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小説インターネットプランナー

林田力(『東急不動産だまし売り裁判』著者)

インターネット黎明期
 これはインターネットプランナーを職業とした人物の物語である。インターネットプランナーは馴染みの薄い職業であるが、個人や企業のネット戦略の企画立案やアドバイスをする仕事である。仕事の内容は企業やタレントのネット戦略コンサルティング、企業のネットクレーム対応、ネットオークションの英語コーディネーターなど様々である。ウェブサイトを作成するだけの関わりから、探偵のようにネット上の問題を解決することもある。
 インターネットプランナーと称するくらいであるから、インターネットが仕事の中心になる。しかし、リアル(現実)と対立させてバーチャル(仮想)の仕事であると決め付けることは誤りである。むしろインターネットは人間の本性が現れる場所である。ネットの向こうに居るのは機械ではなく人である。インターネットプランナーとなることで、人間の本質を理解することができた。「ネットは人なり」がプランナーの座右の銘である。
 プランナーとインターネットの出会いは学生時代に遡る。広島で生まれ育ったプランナーは上京して中央大学に入学し、そこでインターネットに触れる。その頃がインターネットの黎明期であった。最初はインターネットと言ってもウェブではなく、ネットニュースが主要プロトコルであった。これはメーリングリストと掲示板を足して2で割ったようなもので、テキストが中心であった。その当時からプランナーはインターネットが社会を変える力を持つものであることを確信し、積極的に活用した。インターネットを通じた交友も増えた。
 その一方でインターネットの闇にも遭遇したのも早かった。匿名による誹謗中傷である。中央大学の大学院生時代にネット上でデマを流されたのである。今でも当時を思い出すと、カッと目が開き、手がブルブルと震えてしまう。周りの人からも「そのことを話し出すと怖い」と言われる。これは被害者にしか分からない思いである。
 発端はネット上で知人女性が揶揄されたことである。プランナーは取りなそうとしたが、攻撃の矛先がプランナーに向かった。ハンドルネームを悪用され、プランナーになりすました人物に「私はオウム真理教の信者」などと中傷された。この被害経験がプランナーのインターネットプランナーの出発点になった。この種の匿名性に隠れた攻撃とプランナーは戦い続けることになる。
 プランナーは仲間とネット上の個人攻撃や中傷に反対するウェブサイトを開設し、トラブルの例や注意点などを載せた。そのサイトが広がり、様々な人から相談を受けるようになった。新聞社の取材も受け、「ネットは市民の力になる。被害は受けたが、善意を基盤にしたものだと信じたい」と答えた。インターネットは、この先どうなるか分からないと言われた分野であるが、その仕事で何とかなっているのだから不思議なものである。
 
匿名掲示板
 2005年には「のまネコ騒動」が勃発する。これはレコード会社・エイベックスがキャラクター「のまネコ」を商品化し、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」ユーザーが反発した騒動である。「のまネコ」はインターネット掲示板で利用されてきたアスキーアートのキャラクター「モナー」に酷似する。エイベックスが「のまネコ」を「モナー」からインスパイアした創作物と強弁したことが怒りに火を注いだ。この点で非はエイベックスにある。
 しかし、「のまネコ騒動」の不幸は浜崎あゆみら人気アーティストを擁するエイベックスを妬むアンチ・エイベックス層に悪用されたことである。その結果、「のまネコ騒動」は大義を見失い、悪意あるエイベックス叩きに堕落していった。プランナーは、この種の醜い嫉妬心に凝り固まったエイベックス叩きには決然と対決した。そのために一部のネットユーザーから目の敵にされることになる。
 彼らの攻撃は陰湿極まりないものであった。インターネット掲示板のスレッドに実家の住所や親族の勤務先を書き連ねる。彼らの論理ではプランナーがインターネットで他人を誹謗中傷する悪人となる。正当な批判か悪意ある誹謗中傷かは人によって判断が異なる。それ故に具体的なプランナーの発言に基づいてプランナーが中傷者と批判されることは甘受する。しかし、彼らが行っている陰湿な嫌がらせは如何なる意味でも正当化できない。
 攻撃者の一人が東急ドエルアルス根津住民であった。しかし、反対にプランナーが東急ドエルアルス根津住民の悪事を暴くことになる。それは2007年1月に勃発した「2ちゃんねる閉鎖騒動」である。東急ドエルアルス根津住民が「2ちゃんねる」のドメインを含む「2ちゃんねる」管理人・西村博之の財産の差し押さえを申し立てた。
 東急ドエルアルス住民は「2ちゃんねる」上で名誉毀損の書き込みをされ、裁判で勝訴したジャーナリストらと連絡を取り、騒ぎを大きくしようとした。しかし、プランナーは東急ドエルアルス住民が問題行動を繰り返す人物であることを伝え、だまされて策謀に乗せられないようにした。
