に辛い思いをさせられるのでしょうか・・・?

薄れ行く意識の中、高順はこう思わずには入れなかった。



酒場に続いて、この後も大変だった。
高順が気を失ってる間に趙雲が冗談だったことを母に説明。
誤解は解けるものの・・・趙雲と母親の悪戯で全員が同じ部屋で寝かしつけられ、趙雲と程立が高順と同じ布団で折り重なるような形で寝ておりそれを朝早く起きた郝萌が発見。
凄まじい乱闘騒ぎになる。(犠牲者は高順
戯志才も前夜の妻僭称事件を知らされ、またしても妙な方向の妄想を全力全開させた上で鼻血を噴出し轟沈した。
しかも、趙雲を気に入った母が本気で高順とくっつけようとしたりと、本当に大変な思いをする羽目になるのだが・・・。
この2日後、高順から「今回の戦いを手伝ってくれたお礼」として贈られた馬2頭に乗り趙雲たちは旅立っていく。


趙雲が高順に真名を預けた理由は・・・自分たちを一番に信じ、仕事を任せてくれたことへの彼女なりの感謝であり、彼への好意の形でもあった。
素直に口にするのが照れくさかったのか、悪戯まがいの形で預ける感じになってしまったが、鈍い高順はそのあたりに全く気づくことが無かった。
それでもその後は趙雲を「星殿」と呼ぶあたり、妙なところで生真面目な高順だった。

何の因果か、高順と星の行く軌跡は重なり合うことになるのだが―――それはまた、後の事になる。



~~~楽屋裏~~~
1日で書くのはキツイです(何挨拶

どうも、あいつです。
結局こんな形になってしまいましたね。

この後も、高順には頼りになる?仲間が少しずつ増えていきます。
それでも彼が死亡するか生き残れるか、微妙なところではありますがw

彼が何処へ向かうのかは作者にもワカリマセンが頭の中では一応の形になってきています。
その中で次回作のネタが生まれてきてしまったのが不思議ですが(ぉ)なんとか書き上げたいと思います。
あと、時系列としては褒美授与→あれこれ→洛陽からの使者 ですので趙雲たちは事の顛末を知りません。
知ってたら憤激してたでしょうねえ・・・w

感想の方にもありましたが「ここ、言葉の使い方がおかしいよ?」というところがあったら遠慮なく教えてください。
ど素人がそのまま突き進んでるので何がおかしいのかよくわかっていません・・・

それではまた。次回をお楽しみに。



楽しみにしてくれてる人いるのだろうか(汗



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第8話 (誤字修正)
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/21 15:49
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第8話



どうも、皆さん。高順です。
もう何度使ったか解らない挨拶ですがいかがお過ごしでしょうか?



俺は今・・・・・・ものすごく大変です!


さて、何があったのか皆様に説明いたします。
星殿たちが陳留・・・というか兗州方面へ向かって3日ほど経った頃に洛陽からの使者がやってきたのです。
そのとき丁原様の命令で宴の準備をしていたんです。
「少し遅くなったが戦勝祝いの宴を開こう。褒美を与えてやれなかった者にも酒や飯くらいはくれてやらねば。」という名目ですね。
本当は自分が酒飲みたいくせに。

ある程度用意が整って「さあ、後は食事用意して酒持ってきてー」あたりまで漕ぎ着けた所で使者のご登場とあいなった訳です。
話は前話(第7話)で説明されているので良しとしまして。
今その使者が目の前にいます。
あ、ここは政庁ですからね?

それはそれとして・・・使者としてやってきたのが。そのー。


天下の飛将軍「呂布」と、泣く子も黙る「張遼」。そして呂布の軍師「陳宮」でした。


「・・・と、いうわけで此度の件については以上なのです!何か疑問は?」
なんか偉そうに言ってますよこの小さいの。
陳宮さん、偉くミニマムです。
呂布さんが・・・なんつーか全く喋りませんからその代弁で張り切ってるのでしょうけど。
うわ、丁原様怒ってるよ絶対に。
俺とか朱厳様、あと親衛隊の人々は丁原様の後ろに控えてます。
丁原様は俺達の前で、俺達と同じように跪いて話を聞いてます。
丁原様とはいえ洛陽からの使者を相手に無礼な真似をできるわけではありません。

「・・・いや、ありませぬ。」
怒りを押し殺してます。よく暴発しないよなぁ、とか感心しますよ。
「ならばコレで終了なのです!さ、呂布殿。早く帰りましょう!」
と、呂布さんに飛びつかんばかりの勢いで陳宮さんはしゃいでます。おのれお子ちゃま。
丁原様に限らず皆本心では相当むかついてると思いますよ?
自分たちの戦いの理由をあっさり否定されたわけですから。
一番辛いのは褚燕様の村の処分ですけど・・・。くそ、偉い人々には虐げることしか出来んのか。

それはともかく。
・・・俺の主観で行くと呂布さんも張遼さんもすごい美人です。
両者共にスタイル抜群ですね。張遼さんの格好はどうかと思いますけど。露出高すぎるよ・・・。眼の毒ですね。
呂布さんは陳宮さんの言葉に「こくっ」と頷いてそのまま退出しようとしてます。
その隣の張遼さんも困った顔で丁原様に「いやー、すまんかったなー。なんか宴か何かするつもりみたいやったのに邪魔してもうて。すぐ退散するから堪忍な。」とか話してます。
そしてそのまま3人とも退出。しばらくしてから丁原様が「はぁぁぁああっ・・・・・・」とため息つきながら立ちます。

「くっそー、あのおチビちゃんは。随分好き放題に言ってくれたな・・・。」
あ、やっぱ怒ってる。
「ほっほっほ。使者とは言え子供のいうことです。あまりお気になさらず。」
「しかしな、治心。あそこまで言われると流石に誰でも腹が立つぞ?お前だってそうだろうが。」
「それはそうかもしれませぬが。使者の前で不機嫌そうな顔をなさるのは問題かと。」
「もう帰ったみたいだから構わんがな。・・・どうした、高順?」
「へ?は、はいっ!?」
いきなり喋りかけるとは。思わず声がひっくり返りましたよ?
「はいっ?じゃない。お前、今何か良からぬことを考えてなかったか?」
「な、何がでしょうか?」
「あのなぁ。お前は今「さて、どうするかな?」的な顔してたぞ?自分で気がつかんのか?」
「ええ?そ、そんな顔してました?」
・・・感づくのが早いよなぁ、お見通し?
「してたさ。褚燕の村で考え事をしてたあの顔そのままだ。」
「・・・えーと。」
「で?何を考えていた?言ってみろ。聞くだけならタダだ。」
むう、隠し事は通用しないっぽいなぁ。じゃあ言ってしまうかな。
「えー、それでは。今からの宴に呂布様達にも参加していただければなー。とか考えてまして。」
「何ぃ・・・・・・・・・?」
「・・・いや、そこまで嫌な顔をしなくても。」

さて、俺の考えを言わせていただきます。
彼女達が十常侍と通じてるかは解らないですが、仲良くして置いて損は無いだろうということです。
呂布さんが既に後漢将軍だったことには驚きましたけどね。絶対上党にいるor入隊してくるとか考えてました。
俺が知ってる知識でなら呂布さんに勝てるような武将はまずいません。
張遼さんだってすっげえ武人だというのにそれ以上なんですよ?
その当たりは飛ばすとしてもいい機会だと思うのです。
いかんせん情報が少なすぎます。何をするにしても。
死亡フラグのこともありますから俺にしても知り合い増やすのは決して悪いことでは・・・ん?知り合い?

・・・まあいいか。


丁原様にしたって中央との繋がりをどっかで作っておくべきだと思うのです。
この世界の十常侍も恐らくは腐りきった宦官なんでしょうね。
史実を知ってる俺の観点から見ればその十常侍とあっさり敵対姿勢打ち出すべきじゃないとも思います。少なくとも黄巾の乱すら起きてない現状では。
史実では丁原様を殺すのは董卓であり呂布ですが下手したらそれ以前に十常寺と敵対して暗殺される、とかそういう状況にもなりうるんですよ。
その当たりは抜いて説明しました。
中央と繋がりを作るのは損じゃないですよー。呂布とお友達になっておくのも損じゃないですよー。とか、そんなノリで。
自分自身の名声とかには全く無頓着な丁原様ですから却下されるのを覚悟で言ってみましたが「晋陽の件もありますし、あまり敵を作るのもどうかと」と朱厳様もこちら側の思惑に乗ってくれる形で説得してくださいました。
そのおかげかOK出ましたよ?まだ機嫌悪そうですけどね・・・。
代わりに褚燕様への使者命じられ、その上呂布さんたちにお誘いかける役まで押し付けられました。言わないほうが良かったか|||orz
そんなこんなで急いで追いかけます。

「・・・宴会?」
「はい、丁原様が是非、と。」
初めて呂布さんの声聞きました。
抑揚が無いとか感情が無いとかそういうわけじゃ無いようです。
けっこう可愛い声してますね。
「・・・。でも、私達が誘われる理由が無い。」
「そうですぞ!恋殿はすぐに帰りたいと言っているのです!」
「ちんきゅ。人前で真名使っちゃ駄目。」
「う・・・申し訳ありません。」
ふむ、呂布さんの真名は恋というらしいですな。
しかし参加していただかないとこっちも困ります。
「まぁまぁ。ええやんか?こっちかて何日もかけて来たんやで?今日すぐに行かなあかんっちゅー訳やないしな。」
おお、張遼さんナイス!ま、実際今日すぐに発つわけじゃないと思いますけどね。
「なぁ、あんた・・・名前なんやったっけ?」
「あ、申し訳ありません。高順と申します。」
「高順・・・んー、順やんって呼んでええ?」
「じゅ、順やん・・・。・・・・・・いえ、構いませんが。」
・・・またえらくフレンドリーですね。そんな呼ばれ方をするとは。
「れ・・・あー、呂布もええやろ?たまにはこういうのもいいんとちゃうか♪」
「・・・ん。」
こくりと頷きました。
よし、張遼さんありがとう!あなたは良い人です!
「では、案内をさせていただきます。どうぞこちらへ。」
「ほいな。」
なんか後ろでなんですとー!?とか、ちんきゅ、静かにしてて。とか話し声聞こえますけど。仲いいんだなぁ。

さて、会場に案内して「もう少しですので適当にお寛ぎください」と言っておいて厨房へ向かいます。
え?何で俺が厨房にって?
俺が頼んでおいたものの出来を見せてもらうだけです。つっても簡単なものしかないですけど。
厨房の人々にお願いして味見をさせていただきます。・・・・・・うん、良い出来だ。これなら問題ない。
OK、スタンバイ完了。あとは持っていくだけです。
料理を運ぶために厨房の人々が慌しく動いてますし、俺も運ぶのをお手伝いしますよ?
数十分後、料理を机の上に並べ終え宴開始。
俺はまだ料理とか酒運ぶので忙しいので参加できてませんけど。
あたりを見回してみると丁原様は呂布さんと一緒に飲んでますし、張遼さんも朱厳様と飲み比べみたいなこと始めてます。
陳宮さんは、と。
あ・・・。郝萌に絡まれてますよ。「りょふどのー!」とか叫んでますけど無視されてます。
「きゃー!陳宮ちゃんかわい~♪」
「ぬああ、離せ、離すのです!苦しいのです!」
もう酔ってるのか、郝萌。陳宮さんも使者の1人なんだから無礼なことするなよー、と心の中で言っておいてまた厨房へ向かいます。
もう遅いっぽいですけど。
それからまた更に数十分。
もう運ぶものも無くなって来たので俺も参加です。勿論味噌汁も出しました。
けっこう好評なようでどんどん減っていきます。・・・あれ、呂布さんすごい勢いでおにぎりとか味噌汁口に詰め込んでる。
隣で見ている丁原様もぽかーんとしてます。いや俺もです。
張遼さんは・・・。
「あっはっはっは!朱厳のじっちゃんの話はおもろいなぁ!丁原はんが可憐とか想像でけへんって!あっはっはっはっは!!!」
「ほっほっほ。それだけではありませんぞ?他にも「泥酔、挙句に勘違い立てこもり事件」や「寝小便で見事な上党地図(幼少期編)」などなど・・・。」
「おお、興味深いなあ!もっとお話聞かせてぇな!」
ま た お 前 か!!!治心、そこを動くなぁっ!私自ら切り捨ててくれるわーっ!?」
「でえええええっ!?」
「あ、あっつぁぁあ!?味噌汁ひっくり返ったー!?」
ああ・・・丁原様が剣どっかから持ってきて朱厳様追っかけてるよ。しかも地味に張遼さん他数名の兵士が巻き添え食ってるし。
「ほっほっほ、まだまだ若いですなあ。」
「うるさい黙れっ!お前という奴はいつもいつもいつも私の恥ばかり言いふらしおって!そんなに私を困らせるのが楽しいのかー!?」
「ほっほっほ。楽しいですな。
「言い切ったよこいつ!?」

・・・楽しそうですね、お2人とも。巻き込まれる側はたまったものじゃないと思う。
でも張遼さんも笑い転げて「ええぞー!もっとやれー!」とか言ってますし、これはこれで良い・・・よくないか。
さっき絡まれてた陳宮さんは?
「へー、陳宮ちゃんの真名って音々音(ねねね)って言うんだー。ね、あたしも真名で呼んでいい?」
「ぶはっ、は、離すのです!これ以上抱き絞められると窒息してしまうのです!」
郝萌の胸辺りに顔を埋めたり離れたりで忙しそうです。そういや郝萌ってけっこう胸大きいんでs何言ってるんだ俺。
「んふふー。呼んじゃ駄目って言われたら仲良くなって許してもらうけどー♪お風呂とか一緒に入ってー。」
「むぐっ、ねねを殺すつもりですか!」
「そんなことしないってばぁ。親睦を深めるだけだよー?」
そう言ってまた思い切り抱き締めてますよ。死なすつもりか。
「むぐー!?わ、わかったのです!許すのです!だから離すのですー!?」
「やったー♪じゃあ後で一緒に寝ようね?ねーねちゃん♪」
「何ですとー!?」
何と言いますか。無理やり仲良くなってる風味ですよ郝萌さん。
陳宮さんもご愁傷様としか言いようが無い。
さて。本題の呂布さんは、と。
「・・・。」
さっきまで丁原様と割と楽しそうに飲み比べしてたけど今は朱厳さまとデンジャー追いかけっこ真っ最中だから取り残されてる形になってるな。
でもお酒チビチビと飲んでるし、味噌汁(野菜入り)もまくまく言いながら食べているし楽しんでないわけではなさそうです。
思い切って話しかけてみようかな?
「あの、呂布殿?」
「むぐ?」
「・・・食事中でしたか、申し訳ありません。」
「んくっ。・・・構わない。」
「そうですか。って・・・え、えらくまた沢山・・・。お腹のほう大丈夫なんですか?」
すごいよ呂布さん。何この積み上げられた皿とかお碗の枚数。
20枚とか30枚じゃきかん気がする。しかも味噌汁のお碗まで何十も積み上げられてるし。
「・・・名前、高順?」
「え?あ、そうです。張遼殿には順やんとか呼ばれてしまいましたが。」
「許してあげて。悪意は無いから。」
「怒ってはいませんよ。驚いただけです。」
ん、と呂布さん頷かれました。最初は全然喋らないかし無表情だから感情ない人なのかな?と思ってましたが違ったようですね。
「ところで。」
「はい?」
「これ作ったの、高順って聞いた。」
「これ?・・・味噌汁とおにぎり?」
「ん。」
味噌汁はともかく、おにぎりを気に入っていただけるとは。
ちょっとお話しますと、おにぎりが食べたくなったことが前にありまして。
ただ、基本的に具が無いものばっかなので寂しいのですよ。
そこで鮭フレークと、鮭おにぎりを作ってみました。
鮭意外にもいろいろなお魚で試して見ましたがやっぱ鮭が一番美味しいです。
ネックは塩の値段が高いって事なのですが・・・使う量を少し押さえめにしたって鮭フレーク美味しいですからね。
それを今回の宴で少し出させていただいたわけですが、これもまた高評だったようです。
かなり多めに作ったのにすぐ無くなりましたしね。
少し塩気のあるもの、というのが少ない時代だから余計に美味しく感じてしまったのかな?
「他のも美味しかったけど・・・この2つも美味しかった。考えたのも作ったのも高順だって。丁原が。」
「そうでしたか。気に入っていただいたようで何よりです。」
実際に嬉しいものです。考案したのは厳密に言えば俺じゃなくてこの時代から見てずっと先の未来の人ですけどね。
「・・・。」
何でしょう。呂布さんじ~~~~~っと俺の顔見てらっしゃいます。この方すごく可愛いので眼福ではありますけどなんか照れるのでやめて欲しいです。
警戒されてるような気もしますが俺は敵意とか持ってないですよ。
「怖く、ない?」
「へ?誰がです?」
「私。・・・これ。」
と言いつつ呂布さんが自分の体の腰辺りにある刺青を指差します。

あー。そうか。この時代って刺青がある人は「漢人」という扱いを受けられないとか聞いたな。
異民族であることを強調するためとか、罪を犯して追放されたときに刺青をされるとかそんな話を聞いたことがあった。
呂布さんも確か北方の騎馬民族出身で純粋な漢人じゃないのだっけ。
この人は武力が馬鹿高いから若くして将軍に抜擢されてるのだろうけど・・・やっぱ嫌がらせとか多いだろうし、出目のために嫌われたり白眼視されることがあったのかもね。
救いは張遼さんと陳宮さんがごく普通に仲間として、主として接してくれてることか。
そう考えるとけっこう気の毒な人なのかもしれない。
それを気にして警戒してたのかな?
今回みたいに酒宴に誘われたりとか無かったのかも・・・。

「ええ、別に。全く、何1つ怖くありませんね。」
「え?でも・・・」
「言わせたい奴には言わせて置けばいいのですよ。それで呂布殿という人の何かが変わるわけでもありませんし。」
「・・・。」
「張遼殿も陳宮殿もあなたを慕ってるでしょう?解る人には解るものですよ。」
「・・・そういうもの?」
「そういうものです。「この世に自分は唯一人」ってね。呂布殿はそのままでいいと思います。」
「・・・ん。」
あ、なんか嬉しそう。
俺個人がそういう差別が嫌いなだけですけどね。
向こうがこっちを嫌うのならともかく、意味も無くこっちが一方的に嫌うとか、そういうの嫌なんです。
「おかわり、ある?」
「え?お、おかわり。です?」
「ん。」
いきなり話題が変わったよ。でも、おかわりって。
いや・・・気を許してくれたって事かな?
「そこまで気に入られました?材料はまだありますから出そうと思えば出せますけど。」
そのとき俺は見ました。呂布さんの顔が「ぱあああっ・・・」てな感じに輝くのを。
うおお、何だこの顔。くそっ、そんな良い顔で俺を見ないで!なんかご褒美を上げるって言われて嬉しそうにしてる子犬を連想しちゃうから!
「おかわり。おにぎり・・・100個くらい。味噌汁いっぱい。」
「はあ。おにgひゃ、百!?時間かかりますよ!?」
「待ってる。」
「うう・・・。じゃ、じゃあ味噌汁はそこの鍋の中に・・・」
このとき、またも俺は見ました。しゅん・・・って感じに項垂れる子犬を連想させるような悲しげな呂布さんを。
「あれじゃ足りない・・・。」
えーと。さっき一杯って言いましたよね?いや・・・もしかして?
「あの、呂布殿?もしかして俺が勘違いしたのかもしれませんから確認を。「いっぱい」というのはお碗に「一杯」ではなく「鍋に一杯」って意味ですか?」
「(こくり)」
また呂布さんの顔が嬉しそうに輝きます。自分の意図を理解してもらえた!みたいな感じ。
もしも今の呂布さんに犬の尻尾が生えていたらものすごい勢いで「ぶんぶんぶん!」と振り切れんばかりの勢いだったと思いますね!

やばい・・・か わ い す ぎ る!!!


「解りました。・・・しばらくお待ちを!」
「ん。」

そして俺の戦いが始まります。
今の俺に出来ること。それは厨房へ向かい無理難題を吹っかけることです!
俺は何処までも行ける。まさに風。自由。(自己暗示
全力疾走で厨房へ向かい戸を開けます。
「え?こ、高順さん?どうしました?」
「皆さん!追加注文です!」
「え、えーーー!?」
「呂布将軍たっての希望です!反論も何も出来ないと思ってください!」
「嘘!?呂布様の!?」
「まずは鮭おにぎり100個以上!そして味噌汁たくさん!以上です!!」
「何ですかその適当感あふれる数量!しかも100!?」
「早く!あまり遅いと呂布殿が落ち込んでしまいます!」
「えーーーー!?」
「俺も手伝いますから!」

実際にあまり遅いと機嫌損ねちゃうかもしれません。
味噌汁はまだ野菜の切り残しもあれば味噌自体も残してますから問題ないのですが、さすがに100個もおにぎり作るのは。

~~~数十分後~~~
「お待たせしました!」
料理を運ぶための台車に味噌汁とおにぎり乗せて宴会場に突撃です。
あ、また呂布さんの顔が輝いた。くそぅ、何この可愛さ!?
彼女は一番上座にいますからこっちから向かわないといけないのですが、なんかすげえ勢いでこっちまで走ってきます。やっぱ犬?
「あ、あの?来て頂かなくてもこちらから行きましたよ?」
「ん。・・・美味しそう。」
聞いちゃいないし。
「あー、どうぞ。お食べください。」
(まくまくまくまく・・・)
うお、すっげえ勢いで食べ始めました。これじゃ味解らんのではなかろーか。
ただ、ここで他の方々も乱入。
「お、順やん。うちも貰ってええ?なんや酒ばっか飲んどってあんま食ってなかったんや。」
「まくっ!?」
・・・食いながら驚くとかまた器用な。
言いながらも既におにぎりいくつか持ってってますよ張遼さん。
「く、くそ・・・やはり勝てなかった・・・。」
「ほっほっほ。まだまだ甘いですな、丁原様。」
「あ、丁原様に朱厳さ・・・ま!?」
何でしょう、朱厳様が筆をくるくると回しつつこっちに来ます。
後ろにいる丁原様の額に「肉」とか頬に「芋」とか書かれてるんですが。
デンジャー追いかけっこがいつの間にかカオス追いかけっこへと変貌した模様。刺吏とそれを支える股肱の臣が何やっちゃってるんですか?
「おい、高順。私達も貰っていくぞ。走り回って酒も切れたし・・・朱厳。飲みなおしだ。付き合え・・・。」
「ほっほっほ。まずは顔を洗ってからにしなされ。」
また減っていくおにぎり。
他の方々も「おー、追加か?気が利くなー。」とか言いながら次々とおにぎりとか味噌汁減っていきます。
「まく・・・。」
いや、だからね?食べながら悲しそうな顔でこっち見ないでください。
それでも止まることのない呂布さんの食欲。本気でよく食うよ。
「んぐっ。・・・高順?」
「へ?も、もう食べ終わった!?」
「高順。足りない。」
・・・また寂しそうな子犬を連想させる・・・ああああああっ!もうっ!
「解りました追加ですねおにぎり100個と味噌汁一杯ですね解りました少々お待ちを!!!!」

俺は風(以下略

「お・・・おまた、せしましたぁっ・・・」
またしても台車で持ってまいりました。
呂布さん会場の入り口で待ってました。ずっといたのだろうか?

今度は誰にも邪魔されること無く完食。
ものすごく満ち足りた顔で「まくまく」しておいででした。
さて、他の方々はどうなったでしょうね?

兵士の皆さんはそこかしこで眠ってます。
起きてる人誰もいないし。
丁原様は?・・・おろ、朱厳様の膝枕で寝てますよ。案外甘えん坊?
朱厳様もそのまま眠っておられますね。
張遼さんも酒瓶抱いて寝てます。丁原様たちの近くで寝てますから飲み比べをやってたのかも?
陳宮さんは郝萌に抱き締められたままです。両者共に寝入ってますね。
結局離してもらえなかったようです。
郝萌は酒が入ると途端に駄目な人になっちゃうみたい・・・。
最初はあんなに嫌がってた陳宮さんですが今は郝萌にしがみ付いて胸を枕にしてる感じで眠ってます。
なんだか仲の良い姉妹みたいな感じがしないでもない。
呂布さんも満足したのか座り込んで欠伸をして眠り始めました。

このまま放っておいて風邪ひかれるのも嫌ですし、全員分の毛布を持ってきますか。
また重労働だなぁ。って。そういえば。

俺、呂布殿の世話ばっかしててまだ何も食ってない・・・。
 


後日、満足そうに呂布さんたちは帰っていきました。
呂布さんは丁原様に「楽しかった」と言ってましたし張遼さんも朱厳様とまた飲み比べすることを約束してました。
陳宮さんは郝萌に「また遊ぼうね。」と言われて・・・寂しさが出てきたのか少し涙ぐんでました。なんだ、やっぱ仲よくなれたんだ。
俺自身も呂布さんと張遼さんに感謝の言葉をいただきました。
「またいつでもお越しください。精一杯のおもてなしをさせて頂きます。」と返したら呂布さんすっごくいい笑顔を見せてくれました。
あと1つ。帰り際、張遼さんに話しかけられたのですが。

「なあ、順やん?呂布と随分仲良うなったなぁ?」
「へ?そうですか?」
「ああ、あいつもえらい嬉しそうやったし。・・・あんがとな。」
「?」
「あいつな、あの刺青のせいで・・・なんちゅーか行く先々でな・・・。丁原はんもその当たり触れずに普通に接してくれたみたいやし。順やんもそうだったんやろ?」
「ええ。刺青1つや2つで差別なんてしませんよ。」
「はは、言い切ったなぁ。うちも朱厳のじっちゃんと飲み比べして、いろいろな話聞かせてもろたし。こんな楽しい思いさせてもろーたん、はじめてかもな。」
「はじめて、ですか。」
「ん。正直、あんたらは中央の決定に色々思うこともあるやろうけど・・・それでも宴に誘ってくれたからな。本当に感謝しとる。っと、もうそろそろ出立やな。」
「そうでしたか。・・・お気をつけて。また会えることを願っていますよ。」
「ははは、うちもまた順やんとは会える気がする。ほな、達者でな。朱厳のじっちゃんにもよろしゅーな!」

そんな感じで帰還されました。
実際、また会うのでしょうね。
はてさて。
その時、どんな立場で再開を果たすのやら。





~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。
だからね、1日で書くのは辛いんです(まだ言うか

今回は普段と少し感じを変えて「高順君の視点のみ」で書いてみました。
正直やり辛かったです・・・。
普段は高順君の視点のみで書いてるわけではありませんから。
次回からは元に戻します。
その前にちょっとした番外編を差し込みますが。

あ、書き忘れましたが厨房の人々は全滅です(疲労的な意味で

今回やりたかったことは「やっぱ呂布たちと相性がいいんだなぁ」ということをみて欲しかった、的なものですね。
それと呂布はやっぱ犬ですね(w


某(ぴー)を知ってる方ならニヤリとするような番外編。
好きな人いたら・・・ごめんなさい(何?



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 番外編その1
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/22 08:22
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 幕間という名の番外編

それは夢の現の物語・・・


何だコレは。
夢の世界?・・・もしかしてまた転生?
いやいやそんな事は無い。随分おかしな世界だ。
太陽に顔がある。
なんかのっぺりした山みたいな絵が背景にある。
よし、これは夢。うん。夢だ。
だからね。

「お前はいったい誰だぁぁぁぁあっ!?」
高順の叫びが木霊する。
ここは夢の世界。
現実ではない、されど実際に今ある世界。
そして彼の叫びは目の前にいる奇怪な何かに向けてのものだった。
奇怪な何か、というかただの太ったおっさん。
出来損ないのサザエさんっぽい髪型だし、変な服の上に変なマント羽織ってるし。
しかも手をひらひらさせて宙に浮いてる。
「私はあなたの武器、三刃戟の精です。」
この言葉を聞いた瞬間。

高順は明日に向かって走り出した!
 

「ああっ!?逃げないで!逃げないでー!逃げないでっ!ていうか引かないで!」
「うっさい!お前みたいな変な存在の相手なんか出来るかっ!」
「今日は頑張る高順君に、このワタクシ応援しに参りましたっ!」
ぴたっ。
「・・・応援?」
この言葉に精霊(?)はうんうんと頷く。
「さあ、この精霊様になぁんでも言ってみんしゃい。ズッギュゥゥゥゥンとね。」
胸を叩いて誇らしげに言う。
「な、なら・・・一個だけ、どうしても聞きたいことがあります!」
「うんうん。」
「俺、何がなんだかわからぬままに三国時代の中国に飛ばされるわ、有名武将が軒並み女性だったりするし、そして・・・将来的に処刑される武将になってしまったんです。不幸な事ばっかりです。」
「おお、それは不憫な。」
「ううっ・・・。何とか処刑されないように色々と頑張ってるんですが・・・。俺、このまま処刑されちゃう運命なんでしょーか・・・?」
高順の悲痛な言葉だった。だが精霊は鼻をほじりつつ
「・・・まぁね。」

高順は後ろに向かって前進した!

「ちきしょおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
「まっ!待ちなさい高順!今のなし!嘘っ!ノーカン!ノーカウント!」
精霊は一瞬で高順の目の前に回りこむ。
「はぁはぁはぁ・・・・・・。そんなことより、良くお聞き高順。こんなことやってる場合じゃないのよ。」
「へ?」
「さっき君も言った通り、このままじゃ君を待ち受ける運命はゴイスーなデンジャーなのですよ。」
「ご、ごいすーって・・・すごいってこと?」
「そう。」
「デンジャーって危険って事ですよね?」
「そう。」
「く、くそう・・・やっぱ無理なのかなぁ・・・。」
精霊(?)の非常な宣告にがっくりと項垂れる高順。
「最後まで話をお聞き高順。」
「え?」
「確かにこのままじゃ待ってるのは先の無い未来。で~も~!私の助言を聞けば大丈夫。」
「じょ、助言・・・?」
「そう、高順君。あなたはすぐに旅に出るのよ。」
「旅に・・・ですか。」
「そぉう。そしてたくさんの知り合い、仲間を得なさい。そうすればあなたの知る歴史が違う方向へと動くでしょうぉぅ。」
「・・・。」
「心当たりはあるでしょぉう?」

確かに。高順には思い当たる節が多くあった。
丁原の下に呂布がいない。既に後漢将軍であるという事実。
そして、本来なら接点の無い褚燕や趙雲たちと知り合ってもいる。
自分の手元には無いはずの三尖刀もある。

「む・・・確かに。」
「自分の行ける所へ行ってみなさい。でもあまりのんびりし過ぎると黄巾の乱がおこるわよぅ?」
「え・・・マジで?」
「マジ。」
「・・・解りました。やれるだけやってみます。」
「うふふ。そろそろお別れの時間のよぅねえ。頑張るのよ高順。では、さぁらぁばぁ。」
「え、ちょ、ちょっと待って。なんかあなたの声最初と変わって・・・なんかア○ゴさんというか○ルみたいな声・・・!」
「ぎゃー!この私の首が捥げ、中から病気もち風の鳥の頭が!?」
「え?」
「巨神兵が炎の七日間を!?」
「え?」
「病院で太っといお注射してもらいなさい!」
「え?」
「ピーピカピリララポポリナペンペルトー!」
「何その呪文!?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

~~~現実世界・兵舎~~~
「うあああああっ!?」
高順が掛け布団を引っくり返し飛び起きる。
「な・・・は、はぁっ・・・。ゆ・・・め?今のは夢か?」
ああ、驚いた。しかし何だったのか、あの夢は。
すごいインパクトだったよ・・・。
そして、ふと壁に立てかけてある自分の武器・・・三尖刀ならぬ、三刃戟を見る。
「・・・まさか、ね。」
ああ、おかしな夢だった。もう一度寝なおそう。
でも気になる事言ってたなぁ。旅に出ろ、か。

それは高順も前々から考えていたことだった。
例えば洛陽に行ったり、自身にとって終焉の地となるであろう除州へ行ったりして仲間を・・・或いは知り合いとかを作る。
そういった伝手を総動員して歴史と違う方向へ持っていくことは出来ないだろうか?
前までなら「いや、歴史ってそう簡単に動くもんじゃないよなぁ・・・」で諦めたところだった。
しかし、今は前例がある。夢の中でも思ったが微妙に自分の知る歴史から何かが変わってきている。
大筋で変わることは無いかもしれない。
だが、細部を変えていくことで何かが変わっていく可能性があるのではないか?
 
「旅、か・・・。」
上党はこれから大きな騒乱に巻き込まれることは少ないだろう。
呂布と丁原が戦う事になるとしたら・・・それは多分まだ先の話になる。
まだ黄巾の乱すら起こっていない。
そしていつか起こるであろう褚燕の戦い。
だが、それまでの間。
残された時間は少ないかもしれないが、それまでの間に旅に出て力をつけるということはできないだろうか?
恐らく。このまま上党にいても事態というのは何も変わらない。
昔に比べて多少は腕に覚えが出てきた。どういうわけか無駄に金も貯まった。
旅に出る用意が整った、とでも言うべきか?
・・・貰った給料を使う暇が無かっただけ、というのもあるが。

「・・・よし。そうと決まれば。」
丁原様に許しを得なければ。
そして旅支度を整えよう。

そう多く残されていない時間。その間に何とか足掻けるだけ足掻いてみよう。





~~~楽屋裏~~~

どうも、作者のあいつです。
文章量少ないのはお許しください。あくまで超短編の番外編です。

さてさて、やっと・・・これで・・・序章もほぼ終わりです。
この先高順君はどこに行くのでしょう?

あ。

ヘルシ○グネタ使ってごめんなさい(土下座



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第9話(調子こいて連投&題修正
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/11 13:47
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第9話

どうも皆様、高順です。今俺は洛陽にいます。


洛陽。
皇帝の済む中華最大の都市であり、首都。
「うぁー・・・すっごい人の数。上党はやっぱり田舎だよなぁ・・・。」
思わずこんな感想が出てしまうほどの人、人、人。
都市の規模、人の数、店の多さ。何もかもが上党とは大違いだ。
この地にはおそらく呂布や張遼がいるのだろう。だが高順には会う気はない。
少なくとも今は。
「あれから1週間か・・・皆元気にしてるかな?」

彼が上党を出たのは1週間ほど前。
丁原に願い出て職を辞してきたのだ。
(丁原様には叱られるし、郝萌には泣かれるし、それを見た周りの方々からはニヨニヨされるし。散々だったよな。)
何だかんだ言いつつも丁原も朱厳も郝萌も「無事に帰ってこい」と言っていたし、非番の兵士もけっこうな人数で見送りもしてくれた。
両親を説得するのが辛いな、と思ってもいたが案に相違してあっさりと了承された。
「お前が外の世界を知るべき時期が来たということだろう。」と。
本当にいい人たちだ、と思う。
(そうさ、いつか帰るさ。目的を果たしたら。)

心に誓う高順だった。

さて。
高順が洛陽に来たのは理由がある。
洛陽の場合は知り合いを増やす、ということではなく「この時代で一番賑わっている土地」であることが理由だ。
味噌が流行るかな?もしかしてもう誰かが作ったのかな?というのを見極めたいというのがあった。
幸いと言ってもいいべきかどうかは解らないが、やはり味噌はまだ自分(と作成協力してくれた職人)以外には作ることが出来ないようだ。
実はこの職人達も高順の旅に同行したい、と言いだしていた。
それを説き伏せるのにも随分と苦労したものだ。
余談ではあるが、味噌作成は今のところ上党以外では行われていない。
この時代、情報というものが周りに伝わる速度が極端に遅い。
一般レベルでは旅人が「あそこでこのようなことがあった」とか、そんな程度。
それも伝聞なので不明瞭なことこの上ない。
正確な情報、というものが正確なまま伝わるかが怪しい時代なのだ。
味噌自体、上党で浸透するのもまだ多少の時間は必要だろう。
富裕層には人気があったらしく、相当な額で買い込んでいく人も多々見受けられた。
量産体制があまり整ってないこともあり、作れる数にも限度があったせいで相当な値段設定だが、それでも買って行く人が多いのでよほど美味しいと思われているのだろうか。
何人かが「味噌の作成方法を教えて欲しい」と頼んできたこともあったが・・・
それを一蹴したのは味噌職人達だった。
「俺達だって味噌作りを極めてねーんだ!そんな半端な技術を他人に教えられるかぁ!」
と、こんな感じで。
彼らは自分たちに作成方法を教えてくれた高順に感謝しているらしく、常々「いつか最高の味噌を作ってみせまさぁ。そんときゃ高順の旦那に一番に食ってもらいてぇ。」とまで言ってくれていた。
だからこそ旅に同行したいと言ってくれたのだ。
彼らにも家族があるし、またいつか帰ってくるから待っていて欲しい、と説得して何とか納得したもらえた。
将来は不安そのものだったが・・・自分の周りには気のいい人ばっかりで、そこは幸いではあるな、と思う。

そしてもう1つの目的。
これは彼個人の欲求でしかないが・・・「良い馬が欲しい」というものだった。
母親から贈られた馬も割と良い馬だったが、どうもこの頃疲れやすくなっていた。
購入した時点で相当な年齢だったらしいし、それを思えば本当に頑張ってくれた、とも思う。
その為母親に世話を頼み、軍馬からは引退させていた。
今まで十分頑張ってくれたのだ。あとは穏やかに暮らして欲しい。
そんな理由もあって、この旅では馬を利用せず徒歩で洛陽まで来た。
相当高順に懐いていたので連れて行って欲しかったようだが・・・あまり無理をさせるのも気の毒だ。
この洛陽は現在は商業都市としても一番賑わう場所だ。
交易で取引される馬にもきっと良い馬があるはずだ。
ただ、呂布たちに出くわしませんように・・・と内心ビビリまくってる高順だった。

「うーん・・・良い馬・・・いないもんだなぁ。」
馬を扱う店を何軒も見て回ったが中々いい馬が見つからない。
何と言うかポニーとか軽種とかに近いものばかりだ。
それも体格があまり良くない。
実を言うと、高順が欲しいのは速度重視の軽種ではない。
重種か中間種の体格の良い馬だ。
別に史実に沿って、とかまでは考えていないがいつか屈強な騎馬隊を持ちたいなあ、と考えているので軽種では少々心許ない。
重武装させてもまったく問題ない、という手合いの馬が欲しいのだ。
(やっぱこの時代じゃ重種いないのかなぁ・・・よし、今度は交易品を扱うとこへ行ってみるか。)

その後数日間探すが、やはり良い馬が見つからない。
軽種か中間種で妥協するしかないかな?と思ったその時。
ある一頭の馬が高順の眼に留まったのだった。

交易店、と言ってもそれは様々なものだ。
ちゃんとした建物を店として使用もしていれば、バラック小屋のようなちゃちな建物を使用している場合もある。
その馬のいる店は「露天」であり・・・屋根も何もない野ざらしの店だった。
そこに一頭の馬がいたのだ。
体躯が凄まじく大きい。一目見た瞬間に(黒○号?)と思うほどの大きさだ。恐らく2メートル前後はあるだろう。
体毛の色が黒・・・というか、青毛というべきか。日の光を浴びた部分が虹色に輝くかのような美しさだ。
高順は脇目も振らずその馬のもとへ歩いていく。
「はぁ・・・。」
目の前で間近に見て高順は思わずため息をついてしまった。
遠目から見ても相当大きいのに間近で見るとその大きさに圧倒されてしまう。
馬のほうもじっと高順を見つめいていたが、すぐに興味を失ったのか、ふい、と視線を逸らしてしまった。
「ふぇっふぇっふぇ、兄さん。この馬に目が留まったのかぇ?」
「へ?」
声の聞こえたほうを見ればすぐ近くに小柄な老人がいた。
外套を被っているので良くはわからないが・・・声からして男性だろう。
しかし、いつの間にいたのか。まったく気配に気づかなかった・・・。
「ふぇっふぇっふぇ。そう警戒しなさんな。しかし、兄さんもお目が高いねぇ・・・。」
「この馬、爺さんの店の売り物?」
「おお、そうともさ。しかしなぁ・・・相当に気が荒い。今まで何人も買い求めに来たが。ふぇっふぇっふぇ。こいつは誰も背中に乗せようとせなんだわ。」
馬は馬なりに人を見るってことかいな、と呟いて近くのゴザのようなものがひいてある場所に腰を下ろした。
「兄さんもやめといたほうがええぞ。目の前まで近づいて頭突きを食らわなかったのにゃあ驚いたがの。」
「頭突き・・・って。」
「ふぇっふぇっふぇ。今まで買取に来た奴は全員頭突きを食らっとったわい。後ろから近づけば蹴られる。警戒し続けてずぅっと立ったまま寝てるでな。」
ま、諦めたほうが身のためじゃて。と言ったまま会話が途切れてしまった。
高順もしばらく考えていたが・・・。
「な、爺さん。」
「ん?何じゃ?」
「それでも、この子を売りたいんだよな?」
「そりゃあそうじゃ。高い金払って買い取り、ここまで連れて来たんじゃ。売れなくては困る。じゃが・・・半分諦めとるがな。」
「買うよ、俺が。」
「・・・ほほぅ?高いぞぇ?危ないぞぇ?」
「ああ、構わない。それだけの価値があるんだ。惜しくないよ。」
「ふぇっふぇっふぇ。ならば商談といくかいの?」
それから高順は老人と幾ばくかの話をした。
齢、病気などを持っていないか、等。
結果、まだ若く、病気も怪我も無い。気性が荒々しい。そして性別が雌、この中国の馬ではない。ということも解った。
そして値段であるが・・・これまた老人の言うとおり相当な高値であった。
移送費や餌代、買い取った額も相当にかかったのだろう。
正直に言うと、この国でも良質と思われる馬の十数倍はかかる。
それでも高順は買った。その場で全額を支払ったのである。
老人もまさか本気で全額を出すとは思わなかったらしく、絶句していた。
「い、いや。兄さん。これは貰いすぎじゃ。まさか本気で全額出すとは思わんかった。この7割でええ。からかって悪かったの」と言って3割を返してきた。
高順からすればまだ多少の余裕はあったのだが内心、肥料とか味噌作っておいて正解だったな、と考えるほどの額ではあった。

さて、問題はこの後だ。どうにかして馬に認めてもらわなくては。
とりあえず、目の前まで近づいても頭突きをされないということだけは解った。
後ろから近づくのは・・・まだ危なそうだからやめとこう。うん。
考えつつも、「体を触らせてもらえないかな?」と体を撫でてみようとしたのだが。


手を噛まれました。




「ぐぬうううう・・・ま、まさか噛まれるとは。」
「ふぇっふぇっふぇ。いきなり体を撫でようとしてもそら無理じゃて。しかし・・・今まで来た奴は全て頭突きで追い返したというに。それだけで驚きじゃわい。」
「むぅ・・・。」
「まだ警戒しとるっちゅーこった。人間とて同じ。見知らぬ存在には警戒するのは同じことじゃな。」
「・・・それだっ!」
「んん?」
「爺さん、今ので解った!どうすれば良いのか!」
「ほ、ほお?」
そうだ、簡単なことじゃないか。
ついこの間まで俺は自分の馬・・・いや、購入したのは母上だけど。世話してたんじゃないか、自分の手で。こんな簡単なことに気がつかないなんてどうかしている。
「爺さん、この子の好物って何だ?馬草(干草)?」
「そうじゃな、馬草しか与えとらんでよく知らんが・・・人参はどうじゃ?」
「よし、買って来る!」
「え、おい、兄さん・・・。行っちまったよ。」

そんなやり取りをして人参と馬草を買いに走った高順を横目で見つつ、青毛の馬は「ぶるる」と短く鳴いたのだった。

~~~30分ほどして~~~
「た、ただいま・・・ぜはー。」
息を切らして高順が帰って来た。
手にはざるの様な物とそこに乗せた一杯の馬草と人参、あとリンゴもあった。
「なんじゃ、リンゴまで買ってきたんか?」
「え、ええ。うちの子も好きだったので。」
「うちの?なんじゃお主。馬飼ってたのか?」
「ええ。最初から俺に懐いてくれていましたし、ここまで大変なことにはなりませんでしたけど。」
「大事にしとったんかの?」
「そりゃもう。俺にとっては家族ですよ。もう老齢なんで、実家で世話してもらうことになりましたけどね。今まで無理させた分、これからは静かに暮らして欲しいなーと。」
「ほほー。」
なるほどなぁ。馬を大事にしてたってことか。そういう何かを感じてこの馬も頭突きせんかったのかもなぁ。
「さ、飯だぞー。」
高順は馬の口当たりのとこまでざるを持っていく。
青毛も警戒して匂いをくんくん、と嗅いでいたが、しばらくしてもそもそと食べ始めた。
人参も食べたがリンゴが好みだったらしく、すごい勢いで食べきってしまった。
体が大きいのでかなりの量を買って来たのだがあっさりと。
だが、満足したらしい。

それから、高順と馬の奇妙な共同生活が始まった。

食事の世話は勿論、糞の処理などもする。(前の馬でも同じことをやっていたので違和感なくこなしていた。
最初は嫌がられたが水をかけて体を拭く、ということもしてみせた。
その甲斐あったのか、3週間ほど経過した頃には体を触られてもまったく嫌がる素振りを見せなくなっていた。
老人は直ぐに「次の取引にいかなきゃならん」と西方へ旅立ってしまったが最後に「兄さんならきっと認められるさ。がんばりなよ」と言ってくれた。
そして1ヶ月。
高順は胸の鼓動を抑えつつ、青毛の背に鞍を乗せてみた。
嫌がられない。
手綱をくいくいと引っ張って歩行をさせてみる。
これも嫌がられない。
ならば、と後ろに移動してみる。
蹴られない。

もしかして、いける?乗せてもらえる?

青毛の隣まで移動して首や体を撫でてみた。
「ぶるる」と鳴きつつ気持ちよさそうに眼を細める。
「・・・よし。」
高順は意を決して背中に乗ってみようと青毛の体に手をかけてみた。
すると、青毛は自分からしゃがみ込んだのである。
「あ・・・。」
やった。認めてもらえた。相棒として認識されたんだ。
「な、涙が出そう・・・。」
感激のあまりそんな言葉が出てしまう。
青毛は「どうしたの?」みたいな眼で高順を見ていた。
「よし、乗るぞ・・・。」
そのまま鞍の上に腰をかけてみる。
やった、乗れたよ。乗れたよ俺!自分で自分を褒めてあげたい。


そのまま青毛がすっと立ち上がる。
「お、おおっ・・・?」
世界が高い。いや、広い。
今まで見えることの無かったものが見えそうな気がする。
今まで行けなかった場所でも簡単に行けそうな気もする。
普通に乗る馬であればここまで高い視点になることはないだろう。
今まで感じたことの無い開放感・・・いや、高揚感というべきだろうか?
そんなものが高順の体の中を駆け巡っていた。
「すごいな・・・これは。よし、少し歩いてみるかな?」

街中なので流石に駆けさせる訳には行かない。
手綱を握り、少し歩かせようと思ったが青毛は自分から歩き出した。
高順は前に進もう、と思っていたが、自分から前に向かっていく。
じゃあ今度は右に、と思ったところで右に方向転換して歩き始める。
まさかとは思うが俺が進みたいと思った方向に・・・俺の意思を読んでるのか?
「お前・・・○風か何かか?」
「ぶるる?」


よし、一度街の外へ出よう。そして広い場所で思い切り駆けさせよう。
この子だって今までずっとこの場所につきっきりだったんだ。
少しくらいは走り回りたいだろう。
「な、ちょっと外に行って駆けようか?」
「ぶるる。」
かまわない、と言った感じの返事だろうか。
「ん、そうだ。そういえば名前をつけて無かったよな・・・。」
どんな名前にしようか。
黒・・・いや、そこから王とかつけちゃ駄目だよな、うん。
高順は考える。

黒い体毛、そして光を浴びると虹のように輝く。
・・・黒い・・・虹。

「そうだな・・・ちょっと格好つけすぎかもしれないけど。虹黒(こうこく)としよう。」
「ぶるるっ。」





その後、虹黒と名づけられた青毛の馬は常に高順を背に戦場を駆け抜けることになる。
虹黒は高順の人生の中、彼に仕えた将の誰よりも早く、誰よりも長く側にいたという。
虹黒の忠義は誰もが認められるところであり、高順が死して埋葬されたときに、虹黒の遺骨も共に埋葬されるほどのものだった。

だがそれは、まだまだ後の時代のお話・・・。



~~~楽屋裏~~~
どうも、あいつです。
ようやく高順くんに背中を預ける馬が出てまいりました。
モデルはいわずと知れた黒○ですねw

そして、馬の種類ですが・・・
この時代にはいないはずのペルシュロンという種類の馬です。
WIKIなどで調べれば早いでしょうw


さて、この旅編はあまり長くしないようにしたいと思います。
最初の晋陽編だけでも8話いっちゃったので;

さてさて、次に高順君が向かうのは何処でしょう?
どうぞ、お楽しみに・・・。


あと、1日で2話更新するのは無茶。(ぁ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 番外編その2(誤字修正
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/11 13:45
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第10話

陳留にての一コマ。



虹黒という心強い仲間(?)を得た高順はそのまま洛陽を出て陳留へ向かっていた。
別段陳留に用事があった訳ではない。
むしろそこは中継地点でしかなく、目的はその隣の徐州である。
余裕があれば曹操とか見てみたいな、くらいは思っていたが考えてみれば自分を処刑する人間である。
考えるのは実際に町に入ってからでいいかな。と思い直す高順だった。

「いやぁ・・・これは凄い。」
陳留に入っての高順の第一声はこれだった。
洛陽ほどの規模ではないものの、それでも賑わいがある。
洛陽はどちらかというば雰囲気が重い都市だ。
それは年代を重ねた独特のもので・・・日本で言えば京都とかに近いかもしれない。
その点で言えば陳留は活気に溢れている。
その活気は年代を経た重みではなく、新興都市にある軽やかで新しい何かを感じさせるものだった。
昔の陳留がどうだったかなどは知らないが、もし一代でこれだけの都市に仕立て上げたのだとしたら・・・曹操という人間はとんでもない存在だ。
「超世の傑と呼ばれたのは伊達じゃないってことか・・・。」
やはり、一番気をつけるべき存在だな。・・・まだ性別知らないけど。

高順はその時何も考えていなかったのだが、今の高順は良い意味でも悪い意味でも目立っていた。
理由はただ1つ。
虹黒の存在である。
2メートルほどもある、ほとんど見たことのないような巨馬。
それに跨ってる高順。
ありとあらゆる意味で目立ちまくっているのだが、当人は洛陽で慣れてしまっていたのかそのあたりに全く気がつかない。
行きかう人のほとんどが「何あの大きな馬・・・」みたいな目で見ているし、声を潜めて色々と話もしていたのだが・・・全く気がつかない暢気な高順だった。
勿論声をかけてくるような者など誰もいない。
しかし・・・だからだろうか。
空気を読まず声をかけてくる者がいた。

「おい!そこの男!」
声が聞こえてくる。
明らかに女性の声だ。
誰のことを呼んでるのか知らないが、名前くらいは言ってやるべきじゃないかなー。
高順は自分に言われた言葉だと全く気がつかずこんなことを考えていた。
「おい、聞こえてないのか!?おいっ!」
まったく、天下の往来でそんな大声出して。やるなら他でやってほしいなぁ。←まだ気づいてない。
「あーーー!聞け!て言うか止まれ!お前だ、そこの巨馬に跨ってる奴!」
ここまで言われて鈍い高順もやっと気がついた。
「へ?俺?」
「そーだ!もっと早く気がつけこの馬鹿!」
いつの間にいたのか、すぐ近くに紅いチャイナドレス、体の右側を覆うような紫色の鎧を着た女が立っていた。
右の肩に髑髏をモチーフとした肩鎧をつけている。
髪はオールバックにしているのだが、前髪を一筋だけピンと三日月のようにして垂らしている。
スタイルも抜群で・・・美女、と言っても差し支えない。髑髏は悪趣味だと思うけど。
「ああ・・・どうも申し訳ない。全く他人事のように思ってまして。」
そう言いつつ高順は虹黒から降りる。
「で、何の用でしょう?」
「あ、ああ。」
んん、と軽く咳をして少女は続ける。
「その馬。私に売ってくれないか?」
いきなり何を言ってるんだ?と高順は思った。外見を見れば自分が商人では無いことくらいわかると思うのだが。
「・・・駄目です。」
「何故だ、金なら出すぞ?」
女は不満げに言う。
「いや、金の問題ではなくてですね。この子は俺の相棒みたいなものなんです。」
「相棒、だと?お前も金を払ってその馬をどこかから購入したのだろう?それ以上の金は払ってやる。」
「確かにその通りですが・・・困りましたね。まだ出会って日は浅いですが俺にとっては家族も同然なんです。家族を売ってくれ、と言われてわかりました。と売らないでしょう。」
「むう・・・。」
高順は無意識のうちに虹黒の首を撫でていた。
虹黒も気持ちよさそうに眼を細める。
「ううっ・・・ど、どうしても売って貰えないか・・・?」
「ええ、こればかりは。」
「な、ならば・・・!」
「はい?」
「私と勝負しろぉっ!」
女はどこからか禍々しい形の刀を持ち出してきた!
「はああああっ!?何でそうなるの!?あとそんな馬鹿でかい刀どっから出した!?」
「うるさいっ!私が勝ったらその馬を寄越せ!お前が勝っても寄越せ!!」
「何その俺様理論!?どっちにしてもあなただけが得をする流れじゃないですか!?」
「私はチマチマとしたことが大嫌いなんだ!素直に売ればこうはならなかったというのに!」
そう言って女はどでかい刀を思い切り上段に構える。
「チマチマした部分がどこにあったと!?万人に理解できるように説明を求めますよ可愛いお姉さん!」
「!!」
・・・何か動きが止まった。
上段に構えたままピクリとも動かなくなる。
「か、かかかっ可愛い!?なな、ななななな・・・何を言い出すのだ貴様!?」
「いや、実際俺の主観からすれば普通に可愛いですからって何言わせるんですかあなた!?とにかくその物騒な物しまって下さいって!」
高順もテンパっているためか、自分がおかしなことを言ってるのに微妙に気づかない。
変な雰囲気で一触即発。
周りにいた住人達も不安そうに・・・一部野次馬と化している者もいたが、見守るだけしか出来ない。
だが、刀を振りかぶったままの女と高順の間に割り込んでくるものがあった。
虹黒である。
「な、何・・・?」
「お、おい。虹黒!?危ないから下がってて!」
後ろから高順の声。そして目の前には刀を振りかぶった女。
虹色は下がらない。
殺気を篭らせた眼でじっと女を見据える。
女も予想外のことに驚きを隠せない様子だった。
(な、何だ・・・?馬だぞ?たかが馬なのだぞ!?それが・・・自分から主を守るように立ちはだかるとは。しかもこの殺気は・・・!)
本来、馬というのは臆病なものだ。
体の大きさに似合わず、優しい部分がある。
主人が未熟だとからかったりもする茶目っ気のあるものもいれば、本当に気性の荒いだけの扱い辛い馬だっている。
だが、総じて言えば臆病な馬のほうが多い。
それを理解しているからこそ主人のために立ちはだかるこの巨馬に女は驚き、畏怖を覚えたのである。
「・・・。」
「虹黒、下がるんだ!大丈夫だから!」
それでも虹黒は下がらない。

「おい、そこ!何をして・・・ん、姉者?」
そこに人ごみをかき分けて誰かがやってきた。
「あ、秋蘭・・・。」
「・・・?」
む、また美人さんが来ましたよ。
今度やってきた人は青いチャイナドレス。今目の前にいる女とは対照的に理知的な感じのする女性だ。
ただ・・・この人は今まで一触即発(?)状態だった女とは逆側のほうに鎧を着けている。
髑髏の肩当も反対の左方向だ。
左右対称、という言葉がしっくり来る。
あと、両者共に胸まあいいか。しかし・・・髑髏が流行ってるのだろうか?
「なんだ、姉者の起こした騒ぎだったか。」
「な、なんだとは何だ。私は悪くなどないぞ。」
弁解する女を横目に青いチャイナドレスの女性が高順の下までやってくる。
まだ殺気をみなぎらせている虹黒を見ながら「随分と立派な馬だな。・・・怪我は無いか?」
「え、はあ。ありません。」
「そうか、それは何よりだ。どうせ、姉者が無茶を言ったのだろう?「馬を寄越せ、今すぐ寄越せ!」とか。」
「その通りです!」
「なんで解るんだ・・・?」
「ははは、本当にすまない。許してやってくれ。・・・ほら、姉者も謝るんだ。」
「おい、秋蘭!私は何も悪くないと・・・!」
「ああ、解った解った。しかし、本当に立派な馬だな。姉者が欲しがるのも頷ける。」
「うむ、その通りだ!」
褒められたわけではないのに姉者と呼ばれた女は胸を張る。
「はぁ・・・。姉者?頼むから厄介ごとを増やさないでくれ。ああ、申し送れた。私は夏侯淵。字を妙才という。先ほど姉者が呼んでいたのは真名でな。」
「か、かこーえん!?」
この人が?WHY?じゃ、向こうの人・・・夏侯惇???
(ああ、やっぱり女性ですかそうですか。有名武将もいいとこの夏侯淵もやっぱり女性ですか?もう慣れましたとも。・・・うう、男の武将はいないのですか?少しくらい出て来てくれてもいいじゃん?俺、なんかどんどん肩身が狭くなってくよ・・・。)
「お、おい。どうしたんだ?」
夏侯淵が心なしか心配そうに見ている。
「いえ、何でもありません何でも。は、はははははは。」
「何でもない割には随分疲れているように見えるが。」
「気のせいです。・・・じゃあ、あちらのおっかない人は夏侯惇殿?」
「なっ!何故私のことを知っている!?」
夏侯惇と呼ばれた女性は肩をいからせ高順に詰め寄ろうとするが、また虹黒に阻まれた。
「あうっ・・・。」
「はぁ。諦めろ姉者。どう見ても非はこちらにあるのだ。大人しくしていてくれ。」
「そ、そんなぁ。しゅうらぁ~~~~ん・・・」
「情けない声を出さないでくれ。・・・ああ、すまない。しかしな。何故姉者の事まで知ってるのだ?」
うわ、しまった。またやっちゃったよ。
知識があるから無意識にやってしまう。悪い癖だよ。
言い訳ならある程度は思いつくが、さて。
「そりゃ、有名ですもの。夏侯姉妹あっての曹猛徳。曹猛徳あっての夏侯姉妹、とか。外見までは知りませんでしたけどね。」
「ほう、そうか。ふふ、その言葉を言ったのが誰かは知らないが中々の慧眼だな。ところでお前の名を聞いていないのだが。」
「いや、俺の名なんて。耳汚しでしかないですよ。」
「謙遜するな。この馬・・・虹黒と言ったか?これほどの馬にあれだけの覚悟と忠誠を抱かせるのだ。お前が只者ではない、ということくらいは解るさ。」
「いや、本当に只者ですよ?・・・・・・まあいいか・・・。俺は姓を高、名を順と申します。」
「高順、か。ふむ、覚えておこう。・・・ほら、姉者。何をぼーっとしているんだ?早く仕事に戻るぞ。」
「え?し、しかし。馬・・・お、おい引っ張るんじゃない!?」
「姉者も見ただろう?あの馬と高順の絆を。姉者がどれだけ脅迫しようとどうしようもないさ。ではな、高順。」
妹に首筋をつかまれずるずると引きずられていく夏侯惇。
「きょうはく・・・難しい言葉で言われてもわからんぞっ!おいっ、高順とか言ったな!私は諦めないからなー!おいこら、いい加減放せ秋蘭ー!?」

そんなやり取りを見て周りの人だかりも少しずつ消えていく。
一部「なんだ、つまんねー」という雰囲気で去っていく者もいたが。
いつか泣かす。

・・・しかしながら、まさに台風一過。
あーいうの見てると丁原様とか朱厳様を思い出しますね。元気でやってるのでしょうか?
「ぶる・・・。」
「お、虹黒。悪かったな。」
頭を撫でてみる。
「命を助けてもらったなあ、今日は奮発しよう。リンゴたくさん買ってあげるからなー。」
「ぶるっ!」


こうして、一時だけのものではあるが、陳留での騒動は一旦幕を下ろす。
高順は何の因果か後に夏侯姉妹と激戦を繰り広げることになるが・・・。


それはまた、別のお話である。



~~~楽屋裏~~~
番外編その2です。やっぱり短いです。

私の中での魏の扱いはこんなものですあいつです(どんな挨拶ですか

やっと出てきましたね、魏武の人々。
このシナリオでの曹操は現状は敵なのであまり扱いが良くないかもしれませんね。
さて、次は除州に向かいます。
その前に高順もそろそろ(人の)仲間を迎えたいところですね。次あたりに出るでしょう。

先ほど誤字修正したのですが「あまり」を「あまち」て。
死にたい(恥

それではまた。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第10話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/26 18:21
習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第10話

洛陽から陳留。そして徐州へ。

これが高順の立てたプランである。
徐州からも更に移動するつもりだが、一応は数ヶ月滞在するつもりだ。
陳留では目立つことは絶対に出来ない・・・とは思いつつも夏侯惇のせいで意味無く目立つ羽目になった。
今曹操と出会っても意味が無い。高順は判断した。
それに、夏侯惇怖いし。

滞在する期間が長いのも理由がある。
それは彼の地が呂布が敗死する場所であり、自身の終焉の地だからだ。
史実の呂布が曹操に敗北した理由は様々だ。
元の能力の違いもあっただろう。
戦力、政治力、その他諸々。
また、劉備を手懐けようとして失敗した、ということもある。
劉備という男の本質を理解できていない、という点で人を見る眼も無い。
部下の能力も・・・実際に大したことの無い連中ばかりだ。
頼れるのは張遼と陳宮くらいしかいない。
歴史の結果を知ってるからこその評価でしかないのだが、それでも他の呂布軍武将の経歴を知ってる高順にとって、武将の不足というのは由々しき事態だった。
そして、高順にとってはこれが一番の理由だと思うのだが・・・民の信頼を得られなかったことではないか?とも思うのだ。
つまり、高順のやることは。
呂布が来る来ないに関わらず、僅かなりとも民の信頼を得ておこう。ということだ。
当然、数ヶ月だからそう眼に見えた成果というのは出ないだろうがやらないよりはマシだ、という結論だった。
それに、もしかしたら部下・・・いや、仲間を得られるかもしれない。
それで呂布の敗北、そして自分の死を防げるかどうかまでは解らない。
自分が史実どおり呂布に仕えるかどうかすら解りもしない。
しかし、やらないよりはマシだろう。



そう思っていた時期が俺にもありました。あったんです・・・。



どうも皆さん、高順です。前置きが長くなりましたがいかがお過ごしでしょう?
俺は今・・・またしても大変です(涙


「どうしました?高順殿。」
「あー、いや。どうしてこうも面倒ごとばかり巻き込まれるかなぁ?と考え事をしてまして。」
高順は目の前にいる少女に返事をする。
銀髪で、前髪を短く刈り込んでいるが後ろは伸ばしており、三つ編みにしている。
髪の形が・・・なんとなく耳を垂らした犬のような形に見えなくも無い。
金属で作られた無骨な軽鎧でしなやかな身体を包み、腕に手甲をはめている。
その手甲は拳の部分まで包み込んでいて、手甲というよりも「ナックル」といったほうが良い代物だった。
身体のあちこちに傷がついているが、それは彼女が厳しい鍛錬を己に課し、それだけの戦いをくぐってきたことの証左といえるかもしれない。
彼女の姓は楽、名を進。字を文謙。真名を「凪」と言った。

「も、申し訳ありません。まさかこんな事になるとは。」
「はは、まあ楽進さんのせいではありませんしね。」
「あー。高順さんまだ凪ちゃんって呼ばないのー。」
「あーあー。ほんま高順はんは強情やなー。凪も苦労するで。」
「おい。沙和、真桜。おかしなことを言うんじゃない。」
そう言いながら高順たちの元へ歩いてくる2人の少女。
1人薄く紫がかった髪で腰に工具のようなものをぶらさげている。
胸を・・・現代の感覚で言えばビキニ水着のようなもので覆っている。
彼女の胸は大きく、歩く度に自己主張するかのようにたゆたゆと揺れる。
何故か関西弁を使っている。高順は彼女と話すたびに張遼を連想してしまう。
もう1人は金・・・いや、栗色の髪。
大きな眼鏡とそばかすが大きな特徴で、彼女もまた胸が大きい。

関西弁を使う少女の姓は李、名を典。字は曼成。真名は「真桜」。
眼鏡の少女は姓を于、名を禁。字を文則。真名が「沙和」。

今高順のいる地は大梁と呼ばれる地のとある村落があった場所。
「梁」とも呼ばれるこの地は陳留のすぐ南東に位置する。
この場所は高順の目指す除州への通り道なので通過するだけなら特に問題は無い。
無いのだが、何故か彼女たち3人が高順の旅についてくることになったのだ。
そもそもの発端は高順が陳留を出る少しだけ前の事だった。

~~~数日前、陳留にて~~~

例の騒ぎの後、高順はリンゴと馬草を買い込み食堂へと向かっていた。
「今日は麻婆豆腐とご飯の気分だ。」と呟きながら虹黒の手綱を引きつつ移動している。
流石に乗りっぱなしでは人目につく、ということを理解したからだった。
「ちょっとここで待っててくれよ。すぐ帰ってくるからさ。」
少し迷惑かもしれないが、虹黒を食堂の前で待機させる。
周りの人の奇異の視線などまったく気にはならない。
ただ、虹黒だけにするのも不安ではあった。
誰かに連れて行かれたり、傷つけられたりしないだろうか?
「じゃ、行ってくるからな」
「ぶる。」
食堂にすぐ入ってから「ずごしっ!」という音と「ぎゃああああああ~~!」と叫ぶ誰かの声がした。
高順が店に入ったと同時に誰かが虹黒を盗もうとして、そして反撃を食らったのだろう。
「・・・心配は不要、かな?」
乾いた笑みを浮かべる高順だった。
適当な席に座り、店主に「すいません、麻婆豆腐とご飯」と注文し、何となく店内を見回してみる。
時間もちょうど昼ごろで、賑わっているとは言わないが人が少ないというわけでもない。
3人の少女がすぐ隣に座っており、一目見ただけだったが「ふむ、また可愛い女性がいるな」程度の認識で特に気になるものでもなかった。
そこら辺で、店員のお姉さんが「はい、お待ちどうさま」と麻婆豆腐とご飯を持ってきてくれた。
ありがとう、と応えレンゲを持ち「いただきます。」と言った瞬間。

喧嘩が発生した。

「ちょ!何すんねん!?この竹かご大事な売り物やっちゅーに!」
「うるせぇ!んなとこに置いてるのが悪りーんだ!」
「何やと!」
「さ、真桜ちゃん・・・やめようなの。厄介ごとはよしたほうがいいの。」
「そうだ、真桜の言うとおりだぞ?」
「せやけどなぁ・・・悪いのあいつらやんか!」
「はっ、んな竹かごの1つや2つでうだうだ抜かすんじゃねえ。っけ。」
そう言って男は竹かごに唾を吐きかける。
「こ、この酔っ払いのオッサン・・・!もう限界や!」
どうも、彼女達の売ってる物を壊され、その上ケチをつけられたらしい。
それに対して・・・また随分巨乳な少女が文句をつけたらしい。
あーでもないこーでもないと文句を言い合っている。
どこの町でもよくある光景といえばそれまでなのだが、どんどんエスカレートしていってる。
「そんなもん、足元に置いとくほうが悪いんだよ!」
「邪魔にならんようにしとったわ!おどれが酔っぱろーて足元ふらつきながら歩いたのがそもそもの原因や!」
「なんだとぉ!?」
「なんや、やるんかい!?受けてたったるどコラァッ!!!」

(また随分と熱いやり取りだな・・・。)
正直、この件に干渉するつもりは高順にはまったく無かった。
どちらにも非があるしどちらにも言い分がある。
これは高順の考えだが、もし実力行使になったとしても少女達の方が確実に勝つ、と踏んでいる。
結果の解ってる小さな喧嘩に介入したくなかった。
それに今高順は麻婆豆腐を食べるのに忙しい。
と、そこへ少女が「落ちてきた。」
どがしゃあん、と派手な音を立てて高順の座っていた席にさっきまで言い争いをしていた少女が飛び込んできた。
いや、飛び込んだというか、突き飛ばされてバランスを崩した。といった感じか。

「あ・・・・・・。」
「痛っつつつ・・・ああ~、背中にご飯とか麻婆豆腐がぁ~・・・。」
「はっ、ざまぁみやがれってんだ。」
と吐きながら酔っ払いの男が自分の席に帰っていく。
その席には8人ほどの男達が座っている。
「おいおい、餓鬼相手にやりすぎんなって。」「ああ?あいつらが全部悪いんだ。ったく、迷惑料払ってもらってもいいくらいだぜ。」と、自分勝手なもの言いをしている。

「な、あんた。大丈夫か?」
「うう、大丈夫やけど・・・背中が気持ち悪い・・・。あ、凪・・・どこ行くん!?」
ん?と、隣を見やる高順。
見ると、銀色の髪の少女が男の席に向かっていくのが見えた。
「おい。」
「あ?んだよ?」
殺気を押し殺した声で先ほどの酔っ払いを呼び止める。
「ただの口喧嘩ならまだしも・・・暴力を振るうのなら話は別だ。彼女に謝ってもらいたい。」
「はあ?なんで俺が謝らなきゃなんねーんだ?」
ニヤニヤと嫌らしい、下卑た笑みを浮かべつつ酔っ払いは言う。
「竹かごを壊した事と彼女に手を出したことは全くの別問題だ。」
「けっ、うるせえ餓鬼だぜ。・・・おらっ!」
酔っ払いは銀髪の少女の頬をいきなり殴りつけた。
「凪!?」
「凪ちゃん!?」
「くっ・・・。」
そこへ店の店主が「お、お客様、どうか喧嘩沙汰になるようなことは・・・」と、やってきたのだが・・・酔っ払いの仲間が「いやいや、被害者はこっちですから」とかまたも自分勝手なことを言っている。
「で、ですが・・・。」
「おいおい、おっさんは黙ってなって。悪いのは全部この餓鬼どもだからさぁ・・・。」
「ううっ・・・。」
店主は完全に怯え、他の客も皆怖がって近づこうともしない。
「あ、あんの酔っ払いども・・・もう我慢でけるかぁ!」
「ここまでやられて黙ってるほど私もお人よしじゃないのっ!」
舐められた真似をして黙っていられなくなったのだろう。眼鏡さんと巨乳さん(高順命名)が酔っ払いの席へ向かっていく。
「て、てめぇらっ・・・えべふっ!?」
さっき巨乳さん(仮)と銀髪さん(仮)に乱暴なことをした男が一瞬でのされる。
「こ、この餓鬼どもっ!やっちまえ!」
「うるさいっ!」
「ぎゃあああっ!」
気勢を上げた男も銀髪さん(仮)に一撃でKOされた。
他の男たちも仲間の敵を討とうとして向かっていく。
周りの客は悲鳴をあげ(一部はしめしめ、といった感じに)店から逃げ出していく。
「あ・・・あーあ・・・やっちゃったか」
そんな混乱にも動じることなく自分の席を片付けていた高順がやれやれ、と首を振った。
まあ、何がどうなってもあの子達が勝つだろうな。
気の毒なのはここの店主さんだけど。

「ぎゃああああああっ!」
男が2人同時に高順の近くまで吹き飛ばされてきた。
高順は周りを見渡してみるが、さっきまで威勢よくほえてた男達は一人残らず倒されていた。
今目の前にいる2人が最後だったということか。
「はんっ、ざまぁ見さらせこのスットコドッコイどもが!」
「佐和たちの完全勝利!なの!」
「全く。素直に謝っておけばいいものを。」
「あー・・・でも、どないしよ。飯全部駄目になってもうたし、竹かご・・・うわ、全部壊れとる・・・。」
「うええ・・・どうしようなの・・・」
「・・・困ったな。せっかく村の皆で作ったのに・・・。」
喜んだり落ち込んだり、忙しい。
(あんだけ暴れておいて・・・元気なお嬢さん達だな。)
実際のところ、高順と1つか2つしか違わないような齢だが、そう思わずにいられない。
何せ息切れ1つしていない。
割と本気で強いのかも、と高順が思ったその時。
目の前に飛ばされた2人の男がゆっくり立ち上がり、懐から短刀を取り出した。
「あ。」
高順が間の抜けた声を出す。
「く、くそ。よくもやってくれたなぁ。ええ、おい?」
「ここまで恥かかせてくれたんだ。生きて帰れると思うんじゃねぇぞ、クソ餓鬼がぁ・・・。」
得物を出した男達に、3人娘の表情が硬くなる。
「うわっ、喧嘩で光り物出しよったで。」
「負けることはないと思うけど・・・。」
「しかし面倒だな。・・・どうもあの2人だけではないらしい。」
え?と周りを見る眼鏡(仮)と巨乳(仮)。
他に3人の男が立ち上がり、短刀を取り出す。
「むー。こんな狭い所でか。一気に組み付かれたら・・・凪やったらええやろうけど。」
「ふう。突破するしかないか。」
「へっへ。もう謝っても許してやらねぇ。」
「謝るべきなのはそっちのほうなの。」
「うっせぇ!今度こそやったらぁっ!」
短刀を構える男達。
だが――――。
一瞬で動きが止まった。
いつの間にか高順が三刃戟の槍部分を男の首元に突きつけていたからだ。
「え?」
「あれ・・・?さっきの兄ちゃんやんか。」
「・・・手助けしてくれるつもり、か・・・・・・?」
三人娘と短刀を握り締めてる5人の男達の視線が一斉に高順に注がれる。
「な、てめぇ・・・」
「ったく。酔っ払いのすることだと思って黙って見ていれば。でも、そんなもの使うつもりなら黙ってられないねぇ・・・?」
ぐい、っとさらに三刃戟を突き出す。
もっとも、高順は三刃戟の刃部分すべてに木製の鞘をつけている。
それでも本気で振り回せば殺傷能力は十分にある。
「そこのお嬢さんたち、こっちへ。」
高順は手招きをする。
彼女達も素直に従い高順の所へ移動する。
男達も追いかけようとするが仲間に武器を突きつけられて動くに動けない。
「あ、あの・・・」
「話は後。まずはここから出よう。」
「は、はい。・・・行くぞ、真桜、佐和。」
銀髪さん(仮)が真桜、佐和と呼ばれた2人を促して食堂から出る。

ふう、行ったか。
「さて、と。おっさんたち。この落とし前どうするつもりかな?どれだけ店に迷惑かけたか。わかってんの?」
威圧感と殺気を込めて言ってみる。
今まで感じたことの無い寒気を覚えて、完全に男達は黙り込んでしまう。
高順はこれまで幾度か戦場に出ている。
人を殺したのは晋陽軍との戦いが初めてだったが、それまでにも小規模な賊の捕縛などはこなしていたのだ。
その上、数千の兵が戦う戦場を一度とはいえ潜り抜けている。
そこらで喧嘩をしているチンピラなどとは比べるべきではない。
「う、うう。」
「あ、店主さん。」
店の中で呆然としていた店主に高順は声をかける。
「は、はい?」
「警備隊呼んどいて。で、こいつらに責任とらせりゃいいさ。ちゃんと状況説明してね。」
「へ、は、はい。すでに店員に行かせましたけど・・・。」
「あはは、手際いいねおっちゃん。んじゃ、遠慮なしね。」
言うが早いか、高順は三刃戟の柄のほうで男を叩きのめした。
「うわ!?よくもぶぺらっ!」
他4人も一撃で気絶させていく。
「はあ。こーいう手合いはいつも同じ事しか言わないんだから。・・・じゃね、おっちゃん。迷惑かけてごめんよ。」
そのまま高順は出て行こうとするが、まだお代を払ってないことに気がついた。
「ごめん、忘れてた。・・・はい。」
懐から結構な額の金を出し、店主に手渡す。
「い、いえ。こんなに沢山は頂けません・・・。」
店主は恐縮するが、高順は無理やり同然に押し付けた。
「まあそう言わないで。修繕費の一部に使って、ね?足りなければこいつらから取り立てればいいからさ。」
それじゃ、と今度こそ高順は店を出た。
外で待たせていた虹黒の元へ急ぐ高順。
「よし、虹黒。行こうか。」
そこにタイミングよく街の警備隊がやってきた。
「うわ、やべっ。急ぐぞ!」
「ぶるるっ」
高順は虹黒に飛び乗り陳留を出たのだった。


「はぁ。なんだか忙しい一日だったな、虹黒。」
「ぶる」
高順のぼやきに、虹黒はいちいち反応して鳴き声を上げる。
律儀と言うか何と言うか。
この当たりは微妙に高順と似てるのかもしれない。
そこへ。
「おおーい!待ってんかー!!」
さっきの少女達が追いかけてきた。
「ふえ?」
「ぜっ、はぁぁ・・・酷いで兄ちゃん。「話は後」言うてまさか放置してくとは・・・」
あ・・・忘れてたよ。
高順は虹黒から降りる。
「ああ、申し訳ない。自分の身を守るのに精一杯でして。」
「あんだけの殺気出せるのに?冗談はやめてや?」
「ううっ、疲れたの~。」
「ふう。・・・2人とも修行が足りんぞ。」
「うっさい。凪みたいな体力なんて修行したところでそうそうつかんわ。」

賑やかな人たちだ。嫌いじゃないけど。
「それはそうと。先ほどは有難うございました。」
「せやせや、ほんまおおきにな。」
「ありがとうなの!」
どうも、感謝の言葉を言うためにわざわざ街の外まで追いかけてきたらしい。
「はは。俺の助けなんて必要なかったと思いますけどね。」
「それに、貴方の乗っている馬にも助けていただきました。」
「はい?虹黒に?」
「虹黒という名前なのですか。あの後、店から出たところで警備隊に捕まりそうになってしまって。そこを助けてもらったのです。」
銀髪さん(仮)の言葉を聞いて高順は虹黒の首を撫でつつ(虹黒・・・何やったんだよ?)と思っていた。
「・・・もしかして、頭突きか後ろ回し蹴りのどっちかですか?」
「・・・・・・両方です。」
両方かよ。
「はぁ。長居するつもりは無かったとはいえ。」
「申し訳ありません・・・。」
「いやいや。今も言ったとおり長居するつもりは無かったですからね。」
「せやけどなー。うちらも困ったことになってもうてなー。」
「困ったこと?・・・えーと。名前なんですっけ?」
「あ、せや。名前教えとらんかったな。うちは李典、字を曼成いいます。で、この眼鏡が・・・。」
「むー。眼鏡とか言わないで欲しいの。私は于禁。字は文則なの!」
「私は楽進。字を文謙と申します。」
少女達は皆、高順に一礼をする。

楽進、李典、于禁。
いずれも名のある武将だ。しかも3人も。
というか、またしても女性か。
神様。お願いです。どうか、誰でもいいから男性武将を出してください。
もう俺色々きつすぎて泣きそうです・・・。
しかし、夏侯姉妹に続いて3人も後の魏の将に出会うとは。
「で、兄ちゃんの名前は何ちゅーの?」
「・・・はっ。」
もうあれです、立て続けに事が起こって俺の神経がついていきません。本当助けて・・・じゃない。
「申し訳ない。俺は高順と言います。」
「高順殿ですか。解りました」
「で、困ったことって?」

自分には関係のないことなのにわざわざ聞いてしまうのが高順の弱点であり、長所だった。
何せ甘いというか何にでも首を突っ込みたがる。
高順の人の良さは、矯正しようの無いレベルだった。
おかげで多くの人が彼に好意的な評価を下すのだから、世の中というのは解らない。
そのせいで常に厄介ごとに巻き込まれるおまけがついてくるのだが。

「その。私達もお尋ねものになってしまったようで・・・。」
これで街に入れなくなってしまいました。と楽進が顔を伏せる。
「ただ入れない、というだけなら良いんだけど。」
はぁ、と李典がため息をついて更に続ける。
「村の皆で作った竹かごを陳留で何度か売ってたの。そうやってお金を作って村の資金に充てて・・・。」
「その上、今回は先ほどの騒ぎのために予想していたより稼ぎが少なくなってしまいました。これでは村の皆に合わせる顔が無い。」
「なるほど。本来稼げた額を遥かに下回った。でもって一番近場で栄えてる都市に行商にこれない。それが困ったこと、か。」
彼女達は事情を説明すればいいのだろうけど、虹黒が警備隊相手に頭突きとか、後ろ回し蹴りとかかましたらしいから・・・無理かもしれないな。
高順には村のことなど関係のない話なのだろうが、虹黒が彼女らを助けるためとはいえ警備隊相手に大立ち回りをしてしまったので無関係とも言い切れない。
人の良さも相まって(何とかしてやりたいな)と高順は考えていた。
ただ、単純に金を出しても楽進あたりが絶対に拒否するだろう。
となると方便が必要になってくる。さて、どうしたものか。
(ん?そうだな・・・これくらいしかないかな。よし。)
「なあ、楽進・・・さん?ちょっと聞きたいんだけど。」
「はい?何でしょう?・・・あと、呼び捨てで構いませんよ、高順殿。」
「そうですか。それじゃ楽進・・・さん。」
3人娘が「がくっ」とずっこけそうになる。
「ま、まあ後々慣れてくれれば・・・で、何ですか?」
「ここから大梁の・・・あなた方の住んでる村?日数としてはどれくらいかかります?」
「ここから、ですか?そうですね・・・3、4日もあれば。」
「そうですか。じゃあ・・・道案内と護衛。お願いできます?」
『え!?』
高順の言葉に全員が驚いた。
道案内?護衛?自分たちの村に何か用でもあるのだろうか?特に何かがあるわけでもない小さな村なのに。
「あー。実はですね。徐州に向かう途中なんですよ。ですから皆さんの村を通るかもしれないでしょ?道とか解らなくて不案内ですからね。それでそこまでの道案内を兼ねた護衛お願いしたいかなー、と。」
「それくらいやったら別にかまへんけど・・・。」
「うん、全然問題ないの!」
「ありがとうございます。で、報酬のほうですが。」
『はあ!?』
また3人娘達が驚く。
「報酬って、金払うつもりなんか!?」
「ただ道案内するだけでお金だなんて・・・貰える筈がありません!」
「そうなの!ここら辺は平和なほうなの。前は多かったけど。太守様が変わってから盗賊討伐が盛んになったし・・・。」
3人同時に言ってくるので流石に高順も戸惑う。
「お、落ち着いて。まず最初の質問。護衛もしてもらうんだから当然です。2つ目。何をするにしても報酬は必要だと思います。我々は主従関係ではありませんしね?3番目。あまり。ということは出ることは出ますよね?危険性はあるということです。」
そのあたりのことを考えての報酬です。と高順は締めくくった。
ここまで言われて楽進たちも気がついた。
彼は自分たちを助けようとしてくれているんだ、と。
余計なお世話と言えなくもないが、彼は恐らくこう思っているのではないだろうか?
「街に入れなくなった原因を作ったのは自分だろう」と。
確かに、あの町で商売を出来なくなったのは大きな痛手だ。
ほとぼりが冷めればそんなこともないだろうが・・・それでも若干やりにくくなる、という事実は残る。
それを考えれば、悪い話というわけではない。
「・・・ほな、商談と行きまっか?」
「あ、おい。ま・・・じゃない、李典!」
「ええやんか。高順はんはうちらに仕事任してくれようとしてるんやで?そこに報酬まで付けてくれるとまで言うてる。稼げなかった分、取り戻す機会やで?」
「しかし、だからといって!」
「いいんですよ、楽進さん。」
「こ、高順殿。」
「あなた方にはそれだけの実力があると思いますしね。その腕を高く評価して、と。」
さらさらと竹簡に筆で金額を書き込んでいく。
「3、4日分の拘束代金・・・で・・・成功報酬・・・ん~。こんなものかな?」
そう言って3人に代金を書き込んだ竹簡を見せてみる。
『ぶーーーーー!?』
竹簡を見た3人は同時に吹いた。
「ちょ、何事!?」
「どどどどど、どいだけ高額やねん!?」
「こ、こんな額ちょっと見たことないの・・・」
「我々が何回陳留に行けばこれだけの額になるんだ・・・?」
「10回や20回じゃきかんと思う・・・。」

あれ?なんか呆然とされましたよ?
おかしいな。彼女らの腕を鑑みればこれくらい普通だと思うんだけどな。
じゃあ現物支給のほうがいいのかな?
ならば、と思い高順は自身が背負っている袋(大きいリュックサック)の中身を探し始めた。
このリュックサックは上党で服や布の仕立て屋さんに手伝ってもらって作成したものだったりする。
金属の留め金を使っているからそこそこに値段はかかったものの、大量の食料や水などを仕舞うのに相当役に立つ。
そのリュックは4つあり、そのうちの1つを高順は物色し始めた。
普段は虹黒の鞍に引っ掛けてあるのだが、数が多くて砂漠移動中の駱駝を連想しそうな装備である。
余談ではあるが虹黒に乗せている鞍も職人に頼んで作ってもらった特注品で、槍や剣、弓などを取り付けれるような形にしてある。
三刃戟もそこに挟み込まれており、いつでも取り出せるようにしてある。
「あの、高順殿?」
楽進が遠慮がちの声をかけてくる。
高順はまだリュックサックの中身を漁っており振り返りもせずに返事をした。
「何です?」
「お気持ちは嬉しいのですがこれは少し貰いすぎだと思います。僅か3日程度の道のりでこれほどの額を頂くわけには・・・。」
「何言うてんねん凪。こんだけ貰えりゃ村の皆も喜ぶやんかっ?」
「そうなの。高順さんの好意を最大限利用するの!」
李典と于禁が小声で楽進を止めにかかる。
「いや、しかしだな・・・それより人前で真名を呼ぶんじゃない!あと最大限利用とか言わなかったか今!?」
何の漫才をしているのやら。
「ごほんっ。そうじゃなくて。あの、高順殿?」
「あったー!」
高順が目当てのものを見つけたらしく歓声を上げる。
「え?あの、あったって何が?」
「これです。どうぞ。」
高順が何か丸い鏡のようなものを楽進に渡す。
楽進も流されるままに素直に受け取ったが、「それ」をじぃっと見て驚きの声を上げた。
「こ、これって、璧じゃないですか!緑色の・・・もしかしてこれ、翡翠ですか!?」
「ご名答。で、もう1つ。」
もう一個、銀色の棒のようなものを楽進に投げ渡す。
翡翠の璧に傷をつけないように片手で持ち、もう片方の手で棒を受け取る。
「わっと!?・・・高順殿、これは何でしょう?」
その棒を穴が開くほど凝視する3人。
高順はこともなげに「何って。銀ですけど?」と応える。
「はぁ。」と気の無い返事をした楽進達だったが数瞬後、またも「はああああああっ!?」と叫んだ。
「・・・あー、えらく驚き癖がありますね、3人とも。お兄さんは嬉しいです。」
「ぎ、銀!?銀の、のべ、延べ棒っ・・・。これ、本物なの!?」
「う、うち、こんなん初めて見たで・・・。」
楽進はもう何を言っていいのかも解らないようで唖然として口をぱくぱくさせるのみだった。
3人とも「何でこんな高価なもの持ってるの!?」とでも言いたげな顔をしていた。

実は翡翠の璧も銀の延べ棒も洛陽で購入していたものである。
虹黒を購入したことでかなり減りはしたものの、大量のお金が残った。要するに「重い」のである。
持って来すぎた・・・と、内心で後悔したのだが「じゃあ換金できる物品に換えれば良いよな?」と考え、璧や銀、金といった「価値が高いがあまりかさ張らない」ものを買い込んだのだ。
それがこんなところで役にたつとは。
「ど、どんだけ金持ちやねん・・・?」
「ま、あまりお気になさらず。で、いかがです?引き受けていただけます?」
もうここまで来ると圧倒されたのか、それとも呆れたのか。3人ともただコクコクと頭を縦に動かすのみだった。

ここで終わればよかったのだが、やはりというか何と言うか。
高順はまたしても厄介ごとに巻き込まれることになる。






~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。
流石にこれだけ書くと1日更新は無理です。
というか1日1回とか2回更新はあほすぎる、と今さらながらと思いました、本当に。

で、書いてみての感想なのですが。



あ、あるぇー(゜3゜)?

