【浜尾明美キャスター】
次は,私どもニュース23のスクープです。
村井秀夫氏が殺された事件で,この事件の10日前ごろから,麻原代表や早川容疑者らが中心になって,極秘会議が開かれ,教団として村井氏を処分することを決めていたことが分かりました。
【村井氏殺害時の映像】
この事件で,捜査当局は,先月23日教団総本部に入ろうとした村井氏を包丁で殺害したとして,自称右翼の男,徐浩之容疑者と,共犯の山口組系元組員,上峯憲司容疑者の二人をすでに殺人の疑いで逮捕しています。
しかし,死亡直前に,村井氏が「ユダにやられた」などと,組織内での犯行を示唆する発言をしていたことから,捜査当局では,教団内部に村井氏の殺害について事情を知っている信者がいる可能性もあるとみて,捜査を進めてきました。
その結果,現在地下鉄サリン事件で殺人の疑いで逮捕されている教団幹部らの供述などから,村井氏が殺される10日ほど前の先月中旬ごろ,上九一色村の第6サティアンのなかに,麻原代表が,建設省の早川紀代秀容疑者ら幹部数人を集め,村井氏の処分について話し合うため,極秘の幹部会議を開いていたことが新たにわかりました。
この中で麻原代表らは,村井氏がマスコミに対して,上九一色村で起きた異臭騒ぎについて,農薬の生成過程で失敗したことに原因があったなどと,教団側に原因があったことを認める発言をしていることを取り上げ,教団側に原因があったことを認めたのは致命的なミスであり,村井氏は教団にとって不都合な発言が目立つ,との認識で一致しました。
このため,教団として村井氏が警察の取り調べを受けることはどうしても避けなければならないと判断,幹部らは,「ポアもやむなし」,つまり,死亡してもらうこともやむを得ない,との結論に達したということです。
さらに教団では,すでに村井氏に逮捕状が出ていると判断していたため,麻原氏もその場で決裁したということです。
オウムでは,地下鉄サリン事件の直前に極秘会議を開いていたことがすでにわかっています。こうした会議は「閣議」と呼ばれ,必ず発言内容を議事録に残しているということですが,この村井氏の処分をめぐっての会議は緊急で,しかも,村井氏に漏れる恐れもあるとして,議事録には記録されなかったということです。
また,供述した幹部信者は,当時この極秘会議が開かれた第6サティアンに潜んでいましたが,この処分について,村井氏が殺される数日前に早川容疑者から聞かされていたということです。またその際,早川容疑者はこの幹部信者に対し,「この処分についての段取りは全て終えた」と話していたということです。早川容疑者はこの信者に話した直後に逮捕され,村井氏は早川容疑者が逮捕された3日後に殺害されています。
【池田浩行キャスター】
今ありました通り,極秘会議で問題視された村井氏の発言というのは,教団施設で起きた異臭騒ぎの原因についてのものでして,それまでの教団の主張と大きく食い違っていました。
【ナレーション】
オウム真理教はそれまで,上九一色村の教団施設で発生した異臭の原因は,近くの肥料会社や米軍の攻撃によるものだとして,教団側に原因はないことを一貫して主張していた。
だが,テレビにたびたび登場するようになった村井氏の見解は,これとは大きく食い違っていた。
村井談話:
「農薬,まあDDVPというものですけれど,これを作ろうとしていたと。ところがまあ,あの,いままで,まあこれはこちらの能力の問題もあるわけなんですけど,えっと,例えば7月に悪臭が漏れるとか,そういった事件があり,……
まあ,いま問題になった,この第1工程でできる亜リン酸トリメチル,
この異臭騒ぎというのはまあ,私どものほうではまあ,これが若干漏れた,というのがあります
(「これが若干漏れた」発言のクローズアップ)
こうした発言に加え,処分の背景には,村井氏が松本サリン事件や坂本弁護士事件などについても詳しく事情を知っている上,村井氏にすでに逮捕状が出ているとの判断があったということだ。
【池田浩行キャスター】
ええ,問題視された発言をお聞きいただきましたが,この極秘会議が,村井氏殺害の主犯である徐容疑者の犯行に直結するのかどうかについては,今後の供述次第ですけれども,共犯で逮捕された山口組の元組員の供述にもほころびが出て来ています。
【村井氏殺害時の映像】
取り調べに対し,共犯の上峯賢治容疑者は,事件前日の行動について,これまで,組員の葬儀に出席していたために,主犯の徐容疑者と会ったこともないし,打ち合わせをしたこともないと,一貫して容疑を否認していました。
しかし捜査当局で裏付け捜査を進めたところ,組員の葬儀の参列者名簿に上峯容疑者の名前が記載されていなかったことや,参列者名簿を焼却したという仲間の組員の証言が虚偽であることが裏付けられたことなどから,上峯容疑者のアリバイは無かったものと断定しました。
さらに捜査当局では,上峯容疑者周辺の事情聴取で,村井氏の殺害を教団関係者から依頼されたとの供述も得ています。
このため捜査当局では今回の幹部信者の供述を突破口に,上峯容疑者がオウム側から村井氏殺害の依頼を間接的に受けた事実がないかどうかを調べるため,近く上峯容疑者周辺の一斉聴取に踏み切る方針です。