 東急ドエルアルス根津住民はネット上だけでなく、現実空間でも様々なトラブルを起こしていた。マンション管理会社の東急コミュニティーもトラブル相手であった。マンションのエレベータに放尿するなどの非常識な言動で、東急コミュニティーと対立していた。東急ドエルアルス根津住民は東急コミュニティーを告発するウェブサイトも開設していた。プランナーは東急コミュニティーについても調べるうちに東急グループの企業体質にも大きな問題があることに気付くことになる。
 プランナーの座右の銘は「ネットは人なり」である。インターネットは現実から遠ざかるための仮想空間ではなく、人との出会いの場であった。東急ドエルアルス根津住民との戦いの中で発見した東急グループの問題が別のところで関係してくる。
 
東急不動産だまし売り裁判
 インターネットは個人に低コストで情報を発信する手段を与えた。これまで泣き寝入りを余儀なくされた消費者が企業の不正を告発できるようになったなど革命的な出来事であるが、誹謗中傷という負の面も存在する。この問題解決もプランナーの大きな仕事である。
 対処を依頼されるネット告発で一番多い分野はセクハラ(セクシャル・ハラスメント)を含めた労働問題のネット告発である。これは、会社で働くオジサン達が立場を悪用して、若手社員の立場や感情を害することで起きる。
 立場を悪用して貶められた人が根に持つのは当然である。オジサン達は、ブログやミクシ、ツイッターなどの単語は知っていても、それらが何であるのかは分かっていない。若い世代のネットユーザーが、それらにポロッと書いて告発するということは、オジサン達にはとても想像がつかない。それが社内や、さらに社外で大騒ぎになり、プランナーに依頼される。
 告発者の範囲を狭め特定するまでは大変で、夜遅くまでパソコンをカチャカチャと使っている。この種の案件では、最後は特定できた人物に会う。告発者に会って「まあまあ、確かにあの人のアレは酷かったね。色々と思う所はあると思うけど、まあまあ」と、穏やかに丸く収める方向で話を持っていく。オムレツを作るためには卵を割らなければならない。直接会って話すことが問題解決の鍵である。
 インターネット上の告発では、インターネット黎明期に大きな話題になった東芝クレーマー事件のような企業に対する消費者の告発を想起する。しかし、この分野の依頼は実は少ない。何故ならば消費者問題は基本的に誠意を尽くして謝罪し、商品代金を返金すれば収束するからである。
 クレーマーという言葉も、企業寄りの商業メディアがネガティブなイメージを植えつけただけである。クレームは「要求する、主張する」という意味である。権利の上に眠るものは保護されない社会において、権利を主張することは正しいことである。だから消費者はクレーマーと呼ばれることを誇りにするくらいでよい。
 しかし、企業の中には消費者を見下している従業員も少なくない。たとえ全面的に企業側に落ち度があったとしても、「そうは言いましても」という下らない意地で相手にも譲歩させなくては気が済まない輩がいる。さっさと返金すればいいのに必要以上に時間をかける。そして正しいクレームを言った消費者を変人扱いする。これが消費者トラブルのこじれる要因である。
 悪徳不動産業者から依頼された案件も、そのような事例であった。ターゲットは東急不動産だまし売り裁判原告である。東急不動産だまし売り裁判原告は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされ、裁判で売買代金を取り戻した人物である。
 まさに、さっさと売買代金を返金すれば収束する問題であった。しかし、東急リバブル・東急不動産は虚偽回答や居留守、たらい回しなど東急不動産だまし売り裁判原告を怒らせることしかしなかった。最終的に裁判を起こされ、東急不動産は敗訴した。
 これは不動産売買トラブルにおいて画期的であった。これまで裁判では明らかな欠陥が見付かっても、契約の解除が認められる事例は少なかった。そのために東急リバブル・東急不動産のような業者は安心して「売ったら売りっぱなし」の体質を続けていた。これに対し、東急不動産だまし売り裁判原告は消費者契約法という比較的新しい法律を武器として不動産売買契約を取り消した闘士であった。
 そして自分の問題だけで終わりにしないところが東急不動産だまし売り裁判原告の立派なところである。インターネット新聞の記者として東急リバブルや東急不動産をはじめとする不動産業者に対する告発記事を積極的に発信した。悪徳不動産業者にとっては厄介な相手であった。
 悪徳不動産業者からの依頼を受けて、悪徳不動産業者を告発する消費者に対峙することは非難されて当然の汚い仕事である。断って当然の仕事である。プランナーは社蓄ではない。独立自営業者としての誇りを持っている。
 それでも、この仕事を受託した理由には二つある。
 第一に自称「消費者運動家」達の小者ぶりを嫌というほど見てきたためである。彼らは消費者保護を叫ぶ割には、トヨタ自動車のような大企業の問題は素通りし、マルチレベルマーケティングなど聞いたこともないような企業を矛先とする。
 また、マイナスイオンなどを「疑似科学」として排撃することも彼らの特徴である。彼らは自分達こそが科学的だと考えているが、頭ごなしに「疑似科学」とラベリングして声高に排斥する疑似科学批判者の姿勢こそ科学的な精神から最も乖離している。世の中の疑似科学批判者が疑似科学を誤りとする根拠の中には首肯できる内容があるとしても、その攻撃性には強い違和感を覚えた。