でしたorz

あれ・・・?なんで1話で終わってないの?約束したじゃないお姉さんと。(誰が)
罪なので罰としてt(以下略

誤字が多いですね。徐州なのに除州とか・・・
ちょっとだけ修整しました。


それではまた!



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第11話(誤字修正
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/26 21:33
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第11話

高順です。いかがお過ごしでしょうか皆様。

だからね。行く先々で厄介ごとに巻き込まれるのは俺の体質ですか?
そうやって叫びたい気分です・・・。


大梁までの3日ほどで、高順と楽進たちは随分と打ち解けていた。
3人ともすぐに高順に真名を教え、呼ぶことを許可してくれている。
最初に真名を教えてくれたのは楽進・・・凪だった。
それについては沙和と真桜も随分驚いていた。
「あの堅物の凪が!?」といった感じに。
凪も「そんなにおかしいか!?」と叫び返していたが。
僅か3日間だけの旅だが彼女達の性格について高順は大体理解できていた。
何より彼女達のやり取りが楽しい。
彼女達が高順の話を興味深そうに聞く時もあった。
一番興味があったのは彼女達の腕前だが、これもまた大したものだった。
凪は格闘家で「気」というものの使い手だという。
かめはめ○のようなレーザーっぽいのは撃てないが、気で弾を作り出し、それを放つ程度のことは出来ると。
それくらいの技を持っているので恐らくは硬気功とかもできるのだろう。
真桜はどちらかと言えば技術者のようなタイプだそうだ。
彼女の変わった槍、螺旋槍という穂先が回転する槍も自作だと言うし、凪と真桜の武具も彼女お手製だと言う。
沙和は2人に比べてパッとしないが、2人に比べて普通の女の子らしい感性を持っている。
悪い言い方をすれば「中庸」、良い言い方をすれば「バランスが取れている」といったところか。
一番性格的に苦労していそうなのは凪だと踏んでいるが。
そんな形で僅か3日の旅は終わりを告げるようとしている。
「予想通り、賊に襲われるようなことも無かったし・・・今回は平穏に行きそうだな。」と高順は考えていた。
そして3日後。ようやく彼女達の村に到着した。
だがそこは・・・。
唯の廃墟と化していた。



「なんや、これ・・・」
真桜が信じられない、と言った表情で首を振る。
本当に何があったというのだろうか。
確かに、村だ。
いや、村だった、というべきか。
そこそこの数の家があり、規模も決して小さくない。
高順が見たところ住んでいたのは200人ほど、と予測した。
ただ・・・多くの家が焼かれ、崩れ、原形を留めていない箇所もあった。
何よりもこの死人の数。30や40ではきかない。
老若男女問わず、といったところだ。
「どうして、こんな・・・。」
凪もうろたえるばかりだ。
「おおーい、誰か!誰かいないのかー!」
すると、どこかに隠れていたのか子供数人が出てきた。
「その声、凪お姉ちゃん?」
「佐和お姉ちゃんに真桜お姉ちゃんもいる!」
「・・・でっかいお馬さんと知らないおじさんもいる・・・。」
「皆、無事だったのか・・・良かった。」
少し安心したのか凪がしゃがみ込んで子供達を抱き締める。
沙和も真桜も駆け寄って来て子供達の無事を喜んでいた。
高順は・・・「おじさん」呼ばわりされて少し落ち込んだ。

「ところで、何があったんだ?他の皆は無事なのか?」
凪は子供達に尋ねた。
「よくわかんない・・・。知らない人がたくさん来て・・・。他の皆もまだ隠れてる。」
「あたしたち、お姉ちゃん達の声が聞こえたから出てきたの・・・。」
「そうだったんか・・・自分らの両親とかは無事か?村長は大丈夫なんか?」
「うん、村長さんなら家にいると思うよ。でも・・・。」
やはり、何人か家族を亡くしたものがいたのだろう。
その先を言おうとしない。
「そっか・・・頑張ったな。偉いで。」
真桜はそう言って目の前にいた少年の頭を撫でてやる。
そこで、今まで我慢していた何かがきれたのか。少年は大声を上げて泣き始めた。
それにつられるような形で、周りの子供達も。
凪、真桜、沙和。
彼女達は泣いている子供たちをしっかりと抱き締めていた。そして、彼女達も・・・静かに涙を流していた。


高順と虹黒はそれを見ていることしか出来ない。
自分たちは部外者だ。このような状況で出しゃばるべきではない。
なんとなく、高順は殺された人々を見てみる。
子供の盾になろうとして、共に・・・恐らく槍で貫かれた母子がいた。
背中を切りつけられて死んだ老人もいる。
首を切りつけられた青年や、鍬で応戦しようとしたと思われる人もいた。
そして、恐らくは賊だろうと思われる亡骸もあった。
やはり、賊か。
「くそっ。胸糞悪い・・・!」
いつも、弱い人々ばかりがこんな思いをする。
自分より力のあるものにはかかって行かないくせに。
高順は褚燕と、彼女の村のことを思い出していた。
自分より強い存在に必死に抵抗しようとした人々。その思い実らず、追いやられていった人々。
高順には褚燕の村と、この村の今の惨状がどうしても重なって見えてしまうのだった。
このまま亡骸を放置するのは忍びない。
考えた末、高順は墓穴を掘り始めた。

凪達は子供達を家に帰した後、村長の家に向かって行った。
何があったのかを聞きに行ったに違いない。
高順は亡骸を穴に埋めていいかどうか迷ったが、そのまま埋めていくことにした。
村の外側に穴を掘ったので邪魔にはならないだろう。
少しずつ、丁寧に穴の中へと遺体を納めていく。
賊の分まで作ってやるのはやりすぎだと思ったが・・・死んでしまえば皆同じだ。
放っておいても周りの迷惑になるのは解っている。
一応、村人の感情を考慮して村人の墓からは随分と遠くに墓穴を掘って置いた。
賊の亡骸を抱えようとしたとき、高順はあることに気がついた。
その賊の左肩に少しだけ見える程度だが「黄天」と刺青のようなものがあったのだ。
「黄・・・まさか、これって?」
そうか、ついに来たって事か?
いや待て、俺の知ってる知識でならまだこいつらが一斉蜂起するのはまだ1年ほどの猶予があるはずだ。
ってことは。
末端の統制の取れてない連中の仕業か?
しかし・・・
高順は一人でぼそぼそと呟いていた。
彼は時折考え事をするとその考えを呟いてしまう癖がある。
その上周りの状況お構いなしにそれをやってしまうこともある。
何も知らない人が見ればただの危ない人にしか見えない。
そしてすぐ側に凪がやってきているのにも全く気がついていなかった。
「あの・・・高順殿?」
「誰が率いているかにも・・・うーん・・・。」
「・・・高順殿!」
「おふぅっ!?」
「さっきから何を独り言を・・・。」
凪が胡散臭いようなものを見るかのように高順を見ている。
「あ、あー。すいません。どうも考え事をすると独り言を続けてしまう癖があるようで。凪殿にも全く気がつきませんでしたよ。」
「そうですか・・・ところで。」
凪は周りを見渡す。
「この墓穴・・・高順殿が?」
「ええ。部外者ですからあまり村のことに干渉するのもどうかと思ったんですけどね。亡骸をそのままというのも後味が悪くて。すいません。」
「いえ。高順殿のご厚意に感謝したいくらいです。村の皆も完全に意気消沈してしまって・・・。」
凪ははぁ、とため息をつく。
「高順殿。村長が礼を言いたいので家までお越しいただきたい、と申しています。」
「へ?しかし・・・。」
「本来なら、村長本人が来るべきなのですが。」
いや、そういうことを言いたいわけじゃないのですが・・・。
なんで関わりたくないことに限って関わらざるを得ない状況を作られるかなぁ?
でも事情を聞きたいところではあるよな。もし黄色の人々が関わってるなら今回1回だけじゃ済まなさそうだし・・・。
またしても考え込む高順に痺れを切らしたのか、凪は高順の首辺りを引っ張って歩き始めた。
「さあ、行きますよ、高順殿。」
「って凪殿!?引っ張らないで!首!首がしま・・・えげぇふっ!?」

~~~村長の家~~~
「3人を助けていただき、本当にありがとうございました。高順さん。」
村長は足を負傷していたが、律儀に立って高順に頭を下げた。
「いえ。むしろ俺のほうが迷惑をかけてしまいましたから。」
そう言って高順も頭を下げた。
両者共に律儀に頭を下げてるので感謝してるのか謝罪してるのかよくわからない図だった。
村長が足を引きずりながら椅子に座り、高順にも、どうぞ、と薦める。
遠慮しようかとも思ったが、黄巾のことで聞きたいこともある。考えた末で買う順も椅子に腰掛けた。
凪たち3人娘も座っている。
「凪から聞きましたが、死者を弔ってくれたとか。本来なら我々がやらなければいけないことなのですが・・・。」
村長の表情は晴れない。
「部外者がこんなことをするのはどうかと思いましたが・・・やはり放っておけない性分のようでしてね。」
「いえ、感謝しております。・・・ところで高順さん。悪いことは言いません。早くこの村を出立なさってください。」
村長の言葉に3人娘が立ち上がって抗議をする。
「村長、それはあんまりとちゃうか!」
「そうなの!さっき到着したのに出てけなんて酷すぎなの!」
「その通りです!」
随分と頭に血が上っているようだ。
「落ち着きなさい3人とも。早くせねばまた奴らが来る。恩人を巻き込みたいと申すか?」
「それは・・・。」
「陳留に救援要請をしようとも思ったのだが・・・皆怯えて外に出て行きたがらない。もしかしたら監視されているかもしれない。馬も無い。どうしようも・・・」
「・・・。」
村長の言葉に項垂れる凪たち。
どうやって会話をそこに持っていくかな?と考えていた高順にとってそこは狙い目だった。
「奴ら、とは?この村をこんなにした連中のことですか?」
「ええ、その通りです。奴らはまた来るといっておりました。それが何時かは解りかねますが・・・このままでは危険なのです。」
「その「奴ら」の素性・・・よろしければお聞かせ願えませんか?」
村長は迷っていたようだが、しばらくして口を開いた。
「彼らは自分たちのことを「選ばれた神の使い」と。「この村はこれより我らの支配下に入る。全ての物資を献上せよ」とも言っておりました。」
「何やそれ・・・!勝手な言い草しおって!何様のつもりや・・・。」
「真桜、落ち着け。」
「従わねばこうなる、と言って数十人の村人を殺していきました。抵抗をした者もいたようですが・・・。」
従えといいながらも村人を殺すか。物が目当てなのは分かりきっているが・・・全滅させるつもりはないということか?
今はまだ準備期間ということか。その為に無用な混乱は避けたいと?
それにしてはやり方が雑すぎるな。所詮は物目当て、だな。
だから賊の死体も残ってたわけだな。これで大体何者かはわかった。
あとは最後の確認をするだけだな。

「その賊ども。頭に黄色い布を巻いていませんでしたか?」
「な、何故それを?」
高順の言葉に村長が驚く。
「やはり、そうでしたか・・・。」
「高順殿・・・何かご存知なのですか?」
「ええ。ある程度は。」
聞いてきた凪に高順は首肯する。
ただ、これを喋っていいかどうかについては高順も悩んでいた。
まだ彼らの表立っての行動はあまり無い。
今回の一件に関しても名を借りたとか、真似をしただけの暴徒である可能性も捨てきれない。
その辺りまでは判断できない現状で言ってしまっていいものか?
まだもう1つ聞く必要があるな。
「その賊を仕切ってる奴の名前は聞きましたか?あと、どれくらいの人数を率いてました?」
「確か・・・波才、と。数は・・・300ほどでしたかな。」

・・・大当たり。潁川の黄巾勢力作った1人。つうかリーダー格だろ、波才って。
それが300人ほどしか率いてないというのは疑問だが。もしかしてこれから勢力作るつもりなのか?
でも、もし本人だとして。
今のうちに討っとけばこの当たりの勢力は弱まるよな。
もし弱まらなくても有力なリーダーを討ったってだけで十分かもしれない。
少なくとも、この人たちは救われる。
潁川の勢力が少なくなれば官軍も楽できる→その分戦力を他にまわす余裕が出来る。
そんな図式が高順の頭の中で組みあがった。
問題はどうやって戦うか、ということだ。
この村に、戦える戦力というのはほとんど存在しない。
凪たちと自分、あと虹黒のみだ。
なんとかして陳留あたりから兵士を引き出したいところではある。
何もせず一度帰還した、というのは脅しもあっただろうが・・・おそらく、戦力を補充或いは拡充するために去って行ったのでは?
潁川黄巾の全盛期であった数万やらの兵力を出してくるわけはないと思う。
しかし、もし自分の読みどおりだとしても千規模の兵を動かすことも予想できる。
やはり、この村の人間だけでは・・・。
高順は必死になって考えた。
この村を褚燕の村のようにしてなるものか。あんな結末はごめんだ。


「村長さん。もう1つだけ聞きたい・・・いや、確認したいことがあります。」
「はて・・・なんでしょうか?」
「あなた方はどうするおつもりです?」
「・・・?」
「このまま屈するか。勝てる見込みが薄くても抵抗するか。あなたの、そして村の人々の意思をお聞きしたい。」
「そんなん解ってるやろ!徹底抗戦や!」
「落ち着いてくださいね、真桜殿。あなた達が戦うつもりでも村の人々は違います。」
「ぁう・・・。」
「我々は戦いたくありません。いえ、戦えません。」
沈痛な表情で村長は呟いた。
「前に見せしめに殺されたのは若い者ばかりでした。今残っているのはわしのような老いぼれか、年端も行かぬ子供ばかり。抵抗したくてもできないのです・・・。」
「・・・。そうですか・・・。」

駄目か。
彼らがやる気を出して協力してくれなくてはどうしようもない。
村長が協力してくれる気になっても村人全員がそうだというわけでもない。
手詰まりか。
いや?何も全滅させなくてもいいのではないか?
波才なり誰なり捕らえて曹操に突き出せば。
丁原様も黄巾の存在を知っているんだ。曹操も知っている可能性が高い。
どちらにせよ、彼らをどこかに逃がさなくては。陳留以外の選択肢は無さそうだったが。
他の村に行くにしても数日かかるようだし、いつ襲われるか解らない現状ではそれが一番無難といえる。
(ここで黄布の勢力を削いでおきたかったんだけどな・・・。)
だが、戦えない以上は仕方が無い。
逃げる策は考える必要は無い。
誰かを先行させて陳留へ助けを求める。
その間に全員で陳留を目指す。
それを3人娘や自分だけで担うのは大変そうだ。
怪我人もいるし、年寄りや子供もいる。僅か3日ほどの距離だが随分と長い逃避行になりそうだ。



「あの・・・。」
そこへ凪が遠慮がちに声をかけてくる。
「ん?何でしょう?」
「色々と考えてくださるのはありがたいのですが・・・高順殿を巻き込むわけには行きません。どうかお逃げを。」
「そうなの、早く逃げて欲しいの!」
「せやなぁ。せっかく助けてくれたのに、悪いけど。」
「ふーん・・・。で、皆さんはどうするおつもりで?」
高順の問いに凪が困ったように答える。
「それは・・・陳留に逃げるくらいしか。」
「お尋ね者なのに?」
「うっ・・・。」
「死にますよ、このままじゃ確実に。黄巾が黙ってると思いますか?」
「覚悟の上なの!」
駄目だな、人の話を聞いちゃいないよ。
説得しても聞いてくれないだろうな・・・。
高順はため息をついた。
「解りました、解りましたよ。それじゃ、俺は逃げさせていただきますよ。」
「はい。お世話になりました。それとこれを。」
凪は翡翠の璧と銀の延べ棒を高順に渡した。
「これはもう不要になってしまいました。高順殿、お達者で。」
「ほなな!」
「さようならなの!」
「・・・。」
高順は背を向けて、その場を後にした。










~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。

この回、実に難産でした。
4回は書き直しましたよ、ええ。
今回に限らず、この作品全体があれな出来なので偉そうなことはいえませんが、今回はあまり納得できてないですね。
本来ならもっと平和的に行くはずでした。

流石に3人娘だけでは勝てないでしょう。魏の暴走特急こと惇さんなら勝てるかもしれないですけどw
やる気の無い人々を戦争に送り出せませんし。話を作るのは難しいです。


基本的に行き当たりばったりで話を作ってるのにも原因が(以下略
それと、ここから更新速度少し落ちるかもしれません。忙しいの(吐血
むしろ今までが早すぎたのでは?と思う今日この頃。

それではまた。













~~~楽屋裏終了~~~




~~~陳留へ続く道~~~

「まったく、いきなり頭突きをかまされるとは。」
高順は真っ赤になった自分の頭を押さえつつ文句を言った。
あの後虹黒に乗って陳留へ向かおうとしたところ、出会いがしらに頭突きをされたのだ。
高順は虹黒が何を言いたいのかはわかっていた。
「あの村を見捨てるつもりなのか」と。

そんなことは解ってるさ。俺は見捨てない。
1人でも多くあの村の人々を救ってみせる。勿論凪殿たちも。
俺の力では無理だ。だが曹操を動かすことが出来れば。
「それにはまず、お前の助けがいるんだよ。虹黒。」
「・・・。」
虹黒は更に走る速度を上げる。
「頼んだぜ、虹黒。・・・正直会いたくないし、会わせてもらえるかどうかもわからないが。・・・治世の能臣、乱世の姦雄。超世の傑と呼ばれた人の顔を拝みに行きますか!」
「ぶるっ!」

全速力で走る虹黒。
彼らが目指すのは陳留。
曹操との出会いの意味。そしてこれから始まるであろう戦いと、その結果動くかもしれない歴史。
それが何をもたらすか、それはまだ・・・誰にも解らない。



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第12話(また誤字orz
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/09/27 23:06
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第12話


えーとね、今陳留の政庁にいるんですよ。俺。
それでですね、何度も使った言葉をまた言う羽目に陥ってましてね。
それ即ち。
大変なことになってますorz


曹操さんがチートだということが解った。虹黒さんが惇さんを嫌ってるのも解った。


「はぁ。またここに戻ってくるとは。」
陳留。曹操が治める土地。
「もう関わりたくないんだけどな…。まあ、仕方ない。」
虹黒は1日半もせずに大梁から陳留までの距離を走破していた。
歩いて3日ほどで着いたのだからまあ、妥当なところか?とも思うのだけど。
しかも、あまり疲労していないし。
普通の馬の何倍の体力を持ってるんだろう?と高順は違う意味で不安になるほど虹黒は元気だった。
ていうか、どうやって入ろう。
虹黒が警備兵を倒したって聞いたし、手配されてる可能性もあるんだよな・・・。
「まあ、捕まったら捕まったで良いか。」
おそらく、夏侯姉妹のどちらかが警邏をしているのだろう。
そうでもなければいきなり街中で「馬を寄越せ!」とか言われないだろうし。
高順は堂々と入り口の門をくぐっていった。


・・・。


捕まりませんでした。


「あ、あるぇー?何で?WHY?WHAT?」
あっさり街に入れましたよ。好都合といえば好都合だから良いのだけど。
さて、曹操さんにお目通りするには騒ぎを起こすか、何らかの形で渡りをつけないといけないのだが・・・。
そうなると、あの2人くらいしかいないんだよなぁ。

あの2人とは、夏侯惇と夏侯淵である。
一時的とはいえ面識を持っているし、黄巾云々は話をすれば理解してもらえるだろう、と高順は考えていた。
できれば夏侯淵に会いたい。夏侯惇だと人の話聞いてくれなさそうな気がする。
いや、聞かない、十中八九。
それでも、夏侯惇が騒ぎを起こせば夏侯淵もすぐに察知して飛んでくるだろう、という読みもあったりする。
なのであの2人に会うことがまず最初の一手。
そのためにはどうするか?
答えは「虹黒に乗ってれば良い」である。
この馬に乗っているとそれだけで目立つ、ということを前回の騒動で理解できた高順。
そのまま街を歩けばすぐに夏侯惇あたりが見つけるだろう。
それでなくても、虹黒は前回警備隊に喧嘩を売ったのだ。
すぐに話が広まるはずだ。
「それなら街の入り口で何故捕まらなかったのやら。」
高順は頭をかしげるのだった。
そして、虹黒と街を回って半刻もせず・・・あの人がやってくる。
ぶるる・・・と、虹黒が正面を見据えて唸り声を上げる。
「どうした、虹こ・・・く?」
うわ、虹黒が見つめてる方角からなんかすっげえ勢いで走ってくる人が。
しかも途中で何人か撥ねてるっておおい!あれ惇さんじゃないか!
街の人に何やってのさ!?
つかあの距離からこっち見つけたのか!そりゃ虹黒は目立つと思ってたけど!
「まずいな、あの突進力。なんとか避けないと・・・って!?」
高順がそう言った直後、虹黒も夏侯惇に向けて突進を始めた!(高順を乗せたまま
「だああああああっ!!?虹黒さん何するつもりですかーーーーーっ!!!」
高順の叫びにも虹黒は反応しない。そうしている間にも彼我の距離は縮まっていく。
「こーーうーーこーーくーー!!」
夏侯惇が雄叫びを上げる。
「ぶるるっ!!」
虹黒がそれに応える。(?
そして――――


虹黒の頭突きが夏侯惇の額に炸裂した!


「みぎゃあああああああああああああっっっ!!?」
ゴロゴロゴロゴロ・・・
思いっきり頭突きを食らった夏侯惇は地面をのた打ち回る。
「・・・こ、虹黒さん。あーた一体何を・・・。」
その辺をのた打ち回ってる夏侯惇が目の前に来た瞬間、虹黒はとどめとばかりに踏みつけた。
「かはぁっ・・・」
「なぁぁあーーーーーー!?」
虹黒さん、あんた何てことしてるの!?
つかそんなに夏侯惇が嫌いか!
虹黒から降りた高順はしゃがんで倒れ伏した夏侯惇の様子を見る。
「だ、大丈夫ですか!ちょっとぉ!?」
流血はしてないようだし、死んでもいない。
・・・あれだけの頭突きをくらい、とどめに踏みつけられたというのに。
「・・・これ、どうしよ?」
そう言った瞬間、虹黒がまた踏み潰そうと片足を上げた。
「だー!駄目!絶対!」
「・・・ぶるるっ。」
何か、「ちっ」って感じで不満そうに足を下ろす虹黒。
本気で嫌ってるようだ。
そこへ、姉の叫びを聞いたからか、最初から探していたのか。
夏侯淵が走ってきた。
「おい、、姉者どこへいっt何事だっ!?」
・・・第1の目的達成。

その後が大変だった。
夏侯淵は何があったのかすぐに理解してくれたのだが、夏侯惇が落ち込むわ怒るわ夏侯淵に泣きつくわ。
「しかし、随分と嫌われたものだな、姉者?」
「うぅ~~~しゅ~ら~ん・・・虹黒が~~~・・・。」
眼の幅涙を「ぶわー」っと流しつつ夏侯淵に泣きついている。
そんな夏侯惇を宥めつつ、夏侯淵は高順のほうへ向き直った。
「また会ったな、高順。既にこの街を出たと思っていたのだが・・・。」
「いえ、確かに一度出ましたよ。ちょっと用事がありまして。」
「そうか、やはり出ていたか。」
「ん?どういう意味です?」
「いや何。どこぞの食堂で大暴れしてそのまま逃げたとか聞いていたので、な。」
「・・・誰から聞いたんです?」
夏侯淵は自分に泣きついている姉を指差した。
「・・・あー。」
「虹黒を見つけたので、なんとか仲良くなろうと近づいたところを頭突きを喰らって蹴り飛ばされたと。」
「・・・ごめんなさい。」
虹黒・・・喧嘩した警備隊の人って夏侯惇のことだったのか・・・。
「まあ、あまり気にする必要は無いさ。大方姉者が何かしようとしたのだろうからな。それに、だ。店主がお前達の弁護までしてくれている。感謝しておくのだな。」
「しゅ~らぁ~~ん・・・。」
「ああ、よしよし。泣くな姉者。」
そう言って姉の頭を撫でる夏侯淵。
どっちが姉なのやら。いや、そうじゃなくて。
「あー、夏侯淵殿?」
「む、何だ?」
「折り入って頼みがありまして。」
「頼み?」
高順はかいつまんで夏侯淵に事情を説明した。
大梁のとある村が賊に襲撃されたこと。
このままでは村の人々が全滅させられるかもしれない、ということ。
「ふむ。それは確かに由々しき事態ではあるな。しかし、私にはその当たりのことを左右する権限がない。それに、賊と言っても規模は小さいのだろう?」
「そうだ、賊の100や200程度、1人でなんとでもできるだろう!」
「姉者。そこいらの一般人と自分を一緒にしないように。」
「ええ!?できないのか!?」
夏侯惇が心底驚いたといった表情をし、夏侯淵は深く溜息をついた。
「姉者は少し静かにしていてくれ。」
「う~~~~・・・。」
「まあ、それはともかくだ。賊の100人程度ならお前と虹黒だけでなんとかなるのではないか?」
「それは買いかぶりすぎです、夏侯淵殿。10人くらい倒せれば奇跡ですよ。」
「随分と謙遜をするものだな。しかし、それだけでは軍を出してもらえるかどうかは解らないな。」
やはり、これだけでは無理か。なら。
高順は幾分か声を潜めてこう言った。
「それが黄巾でも、ですか?」
これには夏侯淵も反応を示した。
「ほぅ?・・・なるほど。詳しい話を聞こうか?・・・着いて来い。ほら、姉者も一緒に。」
「え?でも警邏・・・。」
「兵たちには伝えておくさ。そら、行くぞ姉者。」
「ちょ、ちょっと待て秋蘭。・・・首!首極まってるから!襟を引っ張るなっ・・・!」
「人前で真名で呼ばないでくれと言っただろう?これで何度目だ、姉者。」
「しゅ~~~~ら~~~~ん!」
「今ので4度目だな。」
本当、どっちが姉なんだろう。しかもきっちり数えてるし。
まあいいか。これで第2の目的達成だ。
一番苦労するのは次なんだろうな・・・。ああ、嫌になってくる。
「どうした高順?さっさと行くぞ?」
「ああ、ちょっと待ってください。ほら、虹黒も行くぞ。」
高順たちは急いで夏侯淵の後を追った。
向かう先は政庁。
そこに曹操がいる。

政庁の中へ入り、さらに進んでいく。
さすがに虹黒は入れないので外で待機してもらった。
「上党のに政庁に比べて随分規模が大きいな。」
街の規模も全然違うから当然といえば当然か。
しかし、中も広い。夏侯淵さんが先導してくれてるからいいけどはぐれたら絶対迷うぞ。
そんなことを考えていたら夏侯淵がある扉の前で止まった。
おそらく、この部屋に曹操がいるのだろう。
ここが政庁の中心部。宮殿で言えば玉座とかそのあたりに位置する場所だろう。
「すまないがここで待っていてくれ。」と言い残し夏侯淵は部屋に入っていった。
「やれやれ。ここで時間食うわけにはいかないんだけどな。」
お役所仕事みたいに待たされなければいいのだけど、と思った直後に「話を聞いてくださるそうだ、入れ。」
・・・えらく判断が早いな。
じゃあ、入らせていただきますか。
高順は拱手し失礼いたします、と言ってから部屋へと入った。
正面の馬鹿にでかい椅子に座ってるのが・・・恐らくは曹操だろう、
その横に夏侯姉妹、さらに離れて親衛隊、といったところか。
しかし、曹操・・・やっぱ女なのな。ツインテールで背小さいし、胸もなまあいいや。
その椅子から歩いて十数歩あたりのとこで止まり、拱手して口上を述べようとするがそれを曹操は手を上げて遮った。
「構わない、ある程度のことは秋蘭から聞いたわ。」
「・・・そうですか。」
「自己紹介が必要かしら?私は曹操。字を猛徳。この陳留を預かる者よ。」
ふう。なんというか、すごいな。本人にそのつもりは無いのだろうが威圧されているように感じる。
さすがは三国志最大の覇者となる人だけあるな。
とりあえず、跪いておくか。
「さて。大梁に賊が出たと聞いたのだけど。間違いなく、黄巾なのね?」
「はい、間違いありません。私自身が見たわけではありませんが・・・彼らと思しき亡骸の肩に「黄天」と。」
「数は?」
「そこまでは解りません。村長に聞いたところでは300ほど。しかしながらそれが全ての兵力数とは思えません。」
「そう。村人達はどうしているのかしら?」
「そのまま応戦しているか、それとも陳留に向かっているか。村の若者も見せしめに多数殺されたと聞きました。」
「なるほどね。それで?あなたは尻尾を巻いて逃げてきたわけ?」
曹操のこの言葉に高順はさすがにカチンと来た。
非難しているのか、と思って曹操の顔をちらりと見てみたがそのようなつもりではないらしい。
一言で言えば試されている、というところか。
「ええ、その通りです。」
「ふん、軟弱なっ!」
高順の言葉に吐き捨てるかのような言葉を吐く夏侯惇。
「黙っていなさい、春蘭。」
「そ、そんなぁ・・・。」
「高順と言ったわね。逃げた理由を聞かせてもらえるかしら?」
「簡単です。誰かが助けを求めなければならないでしょう。あの村に戦力といえるものはほとんどない。しかし馬はない。俺の馬・・・虹黒に乗れるのは今は俺だけです。なら簡単でしょう?」
「ふふっ。冷静に見た結果、それ以外のやりようが無いと考えて行動に移したわけね。・・・良い判断だわ。」
どうやら、一定の評価をされたらしい。まあ、曹操の眼鏡に適ったわけではないだろうが。
「春蘭、出撃準備を。騎兵5千もあればいいでしょう。私も出るわ。」
「よ、よろしいのですか?」
「当然よ。たとえ100だろうと200だろうと、それが自領の民であろうとなかろうと。助けを求める声があるなら私は絶対に見捨てない。行きなさい。」
「は、ははっ!」
夏侯惇は慌てて部屋を飛び出していった。
たいしたものだ。判断が早いのにも驚いたが5千の兵士を即時動かせれるだけの態勢を整えてあるわけだ。
いや、やろうと思えばもっと多くの兵を動かせるのだろう。
これで、うまくいけばあの村の人々の被害も抑えることができるだろう。
それに、民を見捨てるつもりが無いとも言い切った。
覇者としても王者としても、風格があるということだな。
「それでは、私もこれで。」
高順も戦う準備をするために部屋を辞そうとする。しかし。
「待ちなさい。」
曹操に呼び止められた。
「は・・・。何でしょう?」
「あなたにまだ聞きたいことがあるわ。」
「・・・私に?」
「ええ。高順。これから先の時代・・・何が一番必要になってくると思う?」
少しだけ楽しそうな表情をしながら曹操は質問をする。
「兵力、生産力、資金力。その他諸々。その中であなたが一番重視するもの。それを聞かせて貰える?」
いきなり何を言うのかと思えば。また、試すつもりか。
この人は他人を試すことが好きなのだろうか?
・・・史実じゃ、そういう面も確かにあったみたいだけどさ。
高順は特に考えることなく、かつ面倒くさそうに答えた。
「情報、あるいは知識です。」
「へぇ・・・。根拠は?」
高順は頭を右手の人差し指でトントンと叩いた。
「判断が出来るからです。頭が良くても、知識が無ければ意味が無い。知識があっても、引き出す情報が無ければ意味が無い。」
それからも高順の言葉が続く。
「俺が逃げて来て、「大梁が襲われた。黄巾の仕業だ」と伝えるからこそ曹操様は出撃の判断をなさいました。どんな状況でどんな判断をすればいいのか?この先の時代を生きるのはまずそれです。」
「なるほど。言いたいことはわかる気はするわ。」
「特に貴方のように人の上に立つ立場であれば尚更です。判断材料、そして判断。それができなければ自分は当然部下をも失う結果に繋がる。材料が多ければその分迷うことも多くなるとは思いますがね。」
迷える材料があるだけ、まだましでしょう。判断が出来なくなったとき、それが死ぬときですから。と高順は締めくくる。
そして、その材料こそが「情報」なのだ。高順はそう言いたかった。
「うふふ、あははははは。面白いわ、貴方みたいな手合いは兵力とか武力とか言ってくるのだろうと思ってたのに。思考の死角を突かれた、とでもいうのかしら?」
「他の要素を軽く見ているわけではありませんよ。ただ、その辺りがないとここから先の時代、生き残るのは無理だろうな。こう考えただけです。」
「あら、私はこう見えても後漢の人間よ?そういう発言は聞き逃せないわね。」
「その割には怒りませんね。」
高順の言葉に、曹操はまた楽しそうな表情をする。
「さあ、どうかしらね?ああ、もう1つだけ貴方に聞きたいことがあるの。」
「はぁ。」
「こう見えて、私の「手」は長くてね。」
「手?」
手って・・・どう考えてもそれほど長くないよな。普通?
「例えば、数年ほど前。上党のとある兵士の発案から良い肥料が作られるようになった。とか、まだ誰も食べたことが無いような食料を開発した、とかね。」
げっ・・・まさか。そういう意味の手か!?
「そして、名が「高順」といったかしら。。偶然ね、あなたと同じ名前よ?」
横にいた秋蘭も「何!?」といった表情をしている。
「まさかとは思うけど。同一人物かしら?」
高順は内心で冷や汗をかきながら「まさか。」と言うのが精一杯だった。
「できればその2つの作り方、教えて欲しいのだけどね?」
「ですから、別人です。そんな名前の男なんていくらでもいるでしょう。」
「ふぅん・・・。私は一言も「男」とは言ってないわよ?」
「ああああっ!しまった!墓穴掘ったぁぁああぁああっ!?」
「あら、カマをかけてみるものね。本当に本人だったなんて。」
ふふ、と曹操は笑う。してやったり、という感じか。
やばいまずいやばい怖い!何なのこの人!?そこまでの諜報組織持ってるの!?チートってレベルじゃないですよ本当に!
OK俺は逃げる。どこまでも逃げる!俺は風、自由!(またしても自己暗示)
そして、逃げようとして腰を浮かせかけた高順を曹操の一言が押し留める。
「高順。私に仕えなさい。」
・・・はい?何をいきなり?
「冗談でしょう。俺なんて程度の低い塵芥ですよ。」
だが、曹操の目は本気だった。先ほどまでの冗談を言ってるのか本気なのか判別のつきにくい表情などではない。
「私は本気よ。あなたの判断、そして誰も知らない何かを生み出したその知力。これから先の時代を見越した慧眼。そして、春蘭を打ちのめすような獰猛な巨馬を心服させた度量。」
「・・・・・・。」
その眼は真剣そのもの。
「貴方の腕、才覚。私が相応の値で買い上げる。悪くは無いと思うのだけど?」
だがそこへ。
「華琳さまぁっ!出撃準備完了いたしましたっ!」
空気を読めない人が帰って来たのだった。

「・・・。そう。ご苦労様、春蘭。」
「姉者・・・。」
「・・・。」
今までの緊迫した空気はどこへやら、一気に緩くなってしまった。
これから出陣なのに。大梁の人たち助けて黄巾と戦わなければならんのに。
曹操さんが無駄にこっちを圧倒して・・・いや、これは助けられたか。
「え?え?何だ?私、何かしたのか?」
本人は何もわかってないようだったけど。
「んんっ。で、どうかしら、高順?」
話を続けようとする曹操。
「・・・なぁ、秋蘭。」
「何だ、姉者。」
夏侯惇は小声で妹に話しかける。
「何の話をしているんだ?」
「ああ、華琳様が高順に仕えろと言っているんだ。」
「そうkって何いいいいいいっ!?」
いきなり大声を上げる夏侯惇に、曹操は溜息をついた。
「・・・何、春蘭?」
「駄目です!絶対に駄目です!こんな奴を華琳様に近づけるわけにはいきません!」
腕を振り回して抗議をする夏侯惇。だが曹操はそれを完全に無視して話を続ける。
「選びなさい、高順。私に仕えるか。それともこの鎌の餌食となるか。」
「脅迫ですか!?ていうかいつの間にそんな鎌を!?」
「それだけ貴方を評価しているということよ、勘違いをしないで欲しいわ。」
「貴様ー!絶対に許さんぞ!断れ!断れー!?もしハイって言ったら私がお前を殺す!」
「落ち着け姉者。それでは高順が死ぬだろう!」
「私は一向に構わん!むしろそうなれば虹黒も私の馬に!」
「だから落ち着け姉者!そんなことしたって余計に嫌われるだけだぞ!」
何だこのカオスな状況。
仕えなければ殺すと言われるし、仕えたら殺すって言われてるし。俺にどうしろと?
まぁ・・・答えは決まってますけどね。
「お断りいたします!」
「・・・本気かしら?」
曹操の目に殺意のようなものが宿っていく。
「ええ、本気です。」
「命が惜しくないと見えるわね。いいでしょう。」
そう言って曹操は鎌を振りかぶる。
だがそこへ夏侯惇が飛び出していった。
「貴様華琳様のお誘いを断るとは何事だー!」
「ちょっと待てさっきあんた断らなければ殺すってげぶはぁぁぁっ!?」


殴られました。
俺、何も悪くないと思うのですけど。

気が殺がれたのか、曹操はまた溜息をついた。
「もう良いわ。・・・貴方にとって悪い話ではないと思うのだけど。断る理由を教えてもらえる?」
あの後夏侯惇は曹操によって昏倒させられ放置されてるので、今この場で起きているのは曹操・夏侯淵・高順である。(兵士もいるが
「失礼なことになります故、それはご勘弁を。」
「構うことは無いわ。一番文句を言いそうなのはそこで寝てるし。」
ねぇ?と夏侯淵の方へ向き同意を求める。
夏侯淵も苦笑するばかりだ。
「それならば、失礼を承知で言わせていただきましょう。」
「ええ。」
「あなたは人を自分の機能としか見ていない節がある。」
「機能・・・。」
「俺はそれが酷く気に入らない。人のことを愛しているように見えて、そうじゃない。あなたは人の才能のみを愛している。」
「高順、お前!」
食って掛かろうとする夏侯淵を曹操が止める。
「構わない。続けて。」
「貴方に心酔している人は良い。だがそうでない人も多いだろう。全員が全員あなたに心からの忠誠を抱くと思うか?あなたの器の大きさは解る。だが、俺という存在は貴方の器の中に居場所が無い。すぐに弾かれるのが眼に見えている。俺は器の中に居場所を作ってくれる方にこそ仕えたい。まだ見つけてはいませんがね。」
「なるほどね。ふふふ。つまり私は貴方に認められていないということね。」
「俺程度に認められても楽しくなど無いでしょう。では、これで。」
こう言って高順は退出していった。おそらく彼なりの準備をするつもりだろう。

面白い。面白いわ。と言って曹操は立ち上がった。
「秋蘭、春蘭を起こしなさい!」
「ははっ!」
「兵たちに伝達。これより我らは大梁へ向かう。民の保護を最優先、そして賊を殲滅するわ!」



~~~楽屋裏~~~

どうも、あいつです。
やっと三国志の主役(あいつ主観)出てきましたね。
曹操は書くのが苦労する存在です。覇者としての大きさを書くなんて私ごときじゃ無理。
さて、高順君が曹操さんに仕えない理由を語っていましたね。
私自身はそうは思ってないですが、仕えにくい人ではあるだろう、と思います。
何故高順くんが曹操さんを敵視しているのか、というのは上記のこともありますが「自分を処刑する相手だ」ということも大きいと思います。
曹操さんがどういう人物かも知らなかったわけですしね(知識として知ってるだけに過ぎません
幼い頃から接していれば仕えるに値する、と思っていたでしょう。
しかし、曹操の人格がえらく破壊されてますね。こんなの曹操さんじゃないw
それと惇姉さん。完全にギャグ的存在に。
彼女が活躍できる場面は・・・あるのかな(笑

さてさて、5千の曹操軍に混じって出撃する高順くん。彼らは間に合うのでしょうか?

間に合わなければ困るのですけどねw
それではまた!



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第13話(少し訂正
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/02 07:14
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第13話

陳留の南へと進む曹操軍5000。
その構成はほぼ全てが騎兵である。状況が状況のため速度重視の姿勢だ。
この速度で行けばすぐに凪たちと合流できるかもしれない。
向こうが陳留へ避難する為に動いてくれていれば、だが。

先頭を走るのは曹操。
その両隣に夏侯姉妹。
どこかそこら辺を高順。
と言っても、虹黒の体格が他の馬に比べ数段大きいので目立つことこの上ない。
兵士達も「何だあの馬・・・」といった表情で見ていたし、夏侯惇も「うう、いいなぁ・・・」とか呟いていた。
曹操も、正直驚いていた。
曹操軍の騎兵は基本的に軽騎兵である。
兵は神速を貴ぶ。の考えでこれはこの時代の基本形。
そして、今現在もかなりの速度で駆けているのに虹黒は平然とついて来る。
あれほどの巨馬を乗りこなす高順も大したものだと思うのだが、馬の操り方が自分では真似ができそうに無い。
手綱をつけてるくせに、それに全く触らない。
馬を引くときには使っていたようだが、虹黒に騎乗して以降1度だって手綱を握っていないのだ。
それどころか今は腕を組んでいるのみ。
まるで高順の意思を虹黒が読み取っているのではないか?と思えるほどだった。
(ふふ、春蘭が一目で惚れこんだというのも解る気はするわね。)
さて、それは置いておいて・・・高順の話によると村の人々は「逃げる気はあるかもしれないが、村の外に出るのを恐れて動いていないかもしれない」ということだった。
向こうが自発的に動いていれば保護できる可能性が高まるのだが・・・もし動いていなければ。
最悪の状況になり得る、という予測もしておかなくてはいけない。
「秋蘭!」
曹操は隣にいる夏侯淵を呼ぶ。
「ははっ!」
「あなたに右翼の騎兵1500を預けるわ。先行しなさい。高順も連れて行って!」
「心得ました!高順、聞こえたか!?」
「ああ、聞こえた!しかし、虹黒じゃ追いつけんかもしれませんよ!?」
「ならば最後尾の者に付いて来い!・・・はっ!」
夏侯淵が馬を加速させ、右翼の騎兵部隊と高順がそれに続く。
少しでも早く、救うべき命を救うために。


~~~数十分前・そこから更に10里ほど南~~~

150人ほどの集団が陳留を目指している。
どうしても怪我人や老人、子供といった体力の無いものたちばかりなので進む足が遅い。
休憩しては進み、また休憩しては進みということを延々と繰り返している。
そしてその最後尾には凪達3人娘がいた。、
「くそ、まだ陳留は見えないか。」
「当たり前や、普通に歩いて3日ほど。馬があればその半分ほどで済むやろうけどな。こっちゃ怪我人ばっか、馬にも乗れんのばっかやで?」
「進むのが遅いのは仕方ないの。」
「ああ、そうだな・・・。」
前を進むのはは凪達が住んでいる村の人々だった。
村長と3人娘が説得して、怖がる村人達を外に連れ出したのだ。
他の村に逃げるのを考えないでもなかったが、それではその村を巻き込んでしまうし防衛力も期待できない。
幸い、曹操という新しい太守は英明で有名だ。
なんとか陳留までたどり着ければ受け入れてもらえるだろう。
「せやけどなぁ、追い出しといてなんやけど。高順兄さんにも手伝ってもらうべきやったかもな。」
「それは・・・そうだが。高順殿は我々の村とは無関係だ。巻き込んでしまうわけにも行かないだろう?」
真桜の言葉に凪が反論する。
「それはそうだけど。でも、死んだ人のために墓を作ってくれたり、なんとか皆を助けようとして何か考えてたみたいだったの。」
「な、なんだ。私1人が追い出したような言い方をして。2人だって早く村を離れるように言ってただろう?」
沙和にまで攻撃されて凪は幾分拗ねたようなものの言い方をする。
「私だって、高順殿に手助けしてもらえたら・・・心強いさ。だが、それでも・・・。」
「あーはいはい、解った解った。凪は頑固やなぁ。ま、うちも同意見やけどな。高順兄さんに手伝ってもろたら、心強いわ。」
「あー、ずるいの!沙和だってそう思ってるの!」
「いや、ずるいとかそういう問題ではないと思うが・・・おい、2人とも。また来たぞ。」
凪の言葉に真桜が「ん?」と南へ視線を向ける。
黄色い布を頭に巻いた・・・黄巾党が馬を駆って追いかけてくる。その数およそ70ほど。
「・・・あー、ほんまや。懲りへんなぁ、あいつら。」
「これで5回目なの・・・。」
「追ってくる数が少ないのが救いだな。2人とも、気合を入れろ!」
凪が手甲「閻王」を叩き合わせる。
「まったく、さっきからあんな少ない数で。何考えてるの!」
沙和が獲物の二刀を構えて南を見据える。
「どうせ本隊が来るまでの時間稼ぎしとるんやろ!うちらみたいな少人数放っとけちゅーねん!」
真桜が螺旋槍を地面に突き刺す。
「ふう、我々を殲滅して見せしめにして周りの村々も従わせようと。そのつもりなのだろう。」
「せやな。けど・・・うちらを甘く見たこと後悔させたるっ!」
「沙和だって負けないの!」
黄巾騎兵はすぐそこまで迫っている。
村の人々を守るために何としてもここで食い止めなければ。

それから数十分後、凪たちは黄巾騎兵を全滅させ、10数頭の馬を手に入れた。
今まで何度も同じように馬を得ていたが、駄馬ばかりで使い道が無かったのだ。
今回はごく普通の馬を10頭ほど得られた。幸いと言ってもいい。
問題は自分たち以外に乗馬できる村人がほとんどいないということだった。
「うーん、馬乗れるんうちらだけやなぁ。」
「そうだな。後ろからせっついたところでこれ以上速度が上がるわけでも無い。」
「速度もそうだけど、食料と水も心配なの・・・。」
黄巾から奪った馬に乗った3人が同時に深いため息をついた。
「ともかく、あの上り坂を超えれば一呼吸つける。それまでは頑張ってもらわないと。」
あの上り坂、というのは前に凪達が高順と上った坂とはまた別の坂である。
それほど急ではないものの幾度も続くので体力が無い者には相当に辛いはずだ。
あれを越えれば残りの坂は1つだけ。
本当ならそこも一気に超えて平坦な道に出てしまいたいが今の状況を考えるとそれも難しい。
ここで、急に先頭を進んでいた人々の足が止まった。
疲労しているのはわかるが、何故止まるのだろう?
3人娘も不思議に思い、集団の先頭へと向かった。
そして・・・そこで愕然としてしまった。
いつの間にか、黄巾党が回り込んでいた。
その数、およそ3千といったところ。
もう1つの上り坂までは数里も無い。
だが、その坂の下付近で黄色の布を頭に巻いた連中がひしめいている。
不恰好ではあるものの、いくつかの旗が見える。
その旗には「中黄太乙」だの「蒼天已死」だのと書かれている。
それを見て3人は信じられない、と言いたげな表情になった。
「いつの間に・・・。」
あれだけの数が人知れず集まれるわけが無い。
「いや・・・。まさか、このために騎馬隊で撹乱をし続けたというのか・・・。」
凪の呟きに真桜が反応する。
「ちゃうな・・・。連中、ずっとここで張っとったんや・・・!少しずつ騎馬こっちに差し向けて、こっち急かしたんやろ!」
「じゃあ、皆で村を出ることを知ってたの・・・?」
「或いはそう踏んどったんやろ!くそっ!」
3人は武器を構え、こちらに向かって進んでくる黄巾党を押し留めようとする。
「皆、戻るんだ!このままでは全滅するぞ!」
凪の言葉に我に返ったのか、呆然としていた人々もあたふたと来た道を戻ろうとする。
そこでまた異変が起こる。
一番後ろにいた男が短刀を隣にいる子供に突きつけていたのだ。
「な、何や!?って・・・何儀、お前何考えてるんや!?」
真桜に何儀と呼ばれた男はにやりと笑って「こういう事だ。見て解らないか?」と言って笑い始める。
「はっ、はははははは。誰も気づかないだなんてな。どいつもこいつも抜けてるぜ。」
「どういう意味や・・・?」
「こういうことだよ。」
何儀は自分の服の腕部分を捲くった。
そこには「黄天」という刺青。
「お、お前・・・。」
そういうことだったのか。3人は合点がいった。
彼は生まれも育ちも自分たちと同じ村だ。それなのに。
何儀は黄巾に通じていたか、あるいは最初からその一員だったのだろう。
自分たちが村を出ることに決めたとき、何らかの形で伝えたのか。
「見せしめに殺すつもりなの・・・!」
「へっへっへ、そんなことをする必要はないんだよ。何故なら・・・あの周辺で黄巾に属してないのはお前らだけだったからなぁ。」
「・・・!」
このままでは不味い。全滅するのが眼に見えている。
凪は数瞬迷い、これ以外に道は無いと思い至った。
「皆、逃げろ!真桜、沙和。後を頼む!」
「凪、いきなり何を・・・うわっ!?」
凪は両手に気弾をつくり、何儀へと向ける。
「おいおい、こっちは人質がいるんだぜ・・・。この餓鬼の命が惜しくねえのかっ!?」
「惜しいに決まっている!」
叫びつつ気弾を何儀に投げつけた。いや、正確には何儀の足元に。
轟音と共に大量の土が舞い上がる。
舞い上がった土は煙となって何儀の視界を遮った。
「げほっ、くそ!・・・がぁっ!?」
土煙を喰らって咳き込んでいた何儀だったが、その喉に沙和の刀「二天」が突き刺さり、何儀は即死した。
人質となっていた子供を抱き上げて真桜が叫ぶ。
「皆、逃げるんや!早く!」
真桜の声に押されるように、逃走が始まった。
真桜も沙和も、まともに歩けない老人達を抱えたり、肩を貸したりして少しでも距離を稼ごうと走り出す。
だが、ここで凪の姿が見えないことに気がついた。
「凪っ・・・どこや!どこ行った!?返事せえ、凪ーーー!」
周りを見渡すが土煙に視界を遮られ近くの事しか解らない。
「沙和ー!凪はおるんかっ!?」
「こっちにはいないの!」
「くそっ・・・!」
探しに行きたいが両手に人を抱えてる今では無理だ。
(何でもええ、死なんとってくれ・・・・!)
真桜には祈ることしか出来ない。

その時。
凪は坂の下から進軍してくる3千を超える黄巾党に単身で挑んでいた。

~~~黄巾が在陣している場所から1里北・夏侯淵軍~~~
夏侯淵はここで部隊を止め、細作を放ち続け事細かな状況を聞き分け整理をしていた。
この時点で夏侯淵が得た情報は「すぐ目の前に黄巾党3千ほどが在陣」「陳留方面へ逃げようとしていた集団が反転」「1人の拳士と思わしき少女が突撃、善戦するも捕らえられた」というもの。
「くそ、間に合わなかったか・・・。」
夏侯淵は手綱を握る手に力を込めて呻く。
救いがあるとすれば、避難をしていた人々が追いつかれていない、ということくらいか。
そこにまた細作から情報が送られてくる。
「集団は逃げ切った模様。黄巾はそのままその場所に帯陣、動かず。見張りも無い模様。」
もう時間としては夕方だ。追撃は諦めたのだろう。
「高順、すまん。少しだけ間に合わなかったようだ。」
先ほど追いついてきた高順に夏侯淵は頭を下げた。
「いえ・・・夏侯淵殿のせいではありません。」
夏侯淵のせいではない。もう少し俺が早く陳留に到着していればよかった。それだけだ・・・。
高順は自分を責めた。
早く助けてやりたい。そして、夏侯淵も同じことを思っている。
しかしどうすれば良い。
曹操の本隊残り3500が到着するのは夜半ごろ。
今手元にある1500で攻撃を仕掛けても・・・負けることは無いだろうが、捕らえられた少女がどうなるかがわからない。
また、後方へ逃げた集団も保護しなくてはいけない。
なんとか、この坂を越えたもう1つの坂に布陣したいのだが・・・見張りが無いとは言え全軍で行っては直ぐにばれてしまう。
脇道がないではないが・・・やはり時間がかかる。
どうするべきか・・・。
夏侯淵に思い浮かぶ策は1つしかない。
「高順、お前はどうするべきだと思う?」
判断に迷うわけではないが夏侯淵は隣にいる高順に聞いてみる。
「挟み撃ちしかないでしょうね。曹操殿は黄巾の情報を欲しがっている。」
ふむ、同じ考えか。
「そうだな。ここで首領なり幹部なり捕らえて他の拠点の有無は調べたいと思っていらっしゃるだろうな。」
「ええ、そうなれば1人も逃がすことなく殲滅しなければならない。討ち逃せば拠点に逃げられてしまうかもしれない。」
「そうなると、やはり挟み撃ちだな。しかし・・・。」
「夏侯淵殿。こんなのは如何です?」
高順は自分の出した策を夏侯淵に打ち明けた。
それを聞いた夏侯淵は「ふむ、それしかないかな。」と判断。伝令を曹操本隊へ向かわせようとした。
そこで、夏侯淵はある考えがふと脳裏に浮かんだ。
高順に部隊を任せてみてはどうだろう?
華琳様もおそらくは高順の武力、統率力を見たいと思っていらっしゃるだろう。
彼の慧眼やら知力を華琳様を理解している。
しかし、武力などの軍事能力についてはまだ解っていない。
名も無い男に部隊を預けるつもりは無いが彼女の勝負勘がこう告げている。
「任せたい」と。
そこで、1つ条件を追加して伝令を出した。
「高順に500ほどの兵士をつける。」
その後、その話を聞かされた高順はがっくりと項垂れていたが・・・。
彼に付けられる兵士も最初は「あんなどこから出てきたか解らないような男の下で!?」と不満を持っていたが夏侯淵の命令でもあるし、仕方なく従った。
ちょうど、輜重隊(騎馬隊)も目的に沿う道具を積んでいる。
馬の泣き声を押さえるために布で馬の口を固定。
こうして、夏侯淵の率いる部隊と高順は(泣きそうになりつつ)目的の場所へと少しずつ進んでいった。

~~~黄巾党の本陣~~~
「ははは、中々良い女だなあ、ええ?」
陣幕の中で凪の顔をじっくり凝視した男が上機嫌で酒を煽る。
黄色い布を頭に巻いた男・・・おそらく波才という男だな。
両手を後ろに縛られた凪はそんなことを考えていた。
「あ、兄貴ぃ。俺・・・もう我慢できねえっす!」
波才の側にいた数人の男が鼻息も荒くそんなことを言う。
「まあそう言うな。俺達にはあの3人の女神様がいらっしゃるんだ。それ以外の女に目移りなんてするべきじゃねぇ。」
「で、ですが兄貴!」
「落ち着け黄邵。俺達は女に迫るとき無理やりなどはしねぇ。ははは、まぁこの女もあの方たちの歌を聴けばすぐに解る。そして直ぐに自分から・・・グフフのフ。」
下卑た顔でおかしな笑みを浮かべる波才と、その取り巻きに凪は心からの嫌悪を感じた。
(くそ、下品な奴らめ。)
凪には自分のことより真桜や沙和、村の人々が無事に逃げおおせたかどうかのほうが心配だった。
だが、力尽きた自分を取り囲んだ黄巾党に近隣の村の見知った若者が混じっていたことも驚きだった。
どうやら自分が思っていた以上に彼らの影響は強いようだ。
「はっはっは!ここまで上手くいくとは思わなかったけどなぁ!他の村も劉辟と龔都が押さえてるだろう!時間が経てば経つほど兵の数は膨れ上がる!」
まったく、黄巾さまさまだよなぁ!と言いつつ更に酒を煽った。
どうも、今すぐ自分に何かをしようと考えている訳ではないようだ。
(3人の女神、か。)
恐らく、その3人とやらが彼らの上に立つ存在・・・黄巾党の真の党首なのだろう。それに歌がどうこうとも言っていた。
何のことかは解らなかったが、覚えておくとしよう。
自分が生きてここを脱出できれば、この情報も何らかの役に立つはずだ。
脱出できるかどうかまでは解らないが。
上機嫌になって酒を煽り続ける波才と、周りの兵士達。
「ああ・・・れんほーちゃん・・・ハァハァ。」
「ち、ちーほうチャン・・・ハァハァ・・・」
「てんほーたん・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
いや・・・別の意味でおかしくないか?と嫌悪感丸出しで引きまくる凪であった。

~~~同時刻、曹操本陣~~~
先ほどまで夏侯淵達がいた場所より更に南に曹操本隊は停止していた。
細作を幾度か放ったが、どうも黄巾党は見張りもろくに付けず酒宴をしているらしい。
まあ、もし見張りがいたとしても問題はない。
全て始末すればいいだけだ。
「ふむ、そろそろかしらね。」
曹操は一人呟いた。
高順と夏侯淵が考えた策というのは、挟み撃ち。である。
ただ、時間差をつけたやり方でいくらしい。
目的地の東西にはちょっとした獣道があるようで、そこを少しずつ進んで回り込むのだという。
恐らく夏侯淵達も細作を放った結果見張りがいない。ということを掴んだのだろう。
高順の部隊は南(真桜達が逃げた方角)。
夏侯淵は西、そしてもう1つの部隊は東。
隊を3つに分け、その2つを夏侯淵(実際に指揮をするのは西の部隊だが)、1つを高順が率いると言う。
客将ですらない高順を、小なりとはいえ部隊の隊長として扱うのはどうかと思うが・・・。
まだ見たことのない彼の武力を見られるのなら、それはそれでいいか、とも考える。
高順の指揮があろうと無かろうと、自軍の兵士なら水準以上の活躍を見せる。
挟み撃ちにするのならあまり差が無いと言えなくも無い。そう考えて許可を出した。

これくらいなら誰でも考えられる策ではある。だがしかし。
「私には仕えない、か。その割りに結果的に・・・私に有利に働くだろう処置を取るなんてね。」
曹操はそんなことを考えていた。
「華琳様ー!出撃はまだなんですかー!?」
夏侯惇が待ちくたびれたせいか、普段の元気さを感じられない声で喚いているのが聞こえてくる。

・・・前言撤回。考えられないのがここに1人いたわ・・・。
曹操は涙が出たわけでもないのに目頭を押さえ、深くため息をついた。

~~~同時刻、高順隊~~~
高順は与えられた500人のうち、100人を村人の保護のために南へと送った。
村人を保護したらすぐにこちらに合流するように伝えている。
一番最初に突撃を仕掛けるのは彼らだ。
彼らのやることは突撃、撹乱である。
黄巾本陣に突撃を仕掛け、火矢をありったけ射ち込む。
最初は混乱するだろうが、時間がたてば混乱も収まり反撃を試みる部隊も出てくるだろう。
そこへ東側(夏侯淵のいない側)の部隊が攻撃を開始。更に時間差で夏侯淵の部隊も攻撃を開始する。
目の前にいる黄巾党は戦慣れもしていなければ錬度も低い。装備も悪い。
対して曹操軍は夏侯姉妹、曹操が直々に訓練を行い、装備も質の良い物を選んでいる。
数もこちらが多い。負ける要素は無い。
だが、敵を逃がさないために包囲攻撃をする必要がある。
その為、どうしても部隊を薄く広く布陣させなければならない。
夏侯淵と高順の考えもそこにあったが「こちらの数を多く見せかけるために銅鑼を鳴らし続け、混乱を広め続ける。」という意見が一致している。
そろそろ曹操本隊も到着した頃だろう。
あとは足並みを揃えるだけだ。
「あー、すいません。隊長代理。」
兵士の1人が高順に話しかけてくる。
「ん?どうしました?」
「隊長代理を疑う訳じゃねーんですが・・・本当に上手くいくんですか?」
「いかなければ困りますよ。大丈夫ですって。相手に「組織的な戦い方ができないように」すればいいんです。」
「それってすごく難しいんですが・・・。」
「確かにそうですけどね。ですが、混乱の度合いを広げ続けていれば、正規の訓練も受けてない連中です。すぐに瓦解しますよ。」
「そういうもんなんですかねぇ・・・。」
「それに、あなた方は曹操様の訓練を受けている精鋭部隊です。大丈夫ですよ。それと・・・皆さん、この戦いは殲滅戦です。嫌な気分にもなるでしょうが・・・1人も残さず殺してください。」
「・・・うっす。解りました。」
「もう少しで出撃します。皆さん、必要なものをきっちり持ってるかどうか今一度確認を。」
「了解。」
高順がすぐに出撃しない理由。それは真桜と沙和を待っていたからだった。
村の人々にも手伝って欲しいことがある。
それから10分ほどで保護に向かわせた部隊から伝令が駆けてきた。
沙和と真桜も一緒に。

「あれ・・・高順兄さんやんか!?なんで陳留の軍に混じって・・・?」
「高順さん、もしかして陳留の軍人さんなの?」
再会しての一番、彼女達はそんなことを言い出した。
「違いますよ、曹操様に「皆のことを助けてー」とお願いしただけです。まぁ・・・色々あって一緒に出陣する羽目に陥りましたけどね。」
高順は苦笑してこんなことを言った。
「ほな、うちらのためにわざわざ陳留まで戻ったんか!?」
「まぁ・・・そうなりますね。あのまま見捨てる真似なんて出来ませんしねー。」
「・・・。」
朗らかにこんなことを言う高順を2人は信じられない気持ちで見つめていた。
こんな時代だ。
人の命の価値など塵同然。
それなのに、たった3日ほどの付き合いでしかないのに、彼は相当な無茶をしている。
しかも、「巻き込みたくないから」と追い出したも同然の扱いをした自分たちのために。
彼にとっては彼自身の命よりも行き摺りで関わった人の命のほうが優先されるようだ。
もしかしたら、凪はそのあたりの性格を誰よりも早く察知したのかもしれない。
そうでもなければあの無骨な凪が1日もせず真名を教えたことの説明がつかない。
本当に、信じられない。

「な、なぁ。高順兄さん・・・。」
「はい?」
「うちら、兄さんに謝らんと・・・。」
「へ?何で?」
真桜の言葉に高順が心底意外そうな表情をする。
「だって、追い出したんやで?それなのに。」
「どうして、こんなに良くしてくれるの?」
「・・・?」
よく解っていないらしい。
「あー、その、なんて説明したらええやろ。3日程度の付き合いしかないのに、なんでうちらを助けるつもりになったん?て聞いてるんよ。」
「はい?3日程度の付き合いをした人を助けちゃいけないですか?」
この言葉に2人は勿論、周りにいた魏の兵士たちも唖然としていた。
高順本人は「何をおかしなこと言ってるのやら。」と、自分たちに背を向けて黄巾の陣を注意深く見ている。
「・・・は、ははは。」
凄いわ、この人。
うちらが思った以上に底抜けのお馬鹿さんで底無しのお人よしや。
それも良い意味で。信じられんわ・・・。
「あ・・・皆、ついたみたいなの。」
100人ほどの兵に守られた人々がこちらに向かってくる。
「よし。これで準備が整ったな。」
「準備?」
「ええ、黄巾と戦うための準備。沙和殿と真桜殿も手伝ってもらえます?」
「勿論なの!」
「当たり前や!」
2人は当然のように頷いた。


~~~数分後~~~
「て訳です。皆さん、理解していただけました?」
「ほいな。」
「お任せなの!」
高順は沙和と真桜に作戦の概要を伝え、必要な動具を持たせていた。
問題は村の人たちだが、不安そうにしているものの100人ほどの兵士が護衛についているので、なんとか作戦に参加してくれることを了承した。
「よし、行きますか。」
この瞬間、今まで優しげだった高順の雰囲気が一気に変わる。
「皆さん、お互いの間を空けずに、1つの塊となって突撃してください、一騎駆けは禁止です。」
この言葉に全員が頷く。
「ありがとうございます。それでは・・・出撃!」
「おおーーーー!」

虹黒に跨った高順が沙和と真桜、そして曹操軍400を引きつれ一気に坂を駆け下りていく。
その後ろで、村人達と100人の兵が大きく叫び、銅鑼を鳴らし、出来る限りの大きな音を出し始めた。
「火矢、構えっ!」
高順の声と共に全兵が弓を構え黄巾の陣幕に狙いを定める。
「撃てっ!」
400もの火矢が陣地めがけて飛翔していく。
幾つもの陣幕に火矢が刺さりたちまち火の手が上がる。
ここまでは上手くいっているようだ。
眠りこけていた黄巾兵士も起き始めたが、何が起こったのか全くわかっていない。
火の手が上がり、どこかの軍が攻めてきた。ということは解っても狼狽するばかり。
彼らにとっては信じられない光景だった。
南の坂から少数の兵が一丸となって駆け下りてくる。
先頭を走るのは信じられないほどの体躯の馬、それを乗りこなす男。
その後ろには数百ほどの漆黒の鎧に身を包んだ騎兵部隊。
幾度も矢を打ち込まれ、陣幕が燃え、兵士が射倒されていく。
しかも、その後方から凄まじい音が鳴り響いている。まさか後続がいるというのか?
次から次へ起こる「不測の事態」に黄巾党は混乱するばかりだった。
「ここまでは良し。・・・全兵、突撃!」
「うおおおおぉぉーっ!」
高順が片手に三刃戟を構え、虹黒は更に速度を上げる。
虹黒は逃げ惑う兵を撥ね飛ばし、高順も同じく逃げることしか出来ない兵をたたんで行く。
「うちらも負けてられんで、沙和ぁっ!」
「解ってるの!」
真桜と沙和、そして兵士達が横一列になって陣を切り裂く。
そこへ、なんとか抵抗をしようと幾人かの兵士が槍や刀を構えて高順に向かってきた。
「死ねやこらあああっ!」
「・・・ふっ!」
並んで突撃してきた兵2人を、高順は三刃戟で一気に貫いた。
ズドォッ!という音が響き、貫かれた兵達は何が起こったのかも解らないまま即死した。
人を殺す感覚に未だ慣れていない高順は少し顔を顰める。そして、2人を貫いたままの三刃戟をそのまま持ち上げていく。
ギ、ギシィ・・・と戟がしなる音が聞こえてくる。
それはそうだ、大人2人を貫いたまま持ち上げているのだから。
今の高順の姿は、敵から見れば恐ろしいものに映っただろう。
炎に照らされた漆黒の巨馬。返り血を浴び、兵を貫いたままの戟を持ち上げ、殺意の篭った眼差しでこちらを見下ろす男。
黄巾兵には高順が悪鬼羅刹に見えたに違いない。
彼の姿に黄巾兵は戦意を無くし背中を見せて逃げていく。
そして、彼に付き従っている兵たちはその姿に更に戦意を高めていく。
「追撃です、一人も漏らさず討ち取ってください。」
「はいっ!」
兵たちは応えて更に追撃を仕掛けていく。
「・・・やれやれ。これじゃ、松明は要らなかったかな?」
実を言うと、まだ手を残していたのである。
陣幕が燃え上がった後、油を塗りこんだ松明に火をつけ、更に他の陣幕を焼く。ということを考えていたのだが。
黄巾兵が思った以上にあっさり崩れたせいで使う意味もなくなってしまった。
まあ、いいか。
高順は一人ごちて、追撃を開始した。


戦いは一方的なものになりはじめていた。
中央部にいた波才が何とかして態勢を整えようとしても前線から逃げてきた兵士達のせいで上手く身動きが取れないのだ。
訓練を受けていない非正規部隊の弱みが吹き出てきた。
そうしているうちにも多くの兵士が討たれている。
降伏をしようとした者もいたが、有無を言わさず殺されているようだ。
波才は判断した。こうなったら東西に分かれて逃げるしかない。
「おい、黄邵!その女を連れて来いっ!とっとと逃げるんだよ!」
陣幕の中で震えている黄邵に怒鳴って命令をする
「ああああ、あ、兄貴・・・。でも俺、脚震えて・・・!」
「ふっざけんじゃねえ!とっとと来いっていってんだ!」
そのとき、伝令が飛び込んできた。
「た、大変です、波才様ぁっ!」
「何だ、どうしたってんだ!?」
「とと、東西からも敵兵が・・・!数はわかりません!」
「何ぃぃぃっ!?」
波才は慌てて陣幕の外へ出て周りを見渡す。
・・・本当だ。本当に両側から兵士が出てきやがった。どういうことなんだ!?
「ええい、くそっ。」
悪態をついて陣幕の中にいた凪を連れてくる。
「女、お前は人質だ。来いっ!」
「グッ・・・。」
布で口を巻かれ、腕を幾重にも縛られた凪を引っ張り、波才は北へ逃げ始めた。
すでに無駄な行いだということも知らず。

夏侯淵の放った矢が寸分違わず黄巾兵の頭を射抜いていく。
「ふむ、どうやら上手く行った様だ。」
高順隊の突撃が随分敵の士気を挫いてくれたらしい。
これならば奇襲をする必要はなかったな、夏侯淵は考えつつ更に敵兵を一人射抜いた。
本来は「時期を見計らって突撃する」だったのに、自分たちが行動を開始した頃には「逃げようと向かってきた敵を一掃する」になっている。
高順はどんな戦い方をしたのやら。
「夏侯淵様、この辺りの敵は掃討したようです!」
部下の言葉に夏侯淵は周りも見渡す。黄巾兵の死骸ばかりだ。
こちらの被害はほとんど出ていない。
「東の部隊はどうだ。苦戦しているか?」
「いえ、こちらよりは時間がかかっているようですが目立った損害は無いとの事!」
「そうか、だが油断をするな。我々はこれより他2隊と合流。北へ向かう。1人も残さず斬れ!」
「はっ!」
さて、仕上げだな。
そんなことを考えた瞬間、高順隊が目の前を通っていった。
「ふふ、案外やるじゃないか。それに・・・」
高順の隣にいた2人の少女。名前も素性も知らないが中々の手練だな。
夏侯淵は馬首を北に向けた。
「我々も続く。遅れるなよ!」


波才は凪を連れて北へ逃げていた。
部下の事など知ったことではない。
自分さえ生きていればいい。
群がってくる部下を殴り、蹴り捨て、更に北へと逃げていく。
お前達は壁だ。俺が逃げるための時間を稼げ。
そう叫び、走り続ける。
「ひぃ、ひぃ・・・。こ、この坂さえ越えれば逃げられる。この坂さえ・・・。あと数十歩だ。あと少しだ。」
うわ言のように呟く波才だったが・・・坂を越えた瞬間絶句した。
目の前にはどこの官軍か知らないが、3000以上もの軍勢がいる。
その距離は半里程度(200メートル前後)
周りは暗いが、篝火を炊いてあるためかある程度のことは見える。
「なんてこった・・・。」
東西南北。どの方向にも最初から逃げ場など無かったのだ。
そして、目の前にいる軍勢の旗には「曹」の1文字。
「くそっ・・・!」
波才は南へ向き直り、包囲の薄いところを探そうとしたが、それももう間に合わないことを知った。
漆黒の巨馬に跨った男が。それに付き従うかのように進んでくる騎兵が。
今まで自分の後ろにいた兵士達を1人ずつ、だが確実に屠りながらこちらへと向かってくる。
「どこへ行くのかしら?」
波才の後ろから声が聞こえてくる。
慌てて波才は振り向いた。
そこにいたのは鎌を手にした小柄な少女。その隣には歪な形をした大刀を構えた少女。
そして、後ろには数千の騎兵。
「く、来るなっ!」
波才は凪の首に刀の刃を押し当てる。
「て、てめぇ、一体何者なんだ!どうして俺がこんな目にあわなきゃいけねえんだよ!?」
目の前にいる少女は無様な姿を嘲笑うかのような笑みを浮かべて言い放つ。
「私は陳留太守、曹操。賊を討つのに理由などいるのかしら?」
「そ、曹操。陳留太守直々だと・・・馬鹿な!?何故だ、こんな早く嗅ぎつけられるなんて!」
「さあ、何故かしらね?」
曹操は手にした鎌を波才に向ける。
「降伏したほうが身のためよ?もう完全に逃げ場は無くなったようだしね。」
その言葉を聞いた波才がまた回りを見回す。
前には曹操、横には騎兵部隊。後ろにも部下達を一人残さず抹殺した曹操軍の別働隊。
「う、ううっ。」
たまらず1歩ずつ下がる波才。
そして1歩ずつ間合いを詰めていく曹操。
その時、何に気づいたか。曹操は少し楽しそうな笑みを浮かべた。
曹操は波才の後ろにいる者に語りかけた。
「あら。秋蘭に高順。随分と早かったわね。」
「これでも遅いと思ったくらいですが。」
「これで遅いって・・・俺には基準が解りませんよ・・・。」
波才のことなどまるで目に入らぬように話しかける。
曹操は下馬していた高順の近くにいた2人の少女にも注目していた。
戦闘に参加した以上、腕に多少なりとも覚えがあったのだろう。
返り血を浴び、武器も赤く染まっているということはそれだけの戦いをした証拠でもある。
見込みがあれば誘ってみるか。
そこで一旦思考を戻し、更に波才に詰め寄っていく。
「ああ、待たせて御免なさいね。で?降伏するの?しないの?」
「うっせえ!人質がどうなっても良いのか、ええ!?」
波才は凪の首筋に当てた刀に力を込める。
「・・・!」
全員の動きが止まる。
それを見た波才は下卑た笑みを浮かべ、勝ち誇ったかのように続ける。
「へっへっへ。さあ、とっとと道を開けろ。俺はこんなところで死ぬ男じゃねぇ!」
ここで凪が噛まされていた布を自身の肩に当てこすり、なんとか布を外そうともがき始めた。
「な、何しやがる!?」
暴れる凪と押さえ込もうとする波才。
それを見て、真桜と沙和が飛びかかろうとする。
だが、凪の首を押さえた波才はまたも刀を凪の顔へと近づける。
「くっ・・・。」
「へ、へへ・・・妙な動きするんじゃねえぞ。ええ?」
「か、構わない。皆、この男を討ってくれ!」
「なっ!?」
波才は驚いて凪を見つめる。
確かに口布を当てて喋れなくしてあったはずだ。
しかし、凪の口元には布が無い。その代わりに頬に一筋の切り傷があり、そこから血を流していた。
今の騒ぎで自分から刀に近づき、布を切り裂いたのだろう。
「早く!この男を逃がすべきじゃない!」
「く、このっ・・・」
高順はここで、隣にいた夏侯淵の服の裾を少しだけ引っ張った。
夏侯淵は最初、何のつもりだ?と考えたが、高順の手の動きが「自分の後ろに下がって」と示していることに気がついた。
(・・・なるほどな。)
高順の考えを読んだ夏侯淵は少しずつ高順の後ろに下がった。
飛びかかろうと前に進んだ真桜と沙和も少しずつ後ろに下がる。
そして、虹黒も高順の横に歩を進める。
ただ高順の後ろに隠れるだけではすぐに動きも見えただろう。
だが、虹黒や真桜たちが盾になり、波才の目からは完全に夏侯淵の姿が映らなくなった。
それを確認したうえで高順は息を整えた。
自信は無いが、やってみるか。
「やりなよ。」
高順のこの言葉で場が一瞬で静まった。
「こ、高順兄さん。何言い出すねん!?」
真桜が静止しようとするが高順は気にする風でもなく続けた。
「本人がやれといってるんだ。やればいいだろ?」
「う、うぐぐ・・・。」
「だが、覚悟しておけよ?もしこれ以上その人を傷つけようとしたら・・・。」
高順は殺気を膨らませる。
「さあ、やってみろ。お前の覚悟を見せてみろ!」
「くそお、馬鹿にしやがってえええええっ!」
殺気に当てられ錯乱した波才は本当に刀を振り上げた。
その隙を夏侯淵は見逃さなかった。高順の肩のすぐ上で弓を構える。
この距離だ、当てれぬわけは無い。
気合を込め、一矢を放つ。
その矢は夏侯淵の狙い通り、肩を抜いた。
「ぎゃあああああああああ!?」
肩を射抜かれた波才は痛みのあまり刀を落とす。
自由を取り戻した凪がそのまま上段蹴りで波才の顎を蹴り飛ばした。
「くけっ・・・」
妙な声を上げて波才は昏倒した。
曹操が波才へ近寄り、首元に手を当ててみる。
「ふむ、息はあるようね。」
そして、波才の口の中を調べる。
「か、華琳様!?一体何を!そのようなこと私に命じてくだされば!」
それを見た夏侯惇が驚きのあまり声を上げる。
「毒が無いか調べるだけよ。あなたに任せたら歯を全部折ってしまうでしょ?」
「あう・・・。」
「・・・毒も無し、と。皆、ご苦労様。秋蘭、この男が自決しないように猿轡をかませておいて。」
「ははっ。」
夏侯淵は拱手すると、気絶した波才を引っ張って兵士達と本陣のほうへ向かっていった。
さてと。

