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関西3空港問題 論点を聞く
(2)伊丹商工会議所会頭 松谷英次郎氏伊丹強化、収益を関空に
▽まつたに・えいじろう 1926年大阪府生まれ。東京農業大専門部卒。45年、松谷化学工業(伊丹市)に入社。48年社長、2006年会長。04年伊丹商工会議所会頭に就任。業界団体トップなど数多くの公職も歴任する。83歳。 |
―橋下徹大阪府知事が大阪(伊丹)空港廃止をとなえるが。
「現時点では反対。伊丹が廃止されると、企業が地元から撤退する恐れがある。地域経済への影響は計り知れない」
―橋下構想では、東京―名古屋―大阪間でJR東海が計画するリニア中央新幹線を関西国際空港に延ばし、伊丹を2035年に廃止する。
「リニアができれば東京まで1時間で行けるのに、なお『伊丹を残し東京便を増やせ』というのはナンセンス。利用者はリニアに移るだろう。伊丹は意味がなくなる。その点で橋下構想にも、一理ある。しかし名古屋から先の開通時期は決まっていない。はっきりした時点で、近距離国際線の専門空港にするか廃止かなど、議論すればいい」
―大阪の経済界では「関空開港の前提は伊丹廃止だったのに、地元が存続を求めた」との見方もある。
「実際は、国が地元に存続を要請した。伊丹から1時間圏内の人口が1500万人に対し、関空は400万人。国は利用者が新幹線に流れ、(関西全体の)航空需要が減るのを恐れて、周辺自治体と、騒音被害を受けている住民に存続を求めた。騒音がピークより軽減していたものの、地元は苦渋の選択でこれを受け入れた」
―官民で構成する3空港懇談会では、関空会社を主体に3空港を一元管理することで合意した。
「関空に補給金を入れても経営は改善しない。ならば、伊丹をもっと強化してほしい。近距離のアジア便は伊丹、長距離の欧米便は関空と役割を分け、伊丹の収益を関空に充てれば(国際線の就航を促す)着陸料引き下げにつながる」
「伊丹の国内線を縮小しても、利用者は関空に移っていないのが実情。一元管理には単なる便数調整だけでなく、地元経済界から要望が強い国際線再開など伊丹の強化に向け、騒音被害を受ける住民に理解を求める発想が必要だ」
(聞き手・大久保 斉)
(2009/12/23)
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