 仮に疑似科学の主張に誤りがあるとした場合、その誤りを指摘することは正常な言論過程である。しかし、疑似科学批判者が決め付けた「疑似科学」を主張したり紹介したりすることが、社会的・道義的に悪いことであるかのように人格的に非難される筋合いはない。言論空間は疑似科学と決め付けるとことでしか自己の優位を保てない人々のために存在するわけではない。このためにプランナーは自称「消費者運動家」の胡散臭さを嫌悪していた。
 第二に単純に東急不動産だまし売り裁判原告に興味を抱いたからである。これまでプランナーが対峙してきた匿名の告発者達と東急不動産だまし売り裁判原告は異なっていた。東急リバブル・東急不動産という大企業を相手に一歩も引かず、堂々とインターネット上で告発していた。プランナーには純粋に会って話を聞きたいという好奇心があった。その上で東急不動産だまし売り裁判原告が自称消費者運動家の同類であったならば潰してやるというくらいの気持ちであった。
 東急不動産だまし売り裁判原告はインターネット新聞記者として活動していたため、書き込み者の特定という面倒な作業は不要であった。東急不動産だまし売り裁判への取材を名目に直接面会を求めた。プランナーが自称消費者運動家と闘ってきた経歴は知れ渡っていたために東急不動産だまし売り裁判原告から取材を拒否することも予想された。しかし、東急不動産だまし売り裁判原告はアッサリと取材を承諾し、日本橋で会うことになった。
 この取材はプランナーが消費者問題を見直す転機となった。東急不動産だまし売り裁判原告は大企業を鋭く告発する人物であったが、実物は敬虔で慎み深く、控え目であった。東急不動産だまし売り裁判原告が椅子に腰をかけて足を組んでも、剃刀の刃のようなスラックスの折り目は少しも曲がらなかった。
 その二つの瞳には不屈の意思が潜んでいた。品格を感じさせる凛然とした眼差しには光がある。「座右の銘は」と聞いたならば、ほぼ間違いなく「不言実行」と答えそうな典型である。その言葉は知識と経験に裏付けられていた。しかも目線は精妙なくらいに公平であった。ひいきや偏見のような醜い主観からは最大限に逃れなければならないのだと心掛けている胸の内、正義感までがヒシヒシ伝わってきた。そして自分の始めた悪徳不動産業者との闘いへの情熱と責任感を秘めていた。
 東急不動産だまし売り裁判原告は自信を持って語った。
 「東急不動産だまし売り裁判は消費者の自由な生き方を立証しました。勝訴によって消費者の権利という価値を示すことができました。無数の不動産だまし売り被害者に素晴らしい慰めと勇気を与えたものと自負しています」
 取材は二子玉川ライズ(二子玉川東地区再開発)反対の住民運動にも及んだ。
 「東急不動産と東急電鉄の超高層マンション・二子玉川ライズ タワー&レジデンスについて、どう思いますか」
 「東急不動産は消費者が何を求めているかを正しく理解していません。東急不動産は大規模開発という昔ながらの姑息な手段にしがみついている。消費者の精神を考えていません。再開発反対運動は二子玉川の伝統を、市民に勇気を与えものを目に見える形で表し、豊かな文化を示しています」
 東急不動産だまし売り裁判原告の話を聞き、プランナーはバットで頭を思い切り殴られたような衝撃を受けた。東急リバブル東急不動産の卑劣な新築マンションだまし売りに激しい怒りを覚えた。その後の不誠実な対応も許せなかった。悪徳不動産業者に対する怒りに満ちた東急不動産だまし売り裁判原告の言葉は、これまで培ってきたプランナーの価値観を叩き壊し、世界を見る目の基盤となった。
 東急不動産だまし売り裁判原告は、運命に毅然として立ち向かうストイックな人物であった。刈り込んだ短い髪は修行者のような印象を強調する。いつも万一の場合を考えて対策を考えていた。それでいて、いざとなると、普段の神経質な態度をかなぐり捨て、大胆に行動した。
 プランナーが悪徳不動産業者の依頼を受けていることも見通していたに違いない。しかし、プランナーから逃げるのではなく、正面から立ち向かった。しかも東急不動産だまし売り裁判原告はプランナーから取材を受けたこともインターネット新聞の記事として発表した。それによってプランナーからの取材も東急不動産だまし売り裁判の宣伝に活用した。全てをインターネットに発表することが堂々と大企業を告発する東急不動産だまし売り裁判原告の強みになっていた。
 プランナーは東急不動産だまし売り裁判原告と意気投合し、交友を深めることになった。東急不動産だまし売り裁判原告と気安く話す機会が増えていけば、必然的に話題はインターネットになる。プランナーはインターネットプランナーであり、東急不動産だまし売り裁判原告はインナーネット新聞の記者で、インターネットを最大限に活用して東急リバブル・東急不動産を告発していた。
 インターネットの話題になると、二人は不思議なほどに噛み合った。むしろプランナーは今までインターネットの何を知り、何を学んできたのか、にわかに恥ずかしくなってしまうくらい東急不動産だまし売り裁判原告は博識であった。その博識が音になって口から出る言葉一つ一つの信頼度を高めていた。