高順は短刀で凪の腕を縛り付けていた縄を切り落とした。
真桜と沙和は凪に抱きついて「無事で良かったの!」とか「あいつらに酷いことされへんかったか!?大丈夫なんか!?」とか言っている。
「ああ、大丈夫だ。って、そんな思い切り抱きつくな。苦しいじゃないか。」
「せやけどなぁ・・・高順兄さん?さっきのアレはどういうことやねん?」
真桜は高順に抗議の声を上げる。
「そうなの!演技でもあれはやりすぎなの!」
「か、勘弁してくださいよ・・・俺もやりすぎだとは思いましたけど。」
はぁ~、とため息をついて、座ろうとしたが何かを思い出したのか、布と水筒を取り出した。
布を水で濡らして凪に近づいていく。
「ちょっと良いです?」
「え?何を・・・うわっぷ!?」
布で凪の顔の傷を拭きだしたのである。
「よし、これで、っと。」
今度は別の布を酒で濡らし、また拭き始める。
高順は酒は飲まないが、こういった時のために消毒用として酒を持ち歩いている。
「あ、あの。いいですから!これくらい平気です!」
凪が暴れようとするが、高順はそれを押し留めた。
「はいはい、少し染みますが雑菌が入ったら厄介ですからね。消毒するだけです。2人も凪殿抑えててくださいね。」
「え、消毒って・・・って、真桜、沙和?」
沙和と真桜が凪を両脇からがっちりと押さえつける。
「にひひ、了解や。」
「さあ、存分にどうぞなの!」
「ちょ、待って・・・ひゃああああああっ!?痛い、痛いですって!高順殿ー!?」
「染みるって言ったでしょ。おし、あとは軟膏をつけて・・・。はい、いいですよ。」
「う、うううう・・・」
凪が涙目で高順に抗議の視線を送る。
が、途中で思い出したように
「あ、あの・・・1度ならず2度まで助けていただいて。ありがとうございました。」
と、頭を下げた。
「え?はぁ。別に構いませんよ。兵を出してくださったのは曹操様です・・・し。」
あ、やばっ。忘れてた。
早く逃げないと・・・捕まりそうな気がする。いや捕まる。
OK、俺は逃げる!だがその前に。
高順はまた道具袋を漁り、翡翠璧1枚と銀の延べ棒2本を凪に手渡した。
「へ?あの、これ・・・。」
「陳留に行くにせよ、村に戻るにせよ、皆さんの当面の生活資金は必要でしょ?これだけあればしばらくは足りると思いますから!それじゃ俺はここで!」
「え、そんな、助けていただいた上にこんな事まで・・・ってどこに行くんですか高順殿!?」
「俺は風!俺は自由!」
「何ですかそれ!?」
高順は意味不明な言葉を叫びつつ虹黒に跨って東側へ逃亡した。

「ああっ!逃げられた!?」
いつの間にか曹操が側にいた。何故か縄を持って。
・・・まさか、高順殿が逃げたのって・・・?
かなりの距離を走った高順が後ろを振り返り「あばよとっつぁん!」と叫んだ。
「何それ!?じゃなくて、春蘭!捕まえなさい!多少手荒なことをしても許すわ!兵を使っても構わない!」
「はいっ!」
夏侯惇が信じられない速度(しかも徒歩)で虹黒に追いすがる。
「待ーーーてーーー!高順!虹黒ー!」
「げぇっ!?追ってきたぁっ!?」
下り坂とは言え馬を追い越すとかどんだけ脚力あるんだ!?
虹黒を追い抜き、数十メートル先まで回りこみ、夏侯惇は大刀を構えた。
「我が武を前に逃げられると思うな高順!今度こそ決着をつける!さあ、かかって・・・こ、い?」
いつの間にか虹黒が目の前まで突進をしていた。
「え、あ。ちょっと待て、普通こういう時は止まるだろ!何考えて・・・!」
「ちょ、虹黒さんー!お願いだから止まってー!このままじゃ不味いってーーー!」
まさか、私が目の前にいるときだけは高順は虹黒を制御できないというのか?
「やばいやばい!惇さん避けてー!」
「ふ、ふははは!この程度、何程のことも無い!さあ、虹黒!私の胸に飛び込んで来い!」
「ブフゥッ!」
「見事に受けきってみsごぶはあああああっ!?」
「だー!?ほんとに飛び込んだよちょっと!?」
ひゅるるるるるるる・・・と、飛んでいき、どしゃっ!と地面に激突する夏侯惇。
「う、うくく・・・この私をこの程度でどうにかなど・・・え?」
夏侯惇が顔を上げた瞬間。そこには虹黒の前脚があった。
ごきゃばきゃどぎゃあっ!
「のおおおおおおおっ!?」
「ぎゃあああああ!踏んでる!踏んでる!?つうかそれはストンピングに近いって!!虹黒さん、そこまで嫌ってるの!?」
夏侯惇の上を通り過ぎた虹黒はとどめとばかりに、後脚で思い切り、全くの躊躇をせず蹴り飛ばした。
ひるるるるるるるるるるるる・・・・・・ズギョアッ!!
哀れ、夏侯惇は曹操のすぐ目の前まで蹴り飛ばされて戻ってきたのだった。
何があったのかと夏侯淵が戻ってくる。
「あああああ、ごめんよーー!夏侯淵さん、あとで惇さんに謝っておいてーーー!」


しばらく、目の前の状況についていけず皆唖然としていたが、夏侯淵は姉の惨状を目の当たりにして錯乱していた。
「あ、姉者ー!?しっかりしろー!誰だ、誰にやられた!?私を残して死なないでくれ、姉者ーーーー!?」
「わ、私は死なない・・・何度、でも蘇る、さ・・・ガファッ!」
「姉者ーーー!?」
「はぁ・・・。」
唯でさえ痛い頭が余計に痛くなるのをこらえつつ、曹操は凪たち3人娘のほうへ向き直った。
曹操は3人娘の戦いを見ていた。
高順の膂力にも驚いたが、その隣で確実に敵を屠っていった2人の少女。
高順に聞いた話が正しければ・・・眼鏡をかけた娘が于禁、大きな槍らしきものを持っているのが李典。
今助け出されたのが楽進か。
楽進に限って言えば、戦いを見たわけではない。
だが、彼女は自分が殺されそうになっても全く怖じる事は無かった。
人間など弱いものだ。普段は偉そうなことを言っても自分の身に危険が迫ったらそうは言っていられなくなる。
危機に瀕したときにこそ、人の本質が良く判る。
そして楽進は、その危機に己の意地、或いは意思を貫こうとした。
大したものだ、と思う。
「さて、あなた達。」
「え?」
曹操に呼びかけられた凪たちは不思議そうな顔をする。
「私は陳留太守、曹操。貴方達の協力のおかげで黄巾党を殲滅できたわ。ありがとう。」
「い、いえ。こちらこそ、皆を助けていただいて感謝しています。」
凪が跪き、頭を下げた。
沙和と真桜もつられて跪く。
「そのような礼は不要よ。それより。貴方達の戦いを見せてもらったわ。中々見所がありそうね。」
「え?そ、そのような事は。」
「高順ではないけど、随分謙遜するのね。どう?私に仕えてみない?働きに見合った報酬は約束するわ。」
夏侯淵は正直、今の曹操の言葉に驚きを隠せなかった。
いつもであれば「仕えてみない?」ではなく「仕えなさい」だ。
命令ではなく、個人の意思を確認したのである。
もしかしたら高順に言われたことを気にしていたのかもしれない。
「人を、自分の機能の一部としてしか考えていない。」という言葉を。

曹操の言葉に、3人はしばらく顔を見合わせる。
少しして、凪が意を決したように口を開く。
「我々は―――」

「ふぅぅ・・・こんだけ逃げれば安全、かな?」
高順は一旦虹黒を停止させた。
何里走ったかはよく解らないが、ここまで来れば・・・。いや、夏侯淵さんいるしなぁ。
3日で500里、6日で千里の人だし。
「やっぱもう少し離れたほうがいいよな・・・なんせあの曹操さんだしな。」
思えば、虹黒には苦労のかけ通しだ。徐州の小沛を抜けて下邳に行くつもりだが、途中で休ませておこう。
もう少し頼むな、と虹黒に喋りかけて更に駆けようとするが、虹黒は動こうとしない。
それどころか馬首を西に向けた。
「お、おいおい。まさか戻ろうとしてないよな?」
流石にそれは困る、と冷や汗をかいた高順だったが、そこで馬が3頭こちらに駆けてくるのが見て取れた。
乗っているのは・・・凪、沙和、真桜だ。
凪がこちらに手を振っている。
「高順殿ー!お待ちくださーい!」
「・・・何だ?何であの3人がこっちに来るんだ?」
訳がわからない。
流れから言ってあの3人はあのまま曹操の部下になるはずだ。
それがどうして?
「ふいい、やっと追いついたで。」
「こ、虹黒・・・早すぎるの・・・。おかげで馬がへとへとなのぉ~・・・。」
「ふう、何とか追いつけてよかった。」
3人が思い思いの言葉を口にする。
「えーと、皆さん何でこんなとこに?・・・はっ、まさか俺を捕らえに!?」
「え?」
「お、俺は嫌ですよ!?絶対曹操殿には仕えませんって!」
「・・・何か、勘違いなさっておられませんか?」
凪の言葉に高順は「え?」という表情を見せた。
「うちら、曹操はんに仕えてへんで?」
「え?誘われたんじゃないんですか?」
「誘われたけど、お断りしたの!」
「何で!?絶対厚遇してくれますよ!?」
「確かにそう言うとったけど・・・なぁ?」
真桜は凪と沙和のほうへ振り返る。
凪が進み出て、高順に向かって跪く。
それに習い、沙和と真桜も。
「え?何を・・・。」
「我ら3名、高順殿に仕えたく参上いたしました!」
「・・・虹黒、お前に仕えたいんだってさー。」
思わず現実逃避をする高順であった。
「ぶっ!?なんで虹黒なん!?」
「いやいやいや!おかしいですから!貴方達ほどの人が俺を選ぶとかどういうこと!?将来性が無いとか見る目が無いとかそういうの以前の問題ですって!絶対間違えてます!」
狼狽してしどろもどろになる高順。
だが、凪達はそんな彼の姿を笑うことなく真剣な表情をする。
「間違えてなどいません!」
「そうなの!自分達で考えて、今ここにいるの!」
「うちら、こう見えて本気やで?」
いや、そりゃ嬉しいけどさ。この人たち仲間に出来れば俺の死亡フラグ、そうとうへし折れる確率高まりますよ。
でも、なんだって俺なの?
口に出さなくても、表情がそう言っていたのだろう。
高順の疑問に返すかのように凪は言った。
「2度も助けていただき、恩を返さず。それ即ち、信義にもとる。我々なりに考えた結果です。」
「命を助けられたんはうちらだけやない。村の人々もや。皆を助けてくれたことも、理由の1つやで。」
「その上、当面の生活費まで援助されてる。返さないといけない恩が一杯あるの!」
一気にまくし立てる。
「じゃあ、全部村の人たちに渡したの?」
「はい。当然です!」
言い切った凪に高順は呆然とした。

・・・。
馬鹿な子たちだなぁ。全部って。
もし俺に断られたらどうするつもりだったんだろう?
いや、なんとなく・・・「我々が仕える事を許してくださるまで何処までもついて行きます!」とか言い出すよなぁ、このノリだと。
俺みたいに、死ぬことを恐れてるだけの下らない男に仕えたい、だってさ。
・・・良い目してるよな、3人とも。こんな目で、こんなに必死に頼まれて。
断れる訳無いじゃないか。
果報者、っていうのは今の俺をさす言葉なのかもしれないなぁ。

ふぅ、とため息をついた高順を跪いたまま見つめている3人。
そのまま背を向け、虹黒の鞍に引っ掛けてある道具袋から何かを取り出した。
それは3つの袋だった。少し動かすたびにジャラジャラと音がする。
高順はその袋を1つずつ、手渡していく。
「これって・・・?」
「給料です、3人の。」
「給、料。」
「それじゃ・・・!」
「歓迎しますよ。これからよろしく。」
『は・・・はいっ!』
高順の言葉に3人は嬉しそうに頷くのだった。
これ以降、3人は高順の部下として歴史に名を連ねることになる。
色々な経緯があって彼女達は一軍の将としても名を残すが・・・。
最後まで高順の部下であることに拘り、最後までその姿勢を崩すことは無かった。




余談ではあるが、曹操は波才から他の黄巾党の拠点を聞き出し、全て殲滅。
本来歴史に出てくるはずの「潁川黄巾賊」はこのときに消滅した。
1年後、黄巾の乱が起きたときに陳留付近で黄巾賊は決起するものの、纏め上げる存在がいなかったために小規模な部隊が各地に点在するだけ、という形になっていく。
本来よりも早く自領の黄巾賊を殲滅したことで中央の官軍にとって有力な遊撃部隊として各地を転戦。その威名を知らしめることになる。
青洲黄巾賊を吸収することで曹操はその武威を満天下に示す。
歴史に曰く「魏武の強、ここより始まる。」。
それが、この世界ではこの時既に「魏武の強」が始まったのである。

正史よりも少しずつ、だが確実に違う方向へと向かい出す世界。
別の、独立した世界へ進み始めた時代。
無数の世界へと枝分かれしていく「外史」と呼ばれる世界の1つ。
その1つの世界がようやく動き出した・・・その瞬間だった。














~~~楽屋裏~~~

・・・すいません、面白い要素何も無かったですね(吐血
あいつです。
さて、今回は「陳留へ避難するよ→げぇっ、黄巾!→凪さん捕らえられました→曹操軍、攻撃開始→勝ったYOママン→高順さんに仕えますが何か?」です。(要約しすぎ
本当は2話になる予定でしたがあまり長いと結局晋陽編と同じくらいの話数に・・・・無理やり詰め込みましたとも、ええ。(そのせいでまたも文章が滅茶苦茶
ですが、書いた分量が多いため結局は1・5話~2話くらいのものにw
あと、戦いが一方的過ぎますね。
黄巾も何をしたかったのやらw

さて、ようやっと高順くん一行は徐州へ入ります。
そこで彼らに加わるであろう仲間とは?

申し訳ありませんが、もう少しだけお待ちください。
それではまた!



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第14話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/04 12:25
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第14話


下邳。
今現在、この地に高順たちは腰を落ち着けている。
徐州最大の都市であるこの場所は現在、陶謙が支配している。
実際にこの都市を預かるのは曹豹だが、それはあまり関係のない話ではある。


「ただいまー、っと!」
「ああ、お帰り。お疲れ様。」
入り口の扉を開けて叫ぶ真桜に高順は労いの言葉をかけた。
彼女達が高順に仕え、下邳に到着して2週間。
仮住まいを探し、彼女達に見合った仕事を探し、と色々忙しかったがそれもやっと落ち着いた。
「ご苦労様なのー。夕飯もう少しで出来るから待っててなの。」
台所からひょっこりと顔を出した沙和が真桜にそう言った。
「ほい、ところで凪は?」
「ああ、彼女はまだ帰って来てないね・・・もう少しで帰ってくるんじゃないかなぁ?」
そかそか、と言いながら真桜は居間で大の字に寝そべった。
「こらこら、女の子なんだからもう少し恥じらいをだね。」
「あー、高順兄さんはうるさいなー。これくらいええやん?」
「いや、しかしだな。」
抗議しようとする高順だったが・・・しばらく考え、これ以上言うのをやめた。
「仕事場が仕事場だしなぁ・・・多少粗忽になるのも仕方ないか。」
「なっはっは、そういうこっちゃ。やり甲斐があって楽しいし、うち向きやし。不満はあらへんで?」
「ははは、それは何より。凪にとっては多少辛いかもしれないけどね。」
この2週間で高順は凪たちに敬語を使わなくなった。
彼女達が「部下に敬語を使う必要はありません!」と主張した為である。
最初は違和感もあったが、この頃ようやく慣れた。
そこで、凪が「ただいま戻りました。」と帰って来た。
「ああ、お帰り。お疲れ様。」
「おお、帰って来たなー。あとは飯待ちやでー。」
「わかってるの!」
彼らはこんな感じで上手く共同生活を営んでいたのだった。

彼らが借りた家は中々の大きさで、10人くらい転がり込んでも問題が無い程度の広さだった。
虹黒の住処を探さなければいけなかったが、上手い具合にこの家に厩があったのでここに決めたのである。
昔はどこぞの武将が住んでいたらしいが、詳しいところはよくわからない。
値段もそれなりに高いが、虹黒含め馬が4頭いるし、厩をまた探しにいくとかその賃貸費用を考えると・・・。
このほうが安上がりだと思ったのだ。

「で、凪?仕事のほうはどうやったん?」
「ああ、最初は戸惑いもしたが・・・この頃少しずつ慣れてきた。」
「そっか、ええこっちゃ。」
「真桜は・・・聞くまでも無いな。」
「当然や!さっきも高順兄さんに言ったけどな、うち向きやしな。」
彼女らの仕事、というのは建築、あるいはその解体業である。
高順が探してきた仕事で、真桜にとってはスキルアップになるし、凪にしても手に職をつけたほうがいいだろうという考えだった。
真桜は元来こういった仕事を得意としており、すぐに慣れたが、苦労したのは凪である。
何せ、壊すことは出来ても作ることが出来ない。
なので、仕事関係者に頼んで「解体専用」にしてもらったのだ。
ただ解体と言っても力任せに壊すのではなく、そのまま他のところへ転用できるような解体、という意味だ。
戦国時代の日本の話だが建築をするときは、前に解体された建物などの廃材を転用して新たに作成する、ということがままあった。
簡単に言えばリサイクルだが、そういったことが可能な技術を持つ人々がいたのである。
作るのが無理なら壊すほうを覚えてもらおう、ただし次にどこかで使える形に。
そういった方向へ考えを変えたのだが、割と上手く行っているようだ。
資材を運ぶ時も、そこいらの男衆が何人がかりで運ぶようなものを平気な顔をして1人で運んでいる、という話も聞いている。
2人とも外見は良いし、真面目な凪とひょうきんな真桜は現場の人気者だった。
沙和は、と言うと彼女は帳簿役を任せている。
凪たちは日当という形で給料を貰っており、それを管理する役目にしたのだ。
それに限らず、支出と収入を記載、それに応じた食事など。
そういった日々の細々としたことも任せてある。
本人も働きたかったようだが、これも大事な仕事だというのを理解しているようで渋々了承してくれた。
・・・割とノリノリでこなしていたけど。
高順は、傭兵のような仕事をしていた。
下邳は陳留ほど大きくは無いが、それでも商人が駐在している大都市である。
その分治安が悪くなったり盗賊が内外に横行したりもする。
警備兵がいないでもないが、毎日発生する事件に対して明らかに数が足りていない。
そんな理由からか、民間からも協力者を募っている。
その1人が高順、という訳だ。勿論これも日当である。
「はーい、ご飯の時間なのー。」
沙和が食卓に食器を並べだす。
「おお!待ちくたびれたでー。」
「沙和、今日の夕飯のおかずは何だ?」
凪の言葉に沙和は胸を張り「今日は凪ちゃんの要望にお答えして麻婆豆腐も作ったの!」と答えた。
瞬間、凪の目が輝いた。
「もっちろん、からしビタビタ!」
この言葉に、高順は真桜に小声で話しかけた。
「なぁ、真桜。凪って辛いもの好きなの?」
「え?あぁ、そやな。高順兄さんは知らへんかったかな。むっちゃ辛いもの好き。うちらじゃ舌が痺れる様なもんでも平気で食うしな。」
「かなりの量食べるのは一緒に生活して解ったけど・・・なんか意外だな。」
「なはは、せやな。うちも沙和も最初は驚いたし。さて、早よ座りましょ。凪が待ちくたびれとるで?」
「ん、そうだね。じゃ、皆さん手を合わせて。」
『いただきまーす!』
この後、高順は好奇心から凪の辛子ビタビタ麻婆豆腐を少しだけ分けてもらったが・・・真桜と沙和の予想通り、辛さのあまり完全に轟沈したのだった。
「美味しいのに・・・。」
という凪の言葉を聞きながら。

その後、更に1週間が経ち、高順は面白い出会いをすることになる。
今回の高順の仕事は盗賊退治である。
街の外だが盗賊達が根城にしてある場所があるのでそこに襲撃を仕掛ける、という話だった。
歩いて一日、馬で行けば往復できる距離だという。その為、高順は虹黒を伴って出陣した。
行くのは下邳の兵士に傭兵が混ざった構成だ。
その中に、1人の女性がいた。
黒髪で身長が高く、またもスタイル抜群の美人である。
どちらかと言えばエキゾチックな感じのする人だが、薄汚れた感じがするせいで折角の美人が台無し、といったところか。
服装も半裸といえるほどに露出がある。
ただ・・・背中と腰あたりに大きな刺青があった。
非漢民族、蛮族の証である。
行軍中に一度休憩を挟んだ時のことだが、その時にその女性に虹黒が自分から近づいていったのである。

「・・・何だ?」
女性は自分に近づいて鼻を「ふんふん」と鳴らして匂いを嗅いでくる馬を訝しげに見ていた。
だが、それ以上何をしてくるわけでもないので、気にしないことにしたようだ。
所持しているズタ袋の中身を漁って食料を探し始めた。
その時、虹黒が女性の顔を「ぺろっ」と舐めたのである。
「えひゃっ!?」
女性が変な叫び声を上げる。
「お、おい。ちょっと待て・・・やめっ・・・ふぁぁっ!?」
女性の叫びなど全く気にせず顔やら耳やらをベロベロと舐めまくる。
「おおい、虹黒ー!?いきなり走っていくからどこに・・・あれ?・・・・・・虹黒が懐いてるよ。初見の人に。」
高順は虹黒と旅をして知ったのだが、遊んで欲しい時、かまって欲しい時などはああやって意思表示をするのである。
自分もよくやられたし、この頃は凪あたりも犠牲者(?)であったりする。
それなのに、目の前の女性は初見で・・・どうやら、随分と気に入ったらしい。
・・・惇さん、何か可哀想だな、と思ったがそれはいいとして。
「お、おい。そこのお前・・・この馬の主か!?は、早くなんとかして・・・ふやぁっ!?」
露出した背中まで舐められてまた変な叫び声を上げる。
「お、おい!虹黒!その人迷惑がってるからやめなさい!」
高順が手綱を引っ張る。
最初は抵抗していた虹黒だったが、しばらくして諦めたのか、そこで座り込んでしまった。
「ううっ・・・一体何なんだ・・・?」
「すいませんすいませんすいません!大丈夫でしたか!?」
取り出した布で顔やら背中を拭いていく。
「いや、別にかまわないが・・・。」
「本当に申し訳ない。普段はあまり人に懐かない子なんですけどね・・・。」
どうしたのやら、と虹黒の首筋を撫でる高順。
それを見て、女性が少しだけ笑った。
「?」
「ああ、すまない。その馬を大事にしているのだな。と思ってな。」
「そりゃそうですよ。俺の大事な仲間ですからね。」
「仲間、か。良い事だ。その気持ちを忘れなければその馬・・・虹黒と言っていたか。馬のほうもお前を信頼してくれるさ。」
「ええ、勿論です。」
「良い返事だ。・・・それよりも、私にはあまり近づくな。」
「へ?」
「・・・刺青だ。見て解らないのか?」
そう言って女性は自分の腰あたりを指差した。
「刺青は解りますけど。」
「ならば蛮族だと解るだろう?私には近づかないほうが良い。」
じゃあな、とだけ言って女性はその場を離れていった。
離れていく女性をしばらく見ていた高順と虹黒だったが、しばらくして「やれやれ」と肩をすくめた。
「ここにも呂布さんと同じ手合いがまた1人、か。関わるな、と言われたら関わりたくなるのが人情ってもんだよ。な、虹黒?」
高順の言葉に虹黒は「ぶるるっ」と応えたのであった。

その日はそれで終わり、盗賊たちもすぐに退治されたのだが・・・そこから、高順が彼女に何かと言って関わりだす。
実際はこれまでも何度か見かけていたのだが、女性が1人でいることを好んでいたためか接点が無かったのである。
女性も最初は迷惑そうにしていたものの、話し相手くらいにはなると思ってくれたのかぽつぽつと話をしてくれたり、聞いてくれたりするようになった。
自分は別の場所に住んでいたが、事情があって追い出されてしまった。とか、1人の少女を保護して一緒に住んでいる、とか。
あと、仕事中の食事は持参なのだが・・・いつも野菜を取っている。
この時代でも野菜は主食ではなく、あくまで添え物でしかない。
最初こそ、ベジタリアンかな?と思っていたがそうではなかったらしい。
理由を聞いたら「私のような蛮族はお前達よりも日当が少ない。あの娘の食費も必要でな。安いものしか用意できないんだ。」という答えだった。
(やっぱ差別か・・・胸糞悪い話だ。)
そこで高順はある1つのことを思い出す。
「あ。そういえば。」
「?」
「名前をずっと聞き忘れてた・・・。」
「・・・確かに、名乗っていなかったな。」
んっ、と咳払いをした女性はこう言った。
「聞いて得をするようなものでもないがな。私の名は沙摩柯と言う。」
「はぁ。・・・はあああああああああああああああっ!?」
「な、何だ!?うるさい奴だな!」
「ちょ、今なんて!?沙摩柯って言いましたか今!?」
「言ったぞ。」
「あなた南荊州とかに住んでたんじゃないですか!?」
「確かにその辺りだな・・・って何故知ってる。」
・・・OK,冷静になれ、俺。
本来、沙摩柯って人はもっと後の時代になって出てくる人だ。
今の時代だとまだ子供だと思うのだけど・・・。
でも、他の人も皆若いしなぁ。揃いも揃って女性だし。
それに・・・前から気になってたが物騒な武器を持ってますよ。
鉄の棒に穂先・・・?か柄か解らないけど刺がたくさんついてる円形の棒。
鉄疾黎骨朶、だっけかな。じゃあ本物って事なのか?
変な修正でも働いているのだろうか。
虹黒が懐いてるっぽいのも異民族だからかも。
しかし・・・この場所にいないはずの人が出ましたよ。
あれこれと悩んでいる高順に不思議そうな顔で見つめる沙摩柯。
「・・・おかしな奴だな。」
呆れ顔でこんなことを言われる高順であった。

実際、おかしいと思われて仕方が無い。
非漢民族である沙摩柯に自分から話しかけたりするところが、特に。
そう思いつつも、沙摩柯も高順に感謝していることはあった。
今までは1人でいることが多かった沙摩柯もこの頃は何かと高順とつるんで暇だと感じることが少なくなった。
野菜くらいしか購入できない彼女を見かねて握り飯を分けてくれたりする事も多い。
自分と同じ部族、或いは同じ境遇の人々しか信じられない。今まで沙摩柯はそう考えていた。
どこに行こうと、異民族であることを理由に不当な扱いを受ける。
まともに人として扱ってもらえたこともない。
ところが、高順はどういうわけかそういった差別意識を沙摩柯には向けてこなかった。
それどころか、食事を奢ってくれたりとか、前に話した保護している少女へのお土産に、と果物を渡してくれたり。
見知らぬ土地に出てきた沙摩柯という人を「人として」扱ってくれた初めての人だった。
高順にしても、沙摩柯との付き合いは悪くないものであった。
呂布のこともあったし、高順自身が「刺青の1つや2つが何ほどのものか」と考えている。
○クザやら○フィアとかであればまだしも。
罪を犯し「人ではない」事を証明するために彫られる刺青か、部族の風習として刺青をしているか。
違いはあっても、どちらにせよ非人間として考えられるのである。
罪を犯したことへの刑罰ならそれは仕方が無い。社会的制裁ということで納得もしよう。
だが、高順は「自分たちと違う」というだけで差別するのはどうなんだよ?と考えているし、そんな風潮には平然と反発をする。
善良な人間だっているんだぞ、と。
呂布が悪質な人間だったろうか?凪たちの話を興味深そうに聞いたり、虹黒に懐かれて困惑したり、人の表情を見せる沙摩柯は非人間だというのだろうか?
そんなはずがないだろう。
この反発心が形になって彼の率いる部隊にその特色が表れることになるのだが・・・それはもう少し後の話。

さて。
高順はこの日、沙摩柯を自分たちの住処に招待した。
別に妙な意図があったわけではない。
沙摩柯が凪たちに興味を持ったこともあるし、凪たちに沙摩柯の話をしたら「是非一度お会いしたい」とも言っていたからだ。
「では、あの娘も連れてくる」と言っていたので、高順は沙摩柯の住処に着いて行くことにした。
表通りを抜け、あまり人が寄り付かない道へ入っていく。
どの都市でも言えることだが、裕福な人々がいれば逆に貧しい暮らしをしている人々が集まる場所が出来る。
治安と同じだ。平和なところがあればそうでない場所がある。
そして、沙摩柯が住んでいるのは治安はともかく、貧しい人々の住処・・・言うなればスラムであった。
そのスラムを進んでいく2人だったが、高順はあることに気がついた。
「人がいないな。」
スラムでも多少は人がいるはずだと思うのだが人っ子1人見当たらない。
「ああ、ここは我々のような立場の者が押し込められる場所さ。ここに住んでいるのは私達とあと2人位かな。」
「・・・そこまで差別するか。本当にどうしようもない奴らだな。」
ここの太守は曹豹と言ったか。
実際に方針を決めているのは陶謙だろう。
演義では人の良い好々爺といった男だが史実では悪政を行うし、反董卓連合に参加せず形勢を傍観、その後董卓に貢物を出していたという男だ。
形勢云々は仕方ないとして、悪政を行っていた、というのはどうも事実のようだな。
「それが普通なんだ。高順のように差別しない手合いがこの街では珍しいんだよ。」
「そういうものかなぁ。」
「そういうものさ。・・・ここだ。」
沙摩柯に案内されて到着した場所は廃屋だった。
どこもかしこもボロボロだ。
沙摩柯は「雨風が凌げるだけマシさ。」と肩をすくめていたが、これは子供には辛いだろうな、と高順は考えていた。
そこへ、その廃屋から1人の少女が出てきた。
「あ、おかえりなさい、沙摩柯お姉ちゃん・・・。あっ。」
年の頃は・・・恐らく、10に満たないな。7,8歳くらいか。
ただ、知らない人がいたことに驚いて廃屋の入り口の裏に隠れてしまった。
「知らない人がいる・・・。」
「怖がらなくていいぞ、前に話した高順という男だ。」
「じゃあ・・・お土産をくれた人?」
「ああ、そうだ。いい奴だぞ?怖がらなくても良いさ。」
沙摩柯の言葉を聞いた少女は高順の前まで出て来て「ぺこり」と頭を下げた。
「何度もお土産をいただいてありがとうございます。それと沙摩柯お姉ちゃんがお世話になってます。」
「・・・沙摩柯さん、随分礼儀正しいですね。」
少女の言葉に高順が少し驚いて後ろの沙摩柯に言う。
「まあ、な。」
高順はしゃがみ、少女と同じ目線くらいに頭を下げた。
「初めまして。・・・ええと、名前教えてもらえるかな?」
「ぞうは、です。」
「・・・ぞうは・・・。臧覇!?」
(びくっ)
「ああ、ごめん。驚かせるつもりは無かったんだ。変わった名前だな、と思ってね。」
怯えてしまった臧覇の頭を「よしよし」と撫でながら高順は弁解した。

むぅ・・・臧覇ですら女の子ですよ。
曹豹や陶謙の性別はどうも男のようだけど・・・俺に関わる武将が全員女なのだろうか。
虹黒も雌だし・・・。
男としては嬉しいけど、皆俺より強いのだよなぁ・・・立場が無いorz
でもさ、そろそろ仲間に男の武将が出て来てもいいと思うのですよ。
今の住処で3人娘とは別室で寝てるけどたまにすごい孤独感を感じるときがあるし。
神様、そろそろ考えていただきたいと思います(割と本気

気を取り直して。
「臧覇ちゃん、ね。俺は・・・知ってると思うけど。高順と言います。高順おじさんとでも呼んでくれればいいですよ?」
(おじさん?)
(おじさん・・・)
どうも、大梁の村の子供におじさんと言われたことを自虐しているらしい。(臧覇たちが知るわけも無かったが
高順の発言に臧覇は首を横にふるふると言って「お兄さん。」と言った。
「へ?」
「おじさんじゃないよ、お兄さんだよ。」
「そっか。まあ、好きに呼んでくれればいいよ。」
言いながらも高順は少しだけ嬉しかった。
(おじさん呼ばわりされなかったよ!初めて子供に「お兄さん」呼ばれたよ!真桜は別として・・・。生きてて良かった!)
・・・おかしなところで感動する高順であった。
じゃあ、そろそろ行こうか?と沙摩柯のほうへ向き直る。
「え?どこかお出かけ?」
「ああ、高順が家に遊びに来て欲しい。と言うのでな。」
「本当に?」
「嘘じゃないよ?臧覇ちゃんは遊びに行きたくないかな?」
「行く!」
満面の笑みを浮かべて返事をする臧覇だった。


~~~高順たちの住処~~~
「ただいまー、っと。」
「お帰りなさい、高順殿。」
凪が出迎える。と、高順の後ろにいる沙摩柯たちに気がついた。
「そちらの方々は・・・?」
「ああ、前に言ってた沙摩柯さんと、一緒に住んでる臧覇ちゃん。」
「そうですか、この方々が。申し送れました、私は楽進と申します。」
凪が沙摩柯と臧覇に自己紹介をして頭を下げた。
「あ、ああ。私は沙摩柯。ほら、臧覇。挨拶をしなさい。」
「初めまして!臧覇です!」
「おや、元気がいいですね。・・・さあ、どうぞ。用意は整ってますから。」
そう言って凪は居間の方へ向かってしまった。
その後姿を見ながら沙摩柯は溜息をついた。
「ん?どうしました?」
「いや。なんというか普通に接してくれているな、と思っただけさ。どうも、差別されることに慣れているのか・・・普通に扱われることに戸惑いがあってな。」
「じゃ、これから慣れてください。ほらほら、早く入って。」
高順は2人の背中を押す。
「随分と簡単に言ってくれるな・・・お、おい。押さなくても入るって!」
「ほら、早く早く。」
促されて進んでいく2人を待っていたのは・・・。

『いらっしゃ~~~い!』
大歓迎であった。

「おー、よう来てくれはりましたな。うちは李典いいます、よろしゅーに。」
「于禁なの!お客様は初めてなの!」
随分と歓迎ムードである。
沙摩柯と臧覇は何事!?と言いたげな顔でポカーンとしている。
「ほら、2人とも早く座って。今日は豪勢に豚の焼肉なんですよ?」
「焼肉!?」
「ねえ、沙摩柯お姉ちゃん。やきにくって何?」
「え?それは・・・。」
「まあ、食べたら解るって!ほらほら、早う座ってぇな!」
沙摩柯たちも慌てて座る。
「えー。今日はお客様が来ました。沙摩柯さんと臧覇ちゃんです。2人のご来訪を記念して本日は焼肉で歓迎会です。お代わりはたくさんあるので遠慮なしで大丈夫。それでは皆様、手を合わせてー。」
高順の言葉につられて沙摩柯が手を合わせ、何が何だか解ってない臧覇も真似をして手を合わせた。
「いただきます!」
『いただきまーす!』
「い、いただき・・・ます?」
「いただきます?」
沙摩柯はともかく臧覇も焼肉など食べたことが無いらしく、どうすればいいのかわからない様だった。
「あれ?臧覇ちゃん、食べないの?」
それを見た沙和が臧覇の顔を覗き込む。
「え、その、えっと。どうやって食べたらいいのかわかんなくて・・・。」
「なるほどー。じゃあ教えてあげるの!まずね、こうやって箸でお肉を取って・・・あ、熱いから気をつけるの。」
「臧覇ちゃんー、子供なんやから遠慮せんでもええでー。むしろ遠慮するんが失礼っちゅーもんやー。」
「おい、真桜、もう酔ってるのか!?」
「ええやんかー、凪も飲みーやー。」
「く、酔っ払いめ・・・。」
和気藹々とした雰囲気で歓迎会は進んでいく。
臧覇も最初は戸惑っていたようだが、意を決して肉を口に入れた。
「お・・・美味しい・・・こんなの初めて食べた・・・。」
この言葉に沙和と真桜は何故かガッツポーズをする。
「よっしゃあ、タレの味付け大成功や!」
「気に入ってもらってよかったの!」
その後もしばらく肉を食べて米を食べて、と忙しかった臧覇だがふと箸を止めてポロポロと涙を流し始めた。
「うわ!?どないしてん、火傷でもしたんか!?」
「う、ううん。違うの。」
涙を吹いて臧覇は頭を横に振った。
「じゃあ、どうしたの?」
「暖かいご飯って・・・ぐすっ、こんなに美味しいんだって思って・・・。」
「・・・。」
この言葉に沙和も真桜もしゅんとしてしまった。
騒ぎすぎた、と思って反省したのかもしれない。高順はそう思ったが。
「よっしゃ!嫌なことは忘れてまえ!臧覇ちゃんも酒飲むんや!」
「え?ええっ?お酒って?」
真桜がおかしなことを言い出し、高順はそれに反応する。
「ちょっ!真桜さん何言ってるんだ!駄目ー!子供にお酒飲ませちゃ駄目ー!」
「何やねん、ええやんかそれくらい!高順兄さんは固いわ!固いちゅうか硬いのはあそこだけで十分やっちゅーの!沙和かてそう思うやろ!?」
「当然なの!」
「沙和さんまで何言ってんだ!?臧覇ちゃん、飲んじゃ駄目だから!絶対駄目だからー!酔っ払いの言葉をまともに聞いちゃ駄目だー!!」
「え、うん。・・・えへへ。」
毎回の事ながらドタバタである。
彼らのやり取りを見ていた沙摩柯は呆然としている。
「どうしました?お口に合いませんか?」
そんな彼女に凪が横から話しかけた。
「いや、美味しいさ。久々に暖かいものを食べたからな。ただ、臧覇が楽しそうにしているのを久々に見たと思って。」
「そうですか。」
「ああ。・・・ところで、楽進といったか?お前は怖くないのか?」
「・・・ああ、真名はまだ教えていませんでしたね。凪、と呼んでくださって結構ですよ。」
「そうか、ではそう呼ばせてもらおう。」
「はい。それと先ほどの質問ですが・・・何が怖いのです?」
「言い方が悪かったか。私の刺青を見てもこの家の者は恐れないのか?」
「何か罪を犯されましたか。」
「いや。部族の風習だ。」
「では、恐れる必要はありませんね。」
凪は特に気負うでもなく言い切った。
「刺青の1つや2つで人間でないか、そうでないか。それで人の在り方など変わりはしません。少なくとも私達はそう思っています。・・・高順殿も、同じ事を言うのでしょうね。」
「・・・そうか。確かに高順もそんなことを言っていたな。いや、済まなかった。」
そこで、凪は沙摩柯に杯を差し出した。中には酒が満たされている。
「凪、これは?」
「乾杯のつもりです。」
「・・・なるほど。」
沙摩柯は杯を受け取る。。
「だが、何に乾杯なんだ?」
「何でも良いでしょう。・・・ならば、我々と、貴方達の出会いに。」
「そして、今日という日に。」
沙摩柯は自分の杯と凪の持つ杯に重ねた。
こつん、という音がして中身の酒がそれにあわせて揺れる。
2人は中身の酒を一息で飲み干した。
「旨い酒だな。」
「ええ、本当に。」

高順が真桜と沙和に無理やり酒を飲まされ昏倒し、凪が2人に説教食らわせたりと一波乱あったものの。
臧覇も高順や3人娘によく懐いたし、沙摩柯も3人娘と飲み比べをしたり。2人にとっては久々に楽しい時間だったようだ。
夜も更けてきた頃、あまり長居しては迷惑になるだろうと考えた沙摩柯は臧覇に「そろそろ帰ろう」と言った。
「えー、もっと遊びたい。」
「我侭を言うんじゃない。高順たちに迷惑だろう?」
「うー・・・。」
嫌がる臧覇を沙摩柯は宥めようとする。
「えー、ええやんかー。今日は泊まっていきーやー。」
臧覇を援護するように真桜がそんなことを言い出す。
「なー、凪ー、沙和ー?別に構へんよなぁー?」
「酔っ払いめ・・・。まあ、私は良いと思うぞ。」
「沙和も良いと思うの・・・うぅ、飲みすぎたかも・・・。」
「しかしだな・・・。」
そこで、昏倒していた高順が頭を振りながらやっと起きてきた。
「ぬぅ・・・これだから酒は・・・くそ、途中で記憶が抜けてるよ・・・。」
「あー、おはよー高順にーさん。」
「おはよう、じゃないよ。無理やり酒飲ませて。」
げんなりする高順の姿を見て真桜は「にゃはは」と笑う。
「そうだぞ、真桜。高順殿は酒は苦手だと前から仰ってただろう。」
「固いこと言いなや。あ、んなことよりもやな。」
「んな事とか言われた・・・。」
「沙摩柯はんと臧覇ちゃん、今日ここに泊まりたい言うとるんやけど。」
「お、おい!私はそんなこと一言も言ってないぞ!?」
「なっはっは。むしろ住みたいとか言うてたでー。」
「言ってない!おい、高順!嘘だからな、信じるなよ!?」
必死に否定する沙摩柯と、からかってるような言い方をする真桜。
だが、高順は。
「ん、住んでもらおう。了承。問題なし。」
「は?」(真桜
「へ?」(沙和
「え?」(凪
「何!?」(沙摩柯
「?」(臧覇
凄まじくあっさりと許可を出してしまったのであった。(沙摩柯と臧覇の意思は無視。

「おい、高順!?」
「高順兄さん、決断速っ!」
「沙和も驚きなの・・・。」
「高順殿・・・。いきなり何を?」
「え?何?何?」
5人が5人、別の反応を示すが高順はこともなげに言う。
「だってさー。さっき沙摩柯さんの住んでる場所見せてもらったんだけどさ。あれはキツイって。無理。」
「無理って何が!?」
「凪たちは見てないから解らないだろうけど。あれは酷いよ。沙摩柯さんだけなら耐えられるかもしれない。でも臧覇ちゃんにはきつ過ぎる。」
「それは・・・しかし、私達には他にいくところが無いんだぞ?」
「だからここに住めば良いのです。あんな劣悪な環境だと臧覇ちゃん、大変なことになりますよ?」
「いや、しかし。」
「沙摩柯さんだってそうはなって欲しく無いでしょうに?」
「それは・・・そうだが。」
高順は矛先を変えて3人娘のほうへ向き直った。
「皆はどう思う?」
「うち?かまわへんで?」
「沙和も問題ないの!」
「私も構いません。」
こちらはあっさりと了承してくれた。
「なあ、臧覇ちゃん?今住んでるところの生活は苦しくない?」
「え?辛いけど・・・。沙摩柯お姉ちゃんいるから平気だよ!」
この言葉に、その場にいた一同が「良い子だなぁ・・・。」と思ったとか。
その後もあーでもなこーでもない、と色々議論を重ねた結果、2人はこのまま一緒に住むことになる。
ただし、沙摩柯も臧覇も、何らかの形で働くこと。
これは彼女達のほうから言い出したことで、その点に異論は無い。
ただ、沙摩柯は刺青の問題があって稼ぎは少ないし臧覇はまだ幼い子供だ。
どうするべきかな?と考えた高順だったが、すぐにあることを思いついた。
臧覇は、沙和に家事を教えてもらい文字の読み書きや数字計算を覚えてもらう。
これは最低限の一般知識を習得してもらおうと考えたからだ。
そして沙摩柯だが・・・彼女は馬術、あるいは馬上戦闘の達人であるようだ。
普通の歩兵としての能力も高いが、その辺りに注目して3人娘の馬術の指導を頼んだのである。
彼女らは歩兵としての戦闘力は高いのだが馬上戦闘は普通よりも多少上、と言ったところだった。
自分が教えてやれば良いのかもしれないが、何せ乗っている馬が虹黒では手本以前の問題のような気がする。
その辺りをどうやって教えればいいかと頭を悩ませてもいたので、好都合といえば好都合だった。
指導時間は・・・彼女達も自分も普段は仕事をしている。
なので、「休日」に指導をお願いすることにした。
これは高順なりに考えたことで、週休2日制を実施している。
5日間働き、あとの2日は身体を休める。或いは鍛錬を行う。といった感じだ。
その2日間に出来る限り馬術を教え込む。勿論身体を休める時間程度は作るが。
その案を提示したところ、あっさりと了承を得られた。
「じゃあ、明日が休日だからそこからお願いしよう。」
「ああ、構わない。・・・ふむ。馬術か・・・。」
「どうかしました?」
「いや、1人馬術を得意としている知り合いがいてな。あの場所にもう1組住んでいると言わなかったか?」
「・・・ああ、確かにそんなことを言っていたような。」
「気心が知れた仲だし、あいつは私よりも気性が柔らかいからお前たちとも気が合うだろう。あいつも呼んでやりたいが・・・しかし、高順たちの負担を考えるとな。」
「ふーむ。」
悩む沙摩柯を尻目に、高順はまた3人娘に聞いてみる。
「てな訳でもう二人増えそうですが皆さんどうでしょう?」
『問題なし。』(断言
「だ、そうですよ、沙摩柯さん。」
「・・・お前達の常識を疑いたくなってくるよ。」
ふぅ、とため息をつく沙摩柯。
「そういうことなら、明日連れてくるよ。ただ、馬はどうするんだ?」
「明日買いに行けばいいでしょう。この街なら良い馬の1頭や2頭くらい、すぐ見つかるでしょう。」
「いや、そうじゃなくて、金はどうするんだ?」
「俺が出しますよ?」
「・・・そ、そうか。お前、どこぞの資産家か何かなのか?」
「そういうわけでは無いですけどね。まぁ、金なら・・・また無駄に貯まってるのかもなぁ。」
どこか遠い目をして呟く高順。
沙摩柯は意味が解らず首を傾げるばかりだった。
そして、夜が明けたころに沙摩柯は2人の客を連れてきた。
2人とも性別は女。
1人は沙摩柯と同じように、成人した女性。もう1人は臧覇と同じく幼い少女。
「は、初めまして・・・。」
「はじめまして!」
女性は少し気弱そうに、少女は元気よく高順に挨拶をした。
「初めまして。沙摩柯さん、このお二人が?」
「ああ、そうだ。・・・ほら、自己紹介を。」
「あぅ・・・。」
「お前の気の弱さは知ってるが、それくらいは自分でやれ。ほら。」
「わ、解りました。」
女性はその場に跪き、少女も真似をする。
「わ、私は蹋頓と申します!」
「私は丘力居だよ!」

・・・どさっ。
2人の名を聞いた瞬間、何故か高順はその場で気絶したのだった。
「ええっ!?ど、どうかなさいましたか!?」
「おい、高順!?どうした、何があったー!?」

神様、何でこんな見目麗しいお姉さんばっかりなんですか・・・。
しかも何か色々と間違っている気がします、むしろこの2人の立場が逆でいいんじゃないでしょうか・・・・・・?
もう慣れたと思いつつも、やっぱり慣れません。誰か助けて・・・。
薄れていく意識の中、自分を取り巻く状況に絶望(?)する高順であった。




~~~楽屋裏~~~
今回も面白い要素があまり・・・
なんで難産って続くのでしょうね。あいつです(何挨拶

さてさて、今回は2人・・・いや、実際には4人ですが高順と共に三国時代を駆ける人々が増えました。
解らない人もいるかもしれないので読み方を。

沙摩柯→「しゃまか」、あるいは「さまか」 私はしゃまか、と読みますが。
臧覇→「ぞうは」
蹋頓→「とうとん」、あるいは「とうとつ」
丘力居→「きゅうりききょ」

丘力居、舌をかみそうな名前ですw

さて、不要かもしれませんが少しだけ解説を。
高順が言った「むしろこの2人の立場が逆でいいんじゃないでしょうか」というものですが。
蹋頓は丘力居の甥か何かだったと思われます。
丘力居が亡くなった時はその息子が幼かったので代わりに蹋頓が一時的に勢力を引き継いだ、ということですね。
なので「逆でいいのでは?」と思ったのでしょうね。
作者は「同じ一族なので登場させた」というだけです。
イメージとしては戦闘力を考えるとどうしても蹋頓のが上に思ってしまうので逆の立場になった、という感じですw

それじゃ、何で沙摩柯が臧覇と一緒にいるんだよ、ということなのですが・・・
すいません、深く考えませんでした(おい
他の異民族の方を出そうとも思いましたが・・・あまり出すのもどうかなぁ、と思ってこのような配役に。
申し訳ありません。
さて、徐州編は次くらいには終わると思います。彼女らを出したかっただけ、というのがありm(拉致

彼らが次に向かうのは何処になるのやら。

それではまた!



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第15話(調子に乗って連投
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/04 22:44
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第15話

「高順お兄さん、これでいい?」
「ん?おお、ちゃんと綺麗になってるな、偉い偉い。」
高順が雑巾を持った臧覇の頭を撫でる。
「あー、臧覇ちゃんばっかりずるい!わたしだって頑張ってるのにー!」
「ほら、喧嘩しない。・・・丘力居ちゃんもちゃんとやってるな、偉いぞ!」
今度は丘力居の頭を撫でる。
「えへへー。」
「さて、そろそろ弁当持っていくかな。2人もついて来る?」
『うん!』
「よしよし、じゃあ皆で一緒に行こうな。」
2人の頭を撫でながら高順は台所へ赴いた。

臧覇と丘力居は、高順たちの住処に世話になっている。
蹋頓と沙摩柯もなのだが彼女達は今、凪たち3人娘に馬術ならびに馬上戦闘を教えている。
臧覇と丘力居は住処の掃除やら、馬の世話をして貢献している。
虹黒はどうも子供好きのようで、臧覇たちに身体を拭いてもらったりするのが楽しみらしい。
あまり他の人は乗せたがらないくせに、臧覇たちはあっさり乗せたのである。
その代わり、高順が一緒で無いと無理なようだが。
沙摩柯ら4人が転がり込んで1ヶ月。
この1ヶ月で高順らを取り巻く環境が少しずつ変わっていた。
まず、高順。
どういうわけか陳登や、その父親の陳珪から仕官を要請されていた。
本来彼らの居場所は小沛なのだが・・・。
虹黒が目立ちすぎたせいか、盗賊退治で頑張りすぎた結果なのか。
それはよく解らないが、直々の要請をされていた。
おそらく、武力に長けた人間が欲しいということだろうな。と高順は考えている。
実際、史実じゃ戦闘力に長けた武将はほとんどいなかったし、武官として思いつくのが曹豹くらい、というのがある意味で終わってる。
それは必死にもなるだろう。
勿論、丁重に断った。陶謙に仕えてやるつもりは毛頭ない。
そして凪たち3人娘。
彼女らは高順が思った以上に頑張っていた。
仕事もだし、馬術訓練も弱音を吐くことなく黙々とこなしている。
蹋頓と沙摩柯の教え方も随分上手なようだし、なにより実戦形式で教えているのが大きいようだ。
流石に街中では無理なので郊外まで出て行っての訓練になる。
高順も修行をしなければ、と考え凪から「気」の練り方などを少しだが教わった。
さすがに一朝一夕では無理なので簡単な呼吸法やら何やらだったが、凪曰く「飲み込みが早いから教え甲斐がある」だそうな。
高順は自分の武の才能は母親の血が色濃く受け継がれたからではないか?と考えている。
そうでもなければ気、というものなんて扱えない。
最後に沙摩柯たち。
彼女達の大きく変わった所といえば服装だった。
臧覇と丘力居は子供用の服を。
沙摩柯と蹋頓は・・・なんというか、スリットがすごいことになってるチャイナドレス。
沙摩柯は黒、蹋頓は灰色。
2人ともスタイルが抜群すぎるので高順曰く「あれは反則だ・・・」と言わしめるほどの破壊力である。
夏侯姉妹もチャイナドレスを愛用していたが、あの2人よりも裾の長いものを選んだ。
あの姉妹のはほとんど下着が見えてしまうようなもので、あれはあれで問題である。
沙摩柯と蹋頓の場合は「刺青を隠す」意図もあったりする。
ただ、服を選んだのが3人娘だったこともあり服屋で随分と弄られていたのか、げんなりした様子を見せていた。
あと、彼女達の馬だが虹黒のような重種は売っていなかったので、中間種を2頭購入した。
気性が穏やかで乗りやすく、すぐに沙摩柯たちにも慣れた。

こんな生活をしていた高順達だったが・・・。
意外にも早く、その生活は終焉を迎えそうだった。
理由は・・・今度は陳登ではなく、陶謙から直々の仕官要請が来てしまったのである。

使者からの言葉と手紙を受けた高順は(一応)恭しい態度で使者を見送った。
そして居間に帰って来た高順はそのまま胡坐をかいて座り込んでしまった。
「・・・ちっ。」
高順が露骨に不機嫌になる、というのは珍しい。
よほど気に入らないことがあった時にしかそんな表情も態度も見せない男だ。
だが、他の人々より気が長いと言うか滅多に怒らない。
部下である3人娘にからかわれても「まったく、あいつらは。」と苦笑して済ましてしまう。
自分の上司をからかう、というのは本来やってはいけないことで、剣を抜かれても仕方が無いような時代である。
もともとこの時代の人ではないから、という理由もあったが、その気の長さは周りに好印象で受けとられる事が多かった。
そんな高順が見るからに不機嫌になっている。
一体何があったというのだろう?と訓練から帰って来た3人娘と沙摩柯らは顔を見合わせていた。
そこに、大人の空気など読めない少女二人が高順にひっついて行った。
「ねー、高順にーちゃ?何かあったのー?」
「なんだか、機嫌悪いみたいです・・・。」
それを見た5人が一斉に青ざめた。
(お、おい。なんて空気読めない行動を!)
(しゃ、沙摩柯さん、止めてくださいよ!高順さんに叱られちゃいます!)
(もう無理だ蹋頓!そういうのは凪達に言え!)
(ええっ、うちら!?)
(あれはいくらなんでも無理なの!)
高順は尚も不機嫌そうにしていたがさすがに子供にあたることはできないと思ったようで「ああ、何でもないよ」と応えた。
だが子供たちも納得しない。
「えー、全然何でもないように見えないよー?」
「き、丘力居ちゃん。嫌がってるのにあまり聞いちゃいけないような気がする・・・。」
「う~~~。」
「・・・ふぅ。」
高順はため息をついた。
この子達は、興味本位だけで聞いてるわけではない。
普段あまり怒ったりしない高順のことが心配だったのだろうし、不安だったのかもしれない。
それを思うと、さすがに怒りも収まってくるような気がした。
高順は2人の頭をなでつつ「2人に教えてもちょっと難しい内容だからよくわからないと思うよ」と苦笑した。
「え~・・・」
「う・・・」
少し落ち着いたのか、高順は普段とあまり変わらない様子で「悪いんだけど皆を呼んで来てくれないかな?」と頼んでみた。
二人ともこくこくと頷き、居間を出て行く。
しばらくして、皆が居間にぞろぞろと入ってきた。
「よ、呼びましたか?」
心なしか震えた声で凪はそんなことを言った。
他の者もどこか落ち着かない様子だ。
「・・・なんでそんなに怯えてるか解らないけど、皆に話したいことがあってね。」
「話したい事・・・何やろ?」
真桜の疑問に高順は先ほど使者から受け取った手紙を机の上に置いた。
『???』
「これを読めば解ると思うよ。」
その手紙を広げ、凪はざっと見で内容を調べていく。
「・・・これって、仕官要請状ではないですか?」
「え?嘘!?見せて見せて!」
そう言って身を乗り出してきた沙和に凪は手紙を渡した。
「うわぁ・・・本当なの・・・。」
手紙の内容を知らない他3人も、手紙の内容を覗き込んでいる。
「これの何が問題なんでしょう?」
「その手紙自体には何も問題は無いよ。問題なのは陶謙さ。」
「陶謙・・・この徐州を預かる人ですよね?」
「そう。」
そこで一旦言葉を切ってはぁ~~・・・と高順はため息をついた。
「沙摩柯さんや蹋頓さんなら知ってるかもしれないけど・・・。張昭って人、知ってるかな?」
話を振られた沙摩柯と蹋頓は「張昭?」と聞いてしばらく考えていたが、思い当たる節があって「ああ、あれか・・・」という反応を示した。
「何があったん?その張昭とか言う人。」
真桜の質問に蹋頓が応えた。
「少し前の話なのですが・・・陶謙はその張昭という人を茂才に推挙して、自分の家臣にしようとしたことがあったんです。」
「あった・・・って?」
「張昭という人はそれを断ったのです。そこで終われば良かったのですが・・・。それを恨んだ陶謙に張昭は投獄されたのです。」
「・・・なんちゅうやっちゃ。」
「それだけじゃないさ。自分の気に入った人材しか使わない。だから政治も刑罰も偏る。そのせいで苦しんだ人々も多い。」
沙摩柯の言葉に高順は頷く。
「そういうこと。だから、嫌なんだ。投獄されるのも困るしね。」
それに、と高順は続ける。
「もし俺が家臣になったとしよう。そんな性格の男だぞ?沙摩柯さんと蹋頓さんはまず追放される。異民族だから、ってね。」
だからこそ、この街で差別される立場になってたんじゃないか、と憎憎しげに呟いた。
「では・・・高順殿はこの話を?」
「断る。当然だ。ただ、そうなると・・・」
「・・・この街を出なきゃいけないの。」
沙和ががっくりと肩を降ろす。
凪も真桜も「そんな・・・」と呟く。
それを見た高順も鬱々とした気持ちになってくる。
(くそ、まだやりたいことはあった。皆もようやくこの街に慣れてきたっていうのに。)
何故急に陶謙が仕官要請をしてきたかは解らない。
一介の傭兵でしかない自分のことをどこで知ったのか。
小沛にいるだけの男が何故?
疑うとしたら陳登あたりなのだが・・・そんなことを疑ったところでキリが無い。
「なあ、高順。」
「はい?何でしょう?」
「その。我々もついて行っていいのか?」
「・・・はい?」
「その、私達までついて行くのはご迷惑ではないでしょうか?」
沙摩柯も蹋頓も少し不安そうな表情だった。
彼女達の立場はあくまで高順に保護された、というものでしかない。
彼が出て行く、というのならば自分たちが無理について行くのは・・・と、考えているのだろう。
異民族の自分たちを連れ歩くのは・・・という、彼女らの自虐も含まれているかもしれない。
「・・・怒りますよ?」
「え?」
「このまま皆さんを残したらそれこそ何をされるか解らないでしょう?嫌だと言っても首根っこひっつかまえて連れて行きます。」
馬鹿なことを言わないでくださいね、と締めくくった。
その言葉を聞いて3人娘は「さすが高順」とでも言いたげな笑顔を見せた。
「さて、そうなると食料と水・・・。いや、臧覇ちゃんと丘力居ちゃんは・・・。」
と、高順は独り言モードに突入した。
しばらく時間が経ったが、考えを纏めたのだろう。
真桜と沙和を見て「すまない、2人とも。ちょっと頼まれてくれるか?」
「ん?」
「2人には食料と水の買出し。あと馬車の車のほうだけ買ってきて欲しい。できれば大き目の奴を。」
「了解や、じゃあ・・・うちが車のほう行ってくるか?」
「じゃあ、私は食料?」
「いや、まず2人で車を買って欲しい。勿論2人とも馬に乗ってね。帰りがけに食料を買ってきてくれ。ただ、ある程度の余裕は持たせてくれ。」
こう言って高順は二人に資金を渡した。
「解った!ほな行ってくるで!」
「すぐに帰ってくるの!」
2人は厩に向かい、その後馬を駆って市へと向かっていった。
「沙摩柯さんと蹋頓さんは、この家の中の片付けを。必要最低限必要なものも揃えておいてください。人数分の毛布とか着替えを。」
「解りました!」
「ああ、臧覇と丘力居にも準備を手伝わせよう。」
「ええ、できるだけ早く。俺と凪は・・・馬の準備かな。俺は仕事場に行って皆に謝ってくるよ。」
「え?しかし、それは私が直に行ったほうが・・・。」
「何かあったらまずいだろ?余裕があったら沙摩柯さんと蹋頓さんを手伝っておいてくれ!」
「は、はい!」
返事を返す前に高順は凪と真桜が働いている現場へと向かっていった。

数時間後、全員自分に与えられた仕事をきっちりこなして集合していた。
「馬車は!」
「よし!」
「馬は!?」
「よし!」
「食料品その他!」
「よし!」
「高順兄さん!」
「いない!」
・・・・・・。


「何やっとんじゃ言いだしっぺはあああああっ!?」
そう、未だに高順は帰還していなかった。
馬車の用意も整い、臧覇も丘力居も既に乗り込んでいる。
「ああああ、もう。早よせんとどうなっても知らへんでぇー!?」
「落ち着け真桜。今騒いでもどうしようもないぞ。」
「・・・ねえ、あれ。高順さんじゃないの?」
沙和が指差した先には確かに高順がいた。走っている。そして、その後ろに・・・。
凪達が世話になっていた仕事場の人々も一緒になって走っていた。
「うぉ、あれ・・・仕事場の皆やんか?」
「親方も一緒だ・・・一体?」
「おおーい!待たせて済まなかったー!」
高順が手を振りながら走ってくる。
「遅いですよ、高順さん。」
「そうだぞ、言いだしっぺが一番遅いとは。」
「い、いや。すいません。蹋頓さん、沙摩柯さん。実は真桜と凪が世話になっていた仕事場の皆もお別れを、と言って・・・。」
そう言って見つめる先では、凪と真桜が揉みくちゃにされていた。
「ちょ、なっ!?何で皆ここにおるねん!?」
「お前らが急に出て行くって聞いたから皆集めてきたんだよっ!」
「こんにゃろぅ、短い付き合いだったけど楽しかったぞ!また来いよ!」
「な、お、親方まで!?」
「おう、凪!真桜!俺の教えてやった事忘れんじゃねーぞ!」
「わ、解ってます!・・・誰だ今胸触ったの!?」
「おい、これ持ってけ!餞別だチキショー!」
「誰やケツ触ったん!?胸の間に野菜挟むなー!嫌がらせかー!?」
「・・・賑やかですね。」
「賑やかだな。」
「賑やかなの。」
「あー、皆さん。このままじゃ収拾つかないんで、そろそろ。」
「お、おお。悪かったな、高順の旦那。あんたも、暇があったらここに寄ってくれよ。歓迎すっからよ。」
「ええ、すいません、何分急なことで。」
「いいってこった。あの嬢ちゃん達が来てから皆やる気になってたしなぁ。寂しくなるが、これで今生の別れって訳でもあるめぇ。」
「ええ。またいつの日か。」

「よし、出発だ!」
高順の声に皆「おう!」と叫び、下邳の出入り口を抜けていく。
たくさんの出会いがあった下邳。
親方達に見送られて、凪も真桜も少しだけ涙ぐんでいた。
僅か2ヶ月ほどの滞在だったが・・・多くのものを得られたと思う。
馬車を操るのは蹋頓と沙摩柯。
3人娘も馬に乗っているし高順も虹黒に乗っている。
「で、高順さん?次はどこへ向かわれるのです?」
「せや、うちもそれ聞きたかった!」
「そうだな、北へ向かおうと思ってる。」
「北・・・か。そうなると南皮か?」
「いや、どうせなら北平か薊あたりまで足を伸ばしたいな。」
「北平と薊・・・んー、太守って誰なの?」
沙和の問いに、高順は陽が沈みかけた空を見上げて応えた。


「公孫瓚。字を伯珪。」







~~~楽屋裏~~~
どうも、明日仕事だというのに1日で2話書いちゃったあいつです(挨拶

こんな感じで徐州編が終わりましたがいかがだったでしょうか?
戦闘が続いたのでこういった日常シーンを差し込むのはあれです。現実逃避です(何故
この徐州編はどちらかといえば「幕間」になりますかね。
次に向かうのは北平と薊、としていますがこの時代でのこーそんさんの居城は薊だったような気がしてすこしだけぼかしました。
同じ幽州なのですけどねw

蛇足ですが、沙摩柯さんと蹋頓さんに支給(?)された馬はハクニーとか思ってください。
またしてもこの時代とこの国にいない品種の馬ですけどw
WIKIで調べry

さて、幾人かが「こーそんさん云々」と言っていましたが・・・見事に当たりましたねw
実は誰かに言われたから、というわけではなく最初からこーそんさんの所へ行くのは流れとして決まっていました。
おそらくこのまま黄巾の乱が起こるだろう、と思います。
彼が上党に帰れるのはいつの日やらw

今ふと思うと・・・十数話書いてまだ黄巾おきてないんですね(遠い目
短い話でしたが本日はここまでです。それではまた!ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第16話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/07 19:39
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第16話

北海、平原、南皮を抜け、更に北へ。
高順一同は北平を目指し進んでいた。
北平に行く理由、というのは単純に高順が公孫瓚という人物に興味を抱いているからだ。
白馬義従と、その戦いぶりを見たい。その戦いぶりを何かに活かせるかも。と考えたからだった。
道中、蹋頓に公孫瓚はどんな人かを聞いたところ「勇猛さがありますが、性格は大人しく純朴です。」という返事が帰って来た。
それを聞いた沙和と真桜は不思議そうな表情をする。
「でも、北方の騎馬民族は漢民族と対立してたような?」
「せやなぁ。そこいらで差別されたからわざわざ徐州まで来たんちゃんの?それなのに純朴?」
「確かにあの辺りは我々烏丸と対立していますが、我々も単于・・・ああ、単于というのは漢で言うところの皇帝です。その単于が変わるたびに態度を変えていたんです。」
「態度を変えるというのは・・・対立したり、そうでなかったり。ということですか?」
凪の言葉に蹋頓は頷いた。
「漢の擁護を受けるべきだ、と主張する者もいれば、その逆もいます。私は擁護を受けるべき、と主張した側ですけどね。」
この言葉は高順にとって少し意外だった。
史実では蹋頓は袁紹に肩入れして公孫瓚を攻撃している。
公孫瓚も烏丸を憎んでいること甚だしい、という話のある人物だ。
その点も考慮して「行きたくないなら、言って欲しい」と言ってみたし、元来、北方騎馬民族である烏丸にいた蹋頓は立場上で言えばやはり、公孫瓚とは仇敵のはずである。
それを知っているので、最初から反対してくるかもな、と高順は考えていたが・・・そんな意見は飛んでこなかった。
「結局、権力争いで敗北してしまって丘力居と共に逃げる羽目になりましたけどね。その時点で北平にいるのは危険でしたから。」
「なるほど・・・。それで、公孫瓚は烏丸を差別したりとか?」
高順の言葉に蹋頓は「いいえ?」と首を振った。
「え?でも仇敵じゃないんですか?」
「降伏して兵士になった者も、そのまま帰化した者も数多くいますよ。一昔前は差別も酷かったみたいですけど・・・今は漢民族と家庭を作ったりという人も増えてきたようです。」
彼女の言葉にまたしても「意外だ」と高順は思う。
どうも、そのあたりの性格が史実とは違うみたいだ。
恐らく、公孫瓚よりも前の世代から異民族の受け入れは始まっていたのだろう。
その政策を引き継ぐ形になっただけなのかもしれない。
まあ、行ってみればわかるさ。それで蹋頓さんと沙摩柯さん、丘力居ちゃんが嫌な思いをするようであれば・・・すぐに出るとしよう。
臧覇ちゃんは異民族じゃないから大丈夫とは思うけどね。

~~~北平~~~
「ふーむ、そこそこ賑わいがあるね。」
街を見た高順の第一感想はこうだった。
洛陽や陳留、下邳といった大都市と比べるのが間違いとは思うが、それでもそこそこに栄えている印象を受けた。
そういえば上党もこんな感じだったな。皆元気にしているだろうか、と思う。
それよりも、目を引くのが刺青をした人の多さである。
その刺青をした人と仲睦まじく歩いている人もいれば、子供同士で遊んでいたり、という光景がちらほらと見られる。
どうも、ここは本当に異民族を受け入れつつある街であるようだ。
やはり、公孫瓚が異民族を執拗に殲滅しようとしていた、という史実と随分違うようだ。
蹋頓はともかく、沙摩柯は随分と興味深そうに周りを見ていたし、3人娘も初めて来た街のあちこちを見ていた。
高順も異民族と漢民族が同じ街で同じ人間として生活しているのを興味津々といった風で見ていた。
こうやって両者が寄り添っているこの街でも・・・差別全部がなくなることなどありはしないだろう。
それでも心を通じ合わせていく人々がいて、その子孫が新しい命を紡いでいく街なのだ。
高順は何か、感じ入るものがあった。
それと同時に公孫瓚という人に更に興味を抱く。
その後、街中をある程度見て廻ったが特に気になるようなことは無い。
沙摩柯にも蹋頓にも絡んでくるような者はいなかったし、市も奴隷売買をするような雰囲気ではない。
ただ、興味深いことがあった。
一度解散して街を散策したときに(沙摩柯と蹋頓、2人の子供組のことが心配だったのでついていった)蹋頓の知り合いがいたらしく、何かを貰っていた。
後で聞いたことだが烏丸にいた時、漢に同じように擁護を受けるべきという立場の人だったらしい。
高順は興味を引かれて「何を貰ったのです?」と聞いたが蹋頓は悪戯っぽく笑って「秘密です。後で教えますから」と言うのみだった。
そして、食堂で集合したときに蹋頓は何を貰ったのかを教えてくれた。
「これです。」
と言って差し出してきたのは何か白い液体の入った入れ物だった。
「これは何だ?」
という沙摩柯の質問に丘力居が「これはね、酪だよ!」と胸を張って教えてくれた。
「酪・・・?」と、丘力居と蹋頓以外はハテナ顔だった。
「一度飲んでみてください。」と蹋頓は杯にとくとくと注いでいく。
全員分回ってきたが、(高順は興味津々だったが)誰も口をつけようとしない。
蹋頓も丘力居も「美味しいー!」とか「久しぶりに飲みましたね・・・。」と満足している。
よし、と言って高順は一気に杯を煽った。
「うお、高順兄さん度胸あるな!?」
「ど・・・どうですか?」
「美味しい?それとも不味いの!?」
「・・・うまーい。」
「ええっ!?」
全員が「嘘!?」と言いたげな反応を見せる。

うん、これヨーグルトだ。
砂糖の入ってない感じだな、日本で食べるのと少し違うような感じだけど。
飲料で甘みが無いって言うのも初めてだなぁ、とか考えつつ残りも全部飲み干し「ごちそうさま。」と手を合わせた。
高順が美味しそうに飲み干したのを見て「ならば私も。」と凪が口をつけた。
それに吊られて全員が恐る恐る飲みだす。
「・・・美味しいとは思いませんが、飲めなくは無いですね。」
「うぇ、けほ、けほっ・・・にがぁ・・・。」
「ううっ、甘みが無いのぉ~・・・。」
「ふむ、悪くない味だな。」
「う~~、なんだか微妙な味だよぉ・・・」
全員別々の反応を見せたが高順たちを除けば半々で飲めるといったところか。
「ああ、素のままだと慣れてない人はつらいかもね。砂糖を少し入れるといいかも。」
高順は時に気にする風でもなく言った。
丘力居と蹋頓は高順があっさりと飲みきったことに驚いて「酪を知っていたのですか?」とか聞いてきた。
「名前は初めて聞きましたけど、この味なら幾度か口にしましたね。俺は好きですよ。もっとたくさん無いかなー。」
「本当ですか!?なら、材料を貰ってきますからまた一緒に飲みましょう!」
と、蹋頓は嬉しそうに言うのだった。
どうも自分たちの知る味を理解してもらえたのが嬉しかったらしく、丘力居も「さっすが高順おにいちゃん!」と喜んでいた。
そこへ、食堂の外から歓声が起こった。
何事だろう?と思った皆が耳を澄ましていると、「公孫瓚将軍万歳!」だの「さっすが白馬将軍だ!」など、そういう声ばかりだった。
外を見てみると、軍勢が行進しているのが見えた。
どうも賊か何かを討伐して帰還してきたらしい。
どういう人物かな?という興味で食堂の外へ出て軍勢を見てみる。
先頭を進む白馬に跨った・・・またも女だ。赤毛で、赤と白、そして黒を基調とした服に白い鎧を着込んだ少女が進んでいる。
その後ろを進む騎馬隊も皆一様に白馬に乗っている。
「へぇ、あれが噂の白馬義従か・・・。」
「へ?何やその白馬義従て?」
「その名前の通りさ、真桜。騎射とかできる優秀な人を集めて白馬に乗せてるの。強いらしいよ?」
「へぇー。虹黒とやりあったらどっちが強いやろ?」
真桜の言葉に沙摩柯が笑う。
「比べようが無いだろう?乗ってる人間の良し悪しにも関わると思うがな。まぁ・・・虹黒のほうが圧倒的に有利だな。」
「せやろなぁ。」
なはは、と笑う真桜を尻目に、高順はずっと公孫瓚の軍勢を見ていた。
軍事には相当の心得があるらしく、数は少ないながらもバランスの取れた軍容であった。
騎馬が多いのが特徴だが歩兵もいるし、弓兵もきっちりいる。
白馬義従も騎射ができる者ばかりだから弓の攻撃力が劣っているわけでもない。
なるほどな。できれば戦いぶりも見てみたいものだな。
そう思った瞬間。
高順は、行進する軍の中に上党で出会ったあの少女の姿を見つけた。
白い服に青い髪、龍牙というあの槍。
間 違 い な い。
(あ、あるぇー!?何で星さんここにいんの!?もっと後じゃないのか?黄巾前からここにいるなんてどういうこと!?)
うん、やばい。絶対不味い。
何が不味いって・・・。
こんな沢山女性に囲まれてる現状を見られたら凄まじい弄りが発生すること間違いなし。
4ヶ月ほど前での母と彼女の結託ぶりはそれはもう凄かった。
そのせいで自室が鼻血の海と化すわ謂れのない暴力を振るわれて俺が一方的に涙目にされたりとか。
それでいてこっちをからかってるのか本気なのか解らない態度で真名教えてくれたり。
なんというか星さんは俺にとって台風の目です。
今のうちに隠れよう、うん、それしかない。
そう考えて、こそこそと食堂の中へ避難しようとした高順であったが、その瞬間。
こつん。
と小石を頭に当てられた。
ま、まさか・・・と後ろを振りむく。
行軍している軍勢の中にいる星が満面の笑みでこちらを見ていた。



気 づ か れ た ! ?


星は唇だけを動かす。
曰く「しばらくそこで待っていてくれ。」
そのまま食堂の前を通り過ぎていく星。
普段の表情に戻り、正面を向いて行進していく星だったが・・・。
また1度だけ振り向いて人差し指を左右に「ちっち。」と言わんばかりに動かした。
彼女の言いたいことは高順にも解っている。
恐らくこう言いたかったのだろう。
「甘いですな。」と。
行進している軍の最後尾が通り過ぎた後も、高順はそのまま呆然と立ち尽くしていた。
心なしか真っ白になって。
「いやぁ、すごかったなぁ。・・・どしたん、高順兄さん?」
「なんか、真っ白になってるの・・・。」
終わった・・・絶対に終わった・・・|||orz←高順の心の声

意外と言えばあまりに意外な再開。
どうしてこうもおかしな運命の下に生まれたのだろうか、と叫びたくなる高順だった。

それから半刻ほど経った食堂。
「あの、高順さん?どうしてずっと食堂にいる必要が?」
「高順殿?そろそろ出ませんか?」
蹋頓と凪が遠慮がちに声をかけてきた。
高順は何故か椅子の上に正座して座っていた。
「いや、ここに居たい訳ではないのですが居ないといけない理由があるんです。」
「・・・?」
どういう意味かがよくわからない。
他の皆も食事を終えているし、いつまでも残っているのは不自然なのだが・・・。
そこに、1人の少女が「邪魔をする。」と言って入ってきた。
辺りを見回して、「おお、居ましたな。感心感心。」とか言って高順の元へと歩いて行く。
びくっ、と高順は肩を振るわせた。
「?」
皆、高順に近づいていく少女を不思議そうな表情で見ている。
少女は高順の横まで来て「お久しぶりですな、高順殿。お元気でしたか?」
にこやかに言う。
その一部始終を見ていた周りの人々は「だ、誰だ?」と騒然とする。
「しかも、このような綺麗どころ・・・いや、一部幼い子も混じっておりますが。高順殿も隅に置けないですな?」
「星殿・・・その事でからかうのは勘弁してくださいよ・・・。ま、それはともかく。お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」
星は右手、いや、拳を突き出す。
高順も拳を突き出し、「がっ」と拳同士を叩き合わせ笑った。
彼らなりの挨拶なのだ。何だかんだと言いつつも、やはり仲が良い。
「あ、あの~・・・。」
そこへ沙和が入り込んでくる。
「こちらの人・・・誰なの?」
皆もうんうん、と頷いている。
「おお、これは申し送れました。私は趙雲、字を子竜と申します。」
ここまでは尋常な挨拶である。
だが、ここからが彼女の本領発揮であった。
「高順殿の妻一号です
「ぶふぅーーーーーっ!!?」
『!!?』
「ちなみに、2号と3号も居ます。
「がふぁっっ!?(吐血」
この言葉に周囲は色めきたつ。
「ほ、ほんまかっ!高順兄さん!?」
「だとしたらとんでもないスケコマシなの!」
「うわ~・・・高順おにいちゃん、大人しそうに見えて・・・。」
「ねえ、沙摩柯お姉ちゃん。スケコマシって何?」
「・・・。まだ、お前が知るには早い言葉だな。」
「?」
ところで、この状況に無言だった者がいる。
凪と蹋頓だ。
拳を握り締めワナワナと震えている。
背中に「ドドドドドドド・・・・・・」とか「オオオオオオオオオ・・・」とか、そんな擬音が出そうなくらいの雰囲気だ。
「あ、あの・・・お二人とも?どうなさいました?」
高順の言葉に2人は殺意の篭った何かを漂わせてにっこりと笑った。


~~~同日同刻・陳留のとある食堂~~~
『えくしゅっ。』
二人の少女が同時にくしゃみをした。
眼鏡をかけた少女と、金髪の背の低い少女。
稟と風である。、
「「ふぅう・・・珍しいですね、寒いわけでもないのにくしゃみなんて。」
「おー。誰かが噂を・・・ぐぅ。」
「寝ないで早く食べなさい。」
「おおっ!?噂をしたのが高順おにいさんかと思うとつい眠気が。」
「え、高順殿・・・ぷぱはぁっ!」
高順と一緒の布団で眠った(とは言え、悪戯なのだが)稟にとっては、その言葉は危険なものだった。
何せ色々と妄想をしてしまうのだ。
「ああ・・・高順殿の逞しい(中略)私の誰にも(中略)そんな(中略)ああ・・・ぶぱぁっっ!?」
「おお。今日はいつもより多めに出ております。2割り増しぐらいで。・・・ほら、とんとん。」
いつも通りのとんとんをしつつ、風は考えていた。
(星ちゃんと高順おにいさん、元気でいてくれるといいのですけどねー。)
いや。案外今頃はどこかで再会でもしているのかもしれない。
この国の、どこかで。


~~~北平に戻る~~~
星の自己紹介を受けて、高順側の人々も自己紹介を済ませていた。
ただ、高順は星の虚報により混乱した凪と蹋頓に(何故か)しばかれた。
その時の状況は・・・。
「とりあえず、詳しいお話をお聞かせください。明確に言えば格闘戦で。」
「私もお聞きしたいですね。主に馬上戦闘で。」
「なんでそんな力ずくな展開に!?」
という感じだ。
実際に戦闘をしたわけではないが何と言うか・・・一方的に叩かれたり殴られたりどつかれたり、だった。
「ううっ・・・なんで俺ばっかりこんな目に・・・。」
「まったく、酷いことをなさる人々ですな。」
『あなたのせいでしょう!』
凪と蹋頓の声が重なった。
「で?結局のところ、高順とはどういう間柄なのだ?」
沙摩柯は特に気にするでもなく高順に質問する。
「ああ・・・。昔、というほどじゃないですね。俺が上党にいたときに、縁があって一緒に戦ったんです。妻は嘘ですよ?」
「ああ、あの戦いは大変でしたな。」
星もどこか懐かしそうに言う。
「それは良いとして・・・。高順殿は何故このような大所帯で北平に?」
「ん、公孫瓚って人に興味があってね。白馬義従のこともあるけどさ。」
「ほう?」
「ま、烏丸とも一応仲良くやってるみたいだしね。兵士だと家族を殺された恨みとかあるかもしれないけど。」
「・・・。」
高順の言葉に星が複雑そうな顔をする。
「どうしました、星殿。」
「実は、そうでもないのです。」
「・・・何故です?」
「街の中は平和です。しかし今現在、公孫瓚殿は烏丸と抗争を繰り返しています。」
「・・・。」
星の言葉を聞いた蹋頓は目を伏せた。理由を知っているのだろう。
「先ほどの凱旋をご覧になっておられたでしょう?あれも烏丸との戦いに勝利したからですな。」
「そんなに数が多いのか・・・。」
「ええ、この頃幾度も出陣しましたが・・・なかなか思うように行きませぬな。」
「・・・星殿、俺も1つ聞きたいのだけど。」
「む、何ですかな?」
「何で星殿は公孫瓚に仕えたんです?俺はてっきり曹操あたりに仕えたものだと。」
「曹操・・・?ああ、あの御仁の名を出すとは。高順殿はお目が高いですな。」
「そういうものですかねぇ。」
「確かに、あの御仁はたいしたお人ですな。しかし、何と言いますか・・・百合百合しいのですよ。」
星の言葉に3人娘がぎょっとする。
「百合・・・もしかして我々が誘われたのって・・・。」
「うわぁ・・・受けなくて良かったの。」
「そ、そーいう趣味があったんかいな、あのお人は・・・。」
「ほう、あなた方も誘われておりましたか。ふふ、ああいった雰囲気も悪くはありませぬが。どうも、あそこは排他的でしてな。それに。」
「それに?」
「私の活躍する場が見出せませぬ。あまりに完璧すぎる。仕える甲斐がないのですよ。」
あのお方は私の性に合いませぬ、と星は肩をすくめた。
「その点で言えば公孫瓚殿は仕え易いですからな。決して凡庸ではないのですが、どうも、こう放っておけないと言うか。それと、正式に仕えてる訳ではありませぬ。客将という立場ですよ。」
「客将ね・・・。」
高順は何か悩むような素振りを見せる。
彼には現状で2つの思惑があった。
1つは前から考えていたが白馬義従、あるいは烏丸族の戦いぶりを自分の目で見たい、という欲求だった。
蹋頓の戦い方を見て、ある程度は烏丸の戦術を理解した。
それを集団戦で、というのを見たいものだ。
あともう1つは、皆のために少し腰を落ち着けたい、という事だ。
徐州滞在があまりに短くなってしまって3人娘にとっては良い迷惑だったはずだ。
にも関わらず文句1つ言わず着いて来てくれている。
だが、そろそろ疲れも見え始めているのが解っていた。
丘力居も臧覇も何も言わないが相当に参っている。
1年とは言わなくてもそれに近いくらいは落ち着きたいものだ。
そして、星も星で彼らの品定めをしていた。
高順が何故旅をしているかは知らないが、道楽のためという訳ではないだろう。
凪を筆頭とした3人娘もだが、蹋頓と沙摩柯という全く別の異民族が一緒に居るところも興味深い。
それに、(子供2人は別としても)皆相当に腕に自身がありそうだ。
高順とてこの4ヶ月ほど、ただ無駄に過ごしていた訳ではあるまい。
公孫瓚にも興味を抱いているとの事なので、丁度良いのかも知れない。
公孫瓚はそれなりに強いし自分もいる。が、まだ戦力としては物足りない。
その上脅威なのは烏丸だけではない。黄巾のこともある。
彼らのように腕に自身がある人材を確保しておきたい。
ならば。
「高順殿?」
「はえっ!?な、何です?」
「もしそちらが宜しければ・・・公孫瓚殿に会ってみませぬか?」
「・・・何ですって?」
「ですから、公孫瓚殿にお会いしてみるつもりはありませんかな?」
星の言葉に高順は不信感を覚えた。
確かに、公孫瓚の白馬義従に興味もあるし、腰を落ち着けたいというのもある。
しかし、いきなり面会してみる?とは。
彼女は客将の立場ではあると言っていたが、そこまでの権限を持っているのだろうか?
「うーむ。・・・皆はどう思う?」
高順は凪達の顔を見回して聞いてみた。
「会うだけならば構わないのでは?」
こう主張したのは3人娘。
「会うな、とは言わないが慎重になったほうがいいのではないか?」
と主張するのは沙摩柯。
「私はどちらでも」というのは蹋頓。
多数決で決める訳ではないが「行かないほうが良い」と言うのは誰1人居ない。
多少、きな臭いものを感じないではないが・・・星のことだ。高順に嫌がらせをしても回りを巻き込むような嫌がらせはすまい。
「・・・じゃあ、会わせて頂きましょうかね。」
「そうこなくては。では、早速行くとしましょう。」
星は随分嬉しそうな表情で言うのだった。




~~~楽屋裏~~~
どうも、史実の公孫瓚の性格を捻じ曲げましたあいつです。
この作品は基本は恋姫で残りは全てあいつの妄想でできています(いまさら
公孫瓚と烏丸の関係については色々とあるでしょうが見逃してください。土下座いたしますから(ぇ

さて、作中に出てきた「酪」。
これは色々な解釈があるのですね。
説によっては「チーズ」とか「バター」とか「ヨーグルト」だったり。
この作品ではヨーグルト説をとらせていただきました。
実際どのような味だったのでしょうね?