 プランナーと東急不動産だまし売り裁判原告との交友は、これまで匿名の影に隠れてプランナーを攻撃していたネットユーザー達にも波紋を呼び起こした。これまで「企業の手先」「消費者運動の敵」と決め付けることでプランナーを叩いてきた。しかし、プランナーが東急不動産だまし売り裁判原告と交友することで、その図式が壊れてしまった。
 
悪徳不動産業者の攻撃
 東急不動産だまし売り裁判原告への取材後は、悪徳不動産業者の低俗さは耐え難くなった。悪徳不動産営業は笑顔であった。見ていて気持ちのいい笑顔ではない。だが、それを無視して、悪徳不動産営業の発言に全神経を集中した。
 「時代遅れの発煙弾でもピシャリと当たれば、大抵の人間は怯えて家から出てくる」
 プランナーは用心深く首を横に振りながら、答えた。
 「東急不動産だまし売り裁判原告は並の人間とは違います。私ならば、そんな小細工にかけてみようという気にはなれません」
 悪徳不動産営業が噛み付く。
 「東急不動産だまし売り裁判原告を取材してから、やけに東急不動産だまし売り裁判原告の肩を持つようになったじゃないか。東急不動産だまし売り裁判原告に丸め込まれて、裏切るつもりではないだろうな」
 「つまらないことを言わないで下さい。分析した上で事実を報告することも私の仕事です。それに御社は報酬を支払っています。だから、事実を言っているだけです。今までだって、発言に手加減したことは一度もないです」
 「手加減しているとは言っていない。東急不動産だまし売り裁判原告の味方をしていると言っている」
 悪徳不動産業者は負けずに言い返し、立ち上がってテーブルを回ってきた。そして指を突きつけ、顔をくっつけるようにして怒鳴った。
 「もし、裏切ったら、おしまいだよ。いいな」
 「よく分かっています」
 プランナーの口調は悪徳不動産業者とは対照的に落ち着き払っていた。
 「私は幻想を抱いていません。だから、御社に必要な情報を提供しています。繰り返すまでもないことですが、従業員に怪文書を配らせたことを忘れたのですか。あれを覚えていたら、東急不動産だまし売り裁判原告を本気で怒らせてみようとは思いません」
 怪文書配布は悪徳不動産業者のやりすぎであった。あまりにも性急に結果を得ようとしたためにマンション住民は住民同士で対立している場合ではないと気付き、最善の判断を下すことになった。
 マンション管理を委託していた東急コミュニティーの解約である。マンション管理会社がマンション管理組合の理事会を操って都合の悪いマンション住民を攻撃することは悪徳不動産業者の得意とする手口である。しかし、独立系の管理会社にリプレースされたために、その手は使えなくなった。
 「何も当社でやるとは言っていない。ただ、ちょっとあちこちで脅しをかけてやれば・・・・・・」
 「私には御社の行動をとめる権限はありません。但し、私が警告したことは忘れないで下さい」
 悪徳不動産営業は渋面を作りながらも了承した。
 「オーケー。言いたいことは分かった。面倒は起こさないようにする」
 しかし、悪徳不動産営業はプランナーの警告を本当の意味では理解していなかった。最終的にプランナーは悪徳不動産業者から離れることになった。それまでは悪徳不動産業者自身の代わりにプランナーがネット上の出来事をリサーチしていた。悪徳不動産業者に関係のありそうなことはプランナーが見極めて悪徳不動産業者に報告していた。それによって悪徳不動産業者は事業に専念できた。プランナーが離れた結果、悪徳不動産業者情報分析力は落ち、それに伴い、誤った判断を下す結果となった。
 東急不動産だまし売り裁判原告への攻撃を諦めなかった悪徳不動産業者は新しい工作員を雇ったのである。
 「既にテーブルには掛け金が並べてある。ここで終わらせる訳にはいかない」
 「了解。これは面白いことになりますよ」
 企業工作員は、ヤル気満々だった。腕の良い漁師のような微笑を浮かべた。魚が餌に食いついた感覚である。
 「絶対にな。金もかかるがね」
 「それはそうです。楽しいことには金がかかります」
 企業工作員は顔を輝かせて答えた。悪徳不動産営業は肩をすくめた。支払いをするのは企業工作員ではない。
 
 それから後、東急不動産だまし売り裁判原告はインターネット上で事実無根の誹謗中傷を受けた。そこでは裁判では東急不動産が勝訴した(実際は東急不動産が敗訴した)、住宅ローンの返済に窮したなどと書かれていた。企業工作員の陰湿な攻撃である。
 プランナーはインターネットプランナーの仕事でも東急不動産だまし売り裁判原告を助けた。これこそがプランナーの腕の見せ所である。プランナーは東急不動産だまし売り裁判原告に説明した。
 「東急不動産だまし売り裁判原告へのネット中傷が悪徳不動産業者のせいならば、企業工作員を叩いても一時的な解決にしかなりません」
 「トカゲの尻尾切りにしかならない、ということですね」
 「ええ。悪徳不動産業者のことだから、きっとまた、東急不動産だまし売り裁判原告を困らせる別の方法を考える筈です。東急不動産だまし売り裁判原告が悪徳不動産業者への告発を止めない限り、企業工作員が次々と沸いてくるでしょう」
 「同感です。ネット中傷の背後には悪徳不動産業者がいると思います。証拠はないが。悪徳不動産業者の無数の嫌がらせに振り回されていると、そのうち別の方面から真の脅威が迫った時に対応する能力を失ってしまいます」
 「まさに古典的なゲリラ戦法です」
 「何か直接、悪徳不動産業者を捕まえる方法はないものでしょうか」
 「それをやると違法行為になります。でも、ギャフンと言わせることはできます。私に任せてください」
 プランナーの計画を聞くと、大きくニタリと顔をほころばせた。
 「そういつは痛快だ。あなたが味方で良かった。敵に回すと怖い人です」
 「君は私の親友だよ」
 プランナーはにこやかに微笑んだ。それからプランナーは中傷内容の中に東急関係者しか知り得ない事実が含まれていることを突き止めた。企業工作員は愚かにもプランナーの挑発に乗って、東急不動産だまし売り裁判原告が三井住友銀行深川支店から住宅ローンを借り入れたと書いてしまったのである。
 東急不動産だまし売り裁判原告は東急リバブルの提携ローンで住宅ローンを借り入れていた。従って、住宅ローンの借入支店名は東急不動産だまし売り裁判原告と銀行と東急側しか知らない事実である。東急不動産だまし売り裁判原告を中傷する企業工作員の背後に誰が存在するかは一目瞭然になった。
 
 東急不動産だまし売り裁判原告は、やられっぱなしで終わる人間ではなかった。プランナーは東急不動産だまし売り裁判原告に書籍の執筆を勧めた。それがきっかけの一つになって東急不動産だまし売り裁判原告は裁判闘争を描いたノンフィクション『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』を出版した。
 東急不動産だまし売り裁判原告は『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』の出版記念オフ会を開催した。東急不動産だまし売り裁判原告が冷えたワインを注いで回った。プランナーが姿を見せると歓声が上がった。東急不動産だまし売り裁判原告はワインを注いだグラスを渡した。
 「スピーチだ。スピーチをしてくれ」
 東急不動産だまし売り裁判原告が叫ぶと、出席者も「スピーチ、スピーチ」と声を合わせた。プランナーは椅子の上に乗って片手を上げた。ようやく騒ぎが収まった。
 「スピーチは短く切り上げるつもりだ。あまり言うことはない。スピーチを聞くよりも飲む方が好きな筈だ」
 またしても歓声が上がった。
 「悪徳不動産業者の妨害もありましたが、今、成功の瞬間が訪れました。東急不動産だまし売り裁判のオーダーは圧倒されるほどの数です。東急不動産だまし売り裁判原告の正しさが証明されようとしています。
 東急リバブル・東急不動産の新築マンションだまし売りは事実です。これにケチをつける者がいれば相手が誰であろうと、どのような巨大企業であろうと、戦うつもりです。乾杯!」
 プランナーはワインを飲み干し、大声で笑った。今振り返ってみると、実にいい仕事をした。
 
 フィットネス・ルームでプランナーがトレーニングに熱中していると、呼び出し音が鳴った。一瞬、プランナーは呼び出しを無視してトレーニングを続けたいと思った。ここ数日は東急不動産だまし売り裁判原告に対する企業工作員への反撃で忙しく、いつもの運動メニューを消化していなかった。
 訪問者は二人の悪徳不動産営業であった。嫌らしい方が上司で、醜い方が部下である。上司は座って神経質に指を鳴らし、部下は檻に入れられた猛獣のようにイライラと部屋の中を歩き回っている。プランナーがキビキビとした足取りで入っていくと、二人は険悪な顔で振り向いた。
 「ようこそ、お待たせして申し訳ありません。私の仕事ではパソコンに向かうだけと思われがちですが、いつも身体の調子を整えておかなければなりません。このところ運動の時間が取れませんでしたので、トレーニング中でした。ご用件は何でしょう」
 「お節介を焼く時間だけは、たっぷりとあるようですな」
 部下は険しい口調だった。
 「何をお節介と呼ぶかによります」
 プランナーは、可能な限り穏やかな口調を心掛けた。
 「これだけはハッキリさせておきましょう。私は御社の従業員ではありません。だから御社の指図で動くわけではありません。私はネット市民感情と同じように、現場の営業の意見を無視するほど愚かではありません。建設的な意見ならば営業の意見にも耳を傾けます。しかし、今まで聞かされた言葉は非難と脅迫ばかりでした」
 「どういう意味です。不愉快な言い方ですな」
 部下がムッとする。上司は片手を挙げて部下を制した。
 「君が自分で仕向けているのだろう。まあ、君の根性は認めよう。だが、我々の仲間に入れてもらえるなどとは思わないことだな。君は雑魚に過ぎない。自分で分かっているかは知らないが」
 「私への脅迫は止めることをお奨めします。効果がないことは、お分かりの筈です」
 「前のラウンドは君の勝ちだった。だが、見ているがいい。最後に笑うのは我々だぞ。失礼する」
 悪徳不動産営業は足を踏み鳴らしながら出ていき、入口のドアをパタンと閉めた。
 
 プランナーがファーストフードの店内でノートパソコンを開いて仕事をしていると、趣味の悪いスーツを着た男が近付いてきた。プランナーは他人の服装に関心がない。それでも彼のスーツが酷い代物であることは分かった。安っぽくて体型に合っていない。おまけにデザインも野暮ったい。
 「すみませんが」
 男性が声をかけたため、プランナーが顔を上げた。男の顔立ちは平凡で、流行おくれの黒いサングラスをかけていた。髪や無精髭は手入れされた形跡がなかった。男はプランナーの耳元に顔を寄せ、低い声で居丈高に警告した。