ていいく&かくかは・・・この時点では住んでいる場所解りませんね。
曹操に仕官したとは思うのですが、鄄城に行くのははもう少し後だと思ったので陳留にしてみました。

今回は名前だけでしたが次あたりに公孫瓚が出てきますね、原作のように影が薄く出来るかどうか(ぇ、そこ?
それではまた。ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第17話(何か少し修正
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/11 16:42
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第17話


北平政庁にて。
星の差し金(?)によって、高順たちは公孫瓚と面会を果たすことになった。
その前に、政庁までの道のりで虹黒を見た星は「まさか、これほど立派な馬がいようとは。」と随分驚いていた。
烏丸と幾度も戦ったことはあったが、こんなに立派な体格をもった馬は少し見たことが無い、という。
やはり虹黒は特別な存在だろうか?と少し不安になる高順だった。(強さ的な意味もかねて。
それと、丘力居達は馬車の中で待機している。


陳留ほどではないがしっかりとした作りの部屋に公孫瓚が居て、その周りに兵士や・・・おそらく、将軍がいる。
高順らは公孫瓚の目の前で皆跪いていた。
「伯珪殿、客人をお連れしました。」
「ああ、さっき聞いたよ。・・・ようこそ北平へ。私が公孫瓚。字は伯珪だ。よろしくな!」
随分とにこやかな人というか・・・素直そうなお人だ。
これが高順の公孫瓚への第一印象だった。
素直と言うか、嘘をつけないというのか。
いつか凄まじい貧乏くじを引きそうな、そんな感じだ。
「ああ、それとな。そんなに畏まらなくてもいいんだけど?そうやって跪かれることには慣れてなくてさ。」
公孫瓚は少し照れくさそうに言った。
「そうですな、伯珪殿にはそういう礼は不要でしたな。」
「いや、最低限は必要だと思うぞ!?」
そんなやり取りを聞いて高順は何か安堵するものがあった。
やはり、人を差別するとかそういう手合いには見えない。
ずっと跪いてる高順たちに公孫瓚は少し困ったような表情をした。
「あのー。ずっとそうされてるのはすっごく辛いんだけど・・・そろそろ立ってもらえないかな?」
「・・・は。これは失礼を。」
彼女らのやり取りが少し楽しかったせいですっかり忘れていた。
促される形で立ち上がる。
「で、お前は・・・高順、だったよな。星から何度か聞いてる。面白い人だ、ってね。」
「・・・はあ。」
何を吹き込んだのやら。
星に抗議の視線を送る高順だったが、当の本人は何処吹く風、とまったく気にしていない。
「それで、後ろの人々は聞かされていないけど・・・ん?」
高順の後ろに居る3人娘や沙摩柯を見回していた公孫瓚だったが、蹋頓を見た瞬間反応が変わった。
「お、お前・・・。蹋頓!蹋頓じゃないか!?」
呼ばれた蹋頓はふぅ、とため息をついて「お久しぶりです。」と答えた。
公孫瓚は蹋頓に走りよる。
「あはははは、久しぶりじゃないか!?元気にしてたか?丘力居ちゃんは?」
「ふふ、お蔭様で。何の因果か主君を得ました。あの子も元気にしていますよ。」
「そうか、それは良かった。・・・まさか、こんな形で合えるなんて思わなかったよ。」
盛り上がる彼女らを見て星は特に遠慮をせず質問をする。
「伯珪殿?もしかしてお知り合いですか?」
「え?あ、ああ。すまない。うん、友人だ。」
「数年前に知遇を得まして。おかしな人ですよ。異民族の私にも偏見を持たずに接するなんて。」
「そういうものかな。でも、高順もそうなんだろ?」
「はい。そうですね。」
蹋頓はゆっくりと頷く。
「私は蹋頓を差別しない。高順も、多分その仲間も蹋頓を差別しない。それで良いだろ?」
「ええ。・・・ふふ、あなたと言い高順殿と言い。おかしな方々ばかりですね。」
公孫瓚の言葉にゆったりとした笑顔を浮かべる蹋頓だった。
「さて、と。本題に入ろうか。星からの提案でね、お前達を客将として雇わないか?と言われたんだ。」
高順は「やはりな。」と考えた。
戦力を求める公孫瓚と、少し落ち着きたい高順。
お互いの利害が一致しているのは解っていたし・・・どうも、公孫瓚の陣営と言うのはどうもパッとしない武将が多い。
決して無能ばかりではないのだが公孫瓚と趙雲のおかげでなんとか保ってる、というイメージがある。
烏丸は白馬義従を恐れている節があるからそれだけで戦いを有利に進められるのかもしれないが、それでもまだ不安はある。
烏丸に限らないが異民族は数が多い。何度叩いてもしばらくすればまた勢力を伸ばし始める。
公孫瓚としても、烏丸の強硬派を殲滅とまでは言わなくても立ち直れないほどの打撃は与えておきたいのだろう。
「それでな、星は随分とお前の事を高く買っているし、蹋頓の実力は私も知っている。他の4人は実際に見て見ないと解らないけど・・・。どうかな?」
「ええ、それではよろしくお願いします。」
あっさりと頭を下げる高順に公孫瓚は「え、えらく判断が早いな・・・。」と言った。
「こちらとしてもしばらく腰を落ち着けようと思っていましたしね。合間に星殿に稽古を付けていただきたいとか、いろいろ。」
「なるほどなぁ。ははは、じゃあ頼りにさせてもらうよ。」
公孫瓚がこう言ったところでその後ろに控えていた武将がずかずかと進んできた。
「ん・・・なんだ、範に越。それに王門。どうかしたか?」
「姉上、我々は反対です!」
越、と呼ばれた男性武将が声を荒げる。
皆、鎧兜に身を包んでいるので容姿はわかりにくいが・・・皆機嫌が悪いのが見て取れる。
おそらく高順達を受け入れた公孫瓚の判断が気に入らないのだろう。
「さよう、私も反対ですぞ、姉上!」
「そんな氏素性も知れない者を受け入れるとは・・・一体何をお考えなのですか!」
範と呼ばれた男と王門と呼ばれた男も吼える。
「なんだ、お前達・・・。何に不服があるんだ?」
「不服?大有りです!」
公孫越が腰に吊るしている剣の柄に手をかける。
「高順とやらはまだしも・・・異民族を客将?ふざけるのも大概にしてください。」
「やめないか、越。彼らは私の客人だぞ?私に恥をかかせるつもりか!?」
「そうではありませぬ!異民族に一端の位を与えるのが気に入らないのです!」
その声に公孫範も王門も同調する。
「越の言うとおりです。その上、蹋頓ですと・・・?烏丸の先代単于でしょう!」
「一平卒としてならばまだしも、客将ですと?馬鹿馬鹿しい、そのような前例はありませぬわ!」
彼らの意見に公孫瓚も少しカチンと来たようだ。
せっかく戦力として迎え入れると言ったのに、それを部下から真っ向に否定されてしまっては自分の、そして彼らを推挙してくれた星の立場が無い。
こんな言われ方をされれば高順たちとて面白くは無いだろう。
案の定。
「おいおいおい、兄さんら偉い言いようやなぁ?」
「沙和も頭にくるの!」
「仲間を侮辱されて、黙っているつもりは無いぞ・・・!」
3人娘が殺気を発する。
その只ならぬ気配に公孫越らは後ずさる。
が、ここまで言ってしまった手前退く事も出来ないと思ったか。
「ふ、ふん。お前らのような小娘に凄まれても怖くもなんとも無いな!」
と、虚勢を張った。
この言葉にいち早く反発したのが凪である。
「ほう・・・?ならば、試してみるか?お前達の言う小娘風情の力を見せてやるぞ。」
どうも、本気で怒っているらしい。
本来ならば真桜と沙和を止める役割の凪がここまで激昂するのだ。
蹋頓や沙摩柯をけなされたことに怒りを覚えたようだ。
「待て、凪。お前がそんなことでどうする?」
「そうですよ。怒っていただけるのは嬉しいですがそれも時と場合によりますから。」
蹋頓と沙摩柯が後ろから凪を抱きかかえて止めようとする。
「お前たちも。・・・気持ちは有難く受け取っておくよ。だから怒るな。私も蹋頓もこんな扱いには慣れている。」
「・・・っ。し、しかし・・・!」
凪は悔しさで唇を血がにじむほどに噛みしめていた。
「お前達、いい加減にしろ!」
公孫瓚も自分の部下達の行いに腹を立て、叱責をしている。
どうやら、彼女の軍も一枚岩ではないらしい。
これでもまだ他の都市よりはましなのだが。
「これは客人に対しての無礼にあたる。下がれ。」
「ですが姉上!」
「下がれと言ったぞ?」
「く・・・。」
公孫瓚にここまで言われれば反論することも出来ず、3人は部屋を出て行った。
それを見届けて公孫瓚はこめかみを押さえて唸る。
「ったく、あいつらは・・・。悪かったな、嫌な思いをさせて。烏丸との戦いが続いて気が立ってるんだ。許してやってくれ。」
「そんなに戦が続いているのですか?」
「ああ。もうこれで何度目になるやら。それに劉虞殿や張挙のこともある。頭が痛いよ。」
高順の質問に公孫瓚は俯きながら言った。
「劉虞や張挙・・・?その方々が何か?」
「ああ。劉虞殿は幽州の牧でな。烏丸を懐柔しようとしているんだ。人望のあるお方だから、彼になびく烏丸も多い。」
「しかし、それになびかぬ者がいる。強硬派、とでも言うのでしょうな。それらを討伐するために我々が出向くのですが・・・。」
公孫瓚に続いた星だが、少し表情が暗くなる。
「そんな我々のことが気に入らぬようなのです。「こちらが丸く収めようとしているのだから邪魔をするな」と。しかし、烏丸の強硬派は収めようなどと思ってはおりませぬ。」
これだから戦を知らぬ方は、と星は肩をすくめた。
「劉虞殿は強硬派にも金品を送って恭順を促しているんだ。奴らはその金品を利用して軍備を増強する。これでは・・・。」
「ふむ・・・だから公孫瓚殿は躍起になって烏丸の強硬派を倒そうとしているのですね?」
「ああ、それもある。そこにさっき言った張挙という男が絡んでくるんだけど。・・・これは後回しでいいんだ。まず倒さなければいけないのが・・・。」
「楼班。現在の烏丸の・・いえ、「強硬派」の首魁ですね?」
「へ?知ってるのか、蹋頓!?」
途中で口を挟んできた蹋頓に公孫瓚は驚きの声を上げる。
高順達も驚いたがよく考えてみたら蹋頓は烏丸の先代単于だ。面識があったということだろう。
「ええ。知っていますよ。何せ私の元夫ですから。」





『なにいぃぃぃぃぃぃぃっっ!!?』
一呼吸おいてから高順たちは叫び声を上げた。
「元夫って・・・蹋頓殿、結婚なさってたのですか!?」
「ええ。恥ずかしながら。」
「うわぁ。ただれた関係なの?」
「違います。」
「結婚暦何年なん!?」
「1年以下です。」
「失礼ですが蹋頓さん、年齢はお幾つですか?」
「・・・高順さんだから言いますが、23です。」
「若いっ!?」
「うふふ。」
高順らの質問に律儀に答える蹋頓。
公孫瓚や星らもさすがに驚いており、「まさか結婚してたとは・・・。」とか「しかし、楼班が夫とは。」とか言っている。
「蹋頓、夫かどうかはともかく・・・成り行きを教えてもらいたいな。何故その男と結婚をしたか。何故追い出されたのか。」
沙摩柯の言葉に蹋頓は頷いた。
「ええ、そのつもりですよ。ではお話します。」
蹋頓の話を要約するとこうだ。
蹋頓は元々、単于ではない。
単于だったのは蹋頓の兄で、それが前触れも無く急に病死をした為に急遽、仮に立場を継ぐことになったという。
全く乗り気になれないような事だが、回りの者たちが随分と熱心にかき口説いたらしい。
そこで彼女は1つの条件を出した。
「兄には幼い子供がいる。次代の単于は当然その子がなるべきだが幼いゆえに何も出来ない。だから、私は一時的に継ぐことにする。兄の子が立派に成長したときに、私は単于をその子に正式に継承する。」
周りの人々はその案に1も2もなく同意。こうして蹋頓は一時的に代理として単于を名乗ることになる。
その子の名は丘力居。彼女が保護していた少女だ。
それが7・8年ほど前の話で、そこから半年もせず婚儀が決まる。
烏丸の有力者の一人で、名は楼班。その時既に齢40を超えていたとされる。
彼の一族は別段有力者の家系というわけではなく、何度も結婚をし、離婚をし、というのを有力者の間で繰り返して家格を上げていたらしい。
本来ならそのような男と結婚をするのはありえないことなのだが、その頃はどういうわけか有力者の「急な病死」が流行っていた。
その為、何かあっては不味いという周りの思惑や、その頃に出来上がりつつあった楼班派閥の働きかけなどがあったのだろう。
単于である蹋頓にはそういった流れは知らせていなかった。
知った頃には用意が整ってしまっていたし、周りの(と言ってもごり押しだが)要望があって断るに断れない状況を作り出されていたのだった。
が、蹋頓はこの男が怪しいと思っていたし、他の者もそう考えていたが証拠が無い。
自身の兄から始まり、単于に近い男性が次々と亡くなっていく。その結果、今まで名前を聞いたことも無い男・・・楼班が台頭することになったのだから。
半ば無理やり結婚をさせられたが、夫婦としての営みは何も無かった。
向こうが求めて来ても拒んでいたからだ。何より楼班は部族の女性を何十と抱えていたし、愛情があるわけでもない。
その後1ヶ月もせず楼班は後漢に対して戦争を仕掛けるべきだ、と主張し始めた。
自分は後漢に臣従して部族の安泰を図ろうとしていたがそれとは真逆の方針である。
穏健派である自分と強硬派の楼班との対立が始まり、それは日に日に深刻な形になっていった。
しかし、自分の方針に好意的だった部族の有力者はほとんどが「病死」しており、その代わりに楼班に媚び諂う者たちが「有力者」となっている。
なんとか劣勢である状況を打破しようと有力者の子弟達と話をしてみたが・・・それらは幼かったり、有力な発言権利を持てない人々ばかりで、今すぐ戦力という形にならなかった。
そして・・・楼班が暗殺者を仕向けてきた。
目的は自身と、丘力居の抹殺なのが目に見えている。
暗殺者を蹴散らし、赤子の丘力居を連れて、追いすがる楼班側の兵士を振り切って。
なんとか北平へ逃げたところで公孫瓚と出会い、更に徐州へ。
そして今に至る、ということだ。

「・・・随分とまぁ。散々な目にあった、としか言いようが無いですね。」
高順は同情と言うか、心配をしてしまった。
よく耐えてこられたものだ、と。
彼女はその齢ですでに己の信念を持って行動していたのだろう。
自身の責任の重さと向かい合って必死に生きてきたのだ。
それに比べて、自分は・・・死亡フラグ云々と。本当に情けなく思えてしまう。
「そうですね。ただ、私には丘力居がいましたから。兄の無念も晴らさねばなりません。なんとかして生き延びなくては、と思えば勝手に身体が動くものですよ。」
「そうか・・・全く、そんな理由があるならもっと早く話してくれれば良いのに。何か手助けできたかもしれないじゃないか。」
公孫瓚が口を尖らせて文句を言う。
本当に蹋頓を友人と考えているからなのか、根っこからお人よしなのか。
恐らくはその両方だろう。
「ふふ、ありがとうございます。私の事情はこれで終わりです。次は先ほど話に出てきました張挙、とやらの事をお教え願えますか?」
「ああ。張挙と張純だな。簡単に言えば楼班と結んだ反乱軍さ。しかも、張挙は天子を、張純は大将軍を名乗っている。」
「皇帝を僭称?・・・どういう人々なんだ、それ。」
「中山国の相だとか、泰山の太守だとか聞いたがそれはどうでもいいな。奴らは楼班と結んで数万の軍勢と率いて薊を攻撃してきたのさ。それ以外にも遼東を攻めたりな。なんとか追い返せたものの、大勢の人が犠牲になった・・・。」
「なるほど。まず楼班を倒し、烏丸の援護を失くした状態で張挙らを討つ、ですね。」
高順の言葉に公孫瓚は頷いた。
「そういうことだ。天子を名乗るような奴らに遠慮なんか必要ない。問題は奴らにも金品を贈る劉虞殿なんだがな。討伐してしまえば文句は言うだろうけど、そこで終わるさ。あ、そうだ。1つ高順に聞きたいことがあるんだ。」
「はい、何でしょうか?」
「お前、部隊を指揮したことがあるか?」
「無いです。」
あっさりと断言する高順だった。
ある、と言ってしまえばなんか面倒なことをやらされそうだと感じたからだ。
「そうか・・・なら、お前の仲間と共に小部隊で戦ってもらおうかな。」
「伯珪殿。しばしお待ちを。高順殿は嘘をついております。」
「げっ!?」
「・・・へー。嘘か。」
「上党で100人ほどの部隊を率いておられましたな。なぜそのような嘘をつくのやら?」
「へー。100人も率いたのか。」
(しまったぁぁああ!星殿いるのすっかり忘れてた!どうする俺、どうやって言い逃げするよ!?)
星の言葉を聞いた公孫瓚は意地の悪い笑顔で高順を見る。
そこへ、3人娘も追い討ちをかけてきた。
「あれ?高順兄さん、曹操はんのところでも部隊率いてたやん?」
「そうなの、そこに沙和たちを編入したのも高順さんなの!」
「確か・・・500人ほど率いておられませんでしたか?」
「ほほう、曹操殿のところで仕官でもなさっておられたのですか?しかし、500人とは・・・ふふふ。」
「へー、500人か。すごいなー。」
星と公孫瓚はにやにやと笑っている。
「ちょ、おい!?3人とも何言ってるの!あれはあの時一回だけ・・・あっ。」
「認 め た な、高順?」
「認めましたな。」
「認めたなぁ。」
「認めたの。」
「認めましたね。」
「ほう、高順は部隊長も経験していたのか、やるな。」
「さすが高順さんですね。」
皆が一様にそんなことを言い出した。
「星殿、謀ったな!?」
「謀ったとは人聞きの悪い。自分から率いたと仰ったではありませぬか。」
「そうだな、それに嘘をついたのが悪いぞ?」
「ううう・・・。」
流石に言い逃れが出来る状況ではないようだ。
諦めた高順はがっくりと肩を落とした。
「はい、1度ずつですが100人と500人の騎兵を率いました・・・。」
「素直で宜しい、なんてな?あはは。」
快活に笑う公孫瓚だったが、高順としては笑い事ではない。
どう考えても兵士を押し付ける気満々だ。
何と言いますか。どうしてこう行く先々で兵士押し付けられますかね?皆おかしいですよ、行きずりの浮浪者に兵士率いさせようだなんて・・・。
「それで、俺に何をさせようというのでしょうか公孫瓚様?」
「なんだよぅ、嫌味だなー。そう難しいことさせないから心配しないでくれ。ちょっと騎兵200率いてもらうだけだから。」
「・・・滅茶苦茶難しい気がしますが、理由を聞きましょうか?」
「簡単だ、兵士を率いる武将がいない。」
「・・・。公孫範殿、公孫越殿、王門殿。それ以外にも単経殿・関靖殿・厳網殿・田楷殿辺りがいらっしゃいますよね?それでも不足なんですか?」
「な、なんだ?随分詳しいじゃないか?」
「ええ、それはもう。北平に来るまでにある程度調べてましたから。」
「調べたって・・・まあいいや。けど、実際に武将は不足してるんだよ。星にも騎兵500を率いてもらってる。小規模部隊の隊長が不足しているんだ。」
「星殿、凄いですね。じゃなくて。では先ほど上げた武将は一体どれだけの兵数を・・・。」
「そうだなぁ、1人に着き1000とかだな。ただ、全員1000の兵を纏める能力があっても100とか200の少数の兵を纏める才能が無いんだ。で、その少数の兵を纏める人材が少ないんだよ・・・。」
「はぁ。そこで俺に任せたいと?」
「うん。できれば他の者にも任せたいところだけど。皆高順の部下として働きたいんだろうし、兵を率いた経験も無いよな?」
公孫瓚の言葉に3人娘は頷く。
「せやなぁ。いきなり兵士率いろ。言われてもなぁ。」
「自信が無いの・・・。」
「我々にはまだ早いかと。できれば高順殿の下で働いて、それを参考にしたいと思っています。」
「うん、そうだな。蹋頓と沙摩柯は・・・すまないな。越や範の言うことじゃないが・・・2人を隊長にすると、どうしても反発する奴らがいるんだ。本当にすまない。」
「解っているさ。ただ、蹋頓には烏丸兵を率いさせてもいいんじゃないか?」
「それはおいおい考えるよ。言い方は悪いけど楼班に対しての武器になるだろうからな。本人は嫌かもしれないけど・・・。」
公孫瓚は蹋頓の顔色を伺うように言う。
「解っております。高順さんがやると言った以上、我々も仕事をしなくてはいけないでしょう?それに・・・これは良い機会です。そろそろ盗られた物を取り返すつもりです。」
「はは、頼もしい言葉だね。さて、今日はここまでにしようか。部隊の編成は後日打ち合わせをしよう。星、悪いのだけど彼らに空いている部屋を宛がってくれるかな?これからまだやることがあるんだ。」
「承知しました。では、ご案内致しましょうか。皆様方、ついて来て下され。」
星は公孫瓚に拱手し、高順達もそれに習い、星に続いて退室していく。

「はぁ~~~・・・結局こうなったかぁ・・・。」
廊下を歩く星についていく高順達。
高順は一人ため息をついた。
「宜しいではありませんか?期待されている証拠ですぞ?」
「期待は良いけどさ。なんで一兵士に皆部隊を任せようとするのかねぇ。なんか過大評価されてるよ、うん。」
その言葉に、そのようなことは無いでしょう、と星は呟く。
「えー・・・と、趙雲殿?」
「ん、何ですかな?」
凪の呼びかけに星は振り返る。
「我々に与えられる部屋、というのは・・・個室でしょうか、相部屋でしょうか?」
「・・・ああ、なるほど。1人野生の獣がいるから不安だと言いたいのですな?」
「獣とか言われた!?」
「おや、誰も高順殿とは言っておりませぬぞ?」
「ぬぐぐぐ・・・。」
「い、いえ、そうではないのですが・・・。相部屋だと相当大きな部屋でないと全員入りきれないものですから。荷物などもありますし。」
「ふむ、それもそうですな。では、今日は2部屋お使いください。・・・ここです。」
案内された2部屋は共に割りと大きく、4人程度なら十分住めるような部屋だった。
「寝台程度ならありますが・・・他の家具は今のところ我慢してください。それでは、私はここで。」
そう言って星は去っていった。
「・・・ふむ、今日からここが俺達の部屋、ね・・・。あ!?」
「な、何!?」
叫び声を上げた高順に驚いて全員が高順の方を向く。
「丘力居ちゃん達、すっかり忘れてた・・・。」
『・・・あ。』



~~~馬車の中~~~
「遅いね、高順おにーちゃん達。」
「もしかして・・・忘れられてるのかも・・・。」
実際に忘れられていた2人だった。


その後、急いでやってきた高順に散々不平不満を垂れて、後日お詫びに好きな玩具を買っていい、ということを高順に約束させる子供達であった。














~~~楽屋裏~~~
どうも、あいつです。
今回は色々おかしな設定が発覚・・・。
史実では楼班は丘力居の子ですね。
それと、牧、というのはまだこの時代にはありません。あと数年したら劉エン(劉ショウの父)が中央に牧という役職を作ろうという建言をするのですが。
あと、烏丸では男は殺しても罪にならないらしいです。
じゃあ楼班抹殺すればいいんじゃね?と思いましたが・・・知ったのは書き終わってからでした(駄目

修整→下がれと退室しろって意味同じだと気づいた。本当馬鹿ですね私orz

しかし、蹋頓さんがまさかの元人妻設定。うかつに歴史に名を残すと大変ですね(何
それではまたノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第18話(修正多い(ノヘ
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/13 18:12
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第18話

公孫瓚の根拠地、北平。
この地で高順達は公孫瓚の客将となって兵士を率いる立場になってしまっていた。
公孫瓚は「次の出陣までは約1月かかるだろうから、それまでに隊の掌握と訓練を頼む。ちなみに、新兵だからさ、ちゃんと教育してくれよ?」と無茶な命令を出してきた。
無茶、と言うのは現状で(高順側から見れば)馬術に秀でた者が沙摩柯と蹋頓しかいない、と言う事に起因する。
異民族に教えられるのはあまり気分の良い物ではないかも知れない。
公孫越らが蹋頓らの事で公然と反発をしたのも「異民族風情が」という感情が先立っているからだ。
自分と虹黒のやり方では正直参考にならない、という事を理解していたし、3人娘にしてもまだ馬上戦闘に慣れきっていない。
さて、どうしたものだろう?
自分に与えられた部屋(さすがに男が相部屋では不味いので別に部屋を用意してもらった)で、悩む高順だが、その前にいくつかやりたいことがある。
まず1つ目。北平でも味噌を広めようという、味噌汁好きの彼の野望である。
幸いと言っても良いかどうかは解らないが、北平は上党からは割りと近い。
1月もあれば・・・恐らく、往復はできなくてもそれに近い距離は移動できる。
そう考えて、沙摩柯に竹簡を上党にいるであろう親方さんに届けて貰えるように頼んだ。。
内容は「味噌売れてたら、ある程度の金額と出来上がった味噌を寄越してください。それと、出来ればで良いので職人さんを2人ほど回していただけると助かります。」というものだ。
正直、金額のほうは期待するべきではない。その中から職人さん達への給料も出るし、自分が居ないのだから横領されてても文句など言えない。
其れでなくても迷惑をかけているのだから、その程度は許容範囲といえる。
味噌は自分で味見をしたい為で、職人はここ、北平で広めるために手伝いをしてもらおうと考えるからだ。
最低でも半年はいるつもりだし、その間にこの味を広めたいものだ。
美味しい、というのもあるが上党で受けいられた味がここでも通用するだろうか?ということがある。
そして2つ目。これが重要だ。
まず、自分に与えられた兵士(騎馬兵)だが、どうも烏丸と北平の人間からなる混成部隊のようだ。
両者共に馬の扱いは慣れているだろうが、北平側はやはり劣るだろう。
どちらも均等に、とまでは行かなくてもそれに近い質まで持って行きたいものだ。
そうなると、どうしても蹋頓にお願いをすることになるのだが。
自分自身も星に稽古をつけて貰いたいというのもあるし、兵士の質を上げるために訓練も見なければならない。
なんだか騎兵ばかり任されてそこは不満でもある。歩兵とか任せてもらえないだろうか。
その辺りは置いておくとして、今高順のやってることは兵士リストを作成する、というものだった。
あいうえお順に兵士の名前を竹簡に書き込んで、点呼の時などに使おうと思っている。

「さぁて・・・こんなもんか。」
筆を置き、竹簡に書き連ねた名前を数え、200人分書き込まれていることを確認する。
こういう作業は部下の数がそこまで多くないからこそ出来る作業だ。
これが1000とか2000だと、自分だけで出来る仕事ではなくなってしまう。
「ふう、残りの仕事は明日だな。」
ふと窓の外を見ると既に夕日が落ちかけていた。
1つのことに集中すると周りに目が行かない、というが高順もそういう人間だ。
「明日は実際に部下になる人と対面、か。どんな事言えばいいのやら。」
これだから人の上に立つのは嫌だ。
面倒なことが次から次へとやってくる。
部下の命を預かるという立場も正直重い。
人の命など金より軽い、というのはどこの時代でもそうだが・・・戦乱の時代と言うのはその傾向が顕著になってくる。
これから始まるはずの大乱世。
その軽い命でも、現代的な感覚を持つ高順にとっては重過ぎる物だった。
こんな事を考える時点で部隊の長失格なんだろうな、と自嘲気味に呟いた高順は竹簡を畳んでいく。
既に部隊の育成方針は固まっているし、蹋頓に任せておけばその辺りは心配ないだろう。
馬上戦闘のみではなく、馬を失った場合の歩兵戦術も教え込んでいかねばならない。
そちらは楽進ら3人娘がいるからそこも問題・・・問題は、彼女らの戦い方を実践できそうにない事だ。
気、とか言われても普通は出来ないし。
そこら辺は自分で教えるしかない。その為の武具とかを揃えないといけないだろう。
考えないといけないことは沢山ある。
だが、その前に。
「厨房行って腹ごしらえをしよう。」
いそいそと部屋を出て行く高順だった。

~~~次の日、北平訓練所~~~
整列した200人の兵士の前で高順は三刃戟を片手に、訓示をしていた。
その200の兵の中に3人娘と蹋頓も混じっている。
訓示と言っても立派な事を行った訳ではないが。
一通りの事を言い終わった高順は、「では、ここから訓練内容を発表します。」と言った。
「騎馬戦闘は・・・蹋頓さん、前へどうぞ。」
呼ばれた蹋頓が高順の隣に移動し、兵達のほうへ向き直る。
「騎馬戦闘は彼女に教えていただきます。本来なら俺が教えたいところですが、俺のやり方は当てにならないらしいので。蹋頓さん、何か言いたいことは?」
「はい。・・・初めまして、皆さん。これより馬術を教えます蹋頓です。烏丸族の私に教えられるのは不服を覚える方もいらっしゃるでしょうが、生き残るためだ、と思って頑張ってください。」
この言葉に高順も続く。
「他にも色々と教えないといけないことはあるのですが、いきなり全部詰め込んでも混乱をするだけでしょう。ですからまず、馬上戦の技術の向上のみ目指してください。その後に歩兵戦闘もお教えいたします。それに伴いもう1つ。自分の馬の世話ですが、極力自分で行ってください。」
高順の言葉に3人娘と蹋頓を除く兵士達がざわめく。
そのざわめきが一段楽するところまで待って、高順は続ける。
「皆さんが驚くのは無理も無いことですが、これを実行してください。馬という生物は臆病です。ですが、主人を慕っているならきっちりとこちらの思い通りに動いてくれる聡明さがあります。馬を好きになれなければ馬から好かれることなどできないでしょう?両者が信頼しあうからこその騎兵だ、と俺は思っています。信頼が無ければ馬は主人の命令でも聞かないことがあるでしょう。」
そこで一旦言葉を切って、高順は三刃戟の柄を地面を「こつっ」と叩いた。
「何も、全てを自分でやれとは言いません。ですが、可能な限りの世話をしてあげてください。馬がこちらを信頼してくれれば多少の危険を顧みることなく皆の指示に従ってくれるでしょう。・・・宜しいですね!?」
最初は迷っていた兵士達だったが、高順の丁寧ではあるが力強さを感じる口調に押される形で全員拱手をしていた。
「・・・宜しい。それでは、蹋頓さん。後をお願いしますね。」
「はい。お任せを。・・・皆、騎乗しなさいっ!」
先ほどまでの温厚な表情が一点、蹋頓の表情が厳しくなる。
兵士たちも背筋を伸ばしてすぐに自分の馬に乗る。
普段は温厚、というより弱気と言っても良い彼女だが、教練のときはかなり怖い。
凪達も「あの二面性はいったい何だろう。」と驚くほどだったらしい。が、厳しいのは自分の技術をきっちり教えようとしているだけで、不当な怒り方など決してする事は無い。
兵士たちも最初は戸惑うだろうがすぐに慣れるだろう。
「彼女に任せて置けば安心だな。よし、俺は・・・。」
「高順さん!隊長たるあなたが何をしておられるのです!?さあ、早く虹黒に乗ってください!」
「え?お、俺もですか!?」
瞬間、ゴシャッ!という音が響く。そんなことを言った高順の頭に蹋頓が思い切り棍を叩き落したのだ。
「のぉぉぉおおぉっ!?」
『!!?』
のた打ち回る高順を見て兵士が本気で震え上がった。
蹋頓が棍を持っているのは、練習で相手を必要以上に傷つけない為だ。
それでも彼女の戦闘能力なら平気で人を殺傷する武器になる。
兵士達はこう思っていた。
「隊長でも口答えすればああやって制裁されるのだ。」と。
「高順さん、皆が待っているのです!隊長たるあなたが兵に迷惑をかけて何としますか。さあ、お早く!」
「はいっ!申し訳ありません!」
何故か敬礼をしてから虹黒に跨る高順だった。(兵士も最初虹黒を見たとき驚いていたがいつものことなので省略
「宜しい。では始めます。これは初歩的な技術ですが槍と言うのは突き・薙ぎ・下ろしの3つから成り立ちます。最も、これはどの武器に言えることですが・・・。」
蹋頓の話は続く。
長柄の武器で突く、というのは思った以上に難しい。なので皆(高順らを除くとして)は先ず払いと振り下ろしからだ。
剣や刀のように短ければ払いは斬りとなるが、刺すのは長柄に比べれば易い。
「まず皆さんには馬の扱い、ならびに馬上での剣・槍・弓の扱いを覚えていただきます。今回はどれか1つを徹底的に教え込むことはしません。ですが均等にこなせるようにはなっていただきます。」
そう、次の戦いは少なくとも一ヶ月以上先のことだ。
それまでに最低限の戦力にはしなければならない。
「それだけではなく、筋力・耐久力。そして歩兵戦も覚えていただきます。馬を失ったときでも最低限の戦いを出来るように。・・・解りましたか!?」
『はいっ!』
高順も、3人娘も、兵士たちも、皆一斉に返事をしていた。
「良い返事です!」
そして、彼らの特訓が始まった。


~~~数時間後~~~
「・・・よしっ、今日はここまでにします。皆、ご苦労でした。明日からも同じように行きますから、休めるうちに休んでおくように。解散!」
『はっ!』
皆、一様に疲れた顔だったが返事はしっかりとしたものだった。
全員が下馬をして、自身の馬の手綱を引き厩へと引き上げていく。
おそらく、これから馬の身体を洗ったり、餌を与えたりするのだろう。
高順の言ったこともきっちりと覚えていたらしい。
凪達も、高順も馬から下りて汗をぬぐっていた。
「ふぃぃ・・・今日もまた凄かったなぁ。しかも、思い切りぶん殴られたし。」
ぼやく高順の隣で蹋頓は「申し訳ありません・・・。」としょんぼりとしていた。
「あー、蹋頓はんは謝ることないと思うでー。あれは高順兄さんが悪いねんって。」
「そうですね、高順殿は自分だけ逃げるつもりだったようですから。」
「たまには沙和たちと一緒に訓練するべきなの。」
「いや、そりゃそうだけどさ。勿論蹋頓さんは悪くない。でも、俺にもやりたいことがあったんだよ。」
「へー、何やの?趙雲はんを手篭めにするとか?」
「何でそうなるかな!?彼女と槍の手合わせしてもらいたかったんだよ、修練です!」
「ま、まさか・・・股間の槍!?」
「人の話をどこまで曲解させるんだああああっ!?しかも人聞き悪いぞ!」
叫ぶ高順と、それをからかう真桜と沙和。
蹋頓と凪は何を想像したのか真っ赤になって俯いている。
「ううっ、俺全然尊敬されてないよね・・・。」
「せやね。」
「そうなの。」
「・・・え、わ、私は高順殿を尊敬していますから!ね、蹋頓殿!?」
「え?ええ、勿論!?」
「・・・2対2ですか、そうですか。って、それよりも。皆、後で俺の部屋に来てくれる?」
「へ?何かあるん?」
真桜の言葉に高順は「あるんですよ。」と返した。
「はっ、まさか・・・沙和達の瑞々しい身体をムググッー!?」
「よーし、沙和?ちょっと黙っていようか?」
凪に絞めと言うかチョークスリーパーっぽい技をかけられて沙和は強制的に沈黙した。
「あら、私は構いませんけど。」
余裕ありげに言ってのける蹋頓。
「うぉー、さすが元人妻。余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)やなぁ・・・。」
「とと、蹋頓殿!?そういう冗談を口にするのはまだ時間的にも!」
「え?冗談など言ってませんよ?」
ふんわりとした笑顔を浮かべる蹋頓に凪も真桜も高順も絶句した。(沙和は現在気絶中
訓練を終えた今、全員汗だくになって服が身体に張り付いている。
普段露出しっぱなしの真桜。
それに対して凪や蹋頓は「普段は露出が少ないが、ちょっとしたしぐさで異様な色気を感じる」手合いだ。
高順は正直どちらにも弱い。
全員見た目も良いし、何だかんだ言いつつもきっちり信頼もしてくれている。
例え冗談であっても、そういう人々に迫られると高順は本気で困ってしまうのである。
顔を真っ赤にして、ごほん、と咳をした高順は「それはともかく。」と場の流れを変えようとする。
「後で皆で来てくださいね。馬の世話して、風呂で汗流してから。それじゃ。」
高順はこう言って虹黒の背をポンッと叩いて厩へと歩いていった。
「・・・口説き損ねましたね。」
『!!?』

蹋頓は・・・割りと本気だったらしい。

言われたとおり馬の世話を終え、汗を流してきた4人は高順の部屋へと赴いた。
途中で一緒になったので皆で赴く。
凪が高順の部屋の扉をコンコンと叩き、「失礼します。」と入っていく。
「ああ、ご苦労様。」
「いえ。それで、我々に用事とは?」
「ん、これ。」
高順は銭の入った袋を4つ取り出した。
「・・・これは?」
「お金。公孫瓚殿に給料として貰ったの。で、これに支給額が書いてある。確認してね。」
高順は竹簡を取り出して4人に見せた。
竹簡の一番最初にかなり大きい額が書き込まれている。これを6人分に割って支給するのだ。
高順達は客将とされているが実際は傭兵である。
その為、公孫瓚と色々交渉をして自分達の給料を決めなくてはいけない。
そういった役割は真桜が一番向いているので助言者として一緒に交渉をしてもらった。
結果、「まあこんなものだな」と言う所で互いに納得できたので、特に大きな混乱も見られなかったがこれからの戦いで活躍できれば額も増えるのだろう。
その辺りは自分達の腕にかかっている、という事だ。
「沙摩柯さんには渡したんだけどね。そこで皆も呼べばよかったのだけど。今日、皆が集まるからそこで良いかと思ってね。」
全員、竹簡を見て、間違いが無いかどうかを確認していく。
だが、皆が「あれ?」と首を傾げていた。
どう見ても金額が合わない。
よく見ると高順だけ、随分と額が少なめであった。
「なあ、高順兄さん?」
「ん?」
「なんで高順兄さんだけこんなに取り分が少ないん?」
「一番楽してるから。」
「・・・・・・。」
あっさりと言ってのける高順に、全員が固まってしまった。
確かに現状では兵を鍛える、という肉体的に辛い役目は彼女達の役割である。
だが、高順も今日のように訓練には参加するし場合によっては自分から凪や沙摩柯にお願いして居残り特訓のようなこともしていく。
それに加えて部隊の編成や、兵士の名簿を作ったりと隊長としての仕事もある。
なのに、一番楽とか言ってしまうのである。
欲が無い、と言えばそれまでなのだろうが、部下としてはもう少し欲を出したほうが良いのでは?と心配させられてしまう。
「心配しなくても、ちゃんと生活できる分は確保してあるから。そーいう顔しないでくださいよ。」
彼女らが心配そうな顔をしているのが解ったのか、高順も取り繕ったように言うのだが、凪達にしてみれば「そういう問題ではないと思う。」といったところだ。
「さて、俺の用事はこれで終わり。解散していいですよー。」
「・・・はい、解りました。」
皆、釈然としなかったが本人がこれで納得をしているのなら仕方が無い。
この欲の無さが悪い方向へと向かなければ良いのだが。
退室していく4人は全員そんなことを思っていた。
4人が出て行った後、高順は「ん~~~。」と、身体を伸ばした。
「よし、今やらないといけない事は全部終わったな。」
後は沙摩柯さんが帰ってこないとなんとも言えないなぁ。
・・・よし、時間も余ったことだしアレの進捗具合を確かめに行こう。
前に厨房の人にお願いをしておいたので出来上がってる頃だろう。

~~~厨房にて~~~
「どうもー、頼んでた奴できました?」
厨房に入っていくなり高順は作業をしていた人々に声をかけた。
「あ、高順さん。お待ちしてました。こんなもので宜しいですか?」
彼が出してきたのは肉の腸詰め・・・そう、ソーセージである。
作り方は教えておいたが、問題は材料だった。
氷とか燻製機とかもそうだが、香辛料などがどうしても間に合わせの物しか使用できない。
口金や絞り袋などはあったのでなんとかできるだろうとは思っていたが、形だけは何とかなったらしい。
温度を保ったりとか、そういう面倒なことが出来ないだろうから、どうしてもある程度のところで妥協しなくてはいけない。
「いやぁ、苦労しましたよ。空気がすぐに入るので針で穴を開けたり、薄いところが破れたりとか。」
「はは、そうですね。でもちゃんと形になってるところは流石ですね。」
実際、大したものだ。
形状などはなんとなくのイメージしか伝わらないものだが、きっちりとソーセージの形になっている。
その辺りはやはりプロだということだな、と高順は納得した。
「では味見をして見ましょうか。皆さんも一緒にどうです。」
「え?でも、我々よりも高順さんから食べたほうが・・・。」
「別にかまいませんって。作ってくれたのは皆さんですし、最初に食べる権利があると思うのですよ?」
「そ、そうですか?じゃあ・・・。」
1人の女性がおずおずと箸でつまんでソーセージを口に入れ噛み千切る。
ポリッという、いい音がした。
「むぐ・・・お、美味しい・・・!?」
「え?本当に!?」
「こんな変な肉が!?」
「・・・変な肉って・・・・・・。」
味噌汁のときと言い、どうしてこうおかしな評価しかもらえないのだろうか。
まあ、彼らからすれば初めて見た物だろうし、警戒するのも無理は無いか。
「じゃあ、俺もいただきますかね。・・・むぐっ。」
ふむ、ちゃんと水抜きはされてるし、作り立てだからか余計に美味しい。
少し胡椒が強い気がするけど食欲が出てくるくらいの良い辛さだ。
これは良いな。成功と言っても差し支えない。
「よーし、大成功。でもこれ・・・かなり数があるけどどうしよう?」
「そうですねえ、趙雲さんや公孫瓚様にも試食して頂くのは?」
「それだっ。よし、じゃあ持っていくよ。皆さんありがとうねー。」
そう言って高順は出来立てのソーセージを持って行くのだった。

結果。
公孫瓚:「美味しいな・・・どうやって作ったんだ?」
星:「ほほう、これは中々良い辛さですな・・・。酒のつまみに良いやもしれませぬ。」

また酒ですか。
ついでに3人娘と蹋頓さん達にもお裾分けして見ます。
 
真桜:「美味いなぁ。これも高順兄さんが作ったん?」
沙和:「これ、豚肉なの?ちょっと信じられない・・・。」
凪:「もう少し胡椒が利いていれば更に美味しいのですが・・・。」
蹋頓:「あら、形が(中略)。美味しいですよ、ふふ。」
丘力居&臧覇:(無言でむくむく)

なんだかおかしな反応をした人が1人いましたが概ね好評なようです。
ケチャップあればなー。

この後、公孫瓚に「前の肉、量産してくれる?」とお願いされることなど夢にも思わない高順だった。

それから2週間ほどして、沙摩柯が帰還した。
大量のお金と2人の職人を連れて。
旅の疲れがあったが、彼女らはまず高順の部屋へと赴いた。
高順の部屋の扉を叩き、部屋に入る。
「あ、沙摩柯さん。おかえ・・・り・・・。何その大量の袋。」
「ただいま。お金だ。持ちきれない分があったからそれはまず私の部屋(沙摩柯と蹋頓は相部屋。丘力居らもいる)に突っ込んでおいた。後で持ってくるよ。」
その異常な数の金の詰まった袋を見て、高順は「一体どれだけ儲けたんだよ・・・。」と、気が遠くなりそうだった。
「で、沙摩柯さん。その・・・後ろに居る方々は?」
高順の部屋には現在、本人と沙摩柯、そして後ろに2人の女性・・・少女と言ったほうがいい。が立っている。
高順より少し年が下かも知れない。
その少女2人がその場で高順にひれ伏した。
『お初にお目にかかります!』
「え?何?どうしたの!?」
いきなりのことで思考が追いつかない。
「私達、上党で味噌作りの仕事を与えられていた者です。」
「高順様のおかげで職を得られたも同然です、感謝しています!」
「え。あー・・・。君たちを選んだのは親方さんだと思うけど・・・うん。」
なんだろう、凄く感謝されてる。
俺、味噌の作り方を親方と一緒にあれこれ悩んで後を任せただけで・・・別にこの子達の雇い主じゃないんだけど。
でも、何らかの技術、つまり手に職つけらたのは大きな自信になるとは思います。
「あー。お二人共、そろそろ立ってくれないかな?」
まだ跪いてる2人に高順を声をかける。
その言葉を聞いて、2人とも素直に立ち上がった。
「ま、小難しい話は無しにして。ようこそ。あなた方にもここで味噌を作ってもらいますけど・・・きっちりと給料は出すのでご心配なく。」
「はい!」
「それと、2人の名前を教えていただけますか?」
「閻柔です!」
「田豫です!」

また、マイナーな人々が・・・。
両方とも優秀な人だとは思いますが、何でそれが上党から来るかな。
いや、もういいけど。慣れたけど!

「あの、高順様・・・?どうかしましたか?」
「え?ああ、いや、何でもないです。それよりも・・・参ったな。来るのは男性だと思ってたし、2人か・・・部屋が無いな。」
「大丈夫です、高順様の部屋で泊まります!」
「ブフゥッ!?それは不味いですって!」
「別にかまわんだろ?」
「沙摩柯さん何言ってるのさ!?俺男ですから!女の子2人と一緒にお泊りとかキツイですから!?」
「問題ありません!襲われても構いませんから!」
「ブーーーーッ!!?」
なんというテンションの高さだ・・・。
正直おじさんも疲れます。
無意識にえろい事言う蹋頓さんもきついが、この子達も天然でこういうこと言うのかなぁ。疲れるなぁ。
まあ、悪い子達ではないと思う。
おじさん頑張る。

結局、この日は彼女らに同じ部屋に泊まってもらったが、翌日3人娘と星に弄られるわ、凪や蹋頓に絞められそうになるわで散々な思いをする高順であった。
後日、真桜に自分達専用の鐙を作ってもらったり、歩兵戦闘用の6mクラスの長槍や馬上戦闘用の籐牌(円形の盾で藤を編み込んだもの)を更に木や金属で補強した物を作ってみたりと色々な話があるが・・・。
それはまた、別の機会に。





~~~楽屋裏~~~
どうも、またしてもちょい役武将を出しましたあいつです。
連投は出来ませんでしたが休日を丸一日使って書き上げたことは評価して欲しいと思うんだ(何

さてさて。
最後に馬上戦闘用の籐牌や長い槍を作成したりとか色々やってますが、他にもアイロンのような形をした盾やら楕円形の盾やらも作ってそうです。
歩兵用の盾とか作成してるかもしれませんね。
そしてソーセージですが・・・作中のやり方できっちりした物が出来るかどうかは解りません。
「できる訳ないだろ!」と思ってもスルーの方向で(待
閻柔と田豫は上党ではなくどっちかと言えば北平よりの人になると思いますが・・・名前だけの人で今後出てくることは無いでしょう。
恐らく上党と同じように味噌倉を作って生産に乗り出すのでしょうね。いつ解体できてもいいような形でw
楽進さんも解体スキル持ちになってましたし。
そして高順くんの扱いが悪いのは仕様になりつつりますね。
それより、元人妻設定になったことで蹋頓さんの性格が次第にえちーな方向へ。最初こんな性格ではなかったというのに。
一体どうなる(本当に

話は変わりますが、当初、この作品は10話程度で終わらせるつもりでした。
他の作品でもありますが、3話とかで黄巾の乱終わらせて、5話くらいで洛陽編終わって、残りで徐州編。
「俺達の戦いはまだ続く!(漢坂?」なノリで。
しかし、蓋を開けてみると。
「あれ、番外編入れてもう20話近くやってるのにまだ黄巾いってなくね?」


・・・迂闊すぎる私に乾杯(黒烏龍茶で
なんで処女作がこんな長編になってるのでしょうね。迂闊にも程があります。
単純に私の構成力が無いだけなのですが・・・(笑
そのあたり、読者様はどう思ってるのでしょうね?もっと早く進めろよ!とお思いなのでしょうか。


さて、次あたりから烏丸との戦いになると思います。
白馬なんとかもありますから、きっと戦いそのものは楽なのでしょうね。烏丸は白馬なんとかを恐れていたらしいですから。

それではまた。
ご意見ご感想お待ちしております。ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第19話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/17 07:18
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第19話

前回の話から1ヶ月半が経った頃、公孫瓚は1万1千を率いて出陣した。
北平の更に北にある万里の長城。
高順達は、後に世界遺産となるはずの場所にいる。
もっともこの時代は高順の知る長城よりは更に北に位置していた。
現代の人々が知る万里の長城は、この時代ではもっと北に位置していたのだ。

「しかし・・・万里の長城というからさぞ壮大な物を想像していたんだが・・・実際はわりとしょぼいな。」
高順は城壁で北・・・烏丸族に動きが無いかどうか注意を払いつつこんな感想を漏らした。
それを隣で聞いた星もさもありなんと頷く。
「そうですな。私も最初見たときは驚いたものです。場所によってはあっさりと登れそうな場所もありますし。」
星は周りを見渡しながら言った。
実際、その辺りに生えている木に登れば、城壁の高さにまで上がっていける。
「よくもまあ、こんなんで防衛線張ってたもんだよ。しかもすっげぇ距離だし。1箇所を集中的に攻撃されたらすぐに破られるぞ?」
「実際、破られておりますからな。我々がここにいるのはあくまで小休止というだけのこと。」
「もう少ししたら出撃って事か。」
「左様。烏丸の集落はここより北に位置しておりますゆえ。」
「成る程ね。・・・ったく、憂鬱になる。」
はぁ、とため息をつく高順に星は首を傾げる。
「憂鬱?戦いが怖いとか?」
「そりゃ普通に怖いさ。兵士を率いる立場って言うのも原因だし。」
「ふふ、高順殿らしい言葉ですな。人の命は重い、と言う事ですかな?」
「当たり前だよ。殺しに行くんだから殺されることも覚悟しないといけないしね。死にたくないけどさ。」
「ははは、その通りですな。」
「俺が憂鬱って言うのはさ・・・ほら、あそこの方。」
高順は城壁の下側を指差す。
「あそこの・・・ああ、王門達ですな。」
星も納得したように笑う。
「あれ?星殿はあいつら呼び捨てですか?俺とか公孫瓚殿には「殿」とかつけるのに。」
「ええ、その辺りは曖昧ですが。友人と認めているものは真名で呼び捨てに致しますな。」
「じゃあ凪とかも?」
「無論。」
この1ヶ月で3人娘と星は真名を教えあっていたらしい。
いつの間にかお互いを真名で呼んでいたが、高順は最初違和感を感じず、途中で「あれ?」と気づいたのだった。
「俺は?」
「友人ですが真名を教えて頂いてないですからな。蹋頓殿と沙摩柯殿もそうですし。」
「あの二人は真名が無いだけじゃないかな?俺もそうだし。実際には真名を使用できるような生まれじゃないんだよね。」
真名、というのは基本的に生まれがそこそこ良い人間、つまり上流階級に許されるものだ。
自称の場合もあるが、趙雲は恐らく自称だろう。
蹋頓と沙摩柯も、真名のことは知っているだろうが異民族にはそういう風習が無いのかもしれない。
「まあ、それは良いとして。王門らが何か?」
「なんかね、目の敵にされてるみたいで。」
「ほう?」
「最初のほうで蹋頓さんと沙摩柯さんを、けなしたでしょ?あれで凪達が随分頭に来てるみたいでさ。」
「そういえば、そんな事がありましたな。」
「俺も頭にきてるけどね。あの3人が怒ってくれたおかげで逆に冷静になれたというか・・・。それからかな。」
「まったく、あの方は。前から陰湿だとは思っておりましたが。」
「俺に対して文句を言うだけなら許せるんだけどね。凪とかにもネチネチと嫌味を言ってるらしい。」
「はぁ・・・。公孫瓚殿も悩んでおられる様子でしたからな。」
「雇い主を困らせる訳にも行かないしなぁ。困った問題ですよ。」
「全く。・・・む、そろそろ出撃時間ですな。」
「お、もうですか。それじゃ行きますか。」
「承知。」
2人は階段を下りて集合場所へと向かっていった。

~~~集合場所にて~~~
高順と趙雲が降りた頃には既に互いの部隊は出撃準備を終えていた。
2人の姿を認めた楽進や沙摩柯が近づいてくる。
「隊長、準備を完了しました。いつでも出撃できます!」
「そっか、ご苦労様。沙摩柯さんも。」
「ああ、かまわないさ。他の皆も張り切ってるし、兵士もやる気に溢れている。上手く育てることができたようで安心だな。」
楽進が高順の事を「隊長」と呼んだが、これは少し前からの事だ。
李典や于禁は「高順さん」とか「高順兄さん」とか、その時々によってばらばらだが、普段はそう呼んで来る。
楽進は「高順殿」と呼んでいたが部隊を預かる人なのだから、と考えて「隊長」と呼ぶ事にしたらしい。
今までどおりで良いよ、と言ったのだが「それでは他に示しがつきません!」と言い張り、結局高順が折れる形になった。
ところで、趙雲と高順の部隊だがよりによって王門隊へ編入されていた。
公孫瓚の率いる兵は1万1千。
本隊は公孫瓚の白馬義従4000。その内に公孫範。
右翼に田楷率いる3000。その内に厳網、鄒丹。
そして左翼に王門3000。その内に単経。そして趙雲、高順。
残りの1000は輜重だが、有事の際には公孫瓚本隊に属して戦う。
歩兵・弓兵・騎兵はバランスよく揃っているが、白馬義従は騎射ができるものを集めて組織されているので弓の攻撃力は高い。
そうなると歩兵が一番少ない計算になるが、そう問題はないだろう。
問題は敵の数が3万程であるという事と、自分達の主将が王門であるということだ。
公孫瓚は出陣する前に「敵は数が多いが、烏合の衆だ。戦を始めた頃は強いが、柱となる武将が少ないから時間と共に弱っていく。持久力が無いんだ。」という事を話していた。
最初はもっといたのだが戦い続け、そして劉虞の懐柔によってなんとかここまで数を減らしたのだと言う。
つまり、持久戦に持ち込めば勝機が見えるといいたいのだろう。
だが・・・そうなると一番の問題は王門だ。
何せ高順の部隊と相性が悪い。
高順のことを「ただの傭兵」と見なしているし(事実だが)3人娘の事を「役に立たない小娘共」と呼ぶ。
沙摩柯らのことを「薄汚い蛮族」とも言っている。
公孫瓚に「あんな奴が隊長では兵も役に立たないのがわかり切っている」と何度も言っていたと聞いている。
自分のことだけを言うなら我慢もしよう。
だが、部下まで巻き込むのは止めてほしいものだ、と考えている。
普段は温厚な高順だが、そろそろ限界が近かった。
趙雲もそれを察しているらしく、何度か「あまり短気を起こさぬように。」と言われていたが。
公孫瓚もそれを問題視しているらしい。
それなら指揮下につけてくれるな、と言いたいが「高順たちが手柄を立てれば良い。そうしたら王門も文句を言えなくなるさ。」と考えてこのような布陣にしたらしい。
「さて、高順殿。そろそろ進軍時間ですな。」
「む、もうそんな時間か。嫌だなぁ。」
「隊長、またそのような。・・・私も嫌ですが。」
「はは、皆思うところは同じさ。行こう。」
沙摩柯の言葉に皆が頷き、自身の馬に騎乗。
率いる部隊へと向かっていった。


~~~一刻後~~~

進軍を続ける公孫瓚部隊の元に、放っていた偵察部隊から連絡が来た。
「この先約5里先に烏丸・張挙連合の姿を確認。総数3万ほど。」
まず、その報告が公孫瓚の元へ行きそれから各武将の元へと伝わっていく。
「3万、か。約3倍ですね。」
楽進が傍らにいる高順達に話しかける。
「3倍ね・・・。このだだっ広い平野でぶつかるんだよな。公孫瓚殿はよほど自信があるらしいね。
「蹋頓はんが呼びかけるとかでけへんの?」
「できなくはないでしょうが、彼らは強硬派と目されている立場ですからね。正直効果は薄いでしょう。私が蹋頓と気づくかどうかも解りませんからね。余裕があればやってみますけど。」
「ま、どちらにせよ警戒しておくに越した事はないでしょうね。公孫瓚殿も当然そう考えてるでしょう。」
そうですね、と蹋頓も同意する。
「烏丸に警戒するのは良い事だが。」
沙摩柯が後ろから話しかけてくる。
「我々にはもっと警戒しなければならない相手がいるぞ。」
「へえ?沙摩柯はんが警戒って。どんな奴なん?」
いつもは寡黙であまり喋るのを好んでいないようなイメージをもたれる沙摩柯だが、実際は割りと話し好きで沙和や真桜の冗談で笑っていたりする事もある。
「ん、我々のすぐ後ろにいる。」
「沙和達のすぐ後ろ・・・ああ、王なんとか!」
「そう、王なんとかだ。足を引っ張られないように気をつけろよ?奴の練兵を見てみたが兵はともかく本人は酷い出来だ。あんな男に無能と言われる奴の顔が見たいものだ。」
やれやれ、と大げさなジェスチャーをする。
「・・・言われた我々の立場がありません。」
「ああ、そうだな。だから見せてやろうじゃないか。無能と言われた我々の戦いをな。」
沙摩柯の言葉に全員が頷いた。
「あのー・・・。」
そこに、弱弱しい声が横槍を入れる
「ん、どうしたん?田豫。」
「何で、味噌職人の自分が従軍してるんすか・・・?」
「そら、高順兄さんの命令やもん。」
泣きそうな顔で質問をしてくる田豫の姿があった。
実は、彼女を連れて行こうと考えたのは高順だ。
史実の田豫の功績を知っていたからというのもあるが、彼女に料理をしてもらいたいという考えもあった。
何せ自分達のいる場所は長城を更に北に超えた場所だ。寒くて仕方が無い。
じゃあチャイナドレスの上に鉄、或いは皮の鎧を重ね着している蹋頓や沙摩柯はどうなるんだ?と言われそうだが、彼女らは寒さにある程度慣れているらしい。
だが、普通の兵士達はそうも行かないだろう。
そこで「味噌汁使えないかな?」と考えたのだ。
軍用食の味が薄い・・・塩の値段が高いから仕方が無い事ではあるが、塩気が少ないのだ。
それを考えると味噌は塩分もあるし、野菜と一緒に炊けばそれだけで強力なおかずとなり、身体も温まる。
つまり、田豫は従軍料理人ということになる。
当然、戦の空気に慣れてもらって、いつか武将として働いてもらおうとも考えている。
史実の事を考えれば軍師、あるいは内政官としても有能そうだ。
「うう・・・ひどいっすよ、高順様・・・。」
「あー、悪いと思ってるよ。でも、そんだけ田豫さんに期待してるからでもあるので。」
「・・・高順様にそう言われたら張り切らないわけにはいかないっす!」
・・・割と根は単純らしい。
「で、自分はその王何とかって人知らないんすけど・・・そんなに駄目なんすか?」
『うん。』
「・・・全員で即答っすか。」
高順隊全員が知っている事なのだが、王門という武将は「なんでこんなのが一介の将軍なんだ?」と思うほどに惰弱な武将だった。
あまりに高順隊をけなすので、「ならばお手合わせをしていただきましょうか。王門殿は相当な武の持ち主とお見受けしますゆえ。」と高順は一度挑戦しようとしている。
その時王門は「貴様ごとき小僧に本気を出すまでも無いが、今日は日柄が悪い!」とか言って逃げたのである。
その日はまさに雲1つ無い透き通るような青空だったのだが。
その後も何度も「今日は如何です?」と言ってみたが・・・同じような事を言って逃げるばかり。
しまいには「持病の癪が・・・」とか言い出したのである。それが全くの本気で。
これを聞いた高順隊の皆は確信したのである。
「はっきりと解った。王門、こいつは・・・駄目な奴だ!」と。
随分抽象的な表現だが、これが一番しっくり来る。
本当になんでこんな奴が将軍なのだろう?
高順は王門という武将の事を知識として理解していたから「ああ、やっぱりな。」程度の認識だったが、公孫瓚は一体何を思って・・・。
もしかしたら、本当に人手不足なのかもしれない。

閑話休題。

~~~公孫瓚・本陣~~~
駄目な奴はさて置いて、公孫瓚の軍勢は更に進軍を続ける。
その眼前に少しずつだが、烏丸らしき部隊が見えるようになってきた。
向こうもこちらの姿を確認したらしく、慌しく陣形を整えている。
公孫範は「どうなさいます?」と本隊先頭を進んでいる公孫瓚に声をかける。
「決まってるだろう、全軍突撃用意だ。関靖!」
「ははっ!」
「各部隊に伝令を出せ。まず我々が敵陣に突撃を仕掛ける。左翼・右翼の前衛部隊も前に。中衛・後衛部隊は左右に大きく迂回し、敵の横腹を突かせる!」
「承知いたしました!」
関靖と呼ばれた男・・・公孫瓚の軍師の1人である。
知略に富んだ人材が少ない公孫瓚陣営にとっては無くてはならない人物だ。
その関靖が伝令を呼び、今の命令を一言一句間違うことなく伝え、伝令を各陣に走らせる。
それを見届けた公孫瓚は烏丸の陣を睨み付ける。
「今度こそ・・・決着をつけてやるぞ。楼班、張挙。」

~~~高順・趙雲部隊~~~
「さて、高順殿。聞きましたかな?」
趙雲は隣に布陣している高順隊まで来て話をしていた。
「ああ、聞きました。前衛部隊突撃だとか。」
「うむ、公孫瓚殿の白馬義従の突撃に合わせて攻撃を開始。一応打ち合わせをするべきと思いましてな。」
「前衛・・・ま、どうしても我々に回ってくる役目ですね。」
「無論。それゆえ功績を立てることが出来ましょう。後ろに控えてるアレの鼻を明かす良い機会ですな。」
「はは、確かに。せいぜい足を引っ張られないように気をつけるべきですけどね。」
「ふ、言えておりますな。・・・それでは私はここで。ご武運を。」
趙雲は拱手をして自軍のほうへと戻っていった。
それを見送った高順は凪に命令を下す。
「凪、聞いてたね?悪いが兵士を集めてくれ。」
「はい。」
数分とせず、兵士達が高順の前に集まり整列をする。
兵士達の前列には3人娘、沙摩柯、蹋頓がいる。
「全員、集まったな。・・・。皆、聞いてくれ。これより我が隊は烏丸・張挙連合に攻撃を仕掛ける。」
兵達はざわめくこともせず、直立不動の姿勢を維持したまま高順の話を聞く。
この1月半で、彼らは最初の頼りなさが嘘のように成長していた。
皆、蹋頓や3人娘のスパルタ訓練に音を上げることもせず、必死になって与えられた課題をこなしていた。
結果、突出した部分がなくても・・・ある程度はどんな状況にも対応できるようになっていた。
こんなに短い時間でこれだけの結果を出せたのは教官がよかったという事もあるだろうが、兵1人1人の頑張りがあったからでもある。
良い兵士たちだ、自分も見習うべきだな。
高順はそう思っていた。
「作戦を説明します。まず、公孫瓚殿率いる白馬義従前衛3000が攻撃を仕掛けます。それと同時に右翼・左翼の前衛部隊も出撃。我々も前衛に位置するので出撃する事になりますね。ここまでで質問は?」
凪が挙手する。
「楽進、どうぞ。」
「はい、左翼の前衛は我々と趙雲殿の部隊。合わせて700ほどです。残りの中衛・後衛2300はどう動くのです?」
「我々が敵前衛を攻撃し、こう着状態に陥ったところで迂回。横っ腹を突きます。このような何も無い平野でぶつかる以上、兵数の差がそのまま勝敗に繋がると思いますが・・・白馬義従は烏丸に恐れられている存在です。」
「では、数の差はなんとかなる、という事ですね?」
「ええ。おそらくは。我々にとって大切なのはこう着状態を作る事です。烏丸兵は持久力が無いと聞いていますから、こう着状態が長引けば次第に弱ってくるでしょう。そこを突くと言うことらしいです。」
「解りました。」
「他に何か?」
「・・・。」
高順はしばらく待ったが誰も何も言わない。
「・・・宜しい。それでは」
言葉を続けようとした高順だったが、そこに銅鑼の鳴る音が響く。
出陣の合図だ。
本陣の白馬義従が列を成し、その先頭に公孫瓚が進んでいく。
まず、白馬義従1000ずつが陣を作り、3部隊に分かれた。
更にその両翼に右翼。左翼の前衛部隊がつき、計5つの陣が出来る。
そして、その後ろに各陣中衛・後衛部隊が布陣する。
少し違うかもしれないが、鋒矢の陣を作ったのだ。
突破を狙っている、と見せかけるのだ。
その後少しずつ下がり、烏丸の陣形が崩れた頃に後方で温存していた部隊を回り込ませる。
最初こそこちらが苦しいだろうが、耐えきれば勝機が見えるだろう。
「高順隊、騎乗!」
高順の掛け声に兵士が従い、自身の馬に跨る。
彼自身も虹黒に跨り、戦場を見わたす。
目の前を趙雲の部隊が進んでいく。
それに従い、高順隊も陣形を維持したまま進んでいく。
戦を前に気分が昂ぶる。
それと同時に憂鬱な気分も高順は覚えていた。
今までは自身の命だけを考えれば良かったが、ここからは兵士の、部下の命を背負う事になる。
その重さにも慣れなくてはいけないのだろう。
「隊長、我等の布陣も完了致しました!」
「ああ。」
楽進の声に頷く。
それと同時に公孫瓚の声が聞こえてきた。
「攻撃開始」というシンプルな命令だ。
その声に従って、彼女自慢の白馬義従が雄叫びを上げて一散に突撃を開始。
他の部隊も続いていく。
高順から見ても、威勢よく進んでいくと思えた。
何故か地味な印象を受ける公孫瓚だが、軍勢をきっちりと鍛えているのがよく解ったし、先頭で剣を振るう姿も様になっている。
負けてはいられない。
「これより我が隊も攻撃を開始するが、その前に皆に命令を下す。生き残れ、それだけだ。・・・突撃だ!他の部隊に遅れをとるな!」
「うおおおおおおおっ!」
高順の声に兵が応え、各々の武器を構える。
勝つ為に。そして生き残るために。
高順隊は趙雲隊と共に楼班・張挙軍の前衛部隊へと突撃を開始した。





~~~楽屋裏~~~
書き忘れましたが閻柔は北平で臧覇たちと遊んでます、あいつです。(何挨拶
戦の前の前哨とか、書くのが難しいです。普通に全部似たような構成になりますからねぇ。
いや、何でも書くのは難しいですけど。
・・・こうして見てみると基本的に高順くんは運が良いです。どの戦いも本人の能力よりも運で勝ち残る形ですし・・・
後半になれば少しはチートっぽくなると思うのですが・・・まだ黄巾すら終わっちゃいない。高順くんの明日はどっちだ(笑
今回はギャグ要素全くありませんでしたね。辛いです(ぇ

それと、この頃更新速度が微妙に遅くなっています。
でも仕方がありません。ヴェスペリ○が面白いのが悪いのです(??


さて、ネタな上話が凄まじく短いですが、ギャグを突っ込んで見ました。











【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~  蝶☆番外編。

無理やり打ち切ってみたら多分こうなる編。

最終話~絶望を胸に。~




陳留政庁にて、高順の最後の戦いが始まろうとしていた。
っていうか始まっていた。

「チクショオオオオ!喰らえ夏侯惇!俺の新必殺滅陣営!」
高順の戟の一撃(というよりただの突き)が夏侯惇を捉えようとする。
その一撃を見て夏侯惇は嘲る様に言った。
「さあ来い高順!私は虹黒に蹴られただけで死ぬぞオオ!」
つん。
高順は遠慮がちに戟の先っちょ(布で巻いてある)を夏侯惇の胸に押し当てた。
「グアアアア!こ、この猪武者の名を欲しいままにする夏侯惇がこんなヘタレに!?しかも今どこ触った!」
「うっさい!ただのお芝居とはいえ変な事言うな!台本通りにやれないのかあんた!?」
「あ、すまん。いや、そうじゃなくて・・・えっと。」
「?」
「(小声で)なぁ高順、次の台詞なんだっけ?」
「(小声で)ば、馬鹿なあああっ!て叫ぶんです!」
「(小声で)あ、そうだった。・・・・・・バ・・・バカなあアアアアアア!グアアア!」
夏侯惇の断末魔が響く。
その声が聞こえたのか、次の部屋で高順を待ち構えている3人がため息をついた。
「ああ、姉者がやられたか。・・・多分、台詞忘れて高順に迷惑かけてるんだろうな。いつもの事だがな。」
「あの・・・夏侯淵殿?」
「うむ、どうした、郭嘉?」
「私と程昱、この話ではまだ曹操殿の下で働いててもお目通りは適ってないのですが・・・。」
「ああ、気にするな。作者が適当に考えた話で適当に役に当てはめただけのものだしな。細かいことを考えたら負けだ。」
「しかし。」
「それに見てみろ、程昱のあの落ち着きようを。」
「ぐぅ。」
「あれを泰然自若、というのだ。お前も見習ったほうがいいぞ?」
「・・・あれは、単純に寝てるだけです。」
そこへ、高順が扉を破り、戟を構えたまま突進してきた。
「くらえええ!」
「ああ、やっと出番か。それでは。」
『グアアアアアアア!』(2人棒読み、1人鼻血)
4人を刺し貫いた高順はハァ、とため息をついた。
「やった・・・ついに四天王(?)を倒したぞ!これで曹操のいる部屋への扉が開かれる!」
その声が届いたのか届いてないのか。
それは知らないがどこかから声が響いてきた。
「よく来たわね、陥陣営。いえ、高順。待っていたわ・・・。」
「こ、ここが曹操のいる部屋へ続く扉だったのか・・・!感じる、曹操の覇気を・・・。」
「なんでこんな事をしなければいけないのか甚だ疑問だけどね・・・。」
「・・・それ言っちゃ駄目です。」
「まあ良いわ。それよりも・・・戦う前に1つ言っておく事があるわ。あなたは私を倒すのに頑張って武将を集めてるみたいだけど・・・別にそんなの無くても倒せるわ。・・・って、あなた、武将集めてるの?」
「一応。本当に一応。じゃ無くて・・・な、なんだってー!(棒読み)」
「それと・・・ぇえと、何だったっけ。・・・ああ、そして呂布は食費が異様にかかるから故郷へ放してきたわ。後は私を倒すだけね。クックック。・・・こんな悪役みたいな笑い方しないわよ、私。」
自分の台詞に突っ込みを入れる曹操に高順も言い返す。
「フ・・・上等だ。俺も1つ言っておく事がある。色々な女性とのフラグが立ってるような気はしたがそんな事はなかったし、高順キモスとか言われたから確認してみたら本当にその通りすぎて作者も地味に凹んだぜ!後々どうしようとか悶えてるし!!自虐ネタゴメンナサイとか、キモイとか言われた俺の立場とか!!!orz」
「・・・なんだかよくわからない言葉が混じってるし、始める前から本人が立ち直れないような状況に陥ってる気がするのだけど・・・そう。」
高順が(涙目で)三刃戟を構えなおす。
己の勇気が世界・・・いや、己の死亡フラグを叩き折る事を信じて。
「ウオオオッ、行くぞオオオオ!」
「さあ、来なさい高順!」

ご愛読ありがとうございました。あいつ先生の次回作にご期待ください!





嘘ですけど。



~~~もう1度楽屋裏~~~

もしこんなシナリオで終わらせたらブーイングどころじゃすまないですね、宇喜田さんとかボンバーマンとか毛利の爺さんに何されるかわからないあいつです。
なんでこんなことしたのかと言いますと。
「この作品で打ち切りとかやめてくださいっす!」というお言葉がこちらの予想より多かったので、ギャグでこんなことをしでかしてみました。
むしろ、「早く終わっちゃえよYOU」と言われると思ってたのに(汗
そしてもう1つの理由は名前が化けて読めない、とか名前の字が難しくて読めない、というご意見が少々ありまして、その補完のためでもあります。
まさか名前紹介だけで更新する訳には行きませんからね。そう思って書き上げましたが書いた後に気がつく。

「第1話というか注意書きのとこに追記すれば良かったんじゃね?」



うああああああああorz

さて、今思い出せた人物のみですが名前紹介を致します。順不同ですがご勘弁を。

丘力居(キュウリキキョ)
蹋頓(トウトン)
公孫瓚(コウソンサン)
劉虞(リュウグ)
沙摩柯(シャマカ)
臧覇(ゾウハ)
楽進(ガクシン)
李典(リテン)
于禁(ウキン)
趙雲(チョウウン)
閻柔(エンジュウ)
田豫(デンヨ)
夏侯惇(カコウトン)
夏侯淵(カコウエン)
郭嘉(カクカ) シナリオ中ではギシサイですが。
程昱(テイイク)
高順(コウジュン)
丁原(テイゲン)
呂布(リョフ)
陳宮(チンキュウ)
張遼(チョウリョウ)
朱厳(シュゲン)

こんな所でしょうか?
表記されて無い人物は大抵読めるだろう、と考えて抜いていますがもし抜けてたらお教えください。

しかし、1時間かけて何を書いているのやら。
まだ次の話も書いていないというのに。
でもヴェスペr(拉致


それではまた次回お会いしましょう。ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第20話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/19 07:14
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第20話


「こんな所までやってくるとは・・・。」
烏丸本陣にて楼班は1人憤っていた。
今まで何度も公孫瓚と衝突を繰り返してきた烏丸・張挙連合だったが、この頃はその勢力も随分と弱体化していた。
劉虞の懐柔工作と、公孫瓚との戦いで10万を超えていた軍勢が今では3万程度にまで減っている。
不利を悟って北方までやってきたがどうも公孫瓚はこちらを見逃す気はないらしい。
それに、後漢の内部事情に詳しいであろうと思って張挙らと連合を組んだが、これが全く役に立たない男達だった。
だがその張挙と張純は今現在ここにいない。
いや、この戦いの最初から彼らはこの世に存在していない。
楼班が暗殺したからだ。
役に立たない奴らだったが1万ほどの軍勢を保持していたし、役に立たない彼らにいつまでも偉そうな態度を取られるのも癪だった。
「追い詰められても塩漬けにしてある奴らの首を差し出して降伏すれば命は助かるだろう。」
こんな打算もあったが、楼班は知るべくも無かった。
全てを取り返すために公孫瓚の軍勢に参加している蹋頓がいる事を。

烏丸前衛部隊1万5千程(こちらは中央・右翼・左翼のみの3部隊)と、公孫瓚前衛部隊5千程(全5部隊)は激しくぶつかり合っていた。
楼班率いる烏丸族は白馬義従を苦手としているのか、数で有利な筈が押されている。
これだけの差があって有利になれない現状にも楼班は苛立つ。
敗北続きで厭戦気分が兵達に蔓延しているのだが、それをどうにもできないところが楼班という男の限界だった。
前衛部隊の戦いは続く。
どうも高順らの配置された最左翼が一番敵の数が多いらしい。
当初は弓の打ち合いで始まったが、すぐに距離が縮まり近距離戦へと移行している。
こう着状態を作り出す事が目的とはいえ、流石にこの数の差は厳しい。
趙雲隊と高順隊、合わせて700。
それに対して彼らに相対する烏丸の右翼は全部6000ほどだ。
次から次へと向かってくる烏丸兵を幾人も討ち果たした高順だが、ここまでの差があると凄まじく厳しい。
平原とはいえ、一度に戦力をぶつけ合う訳ではなかった。
烏丸兵が白馬義従を警戒していた為か、前衛部隊の先鋒部隊と戦う事になったが、攻めて来る数は3000ほど。
兵力差で言えば4倍近くある。
隣の白馬隊がすぐに前面の敵を押しまくり、余裕が出来たのかこちらを援護してくれているが、やはり苦戦を免れない。
「こっちの数が少ないからって嵩にかかって・・・このっ!」
高順が戟を横に薙ぐ。
その一振りで高順の目の前にいた烏丸騎兵は血しぶきをあげ、馬から転げ落ちていった。
それを隣で見ていた沙摩柯が敵兵3人を相手に渡り合いながら話しかけてくる。
「高順!今ので何人目だ!?」
「20から先は数えるのを止めましたよ!そちらは!?」
「50を超えたところで面倒になった!」
「さすが沙摩柯さん・・・っと!」
沙摩柯を狙って剣を振りかぶった敵兵の胴を高順は刺し貫き、敵兵が密集している場所に力任せに投げつけた。
すぐ近くでは沙和と真桜が連携攻撃を繰り出して1人1人確実に兵を仕留めていく。
凪は基本的に徒手空拳だが、敵兵から奪った槍や剣などで応戦。時折気弾で敵を吹き飛ばしていた。
蹋頓も兵士を率いて当たっては引き、また当たっては引く、ということを繰り返す。
彼女もまた強く、槍を振るう度敵の死骸が増えていく。
兵士達も2人1組で敵に当たっているが、数の少なさはどうしようもなく被害が大きくなり始めているようだ。
隣で戦っている趙雲隊も必死に戦っており、なんとか拮抗しているものの・・・ふとした事で戦局が悪化するだろう。
早く後方で控えている部隊を投入してほしいが、まだ烏丸側の後衛部隊も待機したまま。
あれを引き出せなければ意味が無い。
そう思っているうちにまた2人ほどこっちに向かってきた。
「ちっ、本当に多い!こっちには白馬義従がいないからっていい気になってるな・・・。」
戟を構える高順だったが、その時横から蹋頓が割って入り一撃で烏丸兵2人の首を跳ね飛ばした。
「ご無事ですか!?」
「え、ええ。お蔭様で。」
「それは何よりです・・・せいっ!」
味方の死骸を踏み越えて突撃してくる烏丸兵を更に屠っていく蹋頓。
「・・・強いなぁ。」
本当、なんでこんな強い人々が俺に仕えてるんだろうか・・・?
「ほほう、蹋頓殿に見とれて・・・ふふふ、あの胸ですな、あの胸がよろしいのですな!?」
いつの間にか趙雲まですぐ側にいた。
その言葉に高順はにっと笑う。
どう見ても変態です。本当にありがとうございました。
「いや違う、そうじゃないです!そりゃ確かに胸まあいいですよ、もう。戦場だってのに随分余裕ですね!俺にはそんな余裕ないですよ!」
多少は疲労していたがまだまだいける。
「はは、確かに。では、無駄口を叩いた分働くとしますかな!」
「その意気ですよ・・・ふんっ!」
「しっ!」
高順と趙雲の一撃が同時に烏丸兵を捉えた。



~~~烏丸前衛・右翼部隊~~~
「まだ崩せんのか!?」
「はっ、思いのほか抵抗が激しく・・・。」
右翼を率いる武将・・・名は烏延と言うのだが、彼女は焦っていた。
こちらには6000ほどの兵がおり、後衛にも4000程が待機している。
だと言うのに、前方にいる僅か1000にも満たない部隊を抜く事ができない。
白馬義従は自分達にとって恐ろしい相手だ。
だが、目の前にいる部隊は白馬義従ではない。
それなのにここまで時間がかかってしまうとは・・・。このままではこちらの弱みが出てしまう。
騎馬民族である烏丸は短時間で敵を駆逐する事が得意だが、篭城戦や、時間のかかる戦闘などではその真価を発揮できなくなる。
長時間耐える、ということが苦手なのだ。
今はまだ良いが、このままズルズルと時間をかけると士気が低下していく事が解り切っている。
後方の陣も未だに動きが無い。戦闘が始まって数時間がたっている。
今現状でも、少しずつではあるが味方の士気は下がり始めているのだ。
彼女は決断した。
「・・・。伝令に伝えろ、後方に陣取っている難楼にも出撃を要請しろ。私自身も出る!」
「し、しかし単干の命令も無く・・・。」
「あんな奴の下知を待っていては機を逃す!構わぬ、行け!」
「は、ははっ!」
側のものに命じ、烏延も近習と共に最前線へと馬を駆けさせる。
誰が率いてるかは知らないが、それらを討ち取ってしまえば向こうも士気は低下するだろう。
そうすれば数が勝るこちらが押しつぶして終わりだ。
今・・・この地で敗北する事は出来ない。
私達は待ち続けなくてはいけないのだ。
その為に、戦い続けなければならない。
この戦で勝利しなくてはならない。
劉虞に買収された者達は、劉虞の意向通りに楼班に代わる単于を立てようとするだろう。
それでは駄目なのだ。
考えながら烏延は更に進んでいく。
互いがぶつかり合ってる場所まで進み、そこで烏延は信じられないものを見る。
進んでいくこちら側の兵士が、先頭の7人に押し返されていく情景だった。
白馬に跨った、純白の衣装に身を包んだ女。
黒い巨馬に跨り戟を振り回す男。
自らの武器を振るい、その男を討たせまいと奮闘する5人の女性。
その周りにいる兵も、自身らを率いる将を守ろうと戦い続けている。
これだけの戦力差に屈することなく戦っているのは見事なものだ。
だが、彼女にとってはそれはどうでも良かった。
巨馬に跨った男を守るように戦う女性の1人に見覚えがあったのだ。
数年前、楼班に暗殺されかかって行方不明になったあの人に似ている。
次期単于となるはずだった幼い丘力居を守って何処かへと去って行った蹋頓に。
「そんな・・・まさか?」
烏延は信じられない、これは何かの冗談ではないか?と思った。
彼女の姿を確認しようと、烏延は更に馬を進める。
「烏延様、お下がりください!」
兵士が喚いているが、烏延は聞いていない。戦い続けている蹋頓の姿をじっと見る。
「・・・間違いない。」
間違いない。いや、間違えようがあるものか。
7年前とは少し雰囲気が違うが、間違いなく蹋頓だ。
帰って来たのか、楼班から奪われたものを取り返すために。
「長かった。やっと・・・やっと帰って来たのか・・・!」
胸の中にこみ上げてきたものを隠しきれず、声が少し震えた。
ようやくだ。やっとこの時が来たのだ。
そうと解れば、この戦場に用は無い。
彼女は一度下がり、後方の陣に待機している難楼にもう1度伝令を出す。
内容は「機は熟した。」という一言のみ。
「兵に通達だ。我らはこれより後方に下がり難楼の部隊と合流、西へ離脱する!」
「はっ!?しかし・・・」
「後で理由を教えてやる、早くするんだ!」
「は、ははっ!」
その命令が烏丸右翼全体に伝わるのには然程時間はかからなかった。