 「お前が悪徳不動産業者を調べていることは分かっている」
 それで男が悪徳不動産業者に新たに雇われた企業工作員であることが分かった。
 「あら、さようですか」
 不意を突かれてもプランナーの声に動揺は見られなかった。
 「とぼけるな。これ見よがしに調査していただろう。何が目的だ」
 「嗅覚が鋭いのも善し悪しでね。悪臭には過敏になる。悪徳不動産業者のしていることは臭い臭い。腐った金の臭いだからね」
 プランナーは形の良い鼻を、ワザとらしくつまんで眉をしかめて啖呵を切った。
 「悪徳不動産業者には酸素を吸う資格も二酸化炭素を吐き出す権利もない。歩く廃棄物だ。手足の生えた粗大ゴミだ。地球環境を汚染するメタボ菌だ」
 企業工作員は窓枠に手を置き、しばらく外を眺めた。やがて、振り向きもせずに言った。
 「あいにく俺の仕事は、その悪徳不動産業者のビジネスを円滑に進めることだ。自然の流れに任せるよう忠告する」
 「また、東急不動産だまし売り裁判原告を見くびるような真似をするつもり?もう忘れたのか?嘘デタラメのネット工作でも恥をかかされたのを」
 「忘れてはいないさ。そもそも記憶力が良くなければ、この世界では生きていけない。悪徳不動産業者が存在し続けることができたのも、そのお蔭だ。」
 「東急不動産だまし売り裁判では、東急リバブル東急不動産が圧倒的に有利な立場にあった。それなのに、東急不動産だまし売り裁判原告は立場を逆転させた。東急不動産にとっては、むしろ運が良かった。だまし売りしたマンションの売買代金を返すだけで済んだのだから。でも新たに東急不動産だまし売り裁判原告を攻撃したら、会社が存続できなくなるかもよ。身近でトラブルが起これば、すぐに東急不動産だまし売り裁判原告は黒幕の正体を嗅ぎ付ける。そして東急不動産だまし売り裁判原告は悪徳不動産業者が見舞うパンチよりも、はるかに強烈なパンチを返してくる男だ。」
 「望むところさ」
 企業工作員も負けずに言ったが、懐柔策を採ることになる。
 
 雑居ビルの地下にあるバーはプランナーの行きつけの店であった。ここはプランナーの社交場であり、情報収集の場所であった。飲み物をすすり、ゲームを楽しみ、ダーツで遊ぶ。この店は一見客を締め出してはいない。しかし、バーの雰囲気を決めているのは明らかに業界の人間達であった。
 それにしても今夜の店内は特に賑やかであった。幾つかのグループが店内のあちこちに固まっていた。一つのテーブルではチェスの真剣勝負の最中であった。別のテーブルではプランナーが企業工作員の愚かな失敗を話しまくっていた。
 「御機嫌よう、諸君。お仲間に入って宜しいかな」
 企業工作員が割り込んできた。先日とは異なり、にこやかな笑顔である。しかし、懐柔策に乗せられるプランナーではなかった。プランナーの口調はそっけなかった。
 「入るなと言っても入るんだろう」
 「おお、これはユーモアだな」
 この言葉の含意が何であれ、プランナーの機嫌を取り結ぶ役には立たなかった。企業工作員は近くのテーブルから空いた椅子を引っ張ってきて、プランナーの隣は座った。テーブルにいた全員は企業工作員に冷ややかな目を向けた。
 「諸君は、こうやって夜を過ごされるのか」
 企業工作員は皆の顔を見回している。
 「そんなこと、誰が知りたいって言うんだよ」
 これ以上、話しかけられては迷惑という口調であった。
 「これは失礼、まだ自己紹介していなかったかな」
 「あなたが誰かは皆知っているよ。どういう目的で来たかもね」
 ツララが落ちてきそうな冷ややかな口調であった。
 「素晴らしい。私に同情してくれる訳ですな。これは是非とも諸君に一杯ずつ奢らなくてはならん」
 企業工作員はピシャリとテーブルを叩いた。あからさまな悪意や嫌味を受け流せるところを見ると、外見とは裏腹に場数は踏んでいるようである。つまり、単なる跳ね返りではないということである。それだけ危険な存在に違いない。
 「何も飲みなくない」
 「俺もだ」
 しらっとした顔で答えた。プランナーのグラスは空であった。誰かに奢ると言われてプランナーが断ることはメッタにない。しかし、そのテーブルにいた全員が申し出を断った。
 「考えてみれば、今日は十分に交流したから、今夜はこれで切り上げる」
 意味深長な目でチラッと企業工作員を見ながらプランナーは言った。その発言に呼応して一人また一人と次々に理由をつけて出て行った。企業工作員だけが一人残された。
 懐柔が通じなかったプランナーに攻撃の矛先が向かうことになった。それも最も短絡的な攻撃であった。即ち、暴力である。法治国家において、あからさまな暴力は最も愚かな手段である。言論では勝負できないために暴力に訴えた。つまり、自分の知性は、その程度しかないと世間に証明することになる。そのために最近では暴力団でもスマートになっている。
 しかし、現代社会には救いようもない体力バカが存在する。この体力バカを少し焚き付ければ、背後関係を悟られずに攻撃することが可能であった。「体力バカなんか、俺の人生に関係ない」と考えて生きることと、その姿勢にこだわって生命と安全を犠牲にすることは別物であった。
 
襲撃事件
 4月8日の襲撃事件を前にして、様々な事件が起こった。最初にクライアントであった元警察官との関係悪化である。元警察官は警察官を退職後にマンガ原作や文筆活動、タレント活動をしていた人物である。プランナーはウェブサイトの作成、メールマガジンの発行などプロデュース活動を行っていた。
 元警察官が芸能プロダクションとのマネジメント契約を終了した後はマネジメント活動も手助けした。元警察官のトークイベントをセッティングし、プランナー自身が司会を行った。元警察官のストーカー的なファンからトークイベントへ妨害予告が送られた際は身元を割り出して当人に警告することで、イベントを無事終了させた。
 また、プランナーは元警察官が主催する空手道場の経営面のコンサルティングも行った。プランナーは空手家ではない。しかし、プランナーの広範囲にわたる知識は多くの空手指導員を魅了した。プランナーが意見を述べることはめったになかったが、ひとたびプランナーが発言すると、誰もが熱心に耳を傾けた。
 このようにプランナーはプロフェッショナルに徹して様々な仕事を遂行したが、次第に元警察官との間に溝が広がっていった。体育会系で猪突猛進型の元警察官がプランナーの忠告を無視し、トラブルを増やしていった。愚か者は自分の武器で怪我をする。トラブルの後始末もプランナーの仕事であった。
 「これ以上、元警察官が余計な心配をさせなければいいのだが・・・・・・」と思っていた矢先に元警察官の金払いが悪くなった。クレジットカードで購入した食品などを現物支給と称して提供することもあった。それを元警察官は悪びれるどころか、反対にプランナーへの攻撃を開始した。
 自分のブログを開設して、プランナーの実名こそ挙げないものの、関係者ならば分かる形で「ホームレス臭がする」「風呂に入っていない」と便所の落書きレベルの悪口を書き連ねた。そのレベルの低さにプランナーは唖然とした。それをブログに書く神経にも唖然とした。タレントにとってブログはファンにアピールする媒体である。レベルの低い悪口を書き連ねることはタレントのパブリシティに致命的である。たとえ正当な言い分があったとしてもブログで汚い言葉を使うことは何の役にも立たない。
 さすがに恥ずかしいと自覚したのか、自分の仕事に支障が出ると周囲に忠告されたのか、ブログの更新は数ヶ月で停止した。ウンザリしたプランナーは彼らからキッパリと縁を切るつもりであった。
 その頃、プランナーは新しいビジネスに取り組んでいた。学生時代から居住していた池袋から足立区に拠点を移し、地域密着型の社会起業を展開していた。ここでは厄介ごとに煩わされることもないだろうとプランナーは確信していた。しかし、プランナーは甘かった。どうしようもない楽天主義を何とかしなければならない。新たに勃発したトラブルは家賃トラブルであった。
 プランナーは一軒家を賃貸し、住宅兼倉庫にしていた。大家は資産家の母娘である。母親の方がプランナーに家賃の値上げを要求してきた。これに対してプランナーは物件がガソリンスタンドに隣接していることや、雨漏りするような古家であることなどを説明し、現在の家賃金額が妥当であると主張した。母親は激高して契約解除を叫んだが、娘は現状の家賃で了承しており、そのままの家賃を払っていた。
 元警察官とのトラブルも大家の母親との家賃トラブルもプランナーは気にしていなかった。両方とも相手側が勝手に叫んでいるだけである。ところが、結びつく筈のない両者が結びつき、プランナーに襲い掛かってきた。それは夜9時頃、スーパーマーケットからの買い物帰りであった。下町の夜は早い。この時間帯でも通りは静まり返っていた。特に小学校脇の道路は静かであった。夜中の小学校は人がいないためである。
 自転車で帰宅する途中のプランナーの前に突然、人影が現れ、立ち塞がった。プランナーは急ブレーキをかけた。
 「誰だ?」
 「名前を言うほど間抜けじゃないさ」
 男はプランナーに近付いてきた。
 「俺のことは知らない方がいい」
 プランナーは自転車を急発進して逃げ出そうとしたが、横から「死ね」との声がして、プランナーは自転車ごと突き飛ばされた。襲ってきた男に馬乗りになられたプランナーはウッと息を漏らした。
 「どうしてそう急ぐんだ。兄さん?」
 馬乗りになった男がささやいた。
 「話はまだ終わってないぜ」
 プランナーは馬乗りになった男が元警察官であると気付いた。元警察官が自宅付近でプランナーを待ち伏せしていたことに驚いた。関係悪化以来、連絡を絶っており、足立区に引っ越したことも伝えていなかったためである。元警察官に気付いたところから芋づる式に、最初の男が誰かも分かった。元警察官の家に出入りしていた元編集者である。
 元編集者は新進気鋭のマンガ出版社で編集していたが、退職した人物である。直接会話したことはないが、元警察官をマネジメントしていた関係で彼の存在は認識していた。元編集者は元警察官が原作したマンガ作品のパチンコ商品化の企画を持ち込んでいた。パチンコ業界では若年層を取り込むために、「北斗の拳」や「サクラ大戦」などのキャラクター台が増加している。元編集者は元警察官の原作マンガで柳の下のドジョウを狙っていた。
 元警察官と元編集者が一緒になって待ち伏せしていたことで、元警察官が病的なまでにプランナーを攻撃した裏の背景にも思い至った。元編集者はパチンコ商品化を自分の思い通りに企画を進める上でも、元編集者の取り分を増やす上でも、版権関係に詳しいプランナーが邪魔であった。そのために元警察官にプランナーの悪口を吹き込み、それを真に受けた元警察官がプランナーを攻撃したというカラクリである。