~~~前衛部隊戦場~~~
蹋頓も戦いつつではあるが引いていく烏延の姿を確認していた。
7年前、最後に会ったときに比べて彼女も随分と大人びたように感じる。
しかし・・・穏健派でもあった彼女がどうして?
楼班に逆らえなかったか、或いはずっと機を待っていたか。
あるいはその両方か。
烏延も自分と同じ齢だ。
彼女も立場上は穏健派であったが、あの当時、年齢が16か17の少女に権限などあるわけもない。
脅威と思われる事がないから暗殺もされなかったのだろう。
烏延が穏健派・・・自分側の派閥という事を楼班は知らなかったのだろうと思われる。
そうでなければ数千からなる兵を預ける事もしないはずだ。
この後しばらくして、高順達最左翼が戦っていた烏丸兵は少しずつではあるが戦場を脱出していき、その後方に布陣していた部隊も共に西側へと離脱。
趙雲・高順隊は何が何だか解らず、しばらくその場で呆然としていた。
彼らだけでなく中央で戦い続けていた烏丸兵と公孫瓚の軍勢の全将兵は何が起こったのか解らなかった。
最初に混乱から立ち直ったのは蹋頓のいた高順隊で、次に趙雲隊が平静を取り戻す。
満身創痍の彼らであったが、隊長である高順・趙雲を先頭に烏丸前衛中央に横から攻撃を仕掛ける。
公孫瓚もここに来て、後衛部隊を温存する理由が無くなったと判断。
後方で待機していた隊に伝令を送り、ほぼ全軍を投入する。
烏丸は右翼全体がごっそり抜けたこともあり、前衛部隊が士気を喪失。
後退するも追いすがる公孫瓚の軍勢に執拗に追撃され、瞬く間に数を減らしていった。

~~~烏丸本陣~~~
「ろ、楼班様!大変です!」
兵士が本陣陣幕に息を切らせて入ってくる。
楼班は、というと呑気に酒を飲んでいた。
「何だ、騒々しい!何があった!」
「それが・・・う、右翼が・・・。」
「右翼?右翼がどうした?敵右翼を殲滅したか!」
「いえ、逆です!こちらの右翼を率いておられた烏延様と難楼様が・・・部隊ごと戦場離脱して・・・。」
最初、その言葉の意味を楼班は理解できなかった。
撤退?右翼丸ごと?
「・・・な、そんな馬鹿な!」
酒臭い息を吐きつつ慌てて楼班は陣幕を出る。
戦いが始まっても陣幕の中に居続けるという時点で・・・何と言うか総大将として駄目なのだが。
陣幕から出て楼班が目にしたのは、誰もいなくなった右翼の陣と、混乱し続ける自軍の将兵達。そして前衛部隊が猛烈な追撃をかけられ駆逐されていく様であった。。
「そ、そそ・・・そんな馬鹿なことがあるか・・・。」
(右翼丸ごと?誰がそんな命令を出した。何故俺の指示無く勝手に動いたのだ?そもそもこいつらはそれを止めなかったのか?)
いや、それよりも・・・兵の数が一気に少なくなったのが問題だ。
右翼全体で1万だが、それがごっそりといなくなった状況だ。
楼班は公孫瓚側の兵数を完全には把握していないが、それでも1万以上は出して来ているだろう。
両軍共に衝突して相当数の被害を出しているが、右翼が離脱したせいで被害が余計に大きくなった。
このままでは支えきれない。
何とかして引かなければ・・・。

~~~公孫瓚陣営~~~
公孫瓚は全軍に突撃命令を下した後、本陣に戻り事態の推移を見ていた。
物見の言葉では「敵右翼撤退」とのことだったが・・・。
理由は解らないがそのおかげで随分と楽になった。
被害は大きかったが向こうはこちらの何倍もの被害を蒙ったのだ。
大戦果、と言っても良い。
「・・・そろそろか。」
開戦から数時間。既に日が沈んでいた。
追撃を仕掛けさせたものの、兵士達の疲労が大きいからかどうも動きが鈍い。
今日1日ですべてが決まるわけではなく、相応の戦果も出せた。
頃合だ、と公孫瓚は考えた。
「兵を引き上げさせる。銅鑼を鳴らせ!」
暫くして引き上げの合図である銅鑼の音が戦場に鳴り響く。
それまで追撃を仕掛けていた軍勢は銅鑼の音を聞き、兵を素早くまとめ引き上げていく。
最初から戦闘に参加していない後衛部隊は尚も追撃をしようとしていたが、一部の烏丸兵が頑強に抵抗し諦めて引き上げていった。
危うい部分もあったが、公孫瓚はこの戦いを制したのである。


その夜、各陣の将の姿は公孫瓚の陣幕にあった。
客将だが、高順と趙雲も呼ばれていた。
今回の戦いは楼班の首こそ取れなかったが大きな打撃を与える事ができた。
公孫瓚が彼らを陣幕に集めた理由、それはこの先の方針を決める為であった。
「さて、皆。これから私達はどう動くべきかな?」
公孫瓚の問いかけに、武将達は自分なりの意見を言っていく。
一度北平に戻ったほうが良い、このまま様子を見る為に待機するべき、このまま一気に攻めるべき。
大体この3つの意見である。
が、途中から罵り合いのような雰囲気になってしまっている。
今回の戦では大した働きが出来なかったくせに偉そうな事を抜かすな、とか他にも色々。
高順らは客将という立場上自分達から口を挟むつもりは無かったし、こんな罵り合いに参加したくも無かった。
それよりも、早く抜け出して隊の再編成をしたい。
趙雲隊にせよ高順隊にせよ今回の戦いで大きな被害を出している。
趙雲隊の死傷者は100人ほど。高順隊の死傷者は60人以上。
両部隊共に大損害だった。
高順も浅手ではあるが傷が多く、立ってるだけで多少辛い。
諸将が罵り合いの様な口論をしているのを横目で見つつ、高順は趙雲にぼやいた。
「趙雲殿・・・。ここって毎回こんな状態なんですか?」
「うむ・・・。今回は特に酷いな。今回は前衛部隊が大きな働きをしましたからな。我等が受け持った敵右翼が突然瓦解したこともある。」
「勿論、こちらもそれ相応の被害を出しましたがね・・・。」
「そうですな。が、そこで好機ができた、と思えば。言い方は悪いが兵の犠牲は無駄ではなかった、というところですな。」
「そのせいで命令が出るのは遅かったとはいえ後衛部隊が出遅れた、か。」
ある程度議論を聞いていると、後衛部隊が追撃を熱心に主張している。
手柄を立て損なった、と考えているからだろう。
前衛を受け持った武将達の意見は追撃・撤退の割合が半々位か。
彼らの議論を公孫瓚は黙って聞いている。
もしかしたら、公孫瓚もどうするべきか迷っているのかもしれない。
「ねえ、趙雲殿。」
「何です?」
「趙雲殿ならどちらを選びます?追撃か、撤退か。」
高順の質問に趙雲は自分の顎を撫でる。
「ふむ、難しい問題ですな。こちらとしても被害は大きかった。しかし、敵の被害はこちらよりも数段大きい。」
「撤退派はこれ以上の被害を出したくない。追撃派は一気に戦局を決めたい、或いは手柄が欲しい。そんなところですね。」
「然り。まあ、手柄云々の思惑は考えずに置きましょう。そうなると私としては・・・。」
趙雲がここまで言ったところで、公孫瓚は高順達のほうへ顔を向ける。
「なあ、趙雲と高順の意見はどうだ?」
これは2人にとって意外なものだった。自分たちまで意見を求められるとは。
必然的に諸将の視線が2人に注がれる。
王門のように「こんな小僧どもに」と思う者もいれば「僅か数百で一歩も引かずに戦った骨のある奴らだ」と思う者もいる。
そういった色々な考えを纏った視線だ。
高順らにとってはどちらでも良い話だが。
趙雲と高順は少し顔を見合わせていたが、同時に意見を言った。
『追撃です。』と。
「追撃か。理由は?」
「このまま追い詰めるところまで追い詰めてしまえば良いのです。時がたてばまた彼らは勢力を盛り返すでしょう。」
「それに、劉虞殿の妨害・・・とまでは行かなくとも、邪魔が入ることも予想されます。楼班の首を取る好機と思いまする。」
「ふむ・・・。」
公孫瓚は悩んだが・・・しばらくして「このまま進撃、楼班の首を取る。」と宣言した。
決め手となったのは趙雲たちの言う「劉虞」の名である。
撤退・追撃、両者共に言い分はあるし、それは公孫瓚にとっても理解できる物だった。
が、やはり問題は劉虞だった。
撤退して、また出陣をしようとしても次は恐らく妨害が入る。
今回は不意打ちのような形で出撃したから止める暇も無かったのだろうが、これからは掣肘するような動きをしてくるだろう。
ならば、強気一本槍で攻めて楼班の首を取って見せれば・・・文句は出るだろうがそれ以外のことは出来なくなるだろう。
反対派は異議を唱えるが公孫瓚は頑として聞かない。
主君がそれほどの意思で決めたのならいつまでも反対と言い張る事もできず、彼らは引き下がった。
部隊の編成を終え次第、また出撃する。
決まったところで軍議は終了、諸将は自らの部隊へと帰って行った。


これと同じ頃に、高順の敷いた陣を守っていた蹋頓は兵を少数率いた女性2人の訪問を受けていた。
彼女らの名は烏延、難楼。
数年前、楼班の元から脱出した蹋頓の帰還をずっと待っていた仲間達だった。





~~~楽屋裏~~~
どうも、高順君は運が良くて負け知らずですね。あいつです。
烏延、難楼・・・誰も知らないような武将が出てきました。
実際には蹋頓を引き摺り下ろして楼班に単干の座を継承させた人々です。
ですが、楼班と蹋頓の立場を逆にしたのだから2人にも逆のことをしてもらおうと考えこのような形になりました。
二人が数千の兵を指揮する立場なのは史実での状況を微妙に反映させた結果です。
というか、1万1千で3万の兵に突撃しかけるなんて無茶。呂布とかがいれば別でしょうけど・・・w
それと、高順君は「この世界の男性としてはチート」に近いのかもしれませんね。
あいつにはこの世界の男性は基本的に一般兵士か内政官ばっか、というイメージがあったりします。
一回の戦闘で20人オーバーも倒せる時点でチートすぎるのですが。
この世界の男性で他にチートなのは・・・張任さんとかが当てはまるのでしょうね。
彼も相当優秀な人だと思います。

さて、先の展開が見えてきたと思いますけど・・・
次くらいで烏丸戦終わらせたいと思ってます。
そしてようやく黄巾ですよ・・・うん、きっとそう(自信無さげ
2話とか3話でするりと行くはずがその10倍近くかけてようやく・・・絶望した!自身の(ry


それではまた!ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第21話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/26 18:44
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第21話


高順は自分の陣幕にいた。
高順だけではない。3人娘・沙摩柯・蹋頓・田豫もだ。
そこに更に2人の女性が加わっている。
難楼と烏延。
先刻まで戦っていた烏丸軍の武将である。
高順が軍議に出かけている間に蹋頓を訪ねて来たのだという。
彼女らは一応、形式的に縄をかけられていたが抜けようと思えばいつでも抜けれるような曖昧な形だった。
高順が帰ってくるまで待った方が良いという判断からだ。
蹋頓から「今、自分は高順というお人に仕えている。」と聞かされた2人は素直に従い、大人しくしていた。
帰還してきた高順は当然驚いた。
だが、すぐに公孫瓚に伝えない。
ある程度事情を聞いてからでも遅くは無いという判断だ。
そこから、質問が始まった。
「えーと、難楼さんと烏延さんですっけ。お二人は烏丸の武将なんですよね。」
「うん。」
「そうだ。」
難楼と烏延は肯定した。
「では、ここを訪ねてきた理由は?」
「蹋頓ねーちゃがいるって烏延が。それで、軍を撤退させて、自分の目で確かめに来たの。」
「だから本物だって言っただろ。」
「んー。本物だった。」
・・・烏延はともかく、難楼は随分とノリが軽い。
凪に対しての佐和・真桜みたいな、そんな間柄かもしれない。
「しかし、貴方達がわざわざ訪ねてくるなんて。驚きましたよ。」
蹋頓は2人に声をかける。
「蹋頓が去ってから・・・いろいろな事がありました。我々は立場上、何も言う事ができず楼班側の武将に・・・。」
「ねーちゃが帰ってくるまでに、自前の兵を持とうと頑張って。そしたら公孫瓚と戦う羽目になっちゃった。」
難楼の言葉に烏延が頷き、言葉を続ける。
「我々が今負ければ、完全に劉虞の望む形で単干を据えられてしまいます。そうなる前に楼班を討たなければならない。そこで攻められてどうしようと思っていたのですが・・・。そこで蹋頓の姿を見つけて。」
「だから訪ねてきた、か。」
ふーむ、と腕を組んで高順は考える。
彼女らが訪ねてきたのは蹋頓が本人かどうかを一応確認するためだろう。
そして、本題は・・・こちらと手を組みたいとかそんなところだろう。
確認をしないとな、と高順はある程度考えてからまた2人に質問をする。
「では質問を続けます。お二人は蹋頓さんの無事を確認しに来たと仰ってますが・・・まだ他に確認したい事はありますか?」
「他・・・とは?」
「別に隠さなくてもいいと思うのですけどね。丘力居ちゃんの事が気になっているのでは?」
高順の言葉に2人はピクリ、と反応をする。
「むしろ、そちらが本命だと思っていましたが・・・。こちらとしても隠すようなものではありませんけどね。」
高順は確認するかのように蹋頓の顔を見つめる。
「あら、そんなに見つめられると困ります。ふふ・・・。」
「・・・そうじゃないんですけど。」
つか、なんでこういう流れにしたがるかな・・・って凪がこっちをむっさ睨んでる・・・!
「はぁ、じゃあ言いますね。結論から言うと無事です。北平にいますよ。」
「それは本当か?」
「嘘を言ってこちらが何かを得られる訳ではありませんしね。そうでしょ?」
もう1度蹋頓の方へ向く。
「ええ、高順さんの言うとおり。あの子は元気にしていますよ。」
「そうか・・・。ならば、これで準備が整ったという事か。」
烏延が嬉しそうに言う。
「・・・蹋頓殿、準備とは?」
「そうですね、彼女達も私と同じく・・・単干の地位を本来あるべき者に戻したいと考えているのでしょう。楼班は知らなかったのでしょうけど、元々穏健派同士ですから。」
「なるほど。」
凪の質問に蹋頓はさらりと答える。
「蹋頓、一度戻って来てくれ。蹋頓の言葉を聞けば我々の指揮下にある兵も従うだろう。」
「楼班ジジィを(規制)して、(中略)で、叩き殺してやるわ!」
なんだか凄まじく不穏当な言葉を繰り出してくる難楼に、その場にいた全員が「大丈夫だろうか・・・」と不安そうな表情になった。
「・・・。叩き殺すかどうかはともかく。提案があるのですが宜しいですか?」
「・・・提案?」
「ええ。あなた方にとっても損にならない話だと思いますよ。」
高順のこの言葉にどうしたものか、と顔を見合わせている烏延達。
蹋頓もどうするつもりなのだろう?と高順を見つめている。
しばらくして決心したのか。
「・・・提案とやら、聞かせてもらおうか。」
烏延はこう言うのだった。

~~~その後、公孫瓚陣幕~~~
「・・・さっき軍議を終えた所なのに、また来るなんて。何か用事があるのか?」
眠ろうとしたところを邪魔されたのか、公孫瓚は少し不機嫌そうだった。
高順は内心で悪い事をしたかな?と思ったがこういうことは早くしたほうがいい。
当然、公孫瓚に頼んで人払いをして貰っている。
「ええ、大事な用件ですよ。・・・3人とも、入ってきて。」
「・・・ん、3人?」
高順に促されて蹋頓、その後ろに従うように烏延達が入ってきた。
「この3人が何か?」
「ええ、話を聞いていただきたい。率直に言います。彼女達と結んでいただけませんか?」
「・・・えーと、いきなりすぎて意味が解らないんだけど?」
ジト目になる公孫瓚だが、高順は構わずに話を続ける。
「今日の戦いで烏丸で突然離脱した軍勢がいたでしょう?それを率いていた武将が蹋頓さんの後ろにいる難楼さんと烏延さんなんです。」
「へぇ・・・?」
「で、その軍勢を蹋頓さんが説得します。その上で結び、楼班を共に討ちたい。こう言ってるんです。」
「・・・いきなりな話だな。それが事実かどうか確認する術もないというのに?」
「ですが、公孫瓚殿にとっては良い機会ではありませんか?楼班の兵は減り、こちらは兵が増える。多少は楽になると思いますよ。」
「それはそうだけど。しかしなぁ。」
公孫瓚は渋るような態度を取る。
同盟、という言葉を言わないところが高順の嫌らしい所である。
やはり多少なりとも利がなければ動かないだろう。もう一押しが必要か。
「公孫瓚殿、最後までお聞きください。良い、と言うのはそれだけではないのですよ?」
「ふむ?」
「まず1つ。先ほど聞いた話ですが張挙・張純は既に死亡しています。楼班に暗殺されたと言う形でね。楼班は最悪、その首を差し出して降伏すれば命は助かるだろうと考えているようで。」
「・・・何だと?」
よし、公孫瓚殿が食いついてきたな・・・。
「偽天子を名乗った首です。この情報だけで大きな意味があるし、取れば勲功にもなるでしょう?2つ目。今日、撤退していった烏丸兵。全部で8000弱ほどだそうです。先ほど言いましたが・・・全てを説得することはできないでしょうが、結べば公孫瓚殿の兵士が増えるということになります。」
「ふむ。」
「そして3つ目。これが一番大きな要因ですが・・・楼班を倒せば烏丸の単干は一時的に蹋頓さんが継ぐのです。その後すぐに丘力居ちゃんに継承するそうですけど・・・。」
「丘力居・・・?ああ、あの娘だな。」
公孫瓚は蹋頓が連れていた幼い少女のことを思い出していた。
「はい。ここで烏丸との繋がりがあれば後々大きな徳になる。そう思いませんか?丘力居ちゃんが蹋頓さんの方針を受け継いだとします。そうなると穏健派を取り込む形になりますよね?」
「成る程な。劉虞殿は恐らく自分の意のままになる単干を仕立てようとする。それをこちらから掣肘するということか・・・。」
「そうです。それと、無事楼班を倒せば・・・。これは、蹋頓さんが言うべきですね。」
その言葉を受け、蹋頓さんはゆっくりと立ち上がる。
「高順さんの言う形で楼班を倒せた場合。我々は正式に公孫瓚殿と同盟を結びます。」
「何!?」
「復興するのにはまだまだ時間がかかるかもしれませんけど・・・何かあった場合、兵力的に支援する事も可能かと。」
「む・・・。」
確かに、これは公孫瓚にとっては悪くない・・・いや、良い話だった。
自分と劉虞の仲は正直に言って相当にこじれている。
もし、劉虞の考えどおりに彼の望む単干が擁立されてしまえば、その兵力を使ってこちらを攻める。ということは充分に有りうる話なのだ。
楼班を討てばそれは大きな勲功になる。張挙と張純の首もだ。
それに「蹋頓と結ぶ」ことに大きな意味がある。
当人が主張するように蹋頓から丘力居に単干の地位が譲られれば、それは「正統」な形なのである。
劉虞が擁立する何者かに比べればよほど説得力のある立て方だ。
その正統な単干に従う者の数は間違いなく多いだろう。
正統の単干と正式な同盟を結ぶ事ができれば。背後を気にする事もなくなり、劉虞も迂闊な事はできなくなるだろう。
蹋頓が説得して付いて来る兵士が千でも二千でも・・・これは大きな利だ。
公孫瓚は判断した。
「今は口約束しか出来ないでしょう。ですが・・・。」
「解った、蹋頓。同盟を結ぼう。」
「・・・え?」
「だから、同盟だ。そちらがきっちり約束を果たしてくれる前提だけどね?」
「も、勿論です!」
このやり取りを見て高順は内心で「よし!」と思っていた。
こういう場合の公孫瓚は随分と決断が早い。
迂闊だととられることもあるだろうが、即断即決、というのはリーダーとして重要な資質でもある。
考えるのは軍師とか、部下の仕事。
その考えを聞いて、実行するか否かを決めるのが主君の仕事の1つ。
その資質を公孫瓚は十分に持っているのだ。
(これで、こちらが勝てる確率は更に上がるだろうな。)
それから先の事を見越して話を続ける彼女達だが、そこはもう高順が関与する話ではない。
高順はそのまま陣幕を出て行く。

この同盟と、後に高順が行った「ある事」のおかげで公孫瓚の運命が微妙に変わる事になるが・・・それはまだ、当人達も知らぬ話だ。

夜が明ける前に蹋頓は烏延達を伴って出立した。
目的地は離脱した兵を待機させている場所だ。
「3日で戻って来てほしい」と公孫瓚に頼まれた為、急がなくてはいけない。
公孫瓚はこの同盟を渋るであろう部下を説得する役だ。
ただ、どういうわけか・・・。
蹋頓に着いていく事になった人々がいる。
高順隊である。
100人ほどの騎兵を連れて、荒野を走り続けた高順らは程なく烏丸兵が待機している場所に到着した。
今は烏丸兵を集めて蹋頓らが説得をしている最中である。
さすがにこれは自分達の仕事ではないと判断して、離れた位置で待機している。
時折、「うおおー!」とか雄たけびが聞こえてくるが・・・どうも、蹋頓の説得は上手く行ってるらしい。
熱気のようなものがこちら側まで伝わってくるのだ。
戦を前にした団結、とでも言おうか。
幾度も大きな戦に出た高順にとっては、身近な感覚である。

「むう、まさか俺たちまでついていく事になるとは。」
「そう仰らず。それもまた隊長の役目です。」
「せやなぁ。部下の事なんやし、高順兄さんが世話せな。」
「全くもってその通りなの。」
「ま、諦めるんだな。」
ぼやく高順に3人娘と沙摩柯はさも当然のように言った。
だが、これは不当な役目と言うわけではない。
途中で何らかの妨害があることは考慮するべきだし、蹋頓はあくまで高順の部下である。
ならば隊長として最後まで付き合う、というのは決しておかしくはない話だ。
なのだが・・・どうも、落ち着かない。
なんかすっごく嫌な予感がするのだ。
こういう時の自分の悪い予感とかは凄まじい的中率を誇る。
考えたところで蹋頓が幾人かの兵を引き連れ高順のもとまでやってきた。
「どうでした?」
「大成功です。」
「それは何よりです。従ってくれる兵の数はどれくらいになりました?」
「全員です。」
「それは何よrブフゥッ!?]
「あん、汚い・・・。」
全員って・・・凄まじいですよそれ?
8千弱の兵士ですよ?それをこんな短期間で説得って・・・蹋頓さん、何をやったんだ。
そんな表情をする高順の顔を見て、蹋頓が笑う。
「うふふ、そんな顔をしなくて宜しいではありませんか?彼らも私の意見に賛同してくれただけです。特別何かをした、というわけではありません。」
柔らかく言う蹋頓だったが、高順は心の中で「この人、魅力もチートなんだな。」と確信するのだった。
正統単干の血筋と能力は伊達じゃないってことかもしれない。
その後、また急いで公孫瓚の元へと戻っていく高順達だったが・・・その後ろに8千弱の兵士がつき従う形となってしまい、凄まじく落ち着かない気持ちを味わう羽目になった。
これが嫌な予感の正体か・・・と思う高順だったが、それは外れだった。
実際にはこの後に起こる事が「嫌な予感の正体」なのだが、それは後の話に。

その後、3日もせず帰還した蹋頓の部隊を(驚きつつも)公孫瓚は自軍に編入。
編入と言っても混成軍にはせず、烏延達に7千ほどを率いてもらって左翼に配置する。
本来なら蹋頓が全部率いるはずなのだが・・・その蹋頓はある理由から千を率いて東へと向かって行くのだが、そこに高順・趙雲の軍勢500ほども編入されていた。
そして、公孫瓚全軍1万のうち7千を中央、3千を右翼に展開。
左翼6千は、時機を見て2千ほどを烏丸本陣に進ませ、楼班が北へ逃走するのを妨害する役割がある。
これらは軍議で決まったことだが、凄まじい早さで段取りが決められた。
王門が反対しようとしていたが「うるさい!」という公孫瓚の一喝で黙り込んでしまった。
その王門は右翼前衛に配置されている。
彼に限らず、前回の戦いで後衛に回された武将は今回は前衛に回されていた。
そして公孫瓚らは北方へと進軍、烏丸軍を捕捉し攻撃を開始した。
公孫瓚・蹋頓烏丸同盟と楼班烏丸との決戦である。

ちなみに、布陣図を図にすると・・・

     楼班                        
  右翼 中央 左翼                     
   ↓  ↓  ↓ ↓ ↓                 
   ↑  ↑  ↑ ↑ ↑         
  左翼 中央 右翼
    公孫瓚                        

ごく普通の形だが。


    
    /↓
   /
  /→ 楼班                        
/右翼 中央 左翼                     
│  ↓ ↓  ↓  ↓ ↓                 
\ ↑  ↑  ↑ ↑ ↑         
  左翼 中央 右翼
    公孫瓚      

最終的にこのような形になる。

高順らはこの陣のずっと東にいるという形だ。  
彼らのいる東には遼東・・・公孫度という男が治める地がある。
そこに逃げられる前に勝負をつけるべきだと公孫瓚は考えているが、楼班が北へ逃げる事を考慮しなければいけない。
その為に回り込んでの本陣強襲をしなければいけない。
そして、逃亡する経路を押さえる高順隊。
公孫瓚の右翼が少ないのも、そのあたりを考えての事だった。


さて、高順達。
楼班が公孫瓚の目論見どおり東側へ逃げてくる、という前提を基にして勢を2つに分ける事にした。
逃げてくるであろう楼班を遮るのは蹋頓と、彼女の率いる千の烏丸兵。
高順達と趙雲の500は退路を遮る、という役割。
今回、最後に手を下すべきは蹋頓だから当たり前と言えば当たり前だ。
烏延らの話では、楼班の元にいる正規の烏丸兵は少ないのだという。
現状で楼班の兵力は1万7千ほど。前回の戦いで3~4千ほどの兵力を失った事になる。
現状では張挙らから奪った兵力1万と烏丸兵7千ほどなのだそうだが・・・どうも、その1万が役に立たないらしい。
常に後衛にいて前に出たがらないのだそうだ。
戦う気がないならさっさと降伏すればいいのだが・・・偽天子のもとで戦った兵なので、降伏しても許してもらえないと思ってるのだろう。
それは公孫瓚の気持ち1つで変わる事だ。
人の良い彼女なら「まあ、首謀者とそれを扇動した奴は死んだのだし・・・。」と許してしまいそうな気はする。
「ふむ、そろそろ烏丸と衝突したころですかな。」
太陽の昇り具合を見つつ趙雲は高順に話しかける。
「さあ、どうでしょうね。俺達は待つのが仕事ですからね。」
「おや、高順殿は伯珪殿を心配しておられないので?」
「んー・・・心配しないと言うか、心配をする必要がないと思ってるだけです。」
それは偽りの無い本心だった。
正史や演義では袁紹にボロボロにされる白馬義従だが、高順の目から見て彼らの力量は中々のものだった。
よく言えば「万能」と言えなくも無いが悪く言えばどこか尖った所が無い。
これこそは、という凄みが無いのだ。
曹操の軍勢などに比べれば装備・錬度は一歩劣る。
十分だが何か足りないような気がする。
そんな白馬義従でさえこれだけ強いのだから西涼騎兵の強さはどれほどのものなのやら、と思う。
「高順兄さん。」
物思いに耽っていた高順だったが真桜の声で現実に引き戻される。
「伝令から報告やで。「我、優勢に事を進めり。」やって。」
「そっか、ご苦労様。伝令さんを休ませて上げてね。」
「ほいな。」
高順らがこんなやり取りをしている時、公孫瓚は烏丸左翼を敗走させていた。

実際、公孫瓚の軍勢は優勢だった。
まず左翼に配置した烏丸だが、彼らは公孫瓚が思った以上の働きを見せていた。
今まで何度か烏丸と戦ってきた公孫瓚だったが、「これがあの烏丸か?」と思うほどの勇猛さを見せ付けた。
これが本来の彼らの戦闘力だった、ということだ。
楼班は部下の本来の力を全く引き出せていなかった、それだけなのだろう。
指揮官が有能であれば烏丸は強い。
それを如実に表した戦いだった。
楼班側は何故同じ烏丸兵が公孫瓚に味方しているのかと混乱をきたした。
そこへ追い討ちをかけるように宣言をしたのだ。
「蹋頓様がご帰還なされた!」と。
それが嘘か本当かは一兵士ではわからない。
何故目の前にいる同じ烏丸兵は公孫瓚に味方しているのだろう?
もしかして本当に蹋頓様が?
その疑念が広がり更に混乱の度合いを深めていく。

左翼が思った以上の働きを見せている事に公孫瓚は感心していた。
蹋頓、という名前を出しただけであれだけの混乱を見せる。
蹋頓という女性が烏丸でどれだけの影響力を持っているか。
それを見せ付けられる形になった。
右翼は少々苦戦しているようだが、すでに敵左翼を崩した烏延率いる左翼部隊が少しずつ中央部隊へ突進している。
そして楼班本陣を強襲する難楼も手筈どおりに事を進めているようだ。
このままいけば中央部隊も崩れ、右翼へ救援もいけるだろう。
そのまま楼班を東へ向かわせれば蹋頓も本懐を遂げる事ができる。
「蹋頓・・・か。」
彼女が単干になれば、お互いにとって良い関係が築かれるだろう。
敵中央部隊の動きを見つつ、勝利した後のことを考え始める公孫瓚だった。

~~~高順達の待機場所~~~
「・・・来ないの。」
「まだ日は落ちてないぞ?しっかりを気を張れ。」
待ちくたびれた感のある沙和を凪は注意した。
「うー。でも待ちくたびれたの!」
「それは根性が足りないだけだ。」
「でも、日の当たらない岩場でじーーーーっとしてるのは暇なの・・・。」
「・・・それは私も思うが。」
実際、彼らが待機をしている時間は相当長い。
気を抜かないようにしなければならないが長時間気を張り詰めておく、というのは難しいものだ。
高順らから更に東に離れた蹋頓は目を閉じている。
仇敵である楼班を討つ、という思いが彼女を昂ぶらせているのか。
それともその昂ぶりを押さえつけようとしているのか。
そこまでは解らないが、蹋頓はじっと待ち続けていた。

~~~数刻後~~~            
「ハッ・・・ヒッ・・・」
楼班は供回り300ほどに守られ戦場を離脱、東の遼東を目指していた。(これは公孫瓚の思惑通りに行った
「くそ、公孫瓚めが・・・。何故これほど執拗に追撃をしてくる・・・?」
偽天子と組んで乱を起こした以上追われて当然なのだが、こういった自己中心的な人物にはそのあたりは解らないようだった。
その上、烏延らが兵士を引き連れて公孫瓚に投降している。
実際には投降ではなく同盟なのだが楼班がそのあたりの事情を知るはずもない。
烏延らが良いのであれば、と考え公孫瓚に使者を送り降伏の意思を伝えたがあっさりと拒否されてしまい、逃げる以外の手段が無かった。
兵を失い、行き場所も失い・・・今の楼班は単干ですらない、ただの愚かな老人だ。
その楼班は更に東へと走っていく。
馬も無い徒歩での逃避行だ。
どれだけ逃げたか、それすらも解らないがこのままなら何とか逃げれそうな気がしていた。
いや、何とかして逃げなくては。
単干になって権力を振りかざしたい。その個人の欲望から始まった暗殺劇。
先代の単干をはじめ、多くの人を殺しやっと得た地位だったのだ。
遼東の公孫度に支援を求めてもう1度烏丸を、そして単干の座を取り戻すのだ。
だがそこで。
前方で烏丸兵が列を成して待機しているのが見えた。
「お、おお・・・助かったぞ・・・。」
味方だと思って安堵した楼班だったが、すぐに知ることになった。
彼らは自分の命を狙った「敵」であるという事を。
兵たちが一斉に自分達を囲うように動き始めたのだ。
それを見た楼班が取り乱す。
「な、何事だ!?楼班を知らんか!?単干だぞ!」
逃げようと後ろを見れば、恐らくは公孫瓚の部隊だろう。
500ほどの騎兵が退路を塞ぐために動き始めていた。
「くっ・・・ぜ、単干に逆らうと申すか、お前ら!?」
楼班を囲む兵士達は応えることなく武器を構え、威圧をする。
それに対して、楼班も、楼班の率いる兵士も狼狽するばかり。
そこへ楼班らを取り囲む兵士達が道を開ける。
無論楼班の為ではない。
後ろから歩いてきた女性に道を開けたのだ。
その女性の名は蹋頓。
先代の単干を仮に継承した人である。
「あら、お久しぶりですね。単干様?」
辛らつな物言いをする蹋頓に、楼班は怒りの表情を向けるが・・・すぐに真っ青になった。
「な、蹋頓!?何故お前がこんなところに!?死んだはずではなかったのか!」
「驚くのも無理は無いでしょう。暗殺したと思った女が生きていたのですから。暗殺者を買収した甲斐があったというものです。」
「なっ・・・。」
蹋頓は楼班の周りにいる兵士に「下がりなさい」と命令を下す。
その言葉で兵士達は武器を捨て、その場で跪いた。
最初からそのつもりだったのかどうかは解らないが、蹋頓の持つ静かな気迫に気圧されたようにも見えた。
「き、貴様ら!?立て!戦え!」
楼班が叫ぶが、その声に応える者は誰一人としていない。
これが蹋頓と楼班の差なのだろう。
恐らく、蹋頓は単干代理であった時代に多くの人々に慕われていたのだろう。
政治、或いは武の才覚を見せたのだろうか。
彼女を知る人々はその才能まで理解していたのかもしれない。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。」
「ま、待て!?お前は夫を殺すというのか!?」
そう叫んだ楼班の耳を蹋頓は槍の穂先で貫いた。
最初何が起こったのか解らない楼班だったが、すぐに耳から血があふれ出し叫び声を上げてその場をのた打ち回る。
「いっ・・・ぎゃああああぁっ!?み、みみみみ、耳が!血がぁっ・・・ぎあぁあ・・」
「夫?あなたが私に夫として何かをしてくださったことがありました・・・?」
「ひっ・・・ひぃぃ・・・耳がぁぁ・・・。」
「あなたが私にした事。私の兄を謀殺し、近しい人々を次々に死なせて・・・。私から大切なものを奪っていった!それが夫?笑わせないで!」
「ひっがぁ・・・ごめ、ごめんなさひ・・・。」
「うるさい!」
「ぎゃがぁっ!」
蹋頓は引きずり倒した楼班の顔を思い切り蹴り飛ばした。
「た、頼む・・・こ、これをやる、だから許して・・・。」
痛みと涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした楼班は持ち運んでいた2つの桶を差し出した。
中には塩漬けにされた張挙と張純の首が入っているのだろう。
それを見せられた蹋頓は怒りでどうにかなりそうだった。
たとえ一時的ではあれ、単干を名乗った者がここまで命乞いをするとは。
蹋頓は桶の中身を見ることもなく、怒りに任せて桶の1つを蹴り飛ばした。
がごっ、という音が響いて凄まじい勢いで桶が飛んでいく。
その先には高順がいて・・・

そのまま高順の頭に「すぽっ」と。
逆ホールインワンを達成したのだった。







「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙が辺りを支配する。
塩と生首の入った桶を頭からすっぽりと被った高順。
それを見て硬直する兵士達。
そして・・・
「のおおおおおおっ!?かぶった!中身かぶっt生首きもっ!!!?」
「ぎゃあああっ!?塩こっち飛んできたの!?気持ち悪いの!」
「汚なっ!高順兄さんこっちこんといて!?」
「おい、まるで隊長が汚いみたいな・・・ああああっ!?」
塩やら何やらを思い切り引っかぶった高順と、その周りで大騒ぎする3人娘達。
沙摩柯と趙雲は高順を盾にする形で後ろに下がったため何1つ被害を受けていなかった。
「た、隊長!落ち着いてください!すぐに取りますから!」
「ああああっ!誰か、早く取ってぇぇぇぇぇえぇぇっ!!」
「お、おい、誰か!隊長が大変だー!?」
楽進や、兵士までもが混乱しおたついている。
先ほどまでの緊迫した空気が一点、一箇所だけ緩い空間が作り出されていた。
流石に蹋頓もこれは不味いと思い、心の中で「ごめんなさい・・・」と高順に謝っていたが。
それはともかく、楼班はまだ命乞いをしていた。
どうか、どうか命だけは・・・。という言葉を繰り返している。
そんな楼班を見下していた蹋頓は、自分の中の怒りが不意に冷めていくのを感じた。
こんな男に、兄は、仲間は殺されたのか。
こんな男のせいで私と丘力居は7年も苦しんだのか。
自身の実力を弁えぬ男が無用な戦いを引き起こして、沢山の同胞を死に追いやったのか。
多くのものを引き換えにして、代価として得るのがこんな男の命なのか。
それを思うと、不意に空しくなってきた。
「・・・。1つ、選ばせてあげますよ。」
楼班を見下ろしたまま、蹋頓は語りかける。
「へっ・・・?」
「誇りある自決か。それとも私の手で一瞬で死ぬか。好きなほうを選びなさい。」
この言葉に楼班は震え上がる。
「い、嫌だ・・・死にたくない・・・。」
「ならば手足の腱を切り、目と喉を潰して雍狂の地に放り捨てられるか。死ぬよりも苦しいでしょうね。」
「う・・・。」
「さあ、どちらにしますか。選びなさい。」
この言葉に自棄になったか楼班は剣を抜いて立ち上がり、蹋頓に向かっていく。
「うわあああっ!」
雄叫びと共に斬りかかるが、蹋頓は慌てる事も無く槍を横に薙ぐ。
ピゥッ、という音が聞こえた瞬間、楼班の首が胴から刎ね飛ばされていた。
数瞬後、身体が崩れ落ちほぼ同時に刎ねられた首も地に落ちた。
その光景を見ていた誰もが声1つ出さずに立ち尽くす。
静寂の中、蹋頓は物言わぬ死体を見下ろしていた。
感情など何処にもない、そんな表情で。
そんな表情を見せる彼女のことが心配になって、(桶を取った)高順は蹋頓の側へと歩いて行く。
いや、高順だけではない。
3人娘も、沙摩柯も、趙雲も。
今まで見た事の無い彼女の無機質な表情に誰もが心中に不安を抱いたのだ。
「蹋頓さん・・・?」
「・・・?何ですか?」
高順の呼びかけに応えた蹋頓は小首をかしげていた。
「どうしました?」とでも言うように。
もしかして、自決でもしようとしたのではないか、と不安に思っていたがどうもそうではないようだ。
そして、蹋頓は再び楼班の死体を見つめる。
「人を死なせる覚悟はあっても自分が死ぬ覚悟が無い。最後の最後まで愚かな男だった・・・。」
「・・・。」
彼女の言葉は高順にとって辛い物だ。
高順も「自分の死亡フラグを折る」ことを目的にはしているものの―――
その為に人を殺して来た。だからこそ今この場所に立っていられる。
蹋頓の言葉を借りれば、高順もまた「死を恐れる愚かな男」なのである。
「さあ、帰還しましょうか。公孫瓚殿がお待ちになっているでしょう。」
高順の心中の懊悩など全く気がつかず蹋頓は努めて明るく言う。
そして、少し。本当に少しだけ遠くの何かを見つめるような表情をする。
「兄上、皆。敵は討ちました。終わりましたよ・・・。」
落ちかけていく夕日を見やり、蹋頓は逝った人々のことを思い、静かに呟くのだった。











~~~楽屋裏~~~
俺・・・土日でもう1度更新できたらこの作品打ち切るんだ・・・
嘘ですゴメンナサイあいつです。(挨拶

このような駄作品を読んでいただいている皆様の中には「(ある程度)シリアスにやってんのに無駄にギャグ入れるなよ」と感じられる方もいらっしゃると思います。
これに関してはゴメンナサイ、としか言いようがありません。
シリアスが続くのがあいつには耐えられないのです、アレルギーです(ぉ
しかし、生首はいった桶をかぶるとは。
本気でかっこ悪いですね、高順くん。
それともう1つ、本文で出てきた「雍狂の地」ですが・・・
WIKIのをそのまま転載します(ナヌ

「雍狂の地というのは、山はなく、砂漠と水沢と草木が生えるばかりで、マムシが多く、丁令の西南、烏孫の東北に当たる。そこに追いやって苦しめるのである。」
こんなとこに手足と目を壊されて放り捨てられたら・・・やはり、一思いに死んだほうがマシ、なんでしょうね。


さて、北平烏丸編、やっとこ終わりが見えてきました。
次で烏丸編も終了です。・・・うん、きっとそう。
その次に黄巾がやってきますが・・・どうなることやら。

それでは、また次回にお会いしたしましょう。(・×・)ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第22話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/28 21:14
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第22話

楼班を討ち、張挙・張純の首も取った公孫瓚は意気揚々と北平へ帰還した。
公孫瓚はすぐに3者の首を洛陽へ送る。
その首は「天子を僭称し後漢朝へ反逆した罪人」として晒し首にされるであろう。
こうして、楼班・張挙の起こした乱は終結。
僅かな時間ではあるが北平は平和を取り戻す。
この乱を(武力を用いて)ほぼ独力で押さえた公孫瓚の声望は高まった。
後漢朝は公孫瓚を中郎将に昇進させた上で都亭侯に任じてその功績に報いたのだった。

~~~北平・政庁のとある一室にて~~~
「えー、それでは。今回も無事に勝利して全員生きて帰って来れました。それら諸々を祝しまして・・・。」
『乾杯!』
杯を掲げて中に満たされている酒(高順や子供らは水)を飲み干す。
その一室にいるのは高順・3人娘・趙雲・沙摩柯・蹋頓・丘力居・臧覇。そして閻柔と田豫も。
彼らは戦勝祝いを行っていた。
本来ならば酒場を借りたかったが、今頃同じように祝杯を挙げている兵たちに先を越されてしまい場所が無かった。
そこで、無理を言って公孫瓚に全員が入れるような部屋を1晩だけ貸してもらう事にしたのだ。
その公孫瓚は現在他の部屋で自軍の主だったものと宴会をしている。
「遠慮せずに参加すればいいじゃないかー。」とぼやいていたが、高順らは客将という身分だし、蹋頓以外は主だった戦績を挙げているわけでもない。
あれだけの戦力差に退かず、一人で何十人と打ち倒したのだからそんな事もないと思うが名のある将を討った訳でもない。
何より、蹋頓や丘力居を連れて行くと王門が何をしてくるか解らない。(ちなみに王門は烏丸との決戦の折、突撃した瞬間に落とし穴に嵌って身動きが取れないまま戦が終わったらしい)
そんな理由があって断りを入れていた。
「なーんやぁ、高順にーさん・・・全然飲んどらへんなー。」
「んー、お酒に弱いって前に言ってたの。」
「そんなん関係ないない。飲んでしもたら・・・あれや、喉元過ぎれば何とやら、や!つーわけで、飲め。」
「・・・何が何だか良くわからないよ、真桜。しかも何で命令口調?って、やめてくれ、俺酒駄目だから!」
「そうですぞ、無理やりは良くありませぬな。自発的に飲むように追い詰めればよいのです。」
「何か不穏な発言をしている人が!?」
いきなり酒に呑まれて真桜は高順に絡みだす。
思い切り腕を肩に回し、高順の杯に酒を注ごうとしている。
別段悪気があるわけでもなく、単純に酔っ払っているだけだ。
星は酔っているわけではないが、高順を弄る事が楽しいからか、こういった話題には自分から参加してくる。
そんなやり取りを見て、凪がやんわりと止めに入る。
「おい、真桜。隊長は酒が駄目だって前から言ってるだろう。沙和も見てないで止めろ。あと、星殿も!」
「えー、面白いから止めたくないの。」
「せや。酒っちゅーもんは飲んで呑まれての繰り返しで強くなるもんや。つうわけで飲めー。飲むんやジョー。」
「・・・俺は下戸なの。つかジョーって誰だよ・・・。」
はぁ、と高順はため息をつき周りを見る。
閻柔と田豫は沙摩柯、蹋頓に異民族の話を色々聞いてるらしい。
自分達の知らない文化を聞いて目を輝かせている。好奇心旺盛なのだろう。
そして丘力居達は・・・。
「にゃはははははは、丘力居ちゃんが6人いゆ~~~・・・。」
「うふふふふう・・・高順にーちゃんが蹋頓おねーちゃんと・・・うふふふふふ・・・・・・。」
完全に酒に呑まれていた。
「おおおおい!誰だ、この子達に酒飲ませたのー!?」
「うちが飲ませた(キリッ」
「あほかああああっ!?」
こんな感じで、割と楽しくやっている高順達であった。

夜も更け、ほぼ全員が酒に呑まれて床で寝たり自室に引き上げていく頃・・・高順は蹋頓に誘われて「飲み直し」をしていた。
蹋頓は自分の杯に注がれた酒をつーっと飲み干す。
(この人も酒豪だよなぁ・・・。これで何杯目だろう。)
高順の元には酒に強い人ばかり揃っていた。
沙摩柯も異様に強いし、3人娘や趙雲、閻柔や田豫も相当なウワバミだ。
自分一人が酒に弱い。
そんな理由もあって、本来ならば「飲み直し」など絶対に受けないのだが、今回は受けるだけの理由があった。
蹋頓と丘力居。
彼女らと別れなければならない。
理由など考えるまでもない。
丘力居は次代の単干に。蹋頓はそれまでの中継ぎとして。
彼女達は自身の責務を果たすために烏丸へと帰らなければならないのだ。
今も烏延と難楼が蹋頓らの帰りを待ちわびている。
本来であれば蹋頓らはそのまま残留するべきであったが、本人達と高順らの希望によって北平へ帰って来た。
明日になれば、烏延らが手配した1000ほどの兵が迎えに来るだろう。
公孫瓚との同盟云々はその後の話だ。
今回の酒宴は蹋頓達の送別会、という側面があった。
その為に付き合っているのだが・・・一向に潰れない。
高順は果実酒を口にしているが、2杯ほどで酔いが回ってしまって上手くものを考える事ができない。
「うーっ・・・よ、酔いが醒めない・・・。」
「ふふ、本当に弱いですね。」
「皆が強すぎるだけです・・・。」
高順の言葉に笑いながら頷く蹋頓。
「さあ、まだ潰れないでくださいね。この一杯が最後なんですから。」
「うぇ?最後?」
「ええ。最後です。」
そう言って蹋頓は高順と自分の杯に酒を注ぎ始める。
「これは誓いの杯。貴方達と私達がいつの日にか、再開をする。その約束のための誓いの杯です。受けていただけます?」
「・・・。」
そんなことを言われれば断れる訳がない。受けるのが筋と言うものだろう。
高順も気持ちを切り替え、その杯を受け取る。
「いつか必ず。」
「またどこかで出会うために。」
そう言って二人は杯を掲げて一気に飲み干す・・・はずだった。
少しだけ酒を口に入れた高順が咳き込んだのだ。
「うぉ、げほっ、げほっ!?こ、このお酒・・・老酒!?蹋頓さんこんなのをすいすいと飲んでたの!?」
「・・・ぷは、あら、飲み干してないではありませんか?」
少し不満そうな表情を見せる蹋頓。
「こんな強い酒飲めませんよ!」
「ふぅ、仕方ありませんね・・・。」
そう言って蹋頓は高順の杯を奪い注がれた酒を口に含む。
そして・・・








高順に口付けた。
「・・・!?」
「んむっ・・・ちゅふぅ・・・」
蹋頓は高順の頭を両手で掴み、逃げられないようにしてそのまま口移しで高順の口の中に酒を送り込む。
何が起こったか解らない高順はそのまま老酒を飲み込んでしまい・・・すぐに昏倒した。
「・・・あら?」
「うゅぅうああ・・・さ、サボテンの花がぁ・・・うぐっ・・・。」
「ここまで弱いなんて・・・。」
これでは誓いの杯というか、誓いの口付けである。
まあ、仕方が無いか。
他にも色々と楽しみたかったのだけど。
思い直し、蹋頓はまたチビチビと酒を飲み始めた。
彼女は楼班のもとから脱出した後の数年間の事を思い返していた。
幼い丘力居を連れて北平まで逃げ延び、そこで公孫瓚と出会った。
そして徐州まで逃れ・・・地獄の日々が始まったのだ。
異民族と言うだけで差別され、働く場所さえ満足に得られない。
沙摩柯のように武勇を発揮できる場所で働く事ができればよかったのだろうが、その時はまだ丘力居が赤子である上、傍を離れにくい。
もし自分が働けなくなるような大怪我を負ってしまえば・・・それこそ丘力居を養う事が不可能になる。
いつの日か兄の仇を討つ。
何があろうと、例え泥をすする様な真似をしてでも生き延びなくてはいけない。
そして彼女は身体を売る事で生計を立てた。
どうしても安く買われてしまうのは仕方が無い。
だが、その7年間で心も身体も磨り減っていった。
夜中に丘力居が寝付いた後、どうして自分がこんな思いをしなければならないのか、と涙を流す事も多々あった。
売女と蔑まれ、石やら何やらを投げつけられ傷つけられる事だってあった。
傷ついた身体を信念だけで引き摺って、ボロボロになっても彼女は働き続けた
なんとか丘力居も自分も生き延びる事はできたのだが相当に無茶をしすぎたのか。
蹋頓の身体は女性としての機能・・・子を成す能力を完全に失っていた。
女性としての幸せを得る事もできないことを理解した蹋頓は自分の人生に絶望感を覚えた。
近くに同じような境遇の沙摩柯がいなければ。
彼女と友人になっていなければ蹋頓はもっと早くに潰れていただろう。
高順達と出会うきっかけを作ったのも沙摩柯だ。
廃屋で、文字通り丘力居と身体を寄せ合って過ごしていた蹋頓は「いつまでこんなことを続ければいいのだろうか・・・。」と、鬱々とした思いを抱えて眠りに着こうとしていた。
そんなときに沙摩柯がやってきたのだ。
「我々のような異民族でも差別しない奴がいる。お前の体のこともあるし、丘力居だってこのままでは死ぬかもしれない。騙されたと思って一緒に来ないか?」と。
蹋頓はこの数年間で男性に対しては人間不信に近い感情を持っていた。
自分の身体を壊されたのだから当然と言えば当然だ。
しかし、沙摩柯の言う事も解らないではない。
このままでは自分はともかく、丘力居がどうなるか心配だった。
考えた末に、一緒に行く事を決めた。
そして蹋頓は高順達と出会う。
彼らとの暮らしは、蹋頓にとって久々の人間らしい暮らしだった。
最初こそ警戒をしていた蹋頓も、彼らに悪意も邪気もないと理解してすぐに本当の家族同然の仲になっていく。
誰も自分達を差別せず、同じように食事をして、肩を寄せ合って眠りに着く。
たったそれだけの、人としての当たり前の生活。
蹋頓はその当たり前を7年もの間、完全に忘れていた。
丘力居も高順達によく懐いていたし、たまに高順の寝所に入り込んで彼を困らせたりと歳相応の少女らしい振る舞いをしていた。
彼らと過ごした半年程度の時間は、彼女の人間らしさを十分に取り戻していたのだ。
そして今、おかしなことに自分は大願を果たしてここにいる。
形として高順らを利用してしまうような流れになってしまった事が心苦しい。
考えつつ、蹋頓は酔いつぶれて眠ってしまった高順の髪を、何とはなしに撫でてみる。
自分はよく高順に気があるような発言や振る舞いをして彼を困らせている。
彼の初心な反応を見るのが好きだったし、それに反応する凪を見て楽しんでもいる。
だが本当に彼に気があるのか無いのか?と言われればどうなのだろう?
あるか、無いか。どちらと聞かれれば・・・恐らくは「ある」のだろう。
彼のどことなく子供っぽいところや、普段は駄目な人なのに戦になると割と頼りになるところとか。
そして、彼の優しさにも惹かれるものがある。
ただ、内心で恐れるものがあってそこで踏ん切りがつかない。
子を残す事ができない身体で彼と関係を持ったところで一体何がどうなるというのか。
嫌われるのではないだろうか?
どうもそんなことを考えてしまうのだ。
だが、いつか自分で決めなくてはいけないときは来る。
逃げる訳ではないが、まだ自分の気持ちは保留にしておこう。
きっと、遠くない未来に彼らと再会を果たす筈だ。
その時までに・・・自分の気持ちを整理しておこう。
そう考えた蹋頓は、高順の隣に寄り添うような形で床に寝そべった。
朝起きた時の高順の反応が楽しみだ。
愚にも着かぬことを考えて、蹋頓は目を閉じて眠りについた。



明朝、高順は蹋頓の胸の中で窒息死しかかっているのを凪に見つかり活を入れられていた。(云われない暴力的な意味で


~~~北平、城門にて~~~
烏延が手配した烏丸兵1000人ほどと難楼が蹋頓と丘力居を迎えに来ていた。
高順達は勿論、公孫瓚まで蹋頓と丘力居を見送るためにわざわざ足を運んでいた。
「元気でな、蹋頓。」
「あなたも。高順さん達のことを頼みました。」
「言われるまでもないな。」
蹋頓と沙摩柯は拳を叩き付け合う。
丘力居も臧覇とまた会う約束をしていた。
3人娘も、他の皆も、気持ちは変わらない。
そこへ、難楼が「お二人とも、そろそろ・・・。」と遠慮がちに言う。
「ええ、解りました。・・・それでは皆さん。またお会いしましょう。」
そう言って蹋頓は馬に乗り前に丘力居を乗せようとする。
だが、そこで高順が「あ、ごめん。少しだけ待ってて。」と言い丘力居を呼び寄せる。
「どうしたの?高順にーちゃん・・・?」
「ん、これを渡し忘れたと思ってね。はい。」
そう言って高順が手渡したもの・・・それは木で出来た剣。木剣だ。
「前に買い物に行ったときに欲しがってたよね?それで買っておいたんだけど・・・渡そうと思ってて忘れてたんだ。」
高順は丘力居の前でかがみ込んで同じくらいの目線にあわせる。
元気でね、と木剣を渡して頭を撫でる。
そこで、我慢していた糸がぷっつり切れたのか・・・丘力居はぽろぽろと涙を流し始める。
「え、ちょっ!?なんで?何で泣いてるのー!?」
「あー、高順にーさんが女の子泣かしたー。」
「泣かせたのー。」
「ふむ、かような幼子まで・・・罪な男ですな。」
「お前ら・・・。」
「解ってて隊長を困らせてるだろ・・・?」
そんな周りの混乱など気にもせず、丘力居は高順に聞いてくる。
「また・・・会えるんだよね?」
「・・・。」
この戦乱の時代。死はすぐ身近にある時代なのだ。
無事でいられる保障など何処にもない。
これに答えるのには相当勇気が要る。
高順という人物の最後を知っているだけに、約束などしない方が良いのかも知れない。
しかし。
「うん、きっと会えるよ。」
「本当に?」
「ああ、本当だ。平和な時代になったら。必ずまた会える。」
「・・・うん。約束だよ?」
「ん、約束だ。」
高順はもう1度丘力居の頭を撫でる。
丘力居も、涙を流さなかった。



こうして蹋頓達は自分達の居場所へ帰っていった。
だが、彼女達の戦いはまさにこれから始まるのだ。
烏丸を立て直すために。平和な時代のために。そして。
約束を果たすために。





蹋頓らと別れて数週間後、北平を訪れる集団があった。
3人の少女を筆頭にした100人ほどだ。
「ふぇ~、やっと着いたね~。」
胸の大きさに比例して頭の軽そうな少女が呟く。
信じられないが彼女がこの集団を率いているのだろう。
「そうかー?けっこう早く着いたと思うのだ!」
「早くかどうかはともかく・・・。公孫瓚殿にお目通りをしなくては。」
それに追随する二人の少女。
1人は・・・なんというか、普通のお子様だ。
だが、その小柄な身体には不釣合いな大きな旗のようにも見える矛を抱えている。
もう1人は美しい黒髪をポニーテールのような形で纏めており、手に持つ槍・・・いや、槍ではなく青龍刀だ。
その青龍刀を握る手に力を込める。
どちらかと言えば、この黒髪の少女のほうが統率者として相応しい気迫を持っている。
「うん。白蓮ちゃん元気にしてるかなー。」
「それも会えば解るでしょう。さ、行きましょう、桃香様。」
桃香と呼ばれた少女の名は劉備、字を元徳。
黒髪の少女は関羽、字を雲長。
幼い少女は張飛、字を翼徳。
後に多くの仲間に支えられ益州にて蜀漢を建ち上げる3人の義姉妹たち。
そして正史では呂布に死刑宣告も出したも同然の・・・高順にとっては唾棄すべき存在。
そんな彼らの出会いがすぐそこまで迫っていた。







~~~楽屋裏~~~
最初はただの弱気なお姉さんだったのに!明らかに性格変わってるよ!責任者出て来い!・・・本当に日曜日に1話UPしてしまったあいつです。

今回は誰も「知りたくねぇー!」な蹋頓さんの過去話がメインでした。
・・・・・・なんでこんなへヴィーな過去になってしまったか・・・あいつにも全く解りません。
おかしいなぁ、なんか1人歩きしてるよ蹋頓さん。
ですが子を残せないって・・・。
正直、あいつは嫌な話が大嫌いです。
からく○サーカスの作者様ではありませんが「嫌な話が書けない」のです。
なので蹋頓には、どこかで、何らかの形で救済措置を・・・と考えています。
・・・できるのかなぁ(遠

さて、ようやく恋姫本編の始まり辺りまでやってきました。
ちょっと時系列が狂っているかもしれません。
もしかしたら本編よりも早く3姉妹が到着したのかも。このシナリオでは影響ないのですが。
で、このときの公孫瓚の兵力は1万以上です。
しかし3姉妹が到着した後の賊征伐では3千しかいませんでした。
このあたりの統合性が取れていないのは不味いと思うのですが・・・
連戦につぐ連戦で兵士が消耗していた→義勇軍微募→その兵力が3千でした とでも思ってください。
本編に沿って兵力とか計算してたらそれこそ(ry
そういえば本編で張飛の字、なんていいましたっけ・・・翼徳ですっけ。
今回は益徳にしましたが「翼徳だろjk」になったら・・・まあいいや(おぃぃ

あと、高順のいう「前に買い物~」は、ゾウハと丘力居のことを忘れてたときの約束を果たすための買い物です。
こんな伏線誰もわからないでしょうな。説明も無いですし(遠


それではまた、次回でお会いしましょう。ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第23話 いきなりしゅーせーい。(ズゥン
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/29 18:19
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第23話

~~~北平・政庁にて~~~
侍女に案内された劉備らは公孫瓚との対面を果たしていた。両者共に友人であるし、100人程度とはいえ兵士を引き連れている、という理由であっさりと面会がかなったのだ。
「桃香!ひっさしぶりだなー!」
「白蓮ちゃん!久しぶりだねー♪」
わざわざ玉座(?)から立ち上がり、公孫瓚は劉備を出迎える。
「蘆植先生のところを卒業して以来だから・・・。もう3年以上もたつのか。はは、元気そうで何よりだ。」
「白蓮ちゃんこそ元気そうだね♪それにいつの間にか太守になって。中郎将になった上に都亭侯まで送られたって聞いたよ?凄いなー。」
まるで自分のことのように喜ぶ劉備に公孫瓚は恥ずかしそうに頬をかく。
「いやー。別に私の力だけでなったわけじゃないし。それに、ここはまだ通過点だ。こんなところで止まるつもりは無いぞー?」
「さっすが秀才の白蓮ちゃん。言う事が大きいなぁ。」
「ま、まぁこれくらいはな。それよりも桃香は一体何をしてたんだ?連絡が取れなかったから心配してたんだぞ?」
「んっとね、あちこちでいろいろな人を助けてたの。」
「ほほぉ、それで?」
「それでって・・・それだけだよ?」
劉備はきょとんとして言い返す。
「・・・はぁぁぁぁぁっ!?」
「ひゃっ!?」


こんなやり取りをしている公孫瓚らを見て、末席にいた高順は隣にいる趙雲にぼそぼそと話しかける。
「趙雲殿。あの人一体何者でしょう?」
「さて、なんでも伯珪殿のご友人だとか。」
「・・・そりゃ、真名で呼び合ってるんだから友人でしょうね。しかし、公孫瓚殿のご友人といったら・・・」
実を言うと、この時点で高順には誰か察しがついていた。彼女は・・・恐らくだが劉備なのだろう。第一印象ではどうも頭の中身が緩そうなタイプに見えるのだが。
しかし、油断をするべきではない。。どこぞで「乱世の道化師」と呼ばれるような人なのだ。彼自身はそこまではいかなくても「乱世のペテン師」だろうとは考える。
何せどこの陣営に行っても迷惑ばかりかけるような人物だ。公孫瓚には特に損になるような行動をしている訳ではないが、袁紹・曹操・劉表・劉璋と渡り歩いてその全ての陣営に疫病神のような形で関わっている。
呂布も、自業自得ではあるものの劉備に死刑宣告をされたも同然の形で処刑されたのだ。自分にとっても警戒するに越した事はない。
そんなことを考えている内に劉備は公孫瓚に関羽、張飛のことを紹介していく。
張飛はまだわからないが関羽は高順から見ても凄まじい手練に見える。なんというか、今まで戦ってきた相手とは比べ物にならない闘気のようなものを感じる。
趙雲も同じ事を考えているらしく、彼女らの一挙手一投足を見逃すまいと注視している。
そこで高順の後ろにいた干禁が話しかけてくる。
「ねぇ、高順さん。」
「ん?どうかした?」
「あの関羽って人・・・なぁんか気に入らないの。」
「へ?なんで?」
「よく解らないけど・・・う~、なんだか好きになれそうに無いの・・・。」
そこで高順は「ああ、そういえば史実でも演義でも干禁は関羽にボコボコにされてたんだっけ」と思い出した。
そのせいで死後も不名誉を蒙ったのだから干禁にとっては天敵もいいところだろう。
「まあ、我慢しなよ。俺だってあの人たちは微妙に気に入らないけど。第一印象で決め付ける事もないよ?」
「う~~~・・・。」
そう言いながらも高順は劉備たちを第一印象で決めかかっている。
まだ不満そうな干禁はさておいて、高順は公孫瓚らの話を聞いていた。
「で、桃香が私を訪ねてきたのは旧交を温めに来た、というわけでは無いと思うのだけど・・・。本当のところはどうなんだ?」
「うん、白蓮ちゃんが烏丸とか盗賊征伐をするって聞いたから私達も力になれないかな、と思って。」
「へえ、そうだったのか。それはあり難いな。兵の数は・・・実は烏丸と戦った後だからそれほど多くはないのだけど、指揮官はいくらでも欲しいからな。聞いた話だとけっこうな数の兵を連れて来たらしいじゃないか?」
「あ、う、うん。沢山いるよ、兵隊さん!」
「そうかそうか。・・・で?」
公孫瓚は見透かしたような表情で意地悪く劉備を見つめる。
「で、でって?何かなぁ・・・。」
「本当の兵士はどれくらいいるんだ?」
「うぇ・・・そ、それはぁ・・・。」
言葉に詰まる劉備を見て公孫瓚はやれやれ、と苦笑する。
「ふふ、桃香の考えてる事くらいお見通しだ。だけど、私にそういう小細工はして欲しくなかったな。」
「はぁ、バレてたんだ。」
「おいおい、これでも太守なんだぞ?それくらい見抜く目がないと務まらない。ま、気にしないで良いさ。私が同じ立場なら同じ事をしてただろうから。」
「う、うん。」
「けど、友人の信義を蔑ろにする者に人がついてくる事はない。覚えておきなよ?」
公孫瓚は下手な小細工を弄するよりも誠心誠意を基本にぶつかれば良い、と言っている。当然それは人によるが、それを見抜く目を持て、ということでもあるのだろう。
真心を見せても心を開かない人はいるものだ。幸いと言っていいのか、高順の周りにいる人々は全員心を開いている。これは単純に運が良かっただけだ。
今の公孫瓚の言葉は自分にも当てはまる言葉だ。覚えておくべきだろう。
「うん、覚えておく。えへへ、相変わらず良い人だね、白蓮ちゃん。」
「なっ、ば、馬鹿なこと言ってるんじゃない!ただの老婆心だよ、老婆心!」
「えへへー♪」
「くぅう・・・。」
なんとなく、2人の関係がわかった高順は苦笑した。良くも悪くも常識人の公孫瓚は色々と劉備に振り回される役割だったのだろう。
ごまかす様に咳払いをして、公孫瓚は話を続ける。
「それよりも!兵士の数を教えてくれよ?」
「それが・・・1人もいないの。」
「・・・はぁっ!?」
「最初から一緒に行動してくれてるのはさっき紹介した2人だけで・・・。」
「2人って・・・関羽と張飛だっけ?うーん、2人の力量がどれほどのものなのかがよく解らないのだが・・・。」
「あう・・・そうだよね・・・。」
しゅん、となる劉備の後ろから関羽達が進み出る。
「鈴々はすっごくつおいのだ!」
「左様。必ずやお役に立ちまする!」
「うーん・・・。」
彼女達の言葉にも公孫瓚はいまいち歯切れの悪い言葉しか出てこない。と、そこへ助け舟を出す人物がいた。趙雲である。
「人を見抜け、と言った本人がその2人の力量を見抜けぬでは話になりませんぞ、伯珪殿?」
自身の座から歩いていく趙雲。
その言葉に公孫瓚はほんの少しだけムッとする。
「むぅ・・・。なら、星はわかるのか?その2人の力量を。」
公孫瓚の言葉に「当然ですな。」と趙雲は頷く。
「武を志すものであれば姿を見るだけで2人が只者ではない、ということくらいは解るものです。」
「ん~・・・星がそういうのなら間違いはないのだろうけど・・・。」
まだ悩む公孫瓚から一度視線をはずして、趙雲は関羽のほうへと向く。
「そうであろう、関羽殿?」
「そういう貴女も腕が立つ。私にはそう見えるが?」
「うんうん、鈴々もそう見たのだ!」
「さぁ・・・それはどうでしょうか?」
2人の言葉に意味ありげな笑みで返し、また公孫瓚のほうを向く。
「して、如何なさいます?彼女らを受け入れますか?」
「・・・そうだな、桃香の実力は知っているし、他の2人も星が言うのだから間違いは無いだろう。不安が無い訳じゃないが、当家には人材が少ないんだ。私に力を貸してくれ。」
こう言って頭を下げる公孫瓚に劉備は少し慌てつつも、
「もっちろん!頑張るからね!」こう返事をしたのだった。
「張飛殿、関羽殿もよろしく頼むぞ。」
「ああ、我が力。とくとご覧じろ。」
「任せるのだ!」
こちらも鷹揚に頷くのだった。
彼女らのそんな様子を見て、楽進が高順にはなしかける。
「隊長・・・。なんだか、我々のことを忘れて話が進んでいるような・・・。」
「ん?そうだねぇ。」
「そうだねぇって・・・。」
「仕方ないさ、あーいうのは。他所から横槍入れるのが野暮って物です。」
「うーん・・・。」
何か納得いかないように腕を組む楽進に、高順は苦笑するのみだった。数日後、陣割が決まって3姉妹・趙雲、そして高順達も呼び出されて城門に向かう。そこには3千ほどの兵士が整列していた。その様子を見て劉備たちが「うわー!」とか言って感嘆の声を上げる。
「すごーい、これ全部白蓮ちゃんの兵隊さん!?」
「いやー・・・正規兵と義勇兵が半々ってところかな。」
「それほどに義勇兵が集まったのですか。」
感心したように呟く関羽に趙雲が答える。
「それだけ大陸の情勢が悪化し何とかしたいと考えている人々が多い、ということの証左でしょうな。」
「ふむ、確かにここ最近は賊の数が多くなっている。それも当然なのだろうな・・・。一体、この国はどうなるのだろう。」
「民のため、力なき人々のため。間違った方向に向かわせたりはしないさ。この私がな。」
胸を張り言い切る趙雲に関羽は好意的な表情を見せる。
「・・・趙雲殿。」
「ん?如何なされた?」
「あなたの志に深く感銘を受けた。どうだろう、我が盟友となっていただけないであろうか?」
「鈴々もおねーさんとお友達になりたいのだ!」
関羽と張飛は、趙雲の意思に自分達と同じものを感じたのだろう。この混迷している国のために力を振るいたい。人々を守るための盾となり、矛とならんという志を。
「ほう、志を同じくする者は考える事も同じと言うことですかな。」
「・・・?それはどういう―――」
趙雲は関羽に手を差し出し、穏やかな笑みを浮かべる。
「必ずやこの大陸に安寧を。友として誓いあおう。」
「・・・ああっ!」
「誓うのだ!」
「あー!私も!仲間はずれにしないでよー!」
がっちりと手を組む3人を見て劉備も慌ててその上に自分の手を載せる。
「皆で頑張って平和な世界を作ろうね!大丈夫、皆で力を合わせればすぐに平和な世界が来るから!」
「そんなわけないのだ。お姉ちゃんは気楽だなー。」
「ふ、そんなお気楽さも世の中には必要なものでしょう。」
こうやって盛り上がる4人は、お互いに真名を教えあい救国の志を確かめ合っていた。
それを外から見ていた高順は、その周りで参加したがっている公孫瓚を見かけた。
「・・・参加したいのなら参加すればいいんじゃないですか?」
「な、ばっ、馬鹿!ただ、私も救国の志があるんだから忘れないで欲しいなー、って・・・。」
「じゃあそういえば良いじゃないですか?」
「あうぅ・・・。」
公孫瓚は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「拗ねなくてもいいと思うのです。」
「拗ねてない!」
更に顔を真っ赤にして公孫瓚はぷいっ、っと横を向くのだった。
高順達は、というと。劉備たちのやり取りを心なしか冷たい視線で見ていた。含むところが無いではないが、彼女達の言っているのはあくまで理想論で中身が伴っていない。
「皆で頑張れば」と簡単に言うが、それで平和な世界が来るのなら当の昔に平和になっているはずだ。
言葉通りに受け取るつもりは無いが、そのあたりの現実を理解していない子供の理論にしか聞こえなかった。どうも3人娘と沙摩柯も同じようで苦虫を噛み潰したような、そんな表情をしている。
清濁併せ持つ、という言葉がある。今の劉備はその「清」しかない。そのままでは乱世で生き延びる事など出来はしないだろう。ゆくゆくは敵となることがわかっている相手だが、公孫瓚の友人だ。「その辺りは放っておけないよなぁ・・・。」と考えてしまうところが高順の甘いところだった。

ここで公孫瓚は陣割を発表した。
公孫瓚は中央の部隊を率い、劉備達は左翼の陣を率いる。右翼は趙雲が率いてそこに高順隊も配置されている。
数としては中央が1300。左翼が1000、右翼は700である。
前回の戦闘で相当数の兵士が死傷し、烏丸征伐の後すぐに盗賊たちが行動を活発化。その鎮圧のために各方面に兵と武将を配置したために数が少ないのだ。
それでも恐れることなく賊討伐に向かうというのだから公孫瓚も豪胆な性格をしている。
「しかし、劉備殿に左翼を丸ごと任せるとは。伯珪殿も剛毅ですな。そう思いませぬか、高順殿。」
右翼の先頭に立つ趙雲が隣にいる高順に話しかける。
「そうですね。剛毅です。それだけ力量を信じておられるのでしょうねえ。」
「・・・高順殿。劉備殿がお嫌いで?」
なんだかそっけなく言い放つ高順に趙雲は少し不満そうな表情をする。彼がここまでぶっきらぼうな態度を取るのは初めてのような気がする。
「そうですね。好きか嫌いかと言われれば嫌いな部類です。理想家すぎますからねぇ、現実を全く見てませんし。」
こう言い切った高順を趙雲は不思議そうに見つめる。彼がここまではっきりと嫌うと明言したのは、王門以外では初めてだ。しかも自分では話をしたことがないというのに。
彼女達との間何かあったのだろうか。不機嫌になるようなことでも?しかし、彼は劉備殿達と接触をしたがらなかったようだし・・・はて?と考える趙雲だったが、軍勢の戦闘に立つ公孫瓚の声が聞こえ一時その考えを中断した。
「諸君、これより我らは出陣する!烏丸を沈静化した後、行動を活発化してきた賊を私自ら殲滅してくれよう!公孫の勇士よ、功名を立てる機会がまた来た。存分に手柄を立てて見せろ!」
公孫瓚の言葉に兵士達が大音声をもって応える。
この大地を揺らさんばかりの鬨の声を聞いた公孫瓚が剣を掲げ号令を出す。
「出陣だ!」
意気揚々と出撃する兵士達。それに続いて劉備部隊、そして趙雲隊が続いていく。
盗賊が根城にしている場所まではそう遠くはない。
「ま、生き残るために頑張るとしますか。死ぬなよ、皆。」
「応!(ほいな!はいなの!ああ。了解っす!)」
高順は後ろに顔を向けて3人娘や沙摩柯、そして今回、田豫と入れ替わりで従軍した閻柔に声をかけた。・・・まったく息が合ってないが、いつものことなので高順は気にもしていなかった。
平原を進み数時間。本陣からの伝令が命令を伝えるために各陣へと急行していた。
「全軍停止!これより我らは鶴翼の陣を敷く!各部隊、行動を開始なされよ!」
これを受けて、各部隊が一斉に動き始めた。本陣を真ん中に据えて、左翼・右翼ともに兵を分けて5つの部隊を展開する。
趙雲が、そして劉備(実際に訓示をするのは関羽達)が自部隊の兵に戦闘前の訓示を言っている。
聞いていると、立派な事を言っている。流石後の世に神となる存在だな、と素直に感心する。
それに対抗する訳でもないが、高順も自分に従う兵に訓示を垂れていた。
「生き残れ、そして必ず勝て。いつも通りにやればいい。烏丸との戦いを生き延びた皆だ、自信を持て。以上だ。」
「はいっ!」
高順の言葉に兵も応える。ここで、盗賊たちがこちらに突撃を仕掛けてくるのが見えた。
「盗賊がこちらに向かってきます!各部隊、ご注意を!」
また伝令が本陣へ向かっていく。盗賊の数は5000ほど。だがこちらの陣容を考えれば勝てない相手ではない。
「全軍、迎撃態勢!必ず勝つぞ!」
公孫瓚の命令が各部隊へと届いていく。
「関羽隊、出るぞっ!」
「鈴々も負けないのだ!」
闘志をあらわに、劉備隊が動き始める。
「ふっ、高順殿。われらも負けてられませぬぞ!?」
「承知。高順隊、彼女達に負けるなよ!」
『おうっ!』

こうして、公孫瓚部隊3000と盗賊5000がぶつかりあった。
先ず最初に両軍ともに弓を打ち合う。が、統制の取れていない賊軍はてんでばらばらの行動を取るばかりで足並みも揃わない。
対して公孫瓚軍は歩兵に槍と盾を構えさせ、その後ろから弓を間断なく放っていく。
両軍の兵が矢で射抜かれて倒れていくが、盾を持たない賊のほうが被害が大きかった。
これでは埒があかないと思ったのか、賊は遮二無二突撃を仕掛けてきた。だが、歩兵が槍を構えているため一定以上から進めず、後ろから進んできた兵に押されて槍の餌食になるものも少なくなかった。
そうやって躊躇をしている賊に、更に矢を射込んで行く。
鶴翼の陣、というのは数が少ない側が使用する防御陣形である。本陣を餌にして、その餌に喰らいついてきた所を右翼と左翼が挟み撃ちにして殲滅する、というものなのだ。弓の打ち合いだけで賊軍が相当に消耗している。
最初こそ威勢よく突撃を仕掛けてくる賊であったが、消耗した人数が多いためかすぐに尻込みして下がり始めようとする。
通常ならば罠か?と疑うのだが、この辺りは公孫瓚、趙雲、ついでに高順(とその部下達も)も幾多の戦いを潜り抜けた猛者である。
(あの動き・・・随分と雑だ。罠の類は無いだろうが。深追いをしないほうがいいか?)by公孫瓚
(ふむ。罠、として見るなら伏兵であろう。だが、この見渡しの良い平原で伏兵は・・・無いだろうな。向こうが先に突出してきたのだから落とし穴なども無いだろう。」by趙雲
(見通しの良い平原だから岩とかを使用する事は不可能。あるとすれば火くらいだが・・・風もない。その前に奴らを駆逐できるだろうな。)by高順
結果、公孫瓚は鶴翼の陣を維持する必要は無いと判断。本陣が先行、そこへ右翼と左翼が着いて行く形・・・蜂矢の陣に近い形になって突撃を開始する。
中央・右翼の歩兵と騎馬隊は槍を構え全速力で賊部隊に突撃を仕掛けていき、左翼の劉備隊も負けじと突撃していく。
「関羽隊、突撃だ!匪賊共を1人残らず討てっ!」
「鈴々も負けないのだ!皆、頑張るのだー!」
そう言って先頭を進む関羽と張飛は、逃げていくか或いは立ちふさがる賊兵を苦も無く討ち取っていく。
青龍刀、そして蛇矛が振り下ろされる度、薙ぎ払われる度、1人といわず3人4人と吹き飛ばされていく。それを遠目から見ていた高順も内心で大したものだと考える。
軍神と呼ばれた関羽。長坂においてただ一騎で曹操軍数十万を震えさせた張飛。その威名は伊達ではないという事か。
劉備は・・・なんだろう。剣を抱えてあっちでふらふら、こっちでふらふら、という感じでおたついている。・・・あれで、何で公孫瓚殿は「実力を知ってる」のだろう。どう見ても素人にしか見えない。
劉備は置いておくとして、関羽と張飛はただひたすらに敵を薙ぎ倒して行く。
本陣から遅れて突撃をしたのに、すでに追い抜いて少々突出した形になっている。
「・・・隊長。」
「ん、どうした?」
虹黒が後ろ回し蹴りで賊を1人蹴り倒したところで楽進が隣にやって来る。
「劉備殿の左翼が少々突出気味です。あれでは囲まれませんか?」
「囲まれるだろうね。」
「そ、それでは助けに行くべきでは?」
「俺達は右翼ですよ。一番遠いじゃない?それに、関羽さんや張飛さんがなんとかするよ。」
「確かに、彼女達は凄まじい強さですが・・・。」
「それ以前に自分の目の前にいる敵に集中するべきだね。右翼が一番数少ないんだから、っと!」
かなり遠くにいる賊を矢で仕留めつつ高順は馬を進めていく。
「彼女らを援護するのはこっちに余裕が出来てからでいいさ。」
もっとも、こちらに余裕が無いか?と言われればそんなことはない。
関羽達に匹敵する力量を持つ趙雲がいるし、楽進・李典・干禁もいる。沙摩柯も閻柔もいるのだ。
それに、前回の烏丸戦を生き延びた兵士達も頼りになる。沙摩柯や蹋頓らに鍛えられる前はどことなく頼りない感じだったが、今ではあの大きな戦いを生き残ったことに自信を持ったのか勇敢に戦っている。
もしかしたら自分より勇猛かもしれない。
前から感じていたが、どうも自分は数千の兵士が戦う大規模な戦に縁があるらしい。
それに、人を殺す事をなんとも思わなくなりつつある自分に恐れを抱く事も多い。迷っていては自分が殺られる。解っているのだが人の死に鈍感になっていく事が怖くて仕方が無い。
だが、楽進を初めとした部下、いや、仲間達。自分を信じて着いて来てくれる兵士達の死に鈍感になるつもりは無い。
まだまだ守られる立場の自分だが、いつの日か1人でも多くの仲間を守れるくらいには強くなりたいものだ。それが自分の死を回避する事にも繋がるだろうから。
そんなことを思いつつ、虹黒、楽進と共に眼前の敵を討ち続ける高順だった。
そのまま戦闘を続ける両軍だったが、最初の出だしで躓いた賊軍が当初の勢いを取り返す事ができない。
公孫瓚側は、反撃を開始してから勢いに乗りまくり、退却しようとした賊軍に追いすがり次々と討ち取っていく。
「敵は総崩れだ!行け、追いまくれ!」
「皆、鈴々に続くのだー!」
周囲にいる兵士を鼓舞しつつ、関羽と張飛は戦線を維持できず崩壊していく賊軍に更に攻撃を仕掛ける。同じように中央・右翼も敵陣へと深く食い込んでいく。
その後、数時間もせぬ内に公孫瓚の軍勢は勝利した。
公孫瓚側の被害・・・死傷者数は僅かなもの。その後も執拗に追撃を繰り返しほぼ全滅させた、といえるほどの成果を上げるのだった。
こうして、関羽や張飛。趙雲らの活躍もあって公孫瓚軍は完全勝利を手にしたのだった。

引き上げていく公孫瓚に、劉備隊と趙雲隊(ついでに高順隊)が合流する。
「おお。皆よくやってくれたな。こちらの被害も少なかったし。いや、良かった。」
公孫瓚のねぎらいの言葉に皆が笑顔になる。実際、関羽らの奮闘があったからこそ兵の士気が上がり勝利に繋がったのだ。
「やったね、白蓮ちゃん。さっすがぁ♪」
「いや、皆の力あってこそさ。本当に感謝している。」
「えへへー♪」
そんなお気楽な会話をする公孫瓚らを尻目に趙雲は空を睨みつける。
「ん、どうしたんだ、趙雲?」
「・・・公孫瓚殿。この頃、世の雰囲気がおかしくはありませぬか?」
「へ?雰囲気?」
「左様。この所、争乱が続きすぎている。何か良くない事の前触れのような、そんな気がしてなりませぬ。」
趙雲の言葉に、関羽が頷く。
「確かに、趙雲の言う事は正しいと思います。この頃匪賊の動きが多すぎる。」
「お主もそう思うか・・・。」
「ああ。賊は増えてる上、飢饉も疫病も猛威を振るっている。」
「食料が少なくなるからどこかから奪ってくる。だから余計に食糧不足になる、か。」
公孫瓚はぽつりと呟いた。
「その上、国境付近では五胡が動き始めているとも聞く。先ほどの話ではありませぬが、何かが起こる前触れのようにも感じますな。」
「大きな動乱、その前兆か・・・。」
関羽が険しい表情で空を睨む。
「高順殿はどう思われる?」
「・・・はっ?」
全くのアウェーだった高順は自分に話を振られるとは思っていなかったらしく素っ頓狂な声を上げる。
「・・・聞いておられなかったのですか。」
趙雲は少しがっかりしたような顔をした。
「聞いてなかった訳ではないですが。まさかこっちに話を振られるとは思ってなかったですし。・・・で、何かの前触れとかそんな話でしたね。」
「うむ。」
ここまで来て劉備たちが、ちょっとした質問をしてくる。
「あのぉ、すいません。」
「?」
「その、そちらの方・・・どなた?」
劉備たちは公孫瓚に顔を向けて質問をした。
「な、なんだ。知らないのか?」
「その、何度か見かけたことはあるんだけど。一回もお話をしたことがないかなー。あははは。」
これは嘘ではない。公孫瓚と政庁で話をしていた時も、この数日間でも何度か顔を合わせてはいる。
高順はできれば劉備達と係わり合いになりたくなかったし、劉備達も誰か知らないので接触しても挨拶をする程度の間柄でしかなかった。
「高順。自己紹介をしてやってくれないか?」
「・・・はぁ。」
まあ、仕方ないか。ここで紹介を渋れば不審がられるだろうしな。
「俺の名は高順です。よろしく。」
なんだか凄まじくそっけない。普段の彼の性格を知っている公孫瓚と趙雲は顔を見合わせる。その顔には「何かいやな事でもあったのだろうか?」と書いてある。
そのそっけなさに多少驚きつつ劉備達も自己紹介をする。
「あ、えーと。私は劉備、字を玄徳って言います。」
「鈴々は鈴々なのだ!」
「・・・それは真名だろう。この子は張飛、字を翼徳。私は関羽、字を雲長。よろしく頼む。」
「どうも。」
・・・やはりそっけない。普段の彼を知っているだけに公孫瓚と趙雲は違和感を感じる。
「さて、さきほどの趙雲殿の質問にお答えしますね。動乱がどうこうとか、そんなお話だったと思いますが。」
「あ、ああ。」
「起こりますよ。」
「はぁ。」
あっさりと言う高順に皆が「あーそうか。」という反応を見せる。
「いや、そうじゃなくて!そんなあっさり言うか!?」
「そうだぞ、高順殿。何か根拠があるというのか?」
公孫瓚と関羽が微妙に抗議をする。
「根拠なら幾らでも。まず1つ目。漢王朝の腐敗ぶりは相当なものですよ。どれだけ中央の官僚が腐敗していると思ってるんですか?まともな人もいるでしょうけど、そういった人々が頑張ったところでどうにもならないところまで来てるんです。もう民草は限界なんですよ。」
「そんな・・・。」
後漢王朝、劉家の血筋に連なる劉備が悲しそうな顔をする。
「劉備殿達だって見てきたでしょう?民草の生活の実情を。先ほど戦った賊どもは一体何故賊になったのか。飢えたから奪う側に走ったのではないですかね?奪う側になった彼らに同情など必要ありませんが、彼らがそうならざるを得ない現状を作ったのも漢王朝そのものですよ。」
劉備がさらにシュンとする。実際、彼女らも公孫瓚の元へたどり着くまでに、同じような状況を幾度も見た。それを理解しているからこそ旗を揚げて人々のために戦いたいと思っている。
高順も流石に言い過ぎたか、と反省したが・・・彼女らのことを考えれば辛い現実も教えてやらねばならない。
「そういった人々の敵意、悪意は少しずつ形になってきています。それがそろそろ暴発する、俺はそう考えていますよ。」
ねえ?と、高順は3人娘のほうへ向き直り同意を求め、楽進達も至極真面目な顔で頷き返した。
彼女達は黄巾党と一戦交えており、あの勢力が民に浸透しているのを痛感している。高順達は自分達の経験を鑑みて「何かが起こる」と言っているのだ。(高順は知識としても知っているが。)
「大事なのは、そこでどう立ち回るか、ですよ。どうせ漢王朝から通達が来るのは事が起こってからでしょうしね。それまでにやれることをやっておかねば。」
高順はこう締めくくる。そんな彼を、公孫瓚、趙雲、劉備達は感心したような面持ちで見つめていた。
「・・・えーと、どうしました?」
「いやぁ、大した分析力だなー、と思ってさ。どうしてそこまで解るんだ?」
公孫瓚は本当に感心しているようで、興味深そうに聞いてきた。
「どうしてって・・・経験をしているからです。前にそういう勢力とやりあいましてね。立ち上がるならそれに似た勢力だろうと思うんです。」
そして、そこが乱世の呼び水となっていく。それを確信している高順であった。

その後も公孫瓚は劉備達を従えて幾度も賊征伐に乗り出した。その甲斐があって劉備の名もそこそこに知られる様になっていたし、持ち前の優しさからか北平の人々からの人気も高かった。
高順もある程度は彼女達と話をする程度の間柄にはなっていたが、やはり自分から傍へ行くような真似はしなかった。
劉備は高順ともっと仲良くしたいと思っているようだ。趙雲の疑念にあっさり答えたときの洞察力に感心もしていたし、関羽、張飛に敵わないとしてもかなりの武の才能を持っている。
それに彼の部下も相当な猛者揃いだ。仲良くしておいて損は無い。趙雲もだが高順は公孫瓚の客将であることを知っている為、自分たちが旗揚げをした後、どこかで自陣営に引き込めないだろうかと言う打算もあった。
少し話がずれるが、高順が北平でソーセージを作ったのはちょっとした理由があった。
実は、北平に限った事ではないがこの時代のこの国の北部では気候や水の問題で米があまり作られていない。
主流なのは麦である。その麦を加工してパンのようなものに加工するのだ。
そして、肉は豚がよく食される。パンに豚肉のソーセージを挟んで、というのは現代人の考えだが高順もそう考えたらしい。
それがどういうわけか当たって大人気となったのだが・・・劉備達も随分気にったようだ。
これはあくまでついででしかないのだが、その作り方を教えてもらえないかなー、と劉備は考えてもいた。
関羽は彼にあまり好意的ではなく、どこかよそよそしい。干禁ともそりが合わないようだ。
逆に張飛は高順と仲がいい。(というか一方的に付きまとっている。)高順は子供好きな性格(丘力居や臧覇を可愛がっている)のようで、嫌だ嫌だと言いつつも張飛に遊びに誘われたときはあっさりとついていくし、幾度も鍛錬に付き合ってもいる。
高順は一方的に倒される事が多いが、近頃は少しずつだが張飛の動きに付いていけるようになっていた。
同じくらいの年齢だからか、張飛は臧覇とも仲良くやっているようだ。
公孫瓚も趙雲も、お互いの関係が険悪なのだろうか?と不安がっていたが、これらのことで一応安心したらしい。
それはともかくも、ある日の事。
「う~・・・。」
劉備が城の中庭のある場所に陣取り筆を持って目の前の書物を見ながら何かを書き写している。
その日、高順は兵の訓練と3人娘、沙摩柯らと組み手をした帰りでそんな劉備の姿を見かけたのだった。
「何をしているのやら。」
筆を持って、書き写しては頭から湯気が「どしゅ~・・・」と吹き出てるような、そんな感じだ。
(・・・関わらないようにしよう。)
決断してそのまま去ろうとする高順だが、その姿を運悪く(?)劉備に見つかった。
「あ・・・お~~~い、高順さ~~~~~ん!!」
OK、俺には何も聞こえない。俺は風、ふりーだむ。
「こーーーーじゅんさーーーーーーーーーん!!!」
・・・流石にこれだけ大声で呼ばれて無視は無いよな。むしろそんな真似したら関羽さんに頭握り潰される。メメタァって感じに。
高順は諦めて劉備のほうへ向き直り、歩いていく。
「何か御用ですか?」
「うん、あのね。政治のお勉強教えてほしいなーってちょっとなんで逃げるの!?」
引き返そうとした高順の服の裾を引っ張り劉備が抗議する。
「俺は政治とかそういった類が苦手なので。ではってちょっと首!絞まってる極まってる絞まってる!?」
「教えてくれるまで離さないんだからぁ~~~!」
「解りました!わかる範囲で教えますから・・・!く、くるじい・・・」

本人が意図するより、割と仲良く(?)している高順と劉備だった。



~~~楽屋裏~~~
どうも、子供の鈴々に手を出す一刀は犯罪者です、あいつです(挨拶
高順くんを劉備大嫌いにしようと試みましたが・・・無理でした。
なんかこっちのプロット崩しにかかってくるんですよ、高順くん。
お人好しもここまで来るとただの馬鹿のような気がします。
今回は原作の会話を微妙に取り入れてみましたが如何でしたか?あいつは大変やりにくかったです(笑
しかし、盟友云々のくだりは・・・なんでしょうね。原作のほうでも違和感を感じる会話でしたが自分で書いてみるとやっぱり違和感がががががが。
これも友愛仁愛軍団の為せる業・・・なわけないですなw

これはあいつの疑問なのでスルーしていただいても全然構わない質問なのですが。
最初にも書きましたが今回のように「原作会話も取り入れる」のは読者様としてどのようなものでしょう?
意図無く似たような会話になるのはともかく。
「作者の考えた会話のみでいいよ!」とか「原作会話取り入れてもいいんじゃないかな?」とか「どっちでもいいよ、(゜3゜)ペッ」という人もいらっしゃると思います。
アンケート、というものではありませんが教えてくださると後々やりやすいかな?と。
それと文章量。毎回多かったり少なかったりです。安定させたほうが良いのでしょうか・・・?

さて、ようやっと次から黄巾編に入ります。本当に長かった・・・。もしかしたらどっかで番外編を書くかもしれません。
ふと(仕事中に)思った事がありまして、「自分、戦闘編になると1つの戦争につき日常も含めて2~3話書いてるよね?」
・・・これからの戦い、少なく見積もっても(規制)回ほどあるんですけど・・・
現在、番外編も含めて25話程度です。そこから換算すると・・・



最低でも終わる頃に40話は軽く超えるよね?






のオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお|||orz
俺・・・30話で打ち切るんだ・・・
このお話があいつの最初で最後の作品になる事請け合いですが・・・なんで処女作でこんな長編になるのか誰か教えてorz

それではまた次回、お会い致しましょう。(・×・)ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ (短いけど)第24話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/10/31 15:11
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第24話

高順と趙雲。
現在、公孫瓚軍ではこの2人が組む事が普通になっていた。賊征伐、警邏、兵士訓練。何をするにも公孫瓚はこの2人を組ませる。高順配下の人々も当然それに従う。
この2人を組ませる状況は大抵、征伐など武力関係の仕事になってくるが2人が共に仕事をすると他の武将に任せるよりもよほど効率良く鎮圧していく。
彼らの鍛えた兵士が強い、ということもあるし、高順に従う将の能力も高い。
それ以上に高順と趙雲の相性が良い。阿吽の呼吸とでも言おうか、特に打ち合わせをしたわけでもないのに、戦場で抜群の連携能力を見せつける。
公孫瓚は2人の能力を評価していたし、期待も高かった。
高順が公孫瓚のもとで客将として働いて数ヶ月。彼は公孫瓚陣営にきっちりと馴染んでいたのである。
その2人が何度目になるか解らない賊討伐を劉備たちとこなし、北平へ向かう間に。
洛陽からの勅使が公孫瓚へ黄巾討伐へ参加するように、という勅令を下しているところだった。

~~~北平~~~
劉備、趙雲、高順。
彼らは公孫瓚に賊討伐成功を報告するために政庁へと向かっていた。
3人娘や関羽達は兵を纏め兵舎へと向かっているのでここには居ない。
「うーん、今回も皆頑張ったよね~♪」
劉備が歩きながら身体を反らせて伸びをする。
「そうですな。我々にかかればあの程度、容易いものです。」
趙雲も当然だというように笑う。高順はそんな2人を後ろから見ているだけであった。
別に彼女らに含む事はない。高順は他ごとを考えていたに過ぎない。
この数ヶ月で劉備は義・情という言葉を使わずに戦い続けた。その能力と彼女本来の優しさで、この数ヶ月を過ごしていたのだ。
甲斐あって、北平のみならず、周辺の邑や街での彼女の評判は高まるばかりであった。
そして趙雲。戦場ではお互いの考えがある程度、ではあるが読めるようになってきた。彼女と共に戦場を駆けた時間は1年にも満たないのだが・・・もともとの相性でも良かったのだろうか。
「あれ?高順さん、ボーっとしてどうしたの?もしかした私のことでも考えてた?なーんちゃって♪」
「そんなことは未来永劫ありませんからご安心を。」
能天気な劉備の発言に普段と変わらぬ態度で辛らつな言葉を浴びせる高順。やれやれ、また始まったか。と趙雲は苦笑するのみだ。
彼らの間はぎくしゃくしている、という訳ではない。が、どうも高順は劉備に未だ慣れないらしい。
心底嫌っているのであれば勉強に付き合ったり、忠告などもしないはずだ。なのに、高順は劉備から一定の距離を置いての付き合いをしている。
そのあたりのことは本人にしか解らない事情があるのだろう。趙雲はそう結論付けていた。
そんなことを考えるうち、3人は政庁へとたどり着いた。が、どうにも騒がしい。
「ん?何だろ、皆忙しそうだね・・・。」
「そうですな。何かあったのでしょうか?」
「さあ?公孫瓚殿にお聞きすれば解るのではないでしょうかね。どちらにせよ報告をしなくてはいけませんから、急ぎましょう。」
そう言って高順はそのまま歩いていく。劉備と趙雲はいぶかしむ様な表情をしていたが、高順は2人に比べれば幾分落ち着いていた。そろそろ来るんじゃないかな?と思っていたからだ。
3人はいつもよりも歩く速度を速めて公孫瓚の元へと急ぐのだった。

政庁・玉座の間で公孫瓚は頭を抱えていた。
黄巾征伐に参加するつもりではあるが、何せ現段階の情報では黄巾「賊」の兵力規模が大きすぎる。
烏丸の事を片付けてからまだ数ヶ月しか経っていないと言うのに。公孫瓚は内心で盛大なため息をついていた。
そこへ侍女が傍にやって来て「劉備様、趙雲様、高順様がご帰還なさいました。ご報告に参っておられますが、お会いになられますか?」と聞いてくる。
公孫瓚は迷う事も無く「ああ、会おう。」とだけ告げた。
侍女はそのままで部屋から出て行き、入れ違いで3人が入室してきた。
「やっほー♪白蓮ちゃん、賊征伐完了しましたー!」
「・・・はは。お帰り、3人とも。」
能天気すぎる桃香の発言に苦笑しつつ公孫瓚は3人を見る。
「賊征伐、完了いたしました。」
高順と趙雲は律儀に言い直す。
「ああ、ご苦労様。しばらく休んでもいい。と言いたいところなんだけど・・・。」
「?」
「先ほど洛陽から勅使が来てね。3人にも知っておいて貰いたいんだ。」
そう言って公孫瓚は勅使から聞いた内容をそのまま高順たちに聞かせた。
1年ほど前から太平道と言う・・・全容は掴めていないが、そういった名前の「恐らく」宗教組織が勃興していた。
あまりに規模が大きすぎるので幾度も解散命令が出されたものの、一向に応じる気配が無い。
そんな中、数週間ほど前に洛陽にて反乱を起こそうとした馬元義という男を捕らえ、拷問で自白をさせた結果・・・太平道の手の者だと発覚。即日車裂きの刑で処刑したのだという。
その後、太平道を壊滅させようと数万の官軍を派遣したところ、「数十万」の黄色い鉢巻を頭に巻いた太平道の兵に反撃を食らって官軍が全滅。各主要都市を占領してその勢いは増すばかり。
それに恐れを為した現後漢皇帝「霊帝」は寵愛している側室「何后」の兄「何進」を大将軍に任命。太平道、いや、「黄巾賊」を壊滅させよ、と命令した。
何進は洛陽にある官軍の兵力では鎮圧できないと判断、各地の太守に兵を派遣するように勅使を遣わせた。その勅使の1人が公孫瓚の元へとやって来て勅令を伝えた。
掻い摘んで言うとそういうことなのだそうだ。

それを聞いた3人は黙っている。
劉備と趙雲はどうしたものか、と考え高順は「命令を下したのは霊帝ではなく十常侍だろうな。」と、別のことを考えていた。
「私は参加するつもりだし、配下も参加するべきだと言ってる。でも、3人の意見も聞いておきたいんだ。」
「うー、普通に参加するべきだよね?」
「そうですな。そのような輩、放っておく事こそ天道に反すると言うもの。」
「まあ、放っておいたら大変な事になるでしょうね。」
3人の言葉に公孫瓚は頷く。
「そういうと思っていたよ。で、話は変わるのだけど、今回の件は桃香にとって好機だと私は思うんだ。」
公孫瓚の言葉に劉備は「へ?好機って?」と間抜けな反応を返す。
「はぁ。つまりだ。独立するための好機だ、って言う事。考えてもみなよ、これだけの騒ぎになっているんだ。武力によって、という形で手柄を上げる絶好の機会じゃないか?」
「そうですね。劉備殿達がそのつもりで行くなら・・・恩賞に与る可能性は高いでしょう。そうなれば、どこかの土地とそれなりの地位を賜るかもしれませんね。」
「ふむ。そうなれば劉備殿の仰っていた「多くの人を守る」という理想に僅かながら近づく事になりましょう。」
公孫瓚の言葉に高順も趙雲も賛同する。
「え?え?えっとぉ・・・。その、あたしの一存で決められないかなぁ、あはは。愛紗ちゃんと鈴々ちゃんに相談したいんだけど・・・。駄目?」
「それは構わないさ。でも、なるだけ早く決めてくれよ?」
「うん!」
公孫瓚の言葉に元気良く頷き、劉備は走って部屋を出て行った。これから関羽達と相談をするのだろう。
高順も趙雲も、公孫瓚の判断は適切なものだと考えている。その魅力で他の欠点を補っているとはいえ統率力・政治力、どれをとっても劉備は公孫瓚に勝てるものが無い。
2人とも劉備が公孫瓚より有能だとは思っていないし、公孫瓚にしても別段おかしな思惑を持って独立を勧めたわけではないだろう。人の良い公孫瓚は素で劉備にとっての好機だと思っているのだ。
それくらいのことは劉備でも理解しているはずだ。彼女らにとってこの話を断るべき理由は何も無い。
「なあ、2人とも。」
公孫瓚に声をかけられた高順は思考を停止させた。
『何ですか?』
「桃香にああは言ったけど・・・その。」
どうも歯切れが悪い。何か悩んでいるのだろうか?
「えーと・・・ふ、二人は独立しよう、とか考えてるかなー。って思って。」
公孫瓚は何か自信なさげに、そんなことを言った。
「いえ、別に。趙雲殿は?」
「私も特には。・・・何故そのような事をお聞きなされる?」
高順も趙雲も公孫瓚の言いたい事がよく解らない。
「そ、そっかぁ。いや、それなら良いんだ。あは、あはははは・・・。」
乾いた笑みを浮かべながら力無く、かつ少し嬉しそうに公孫瓚は笑う。
その態度を見て趙雲は意地の悪い笑みを浮かべつつ「成る程・・・そういうことですか。」と呟いた。
「え、な、何だ?その何か考えてそうな表情・・・。」
「高順殿。伯珪殿は我々に出て行かれると寂しいと申しておるようですな。」
「なっ!」
「ほほー。」
趙雲の指摘に公孫瓚は思い切り首を横に振って否定し、高順は成る程とばかりに頷いた。
「ち、違うぞ!?今2人に出て行かれたら困るなー、とかそれくらいで!寂しいとか頼れる人が少なくなるなーとかそんな・・・あ。」
自分の言葉に真っ赤になって公孫瓚は俯いてしまい、そのまま黙り込んでしまう。さすがにやりすぎたか?と思う趙雲だったが、公孫瓚は暫くしてぽつぽつと話し始めた。
「正直言うと、さ。今2人に抜けられると本当に困るんだ。黄巾賊の規模は数十万。私の軍勢は1万程度。勿論戦うのは私だけじゃない。他の軍閥だって動くんだ。それでも数はこっちが不利みたいだけど・・・。」
公孫瓚の言葉を2人は黙って聞いている。
「趙雲、高順の武勇と統率力。そして高順の部下のあの子達の戦力。情けない事なんだけど、2人以上に力を持っている武将は我が軍にはいない。桃香が抜けるのも痛いんだけどね。この状況で、もし2人に抜けられたら」
「さて、俺はここで失礼します。」
「え?ちょ・・・。」
「高順殿!?」
公孫瓚の言葉を遮って高順は部屋を出て行こうとする。
「こ、高順~~~・・・」
なんだか、公孫瓚がすっごく悲しそうな顔をする。
「申し訳ありませんが、これから兵に一層気合を入れるように、と言わなければなりません。」
「・・・え?」
「え?じゃないですよ。黄巾賊との戦いが始まるんでしょう?今までの賊とは訳が違います。一部隊を預かるものとして兵士には言うべきことを言っておかねばなりません。」
では、と言って高順は今度こそ部屋を出て行った。
言葉無く呆然としている公孫瓚。そして。
「くく、あはははははっ!」
いきなり笑い出す趙雲。
「え、何だ!?」
「いえ。高順殿も素直ではないところがお有りだと。ふっ、くくく・・・。」
「何だ、どういう事だよー!?」
「ですから、高順殿は「黄巾賊との戦いが終わるまで出て行きませんよ」と言ったのです。」
「へ・・・?」
「当然、私もそのつもりですが。ここで公孫瓚殿を放って行くことなど私にはとてもとても。さて、私も兵に喝を入れて来なければなりませんな。」
「星・・・。」
思わず真名で呼んでしまう公孫瓚に苦笑しつつ、趙雲も部屋を出ようとする。
「その、あ、ありがとう・・・。」
恥ずかしそうに言う公孫瓚に「その言葉、高順殿にも伝えておきましょう。」とだけ言って趙雲は退出していった。
趙雲は先に部屋を出た高順に追いつこうと小走りに廊下を進んでいく。すぐに追いついたのだが、高順は壁にもたれて俯いてしまっている。なんだか落ち込んでるように見えるが・・・さして気にもせず趙雲は高順に話しかけた。
「高順殿?」
「あー、趙雲殿。どうなさいました?」
「私も兵に声をかけておかねば、と思いましてな。それと伯珪殿がありがとう、と申しておりました。」
「そうですか・・・。」
何だろう、本当に元気が無い。自分の判断に後悔しているのだろうか。
「高順殿、後悔でもしておいでか?」
「まさか。黄巾賊との戦いが終わるまで公孫瓚殿の元に留まる、というのは最初からそのつもりでしたからね。ただ。」
「ただ?」
「あんな似合いもしない格好の付け方するんじゃなかった、と絶賛後悔中なだけで・・・。なんであんな言い方してしまったのだろう・・・。」
ず~~~~ん、という表現が似合いそうなくらいに落ち込んだ表情を見せる高順に、趙雲はまた笑い出す。
「笑わないでくださいよー・・・。今、自決したいくらいには後悔してるんですよ?」
「最初、あんな受け答えをしたときには劉備殿に毒されて腹黒くなったか?とか伯珪殿が困る顔を見て楽しんでいるのか?と思ったものですが・・・いやはや。」
「ううっ・・・死にたい・・・。」
遠慮なく笑う趙雲の表情とは裏腹に高順のテンションは際限なく下がり続ける。
「ふっ、高順殿に死なれては私も困ります。戦場で私の動きに合わせてくださるのは貴方くらいしかおりませぬ。」
ここまで冗談めかして話す趙雲だったが、急に真剣な顔になる。
「ですが、軽々しく「死にたい」など・・・たとえ冗談でも2度と申されるな。」
「・・・?」
「貴方の命は、最早貴方だけの命ではない。貴方に従う兵士がいる。貴方を慕って貴方の後ろについていき、或いは貴方の横で共に戦うものがいる。高順殿が死ねば、行き先が無くなる者達がいるのです。」
「趙雲殿・・・。」
「少し説教がましいことを言ってしまいましたな。されど、これは私の本心です。貴方はもう、一騎駆けの兵に有らず。私の言った言葉の意味、よくよくお考えあれ。」
そんな事を言って、趙雲はその場を去っていった。彼女の後姿を見送り、高順は今言われた言葉を心の中で反芻する。
(俺の命はもう、俺の物だけではない、か・・・。)
それが命を賭けるべき舞台であれば、趙雲も高順も平気でその舞台とやらに臨むだろう。彼女は「今はその時ではないでしょう。」とも言っているようにも感じた。
どちらにせよ、今は黄巾賊のことだけに集中しよう。自分の終焉の地になるかもしれない徐州の戦までにはまだ時間はある。それまでに、何とか状況を変える事が出来れば良いのだが。

その1週間後、劉備は関羽らを引きつれ北平を発った。
公孫瓚の好意で劉備達は兵を集める事を許可されたが、その数は最終的に5000を超えている。その報告を聞いた公孫瓚は「私が募集してもその半分集まらないのに・・・」と相当に凹んでいた。
武器・防具、そして食料も公孫瓚から分けられており、ある程度軍としての体裁も整ったようだ。
彼女達が発つ時、一応高順らも見送った。この時、高順も「餞別」として烏丸から購入していた名馬3頭を贈っている。張飛が乗れるかどうか不安だったが、何とか乗りこなしていたようだ。
高順は劉備、関羽には苦手意識を持っていたが(メメタァされかかった)張飛にそのような意識を持つ事はなかった。
よく臧覇と遊んでくれたし、鍛錬に付き合ってくれたりもした。その感謝も込めて張飛に馬を送った際にこっそりとお菓子を渡している。
その後、諸葛亮と鳳統という少女が劉備軍に合流しているのだが、それは高順達にとっては与り知らぬ事であった。
だが、もしもその2人の姿を見たら高順はこう言ってたであろう。
「あの天才軍師2人がこんな幼女だとーーーーー!?」と。

劉備軍が北平を出立して更に数日後、公孫瓚も1万3千の兵を率いて豫州黄巾軍と戦うために出撃。留守として王門・公孫範が3000の兵で北平を固める事になっている。
この戦いの最中、高順は戦とは関係のないところで色々と苦労をする羽目になるのだが・・・。
それが語られるのはもう少し先の事である。





~~~楽屋裏~~~
私のシナリオでは人物崩壊がすごいですあいつです(挨拶
もう全員恋姫キャラじゃなくなって別人になってるよ・・・orz
この回は幕間みたいなもので短いのです・・・(言い訳


豫州黄巾党は黄巾本隊でそれこそ本気で何十万の軍勢だと思うのですが・・・。そこにいきなり行かねばならない公孫瓚の運命は如何に。
本来は黄巾「賊」という呼び名ではなく単純に「黄巾」だったらしいですね。
このシナリオの初期ですが波才を初めとした豫州・潁川の黄巾賊の根幹を成す人々が全員戦死、処刑されてますので曹操さんは随分楽になってます。
黄巾は本編よりも早く終結してしまいそうです。荊州方面ももしかしたらすぐに収束するのではないですかね。
この乱によって漢王朝の寿命が無くなるのは変わりませんけど。

さてさて、高順君の明日はどこなのか。
次回作じゃない、次回にご期待ください・・・え?期待なんてしてないって?(汗



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ (また短い)番外編その3
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/01 07:50
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 番外編その3

劉備さんと高順さんが中身の無い議論をしてみたでござる。の巻。


~~~北平。城の中庭にて~~~
「う、うう。高順さんの言う事難しい~・・・。」
頭から湯気を「ぶしゅ~~~」っと上げながら劉備は机に突っ伏した。
彼女は高順にお願いして勉強を教えてもらっている。蘆植という人の下で公孫賛と共に学んだはずなのだが、お気楽ご気楽な劉備はあまり勉学に熱心ではなかったようだ。
人の上に立つなら必須な事とか、そういう物を何も知らない。「信頼の輪を広げれば何とかなる!」みたいな感じで突き進んだ結果、こんな人になってしまったらしい。
「・・・難しいですか。これ?」
高順が見ている参考書の題には「芋でも解る!簡単すぎる万能政治参考書」とかそんなことが書かれていた。芋でも解るというのが地味に意味不明だが、言ってる事は簡単だ。
要約すると「金を稼げ・卑怯なことバッチコーイ・兵士一杯用意しろ」とか、そんな程度である。
鍛錬の時間を割いて10数日以上。これだけ教えているのだから少しくらいは成果を出してほしいものなのだが・・・。現実はそれほど甘くなかった。
その10数日で彼女の性格をある程度理解できてはいる。最初はただの考え無しとか、史実よろしく道化師か。とも思っていたが、どうもこの性格は天然らしい。
というか天然ボケ。それ以外の何者でもない。案外腹黒い事を言ったりもするのだが、自身には何の自覚も無いらしい。
史実の事柄から「油断ならない人」と思っていたが、それが天然ボケから来る腹黒さだったとは。
ただ、悪い事ばかりではない。「人を騙す」ことが根本的に苦手なようで、嘘をついて人の土地を奪い取るとか、そういう黒さは無いのだ。
劉備は恐らく、史実どおりの歴史の流れ方をすれば西・・・益州を併呑するであろう。
史実でも演義でも信頼してくれた相手に矛を向けて奪い取った形だ。が、この劉備は・・・人の声に、部下の声に押されて獲りに行くタイプだな。と高順は考えている。
外交なんかは持ち前の腹黒さで地味に嫌がらせをしつつチクチクと責める形かな?とかそんな事も思う。
だが。この頭の悪さは如何ともしがたい。つーか無理。こりゃ関羽さんも苦労するはずだわ。高順は内心で劉備の部下になるであろう人々の苦労を思い遣っていた。実際、今自分がきっついし。
「もぅ、高順さん!私にも解るように噛み砕いて説明してよ~。今の私に何が足りないのか良くわからないよぅ・・・。」
「これ以上何をどう噛み砕けと・・・?」
何度繰り返したかも解らないやり取りである。自分も頭は良くないし、教える才能なども無いと思っているがここまで理解してもらえないと「教えてる事がそもそも正しいのかどうか」する解らなくなってくる。これは重症だ・・・。
「あー・・・解りました。じゃあ、もう1度説明しますからね。これで理解してくれないと俺泣きますよ?こういうことは孫子とか知らない俺が教えるのはおかしな話ですけどね。」
さて、と言ったところ。そこへ趙雲が通り掛った。
「おや、劉備殿に高順殿。いけないお勉強の真っ最中ですかな?」
「また出し抜けに妙な事を。普通のお勉強です。」
「えぇ~、星ちゃんったらぁ。そんなこと教えてもらってないよー?」
・・・疲れる。俺、よくやったから森に帰ってもいいよね?
そのまま席を立とうとする高順の首に劉備がしがみ付く。
「待ってー!お願いだから見捨てないでー!?」
「・・・また俺を絞め殺すつもりですか劉備さん?」
不機嫌そうな顔でまた席に着く。2人のやりとりを見ていた趙雲は「あー。やっぱり高順殿は劉備殿が苦手なのだな・・・」と思うのだった。
「はぁ。じゃあもう1回お教えしますよ・・・って、何で趙雲殿まで座っておられるので?」
見ると趙雲も空いている席に座っていた。
「や、お気になさらず。」
「無理です、気になr「じゃあ星ちゃんも一緒にお勉強しよ?ね?ね?」
高順の言葉を遮り星の腕に抱きつく劉備。どうも一緒に話を聞いてくれる人が欲しかった様だ。多分解らない事を全部丸投げするつもりだろう。
「ははは。一緒に勉強はともかく高順殿がどのように物事をお教えするかは気になりますな。」
「・・・そうですか。じゃあ聞いててもいいですよ。では、気を取り直して。劉備殿。今のこの世の中で大成しようとするならば先ず何が大事だと思われますか?」
「愛と友情と信頼!」
「・・・微妙に間違ってるような正解のような。これはあくまで私見ですがね。他者との繋がりです。」
「やった、正解♪」
「最後まで聞いてくださいね。この繋がりですが、中央の政治・財界のお偉方との繋がりと言う意味でもあります。それは何故か?これは何時の時代でも変わりませんが人の上に立つと言うのは「出世する」と同義です。そうですね・・・趙雲殿に質問です。」
「ふむ、何です?」
「人の上に立つ。中央との繋がり。そしてこの混迷した時代。元々人の上に立つ身分に生まれた者であればともかく、劉備殿のような無位無官。どのようにすればのしあがれますかね?」
「簡単ですな。目に付くほどの功績を挙げることです。武勲であれ何であれ。」
「そうです。劉備殿には幸い関羽さんや張飛さんのような武勇の士がついています。武勲を上げることはそう難しくないでしょう。」
「うんうん。」
「では、その後は?」
高順の質問に劉備が首を傾げる。彼女はいつもここで躓くのだ。
「う~~~・・・平和な時代になる?」
「一気に飛躍しましたね・・・。じゃあ、こう仮定しましょう。劉備殿が大功を上げてどこかの郡とか都の太守になったとして。そこで何が必要になってきますかね?」
「う・・・えーとぉ・・・住民への優しさ!」
「んー。なんで微妙にはずれなのか、そうでないところを突いてきますかね?住民はその後です。趙雲殿はどう思います?」
「さて。人材ですかな?」
「そうです。人材ですね。もう1つ、追加で。」
少し首を傾げる趙雲だったが、すぐに「資金ですか?」と答える。
「正解です。人材とお金。これが重要になってきます。これはあくまで劉備さんに当てはめての答えですけどね。」
「ふえ?あたし?」
劉備が自分を指差して不思議そうな顔をする。
「ええ。じゃあ質問ですが、劉備さんが独立したとしましょう。その後何をするべきかわかるのですか?街を治める、とは簡単に言いますが、治め方をご存知なのですか?」
「え?ええと・・・何をすればいいのか解りません・・・。」
「お金を得ないといけないでしょう?何をするにせよ先ずお金です。で、お金を稼げる人が劉備さんの部下にいますか?」
「今はいないけど・・・あ、高順さんが部下n「それはありません。」はぅ・・・。」
こんな言葉の応酬を見て趙雲が「くっくっく」と笑う。どうも彼女から見ると出来の悪い漫才のように見えるらしい。
「ですから、人材なのですね。貴方には譜代の臣がいないのです。これからどうすればいいのか、というのを示してくれる頭脳役が必要になってくるんです。」
「あぅ。じゃあ、お金は?」
「文官ですね。民から金を得て、その金を管理して「どこで」「なにに」使ったのか。どう使うのか。それを考えてくれる人も必要です。」
高順の言葉に趙雲も頷く。
「そうですな。今の劉備殿は兵士もいなければ資金を得るための方策を考える部下がいない。独立したとて、その先の道を示す軍師もいない。」
「何もかも、1人でできる訳じゃないんだ・・・当たり前だよね。」
「・・・ここに来るまでにすっげー時間がかかりましたよ。」
なんでこんなに時間がかかるのかなぁ?俺の教え方よほど悪いのかなぁ?と悩む高順だったが、すぐに気を取り直す。
「そういった人々を迎えて、資金を稼ぐ事ができればあとは領土拡張です。その辺りは公孫瓚殿の方が詳しいでしょう。この話はこれで終わりですね。」
「はぁい。・・・なんか、難しいんだね。それに、何をするにしても人の力を借りる事は重要なんだ・・・。」
「全くもってその通りです。自分ひとりで出来ることなんてたかが知れてます。では、これで授業は終わりです。」
「あ、ごめん、もう1つだけ!」
「・・・はぁ。何ですか?」
「義とか情とか、そういう言葉を大々的に使わないほうが良い、っていうのはどうして?」
これは、高順が「授業」を始めた当初に言った言葉である。これからは血を血で洗い、人を騙して領地を得るような、そんな時代になっていく。
強かさが必要になる、と言ってもいいかもしれない。劉備はその強かさを天然で発揮できる人だが、こんな時代に義や情を広告に使うのは・・・少なくとも今はあまり良くないと思うのだ。
劉備が史実どおりの行いをするかどうかはともかく、その言葉が偽善になって、結局は名声を下げやしないか、ということでもある。
なんだって、いつか敵になるであろう劉備にこんな事を教えているのか。彼自身でも解ってないが、そこが高順の甘さであり弱点の1つでもあるのだろう。
恐るべきはそうやって他人の好意を無自覚に利用してしまっている劉備なのだろうが・・・。自身の信念の大元となる事を否定されれば劉備はずっしりと落ち込むのだろう。
その辺り、ぼかしてやるべきかな?と考えつつ。
「そうですね。簡単に言えば「それを言えるだけの実力がない」ですかね。」
「うぇ・・・実力?」
まだよく解っていない劉備だが、隣にいた趙雲は得心したように頷く。
「つまり・・・劉備殿の信念は弱き人々には心地よい響き。しかし、力無き者が何を言おうと、それを実行できなければ弱者の遠吠えに過ぎない。民を納得させたければそれに見合うだけの力量を得よ。そう仰りたいのですな?」
「まさしく、その通り。別に劉備さんの信念を真っ向から否定する訳ではありませんけど・・・信念を実行したいのであれば、ということですかね。それまでは義と情で民を救うという言葉、あまり使わないほうが宜しいのでは?と。」
誰も彼も救える訳ではない。実際は否定したい高順だが、それはまぁ・・・これからの彼女の行動を見れば解るのだろう。数年先の話か。それともそのときに自分が死んでいるのかすら解らないが、史実どおりに進めば嫌でも彼女の本質は見えるはずだ。
「う~・・・でもでも・・・。」
尚も言い募ろうとする劉備だったが、高順はそれを遮った。
「はい、授業はここでおしまいです。これ以上のことを知りたければ・・・そうですね、軍師を得た後にしていただきましょう。まだあなたには自身の進むべき道が見えていない状況ですからね。」
「あう。解りました・・・ありがとうございました。」
高順の言葉にぺこりと頭を下げて劉備は参考書やら何やらを抱えてその場を去って行った。残ったのは高順と趙雲のみ。しばらく沈黙を続ける二人だったが、
「・・・ふふ。高順殿も人が悪い。」
先に趙雲が口を開いた。
「はい?俺は嫌な人ですよ?」
「ご冗談を。あなたが劉備殿を嫌っているのは何となく解りましたが・・・それにしては面倒見が良いですな?」
「どうでしょうね。我ながら馬鹿だとは思ってますけどね。」
肩をすくめる高順を見て趙雲はハハハ、と笑う。
「嫌だ嫌だと言いつつも結局は面倒を見てしまう。ふふ、上党でお会いした頃からそうでしたが。その辺りは全く変わっておりませぬな。」
「むう。なんだか成長してない、と言われてるような。」
そんなことはありませぬ。と趙雲は優しい笑顔で高順を見る。実際、彼は良い意味で性格が変わっていない。
武芸の腕は随分上がったと思う。3人娘や沙摩柯。今はいないが蹋頓との組み手で腕を磨いていたし、自分や張飛とも鍛錬を行ってもいる。
趙雲から見ても3人娘や沙摩柯のような、どちらかといえば「アクの強い」部下にあそこまで慕われている(普段は弄られているけど)というのは大したものだろう。
劉備と高順は、どことなく似ていると思う。現実を見ているか否か、などの違いは多少あるものの「他者に甘い」ところはそっくりだ。
趙雲から見た高順の性格は「内側へ向く」性格だ。先ず大事なものを守ろうとする。普段は「死にたくないでござる。」とか意味不明なことを言っていて死と言う概念を極端に恐れているように見える。
妙なとこで小心者なのだ。にも関わらず戦や、仲間達に危害が加えられようとするとわが身を省みず敵陣へと向かってしまう。
怖いのはその傾向が更に極端になりはしないか、ということだが。彼の周りにいる人々を見る限り、そんな心配も必要ないだろう。
武将として、高順は彼女のことを非難できたりするような立場ではないと思う。甘さが捨て切れていない。しかし、趙雲にとっては高順は劉備とはまた違った魅力を持った人物だった。
自分も彼もこのまま公孫賛に仕え続ける事はないだろう。もしかしたら、最終的に敵同士になるかもしれない。だが願わくば・・・お互いがどのような立ち位置になるかは別として、彼とは同じ道を歩みたいものだ。
「さて、俺はここで失礼しますよ。ちょっと楽進達や閻柔さんと田豫さんにお願いしてる事がありましてね。」
「厨房ですか?」
「うん、そうdなんで解ったんですか!?」
「いえ、沙摩柯殿に「高順が今度はお菓子っぽいの作るみたいだぞ」と聞きまして。」
趙雲はしれっと言い放つ。そして高順はジト目に。
「もしかして、趙雲殿がここに来たのって・・・「それ」食べたいからなのでは?」
「ほう、これは異な事を仰せになられる。ですが高順殿がそこまで言われるのであれば味見をさせていただきましょうかな?」
「・・・趙雲さんも腹黒ですね。」
「おやおや、遠慮などせずとも宜しいのですぞ?」
「食べたいならそう言えば良いのに・・・。まあいいか。趙雲殿にも味見していただきましょうか。お酒のつまみにはなりそうも・・・あ。」
「ふふ。また何か思いついたようで。後々が楽しみですな。では、参りましょう。」
彼の言う「それ」は「タルト」である。バニラエッセンスとか、そういう類のものは無いが他の材料なら何とかなるな。と考えて皆に材料を集めてもらい、厨房の人に協力をお願いして作成しているのだ。そろそろ焼きあがった頃ではないだろうか?
そして酒のつまみ云々で思い出したのは「ソーセージ」に香辛料を更に突っ込んで「チョリソー」っぽくできないかな?と思い至ったのであるが・・・。
それはともかく、高順は趙雲に急かされて厨房へと歩き出す。
その後、タルト作成に成功したり、それを公孫賛がいたく気に入ったり、端折られた(単純に呼び忘れた)劉備たちに「なんで私達の分は無いのー!?」と逆切れされてしまい、リアルメメタァを関羽にかまされそうになったりと、いろいろな話があるのだが―――

それは本編には、全く関係のない話である。




~~~楽屋裏~~~
こんな簡単な事がわからないほど桃香はアホの子じゃないと思いますが、薄力粉と小麦粉の違いがわからないあいつはアホの子です、あいつです(挨拶長っ
でも需要と供給の関係があまりわかってない彼女だからきっと問題はないと思うんだ・・・。
そして、義と情云々。劉備は弱小の頃からこれを標榜してましたね。それが逆に足かせになったのではないかなと思うのです。
だから卑怯な真似をできなくなるし、やったらやったでそれを口実に攻撃されるし。したたかな彼女には痛くも痒くも無いでしょうが、少しくらいはまともな乱世の英雄になれる・・・かなぁ?(苦笑
本編最初期だと本当におつむの中身が無い子ですね、劉備は。
蜀ルートではそれが徐々に君主らしくなる・・・なってたのかなぁ?(汁

実を言うと、本編よりこちらを先に投稿せねばならないはずなのですが・・・ぼけててこっちが後になってしまいました。
24話で「いつ高順くんが関羽に頭握りつぶされそうになったの?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、投稿順が逆になってます(汗
なんでこんなミスをしたのやら・・・。


ではでは、またお会いいたしましょうノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第25話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/03 15:23
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第25話


鄴と呼ばれる地。黄巾賊と呼ばれる集団の根拠地はそこにある。
公孫賛率いる1万3千は鄴に向かうまでに幾度も黄巾賊と戦い続けた。そのほとんどが小規模な軍勢であるが、放っておく事はできない。
そのまま放置すれば関係のない村落を襲うだろうし、鄴の黄巾本隊と合流か、あるいは背後を脅かされる危険が付きまとう。
潰しても潰してもまた出てくる黄巾賊。まるでもぐら叩きのようだ、と高順は思う。
これほどまでに民間に浸透していたという事にも驚いた。未来知識で知っていたが・・・どうも甘く見ていたらしい。数十万どころか本当に100万ほどの勢力ではないだろうか。
それはともかくも、高順隊も趙雲隊も、公孫賛軍の主力部隊として戦い続けた。趙雲も高順もこれまでの活躍で認められたのか率いる兵士数が増えている。趙雲は1000、高順は700と言ったところだ。
劉備軍と鉢合わせをすることは無かったが、彼女達はもっと南の方へと向かったらしい。劉備が曹操軍と協力して黄巾を叩いてるなど露ほども知らない高順だったが「まあこんなとこで死ぬ人たちじゃないしなぁ。」とさして心配もしていなかったのであった。
数ヶ月ほど同じことの繰り返しをしていた公孫賛軍だったが、ようやくと言うべきか鄴まで進む事が出来た。
荊州方面・潁川方面共に各地の太守と官軍が(表面上)協力して片を着けたからか、史実よりも早く黄巾賊を追い詰める事に成功したようだ。(潁川方面はほとんど黄巾の勢力は無い。以前に曹操が潁川黄巾賊を立ち上げたであろう黄巾幹部を軒並み滅ぼした事が原因である。)
公孫賛の率いる兵士は1万1千程度にまで減ってしまっていたが、何とか鄴にたどり着いていた。
その鄴城には「天已死 黄天当立 歳有甲子 天下大吉」と書かれた旗が多く立っている。正直に言うと見飽きたと言いたい位に何度も見てきた旗だ。
それだけ多くの戦い続けた、と言うことだ。
公孫賛軍は少し遅めに到着してしまったが、どちらにしても独力で攻める戦力は無い。この地に既に集まっている他の軍も軍勢も自分達以外の軍勢が集結してからでいいだろうと思っているはずだ。
当然、自分達が美味しいところを持って行こうと言う思惑がある。如何に被害を少なく、如何に大きな勲功を得るか・・・それが一番の関心事であった。
それは公孫賛にとっても同じ事。やはり戦力を失いたくは無い。今この場に集っている軍勢は10万にも満たないが・・・黄巾はまだ20万、或いは30万以上の兵数だ。
官軍の司令官・・・皇甫嵩という名の女性だが、彼女もまた悩んでいた。いつ攻撃を仕掛けるべきか、と。蘆稙は宦官に賄賂を贈らなかった為に更迭されてしまい、朱儁もまた更迭されるのでは?という噂が流れている。
そうなると皇甫嵩としてもやりにくくなる。ようやく集まりだした諸侯が不安を覚えてしまえば士気を喪失しかねない。武働きなど期待できなくなってしまうのだ。
その上にいつまで待てばいいのかと言う焦燥感も一部諸侯の間で流れ始めている。
役に立つか立たぬか解らぬようなものが多い状況だ。曹操や袁家、公孫賛。頼れそうなものが多いのもまた事実ではあるのだが・・・。初期では黄巾戦に参加していた呂布の軍勢も、今は不穏な気配を見せている西涼に派遣されてしまい、ここにはいない。
最悪、今現状で集まっている軍勢で攻めるしかない。しかし、黄巾の兵力は2~30万ほどという報告を聞いている。
これだから政治と言うものは嫌なのだ。倒すべき敵は目の前にいるのに、こんなときにまで賄賂だ何だと。高順の仕えていた丁原も宦官を嫌っていたが皇甫嵩もまた宦官を嫌っていた。
と、そこへ伝令が皇甫嵩の陣幕に入ってきた。内容を聞くと袁術の軍勢が到着したらしい。
伝令の報告に、そうか、と呟いて皇甫嵩は陣幕から出て行き確認をする。
その視線の先にあるのは「袁」の旗と、到着した兵士が2万ほど。そして、その軍勢の中に・・・「孫」と書かれた旗の下に、それほど規模の大きくない部隊も混じっていた。

~~~夜、公孫賛軍・宿営地~~~
宿営地で高順らがやっていること、それは夕飯作りであった。
周りから見たら「何で武将がそんなことを!?」と思うのだろうがこれは高順隊ではごく普通の常識だった。当番制で食事を作るのだが、その当番の中に高順も入っているだけのことだ。
兵士も最初は驚いていたが、今ではその光景はありふれた物となっている。味噌汁に具を突っ込み、飯を炊き、惣菜の用意など。700人規模とはいえ、けっこうな量である。
公孫賛本人は皇甫嵩の陣幕、つまり本営に呼び出されており、恐らくは今後の事を相談、指示をされているのだろう。
高順は丁原がいないか探してみたがどうもここにはいないらしい。
その代わり「曹」の旗を見つけたときはなんだか「どよ~~~ん」と気分が沈みかけた。顔見知りではあるし、前に虹黒が夏侯惇を跳ね飛ばし・踏み潰し・蹴り飛ばし・の3連撃かましたので謝罪に行くべきかもしれない。だが行ったら行ったでろくな目に会うまい。
まあ良いや、と思って気にしないでおく事にする。どうせ高順は自前の旗など持っていないので目立つ事もない(虹黒に乗れば嫌でも目立つ)。
一部隊を率いるとは言え、彼も趙雲もあくまで公孫賛の私兵であり客将だ。「公孫」の旗が在ればそれで良い。
それから暫くして公孫賛が帰って来たようだ。伝令から「高順殿と趙雲殿も陣幕までお越しください」と伝えられたので、後は3人娘と沙摩柯に任せて陣幕へ向かう事になった。
陣幕には公孫賛、そして今回の戦いで従軍してきた武将全員が揃っている。
「ああ、良く来てくれた。すまないな、炊き出しの最中に。2人とも、座ってくれ。」
その言葉に従い高順達は席に着く。
「よし、これで全員揃ったな。先ほど皇甫嵩殿・・・今回の戦の総司令官とでも言うべきかな。その皇甫嵩殿に呼ばれて他の諸侯と協議をしてきた。結果・・・2日後、早朝に総攻撃を仕掛ける事になった。」
公孫賛の言葉に諸将がざわめく。
「静かに。今回の戦いは基本的に攻城戦になる。当然、黄巾が城から打って出て来る事も予想されるのだが・・・どうも黄巾は兵糧が欠乏しつつあるらしいな。」
これは当然と言えば当然だ。鄴は相当堅固かつ巨大な城、城砦と言っても良い。だが巨大と言っても何十万の兵を一箇所に留めておけばその分食料の消費も早くなるし、衛生状態も悪い。
鄴を囲んで数週間になるが、攻める側より攻められる側のほうが有利なこの状況。出撃してこないのはそういった事情があるのだろう。、
「そして、まだ仮ではあるが陣割りが決定した。我々は鄴の北門を攻める。東からは曹操、西からは袁紹、南から皇甫嵩殿。他はまだ聞いていないが・・・すぐにそこらも決まるだろうな。」
さすがに規模の大きい城だけに、東西南北に門があるようだ。完全に包囲して張角達が逃げられないようにする。ただ、問題が無い訳ではない。張角の顔を知っているのもが誰もいないのだ。他に張宝・張梁もいるのだが性別も解らない。皆殺しにしろ、ということか。
そんな命令を受けているわけではないだろうが、そうせざるを得ない場合もあるかもしれない。そこは覚悟を決めるべきかもしれない。
その後、公孫賛軍の陣割りも発表された。現状のままで行けば騎馬隊の出番はあまり無いだろう。城攻めであれば攻城兵器、そして弓・歩兵隊の出番だ。
万が一黄巾が出撃した場合の事も考え、先鋒部隊にも趙雲、高順部隊が追従する事になった。
細かい打ち合わせを終えて軍議もお開きになる。ほとんどの武将が出て行った後、高順も趙雲も陣に戻るか、と思った矢先・・・とある人々が公孫賛を訪ねてやった来たのだった。

伝令が陣幕に入ってきて公孫賛に耳打ちをする。
内容を聞いた公孫賛はどうしたものかと迷っていたが、まあいいか、と呟いて伝令に「入ってもらっても構わない。」と言った。その言葉を受けて伝令は陣幕の外へと出て行く。
「・・・何かあったのですか?」
「いや、ちょっとした客が来たみたいでね。もう少し早く来れば良かったのだけど。」
高順の質問に公孫賛は首をすくめた。
「ふぅむ、どなたが来られたのでしょうな?」
「ああ、それは―――」
「失礼するわ。」
言いかけた公孫賛だったが、そこにその「客」とやらが入ってきた。
客の数は3人。皆、肌の色が浅黒い。背も高く、スタイルも抜群だ。その上美人ときている。現代世界であればどこかの有名なモデル、と言っても誰も疑わないだろう。
そして、服の布地の面積が妙に少ない。豊満な胸が溢れそうなほど・・・簡単に言えば凄まじい露出度であった。
1人は眼鏡をかけていて、割ときつそうな感じのする女性。1人は胸元の開いた少し薄い紫色のチャイナドレスを身に纏っていて、妖艶な女性だ。
そして、もう1人は紫か、桃色に近いような感じの髪を蓮・・・?のような髪飾りで束ねて後ろに流している。額に真っ赤な塗料で紋様のようなものを描いている。
この女性がこの3人の中でリーダー格なのだろう。
「あー・・・ようこそ、お越し頂いた。」
その凄まじい美女3人を見て言葉を失っていた公孫賛だったが、礼儀に従って拱手して迎える。
先頭にいた女性も拱手をして応える。そして、笑顔でこう言ったのである。
「お目にかかれて光栄だわ。私は孫策、字は伯符。」
その言葉に高順は1人呆然としていたのであった。

これで、三国の英雄3人(孫権か孫堅でもいいけど)が出てきた訳だ。しかし、策さんが?孫堅さんはどこにいるんだ?
それに、あの後ろにいる2人。多分、眼鏡のほうは周喩か陸遜・・・孫策が連れて来たって事は周喩だろうな。
あの胸が一番でかい人・・・誰だ?程晋?それとも朱治だろうか、あるいは黄蓋?そこまでは解らないけど・・・
しかし、3人とも凄まじくナイスプロポーションですよ。あの胸の大きさ、蹋頓さんや沙摩柯さんともタメを張る。呉のおぱいはギガントか!?そうじゃない、いや、落ち着け俺。

そんなことを考えている高順と、趙雲の目の前で公孫賛と孫策は色々と話をしている。
「こちらと共同で当たりたい、と。袁術殿はそう仰ったのか。」
「ええ。袁術軍の先鋒として出るのは私だけどね。」
「こちらとしては構わない。我々の持ち場は既に決まっているからな。しかし・・・こちらから孫策殿の部隊に援軍、それも騎兵部隊を送ってくれと言うのは虫が良すぎないか?」
「あたしに言われてもなぁ。これはあくまで袁術の言い分だし・・・ま、自分の軍の損害出したくないだけなんでしょ?正直うざいったら無いわよ。」
そんなことを言い出す孫策に後ろにいた眼鏡の女性が注意する。
「おい、孫策・・・。」
「解ってるってば、周喩は心配性ね。・・・でも、助けが欲しいのは本音なのよ。うちは歩兵ばっかで騎兵が全然いないもの。向こうが出撃してくると数が少ないからきっついのよねー。」
「ふーむ。」
公孫賛と袁術軍の兵を足すと3万前後にまで膨れ上がる。公孫賛の軍勢だけでは明らかに力が不足しているので袁術の申し出は受けるべきなのだが・・・公孫賛側から先鋒として出る兵数はおよそ4千と言ったところ。
袁術側の先鋒は孫策の5千ほど。どうも孫策は袁術の客将といった感じで立場が良くないらしい。何かあったらすぐに見捨てられる形になるだろう。
そうなれば公孫賛側の軍勢も巻き込まれて痛手を負うのが目に見えている。袁術の目論見が「自軍の兵の被害を最小限に」という事は解りきっているが・・・さて、どうしたものだろうか。
「はぁ。仕方ないな。こちらも兵に余裕があるわけじゃないから、回せても少ないと思うけど。それでも良いなら。」
「うん、構わないわ。都合してくれるだけでこちらとしては大助かりよ。」
「どの部隊を派遣するかはすぐに決めて、明日向かわせるよ。それで良いかな?」
「ええ。・・・では、そろそろ失礼するわ。また会いましょう。」
拱手して孫策達はその場を去って行った。
「・・・はぁ~・・・。頭が痛くなってくるよ・・・。まさかこっちから兵を派遣だなんて。」
疲れた、と言わんばかりに項垂れる公孫賛。本当に困っているようだ。
「これも弱小太守の弱みだなぁ。・・・でもどうしよう。」
騎兵部隊と言えば白馬義従だが、これは公孫賛直属の部隊である。小隊長などはいるが、部隊長と言う意味では公孫賛のみ。そうなれば他に主力騎兵部隊として考えるのは・・・趙雲か高順だ。
公孫越あたりを派遣しようかとも思ったが、能力を考えると派兵するにしてはどうも頼りない。きっちりと戦力になる部隊を送らないと、面子が立たないと言う問題もあるのだ。
そうなると必然的に高順、或いは趙雲になる。
悩む公孫賛だったが、仕方ないとばかりにため息をついた。
「すまない、高順・・・。悪いんだが明日、援軍として孫策殿の陣に行ってくれないか?」
「こちらは客将ですからね。行けと言われれば行かなくてはなりません。孫策殿の陣に合流するのは明日で良いのですよね?」
「うん。本当にごめんな・・・。」
「構いませんよ。」と笑って高順は陣幕を出て行った。それに趙雲もついて行く。
「高順殿、貧乏くじを引きましたな。」
「そうかもしれませんね。ですが、これは実質袁術からの要請ではなく命令みたいなものですからね。」
「向こうの方が勢力は大きいですからな。仕方ないといえばそれまでかも知れませぬが。」
「ええ。・・・では、俺はこちらなので。」
「うむ、ではまた。」
陣が別にあるので両者は別れて自分の陣へと歩いていく。
その途中で考えている事が1つ。
「もしかして、ここで微妙に歴史が変わるか?」ということだった。
場所や時期は違うかもしれないが、袁術に要請を受けて出撃するのは本来は公孫賛の弟である公孫越なのだ。
そこで公孫越は戦死して袁家と公孫賛の間柄は険悪になる。少なくとも歴史上ではそうなっている。
だというのに、まさか自分がその役目につくとは思いも寄らなかった。
もしかしてここが自分の死に場所か?と思うと背筋も寒くなるというものだ。だが、3人娘や沙摩柯もいるし、何より孫家の人々も一緒だ。
大丈夫だろう・・・いや、大丈夫だと思いたい。
考えつつも暫く歩いていくと、孫策達が高順の陣付近で立っているのが見えた。出て行ったのは自分達より前だったはずだが、こんなところで何をしているのだろう?
高順の陣では現在夕餉の支度をしている。高順は支度を開始した頃に呼ばれたのだが、ちょうど支度が終わった時間だったようだ。
味噌汁を炊く良い匂いが漂ってくる。
「んー。良い匂いねぇ~。」
「ああ。今まで嗅いだ事の無い匂いだが・・・ふむ、肉を焼いている匂いもするな。」
「ふぅむ、食欲をそそられる匂いじゃな。・・・ったく、袁術め。もう少しマシな飯を回して欲しいものよな。」
「ふふ、それは祭殿が贅沢なだけでしょう?」
「なんじゃとー!?ワシが贅沢なのではない、冥琳(周喩の真名)が淡白なだけであろう!」
「ほら、二人とも喧嘩するんじゃないわよ。・・・でも、正直羨ましいわね。美味しそう。」
「ならば、食べていかれますか?」
「え?」
いきなり後ろから話しかけられたことに、3人は多少驚きつつ振り向く。
「あ・・・えーと。貴方はさっき、公孫賛殿の陣幕にいたわよね?名前は・・・」
「名乗っておりませんね。俺は高順と申します。以後お見知りおきを、孫策殿。」
「え、ああ。そう。よろしくね?」
拱手した高順に拱手を返す孫策。
「ところで、食べてく?って今言ってたけど。あなたがこの陣の責任者なのかしら?」
「ええ。そうですよ。なんだか「良い匂い」だの「食欲がそそられる」だの「袁術がけち臭い」だのと仰っておられたので。」
「・・・ワシ、そこまでは言っておらぬぞ・・・?」
「はは、冗談ですよ。それはともかく、夜も更けて寒くなってきましたからね。失礼を承知で申せば・・・その、お三方の格好では寒くないだろうか?と思った次第。少し食事をして体を温めてください。」
高順の言ったとおり、3人は凄まじいまでの薄着である。どうして胸とか露出しないで済むの?と疑問を持ちたくなるくらいに。
「別に寒くは無いけどね・・・でも、本当に良いの?わたし達誘っても良い事なんか無いと思うけど?」
「遠慮などしないで頂きたい。食事と言うのは皆で食べるから美味しいのです。客が来れば皆喜ぶでしょうしね。」
さ、お早く。と急かす高順に押されて孫策達は困ったような表情で歩き始めるのだった。

~~~高順の陣~~~
「おそーい!何やっとたんや!?」
「え、俺のせいじゃないよね!軍議で呼ばれたんだから俺悪くないよね!??」
「皆を待たせるのが悪いの!よって高順さんが悪なの!」
「悪とか断言された!?」
「お前ら、隊長を困らせてそんなに楽しいか?」
『うん』(即答)
「・・・まあ、何だ。高順、強く生きろよ?」
「俺、もう駄目っぽい・・・。」
帰陣早々、部下に目一杯文句を言われて落ち込む高順と、それを見て驚きのあまりぽかん、となってる孫策達。
なんというか、上司と部下の間柄が随分不明瞭に見える。軍規がないわけではないだろうが・・・。
「・・・ところで高順。この3人は何者だ?」
「あら、自己紹介してなかったわね。私は孫策。で、眼鏡が周喩で乳でかが黄蓋。」
「・・・眼鏡。」
「・・・乳でか・・・。」
なんとも失礼すぎる紹介である。というか全員胸は大きいと思うのだが。
「・・・凄まじく失礼な紹介ですね、孫策殿。っと、それは後にして。悪いんだけど孫策殿達の分も用意してくれる?」
高順に言われて楽進が「解りました、しばしお待ちを。」と頭を下げてから歩いて行き、数分もせず戻ってくる。
お盆の上に皿やらお碗がいくつも乗っている。豚汁やら白米やら魚やら野菜やらウインナーやらチョリソー(っぽくしたもの)やら。色とりどりである。
それを楽進はどうぞ、と言って3人に渡していく。
良く見ると兵士たちも思い思いのところに座り、自分の皿を足元に置いていたりする。孫策らは「何で食べないのか?」と思う。
高順は全員に食料がいきわたった事を確認して「それでは皆さん、手を合わせてください!」と叫んだ。
その声に合わせて皆が手を合わせ、孫策たちも釣られて同じように手を合わせる。そして、全員で―――
「いただきまーす!」
と高順と同じように叫んで、一斉に食事を取り始める。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
孫策達は驚いて声も出ない。まさか、こんなことを部隊丸ごとでやるなんて。
「どうしました?美味しいですよ?」
「え?あ。うん。じゃあ、一口・・・。」
高順に促されて孫策は少しだけ豚汁をすする。別段躊躇した訳ではなく、驚いていただけだ。
「へぇ、美味しい・・・。」
「ほぅ、では私も。」
「・・・策殿が美味いというなら。」
周喩と黄蓋も試すように一口だけすする。
「ほほぉ・・・中々良い味だ。」
「ふむぅ、野菜と肉の出汁が効いておるの・・・美味いではないか。」
「ふっふっふ、お口にあったようで何より。」
2人の反応を見て高順はニヤリと笑って食事を続ける。
3人娘も沙摩柯も談笑しながら食事をしている。いや、兵士達もだ。和気藹々という言葉がしっくり来る。
良い雰囲気だ。孫策達はそう思った。お互いの関係が不明瞭と言うのではなく、これがこの部隊の「普通」なのだろう。
部隊の長、或いは武将が兵士達と同じように地面に座って兵士達と肩を並べて同じ物を食べる。
先ほどは部下に弄られていた高順だが、あれも考えようによっては部下達は友人の延長線上に近い関係なのかもしれない。
あまり褒められた事ではないと思うが、絆というものが強いのだ。あの若さで兵士と同じ目線で過ごすのは大したものではないか。
(高順という人間の本質は良く知らないが、人となりだけは評価できるな。)
孫策はそんな事を考えつつ、また豚汁をすすり始めた。

その後、暫くして。
「のぉ、高順。他に酒のツマミになりそうなものは無いのか?」
と黄蓋が話しかけてきた。
「ツマミ?辛肉詰め(チョリソーの事)じゃ足りませんでしたかってちょっと、酒飲んでるんですか!?」
「おうよ、酒は人生の伴侶!酒なくして人生など語れぬというものよっ!」
わっはっは、と偉そうに笑う黄蓋を周喩がたしなめる。
「黄蓋殿?他者の陣にまでやってきて酒を飲み、あまつさえツマミを要求?孫家に恥をかかせるつもりですか?」
「ぬっ、うるさい奴が。少しくらい構わぬであろうが?」
「貴方の少しはちっとも少しではありません。」
「ええい、やかましいわ!」
「いえ、良い機会です。今日と言う今日は言わせていただきますが・・・。」
周喩と黄蓋の言い争いが始まった。理詰めで諭す周喩と、酔っ払いの黄蓋なので、両者共に延々と食い違う事を行っている。
そんな2人を尻目に、孫策が高順に謝罪する。
「ごめんね、高順。私の部下が勝手に酒飲むわ説教開始するわ・・・。困ったもんよ。」
「そういう貴女も随分深酒してませんでしたか?」
「うっ、バレてた?」
「それはもう。堂々と飲んでましたからね。」
ううっ、とたじろぐ孫策と、それを見て少し笑う高順。
「ああ、孫策殿に色々と聞きたいことがあるのですが宜しいですか?」
「ん?聞きたい事?構わないけど。」
「あなたの親に孫堅様という方がおられませんか?」
高順の言葉に、孫策は少し悲しそうな・・・遠い目をする。
そんな彼女の表情を見て、高順は「あれ?」と首をかしげる。
「母様は・・・死んだわ。劉表と争ってる最中に流れ矢に当たってね。あっけないものだった。あれほどの人がね・・・。」
「そうでしたか。それは・・・申し訳ない。」
「いいわ、貴方のせいじゃない。母様が死んで、そこからがケチのつきはじめよ。袁術に領土の大半掠め取られるし、その袁術の客将になってこき使われるし。」
「・・・。」
孫策の話を聞いた高順は「少しおかしい」と感じた。
本来の歴史からすれば孫堅が死ぬのは反董卓連合の後だ。にも拘らず、黄巾の乱時点で戦死?
どうも、自分の知識として理解している三国志から少しだけ時系列がずれている様な気がする。
まさか自分が影響を与えたなどとは思わないが・・・そうなると自分の処刑、あるいは戦死時期が早まったり遅くなったりもするのだろうか?
今目の前にいる孫策が死なずに済むかもしれない、という「自分も知らない三国志」という世界に行きかけているのか?
顎に手を当て考え込む高順を見て、孫策は「気にしないで、って言ったのだけど。」と苦笑していた。
どうも誤解をされたようだ。が、孫堅に会えないのは本当に残念であった。どのような人だったのだろう。
「いえ、こちらこそ申し訳ない。」
「で、他に聞きたいことって?」
「何故貴方のような人が袁術の元で働いているのか、と思っていたのです。今答えを頂きましたから・・・。」
「そう。なら良いのだけど。じゃあこっちからも質問。」
「はい?」
「何で母様のことを知ってるの?」
・・・しまった。またやってしまった。何でこう毎回毎回同じミスをするんだ俺・・・。
考えろ俺、何とか切り抜けろ!
「えー。俺、ちょっと前に旅をしていたんですよ。洛陽・陳留・それに呉に近い徐州の下邳とかね。その辺りで聞いたのですよ。亡くなってる事は知りませんでしたが。」
「へぇ・・・?人は見かけによらないのね。ちょっと甘いどこぞのお坊ちゃまとか思ってたのに。」
「甘い、ですか。ふぅ、よく言われますよ。育ちはあまり良くないですけどね。」
「今回誘ってくれたお礼じゃないけどその甘さ、何とかしたほうがいいわ。いつか足元を掬われる。或いは身を滅ぼすわね。」
孫策の、辛らつではないが諭すような言い方に驚きつつ、
「何故、そうお思いに?」
「さあ。強いて言えば勘。貴方みたいな人はね、裏切りとか・・・そうね、大切な物や人を失ったときに立ち上がることが出来なくなる。心が脆いせいでね。」
「心が脆い・・・。」
甘いとか言われるのは良くあるが。心が脆いなどと言われたのは初めてだな、と思う。
「貴方は矛盾してるように見えるのよね・・・。そんな甘さを残したまま戦場に立つ。非情になり切らなければならない場面で、その甘さが出て来てしまいかねない。足元を掬われるって言うのはそういう意味。」
「むぅ・・・。」
「・・・ふふっ。」
深く考え込む高順の顔を見て孫策は噴出した。
「その甘さのおかげで美味しいご飯にあり付けたのだから、それは感謝するべきでしょうけどね。さて、私達はそろそろお暇するわ。あまり迷惑をかけることもできないし、ね。」
そう言って孫策はまだ言い合いを続けている黄蓋達の下へと歩いていった。
甘さ、か。・・・このままで、自分は死亡フラグを折れるのだろうか。
ただ、皆に嫌われたくないだけで、上辺だけの生き方をしてるだけでは無いのか?自分は本当はどうしたいのだろう?
その後孫策らを見送ったが、高順の心は晴れないままだ。
明日からは孫策と一緒に戦わねばならないので、そんな迷いを残したままというのは不味いのだが・・・そこで高順は1つ孫策に言い忘れていた事があるのを思い出した。
「派遣されるのが俺だって言い忘れていた・・・。」



~~~孫家の方々~~~
「いやぁ、思いもかけず上手い飯にありつけたのぉ。」
ほくほく顔の黄蓋。
「酒も沢山飲めましたからね。そういえば雪蓮(しぇれん)も飲んでいたような?」
雪蓮というのは孫策の真名である。
周喩の指摘に孫策も黄蓋も「げっ」と言いたげな表情を見せる。
「い、いいじゃないのよ。高順が良いって言ってたんだしさ。」
「その割りに高順は「いつ飲んだの!?」と驚いていましたね。」
「うっ・・・。」
周喩に口で勝とうと言うのがそもそも無理なのだが、孫策のこういうところ癖のようなものだ。言ったところで治りはすまい。
「追求するのはこれくらいに致しましょう。いつ黄巾の襲撃があるか解らぬこの状況で酒を飲むのはいささか不謹慎では、と言いたいだけですから。」
「うう・・・。これくらいって言ったのに・・・。」」
「軍師として、友人として、これくらいは言わせていただいても罰は当たりません。・・・祭殿もですよ?」
「くっ。こっちまで飛び火するか!?」
「当然です、元はと言えば・・・。はぁ、もう止めましょう。それよりも雪蓮。」
「ん?」
「あの高順という青年。貴方の目から見てどう思う?」
周喩の問いかけに「んー。」と唸ってから振り返る。
「甘すぎるわね。優しいと甘いは同義ではないわ。部下に対して優しいのはかまわないけど、疑う事を知らなすぎる。私達が袁家の間者だったという可能性もあるのにね。ただ・・・」
「ただ?」
「母様の事を知っていたわ。」
「!・・・ほぅ。先代の事を・・・成る程。」
黄蓋と周喩が納得したような素振りを見せる。
孫堅の名を知っているのであれば、「江東の虎」の異名を知らぬわけが無い。だからこそ袁家の間者である可能性など考えてもいなかったのかもしれない。
虎の子は虎。虎が袁術ごときに飼える道理が無い。ということを理解していたのだろう。
「知っていたのはただの偶然かもしれないけれどね。で、冥琳、祭から見た高順はどうだった?」
「そうじゃなぁ。ワシはあの辛肉詰めが中々。じゃなくて、あの性格は評価できるのでありませぬかな?最初、部下に弄られていたのには驚きましたがな。」
「そうですね、性格の事は祭殿と同意見です。ああ見えて配下からは随分信用をされているようにも見える。腕のほうは見ていないので何とも言えないですが、悪く無いのでは。」
「何じゃ、冥琳。お主、その辺りは節穴よの。」
「ほう。では祭殿の見立てでは?」
黄蓋の言葉に周喩は興味深そうな表情を見せた。
「まだ未熟。と言いたいがあれで中々鍛えこんでおるぞ。無駄な筋肉が無いと言ったほうが良いか。それにあ奴の戟。名前までは知らぬが、相当に重いぞ?」
「そこまでご覧になっていたのですか?」
「うむ、と言いたいところじゃがな。あの鎧を着込んだ娘、楽進と言うたか?あれに聞いてみたのじゃ、どんな男なのかとな。得られた情報は少ないものだったが、あの戟を片手で扱うのだと。」
「ほほう。どのような戟かまでは見ておりませんでしたが・・・。祭殿がそこまで買われるとは。」
黄蓋はそうだが、どうやら周喩も高順のことを多少評価しているらしい。
黄蓋は「武才」を、周喩は配下に慕われる「統率」を。人柄については孫策の云うとおりで、確かに甘い。
「そっかぁ。2人は大なり小なり評価してるのね。私はちょっと微妙かな・・・。」
孫策は歯切れが良くない。高順の甘さが気にかかっているといったところか。
「ふむ。ならば雪蓮。1つ賭けをしてみないか?」
「賭け?」
「ああ。私は高順が将来的に武将として大成しそうな気がする。あの甘さでは政には向かないだろうが、戦場での勇という形であれば祭殿と意見は合いそうだ。」
「へぇ・・・。」
孫策にとっては少し意外だった。周喩が他者をこう評価すると言うのもだが、それに賭けを追加してくるなんて。
冗談として受け流せといっているのか、それとも余程自信があるのか。
「ふふん。冥琳が賭けで私に勝てるなんて思わないけど乗ってあげる。そうねぇ・・・負けたほうが勝ったほうにライチ酒進呈でどう?」
「いいでしょう。ただ、時間はかかるでしょうね。1年か2年か3年か。期限をつけなくては。」
「あら、何年でもいいわよ?絶対に勝てる自信があるもの。」
悪戯っぽく微笑む孫策。その言葉に周喩も意地悪く笑う。
「ふぅ、後悔しても知らないわよ、雪蓮。」
「おいおい、ワシは参加させてもらえんのかい?」
黄蓋は腰に手を当てて呆れたように言う。
「ほう、祭殿はライチ酒を作れましたか?」
「それくらい作れるわっ!」
「別に良いじゃない、参加させてあげれば。で、祭はどっちにするの?」
「大成するほうですな。今回はこちらこそ負ける気が致しませぬ。」
黄蓋は何ら迷うことなく言ってのけた。
2対1か。絶対に負けられない、とは思うが・・・邪魔のしようが無いし、賭け自体ほとんど冗談のようなものだ。
「ま、次に会うのは何時か解ったものじゃないけどね。今回の戦いで戦死したらそれまでだし。」
「全くです。案外、明日派遣されてくるという公孫賛殿の武将・・・高順かもしれませんからね。」
「はは、まっさかぁ。」
そういって笑う孫策。いくら何でもそれは無いだろう。孫策はこの時ばかりは周喩の言葉を本気で笑い飛ばすのだった。
だが。

夜が明けた後、派遣されてやって来た武将が高順だった事を知って、「・・・まさか周喩の言う通りになるなんて。賭けまで周喩の言った通りになったらどうしよう・・・?」
と、賭けに乗ったことを本気で後悔する孫策であった。




~~~楽屋裏~~~
前に言った大変ってこういう意味ですあいつです。(挨拶
ちょっとした質問ですがどこの軍勢でも騎兵部隊って精鋭部隊なんですよね?基本的に馬ってお金かかりますし。

これで、魏・呉・蜀の3君主が出揃いましたね。一武将なのに、こんな短期間に3人に会うとはどんな運ですか、高順くん。
しかし、どこの君主も高順に対しての評価が違いますね、当然ですけど。

曹操→時代の先を見越すし、武力も中々ある。あの3人娘も中々のものね。主力を張れるわけではないけど、欲しい人材ではあるわ。
劉備→愛沙(関羽)ちゃんと喧嘩しちゃったけど(これはどっちか言えば高順が悪い)鈴々ちゃん(張飛)とは仲いいし・・・高順さんの部下も有能そうだから引き入れたいなぁ。
孫策→あの甘さが無ければ良いんだけどね。武力とか統率力はこれから見せてもらえば済む事よね?

こんな感じ?行く先々でヨイショされちゃうのはこういうご都合シナリオでは仕方ないかもしれませんが、違和感がありすぎますね。
ナントカシタイナァ。
さて、次回はどうなることやら。
それではまた。(・×・)ノシ





お・ま・け。

公孫賛→星(趙雲)ー!高順ー!お願いだから戻ってきてええええええっ!!!!(涙)(袁紹に攻められつつ



・・・これ、評価じゃないような?(汗



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第26話(誤字はっけーん
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/07 16:49
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第26話


~~~袁術軍。孫策陣営にて~~~
どうも皆様。高順です。
今現在、孫策殿の下で連れて来た騎兵を編成し終えて開戦の時を待つ身なのですが・・・。

無闇にしんどいのですがどうしてですか!(血涙
いやね、何がしんどいって黄蓋さんからは「このまま孫家に来ないか?」と誘われたり周喩さんからは「どこで孫堅様の事を知った?」とか色々質問攻めにされたり!
しかもあの「ぱつんぱつん」なエロスな身体を布地面積少ない服で!男として天国か地獄なのかと!
女性の兵士さんもチラホラといますが、皆一様に露出度高いのですよ?
なんか凪さんが「ギリギリギリ・・・」と歯軋りしてこっち睨んでます、だから何で毎回こう俺に関係のないところで俺が辛い目に会うのさ?
ぼすけてー!誰かー!




さて。
前日、周喩・黄蓋とある賭けをした孫策だったが早速後悔したくなってきた。
高順は3人娘・沙摩柯らを連れて700ほどの騎兵部隊を率いてきたのだ。
まさか高順が精鋭部隊(この時代の騎兵部隊は大抵精鋭)を率いていると思っていなかったが、それ以上に驚いたのは高順の乗っている馬、虹黒だった。
ちょっと見たことの無い巨躯で、その上気が荒い。
珍しく思って触ろうとした孫策だったが、頭突きをされそうになって慌てて離れたり。
高順曰く「この子は俺の相棒なんです。その上、きっちりと人を見てますよ。」と。
(そんな気難しい馬に認められて、更に騎乗してる高順って一体・・・。)
心底から思う孫策であったが、肝心の「武将としての力量」を見たわけではない。黄蓋は「まだまだ未熟」とは言っていたし、賭けの期間もさすがに1日ではあるまい。
そこを考えて心を落ち着かせるが、虹黒に睨まれて腰を抜かしかけた自軍の兵を見て「やっぱり止めとくべきだったかなぁ・・・」と後悔する孫策だった。
そして、攻撃開始当日。
鄴の城壁には黄巾弓兵がずらりと並んでおり、攻め寄せようとする官軍に弓を構え、いつでも戦えるようにしている。
鄴の黄巾総兵力は不明だが、20万は下るまい。
本来、攻城戦では攻める側が守る側の3倍以上の兵力を用意するのが常道と言われている。
その為、兵糧戦に持ち込みたいところだったが、洛陽からも毎日のように「早く攻めろ」という催促が来ている。
戦の事も解らぬ青瓢箪どもに好き勝手言われるのは気にいらないが、奴らも文句を言うのが仕事なのだ。
これ以上諸侯をこの場所に留め置くことも困難と見た皇甫嵩は現状戦力12万で攻める事を決断。
公孫賛・袁術の合同部隊の先鋒のみならず、既に持ち場に着いた全部隊はすでに布陣を終えて出撃の合図を今か今かと待ち続けていた。
公孫賛先鋒の将軍は田楷。その下に趙雲も配置されている。
袁術軍先鋒は孫策。配下に周喩、黄蓋。そして公孫賛から援軍として派遣された高順。
両部隊合わせて9000ほどの軍勢だ。
すでに全軍弓兵・歩兵の配置も済ませ攻城兵器(と言っても雲梯と破城槌くらいしか無い)の準備も整っている。
あとは皇甫嵩が命令を下すのみだ。


「さぁて、命令はまだかな~?」
もう戦が始まる直前だというのに孫策は呑気なものだ。
「孫策、あなたね・・・。」
「そう目くじらを立てるでない、周喩。大将が萎縮すれば兵にも萎縮が伝わろうもの。これくらいで丁度良いわ。」
「そうそう、黄蓋の言うとおり♪」
「はぁ・・・おい、高順。こういう大将にはなるなよ?」
周喩が近くにいた高順に話しかける。
「こんなやり方が通用するのは孫家くらいのものだ。まったく・・・。」
「はぁ。まあ、無駄に緊張するよりは・・・。」
こんなやり取りの最中に、銅鑼の鳴り響く音が聞こえてくる。攻撃開始の合図だ。
その瞬間、孫家の武将、そして高順の表情が一気に戦士のそれと変わる。
すぅぅ、と息を吸い込み孫策は腹の底から声を出す。
「行くぞ、孫家の勇士達!勇を奮え、勝利せよっ!私に続けーーーーーっ!」
「うおおおおおおおっ!!!」
孫策の号令の下、孫家の兵が城壁へと殺到する。
いや、孫家だけではない。東西南北、その場にいる全ての諸侯の軍勢が攻撃を開始した。
「さすが江東の虎の一族だな・・・高順隊!孫家に遅れをとるな!全兵、生きて帰れよっ!」」
『はいっ!』
「虹黒、お前も頼むぞ。」
「ぶるっ!」
虹黒の首を撫でて、高順は先頭を駆けていく。その後に、楽進・干禁・李典・沙摩柯、そして700の騎兵が付き従う。
暫くして孫策・公孫賛前衛部隊が城壁に取り付いて、なんとか雲梯で登って行こうとするが、弓兵に狙い撃ちにされて上手くいかない。
「全兵、城壁の弓兵を狙えっ!」
沙摩柯の声に兵士が弓を構え、城壁の敵を狙い撃つ。当然、高順の部隊も狙われ、何人かが射倒されていく。
そこで城壁に楽進の気弾が炸裂した。1発、2発、3発、と立て続けに同じ場所に撃ち込まれて穴が開いていく。
その上にいた兵士達の重みに壊れかけた壁が耐え切れず、少しずつ崩れ始める。
「くそ、あの女を殺せっ!」
黄巾の弓兵も楽進を放置していては危ないと思ったか、楽進を狙い撃とうとするものがいる。
そのうちの幾人かが高順や干禁の放った矢で射抜かれて城壁から落ちていったが、何本かの矢が楽進に向かって放たれていく。
だが、楽進はそれを軽やかなステップで回避する。その内一本が身体に当たりそうになったが、手刀で叩き落した。
「・・・もしかして、援護いらなかったのでは?」と思う高順だったが、それ以上は考えずさらに矢を撃ち込んでいく。
そこへ少し遅れ気味だった攻城兵器(破城槌)が城門付近まで進んできた。
破城槌というのは現代で言うところの「寺の鐘」を叩くのと同じような原理を使用した城門を攻撃するためのものだ。
槌は基本的に木でできているが破壊力を上げるために先端を鉄で、更に尖らせている。
車輪がついてはいるものの速度が遅く、槌で城門を攻撃する人々も無防備になる。その為に屋根をつけて矢から身を守れるようにしているが、熱湯などに対してはあまり意味を成さない。
ともかくも、その破城槌を近づけさせまいと黄巾兵は矢を射込んで行く。
両軍共に矢を射続け被害が少しずつ広がっていくものの、矢の数が少ないのか黄巾側は石つぶてを放ち始めた。
石と言っても握り拳ほどの大きさがあって、当たり所が悪ければ当然死ぬ。その代わり飛距離が無いため、雲梯を登ろうとする兵士に当てることしかできない。
それを見て、高順は少し距離をとるように兵士に伝達。当然孫策や公孫賛側にいる趙雲も同じように下がり一方的に矢を撃ち込み続ける。
一番目立っていたのは黄蓋で、1本の矢で確実に1人ずつ黄巾兵を撃ち抜いていく。というより、場合によっては貫通している。
「すっげー・・・多分、淵さんもあんな感じだろうなー。」
いつも虹黒に蹴り倒される姉を「死ぬなー!?」とか叫んで抱きかかえてる気苦労の多そうな夏侯淵を思い出す。
曹操軍は東門を攻めているようだが、当然彼女も従軍してるのだろう。淵さんに会うのはいいけど、その姉と主君がなぁ・・・いや、そうじゃない。
馬鹿な考えは追いやって、高順は城壁の上にいる兵をまた1人射抜いた。
それから数時間ほど戦闘を続けるも、黄巾側は出撃してこない。というよりも出来ない。
多くの兵士に囲まれ、全ての城門を破城槌で固められてしまい、出撃しようにも出来ないのだ。
日が落ちたので両軍共に際立った戦果を上げる事も無く兵を引いた。城門が傷だらけになり、防衛戦力を削った、という事くらいか。
数日間同じ事を繰り返すが、黄巾は本当に矢が尽きてしまい、遠距離攻撃が出来なくなった。その上城内の兵糧が欠乏しつつある。
ここ、鄴の指導者は黄巾の首魁・張角だが、戦闘指揮官は他に数人いる。その指揮官、高昇・厳政は相談した結果、討伐軍の兵糧を奪う事にした。
狙いは北側の官軍だ。東・西・南共に精強な軍勢が揃っているが北側だけは動きが鈍い。見たところ、数は多いがその中核部隊が動こうとしない。
3万ほど兵士がいるが、きっちりと戦っているのはその半数ほどだ。
戦力を北門に集中させ、襲撃。糧食を奪い撤退する。北側の兵力は3万ほどだが、こちらが疲れきっていると思い込んでいる。
油断をしている筈、実際に動けるのはその5割もいないのではないか。と考えていた。問題はそこまで錬度が高くない黄巾兵が上手く動くかどうかだが、やるしかない。


その頃、孫策と公孫賛の軍勢は部隊を分け、何時間ずつかで交代、見張りをしていた。
当然、高順部隊も同じように見張りをしている。完全に眠っているのは袁術軍くらいのものである。
袁術はまだまだ子供でその辺りを理解していないし、その部下の張勲という名の武将も「全部孫策さんに任せておけば良いんですよ♪」とか抜けたことを言っている。
それは置いておくとして、孫策達と高順は「そろそろ敵が打って出て来るだろう」と言う事を直感で感じていた。
戦闘が終わった後、城壁の上にいる兵士が北側を見て相談したり、きょろきょろとして落ち着きが無いのを見たからだ。
矢も撃ってこなくなったし、恐らくは城内に備蓄してある軍需物資、そして食料が無くなりつつあるのではないか?と見立てていた。
公孫賛も同じ考えだったようで、趙雲部隊もずっと見張りをしている。
夜も更けた頃、高順の陣幕に沙摩柯が入ってきた。高順の陣は一番城へと近い場所にある。状況としては一番最初に黄巾と接触するだろうし、袋叩きにされることも覚悟しなくてはならない。
そして、これはわざとであるが篝火を1つか2つ程度に抑えて、こちらが油断しているぞ、と見せかけてもいる。
本来ならもっと数の多い孫策や趙雲のやる仕事なのだろうが、数が少ないほうが敵も油断するだろうと考えての事である。
「ん・・・、どうかしましたか?」
「ああ。そろそろ来る。孫策の元にも使いを出しておいたほうが良いぞ。」
「さすが夜目が利きますね。3人娘と兵士達は?」
「既に準備を整えている。」
高順は沙摩柯の言葉に頷く。傍にいた兵3人を呼んで、「そろそろ黄巾が攻めてくる、準備をされたし」という内容を孫策・趙雲・公孫賛の陣へ走らせる。
続いて2人も陣幕を出る。すると、既に兵が整列していた。
その前に高順が立つ。
「これより黄巾が攻めてくる。規模はまだ解らないが相当数攻めてくることが予想される。既に公孫賛殿と孫策殿の陣に伝令は送ったけどね。」
高順の言葉を兵士達は黙って聞いている。
「今までで一番辛い戦いになるだろうな。だが、これさえ乗り越えれば黄巾も打つ手がなくなるはずだ。・・・全兵に通達。なんとしても生き残れ。生き残る事こそが勝利に繋がると知れ、以上だ。騎乗!!」
言葉に従い、兵士が自身の馬に乗る。高順も虹黒の背に乗って部隊の先頭に進んでいく。
黄色の布を頭に巻いた一群がこちらに向かってくるのが見える。その数およそ・・・数万!?
「おいおい、多すぎだろ・・・。」
冷や汗をかきつつ高順は呟く。既に兵は全員射撃を行えるように弓を構えているが、この差は如何ともしがたい。
すぐに孫策たちの部隊が来るだろうが、時間稼ぎをするには少し辛そうだ。だが、やるしかない。
「俺達に攻撃を仕掛けてきた事を後悔させてやれ!撃ち方用意っ!!」
「応っ!」

黄巾勢も目の前に6百ほどの騎兵が迎撃態勢を構えていることに気がついていた。
夜襲を仕掛けに来たというのに、面前の部隊は既に展開してこちらを待ち構えていたのだ。遭遇戦、という形になってしまった。
しかしこちらは4万もいるのだ。たかが数百の騎兵で持ち堪えられる筈も無い。高をくくって突き進んでいく。
そこへ、何百と言う矢が打ち込まれて兵士が射抜かれていく。
部隊を分散させず一丸となっている上、数が多いせいもあって、矢を打ち込まれれば打ち込まれた分だけ被害が広がっていく。
「くそっ、ひるむなっ!」
誰かが勇ましく叫ぶも、矢が間断無く打ち込まれ続けて、先頭を進んでいく兵がばたばたと倒れていく。
高順部隊は600の軍勢を3つに分けて、鉄砲3段撃ちではなく矢を3段打ちにしていた。
防御陣地を敷く余裕など無いので下がっては打ち、下がっては打ちを繰り返す。
数万相手にそれではまさに「焼け石に水」程度の損害しか与えられないが、多少の効果はあったようで黄巾の進撃速度が鈍っている。
出撃した黄巾兵は歩兵ばかりだ。これが全て騎兵部隊であれば今頃高順隊は蹴散らされていただろう。
そのまま、同じように下がりつつ矢を打ち続けていく。既に先ほどまで自分達が使用していた陣からは、随分と距離が離れている。
見ていると、陣幕が荒らされているのが解る。黄巾兵が食料を奪っているのだろう。
ここまでは高順の狙い通りだった。僅かばかりでも時間を稼ぐために幾ばくかの食料や飲料水は残しておいた。
あとは、仕上げを残すのみ。
高順部隊は転進して黄巾部隊のほうへと向かって行く。
一部の黄巾勢は、陣に残された食料を全て奪い、後方へと運んでいった。
小規模な陣なので、期待していたほどの量があるわけではない。この夜襲部隊を指揮していた厳政は更に攻め込もうとするのだが、1つだけ気がついたことがあった。
「何故、この辺りはこれほど油の匂いが・・・。」
思った所で、先ほどまでこちらの足止めをしていた騎兵部隊が向かってくるのが見て取れた。
「奴らめ、血迷ったか?僅か数百程度で。」
だが厳政は血の気が引くのを感じた。騎兵部隊は火矢を弓につがえていたのだ。これは・・・まさか?
こちらが不用意に陣に入ったところを火で―――
「い、いかんっ!全軍・・・」
最後まで言い終えることもできないまま、大地は炎に包まれた。

「うっしゃ、作戦成功やっ!」
李典は馬上でガッツポーズをしていた。
元々、この作戦は彼女の考え出したものだ。
「あいつらって、食料目当てで攻めてくるんやろ?せやったら、足止めするために陣に物資残しといてやな。油を辺り一面に撒いとくねん。そこへ火矢ぶっ込めば2重の嫌がらせやで!」と、こんな感じだ。
ある程度の頭があれば誰でも考え付くだろうし、黄巾兵も全員馬鹿ではないだろうから成功するかどうかは5分5分だろう。
だが高順はここで、もう1つの利用価値を見出した。
「それやれば、他から駆けつけてくる部隊も「あそこで戦っている!」って解りやすくなるよね?」
つまり、目印としての意味合いもあるよ、ということだ。
成功しようとすまいと、目論見は達成できる。上手く行けば儲け物、くらいのつもりでやってみたのだがまさかここまで上手く行くとは。
よほど黄巾は食料に飢えていたと見える。
ふと後方を見ると、孫の旗印、そして趙、公孫の旗印も見える。
彼らもあの炎を目印にして進撃してくるだろう。李典は高順の隣まで馬を進ませる。
「なっはっは、思った以上に上手くいったやん。な、高順兄さん?これって特別手当貰てもええ働きと思わん?」
「そうだなぁ、作戦発案者は李典だしな。俺が自腹切ることも考えよう。でも・・・。」
「解ってるって!頑張ってくれた皆にご褒美与えなって事やろ?」
「仰るとおりで。その前に先ず生き残らないとなっ!」
「ほいなっ!」
その頃、東側の曹操部隊、西側の袁紹部隊、南の皇甫嵩も北の異変に気づいて兵士を派遣していた。
各々数に違いはあるものの総勢で3万ほどになる。
曹操側から繰り出された部隊は夏侯惇と夏侯淵が、袁紹側からは顔良と文醜が。皇甫嵩側からはなんと皇甫嵩自身が兵を率いて急行している。
一番早くたどり着いたのは曹操軍で、炎が燃え盛っている辺りで黄巾兵が右往左往しているのが見えた。
「姉者、あそこだっ!」
「それくらい言われなくても解ってる!」
夏侯淵の言葉に夏侯惇が怒鳴り返す。夏侯惇は少し不機嫌だった。せっかく曹操と陣幕であんな事やこんな事をして楽しんでいたというのに。
このやり切れない怒りと切なさと心強さ(?)は黄巾兵をメッタメタのギッタギタにして晴らしてやる。夏侯惇は心中で怒りをたぎらせていた。(もう少しまともな表現の仕方は無いのだろうか・・・?)
見ると、孫策軍と公孫賛軍もその火を目印にして突撃しているのがわかる。公孫賛は本陣の兵士まで動かして黄巾勢を横から突いているし、孫策も突出してきた黄巾兵を包囲、殲滅している。
夏侯惇は普段は頭の中身が残念な事になっている人だったが、戦争の事になると野生的な勘に頼ることは多いものの、割りと頭が働く。
公孫賛がどんな人物かは知らないが、こういう事態で迷い無く本陣の兵を投入するとは。なかなか思い切りの良い奴ではないか。
その隣にいる袁術軍は何が起こったかよく解らずオロオロとしているのも見えたので余計にそんな風に見えたのかもしれない。
孫策軍も、数が少ないようだが率いる武将が随分有能なのだろう。一糸乱れぬ動きで、隙の無い戦い方をしている。
隣にいた夏侯淵も同じことを思ったらしく「ほぅ。なかなかの決断力だ。悪くない。」と言っている。
既に曹操軍の先頭部隊は公孫賛の軍勢と同じく黄巾兵を横脇から崩し始めていた。
夏侯淵が弓を構え、夏侯惇が刀を構え、兵士に混じって突撃をしようと更に馬を駆けさせる。
「姉者、我らも行くぞ!・・・うむ?」
「ああ、解って・・・る・・・。」
その時、夏侯姉妹はある人物を見ていた。
孫の旗印の下で戦っている男。あの漆黒の巨馬に跨り、戟を振り回して黄巾兵を薙ぎ倒していく男を。
「あれは・・・まさか、高順かっ!?」
「こーーーうーーーこーーーくーーー!」
瞬間、夏侯惇は迷うことなく虹黒のいる方向へ馬を走らせた!
「ちょ、なっ!?姉者、黄巾兵はどうするつもりだー!?」
夏侯淵の叫びも虚しく、夏侯惇は現状を一顧だにせず馬を加速させる。
「今度こそ、今度こそ逃がさんぞ虹黒ー!」
その叫びが聞こえたかどうか。虹黒は「ぶるるっ!?」と妙な反応を見せた。
「ん、どうした虹こ・・・く。」
「どうしたの、高順さ・・・ふええっ!?」
高順と干禁が虹黒の見つめている方向を見てみると、炎に照らされた形であるが、夏侯惇がこちらに向かってくるのが見えた。
何あの鬼の形相?つか何でこっち来るの!?
「ええええええっ!?なんで惇さんこっち向かって来てるの!?俺敵じゃないって!あっち行ってあっち!」
思わず黄巾兵のいる方角を指差してしまう高順だったが、夏侯惇にはそんな事が解る筈もない。
「・・・!?隊長、危ないっ!」
楽進の声に高順がハッとなる。見れば横に3人程の黄巾兵が槍をかざして突撃してくる。
「チッ!」
三刃戟を振り下ろそうとした高順だが、それよりも早く虹黒がその場で黄巾兵に背を向ける形で回転した。
「へっ?・・・まさかっ?」
そのまさか。虹黒は久々の後ろ回し蹴りを炸裂させ、その直線状にいる黄巾兵数人を天高く弾き飛ばした。当然その射線上に夏侯惇がいる。
飛んできた黄巾兵を一刀で叩き切り、夏侯惇は勝ち誇る。
「ふははははっ!そうそう何度も同じ手を喰らわんぞ、虹黒!今度と言うこんd」
言い終わらぬうちに、同時に蹴り飛ばされた黄巾兵の1人が夏侯惇の馬に、もう1人が夏侯惇を直撃した。
「ごばはぁっ!?」
堪らずに馬から落ちる夏侯惇。そして、同じように馬も耐え切れずにそのまま倒れこむ。
よりにもよって夏侯惇の上に覆いかぶさるように。
「え?嘘、待・・・あぎゃあああああああああああああっっ!?」
へちょっ。(潰された音
「姉者ーーー!?」
馬に押しつぶされ悲鳴を上げる夏侯惇、その惨劇を見て悲鳴を上げる夏侯淵。戦場なのに何をしているのやら。
高順も高順でその惨状を見てげんなりとしていた。
まさか夏侯姉妹に見つかるとは思ってなかったし、こんな事になるとは・・・。間違いなくあの2人は曹操へ「高順が参加しておりました」「虹黒がいましたっ!」とか報告してしまうのだろう。
その場面をリアルに想像できる分、余計に疲労感が増える。
「虹黒・・・どうして、そこまで惇さん嫌いなのさ・・・?」
「ぶるっ?」
何かをやり遂げたみたいな感じの虹黒。それを見て(戦闘中にも拘らず)脱力する高順であったが、気を取り直して攻撃を再開するのだった。

厳政は何とか火に包まれた陣から逃げ出して、状態の推移を見ていたが夜襲は完全に失敗した事を悟っていた。
自分達が奪った陣から北にどうしても進む事ができない。
煮え返り沸き返りしているうちに東・西・南の官軍からも増援が来て、兵数に差が無くなってしまっている。
素早く奪い、素早く退く。という目的が失敗した以上、夜襲は失敗したも同然。それを理解できない所が賊でしかない厳政の限界だった。
そこへ、最初に自分達に矢を打ち込んで進軍を遅らせた部隊の先頭にいた男。高順のことだが・・・その男が向かってくるのが見えた。随分と巨大な馬に跨っている。
せめてあの男を討たなくては面目が立たない。厳政は槍を構え、雄叫びを上げて高順へ向かって馬を走らせた。
その時、高順のすぐ隣に黄蓋が追従するような形で着いて来ていた。
「おう、高順!中々やるのう!?」
「何がですか!?」
「たった600ほどであれだけの数に嫌がらせ、かつ目印となるように火計とは!周喩も「考えたものだ」と抜かしておったわ!」
そう言って笑う黄蓋。
だが、高順からすれば「感心するような事じゃないよな。」と思うのだった。
高順隊は数は少ないし、やれる事も限られている。自分の頭の出来は決して良い訳ではない。
手元にある兵士・物資などを考えて結局この程度しかできなかったのだ。褒められたところで気分が悪くなるだけなのである。
「大軍師、周喩殿に比べれば児戯ですよ、とでも伝えてくださいな。」
少しだけムスッとして、そうぼやく高順に黄蓋はまたも笑う。
「はっはっは!そうむくれるでないわ。あやつは「自身にできることを考えた上でこの結果を出そうとしたのだろう。悪い策ではない。」とも言うておったぞ?」
「そうですか・・・っと。」
尚も向かってくる兵を突き倒し、速度を緩めることなく戦場を疾駆する。その後ろに楽進達も続く。
そこへ、少し立派な身なりをした黄巾兵が高順に向かってきた。
「そこの男っ!俺と一騎打ちをしろ!」
「・・・俺、だよな?」
高順は周りに男がいないかどうかを確認してみた。隣には黄蓋。近くには3人娘と沙摩柯。
全員が女性だ。どう考えても男は自分のみ。
「俺は張宝様の将、名は厳政!尋常に勝負だぁ!」
「・・・賊の名前なんざ、どうだって良いんだよ。」
名乗りをあげ、厳政は高順に突進してくる。それに対して高順は特に速度を上げるでもなく、そのまま進んでいく。
すれ違いざま、高順の繰り出した三刃戟はあっさりと厳政の胴を貫き通していた。
「ほほぉ・・・やるではないか。」
見ていた黄蓋は感嘆の声を上げる。と、高順は三刃戟を肩に担ぐ。
貫かれたままの厳政の身体が高順の後ろを走っている黄蓋の前に差し出されるような格好になった。
「た、隊長!?何のおつもりです?隊長の挙げた功績を黄蓋殿に譲るというのですか!?」
「お主・・・何のつもりじゃ?ワシに敵将首をくれてやる、と言いたいのか?」
楽進、黄蓋の両名が非難の声を上げる。
声を出さないまでも、干禁ら他の者も同じ事を言いたいだろう。
「さあ?」
「馬鹿にしてくれるなよ、儒子が・・・。」
どうも、敵将首を譲るという高順の態度が気に入らないらしい。
やれやれ、別におかしなつもりでこんな事をしてる訳ではないのに。
「黄蓋殿、少しお考えください。」
「ふむ?」
「孫家に援軍に出された俺の功績は、簡単に言えば「孫家の功績」になるんですよ?どちらにせよ、孫家にとっては悪くない条件です。」
「解っておる。」
「では、「援軍に出された俺」よりも「孫家生え抜きの武将」である貴女が首を取るほうが見栄も外聞も良くなると思いません?」
「ぬっ・・・。」
「今、孫策殿は幾つも先にある利と同様、目先の利も求めなくてはいけない。独立の為に少しでも多くの功績を挙げないといけないのでしょう?」
「ぬぬっ。しかし、それをしてお主に何の利がある?」
「・・・さあ?強いて言えば、江東に覇を唱えるのは孫策殿のほうがよほど絵になるでしょう?俺は会った事ないですが、袁術じゃ力不足ですね。」
「ふっ・・・。江東の虎の娘が躍進する姿を見たい。その為に自分の功績をふいにする、か?おかしな奴じゃな・・・。」
黄蓋は笑っている。自分の利を考えずにこんな事をする奴がいるとは、とでも思っているのだろう。
事実、高順は功績どうこう等は二の次であった。
自分が、仲間が生き残っていけばそれで充分だ。望み過ぎはかえって不幸を呼ぶ。自身の死亡フラグを折るのならば戦いを止めてしまえば良いのだが、これ以外に自分が生きる術が無いのも良くわかっている。
性分だな、と苦笑する以外に道は無い。
黄蓋は目の前に差し出されたままの厳政の首を掴み、剣で斬り付けた。
鮮血が迸るが、気にする風でもなくそのまま厳政の首を高々と掲げる。
「敵将、厳政!孫策軍が将、黄公覆が討ち取った!」
その大音声に、孫策軍の士気が大いに上がったのだった。

討伐軍は襲撃を仕掛けてきた黄巾賊を迎撃、目的を達成させずに押し込む。厳政を失い、統制の取れないまま次々と兵は討ち取られ、城内へ撤退していく。
高順達も退いて行く黄巾賊を追撃するが、ある場所で楽進が止まり、馬から下りる。
高順らは何事かと思い、馬速を緩めて後ろへ向き直った。
「ん、どうしたんだ、楽進?」
「申し訳ありませんが暫くお待ちください。・・・こぉぉぉっ・・・。」
突然、楽進が気を練り始めた。この戦いで毎日のように気弾で城壁を攻撃し続けていたが、今回もそのつもりらしい。
当初は城壁から矢が飛んで来て中々上手く行かなかったようだが、日が経つにつれて弓矢での抵抗が薄くなっていた。
一日に何十発と気弾を撃てる筈もないが、楽進は城壁に対して常に攻撃を続けていた。その為か、北側の城壁はボロボロになっている。
実は、楽進は最初に3発程度の気弾で城壁が崩れかたったのを見てから「城壁を崩す」事にのみ目的を置いていた。
徐州で短い期間ながら、李典と共に家屋等の解体業をこなしていた時に培った「目」で、何処が一番崩しやすいか?と探し続けたのだ。
城壁の範囲が広いので、時間がかかっていたが一箇所に目星をつけていた。
明日でも良かったのだろうが、敵が撤退して反撃が来ない今のほうが都合が良い。
しかし、徐州での経験がこんなところで活かされるとは。何があるか解らないものだ。
「全兵、来ないとは思うが敵に注意、円周防御だ。」
高順の命令で兵士達が楽進の周りを囲んで警戒。黄蓋は何をするつもりかと興味深そうに見ている。
この1年近く。3人娘は沙摩柯・蹋頓・趙雲。名だたる勇将相手に訓練を続けた。
楽進の気の総容量、コントロール、破壊力。彼女に限らず、3人娘の力量は大梁にいた頃とは比べ物にならない。
皆が警戒する中、楽進の掌にある気弾は通常と比べ物にならないほどの密度になっている。大きさ自体は普段と変わらないが、込められた気の総量が大きいのだ。
楽進は目標の場所に身体を向け、思い切り気弾を投げつけた。
「行けええええええっっ!!!」
高順隊が固唾を呑んで見守る中、討伐軍の頭上を飛び越えて気弾が城壁に迫り―――轟音をたてて命中した。
その場所は確かに大きく崩れたが、城壁全体にダメージが行ったようには見えない。
「くそっ、失敗か・・・?」
思わず楽進が呟いた瞬間、今しがた気弾が命中した部分に大きく亀裂が出来た。そこを中心にして亀裂が更に広がっていく。
その場にいた官軍も黄巾兵も呆然とする中、どんどんと亀裂の規模が広がっていき、最後には北側の城壁全体がひび割れた姿になった。
「うぉ。楽進さんすっげー・・・。」
「むぅ・・・や、やるのう。」
高順と黄蓋は感嘆と、半ば呆れが入り混じったような言い方をした。
これで、北側の城壁はほとんどと言っていいほど防衛能力を失った。城門ではなく城壁を破城槌で叩いたほうが早いだろう。
恐らく、向こうにとってもこちらにとっても明日が正念場だ。
そんな事を思いつつ、高順は部隊を纏めて後方に下がった。

~~~翌日~~~
いつもと同じように布陣を整え、討伐軍は出陣を待っていた。
違うところは北門の軍勢がいつも以上に猛っているという事、そして破城槌が最前線に位置している事か。あと少し攻めれば城門どころか城壁すら突破できるのだ。無理も無いだろう。
良く考えたらこの戦いの最大の功労者って楽進ではないのか?と高順は思っていたが、一武将のその配下のやった事でしかない。
正当な評価など望めないだろうな、と少し残念に思った。
さて、高順は孫策側への援軍と言う形なので当然孫策の傍にいる。
昨日は黄蓋が敵将の首を挙げたので彼女の機嫌も大変良かったのだが、今は少し悪い。というより疲れきった表情だ。
高順は同じく傍にいた周喩にヒソヒソ声で話しかける。
「なんか、孫策殿の機嫌がよくないですね。何かあったのですか?」
「ん?ああ。昨日は機嫌がよかったのだが、すぐ後に袁術の使いが来てな。その首を寄越せと言ってきたんだ。」
どことなく周喩もうんざりした様な表情だ。
「はぁ?」
「袁術曰く「孫策は妾の部下。ならば孫策の功績は妾の功績じゃ!」とか言ってな・・・。結局、首・・・功績を奪われてしまった。」
「・・・ちょっと、用事が出来たので行って来ていいですか?すぐに潰してきますから。」
割と真面目な表情でそんなことを言う高順を見て周喩は珍しく笑顔を見せた。
「はは、気持ちはありがたいが止めておけ。これは孫家の問題だからな。これ以上巻き込むつもりも無いさ。・・・すまんな、折角譲ってくれた功績を。」
「・・・黄蓋殿から聞きましたか。」
「孫策も知っているさ。ふふ、借りを1つ作ったな。いつか返すからな?」
「気にしなくても良いですよ。・・・そろそろ出陣ですかね。」
「うむ。気をつけろよ。」
他にも黄蓋と色々話をしていたところで銅鑼が鳴る。
「む、始まるか。今日こそ終わらせてくれよう。着いて来い高順!」
張り切る黄蓋に苦笑しつつ、高順も兵士を率いて飛び出していく。
見ると、破城槌は既に城壁に取り付こうとしている。昨日、楽進が気弾を撃ち込んだ所だ。
そうはさせまいと、黄巾兵が城門を開けて破城槌へと突進していくが、そこに公孫賛軍前衛の田楷軍が突撃し、足止めをしている。
城壁の上にいる黄巾兵が石つぶてを飛ばしてくるが、破城槌はそのまま進み続け城壁に向かって槌を叩き付けた。
3度、4度と繰り返すうち、城壁が音を立てて崩れ始めた。何人かの兵が巻き込まれている。
「高順、私達はどう動けばいいんだ!?」
横にいる沙摩柯に聞かれるが、城攻めで騎馬隊ができる事など知れている。
「俺達は城壁内部まで攻める。建物の中は歩兵に任せておけば良いさ。あと、非戦闘員には手を出すな!」
「解った。お前たちも聞いたな?行くぞっ!」
「はいっ!」
高順隊は他の部隊と共には城壁の残骸を越えて黄巾兵を駆逐していく。

黄巾の乱と呼ばれる戦い。それが今、終結しようとしている。





~~~楽屋裏~~~
お久しぶりですあいつです(まだ1週間たってない
本当はもう少し書く予定でしたがもう駄目です、気力0です。本編までが長いのに本編に入ってからが短いこのシナリオって・・・。
そして久々に出ました、夏侯姉妹。
それに名前だけですが顔良と文醜も出ましたね。
惇さんは相変わらずですけどね・・・(遠
むしろ、このシナリオではこういった役割を期待されてるような気がしないでもありません。
厳政があっさりと死にましたが・・・演義のみの、出番が少ないくせに割とろくでもない奴です。
王門と同じくらい酷いかもしれない。(あいつ主観

さて、恐らく次回で黄巾編が終わりますね。
その次はどうしようか・・・。

ご意見、ご感想お待ちしております(・×・)ノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第27話
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/09 23:11
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第27話


黄巾兵は北側の城壁を崩され、混乱していた。城門ではなく城壁を崩す。そんな馬鹿なことを誰が思うだろう?
だが、その馬鹿を実行した何者かがいるのは確かだ。事実、今目の前にあったはずの城壁は崩れて官軍が次々にそこから入り込んでくる。
これを見ていた指揮官、高昇は北側に対して兵力を集中させた。しかし今の状況から考えるとそれは効果が薄い。
北からの圧力に対抗するために兵を集中させれば、必然的にそれ以外の方角の兵が少なくなる。つまり抵抗が弱くなるのだ。
北側から攻め込んだ軍勢も流石に苦戦するが、矢も無く、食料も少ない黄巾の士気が高いはずも無く直ぐに押されていく。
少し経ってから東・南・西の順番に門が破られ、黄巾はいよいよ後が無くなった。
それを見越した高昇は既にあの人たちを死んだことにして・・・偽装をして本人達は脱出してもらっている。
高昇はまだ幾ばくか士気の高い兵を率いて、官軍の数が少ない場所を探す。だが、全方位を囲まれてしまった以上、どうしようもない。
あの方々には何とかして逃げてもらわなければ、我々の夢が費えてしまうのだ。逆に生きてさえ逃げ延びさえしてくだされば、自分がここで死んでも本望と言うもの。
血路を開かんと剣を振るい敵兵を切り捨てていくが、数日間ずっと戦い詰めの高昇は既に限界だった。と、そこへ。
「そこの男、黄巾の将と見た!将としての誇りがあるなら私と戦え!」
真っ赤な服、髑髏をあしらった肩鎧。
夏侯惇である。
「くっ・・・良かろう。この高昇、相手をしてやるっ!」
「その意気や良し!我が名は夏侯元譲。貴様を黄泉へ送る名、しかと心に刻め!」
剣を掲げて高昇は突撃、それに対して夏侯惇は刀を構えるのみ。
「ぬああっ!」と雄叫びを上げて剣を振り下ろす高昇。だがその剣が夏侯惇の身体に届くよりも早く、夏侯惇の刀が高昇の首を跳ね飛ばしていた。
「曹猛徳が将、夏侯元譲!敵将、高昇を討ち取ったり!」

その頃、高順隊は城内、というより市街の黄巾兵と戦っていた。
既に黄巾は指揮系統も失っているようで、散発的な抵抗をするのみ。数が多いだけの、まさに烏合の衆だった。
城内の戦いは他に任せて自分達は敗残兵狩り、あるいは非戦闘員の保護に回っている。
城と言っても、城壁の中には何千何万と言う人家がありそこに兵士が隠れているのかもしれないのだ。ほとんどの住民は避難するか逃げたかのどちらかだろうが、避難し損ねた市民もいるかもしれない。そう考えた上での行動でもある。
こういった城内戦の場合、略奪などが起こるのは常であり、その被害を少なくしようとしている。
幾つもの家を見て回ったが、黄巾のみならず、官軍の中からも女子供に乱暴をしている者が出ていた。
高順はそういった手合いを見つけたら、黄巾だろうと官軍だろうと容赦なく殺すようにと命令を下している。その兵士の所属する部隊から文句が出るかもしれないが、そうなれば尻丸出しというかいろいろなものを丸出しにしている死体でも見せてやればいいだろう、と考えていた。
今となっては黄巾兵よりも一部の官軍のほうが敵だと言えたかもしれない。
攻城戦、市街戦というのは本来こういうものだが・・・。どれだけの市民、或いは黄巾の非戦闘員を保護したか。
そんなことをしている内、高順はとある家屋の前にいた。

虹黒から降りて、戟ではなく剣を持つ。屋内の戦闘では戟は扱いづらい。
そこへ、3人娘が馬に乗って駆けて来た。
「隊長!この辺りの住民はほとんどいないようです。それと、沙摩柯殿が兵を率いて他の地区に向かっておられます。」
「ったく、ほんましょーもない奴らばっかやで。ケツ穴ん中にうちの槍ぶっ込んだろーかと、何度思ーたか・・・。」
「うっわ、真桜ちゃん不潔なの・・・。」
「・・・ほんとにね。真桜、君は女の子なんだからそーいう事言わないように。それと、皆ご苦労さん。・・・まだ終わった訳じゃないけどね。さて、入りますか。」
高順は家の戸を開け、中に敵がいないかどうかをじっくりと確かめてから、高順は家屋の中へと入りこんだ。3人娘もそれに続く。
中は割りと広いつくりだったが、伏兵などがいるわけではないようだ。
そこには、3人の・・・外套を着込んでいて、顔までは解らないが恐らく女性?と思わしき人々がいた。
屋内に入ってきた高順らを明らかに恐れており、家の奥で縮こまっている。
やれやれ、と高順は剣を鞘に納めて、3人の前でしゃがみ込んだ。もしこの3人が伏兵であっても退ける自信はある。
3人娘は、というと家の入り口に張っている。
「別に怖がらなくていい。逃げ遅れたのか?」
戦中なので多少気が昂っているが、最大限優しく言ってみる。そのうちの、体の小さい少女(2人いるが、その1人)が「はい、そうなんです。」と答えた。
「そうか。君達が黄巾かどうかは知らないが・・・逃げ遅れたのは災難だったな。俺達は市民を保護しているんだが、着いて来てくれないか?最低限、城の外には連れ出す。」
「え・・・でも・・・。」
「もし誰か襲って来ても追い返すさ。信用してもらえないのは仕方ないのだけどね。」
そりゃあ、官軍が女子供に乱暴してるような今の状況じゃ信用してもらえないのも無理は無いな、とつい苦笑する。
目の前の3人は悩んでいるようだったが、このままここに隠れていてもいずれは・・・と思ったのか、1人が立ち上がった。
では、お願いします。とこれまた身体の小さい少女が頭を下げた。
他の2人はどうしていいのかよく解らなかったようだが、促されて立ち上がる。
「ほら、姉さんたちも。」
「え、うん。あ、ありがとうございます。」
「よ、よろしくね?」
「はい、こちらこそ。しかし、3姉妹ですか。身長から考えるに、長女があなたで・・・残り二人のどっちがお姉さん?最初に立ち上がった人?」
こうやって緊張をほぐそうとしているのだろう。どうでも良い話だが、高順本人は自覚なしに話しかけている。
そんな高順の言葉が気に入らなかったのか、もう1人の小さい少女が腕をぶんぶんと振り回して不満そうに「違うもん!」と叫んだ。
「へ?違うの?」
「違うよ!お姉ちゃんは正解だけど次女はちぃだもん!れんほーが三女なの!」
「そ、そうなのか・・・って、随分変わった名前だな。真名のほう?」
呑気に言っている高順だったが、その「ちぃ」と名乗った少女の言葉に楽進が妙な反応を見せた。
(何だ・・・れんほー・・れんほう?どこかで聞いた覚えが・・・?)
楽進は顎に手を当てずっと記憶の糸を手繰っていく。李典と干禁がそんな彼女を不思議そうに見ていたが、楽進はある事を思い出そうとしていた。
(そうだ、あれは・・・私が大梁で捕まったとき。波才と言ったか・・・。奴らが「てんほーちゃん」だの「ちーほうちゃん」だの「れんほーちゃん」だの。ただの偶然、か?)
悩む楽進だったが、意を決して高順の隣まで歩いていく。
「ん、どうかした?」
「はい、お三方に質問がありまして。宜しいでしょうか?」
この言葉に3人は「はぁ。」と曖昧な返事をした。何だろう?と思っているに違いない。
「皆さんは姉妹なのですよね?」
「うん、そうだけど・・・。」
「先ほどの「ちぃ」さん。貴方の真名になりますが「ちーほう」と言うのでは?」
「え、何で知ってるの?」
外套を被っているので解らないが、ちーほう、と呼ばれた少女は不審な表情をしているかもしれない。
「そして、貴女の真名が「れんほう」さん。では、一番背の高い貴女の真名は「てんほう」さん?」
「え、え?何で?どうして解ったの?」
「・・・そうですか、解りました。隊長、李典、干禁。その3人を捕まえて。」
この言葉に、高順達は「何で?」という表情を。てんほう、ちーほう、れんほうと呼ばれた少女達は肩をびくりと震わせた。
「事情は説明しますから早く。逃がさないでください!」
真剣に言う楽進の声に、高順達は素早く動いて、逃げようとした3人を捕まえた。
「く、離して、離しなさいよー!」と、暴れる3人を何とか押さえつける。暫くして、抵抗する気力も失せたのか、諦めたのか。3人は動かなくなった。
「くうう、手に引っかき傷が・・・しかし、楽進。この3人がどうかしたのか?」
「ええ。というかものすごい大手柄ですよ、隊長。」
「???」
「この3人が名乗ったのは真名です。恐らく、通常使っている名は・・・順番に、「張角」・「張宝」・「張梁」ですね。」
「・・・はい?この娘達が?張角?黄巾党の首魁?」
「はい。・・・どうなんだ?」
いきなりすぎて楽進除く3人は頭が着いていかない。
そりゃ、確かに3人は性別も年齢も外見も不詳だった。が。こんな、何も出来なさそうな娘達が、あの黄巾の乱の首謀者?
外套をめくって、3人の顔を見てみる。どれも可愛らしい年頃の娘さんだ。髪の色が青みがかってたり紫っぽかったりするが、それももう慣れた。
しかし、どう見ても後漢朝転覆を謀る様なタイプには見えない。
「うーん・・・。本物として、どうしたものか・・・。」
「そら、官軍に突き出せばええやろ?褒章もたんまり貰えるでー?」
李典の言葉に、3人はがっくりと項垂れる。この場合、死刑になるのが目に見えているからだ。
下手すれば牛裂きの刑、腰斬、凌遅の刑なんてのもあり得る。
「まあ、突き出すかどうかは別にして、陣幕までご案内だな。ほら、3人とも立って。」
高順の言葉に項垂れたまま、張角らは立ち上がった。
「干禁、悪いのだけど沙摩柯さんに合流して、作業の続きを頼むよ。俺たちは陣幕にこの3人連れて行くから。」
「解ったの!」
「楽進、李典は俺と一緒にこの3人連れて陣幕まで帰還。・・・さ、行きますよ?」
「・・・。」
やはり、返事は無い。
「あと、1つだけ。無闇に逃げようとしないでくださいね。もしそうなると、嫌でも貴方たちを斬らねばならなくなる。」
高順は「話を聞いてからでも遅くは無い」と考えている。この3人が張3兄弟ならぬ、3姉妹なのは解ったが、クーデターを考えるような人間にはどうにも見えない。
外套を被せて、3人を連れて行く。と、そこへ運が悪く周喩の部隊と鉢合わせた。
皆、内心で「げっ・・・」と思ったが、不審な行動をとらなければ大丈夫だ。・・・大丈夫と思いたい。
「高順か。お前達のおかげで随分楽が出来たぞ。黄蓋殿も・・・む、お前達の連れているのは?」
「俺たちは今、逃げ遅れた市民の保護をしてまして。この3人もそうなんです。」
「ほぅ、成る程な。」
周喩は興味深そうに見ていたが、暫くして肩をすくめるように「解った、気をつけろよ。」と部隊を率いて去っていく。
すれ違いざま、「高順、これで差し引きしてお前に貸し2つだからな?」と、言い残して。
その後姿を見送りつつ、「さすが孫家の大軍師。その目はごまかせないか。」と呟く。流石にこの娘達が張姉妹だとは思わなかっただろう。名のある武将か何かだと考えたのかもしれない。
その後も何度か官軍に見つかったが、何とか上手く言い逃れて(李典のおかげ)陣まで引き返す事はできた。

問題はここからだったりする。
陣幕の中で何故か正座してションボリしている張3姉妹。
正直に言って、高順は悩んでいた。やはり乱を引き起こすような人間には見えないのだ。
そこら辺は聞いてみないとなんとも言えない。
陣幕の中には高順と楽進のみ。外に李典を見張ってもらう。
「さて、えーと。張角さん達に聞きたいのですが。」
「はい・・・。」
「単刀直入に聞きますが、この乱・・・貴方達が主導したものですか?」
「ち、違います・・・。」
「では誰が?黄巾党というのは貴方達が立ち上げた組織なのでしょう?ならば、やはり貴方達が主導した事になる。後漢朝転覆を狙ってね。」
この言葉に、人和(れんほう)が反論する。
「だから、それは誤解なんです!私たちはそんな大それた事を考えてなどいない!」
「そうだよ、ちぃ達はそんな事してないもん!」
「しかし、現実に黄巾党は武力を以って後漢朝を攻撃した。その結果がこれではないのですか?」
「うう・・・それは。」
(むう、なんだか要領を得ないな。この状態で解ってるのは、この3人が主導したという訳ではない事と、後漢に対して反乱をした訳ではないという事。
あくまでこれは彼女らの言い分を全面的に信じた場合、だけど・・・。うーん。)
「じゃあ・・・貴方達は何を思って黄巾党を作ったのです?」
この言葉に天和(てんほう)が答える。
「なんだか誤解をされてしまってるんですけど・・・。あたし達が作った訳じゃないんです。」
「はい?」
「私達の・・・うぅん、何て言えば良いかな。「追っかけ」さんが作った組織なんです。」
「・・・お、追っかけ?」
「うん。私達、世間からは宗教組織の長、みたいな風に言われてるらしいけど本当は唯の旅芸人。歌ってお金を稼ぐのがお仕事なんです。」
「旅芸人・・・って。」
えーと、WHY?歌って踊れる旅芸人が黄巾首魁?HAHAHA冗談きついぜモルダー。って、混乱してる場合じゃない。
これで混乱するなといわれるほうが辛いけどね!
新たな事実が発覚しましたね。こんな事が事実だったら今頃歴史の先生は大慌てです。まさか「旅芸人が後漢に対して挑みました!」なんて言えないよね?
それと、張角さん・張宝さん・張梁さんの順に真名が「天和(てんほう)」・「地和(ちほう)」・「人和(れんほう)」らしいです。
だから、天公将軍・地公将軍・人公将軍な訳か。偶然にしちゃできすぎだよな・・・。何か楽進さんも「はあ?」と言いたげな顔してましたよ。
いや、それは良いとして。
「えと。じゃあ、黄巾党というのが言うとおりに追っかけ集団として、何で担がれてしまったので?」
「中央の偉い人が兵士を連れてきて。いきなり「集会を中止しろ!」って。集会と言うよりみんなの前で歌ってただけなのに。そしたら皆怒っちゃって・・・。」
「あれよあれよと言う間にこんな事になっちゃった。私たちは歌で国一番になりたいだけだったのに・・・。」
つまりだ。彼女たちは歌でこの国の一番になりたかった。黄巾党は彼女らのファンだったが、その数が多くなりすぎて、国家権力に阻まれそうになった。
多分、中止命令は1度や2度ではなかっただろう。その上で武力介入をしたのか。
それに反発した人々が彼女達を御輿にして暴動を起こしたのだ。それがいつの間にか大陸全土を覆うような規模になってしまって、いつしか目的が違うほうへと摩り替わっていった?
彼女らの活動の邪魔をするのは許せない、という行動がいつの間にか後漢に不満を持つ農民や賊を吸収してこれほどの乱に。
なんともまあ・・・。

高順は何度目になるか知れないため息をついた。まさか黄巾の乱が一部のファンの暴動とか、そんなところから始まっただなんて。
彼女らの言を信じるならば、彼女たちは加害者でありながら被害者でもある。
ファンの暴動を止めれる立場であり、その機会は幾らでもあったはずなのだ。
だが、彼女らのような一介の旅芸人に何が出来たのか、と言われれば・・・。やはり、何も出来なかっただろう。
何が何だか解らぬままに巻き込まれて、いつの間にか御輿にされて。そして捕まってしまったら処刑。
何だかな、と思う。確かにこの乱のせいで罪の無い人々が多く犠牲になった。
罪を償わせるのは当然だと思うが、このまま官軍に突き出すのも・・・。しかし、このまま放せばまた同じことの繰り返しになるだろう。
(う~~む、どうしたものか・・・。死刑は行きすぎだと思うのだよな。多分、この人たちを担いだ連中は戦死とかしてる筈だ。ん・・・待てよ?)
ここで1つ、高順は発想を変えた。彼女らは人を制御する事はできなくても人を集める事はできる、という所に目を向けたのだ。
官軍に突き出す。→確実に処刑。よし、駄目だ。
他の諸侯に渡してみる。→官軍に引き渡されてry。OK、問題外。
じゃあ孫策さんは?→彼女は価値には気づくだろうけど、目先の利も必要としている以上、官軍に突き出すほうが手っ取り早く地位やら何やら得られる。下手すれば袁術にもっていかれるけど。駄目だな・・・。
(となると・・・うーわ、やっぱあの人しかいねぇ。出来ればあの人の戦力拡張に貢献とかしたくないけど・・・。でも、戦力無いといつか来るだろうあの戦いで負ける可能性もある。
妙な事言ってしまえば、ある程度貸しを作ったほうが後々有利かもしれない。しかし・・・あああああっ。)
色々と考える高順だったが、どうもそれ以外に手は無さそうだ。
それ以外の人に託してもろくな結果になりそうも無い。あの人なら、この人たちの価値も理解するだろうし、きっちりと手綱を締めて制御も出来るだろう。
絶対顔合わせたくないんだけどね。でも、この娘達を見捨てるのはどうも・・・。
高順は怯えきってしまっている3姉妹を見て、ため息を吐いた。
自分のやろうとしてることはとんだ偽善だ。自分の満足のために、この戦いで犠牲になった人々の、その家族の気持ちなど考えずに張3姉妹の命を助けようとしている。
これじゃ、劉備さんのやってることと変わらんな、と自嘲したくもなる。彼女のやり方を批判しておきながら、彼女がとるであろう行動を自分もしようとしているのだから。
ここで、ちょうど干禁達も帰って来たらしく馬の馬蹄の音が陣幕の外から響いてきた。
「隊長、どうなさるおつもりですか・・・?」
楽進は遠慮がちに口を開いた。
「・・・気は進まないけどね。」
「それでは、やはり官軍に?」
「いや。彼女達を有効に利用してくれる人のところへ連れて行く。」
「しかし、それでは!彼女たちはこの乱を起こした原因なのですよ!?確かに、状況を信じるのであれば被害者でもあるのですが・・・。」
「だからさ。考えようによっては死ぬよりも辛いかもね?」
「え・・・?」
「楽進、悪いのだけど李典、干禁、あと沙摩柯さんを呼んで来てくれるかな。少し出かけるから皆について来てもらおう。」
「それは構いませんが。一体何処へ?」
凄まじく嫌そうな顔をしつつ、高順は呟く。
「・・・曹操殿の陣に。もう城内の掃討戦も終わっただろうからね。」

~~~曹操軍の陣~~~
桃色の髪を結い上げた少女が陣の見回りをしていた。
結い上げた、と言っても・・・なんというか、お好み焼きなどの鉄板に油を敷く「アレ」みたいな感じだ。
背も低く、明らかに子供である事がわかる。
ただ、異様なまでの大きさの鉄球を担いでおり一種独特な雰囲気ではある。
彼女の姓は許、名を褚。字を仲康という。
先ほど夏侯惇らが「敵将首を挙げた」と意気揚々と帰還してきた。
許褚は曹操の、そして陣の警護が仕事だったので共に行けなかったのだ。既に戦は終わり、あとは曹操らが色々な手続きをして陳留に帰還するのみだ。
そう思っていたところで、陣の外から誰かが近づいてくるのが解った。
許褚は陣の入り口に立って「止まって!ここから先は許可のある人しか通れないよ!って、うわ、何この大きい馬・・・?」と叫んだ。
それを聞いて、先頭の巨馬に跨った男が馬から下りて拱手をした。
「これは失礼を。俺は高順。公孫賛殿の元で客将をしているものです。曹操殿に用事があって参りました。どうかお通し願いたい。」
「うぇ、こ、こーそんさん?誰それ・・・?」
「誰それって・・・むう、参ったなぁ・・・。」
高順の言葉にハテナ顔をする許褚に、高順も困った表情を見せる。
(誰か、俺の事解る人を呼んでもらうべきかな・・・。でも、いきなり惇さんいる?とか聞いても余計に不審がられるだけだよ・・・どうしたもんだか。)
悩む2人の元に、曹操軍の女兵士が駆け寄ってきた。
「許褚殿、曹操様がお呼びです。至急起こしになるようにと。・・・え?」
その女兵士は高順の顔を見て驚いた顔つきになった。
「あの、まさか・・・高順殿ではありませんか?」
出し抜けに言われたので、高順は「はい?」と間抜けな声で返してしまった。
「そうですけど。何故俺の事を?」
「前に、大梁の黄巾討伐で高順殿の下にいました!」
「・・・え、嘘。あの時に?」
「はい!あの時の高順殿の雄姿・・・今でも覚えております!」
「はぁ、雄姿って言うほど大して無いもしてないような・・・。」
高順を見る女性兵士の目が輝いている。あの時のことを思い出しているのだろうか。
「ところで、何をしに来られたのです?曹操様にお仕えしようと?」
「いえ、そうではなくて、用事があって来たのです。でも、この・・・え、許褚さん?」
さっきは流してしまったが、許褚?
曹操の2代目親衛隊長・・・そっか、幼女なのか。いや、もう驚きませんよ。ええ、もう・・・。
「えー、許褚さんに止められてしまいまして。どうしたものかと。」
高順の言葉を聞いた女性兵士は「なるほど。」と言って許褚に耳打ちをした。
「この方は大丈夫です。おかしなことをなさる方ではありません。保証いたします。」と。
「うー・・・満寵さんがそこまで言うなら・・・解った。皆通ってもいいよ。」
「そうですか、ありがたい。・・・皆、行くよってまんちょぉぉおおぉ!?」
いきなり素っ頓狂な声を上げた高順に2人が驚いて後ずさった。
「ふええっ!ど、どうかしましたか!?私が何か!?」
「な、何?何何何!?」
「い、いや・・・何でもありませんよ。何でも。あは、あははははは・・・。」
満寵て。魏の名将の1人じゃないか。俺、そんな名将の上で一度だけとはいえ仕事したのね・・・。
なんだか笑えないような状況だと思うのだが、自分の感情を誤魔化しておく。
「で、では、許褚殿。私はこれで。」
そういって満寵は去って行った。
「んー。まあ良っか。じゃあ、着いて来て。」
「了解。今度こそ行くよ、皆。」
許褚の後ろに高順、3人娘、3姉妹、そして沙摩柯が続く。暫く歩くと幾人かが「あ、高順殿だ。」とか「あれ、どうして高順殿が?」と言っているのが聞こえた。
それに感心したのか、許褚は歩きながらも高順のほうへ顔を向けた。
「へぇ。おじさん、本当に曹操様の元で働いたんだ。」
「おじさん・・・。ま、まあ1度だけね。」
「ふぅん。・・・着いたよ。じゃあ、ボクが先に行くからね。」
失礼します、と言って許褚が陣幕に入っていく。高順らは暫く待っていたが、「入りなさい」という曹操の声が聞こえたので、同じように「失礼します」と入っていった。
高順に習って、着いてきた皆が拱手して入っていく。
陣幕には曹操、夏侯姉妹、許褚、そして見たことのない猫耳フードらしきものを被った少女もいた。
「久しぶりね、高順。元気そうで何よりだわ。春蘭、秋蘭。縄を持って来て。」
「いきなり何言ってるんです貴方は!?落ち着いてください、話せば解るから!」
「あら、私は激しく燃え盛る烈火の如く落ち着いているわ。昨日は春蘭に随分な恥をかかせたようじゃない?」
「ちーがーうー!アレは寧ろ夏侯惇殿の方に責任が・・・」
「き、貴様!私のせいだというのか!?」
高順の言葉に夏侯惇が激昂して刀を抜きかける。それを曹操は片手を挙げて制した。
「はいはい、原因が春蘭にあったのは解っているわ。少しからかっただけよ。それで?私に用事って何かしら?」
興味深そうに曹操は高順を見る。
「私に仕えにきたのかしら?それとも、本当にただの用事かしら?」
「用事のほうですよ。・・・申し訳ありませんが、人払いをお願いしたい。」
高順の言葉に猫耳フードの少女が怒鳴る。
「あんたねぇ・・・用事があるって言うから華琳様(曹操)は特別に聞いてくださってるのよ!それを人払いですって!?ふざけないで!!」
「桂花、黙っていなさい。」
「で、ですが。」
「私は「黙っていなさい」と言った。私の命令が聞けないの?」
この言葉に、桂花と呼ばれた少女は渋々引き下がる。
「ふう、悪いわね。でも、人払いをする必要は無いわ。この場所にいるのはいずれも信頼できる者たちばかり。・・・そうね、季衣(許緒)には外の警護をお願いしようかしら。」
「はいっ!」と元気良く叫んで許緒は人幕の外へ出て行った。
「さて、用事とは何かしら?」
曹操の言葉に高順は外套を被ったままの張3姉妹を自分の横に連れてきて、外套を取る。
「紹介します、張角さんとその妹達。張3姉妹です。」
『!!?』
高順の言葉に夏侯姉妹が武器を取る。
「待ちなさい、2人とも。・・・高順、その3人が本当に張姉妹なのかしら?それを証明できる方法はあるかしら?」
この言葉に高順は肩をすくめる。
「さあ。本人達がそう言っているだけですからね。ただ、本当であれば価値は凄いですよ?」
「?」
高順は、自分が知る限りの事情を説明した。
彼女らは旅芸人であり、その歌声に魅せられた人々が黄巾党の正体である事。黄巾党が戦いを引き起こした理由。
唯の御輿と担がれた事。全てを喋った。
黙って聞いていた曹操だったが、やがて口を開いた。
「はぁ。それが本当なら私たちは完全に振り回された形になるわね。」
「本当なら、ですけどね。」
「で、その娘達を私に合わせてどうするつもり?私の手柄にしろとでも?」
この言葉に高順は首を横に振った。
「彼女達の「人を集める才覚」を、曹操殿に正しく使っていただきたい。」
「へぇ・・・。それがどういう意味か解ってて言ってるのかしら?」
「それは勿論。」
「私がその才能を最大限利用すればどうなるのかしら?」
「そりゃもう、黄巾の乱なんて目じゃない規模になるでしょうね。ですがこれは保険でもあります。」
「保険?」
「貴方のほかに北で力を持ちそうな人が約1名。それに対して、ですかね。」
「ふぅん。そういう事?」
曹操が楽しそうに眼を細める。
「あなたが勝つのでしょうけどね。ですが、人の数がいなければ危ないのも事実。あなたが勝つ方が、色々と危険なのかもしれませんけどね・・・。」
「・・・解ったわ。彼女達の才能。私がきっちりと使いこなして見せるわ。暴走なんてさせないから大丈夫よ。」
参ったな、これもお見通しか。高順は苦笑した。
曹操は北で力を持つ、ということに思い当たる人物がいたようだ。当然公孫賛ではない。
その時は年代的に自分が死んでいる可能性が高いので、危険がどうとかは実際には解らない。だが、これで曹操の実力が1つどころか3つ4つ飛びぬけるのは事実だ。
早まったかもしれないな・・・。
「まあ、彼女らが偽者だったら煮るなり焼くなり好きなように。」
高順の言葉に3姉妹が「ええっ!?」と叫ぶ。だが、これは彼女らの犯したことを考えれば安いものだと思う。
「まあ、頑張って。では、用事はこれだけです。失礼致します。」
高順は長居をするつもりは無いと、そのまま陣幕を出ようとする。
「待ちなさい、高順。」
「は?」
「「また」貴方に聴きたいことがあるわ。」
「・・・はぁ、解りました。」
「貴方、私に仕えるつもりは無いと言っているわね?」
「ええ。」
「でも、貴方は結果だけ見れば、私の利益に繋がることをしていく。前の大梁のときも。そして今回も。貴方は一体何を考えているの?」
「・・・さあ?確かに結果だけ見ればそうなのでしょうね。強いて言えば個人的な欲ですよ。」
「欲?どういうこと?」
「大梁の時は、楽進達を、そして村の人を助けるために貴方を利用した。今回は3姉妹がどうしても悪人に見えない上、官軍に突き出して死刑にするのもどうかと思いましてね。」
高順の言葉を曹操は黙って聞いている。
「まあ、簡単に言えば俺は偽善者なんですよ。それに、使える才能があるなら使いこなす。それが貴方の流儀でしょう?」
「当然ね。」
「だからこそ俺は貴方に仕えませんけどね。馬車馬は御免なんです。では。」
「まだよ、用事は終わっていないわ。」
「ぬぅ。」
曹操は、夏侯淵に「あの二振りの剣を持ってきなさい。」と命じた。夏侯淵はその言葉に多少驚きつつ、陣幕を出て行くが、直ぐに帰って来る。
夏侯淵から二振りの剣を受け取った曹操は高順に自分から剣を渡した。
1本は青い鞘に、もう1本は黒い鞘に入っている。両方とも、かなりの長さだ。
「この剣は?」
「私が昔使っていた剣よ。青釭、そして倚天の剣。これを貴方にあげるわ。」
「・・・褒美のつもりで?」
「まさか、この剣だけでチャラに出来るような問題ではないわ。あくまで手付けのようなものね。いつか、きっちりと借りは返すわ。」
高順はその剣を一本ずつ鞘から抜いてみる。
青釭は片刃なので、剣と言うよりは刀だ。ただし、刀身が長く、反身がない。対する倚天は、どちらかといえば長剣だ。両刃で重そうに見えるが実際はそれほど重くない。
「良いのですか?これ相当な業物ですよ?」
「ええ、私はもう使わないもの。」
「そうですか。では受け取っておきますよ。・・・3人とも、元気でね。」
高順の言葉に3姉妹は「あ、ありがとうございました」と頭を下げた。死ななくてすむということが解ったのだろう。
その3人の言葉に手を振って応えた後、高順は陣幕を出て行った。
曹操はその後に、夏侯惇と夏侯淵に命じて張姉妹に陣幕を宛がった。2人は見張りでもある。
見送った後、曹操は「ふっ・・・うふふふ。あはははは・・・。」と思わず笑い出してしまった。
「華琳様?」
「あら、桂花。私が笑った理由でも知りたい?言わなくても解っているとは思うのだけどね。」
曹操は人前でも平気で真名を使う。桂花、と呼ばれた少女は本来は荀彧と呼ばれている。
「当然解っています。あの男の言うとおり、3人が本当に張姉妹ならどれだけ多くの人を集められるか。その上、同じような事が起こっても彼女らを使えばすぐに鎮定できるでしょう。」
「その通り。人、そして治安に於いても私は大きな利益を得たわ。それにしても・・・ふふ。おかしな男ね、高順は。」
「本当にただおかしいだけです!あんな男・・・!」
荀彧はそう言い切るが、それは当然だろう。そのまま官軍に差し出せば多大な恩賞を得られたのは間違いない。
それを不意にする理由など無かったはずなのに、特に拘るでもなく曹操に引き渡したのだ。
恩賞とか、その類に欲が無いにしても、これは少しおかしい。
「まあ、その辺りは良しとするわ。何物にも代え難い利益があったのだから。」
そう、この黄巾討伐は曹操にとって大きな飛躍のきっかけになるだろう。
張3姉妹は勿論、以前の大梁黄巾もだ。彼らを早く討伐したおかげで自分達の勲功の稼ぎどころが増えた。
そして高順が利に釣られる様な男ではない事も理解できた。それを外さなければ落とし処は幾らでもある。
いつか、自分の前に跪かせて見せる。欲しいものを手に入れなければ気がすまない曹操の意地でもあった。

曹操軍の陣を出た高順に、3人娘が次から次へと話しかけてくる。
「なあ、高順にーさん。ほんまに良かったのん?」
「そうなの、すっごい大手柄だったのに。」
「・・・私は隊長を疑う訳ではわりませんが、たまに考えている事が解らなくなってきます。」
「3人同時に話しかけなくても。これで良かったんだよ、多分。」
高順はこう言うが、やはり納得は出来ないらしい。
「せやけどなぁ。あの3人の首はごっつい価値あったと思うわ。それを不意にするって言うのがよぅ解らんわ。」
「そうですね。彼女らの首は1つでも、相当の価値だったと思います。」
「太守になれたかもしれないの。」
「そんなもんになった所で堅苦しくなるだけだよ。政治的才能なんて俺にはないしね。」
ま、分相応ってことですよ。と高順は未練なく言うのであった。
黄巾の乱を引き起こした罪と、民衆をここまで追い詰めた後漢の罪。
どちらがどう正しく、間違っているのか。力の使いどころを間違えたとか、政治の腐敗とか色々あるのだろう。
だが、今の後漢が張角たちを正統な立場で処分できるのか?と聞かれれば高順は「どうだろう?」と悩んでしまう。
もしも武力介入で3姉妹の活動を止めようとしたのなら、後漢朝が最初の加害者となり、黄巾党は反撃をしただけとなる。
それがおかしな形で広がっていき、抑制できないのは黄巾の悪意でもある。そしてその悪意を独力で止められなかった後漢。
あのまま3姉妹を官軍に引き渡せば、間違いなく処刑されて真実は闇の中へ、となるのだろう。
それすら、3姉妹の言い分を信じれば、ということでしかない。
どちらがどう悪いのか、などは当人達にしか解らないのだろう。そんな訳のわからない物に巻き込まれるのは御免だ、という気持ちが高順にはあった。
思ったが、どうも3人娘は納得がいかないらしい。
「む~~~。でも惜しいなぁ・・・。」
「今回ばかりは隊長が優しいから、では納得がいきません。何故あの3人を助ける必要があったのでしょうか?」
「納得いく説明を求めるの!」
「まあ、私はどちらでも構わないのだがな。高順にも考えがあって曹操とやらに引き渡したのだろう。」
3人娘と違って沙摩柯はどちらでも良い、という考えのようだ。それも高順を信用しているからこそだろう。
沙摩柯は、高順のことを「利ではなく理。その一点だけを外さないように行動している」と見ている。
時折おかしなヘマをやらかして、周りから避難されていることもあるが、基本的には義と情の人だ。それこそ「高順からの劉備への評価」と同義であり、沙摩柯もそれは理解している。
1つだけ違うところがあるとすれば、劉備は立場上「利益」を見なければならないが、高順はその「利益」をそれほど考えようとしない。というよりも故意に考えないようにしているとも思える。それが素の性格なのかどうかまでは解らないのだが・・・。
どちらにせよ、沙摩柯は高順の考えに異を挟むつもりは無い。拾ってもらった恩を働きで返すのみだ。
その沙摩柯はともかくも、3人娘はまだ高順に文句を言っている。
彼女らの言葉に、高順は少し考えて答え始めた。
「な、3人とも。質問に質問で返してしまうけど、後漢朝の言ってる事が何もかも正しいと思う?」
「へ?後漢?何で?」
「いいから、答えて欲しいな。」
高順の言葉に、3人娘は迷うことなく「否」と答えた。
「だろうね。俺もそうさ。実際、黄巾に対しての話も違っただろう?黄巾党が政治結社だとか、怪しげな宗教団体とか、政府転覆を狙ったりとか、最初はそんな話だった。でも、奴らがそんな思想を持ってたかな?」
「・・・持ってなかったの。」
「じゃあ、そういう事さ。後漢は自分達に都合の悪い事を隠して、相手の非ばかりを説いた。考えてもみなよ?最初は3姉妹の言うとおり追っかけの起こした暴動だったとしても、その後これだけ規模が大きくなったのはどうしてだ?それだけ政治に不満を持つ人々が多いからだよ。自分達に都合の悪い事は見ないふりをしている連中の言う事など聞きたくもないね。」
「では、隊長は3姉妹の事を信じておられるのですか?」
「全部信じた訳じゃないよ。でも、あの娘達が政権奪取とか狙うように見えたかな?もし狙ったとしても、その後のことを考えているように思えたかな?」
「それは・・・。思えませんでした。」
「あの娘たちは本当に歌で国一番になる事を目指していただけだと思うよ。もう少し平和な時代に生まれていれば、本当にそうなれたかもしれないのに。」
「せやけど、それだけで助けたる、ちゅーのは・・・。」
「真桜の言うとおりです。それでも彼女達の罪が消えた訳ではありません。」
「んー。こう考えたら納得できない?ここで死刑にされるよりも、曹操さんのところでこき使われるほうがよほど辛い、って。」
高順の言葉に3人はその情景を思い浮かべる。そしてすぐに、
『・・・あー。』と唸った。鮮明にその状況を想像できる分、よほど説得力があったのだろう。
「あの大将に使われるのはむっちゃきついなぁ・・・。」
「過労死確定なの。」
「・・・確かに、解りやすい例えでしたね。」
3人は「はぁ~~~・・・」と盛大なため息をついて、それ以上の追求をしてこなくなった。
単純だな、と苦笑する高順だったが、他にも助けた理由はあった。簡単に言えば「同情」してしまったのだ。
少し考えてみると、高順と張3姉妹の境遇は微妙に似ている。
自分は転生と言う形で。3姉妹はいきなり黄巾党の首魁へ。本人達の望む望まないに関わらず今の状況に押し上げられた。
高順は自分と3姉妹の辿る、或いは辿ったかもしれない運命に何か重なるものを感じていた。
歌う事が好きで、その歌で国一番になりたいと夢を追い続けて、最後には賊として処刑されるなんて、あんまりではないか。
自分の、そして彼女達の置かれた状況と境遇に反発した結果が、彼の取った行動だった。
犯した罪の分は清算すれば良い。人を扇動していったのは彼女達ではなく彼女達を祭り上げた人々、そして今の時代を作り上げた政治なのだから。
もし自分が平和な時代になるまで生き延びることが出来たなら、その時に彼女達の歌を是非とも聴いてみたいものだ。
そんなことを思いつつ、高順は自身の陣へと帰っていくのだった。




こうして、黄巾の乱は一応の終結を見た。
張角らと「思われる」遺体を発見したのは袁紹の軍勢であり、その首を切って皇甫嵩に届けた袁紹が軍功第一とされた。
他にも黄巾の将を討ち取った曹操、孫策(袁術に首を横取りされたが、孫策軍の黄蓋が厳政を討ち取ったときの音声を皇甫嵩は聴いていた)。
黄巾の夜襲を防ぎ、城壁を壊すほどの猛撃を見せた公孫賛。彼らにも軍功ありと、皇甫嵩は中央に報告をするつもりのようだ。
大なり小なり、この戦いに参加した諸侯は恩恵を与えられるだろう。
だが、これで終わった訳ではない。これからも同じような事は起こるうる。
諸侯は各々、その胸に野望を秘め帰途に着いた。

時代が本格的に動き出そうとしている。
高順もまた、その時代の波に嫌でも飛び込んでいかなくてはいけないのだが・・・。
それは、もう少しだけ後のお話。




~~~楽屋裏~~~
3姉妹を助ける理由になっていません、あいつです(ぁぁ
更新速度はどんな程度がいいのでしょうねえ。
あまり早いとその分終わるのも早くなり、遅いとそれはそれで文句を言われそうな・・・w

また難しかったです、今回は。
3姉妹が家屋で閉じこもっていたのは護衛が全員死んだからでしょうねぇ。とか、城壁ってそんな簡単に崩れるものなの?とか。
まあ、今回は高順くんが自分を偽善者と言いきったり、結局自分も劉備と変わらないと自覚したりとかそんなお話。
それ以上に文才の無さに作者が気づく回でした(駄目だ
ほんと、どうしよう・・・


さて、これからのお話ですが・・・

高順:こうじゅん。こーじゅん。皇潤。お試し価格6300円。この先どうするのか考えるの面倒なのでなんかもう次回死にます。
3人娘:楽進の気弾がうそ臭い威力だったり、李典が回転ドリルだったり、干禁の影が薄いのでもう死にます。
曹操:ドリル回転髪がうざいのでもう死にます。
公孫賛:どう頑張っても影が薄いのでもうなんか死にます。



こんなんじゃ駄目ですか?駄目ですね。解ってるんですたまには現実逃避したいんです生きててゴメンナサイあああああああっ(涙



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ ちょっと本気出して打ち切ってみた。(偽)の巻。誤字アッタヨ
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/14 09:17
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 最終話 ~夢の後先~

下邳が燃えている。
城壁のあちこちが壊され、破られ、所々に兵士の死骸が散乱していた。
城には「曹」の旗がたてられており、先ほどまであったはずの「呂」旗は引き摺り下ろされ燃やされている。

下邳。つい先ほどまで呂布が治めていた都市。
つい先ほど、というのは劉備と曹操の連合軍に攻められて陥落したからだった。
連合軍の威容に恐れを為した呂布軍の将、侯成・宋憲・魏続が城門を開けて降伏。
結果、三国最強と呼ばれた少女、呂布は関羽・張飛・趙雲。そして魏の夏侯惇・夏侯淵・典韋・褚猪と言った両軍の勇将相手に闘い、あえなく討ち死にをしたのである。
降伏を呼びかけられた陳宮は最早これまでと、自身の胸に短剣を突き刺し自刎。
張遼も夏侯惇と激闘の末、敗北し捕縛された。高順と、彼に付き従う武将も最後まで戦い抜いたが、呂布亡き状態である上、どうしようもできない物量差に押され、関羽らに破れ捕縛されたのだった。
その高順を見下ろす形で、曹操が仮の玉座に座っている。劉備らもその横にいて、どうしたものかと悩んだ表情だ。
張遼、そして高順に付き従っていた3人娘と沙摩柯は、すでに曹操への臣従を了承しているが、傷を負っていて、その治療のために陣幕へと運ばれここにはいない。
だが、高順だけが頑なに臣従を拒否しているのだ。曹操は、何度目になるか知れない言葉を高順に言う。
「高順、私に仕えなさい。貴方の才能は呂布程度に扱いきれるものではなかったわ。呂布は貴方の能力を理解できず、貴方の鍛え上げた武将と兵を全て魏続に与えた。そのような事をせず、貴方と陳宮の言葉に耳を傾けていれば今日のような無様な敗北はなかった筈。」
「貴方であれば、その才能とやらを使いこなせると?」
「当然ね。私を誰だと思っているのかしら?貴方が臣従する、というだけである程度は丸く収まるわ。貴方を慕って、ここまで着いてきたあの娘達の気持ちを理解してあげて欲しい。」
「・・・。」
「さあ、決断しなさい。」
曹操の言葉に、高順は「お断り致す。」とだけ。この一言を口にするのみだった。
この態度に、夏侯惇も頭に来たのか、高順を怒鳴りつけた。
「貴様、いい加減にしておけよ!?華琳様のご厚意を何だと思っているのだ!?」
この言葉に、高順は取り乱すでもなく答える。
「厚意?そんなものは知ったことか。俺は前にも言ったはずだぞ・・・?俺と言う人間は曹操と言う存在の器に入れない手合いだとね。」
「華琳様の器の中に入りきれないとでも言うのか!」
「逆だ。曹操殿の器の中に入る事すらできない、という意味さ。俺は前にも仕えるつもりは無いと明言しただろう?言った以上、それを違える事はない。それとも、あんたが逆の立場なら臣従するとでも言うのか?」
「そのようなこと、ありえるはずが無い!」
「無いのなら、黙っていてもらおう。人にはそれぞれ思うところがある。曹操殿が言うから、それに従う。そんな人間ばかりではないよ。」
「・・・ならば、劉備はどうかしら。彼女ならば貴方の眼鏡に適うのではなくて?」
曹操の言葉に、高順は劉備を見やる。
その劉備の表情だけで、言いたい事が解る。
「お願いだから、生きる道を選んで。」と。
昔、彼女の真意を掴めずに随分と酷い関わり方をしたものだ。と思い出す。
彼女らの真意は何1つとして変わっていなかった。義と情。その2つの文字のみは絶対に斬り捨てることなく、彼女たちはこの戦乱の世を生きているのだ。
彼女はその言葉と意味を万人に伝えようとするのだろう。そして、そのまま世界が平和になってくれればいいと思うのだろう。
それに比べて自分は、彼女の力量を疑い、義と情を封印しろと言った。そのくせ、自分が彼女と同じような行動をしていたのだ。
それに自己嫌悪を感じ、それから何とか性格を変えようと試みた。だが、結局は出来ないままだった。
自分の性格、性質を偽って生きる。そんな器用な生き方などできなかったのだ。
そのままズルズルと生きた結果がこれだ。自身の運命、それを変えることが出来ないまま、ここで死を待つ身となっている。
「・・・劉備殿、か。はは、それもいいかも知れんな。」
「ならば・・・。」
「だが、それも断る。」
「・・・どうして?何故そこまで死にたがるの?」
曹操の悲しげな問い。それに対して、高順は簡単な話だ、と言いたげな表情を見せた。
「俺如き凡才が生きる場所が劉備殿の下にありますか?もし俺が仕えると言った所で、活躍の場など無いまま終わるでしょう。・・・俺の気持ちは変わりませんよ。さあ、勝者と敗者の差。功罪を明確になされるが良い。」
「・・・解ったわ。高順を刑場に連れて行きなさい。」
毅然とした態度で曹操は言い放つ。
「しかし、宜しいのですか?」
夏侯淵が遠慮がちに言うが、曹操は首を振った。
解ったのだ。彼の心が動かせないことに。
無理に支配下においても、結局は満足するように動いてはくれないのだろう。
そのまま他陣営に属されて、敵対でもされたらまた苦労する羽目になる。本当に惜しいが、仕方が無い。

そのまま刑場に引き立てられた高順は座して目を閉じる。
結局、自身の運命を変えることは出来なかったがこれはこれで楽しい人生だった、と思う。
本来なら知りあえる筈も無い人々と出会えた。呂布という存在の元で、自分の力を出し切って戦えた。
あの曹操、劉備。英雄と評される存在を相手に存分に戦えた。
心残りがあるとすれば楽進達だが、彼女達ならば曹操の下で実力を発揮していけるだろう。
自分は一足先に逝って、その活躍を見届けるとしよう。いや、先に逝った呂布達と共に向こうで大暴れしてみるのも一興か。
そのまま、高順は執行吏の1人に押さえつけられた。そして、もう1人の執行吏が高順の首に向けて、青龍刀を振り下ろす。
数瞬の後、肉を切り裂く音が刑場に響き渡った。





建安3年12月。高順刑死。
最強の騎馬隊を率いて三国無双の名をほしいままにした呂布軍。
その呂布と共に乱世を駆け抜けた高順の死は、1つの時代の終焉であり、これからの時代の始まりの予兆でもあった。

























































あいつ「という夢を見た。」
高順「夢かよっ!?」





~~~楽屋裏~~~
人間である以上、どうしようもない疲れが存在するのです、あいつです(挨拶
さて、今回のシナリオ、人によっては驚くかもしれませんね。
むしろ、「ふざけんな!」とか。
ただ、これは旅が中途半端な結果に終わってしまった場合の高順くんの末路でもあります。
あのまま丁原さんの元にいても同じような結末ですね。
BADEND、というのを書いてみたくなりましたw

色々な批判、意見を見て「なるほど。」と思うところもあれば「ふざけるな!」と激昂もして見たり。
意見にすらなってない批判感想には反応しない、これで良いのでしょうかね・・・。
この回が問題になったので削除しましTA!(駄目


でもまた疲れたらやります(現実逃避として



次回はちゃんとしたものを書きます!それではまたノシ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 番外編その4 上党的日常。
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/14 09:21
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 番外編その4 上党的日常。



黄巾の乱終結より3ヶ月。
高順達は北平を辞して、上党に帰還しようとしていた。
当初は黄巾の乱が終結してすぐに、と考えていたのだがそれ以降も黄巾残党が幾度も北平領内を荒らしまわったり、盗賊団がそれに合流したり、と中々に忙しかったのだ。
公孫賛だけでも楽に出来たであろう仕事だが、彼女は太守としての仕事が山積みで(2ヶ月ほど領内を空けていた)涙目になっていた。
趙雲も同時期に暇乞いをしようとしていたらしいのだが、それを見て高順と相談をした。
「もう少し沈静化するまでは仕事をしよう。」と。2人にしても、公孫賛は1年近く世話になった恩人だ。
少しでも負担を減らしてあげよう、ということになったのだ。
それから3ヶ月、彼女の親族の越、範らと共に数度目の賊討伐を終えた頃、2人は「そろそろ頃合だな。」と考えた。
公孫賛の公務が一段落してきたし、賊の数も帰還してきた頃に比べれば随分と減った。
それを見計らって、高順と趙雲は同時に「そろそろ暇乞いを」と言いに行った。その時公孫賛が見せた表情は・・・ずぅぅぅん、と今まで見たことの無いほどの暗いものだった。
「そ、そうか。2人ももう行くんだな。は、はは。はははははは・・・。はぁぁ~~~。」
・・・そして、盛大な溜息だった。
だが、高順、趙雲らの鍛え上げた兵は中々の強さになっていたし、何度も功績を挙げてくれたのだ。
本音を言えば客将としてではなく家臣として仕えて欲しかったが、2人にも思うところがあるからこそ、客将の立場を欲したのだ。引き止めるのは彼らのためにならないだろう。
それを思った公孫賛は項垂れつつも、「わかった。2人とも・・・いや、楽進達もだけど、ご苦労様。本当によく働いてくれたよ。本当にありがとうな。」と、笑顔で言ったのだった。
出立当日、わざわざ公孫賛が見送りに来てくれていた。
彼女だけではなく、この1年近くを共に過ごしてきた多くの将兵もだった。
意外だったのは公孫越、公孫範も見送りに来てくれた事だった。出会った当初は高順、3人娘。蹋頓や沙摩柯にまで蔑むような態度を取っていた彼らだが、共に戦場を駆け、活躍する彼らを見て認識を改めたらしい。王門とは関係修復できなかったが、それはどうでもいい。
その彼らが、率先して話しかけてきた。
「あー、高順。その、だな。最初は、ああいう態度を取ったりしたが・・・。その、悪かったな。」
「へ?」
「いや、沙摩柯達の事を蛮族と言ってただろ?」
公孫越の言葉に、公孫範も恥ずかしそうに続く。
「それに、楽進殿達の事まで役に立たない小娘とか言ってしまっていたしな。その認識は間違っていたようだ。すまない。」
そう言って二人は頭を下げた。それを見て楽進達も笑いつつ、
「いえ、こちらも心中で「減らず口ばかりたたいて・・・」と思っていましたが、口だけの方々ではなかったとすぐに解りました。」
「ぬ・・・く、口だけとな・・・。」
「せやなぁ。でも、烏丸との戦いにせよ、黄巾の時にせよ、公孫賛のねーさんに従って勇敢に戦ってたやろ?」
「うんうん。見直したの。」
「まあ、人のことを蔑んだだけはあるな、くらいは思ったものさ。」
「ぬ、ぬぬぬ・・・。」
一斉に「口」撃される2人だったが、暫くしてその場にいた全員が笑い出してしまった。思い返せば、仲が悪いなりに上手くやっていたのだ。その事を思い出して、何よりも懐かしさのほうがこみあげてきてしまった。
「お前ら、気をつけろよ?この辺りはなんとかなってきたが、上党の辺りはまだなんとも言えんからな。」
「ええ、ご忠告感謝します。お二人もお元気で。」
そう言って握手を交わす。別に青春劇をしたい訳ではなかったが、こういうのも悪くは無い。
「なぁ、私を忘れないでいてくれると嬉しいのだけど・・・。」
おずおずと公孫賛が口を挟んでくる。
「忘れてる訳が無いでしょう。・・・お世話になりました。」
高順の言葉に皆が頭を下げ、臧覇も「ありがとーございました!」と言った。
(そういえば、公孫賛殿はたまに臧覇と遊んでくれていたらしいな。)と思い起こす。
考えてみれば、彼女には本当に世話になりっぱなしだ。旅に出てから一箇所に腰を落ち着ける機会はそうなかったが、北平は、いや、公孫賛が治めるこの場所は居心地が良かった。
「ん。元気でな。近くに着たらいつでも立ち寄ってくれよ?」
「ええ、そうさせていただきます。」
「それと、私の真名を預けるよ。」
「え?いや・・・しかし。」
「おいおい、これでも感謝してるんだぞ?真名というのは心を許したものにだけ許す本当の名前さ。私は皆を信頼している。皆は私を信頼してくれないのか?」
「そんな事はありませんよ。」
多少驚きつつも答える高順に、公孫賛は爽やかな笑みを見せた。
「なら、断る必要は無いよな?よく桃香が私を真名で呼んでいたから知ってるとは思うけど・・・私の真名は「白蓮(ぱいれん)」だ。」
「・・・そうですか、解りました。またいつかお会いしましょう、白蓮殿。」
高順の言葉に、皆が続いていく。
「今までありがとうございました、白蓮様。」
「ありがとうございましたなの。」
「おおきにな、忘れへんで?」
「貴方に心からの感謝を。・・・そして、蹋頓らの事を頼む。」
皆の言葉に、公孫賛は照れ笑いを見せた。
「はは・・・。あ、そうだ。星(趙雲)は何処に行ったんだ?」
「へ?見ていないですけど・・・。」
「まったく、あいつは・・・。まさか挨拶もせずに出て行ったのか。薄情なy「誰が薄情ですと?」うひぇっ!?」
なんと、公孫賛の後ろから趙雲が出て・・・いや、やって来た。
「全く以って失礼な事を仰る御仁ですな。私は用意に手間取っただけです。」
「そ、そうか。何をそんなに手間取ってたんだ。」
「それは秘密です。女には秘密が多いものですぞ?」
そうは言うものの、何か大きな樽(中身メンマ)を背負ってたり、荷物袋の中に大量の徳利を詰め込んであるので何を買っていたか丸分かりである。
高順はその中に、赤い布か何かで封をされた徳利を見つけた。少しだけ気になったが、それは後で聞けばいいだろう。
「私も女だけど・・・まあいいか。星も元気でな。いつでも立ち寄ってくれよ?」
「ふむ、またこき使おうと言う魂胆ですか?」
「そんなわけ無いだろ!」
「ははは、解っております。今まで世話になり申した。白蓮殿もお元気で。」
「ああ、星もな。」

こうして北平、いや、公孫賛の下を去った高順達だったが・・・。
「あのー。」
「ん、何ですかな、高順殿?」
「・・・なんで、趙雲殿まで着いてきてるんですか?
そうである。何故か趙雲が高順一行に加わってしまっていたのだ。
「なんで、と申されましても。私の行く方向がこちらなだけでございます。」
「俺達、上党へ向かうんですよ?」
高順の言葉に趙雲は知っておりますが、と答える。
「いや、知ってるとかじゃなくてですね・・・。」
「ほぅ、私のようなか弱い女を1人にしたいとでも。そして野獣が如き男に襲われても構わない。そう仰りたいのですな。」
「飛躍しすぎだー!そこまで言ってないでしょ!?」
高順が叫ぶ。。何でこの人はいつもこう、アレなんだろう。周りの人をからかって楽しむ事に全力を尽くしているように見えるが、そうでないときも多い。
一言で言って掴みどころがないのだ。
多少、弄られる事に慣れてきた高順だったが、おかしな意味にも通じてしまう言葉で弄られるとどうしても落ち着かない。
「まあ、それはそれとして。どうして趙雲殿まで上党に向かわれるのです?隊長は上党が生まれ故郷だそうですが・・・?」
楽進も、高順と同じ疑問を感じたのだろう。その問いに趙雲は特に何でもないように答える。
「実は、上党で丁原殿という・・・考えようによっては今でも高順殿がお仕えしているお方がおられましてな。私もあの方の元で一度だけ戦ったことがございます。高順殿とはその時お会いしたのですよ。」
「へぇー。高順さんがそんな境遇とは知らなかったの。」
「せやな、そういうこと話してくれたことあらへんかったよな。いや、あったっけ?忘れてもうたな。」
「私は初耳だな。」
「別に隠してたわけじゃないよ。話すようなことでも無かったしな。」
そう言いつつも、高順は懐かしそうであった。皆、元気にやっているだろうか。
丁原達もだが、父母のことと残してきた馬・・・海優(かいゆう)と名づけた牡馬だが、それらのことを思い出していた。
海優と名づけたのは優しい馬だった、というただそれだけのことでつけた名前だ。
旅をしようと決断した頃には既に老齢と言っても差し支えない馬だったので置いてきたのだ。父母も、お金の事はあるが馬を大切にする性分だ。多分元気でいるだろうな。
それから幾日。
北平から最短で上党に行くには、どうしても晋陽を通らなくてはいけない。
正直、晋陽でのことは思い出したくない事のほうが多かった。褚燕と親交があったのは間違いなく良い思い出だったが、それ以外が辛すぎる。
自分が悪い訳ではないが、あの戦いの結果は一体何だったのだろう、と今でも考えてしまう。
正しい者が勝てるとは限らない。そんな言葉を実感させてくれる嫌な結末だったのだ。
褚燕と話をしてみたいと思いもするが、彼女らが追いやられた「黒山」の場所を知らない。
そんな考えもあって、高順は晋陽を早めに抜けていった。対して、趙雲は褚燕だけではなく郭嘉と程昱の事を思い出していたようだ。
どことなく懐かしそうにしていたし、この地は高順らとも出会った場所でもある。高順にとってはそうではないが、趙雲にとっては良き思い出の多い土地だった。
高順が急いでこの土地を抜けようとする事に異論を差し挟むではなかったが、趙雲はどことなく寂しそうな表情を見せていた。
晋陽を抜け、更に数日。ようやく上党が見えてきた。もう、1年以上は経っている。
旅に出てから今まで、それほど長い時間が経った訳ではないが随分と濃い経験をしてきたな、と高順は考える。
虹黒、3人娘、曹操軍、蹋頓、沙摩柯、わざわざ上党からやってきた閻柔と田豫。そして劉備軍、公孫賛軍、孫策軍。当然、丘力居や臧覇もだ。
・・・本当に濃い連中ばかりだ。将来的に3国の君主となる人々とも知己がある。(孫権はまだ会ってないが。)
「さて、これから上党に入る訳ですが・・・まだ昼頃だし、まずは家に帰るかな。」
「ふむ、あの母上殿とお会いするのも久方ぶりですな。」
「・・・前みたいな事は止めてくださいよ、本当に。」
旅に出る前の母親と趙雲のやり取りを覚えている高順はげんなりとした。何があったのか知らない他の人々は「何があったのだろう?」くらいにしか思っていない。
それはともかくも、高順達は上党の門を潜っていく。
門番が数人いたが、高順にとっては顔見知りな上に、向こうも皆覚えていてくれたようで「おお、やっと帰って来たな!」と声をかけてくれる。
「ああ、やっと帰って来れましたよ。あとで丁原様にも挨拶に行きますけどね。」
「ん?今は丁原様は不在だぞ?」
「へ?不在って?」
ああ、そうか、知るはずもないよな。と門番は呟く。
「俺たちも詳しくは知らないのだけどな・・・。丁原様は3千ほどの兵を引き連れて洛陽へ行かれた。もう1月以上前のことだ。」
「1ヶ月・・・朱厳様も?」
「うん。上党の主力部隊を連れて行ったからな。何かあったのだろうかね。」
「主力ねぇ。今のここの戦力はどれくらいなんだ?」
「おいおい、そんなの知ってどうするんだ?」
門番が苦笑する。
「間者でもあるまいに。」
「そうだけどな。黄巾の乱とかがあっただろ?それなりに戦力拡充もしたのかと思ってさ。」
「そりゃあそうだ。前は7,8千ほどだったが今では1万をゆうに越えるよ。」
その中での主力3千か。これが多いか少ないかは解らないが・・・やはり、洛陽で何かあったのかも。
「ふぅむ・・・。」
「高順、悩むのはいいけど街に入ってからでも良いだろう?お連れの方々も待ちわびてるぞ?」
その言葉に、「おおっ!?」と叫び声を挙げておかしなリアクションを見せる。
3人娘や沙摩柯、趙雲もやれやれと言いつつも笑っていて、臧覇の乗っている馬車の御者をしている閻柔と田豫もにこにこと笑っている。高順はばつが悪そうな表情だ。
その性格は変わらないな、とまたも苦笑して門番が言った。
「ようこそ、上党へ。」


問題なく(?)上党に入った高順はまず実家を目指した。
閻柔と田豫は、「親方達に挨拶してくるっす!」と行ってしまった。変わって沙摩柯が馬車の御者をしている。
丁原も朱厳もいないようだし、主力・・・おそらく親衛隊もその中に入っているだろうから郝萌(かくぼう)もいないのだろう。
なら、最初の実家でも問題はないだろうと、街の中を進んでいく。
街の人々は虹黒が珍しいらしく、「あの馬、すごいなー。」とか、そんな噂をしている。そして、乗っている人間が見知った高順であることに更に驚いていたようだ。
行く先々でこんな感じなので、高順は慣れているし、他の面々も特に気にするでもない。
高順も高順で、街のあちらこちらを興味深そうに見ていた。
街並みはあまり変わっていない様にも見えるが、昔に比べて少し街が広がったような印象を受ける。屯田制を一部導入しているので、人が増えて街を広くしたのかもしれない。
そうこうしているうちに、家が見えてきた。家の前を箒で掃除をしている母の姿が見える。
すぐにこちらに気づいたらしく、「あら?」と高順らを見やる。高順達は馬から下りて、そのまま近づいていった。
高順の母はにこにこして「お帰りなさい、順。」と言ってくれた。その言葉に「ただいま帰りました、母上。」と答える。
だが、その後が。その後がいつも通りの展開だった。
「それに星さん・・・あら、他に4人も可愛らしい娘さんを・・・順、あなたまさかっ!?」
「一言だけ言っておきますが妻とかそういうのじゃないですからね母上前は夜中でしたが今は昼間ですよお願いですから自重してください!」
肺活量を無題に消費しつつ、高順は叫んだ。毎度毎度ご近所様におかしな評判を立てられては堪ったものではない。
「妻ではない・・・まさか、ただれた関係の多数の恋人!?」
「結局そうなるのか!だから違いますって・・・ただれたって何さ!?」
「その通りですぞ、母君。彼女らはそのような者ではありません。ただ、高順殿に仕込まれただけの哀れな娘達です。」
「この不埒者っっ!」
趙雲の言葉に、母の愛情の一撃が高順の顎に炸裂する。つうかタイガーアッパーカット。
「ぶぺらっ!?」
「前は妻を幾人も。そして今度はいたいけな娘さんたちにあなたの変(中略)趣味(中略)を仕込んでそのまま売り飛ばそうだなんて・・・!」
「誰もそんなこと言ってねええっ!何で毎回毎回そんな話になるのさ!」
このやり取りを聞いていた3人娘は明らかに引いて「隊長ってそんな趣味を・・・?え、妻!?」とか「そっかぁ、そういうのが好みなんだー。」とか好き勝手言っているし、沙摩柯もため息をついている。
ご近所さんも「やーね、高順くんったら・・・。」とか「またそんな趣味を加えて・・・。」とかヒソヒソ声で話している。
「違うから!何かの誤解っすよ!?」
・・・高順の心の叫びが真昼間の上党に木霊した。
嫌がらせのような誤解を受けつつ、高順達は家の中へと入っていった。
実はこの家、厩があってそこそこに広い造りをしている。修練場とか庭もある。それほど裕福なはずではないのに、母親がお金を何処かから持ってくる。
父親が警備兵をしているので稼ぎは一定ではあるが、どこからそんな金を持ってくるかは謎であった。別におかしな仕事をしている訳でもないので、母親が元々持っているお金なのだろう。
そうでもなければこんな家を作れるはずがない。
虹黒や他の馬を厩に入れていたのは沙摩柯で、自分は荷を下げる手伝いをしていたのだが、そこそこにして厩へと急いだ。
だが、そこにいるはずの海優がいない。
「あれ?」と厩を探してみたが、やはりいない。沙摩柯は不思議そうな顔で高順を見ている。そこに、高順の母がやってきた。
「こら、順。荷物を降ろすのを女性にやらせて・・・。」
「あ、母上。すいません、海優はどこに・・・?」
この言葉に、母は少し悩んだような素振りを見せるが・・・すぐに口を開いた。
「亡くなったわ。」
「・・・は?死んだ・・・?ど、どうして?」
高順は母に詰め寄る。
「老齢ではあったけど、そんな急に死ぬような病はなかったでしょう!それが何故・・・いつ死んだのですかっ!?」
「ええ・・・。貴方が旅立って2ヶ月ほどしてからよ。」
「に、二ヶ月・・・。たったの?」
「貴方が行ってしまった後、寂しがって・・・。毎日、厩から頭だけ出して貴方の帰りを待っているように見えた。食も細くなってしまって。それから一気に弱りだしてね・・・。」
「・・・。」
「好物だったリンゴも受け付けず、最後は立つことすら出来なくなってしまってね。最後に小さく嘶(いなな)いて、そのまま・・・。」
「そんな・・・。」
母親の言葉に、高順は項垂れる。好物のリンゴだって沢山買ってきたというのに。虹黒にも合わせてやりたかったのに・・・。
そんな高順の姿を沙摩柯も、母親も心配そうに見ている。
沙摩柯が高順と共に過ごした期間は1年数ヶ月程だ。いつも笑顔で、よく3人娘に弄られつつも元気だった高順だったが、ここまで落ち込んでいる姿をはじめて見た。
気がつけば、先ほど高順が詰め寄ったときの声に驚いてやって来たのだろうか。3人娘、趙雲に臧覇も遠目に高順の姿を見つめていた。
高順は暫く無言だったが、「墓は、どこでしょう?」と母親に聞いた。
「庭よ・・・。後で、りんごでもお供えしてあげなさい。」といわれた高順は少しだけ頷き「すいません、少し休ませてもらいます・・・。」と、肩を落として自室へと向かって行った。
皆、心配ではあったがそれを見守る事しかできない。
よほど落ち込んでしまったのか、その後、夕食の時間になっても高順は自室に篭ったきり出てこなかった。
心配した楽進が呼びに行こうとしたが、趙雲と沙摩柯が「やめておけ。」と止める。
「しかし・・・。」
「あいつが馬をどれだけ大切にしているか。お前だって知っているだろう?」
「誰でも、1人になりたいときがある。海優という馬を私も知っているが・・・高順殿に大変懐いていたゆえ。」
趙雲は晋陽軍との戦いに参加した折に、高順と馬を並べて戦っている。その時高順の騎乗していた馬が海優であることを覚えていた。
2人の言葉に、楽進は少し寂しそうな表情を見せる。
「大切な人が悲しい思いをしていても・・・私には慰める事もできないのですね。」
「そういう訳ではない。ただ、今回は1人にしてやったほうがいいというだけさ。何、心配するな。あいつのことだから直ぐに持ち直すさ。」
「・・・はい。」
「せやな、こっちまで暗い顔してたら高順兄さんが余計に落ち込むかもしれんし。」
「凪ちゃんまで落ち込んでたら世話ないの。」
高順の母は、彼女達の会話を聞いているのみだったが内心で安堵していた。
息子はきっちりと彼女達の信頼を勝ち得ているらしい。
高順は幼い頃、あまり友達もいなくて1人で何かを思い悩んでいるようなことが多い、どちらかと言えば暗い性格の子だった。
その息子に誰よりも親しくしてくれたのが郝萌であり、高順は彼女に振り回されるうちに徐々に子供らしい快活さを見せるようになったものだ。
そして今は、こんなにも心配してくれる友人達がいる。
海優のことは彼女にとっても残念だったし、その事で高順は心に傷を負ってしまうかもしれないが・・この人たちががいれば大丈夫だろう。
彼女は安心して夕食を食べ始めるのであった。

~~~深夜~~~
皆が寝静まった頃。
ろうそくの明かりを頼りに、高順は厩まで来た。海優が使っていた場所には虹黒がいる。
高順は、厩の扉を開けて、寝ている虹黒の隣に座り込んだ。
「ぶる?」
いや、どうも最初から起きていたらしい。虹黒は頭をもたげて高順の頬を舐める。
「っぷ。・・・なんだ、起きてたのか。」
はぁ、とため息をついて高順は虹黒の首を撫でる。そういえば、海優もこうやって撫でてやることが多かったよな、と思い出す。
誰に言うでもなく、高順は喋りだした。
「あいつはさ。考えようによってはお前の先輩なんだよな・・・。」
「??」
「良い奴だったよ。付き合いこそ短かったけど温厚な性質でね。・・・まさか、こんなことになるなんて思いもしなかった。」
「ぶるるっ・・・。」
「こんなことになるなら、一緒に連れて行ってやればよかった。旅の邪魔になっても、最後まで面倒を見るべきだったのかもしれない。最後くらい、看取ってやりたかったよ・・・。」
海優を連れて行けば、間違いなく旅の結果は違うものになっていただろう。
虹黒にも、3人娘にも合えないまま終わっていたのかもしれない。所詮結果論だが、そういう点では連れて行かないほうが正解だった。
それでも・・・。高順の頬に、涙が一筋流れて落ちる。そうやって、落ち込んでしまう高順の頬を虹黒がまた舐めた。
「うぷっ。」
舐めた後、虹黒は餌として置いてあったリンゴの1つを加えて立ち上がった。
「お・・・?どうした?」
不思議がる高順だったが、虹黒は気にすることなく入り口の前で止まる。多分、「ここから出せ」と言いたいのだろう。
「・・・?」
何をするつもりなんだろうと思いつつも、高順は扉を開ける。虹黒は馬蹄の音を響かせつつ歩いていく。
「おい、虹黒・・・?」
高順は虹黒についていくが、何をしたいのか見当がつかない。虹黒はそのまま庭へ入って行く。
虹黒が何かを探すような素振りを見せるが、目当てのものが見つかったらしくまた少し歩き、立ち止まる。
そこにあったものは、地面に刺さっている一本の木の棒と、鐙(あぶみ)だった。
それを見た高順は、これは昔自分が使っていた鐙じゃないか?と思い出す。
「これ、海優の墓か?」
そう、これは海優の墓である。高順の母は本当に馬のために簡素ではあるが墓を作っていたのだ。
海優の背に乗せて使用していた鐙が、何よりの証である。その墓の前に、虹黒が口に咥えていたリンゴを置いた。
馬が、こういうことを考えるとは思っていなかったが・・・。虹黒も、海優のことを悼んでいるのだろうか?
「お前、まさかこの為に?」
「ぶるっ。」
「そっか。・・・ありがとな、虹黒。」
高順は、もう1度虹黒を撫でるのだった。そのまま夜が明けて、朝食の時間になった頃に高順は食事部屋に入ってきた。
その姿を見た趙雲が一番に声をかけてくる。
「お、高順殿。もう宜しいのですかな?」
「ん?宜しいって?」
「・・・まったく。皆が心配していたというのに。」
「???」
ぼやく趙雲だったが、高順は「何が?」という表情である。
「まあ、元気になったのならそれで宜しい。さ、食事の準備が直ぐに終わるので座って待っていてくだされ。」
「はいh「返事は一回。」
「・・・はい。」
そのまま皆が集まり、朝食を摂る。
皆、高順のことが気になっていたようだが、普段と変わらない様子に、ほっと胸をなでおろした様だ。
いつまでも落ち込まれている、というのは皆の精神衛生上あまり良くない。いつも元気な高順なだけに、周りの心配が余計に増えてしまうのだ。
もっとも、今の高順は元気よく飯をかっこんでいたが。
食事が終わった後、高順は「ちょっと出かけてくる。」と1人で家を出てしまった。
3人娘は上党を案内して欲しかったようで、少し残念そうな表情を見せていた。趙雲と沙摩柯は高順の家の修練場で訓練をするらしい。
3人娘も臧覇もやる事がないので、その訓練を見学する事にした。
「うわ・・・広っ!」
修練場に入ってきた李典の第一声だった。
そう、広い。個人の家だというのに、10人くらいなら平気で訓練ができてしまう広さの修練場だ。
既に趙雲、沙摩柯の2名は訓練、いや鍛錬と言ったほうが良い――を、行っていた。両者共に流麗な槍捌きを見せたと思いきや、それまでの「静」から「動」へと動きを変えて、岩をも穿つような鋭い一撃を放つ。
その姿に触発されたか3人娘も訓練を開始するが、そこに思わぬ伏兵が登場する。
高順の母であった。

さて、高順が向かったところと言うのは味噌工房である。
前に沙摩柯を派遣したときに、閻柔と田豫、そして多額の資金を送ってくれたのだ。
礼も兼ねての行動である。時間的にもまだ仕事を始めたばかりだったようで、親方以下、全員が出迎えてくれた。
「お、高順の旦那!ひっさしぶりですなあ!閻柔らから聞きましたぜ。あちこちで目立ったようで!」
「別に目立ちたかった訳じゃないのだけどね・・・。皆もご苦労様。」
全員、職人気質なタイプだが気の良い人間ばかりである。職人気質すぎて時に頑固にもなるが、それが彼らなりの仕事への張り合い、というものなのだろう。
早速、作ったばかりの味噌を試飲させてもらう。
「・・・むぅ、良い味だなぁ。」
味と言い、匂いと言い・・・高順が「現代」で飲んでいたものと遜色ない。形はいわゆる固形で、ペースト状ではないが違いはそれだけである。
「へへへ。旦那にそういって貰えるとこっちも嬉しくなりまさあ。・・・ただねえ。」
「ただ?」
「味噌の味を極めちまった気がしましてねぇ。これ以上何をどうすりゃいいのか・・・。」
そう言う親方はどこか寂しそうだ。
その気になれば白味噌やら合わせくらいは作れそうなものである。というか味噌作りが始まって数年しか時間が経っていないのにここまでの物を作れるほうが驚きだ。
この時代の男性はどちらかと言えば物作りなどのほうに才能を発揮しているのかもしれない。
「まあ、良いんじゃないですか?そこまで言えるなら、周りに伝達する事もできるでしょう?」
「ですがねぇ・・・。」
親方はやはり何か納得いかないような様子だ。周りの味噌職人(閻柔と田豫)も「うーむ。」とか唸っている。
また味噌汁を一口啜った高順は「あー、美味い。」とか思いながら無意識にある言葉を口にしてしまった。
「はぁー・・・。これだけ美味しいのが作れるなら味噌ラーメンとかもできるのかもしれないなぁ。」と。
その言葉を聞いた職人一同が「はぁ!!?」と叫んだ。もしその場に効果音が出てきたとしたら「ピシャアッ!」とか出たかもしれない。
「旦那・・・あ、あんたなんて恐ろしい発想を・・・!」
「え?」
「ラーメンに味噌だって・・・?そんな邪道な!?」
「え?え?」
彼らは高順を放っておいて議論を始めてしまった。
邪道だ、だの、いや、これは面白いかもしれない。とか。
「しかし、味噌だぞ?辛くなりすぎるのではないか?」
「それは普通のラーメンだからだろう。豚骨出汁に混ぜて、甘めにするのは・・・。」
「それならば味噌を辛くするしか・・・。」
「それよりも匂いだ。豚骨の・・・ん、ニンニクが使えるか・・・。」
議論が続く。高順はまさかこんな事態に発展するなどとは夢にも思わず、ポカーンとしている。
結局、「味噌ラーメン、作るどー!」な流れになってしまった。

えーと、日本というか、札幌の皆様ゴメンナサイ。なんか中国と言うか俺が味噌ラーメンの発案者になってしまったっぽいです。
まだ、「ぽい」だけで実際には作られてませんが、彼らならば直ぐに作ってしまいそうな気がします。
・・・・・・。ナンテコッタイorz

その後、更なる議論につき合わされた高順はへとへとになりながら帰途に着いた。
まさか、自分の何気ない一言でおかしな方向へ話が進んでしまったなんて。
「もういいや、自分の迂闊さを呪いつつ今日も速く寝よう・・・。」などと言いながら、高順は歩いていく。
ただいま、と家の扉を開けるが反応がない。もう食事中かな?と思ったが、まだ食事には少し早い。皆で出かけてるのかも?と思う程度だったが、そこに臧覇がぱたぱたと歩いてきた。
「あ、高順おにーちゃんだ、お帰りなさい!」
「ああ、ただいま。ねえ臧覇ちゃん。皆何処に行ったか知らないかな?」
「え?皆修練場にいるけど?」
「修練場?」
こんな時間まで修練してるのか?随分頑張るな・・・と思いつつ高順は臧覇と共に修練場へ向かった。
そこにはあったのは、ボロボロになって燃え尽きている5人と、修練場の隅っこでのんびりとしている母の姿だった。
「皆、何やってんの・・・?」
高順の言葉に、皆が顔だけそちらに向ける。
「あら、お帰りなさい、順。」
にこやかに挨拶をする母だったが、にこやかなのは彼女だけ。他の皆は一様に「ず~~~ん」という・・・なんだか疲労しきった顔で呻く。
「ううっ・・・こ、高順さぁ~~~ん・・・。」
「な、何やねん、このおっかさん・・・無茶苦茶や・・・。」
「まさか隊長のお母様がここまでの使い手だなんて・・・。」
3人娘が次々にこんなことを言う。
「え、何だ、どうしたんだよ?」
「お、おい。高順・・・お前、どうして母殿がここまで強い事を黙っていたんだ・・・。」
「前にお会いしたときには、只者でない事は理解できておりましたが・・・まさか、こ、これほど・・・。」
沙摩柯と趙雲も、疲れきって座り込んで壁にもたれているような状況だ。
「・・・なあ、本当に何があったんだよ。母上と手合わせしたの?」
高順の質問に李典と楽進が答える。
「せや。おっかさんも修練に参加する言い出してな。無茶やからやめとき、言うたんやけど。無茶なんはこっちやった・・・3人でかかって一方的に負けたし・・・。」
「お母様が「3人同時でも構わない」と仰ったので、手を抜いて挑んだのですが・・・まさか五胡式格闘術にあれほど精通しておられるなんて。お母様ご本人は「かじっただけの技術」と仰ってましたが、あれはかじった程度ではありません。もう完全に体得している・・・。」
「・・・まさか、3人相手にかすらせもしなかったとか?」
高順は昔、よく母親に手合わせをしてもらった事を思い出していた。最後に手合わせをしてもらったときは何とか服にかすらせた程度だったが・・・。今の母の姿を見るに、衣服の乱れすらない。
「その3人どころか我々でも無理だった。」
「こちらは得物ありで行ったのに母君は徒手空拳・・・あっさりと間合いに入られて投げ飛ばされるわ絞められるわ極められるわ。結局、手も足も出ずじまいでござった。これほどの強さだったとは・・・私もまだまだ修行が足りませぬ・・・。」
「え?星殿と沙摩柯さんまで同時にかかったの?」
「ああ。だが星が言うとおり。手も足も出ずだ・・・。」
げんなりとして沙摩柯が答える。
両者共に自身の武力には相当な自信がある。それは過信でも驕りでもなく、自分の能力を冷静に見ての結論なのだがその2人が、しかも同時にかかって手も足も出ないとは。
もしかして、自分が挑んだときに服にかすらせたのは母上の体調がよくなかったとか、手をあからさまに抜いていたとかそういうことなのだろうか・・・?
それを考えると高順は寒気を覚えるのだった。
「あらあら。皆さんだらしがない。この程度で疲れているようでは閨(ねや)で男性を悦ばせる事すらできませんよ?」
なんて事を言うんだ母上。と思うも、こういう会話に必ず食いついてくるであろう李典・干禁・趙雲は無言のまま。
本気で疲れきっているらしい。
もしも。もしもその場にいる全員(高順の母を除く)が1800年以上も未来の言葉を知っていたら確実にこう言ったであろう。
「母上、マジパネェ。」と。


(高順独白)
この後、母上は皆に昔の素性を聞かれていました。
実は俺も母上の過去は全く知りません。昔はそんなもの気にする余裕もなかったし、1度聞いてみましたがあまり喋りたがらなかった事もあって無理に聞き出すようなことをしなかったのですね。
ですが、沙摩柯さんや趙雲殿、楽進は武人として興味があったのでしょう。割としつこく聞いていました。
結果、解った事が1つだけあります。
母上の名前は・・・。






閻行というのだそうです。



・・・ええええええええええっ!!?











~~~楽屋裏~~~
設定無視もいいところですあいつです。(挨拶
今回は上党日常編、といったところでしょうか。書きたい事詰め込んだら良くわからないお話に・・・。
かくぼうさん、昔はただの同僚だったはずが子供時代から交友があったという事にしてしまいました。
しかし、味噌ラーメン・・・。よかったのかなぁ。北海道の皆様オコラナイデクダサイネ。

ここで原作を知らない人と閻行を知らない方への補足を。
「五胡式格闘術」というのは、原作で楽進が言った言葉です。(五胡式とかは言ってないようですが
五胡、というのは中国の異民族でして「鮮卑(せんぴ)・羯(けつ)・氐(てい)・羌(きょう)・匈奴(きょうど)」という5部族を指した言葉です。
要するに五胡というのは複数の異民族ということでしょうね。
で、作中で楽進が「組み付かれたら勝てない」という発言をしています。
なので、普通の格闘に加えて投げ技とかもあるんだろうな、と思って極められるとか絞められるという言葉を加えたのですが・・・作中において詳しい説明はなかったので妄想です。
そして閻行。
この人は西涼の韓遂という人の娘婿にされる人物ですが、1つだけ凄い経歴があります。
後に蜀漢の五虎将(演義だけでの話ですが)であり、関中で曹操と激戦を繰り広げた馬超を一方的に?叩きのめして半殺しにしたとか、そんな話がある人です。
つうか馬超殺しかけるとかすさまじすぎる。この人と呂布の戦いを見てみたかったなぁ、と思うのはあいつだけでしょうか。
時代考証とか色々考えると明らかに上党にいるのはおかしくなってしまうのですが・・・。このシナリオでは半殺しにされたのは馬騰か韓遂だと思ってください(無理
本来出る予定はなかったのですが、このシナリオ書き始めて初期の感想で「閻行出せないでしょうか?」な書き込みがあったので急遽ピンチヒッターとかそんなノリで(浅はか過ぎる
ですが、これで高順くんが男性として武力が高いことへのいい訳くらいにはなるかと・・・無理ですね、そうですか。
これはあいつの脳内設定なのであまり気にする事でもないのですが、この世界の、少なくとも三国時代の男性は武力が低いです。
というのも、原作で女性がチートなのもありますがこういう風に思っています。
RPG的例えですが「女性はレベルが上がるまでが早く、上がっていく能力値が高い。」「能力限界が男性に比べて高い」だと思ってます。男性はこの逆ですね。
当然、その枠に当てはまらない男性だっていると思います。張任(ちょうじん)とか、そうかもしれません。

それと座談会と言う名の愚痴だべりは消しましたYO。

さてさて、次回の話はどうしましょうかね。
それではまた(☆ω☆)ノシ




[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第28話 丁原と呂布。
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/15 00:19
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第28話 丁原と呂布。


高順達は上党を出て、丁原のいる洛陽へと向かっていた。
別に上党に別れを告げたというではなく、早めに丁原と合流しようと思っていたのだ。その証拠と言うわけではないが臧覇は閻行(高順の母)に預けられているし、田豫達もいない。
3人娘にせよ沙摩柯にせよ、高順が行くのならば付いて行こうという考えであるし、趙雲は今度は丁原に客将という立場で仕えるつもりらしい。
前の戦いの時に武功があったとして、丁原は趙雲に褒美を与えていた。
本人に受け取るつもりはなかったが、その時共にいた郭嘉らの旅の資金に充てる事ができたため、結局は(半ば無理やりに)受け取る・・・いや、受け取らされる形になったのだ。
その事については感謝をしているらしく、借りを作ったと思っているのだろう。それを返すために客将として、という事である。
普段は飄々として掴みどころのない趙雲だが、「信義に重きを置く」という意志は誰よりも強い。
さて、彼女らの考えはともかくとして高順はどうにも嫌な胸騒ぎがしていた。
この胸騒ぎは上党に帰還して、門番に「丁原様たちは洛陽へと向かわれた」という言葉を聞いてからのものだ。
正史でも演義でも呂布に殺された丁原であるが、自分の知る限り丁原と呂布の仲は良好だといっても良い。呂布は無口で自分の考えを他者に上手く伝えられない性格ではあるものの、信義がないというわけではない。
なので、いきなり暗殺と言うことはないとは思う。だが、それでも胸騒ぎが収まらない。自慢にもならないが、こういうときの自分の胸騒ぎ、或いは嫌な予感と言うのは相当な的中率を誇る。
予感が的中したとして、自分が傍にいたところで何ともならないだろうし、足手まといになる事だってあり得るが・・・。
知識に振り回されすぎな気もするが、やはり時期が時期だけに気になって仕方がない。
彼らは上党から南へと進んでいく。
道が舗装されている訳でもないが、まあ進めない場所ではない。そんな場所が延々と続く道だ。
高順が少し急ぎ気味に朝早く出立した事もあって、今日は早めに休もうという事になったのだが・・・。
そこに、10数人ほどの騎兵が向かってくる。
見張りをしていた高順は一体何事かと戟を構えた。他の皆は天幕の用意や食事の用意などをしていたが、異常に気がついて直ぐに高順の周りに集合してきた。
だが、その騎兵部隊の中に何人か見知った顔があることに高順は気がついた。あれは・・・上党軍の兵士だ。
向こうはそのまま通り過ぎるつもりのようだったが、その中の一人が高順に気づいたらしく、速度を緩めて高順の前で止まる。だがあまりに様子がおかしい。何故か怪我を負っている者までいる。
「お前・・・高順か?何でこんなところにいるんだ!?」
騎兵の一人が呼びかけてくる。
「それはこっちの台詞だ、皆、洛陽にいるはずじゃないのか?それに、なんで怪我してる奴らがいる・・・?」
「そうだ、こんなところで止まってる場合じゃないんだ。早く上党に行かなきゃならないんだ!」
「だから何でだよ!?」
「・・・丁原様が、呂布の軍勢に襲われているんだ。」
「何・・・!?何故、呂布が?」
「そんなこと知るもんか!丁原様に洛陽から離れるように命令されて、何が何だか解らないままいきなり襲撃されたんだ、こっちが知りたいくらいだよ!」
「っ・・・。」
彼らの言葉を聞いた高順は虹黒に跨る。
「た、隊長!?」
「様子を見に行く!3人は彼らと一緒に上党まで帰還するんだ!下手したら篭城戦になるぞ!」
「え、ええ・・・?」
3人娘も何が何だか解らずにおたつく。いきなり何があったというのか。
くそっ、嫌な予感的中かよ・・・。高順は振り返ることなく虹黒を駆けさせた。
その高順に、趙雲と沙摩柯が追いすがる。
「待たれよ!高順殿が行ってどうなるのです!我々も彼らと共に退くべきでしょう!」
「趙雲の言うとおりだ、お前1人で何が出来るんだっ!」
だが、高順は答えずに更に速度を上げる。
その後姿を見て、趙雲は自分の悪い予感が当たってしまった、と焦燥感を露にした。
身内を大切にするがあまり、いつかどこかでおかしな暴発をしてしまうのでは、悪い方向へ向かってしまうのではないか。そう思っていた。
それが今回、丁原達に危機が迫っているという言葉で完全に冷静さを欠いた行動に繋がっている。普段の高順であれば、自分達の言葉を聞くまでもなく退く事を選んだはずなのだ。
何とかして止めなければ・・・。
「くそっ・・・!沙摩柯殿、高順殿を止めるぞ!」
「ああ、3人は高順の言うとおり彼らについていけ、襲撃される事はないだろうが気をつけるんだぞ!」
「は、はいっ!」
沙摩柯と趙雲も、高順を追って馬を駆けさせた。


「はぁっ!」
「でぇいっ!」
張遼の「飛龍偃月刀」と朱厳の二対の刃が交差し、火花を散らす。
張遼は傷1つないが、朱厳はすでにボロボロの状態だ。張遼は何度も降伏を呼びかけているものの、朱厳は全く聞こうとしない。
「朱厳のじっちゃ、お願いやから降伏してんか!これ以上は無駄やで!?」
「お断りする。わしも武人の端くれ。負けると解っていても退けぬ戦いがあるわ!」
「ああ、もうっ・・・。」
何度となく退いては押し、押しては退くという戦いである。老齢であり、完全に押されてはいるものの、張遼も中々決定打を与える事ができない。
迷いもあったが、それ以上に朱厳の強さが思った以上のものだった。降伏を呼びかけていても、張遼にも余裕はない。
「迷うでないわ、小娘っ!」
「くうぅっ!?」
朱厳の繰り出す双剣を張遼は飛龍偃月刀で防ぎ、尚も戦いは続いていく。
呂布隊6000と、上党軍3000が交戦状態に入って数時間。すでに丁原軍の兵は殆どが討ち死にしていた。
丁原は洛陽を離れた後、親衛隊であれ何であれ、若い者を順番に逃がそうとした。自身と朱厳、そして少数の兵士で足止めしようとしたのだ。
兵たちも丁原の言葉に従って一度は逃げようとしたものの、「このまま放っておく事などできるか!」とばかりに駆け戻ったのだ。最低限、上党に危急を知らせる兵を遣わせて、大部分が丁原を守るために引き返した。
だが、その兵たちも呂布率いる騎馬隊に打ち負かされてしまい、屍となって地面に横たわっていた。
「はぁ、はぁっ・・・。」
「・・・・・・。」
上党側、つまり戦場の一番北で丁原と呂布は対峙していた。丁原の吐く息は荒く、対して呂布は呼吸1つ乱していない。
その丁原を守る親衛隊も殆どが討ち死にし、残っているのは十数人と言ったところだ。
「くっ、武神と評されるだけあるな・・・。やはり、敵わんか・・・。」
「・・・勝負はついた。降伏して。」
呂布の言葉に、丁原は自嘲の笑みを漏らした。
「ふん、部下を死なせて1人おめおめと生き残れというのか?どちらにせよ私は死ぬさ。それを考えて部下を逃がしたというのに。あの馬鹿者どもは・・・。」
「・・・そう。」
呂布は己の得物「方天画戟」を構えなおし丁原も長刀を構える。先に動いたのは呂布。一気に間合いを詰め、方天画戟を振るう。
丁原はなんとかそれを避けて反撃を試みるが、呂布はそれを難なく回避して、更に攻撃を加えていく。
親衛隊は、両者の攻防を黙ってみている事しかできない。凄まじすぎてついていけないのだ。
だが、決着がつく。
丁原の渾身の打ち込みを避けた呂布は、彼女の後ろに回りこみ腰辺りに斬り付ける。疲れきっている丁原はその一撃を避けきれず、腰から血を噴出して地面に倒れた。
「くっ・・・うぁ・・・。」
「・・・これで、終わり。これ以上は無駄。」
呂布は方天画戟を仰向けに倒れた丁原に突きつける。
「そ、そのようだな。さすが武神。私が敵うはずも、なか、ったか・・・さあ、斬れ・・・!」
「・・・まだ。治療を急げば助かる見込みはある。」
息も絶え絶えに言い放つ丁原であったが、呂布は動かない。と、そこへ割り込んでくるものがあった。
剣を、槍を構え突撃をしてくる丁原の親衛隊である。
「ま、待て・・・やめろっ・・・!」
だが、親衛隊は聞くことなく呂布へ向かっていく。呂布としても殺すつもりはなく、柄で応戦する。
「郝萌!お前は丁原様を連れて逃げるんだ!」
「・・・解った!」
声に応えて、郝萌と他数人の兵が丁原に駆け寄り、肩で抱えて戦場を離脱しようとする。馬もいない状況で逃げ切れる訳もないが、それでも足掻こうとする。
だが、それを見越して側面に弓兵を少数配置していた者がいる。陳宮だ。
(呂布殿には悪いのですが、ここで丁原を見逃す訳には行かないのです!ここで見逃して上党まで退かれてしまえば無用な争いに発展してしまうかも知れない。それだけは阻止するのです!)
本来ならば、丁原1人を討ってしまえばそれで良いはずだった。それが長引いてしまったのは上党軍が決して退こうとせず、丁原の盾となるために突撃してくるために、無用な戦いを強いられてしまったのだ。
陳宮も、丁原が兵士を逃がしたのは知っていたがまさか戻ってくるとは思っていなかった。
もっと早い段階で急襲を仕掛けるべきだった。そうすれば無駄な人死には出なかったはずなのに。丁原にしても陳宮にしても、そこだけは何よりの誤算だった。
(怨まないで下され・・・。)
内心で許しを乞いつつ、陳宮は兵に弓を射かけさせた。そして、射かけさせた後に気がついたのだ。
丁原を担いでいく兵士の中に郝萌の姿があった事に。
「あ・・・!」
矢は容赦なく、丁原たちへ向けて飛んでいく。それに気づいた兵たちは、そのまま丁原を離して―――全員が大の字になって丁原の盾になった。
矢を体中に受け、郝萌たちはその場に崩れ落ちる。殆どの者は即死していたが、郝萌だけはまだ生きていた。
しかし、それはまだ生きているだけで死ぬ運命に変わりはない。本人にもそれは良くわかっている。矢を受け、倒れる直前。郝萌は世界がゆっくりと動いているように見えた。
その中で、誰が射たのかが気になって、視線を巡らせて見る。その視線の先には、泣きそうな顔をしている陳宮の姿があった。
(そっか・・・ねねちゃん、あなたが・・・。)
郝萌は、彼女を怨みはしなかった。これもまた乱世の習いだ。ここで死ぬのは「そういうもの」でしかなかったのだろう。
自分の人生に後悔はしていない。だが、たった1つだけ残念な事はあった。高順と、また会おうという約束。再開を約束していたが・・・それを果たせそうにない。
(ごめん、高順。あたし、約束守れないみたい・・・。寂しいけど、向こうで待ってるからさ。できるだけ、ゆっくり来なさいよ・・・?生き急ぐ、よう、な真似だけはしない、で・・・。・・・先に、逝っ・・・、て・・・。)
仰向けに倒れていく郝萌。その身体が地面に倒れこむまでの間に、彼女の意識は闇に飲まれていった。

「くっ・・・。何と言うことだ・・・。」
丁原は後悔した。やはり、無理やりでももう1度兵達を戦場から離脱させるべきだった、と。
見れば、先ほど呂布に挑んだ兵も全員打ち倒され(気絶させただけのようだ)、朱厳も張遼と戦っているが・・・彼も長くは保たないだろう。
自分の判断は間違っていたのか。自分なりの正義を信じて、今の世を少しでも平和にしたいと思って、信念を持って行動してきたというのに。ここで終わるというのか。
「ぐくっ・・・。」
なんとか立ち上がろうとするが、自身の作った血だまりで足が滑って立ち上がることすら出来ない。意識が遠のいていきそうな錯覚を覚える。
と、そこへ、馬蹄の音・・・数は少ないが、間違いなく誰かが北からこっちに向かって来ているのを感じた。
「丁原様ーーー!!」
声が聞こえてくる。丁原はこの声に聞き覚えがあった。
「まさ、か・・・高順、か・・・?くぅ・・・。」
高順は虹黒から降りて、丁原の元まで駆け寄る。それに続いて趙雲、沙摩柯もやっと追いついてきた。
「ちっ、間に合わなかったか・・・。」
高順に追いつくことが出来なかった。こうなったら、討ち死に覚悟で戦うしかないな、と趙雲と沙摩柯は覚悟を決めた。
陳宮もなんとか気持ちをたて直し、もう1度丁原達に矢を射かけようとするものの、呂布はそれを手をかざして止めさせた。
「丁原様、しっかり!」
「うっ・・・お、遅かったじゃ、ないか?」
「くそっ、ここまでやられているだなんて・・・」
上党の兵士が多数討たれている状況を見て高順は呻いた。南側では朱厳がたった1人で張遼を止めている。もう、この状況では丁原の治療は間に合うまい。だが、諦めたりはしない。無駄だと解っていても・・・。
「沙摩柯さん、丁原様を頼み・・・。」
ここまで言った所で、高順は郝萌に気がついた。体中、矢だらけになって死んでいる郝萌に。
「すまん、私を守ろうとして・・・。」
丁原の言葉など耳に届かず、高順は郝萌の遺体の前に座り込んだ。
左首筋を触ってみるが、鼓動を感じない。温かみはまだ失っていないが、まったく生気を感じない。
「・・・嘘、だろ?」
また会おうと約束をした筈なのに。色々と話してやりたいこともあったんだ。
何で、こんなところで皆が。郝萌が死ななければならない・・・?呂布とも、陳宮とも上手く行ってたじゃないか。
皆、史実と違って生き残ることだって可能だった筈だ。それが・・・それが!
その時、高順は今までにない怒りを感じていた。今まで、誰に対しても心の底から怒った事のない高順が、初めて怒りに身を任せようとしている。
丁原を後ろから抱きかかえるような形で自分の馬に乗せ上党に向かいつつあった沙摩柯も、そして高順を追おうとした趙雲も「不味い・・・!」と感じた。
高順は三刃戟を振りかぶり、呂布に向かって突進をしていく。
「呂布ーーーーーーーーっ!!!」
「・・・。」
突撃を仕掛けてくる高順を、呂布は悲しそうな表情で見て、戟を構える。
その高順を止めようと趙雲は馬を走らせた。
「待たれよっ!高順殿の実力では絶対に勝てませぬ!」
だが、高順は聞いていない。
「怒りに支配されて何も見えていない・・・!えぇい、虹黒っ!」
趙雲の言葉を聞く前に、虹黒も高順に向かって駆け出していた。
呂布に向かっていく最中、高順の心中で「冷静な自分」と、「怒り狂った自分」が議論を交わしていた。
―――落ち着け、高順。このままでは死ぬぞ。お前が呂布に勝てるわけがないだろう―――
―――うるさい、そんな事はわかっている。だが、この怒りをどうやって静めろというのだ?―――
―――お前が死ぬだけならそれでいい。だが、お前を信じて付いて来てくれた人々も巻き込むつもりか?―――
―――うるさい。俺はあいつを殺す。黙っていろ―――
―――死亡フラグはいいのか?死ぬ運命を覆すつもりじゃないのか?―――
死亡フラグ?死亡フラグだって?そんなもの、知るか・・・。知ったことか!

「うおおおおぉぉっ!!」
「・・・。」
突進してきた高順が三刃戟を薙ぎ払い、呂布はそれを軽々と受け止める。
それどころか、お返しとばかりに目にも留まらぬ速さの突きを繰り出してきた。柄の部分であるがそれでも命中すれば一撃で大人を気絶させることが出来る威力だ。それですら呂布は手加減している。
趙雲は、その一撃で勝負が終わる。そう見ていた。彼女だけではなく、2人の戦いを見守っている者全員がそう思ったであろう。
しかし、高順はすんでのところでその一撃を避けていた。三刃戟を地面に突き刺し、棒高跳びの要領で。左手のみで自身の体重を支え、一瞬で上に退避していたのだ。
高順はまだ左手で戟を掴んでおり、相当無茶な体勢ではあったが、右手で腰から吊るしていた大剣・・・倚天の大剣を鞘から引き抜く。
上方向からの攻撃を予想して、呂布は戟を上方へ構える。だが、予感した攻撃は来なかった。
高順はそのまま左手の力を抜いて戟を離し、呂布の足元付近へ着地。そのまま足へ向かって倚天の大剣を振り下ろした。
「っ・・・。」
予想外の攻撃だったが、それを呂布は後方へ飛ぶ事で回避。飛ぶ前に、高順の右肩を戟の柄で思い切り突き上げた。
「ぐあっ・・・!」
その一撃で高順の体は大きく吹き飛ばされていく。地面に叩きつけられる前に、趙雲が片腕で高順の身体を受け止めた。
「虹黒っ!」
「ぶるっ!」
趙雲の隣に虹黒が並走し、趙雲が抱きとめた高順を背に乗せる。そして、そのまま方向転換をして北側へと向かっていく。
「くっ・・・まだだ!」
もう1度呂布へ向かおうとするが、虹黒は従おうとしない。
「虹黒、どうしたんだ?戻るんだ!」
「高順殿、いい加減にしてくだされ!ここで無駄死にをして良いといわれるか!?」
「だが、朱厳様も残って・・・」
この言葉に、趙雲は怒鳴りつけた。
「この分からず屋がっ!自惚れるなっ!」
「うっ・・・。」
趙雲が今まで見せた事のない怒気を高順にぶつける。
「自分1人で何が出来るというのか、この未熟者!自分がどれだけ無謀な事を仕でかしたのか、まだ解らぬか!?」
「それは・・・。」
高順は言いよどむ。そう、趙雲の言うとおりなのだ。自分1人で突出して、趙雲と沙摩柯を巻き込んだのだ。
呂布がこちらを殺す気がないようだったから助かった。弓を射掛けさせようと思えばいつでもできた。殺そうと思えばいつでも殺せる、それだけの実力差だった。趙雲の言葉のほうが正しいのだ。
「くそっ、畜生・・・!」
高順は馬上で唇を血がにじみ出るほどに噛み締める。
趙雲も、隣で辛そうな表情だった。高順にああは言ったものの、自分だって何も出来ないままだったのだ。これほど自分自身の無力さを痛感する事もなかった。
2人は、己の胸の内に敗北感だけを残して、逃げていく事しか出来なかった。

朱厳は、高順らが丁原を連れて北へ向かっていくのを見届けていた。これでこの場に残る上党軍はほぼ自分1人になったと思っていい。
上党軍3000と呂布軍6000は、今朱厳のいる辺りを主戦場にしていた。丁原は後方に陣取っていたが、呂布と一部の部隊にあっさりと前線を突破されてしまったのだ。
何とか援護に向かいたかったが張遼との一騎打ちになってしまい、周りの兵士も次々と討たれ、打つ手がなくなってしまった。
そして今は手負いの自分1人。片方の剣も折れてしまい、残るは右手に片割れの一本の剣。どうも自分はここまでのようだ。
「朱厳のじっちゃ、もうええやろ?これ以上は無駄やで?」
張遼の言葉に、朱厳は静かに頭を振る。
「お主とて解っていよう。これが我々武人の役割。お主が逆の立場であれば、降伏を受け入れたと思うかの?」
「・・・思わへんけど。」
「ならば、そういうことじゃ。さあ、決着をつけるとするかの。」
朱厳は剣を構え、張遼もそれに倣う。
「これが最後や。ほんまに、降伏してくれへんのやな?」
「愚問。」
「さよか。ほな、全力で行くで・・・!」
降伏の呼びかけも一言で斬って捨てる朱厳の言葉に、張遼は説得は不可能と悟った。いや、最初から解っていた事だった。
朱厳、張遼の闘気が更に練りこまれていく。お互いに、最大最強の一撃を見舞わんと、力を溜めている。
その光景を、呂布隊の兵士は固唾を呑んで見守っている。
風の吹きすさぶ音が聞こえる。倒れた丁原軍の旗がバタバタとたなびく。共に無言だったが、風が一筋流れた瞬間。
「はああああぁぁっ!」
「でりゃああああああああっ!!」
両者は目を見開き、声を上げて交差する。飛龍偃月刀、そして朱厳の剣がお互いの身体に振り下ろされた。
武器を振りぬき、2人ともそのまま動かない。暫くして・・・
「ぐぶッ!?」
「・・・。」
朱厳が大量の血を吐き、腹部を押さえた。腹部を深く切りつけられ、そこからも血があふれ出す。
張遼のほうには、わき腹を薄く斬られた痕が残る。
ここまで、か。朱厳は自身の生を振り返ってみる。丁原に従って戦陣を駆けた半生。これだけの将と戦い、最後を飾る事ができた。何の後悔があろう。
あるとすれば、兵を巻き込んでしまった事と、丁原よりも・・・僅かだが先に逝く事である。そして、高順のことも気にかかる。
彼はまだ若い。だが、若さのみで全てを乗り切ることなど出来ない。早まった真似だけはしてくれるなよ、と思う。
そして、張遼。
朱厳は剣を地面に刺し、それを杖代わりに辛うじて立ち続けている。今の彼から見て、張遼は北。つまり上党方面に向いている。
張遼は朱厳に背を向けて、立ちすくんでいる。
「張遼・・・ごふっ、顔を・・・見せてくれぬ、かのぅ・・・?」
その言葉に、びくりと肩を震わせて・・・そして、張遼は朱厳のほうへ向き直る。
泣いていた。いや、泣くのを我慢しようとして歯を食いしばって肩を震わせて、そして涙を流している。
「・・・泣く、でない、張遼・・・。これもまた武人の定め。戦場に散ること、こそ本望と、いうものよ・・・。」
「・・・・・・。」
張遼は思い出していた。前に上党で行った酒宴に呼ばれ、朱厳にいろいろな話を聞かせてもらったこと。呑み比べをしたこと。ともに丁原を弄って、久々に心から楽しいと思えた時間を。
そういえば、と朱厳は思い出す。張遼とはまた呑み明かそうと約束をしていた事を。どうも、その約束は果たせないらしい。
「すまぬの、約束・・・守れそうにないわい・・・。」
「じ、じっちゃ・・・。」
「張遼・・・達者、での・・・。」
「―――!」
そう言い遺して、朱厳は傷口を押さえていた手を上げ、北に・・・上党へ向かって拱手した。
申し訳ありませぬ、丁原様。主君より先に逝く不忠をお許しくだされ。そう呟いて、静かに目を閉じ・・・立ったまま、朱厳は旅立った。
「う・・・う。じ、じっちゃ・・・う、ぐぅっ・・・。」
朱厳の死を理解した張遼の目から、涙がぽろぽろと零れ落ちる。このまま泣き叫んでしまいたい。そんな思いが溢れてくる。
だが朱厳はそれを自分に望むだろうか?自分を討った存在が、泣き崩れる姿を望むのだろうか?
否。望まないだろう。死者に望みの有る無し等解るはずもない。それでも、朱厳は今の自分の姿を見れば叱咤するのだろう。何を泣く必要があるか、と。
暫くして。張遼は涙を拭くこともせず朱厳の亡骸に拱手した。
張遼だけではない。呂布隊の兵も、呂布自身も、朱厳の亡骸に拱手をしていた。
張遼と矛を交え、最後まで主君への忠義を守り通した将である。それ以上に、伝わってもいたのだろう。これだけの戦いぶりを見せた朱厳を、悲しみではなく敬意をもって送り出してやりたいという、張遼の思いが。
そして、逃げる機会はあったはずなのに、朱厳と同じく忠義を全うせんと戦場に命を散らした上党兵への敬意でもあっただろうか。

朱厳、字を治心。
上党の勇者と呼ばれた老将に相応しい、誇り高き最後だった。











~~~あとがき~~~
シリアスのシの字も書けません、あいつです。
久々に1日で書き上げてしまった・・・。無茶をするぜ、全く。(誰だ
さて、ここまで上党を賛美するつもりなかったのに・・・どうしてこうなった。
それと、高順くん。怒りに呑まれていた事もありますが気持ちに変化がありましたね。というか、ここまで進んできたシナリオで初めて気を吐いたような感じです。
朱厳さんもかくぼーさんも、あと多数の上党兵が亡くなってしまいましたねぇ。
高順くんは彼らの死に何を思うのでしょう。そして、どんな身の振り方をするのでしょう。
その辺りは考えていますが、もう少しお待ちくださいませ。多分誰であれ見当はつくと思いますけどね(笑

それではまた次回お会いいたしましょう(TωT)ノ



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第29話 上党の落日。(誤字ったのでアレ
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/15 18:42
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第29話 上党の落日。

高順と趙雲は無言のまま馬を走らせる。
先に行った沙摩柯は、重症の丁原を乗せているためにそれほど速度を出せるはずもない。直ぐに追いつくだろう。
だが、丁原のあの傷。そうは長くないだろうし、馬に跨っているだけでも相当な苦痛のはずだ。
果たして、沙摩柯の姿が見えてきた。既に彼女は馬を下りて、天幕の傍にいる。
「天幕?どうしてこんなところに?」
趙雲が疑問を口にする。高順も何も言わないが同じ事を考えていた。
「おーい!2人とも、こっちだー!」
沙摩柯が手を振る。やはり間違いはないようだ。2人とも直ぐ傍まで近づいて馬から下りる。
「2人とも無事だったか。何よりだ。」
沙摩柯が安心したように言う。
「沙摩柯さん、どうしてこんなところに天幕が・・・?」
「ああ、これはな。楽進が残ってくれていたんだ。李典と干禁は上党兵と共に退いたようだが、楽進は少しずつ下がっての移動だったようだ。」
確かに、この場所はさきほど高順達が休もうと天幕を張ったところからは更に北だ。楽進は自分達が撤退したときに備えて、そして何かあったときの足止めのために1人で残っていたのだろう。
無茶をするな、と思うがそれ以上の無茶をしてしまったのは自分だ。そして、彼女の無茶のせいで一時的とはいえ丁原を休ませる事ができるのだからこれは不幸中の幸いといえるかもしれない。・・・だが。
「・・・高順、中に入れ。丁原殿がお待ちだぞ。」
「ええ・・・。」
沙摩柯の表情も沈みがちだ。やはりもう長くはない、ということだろうか。高順は天幕の入り口を潜る。中には楽進と、寝かしつけられた丁原がいた。
「隊長・・・。」
「・・・こう、順か。」
今まで、手当てをしていたのだろうか。楽進の額には汗が浮かんでいる。そして、丁原は腰のあたりを幾重にも包帯で巻かれているが、その部分が真っ赤に染まっている。やはり、無理なのか。
「ふ・・・、そんな顔をするな。」
よほど酷い顔をしていたのだろう。丁原は薄く笑うが、その笑顔には生気がない。
楽進は、2人に一礼して天幕を出た。応急処置くらいしかできなかったが、彼女も理解していた。これが彼らの今生の別れであることを。
丁原の横に、高順はひざを立てて座り込む。
「丁原様・・・。」
「高順。いいか、呂布達を怨むなよ。・・・こんな事になったのは、私のせいなのだからな・・・くっ・・・。」
「ですがっ・・・。」
「高順。馬鹿な真似だけはするな。敵を討つとか、そんなことは絶対に考えるな・・・ぐぅ、これ以上、この件で死者を出すべきでは、ない。上党の者達にも伝えろ。降伏しろ、と。無駄な抵抗は一切するな。罪は私1人に被せてしまえ・・・。」
高順は無言だ。だが、命の灯が消えかかっている丁原にはそれを気にする余裕などない。
「お前にしか、頼めん事だ。解るな?」
「・・・はい。」
「うむ。・・・まったく、私も罪深い奴だ・・・。罪もない若者たちを巻き込んで、無駄死にさせてしまった。ぐぅっ・・・。」
「丁原様・・・。」
丁原はその手を高順を探すように彷徨わせる。目の焦点があっていないのだろうか。目が見えていないのか。高順は思わずその手を握り締めた。
「郝萌を・・・兵達を巻き込んで。私は・・・わた、しは・・・。」
丁原の目から涙が溢れてくる。死に瀕して心も弱ってしまっているのか。高順は丁原が涙を流すところなど初めて見た。
そして、丁原は静かに目を閉じる。
「ん・・・なんだ、お前達。そんな場所にいたのか・・・?」
「丁原様?」
「はは、律儀な奴らだな・・・朱厳に、郝萌か?わざわざ、私が来るのを待っていた、というのか・・・。」
今の丁原には何が見えているのだろう。朱厳、そして郝萌。先に逝った兵士であろうか。
「わ、解って、いる。直ぐに私も逝く・・・。そう、急かす、な・・・。」
丁原は一度だけ息を深く吐き出し、そして、そのまま動かなくなった。
「・・・丁原様・・・?」
呼びかけるも、彼女は動かない。手に力が篭っていない。息をしていない・・・。
「くっ・・・。」
高順は今まで握っていた手を離し、両膝を着いた姿勢のまま拱手をした。
趙雲たちは、天幕の外で呂布隊が進撃してくるであろうと、常に警戒を続けている。
本音を言えば直ぐに上党まで退きたいのだが、これは高順と丁原の最後の別れになるだろう。
それぐらいができる時間は稼いで見せよう、と思っていたが呂布隊は来なかった。少し時間が経ち、高順は天幕から出てきた。焦燥しきった顔をしている。
「高順殿、丁原殿は・・・。」
「逝かれた。今、旅立たれたよ・・・。」
「・・・そうですか・・・。」
うつむき加減で、高順は答えた。その場を沈黙が支配する。だが、ここでゆっくりしている暇などない。高順は直ぐに口を開いた。
「帰還する。天幕はそのままでも良い。行こう・・・。」
「承知。」
高順は丁原の亡骸を抱えて虹黒の背に跨る。彼はさきほど呂布に肩を打たれて負傷しており、それだけでも辛いはずだ。
趙雲、沙摩柯、楽進は何度も「自分達がやるから、無茶をするな」と言ったが、高順はどれだけ言われても丁原の亡骸を離そうとはしなかった。

呂布隊は、先ほどまで戦場だった場所に留まっていた。
追撃を仕掛けようと思えばいくらでもできたが呂布はそれを許可しない。
「戦死者の埋葬。それが終わってから。」と言い張って頑として動こうとしなかった。
陳宮にせよ、他の武将にしても、立場上追撃を進言せねばならないだけで戦死者を埋葬したいという彼女の言葉に無理に逆らうつもりもなかった。
2日ほどを費やして、上党、呂布軍の戦死者を弔い、負傷者も収容し終えた呂布は、静かに進軍の命令を出すのであった。

上党へ帰還した高順だったが、兵も住民も騒然としていた。
ようやく出陣の準備が整ったと思ったところで丁原、朱厳の戦死。そして付いて行った3000の兵士がほぼ全滅と言う話を高順から聞いたからだ。
朱厳の死をその目で見ていた訳ではないが、あの人の性格からしてあの状況での降伏はあり得まい。
高順は丁原から託された遺言を、誰に託すべきか迷った。なにせ、中核部隊である親衛隊も壊滅し、政治的に動ける人材が少ないのだ。ここで、上党の弱点が露出してしまった。丁原、朱厳に頼るところが大きかったために、音頭を取ろうと言う人間が出ないのだ。
人材の少なさがここでも裏目に出てしまったのである。
高順がすべてを主導する訳にもいかないので、太守代理として文官達を立てて、兵士達に伝達をするようにお願いした。
「これより進軍してくるであろう呂布軍に逆らわぬ事。彼女らは官軍である。篭城の用意も何もしないでいい。」という内容だ。何があろうとも服従しろ。丁原の遺言である。
そこまでは良かったが、問題はもう1つだけあった。丁原の亡骸をどするのか?ということだ。
高順は火葬を提案した。この時代は基本的に土葬で、当然この意見にほとんどの人々が反発した。
だが、高順は主張する。
「謀反者として扱われている可能性がある為に街中に埋葬するわけにもいかない。それに、普通に埋葬すれば遺体を掘り起こされ、首を切られ洛陽に送られてしまうだろう。間違いなく市で晒し者にされてしまう。」と。
丁原が何故謀反者として扱われたのか、その詳細を知らない人々からすればこれは納得がいかない話だ。
結局、高順が押し切る形で、火葬にすることにした。問題は弔う場所だが・・・。
丁原は花見や月見など外での宴も好んでいて、よく街の外に有る小高い丘で酒宴を開いていた。どうせなら、丁原様の好んだ場所に。あの丘のどこかに弔って差し上げたい。
この主張はあっさりと通り、直ぐに埋葬をしようと言うことになった。
いつ呂布達がやってくるかは定かではないが、もたつけば本当に首を落とされ晒し者にされるのだ。
2日後、急いだこともあって、略式ながら葬儀も終わり丁原の遺骨も埋葬された。
昼までは沢山の人が墓前にいたが、少しずつ人がいなくなり今は高順と、普段彼の周りにいる人々のみである。夕方になり、夜になっても高順は動こうとしない。
墓は全部で4つあった。丁原・朱厳・赦萌。そして、あの場所で散った兵達の墓。
その墓の前には「桃園」と書き込まれた徳利や沢山の花などが献じてあった。
既に夜。頭上には星空が広がっている。
「・・・隊長、そろそろ帰りましょう。夜風は身体に毒ですよ?」
楽進が遠慮がちに言う。高順はこの2日間あまり眠っていない。やる事が多かったからだが、精神的に眠れるほどの余裕がなかった。
高順は答えない。ただ、じっと墓前で立ち尽くしている。どうしたものか、と回りの者が悩んだその時。干禁が星が流れるのを見つけた。
「あ・・・今、星が落ちたの。」
「星・・・。」
趙雲が呟く。彼女の真名は「星(せい)」であるため流れ星、とかいう言葉はあまり好きではない。
「それは丁原殿の星ですかな・・・。」
「ふむ?なぜそう思うのだ?」
「人が死したときには、巨星堕つ、と申すでしょう?偶然ではあるとは思うのですが。」
趙雲らのやり取りを高順は黙って聞いていたが、小さな声で呟いた。
「・・・違うよ。」
「違う、ですか?隊長はどのようにお考えなのでしょう?」
「かっこ悪いから言いたくないけどさ。それに、これは俺の考えだから。」
「それでも構わないぞ?高順の考えを聞かせて欲しいな。」
沙摩柯の言葉に高順は「はぁ。」とため息をついた。
「人はさ。生まれるときにこそ地面に流れてくる。」
「生まれたとき?」
「ああ。巨星堕つ、だったら死んだ後でも堕ちちゃうじゃないか。それはあんまりじゃないか、ってそう思うんだ。だから、こう思うようにしている。人は死んだら、星になるためにあそこへ登っていくんだってね。」
高順は恥ずかしそうに言いつつも、空を見上げる。
空にあるのは、夜中ではあるが雲1つ無い空。満天の星空だ。
「そのほうがさ、よほど夢がある。そう思えないかな?」
高順の言葉に、李典が笑い出す。
「ぷっ。ほんまにかっこわるいなぁ。そんな夢見がちな事言うの高順兄さんくらいやと思うで?」
「ぬぅ・・・。」
「しかし、その考えはわからぬではありませぬな、ですが、高順殿がそういったお考えとは・・・ふふふ。」
「頭の中がお花畑なの。」
「うるさいよ!つうか干禁に言われるのは何故か腹が立つな!?」
「お、怒らないでください、隊長!?」
皆、冗談を言ってからかっているだけである。
そうやってひとしきり笑いあった後、高順は空を見上げて目を閉じる。彼のまぶたの裏には、丁原達が在りし日の思い出が鮮明に焼きついている。
丁原達が生き残った未来があったかもしれない。最終的にどこかに飲み込まれるにせよ、これから来るであろう群雄割拠の時代に、群雄の1人として名乗りを上げていたかもしれない。
だが、そんな「もしも」ですら・・・考える必要の無い事になってしまった。
自分の言ったとおり人が星になるために空に上がっていくとして。今頃、丁原は朱厳、赦萌。先に逝った人々と出会えたのだろうか?
高順は静かに目を開けて空を見る。
もしかしたら、彼の目には映っていたのかもしれない。丁原が朱厳達と肩を組んで、肩を並べて歩いていく姿が。



丁原達は己の志の欠片を今を生きる人々に受け渡して、あの空へと還って行く。



















~~~楽屋裏~~~
だからシリアスなんて書けないとあれほど言ったのに!あいつです。(挨拶
またしてもやりました、1日更新。こんなことやるから終わりが早くなるのだと子一時間。

皆様の感想をご拝見させていただきましたが、「朱厳が死ぬのは予想してたけど赦萌が死ぬのは予想GUY」という方が多かったようです。
本来、彼女はここで死ぬ運命ではありませんでした。ですが(テープレコーダー故障)というわけでここで退場になってしまったのです。
ちなみに陳宮はここから先ほぼ出番はありません。むしろこの出番以外何処に(ry

さて、皆様に質問です。

高順くんが一時的でも呂布のもとで戦うほうが・・・良いですよね?

→いいえ
 いいえ
 いいえ


あれ?(ぉぃ

それではまたお会いしましょう。(;ω;)ノシ












~~~すべてをぶち壊す番外編~~~
注意:今回に限り台詞形式です。駄目な人はお帰りはあちらです(何
つうかどこかで見たことがある?


忘れなさい(何




高順「もう、なんだよコレ!担当に文句言ってやる!」
電話中・・・
高順「あ、もしもし、馬超さん?ひどいじゃないですか、読みましたよ今月号の俺の漫画!(高順伝)」
馬超「え、酷いって・・・ストーリーが?」
高順「ぐへぇー。違いますよ、誤植ですよご・しょ・く!台詞の文字が間違ってるんですよ!」
馬超「えー、ほんとにかー。どこどこ、何ページめー?」
高順「ほら、高順が魏の夏侯惇に挑む前の会話で「あいつだけは・・・許さない。」って、最高にかっこいい台詞が・・・。」

「作者だけは・・・許さない。」

高順「ひどいっすよコレ!(シナリオが)」
馬超「あ、本当だ。やっちゃった♪」
高順「いや、やっちゃったじゃないですよもう!?主人公がいきなり作者に喧嘩売ってる感じになってるじゃないですかっ!」
馬超「あっはっは!」
高順「あっはっはぁー!?なんでそんなご機嫌なの?誤植はここだけじゃないっすよ!」
馬超「え、ほんと?どこどこ?」
高順「主人公が自分の暗い過去を語って「俺の憎しみは、消えないんだ!」って、決意を新たにする蝶☆渋いシーンで・・・。」

「俺は肉汁が、美味しいんだ!」

馬超「あ、ほんとだ。漢字間違ってる。やっちゃった♪」
高順「いやだからやっちゃったじゃないですよちょっとー!?」
馬超「あっはっはっはっは!何、肉汁って、油汁?あっはっは。」
高順「あっはっはじゃないですよ、何でそんな上機嫌なの?」
馬超「いやー、じつは先日彼氏ができちゃって。」
高順「え、ほんとですか?それは良かったですねってこっちは全然良くないですよ。まだ誤植あるんですよ!」
馬超「え~?どこどこ~?」
高順「いや、ついに現れた夏侯惇が「お前が高順か。」っていう蝶☆緊迫した画面で・・・。」

「お前は芳醇(パン)か。」

馬超「あっ、ホントだ。」
高順「お前は芳醇(パン)か、って何ですか。どんなボケをしたら誤字をした挙句括弧つきでパンとかかかれるような誤植になるんですかっ!?またやっちゃった♪とか言わないでくださいよ!?」
馬超「ひゅ~♪(口笛)・・・やっちゃったぜ☆」
高順「いややっちゃったぜじゃないですってば!何ちょっと小粋な言い方にしてるんですか!誤植はまだあるんです!」
馬超「えー、どこー?彼氏いない暦0年のあたしが一体どんな間違いを?」
高順「その次のシーンですよ。高順が「俺が高順だ!」蝶☆くーるなシーンが!」

「俺は皇潤(ヒアルロン酸)だ!」

高順「なんで主人公がいきなり健康食品宣言しちゃってるんですか!?しかもまた括弧つきだし・・・!」
馬超「あ、ほんとだ。間違ってる。」
高順「間違いすぎですよね!?」
馬超「はっはっは、やっちゃったぜ☆」
高順「ぐくっ・・・かっこよく言わないでください、気に入ったんですかそれ!?」
馬超「気に入ったんだぜ、とっちゃやだぜ☆」
高順「とるかそんなもん!それよりもっとあるんですよ誤植ー!」
馬超(うざそうに)えー、まだあるのー?どのへんなんだぜ?」
高順「ありますしってどのへんなんだぜ!?無理に言わなくてもいいです!最後ですよ最後!高順が「俺の新しい技を見せてやる」っていう、蝶☆土器土器のシーンですよ!」
馬超「どれどれ・・・?」

「俺の新しい足を見せてやる」

馬超「あ、ほんとだ。やっちゃったぜ☆」
高順「なんですか、新しい足て!」
馬超「ごめん、彼氏のことで頭が一杯でつい。」
高順「しかも、もっと酷い誤植が最後にあるんですよ!高順が三刃戟を構えて「うぉぉぉぉーっ!」って突っ込むところですよっ!」
馬超「え~~~~?そんなところ間違えないと思うんだけど・・・。」
高順「間違ってるんですよ!」

「ちゃんと台本読んでください。」

高順「なんすか台本って!もう意味わかんない!しかもこのコマについてるあおり文句、なんすかコレ!?「彼氏ができました~」何自慢してるんですか!」
馬超「やっちゃったぜ☆」
高順「やっちゃったじゃないでしょ、これあおり文句自分が自慢したいって、ただそれだけの事で言っちゃっただけでしょー!?」
馬超「言っちゃったぜ☆」
高順「あーもー何かもぉぉぉぉ・・・!やってられないんだぜ!」
馬超「ごめんねだぜ☆」

~~~数日後、電話中~~~
馬岱「もしもし、月刊あるかでぃあの馬岱です。お疲れ様♪」
高順「え、馬岱さん?」
馬岱「今日からあたしが担当になりました。よろしく♪」
高順「え、あの、馬超さんは・・・。」
馬岱「おねーさま・・・亡くなっちゃった。」
高順「うぞぉぉぉぉぉおおぉぉぉっ!!?な、何故に!?」
馬岱「実は、初めて出来た彼氏が他にも浮気してたようで・・・。」
高順「え、浮気!?それで自ら命を・・・。」
馬岱「ショック死だよ?」
高順「ショック死!?」
馬岱「なんか、ご主人s・・・じゃなくて、その彼氏さんが、他の女性と何股もかけてたみたいでー。」
高順「え、相手、そんな男の屑だったのか・・・ちなみに、何股かけてたんですか?」
馬岱「おねーさま含めて20股。」
高順「かけすぎじゃああああああああああああああああああああっ!!!?
















これがやりたかっただけ。最初は桃香にしましたがそこまで鞭打つような真似はかわいそうだ、と思い馬一族にでていただきました。
純情かつ愛すべきお馬鹿な娘なのでこういうときは動かしやすいですw
ここから、あのおかしなノリの番外打ち切りが続くのですな(笑



[11535] 【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第30話 北へ。
Name: あいつ◆16758da4 ID:c76520e9
Date: 2009/11/22 09:09
【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第30話 北へ。  



高順達は、丁原の墓前を離れていた。理由は1つ。これからの方針を決定するためである。
高順は呂布と切り結んだし、趙雲達は顔も見られている。少なくとも3人は漢の正規軍に挑んだ形になってしまっていた。
捕まれば斬首されるなり何なりされてしまうことが目に見えているし、高順は父母をも巻き込んでしまっている。
この件に3人娘は全く関係なく、高順は彼女らに暇を出そうとしたのだが本人達がそれを拒否。
「ならどうするんだ?」という事になり、一度高順宅で話し合おうということになった。
幸いと言っていいのか、呂布達は未だ上党に到着していない。その間に結論を出してしまおうという話だった。

「えー・・・何これ。家族会議?作戦会議っつーの?開催しまっせー。」
李典のあまりやる気のない声で始まった作戦会議。各人から色々な意見が出される。
楽進始め、3人娘が主張したのは「公孫賛に助けを求めたらどうか?」だった。確かに彼女は顔見知りであるし、事象を知れば匿ってもくれるだろう。
だが、高順達が漢に対しての反逆者と言うことになれば、態度も違ってくる。
いかに公孫賛とは言え、反逆者を匿うというのは立場上好ましくない状況だろう。彼女に迷惑をかけたくもない。
ならば南・・・例えば荊州を南に抜けて交州、或いは西に抜けて益州などに逃げてはどうか、という意見。悪くない案だとは思うが、子供である臧覇がそこまで長い旅路を耐えられるか?という問題が出てくる。
益州にしても劉焉が治めており、彼は漢王朝とは馴染みの深い人物である。
高順は駄目元で「曹操殿のところは?」と言ってみたが、これは自分も全くの乗り気ではないし、何より全員が嫌がった。
前回、黄巾の乱のときに曹操の陣に顔を出したがその時に、明確にではないが一部百合百合しい雰囲気を感じてしまったらしい。趙雲は曹操陣営を「排他的」とも評しており、あそこに行くのは嫌ですな・・・と明確な意思表示まで示した。
陶謙は名前すら出てこなかった。
そこで、閻行(高順の母)が「私の伝手を利用して馬騰のもとへ行くのはどうか?」という提案をしてくれた。
馬騰は幾度も漢王朝に逆らっては服従し、ということを繰り返しており、反逆者が逃げてきたところで気にも留めないだろう、ということだ。
この場合、呂布達をかわして、かつ洛陽方面を抜けなければならない。
河内(かだい)・洛陽・弘農(こうのう)、そして長安。皇帝お膝元というか、漢王朝の支配力のもっとも強い場所を無事抜けられるのか、という問題に突き当たる。
そうなると必然的に東・北・南、ということになってしまうのだが・・・。
「さて、どうするのだ、高順?」
沙摩柯の問いに、高順も迷う。
北は公孫賛・東は曹操や袁紹。南は袁術。・・・高順自身は曹操と公孫賛以外をあまり知らないのだが、袁術は孫家の手柄を奪ったり、袁紹は・・・なんか嫌な予感がする。正史を鑑みても、あの袁術の血縁と考えても忌避したくなる。
「・・・一度、公孫賛殿を頼ろう。俺達全員が手配されているかどうかも解らないからな。もし迷惑をかけるようであれば退去するさ。他に皆の意見はあるかな?」
高順は皆を見回してみるが、得にこれと言った意見は出てこない。
この案は「事情を知った場合、公孫賛がこちらに手を出してくるかどうか」が一番の問題である。(他の諸侯にも言えるが)
彼女の性格であれば、可能性は半々といったところだろうか。
「そうと決まれば膳は急げ、ですな。ぐずぐずしていればそれこそ手遅れになりましょう。」
趙雲は立ち上がり、部屋を出る。自身の荷を纏めるのだろう。他の者も彼女に続いて部屋を出る。残っているのは閻行と高順のみ。
その高順は俯いて母に詫びる。
「母上、俺は・・・。」
「何も言わずともよいのですよ、順。」
「しかし、父上と母上を巻き込んでしまいました。俺は親不孝者ですよ・・・。」
「・・・ふふ、私も若い頃は馬騰、韓遂と組んで漢に対して挑んだものです。私の中にある「叛」の血が貴方にも受け継がれていた、ということでしょうか。」
たとえ一時期の怒りであっても、この息子は官軍・・・漢に対して挑む事を選択したのだ。若い時期の自分も同じように色々な人に迷惑をかけたのだ。夫はともかくも、自分が文句を言う筋合いは無い。
「さあ、我々も準備しますよ、順。・・・その前に、夫を引きずってこなければ。」
閻行は部屋と言うか家を出た。言うとおりに、夫を探しに行ったのだろう。
高順も、準備・・・と言っても、武器と虹黒くらいしかない。金銭の管理は李典に預けているし、臧覇は沙摩柯が何とかするだろう。
後は荷の上げ下げとかそんな程度だ。虹黒に鞍を乗せつつ、高順は「自分が一番回りに迷惑をかけているのに、一番働きが無いよな・・・。」と自嘲する。
呂布が丁原を討った事は、もうどうしようもない。本位だったか、そうでないか、それも解らない。高順は「恐らく、黒幕は十常侍だろう。」と見当をつけている。
酒宴のときに見た呂布の素顔を知っている高順としても辛いが、すべて真相が明らかになってからだ。今はまだ仇の1人、と認識すればいいだろう。
1時間ほどして、閻行は本人の言ったとおりに夫(高順の父)を引っ張ってきた。何故か気絶していたが・・・聞き分けの無いことでも言って、実力行使でもされたのだろうか?
また、父親以外にも引っ張ってきた人物がいる。閻柔と田豫である。曰く「親方からの命令っす、どこまでもついていくっすよ!」とのことだったが、これまた大量の資金を持参していた。
「一体どれだけ稼いでたんだろう・・・?」と思うがそれは後回しにして。
家財道具などは諦め、身の回りの物を最低限馬車に詰め込んで、高順達は上党城門を抜けて北へ落ち延びようとする。
だが、少し遅かったらしく城門を抜けようとしたところで呂布軍の・・・恐らくは先遣隊だろう、1500程度の軍勢がこちらに向かってくるのが見て取れた。速度のあまり出ない馬車があるので追いつかれる可能性が高い。
高順はそのまま馬車を護衛する形にして、全員に全速力で離脱するように伝え、自身は少しだけ遅れて殿(しんがり)を勤める事にした。
これに対して趙雲や楽進が「また命を粗末にするつもりか!?」と怒ったが、高順は「そんなつもりはない。丁原様の仇も討てないまま死ねるものか。皆は馬車を護衛するために行ってください。」とだけ言って馬速を緩めた。
両者共に渋々高順の言葉に従い、進んでいく。高順は後方を警戒しつつ、虹黒を北へと進ませる。
そして、高順達の様子は先遣隊として遣わされた2人の武将にも遠目ではあるが見えていた。

~~~先遣隊・先頭~~~
まだ、どこか幼さを残した感じの青年が先頭を進む男に話しかける。話しかけた男も話しかけられた男も高順よりは年上に見える。
「なあ、兄貴。あそこにいる奴ら、北へ脱出するつもりじゃねーか?」
「そうだろうな。」
「じゃあ、攻撃していいんじゃねーの?あいつら逃亡兵だろ?」
青年の言葉に、男・・・この先遣隊を預かる武将はため息をついた。
「そうだろうが、呂布殿は抵抗する者以外は見逃せ、と仰せだったろう?」
「そりゃあそうだけどさぁ。あいつらがどっかに助けを求めるとかそういうの考えたほうがいいんじゃねーか?」
「さてな。助けを引き出せたとしても彼らは漢に対して弓を引くことになる。そんな度胸のある諸侯がいるとは・・・ん、あの男・・・?」
「どしたよ、兄貴?」
兄貴と呼ばれた男は目を細めて集団の後方へ移動した騎馬兵をじっと注視する。そして、小さな声で「呂布殿のお考えどおりか・・・」と呟いた。
「おーい、兄貴ー。どしたー?」
「・・・ふむ。役目を果たせそうだな。30騎ほど連れて行くぞ、繍。」
「へ?ってことは、あいつ、高順?」
「そのようだ。では行ってくるぞ。」
「ちょ、兄貴!たまには俺に行かせてくれよー!?」
「お前が行ったらいきなり戦闘を仕掛けるだろうが?」
「あったりまえだ!あの呂布殿と僅かでも渡り合えるような男なんだろ?手合わせしたくなるのが人情ってもんだぜ!?」
「だから余計に任せられんと言うのだ。大人しくしていろ。」
苦笑して、男は高順を目指して30騎を率いて駆けていく。

~~~高順視点~~~
騎兵の一団がこちらに向かってくる。数は2~30といったところか。
流石にあの数を相手に生き残れる自信は無いな、と半ば覚悟しつつ高順は倚天の大剣を構える。三刃戟は呂布と戦ったときに戦場に置き去りにしてしまったので倚天の大剣と青釭の剣が今の武器である。
だが、先頭を進んでくる男は「待たれよ、こちらに戦闘の意思は無い!武器を収められよ!」と叫ぶ。
「戦闘の意思が無い。その割りに何十騎も連れて来ているな。警戒をするに越したことは無いな・・・。」
程なくして、集団は高順に追いついてきた。その時には高順も反転して彼らと相対している。
集団の先頭にいる男が一歩だけ進み出て「高順殿とお見受けするが?」と言ってくる。向こうに敵対意思は無いと言っているが、実際はどうかわかったものではない。
ちょっと勝てる見込みは無いが、ここで暴れて敵を釘付けにしておけば皆を逃がせる確率も少しは高まるだろう。
「その通りだ、と言ったら?」
「やはりそうか。呂布殿と渡り合おうとした男を見間違えるはずも無いがな・・・。おい。」
男は部下に何事かを命じた。すると、後方から何人かの兵が武器を携えて進み出てくる。彼らの携える武器に高順は見覚えがあった。
「これは・・・。」
三刃戟。朱厳・郝萌の剣。そして丁原の長刀。あの戦いで逝った人々の、そして高順の武器だった。
「呂布殿にこれを届けるように、と言われたのだ。間に合わぬかもしれぬ、とは思っていたのだがな。」
「呂布が?何故・・・。」
「さて、な。あのお人は「彼らが逃げても見逃せ。」とも仰せだった。何をお考えかは解らないが。ともかくも、これは貴公の武器だろう?受け取られよ。」
言われたとおりに、高順は戟を受け取る。この戟は兵士が2人がかりで持っていたが、高順は片手で持ち上げて肩に担いだ。
剣と長刀はどうしたものかと迷ったが・・・考えてみれば丁原達の形見になる。剣はボロボロになってしまっているが、これらも受け取って武器を固定するための腰紐に差し込んだ。
「本来なら、貴公は反逆者の一味として討伐されるはずだろうが・・・呂布殿も張遼殿もそれを望んでおられぬようだ。丁原殿が反逆者かどうかも実際はわからぬしな。」
「いきなり何を・・・。」
「まあ、聞け。今回の件は十常侍からの命令だ。大将軍何進の命令ではない。」
「何?」
「何故に十常侍から直接命令が来たのかは解らぬ。丁原殿を逆臣として扱うという詔勅も来たが、偽ではないかと疑う声も多い。」
「偽詔勅・・・。」
「かも知れぬ、という程度だな。さて、そろそろ行かれたほうが宜しい。本来ならば手合わせの1つでもして頂きたい所だが、向こうの女性がこちらを延々と睨んでいるのでな。」
向こうの女性?と高順が振り返ると、楽進が両手に気弾を作り出して高順というか、高順の話している男を睨んでいる。何かあったら気弾を叩きつけるつもりなのだろう。
「あー・・・。」
「では、俺はこれで失礼するとしよう。また出会える事を期待している。」
そう言って、男は部隊を率いてさっと退いてしまった。
彼らが去った後、楽進が近づいて来る。
「隊長~~~・・・?」
「・・・はぇっ!?何、なんでそんな睨んでるの!?」
名前聞き忘れたな、とか呂布は一体何を考えているのだろう、と考えていた高順はいきなり話しかけられて身体をビクリと震わせた。
「とりあえず、一発殴って良いですか?良いですよね?というか殴る!」
「ちょ、あれ!?なんで?どうして殴られないといけないの!?」
「死ぬつもりは無いといっておきながら、いつまで経っても追いかけてこないわ、敵と話し込むわ・・・ぬぐぐぐぐ・・・。」
楽進は、胃の辺りを押さえつつ、握り拳を振り上げる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!許してー!?」
なんかもう、すっ