 二人は同じ目をしていた。犯罪者の目である。両手を腰に置き、まるで家畜を品定めでもするように片頬に薄く笑みをのぞかせた。彼らの顔を表現する言葉には「肉食獣」しか思い浮かばなかった。非常に怖かった。プランナーは指先が冷たくなり、ゆっくりと溶ける雪みたいに冷え冷えとした悪寒が全身に広がり始めていた。
 起き上がったプランナーに元警察官は「現行犯逮捕だ」と叫び、腹を突いた。プランナーは後退りしながらも何とかバランスを保った。しかし、外側に回りこんだ元編集者が足を引っ掛け、プランナーはバッタリと仰向けに倒れた。それからは二人で殴る蹴るの暴行を続けた。まるで漫画の世界の暴力刑事であった。現実の法治国家で許される行動ではない。自分が正義の刑事であるとの思い込みから暴走する典型的な事件である。
 最初の攻撃で自転車は倒れ、カゴに入れられていた買い物袋からプランナーがスーパーで購入した食品類が路上に散乱した。一人がプランナーに暴行している間に、別に一人が食品類を踏み潰していった。暴行の痛みに加えて、プランナーの物を徹底的に破壊し、その後片付けをさせることで惨めな気持ちを味あわせるためである。第二次世界大戦中に日本軍兵士が占領地に好んで行った破壊行為と同じである。
 二人がプランナーの自宅のそばで待ち伏せできた理由は、二人が暴行中に口々に叫んだ暴言「家賃を払え」「払えないなら出て行け」によって氷解した。大家の母親は、どこからか元警察官がプランナーに敵意を抱いているとの情報を仕入れ、元警察官に連絡してプランナーを襲撃させたのである。
 近年大きな社会問題になっている追い出し屋は家賃保証会社と悪徳弁護士がタッグを組み、システマチックに行われている。これに比べると、プランナーへの暴力は大家がチンピラを雇って、気に食わない店子を追い出すという古典的な追い出し屋の手口である。プランナーは人情味あふれる下町の雰囲気を気に入っているが、借家権を理解せず、「大家に逆らう店子はけしからん」で暴力に突き進む保守的な発想には閉口する。
 それは元警察官らも同じである。家賃の金額を巡るトラブルは当事者同士で話し合い、それでまとまらなければ調停などによって解決する問題である。やはり「大家に逆らう店子はけしからん」という前近代的な価値観に毒されている。
 元警察官は「供託なんか関係ないんじゃー」と叫び、プランナーを蹴りつけた。無知とは恐ろしいものである。賃貸の法律を少しでも知っていれば不可能な発言である。このような人物が警官であったということが信じ難い。これだから単細胞の体力バカは困る。本気で体力バカは使えない。現代社会で味方に不要な存在である。
 元警察官と編集者のしていることは民事介入暴力である。プランナーは一方的にリンチを受けながらも、彼らの行動の犯罪性を訴えた。彼らの暴力の理由が理不尽なものであることが分かり、プランナーは自信を回復し、激しい怒りに駆られた。心臓の鼓動に合わせて、血が体内を駆け巡るのが分かるほどであった。プランナーの反応が替わったことに二人は一瞬驚愕し、一歩後退した。しかし、すぐ我に返り、薄笑いを漏らす。憎悪を込めた醜い笑みである。
 すぐに主張を変えてきた。元編集者は「この自転車はお前のではない」と言って、プランナーを自転車泥棒と決め付けた。その声は苛立ちと緊張をはらんでいた。日本語を理解できない人が聞いたならば、遂に核戦争が勃発し、報復用核ミサイルの発射ボタンに手をかけているところであると勘違いしたかもしれない。
 その後も二人はパトカーが来るまでプランナーのリンチを続けた。パトカーが来ると、警察官に「あいつは犯罪者だ」と言い捨てて逃げ出した。プランナーが警察官に事情を説明すると、「まさかあの元警察官としてメディアに出ている人が」と呆然としていた。警察署の隣の病院に行き、全治二週間と診断を受ける。空手有段者から不意討ちを食らっても、致命傷を免れたのは見事な反射神経と普段からの鍛錬の賜物である。
 プランナーの居住地は下町で、昔ながらのコミュニティーが残っている地域である。プランナーは日頃から近所付き合いをしており、襲撃事件を見ていたという住民も出てきた。その時は事情が理解できず、警察も来たので解決したと思っていたが、「これはおかしい」「気持ち悪すぎる」という話になった。
 しかし、襲撃者には反省の姿勢が見られなかった。プランナーの負傷を「自分で転んで怪我したもの」と言い訳する。取調べ中に暴力を振るい、容疑者を負傷させた警察官の言い訳と同レベルである。しかし、元警察官は権力組織に守られた現職警察官ではない。タレント活動もしている有名人が相手の自宅近くまで出張していき、相手が負傷しているという事実だけでスキャンダルである。プランナーはマスメディアの取材も受けることになった。
 襲撃者は言い訳だけでなく、プランナーへの攻撃を止めなかった。再度の襲撃やトークイベントでのネット生中継を予告する始末である。実家にもファックスや電話で突撃して喜んでいる単細胞の暴力バカである。親にも知恵があるため、全て情報を送ってくれることになった。ファックスの文面からは尊大さと低俗さが感じられ、不快感を覚えずにはいられなかった。
 そして元警察官と元編集者は、あらゆるルートを使ってプランナーの人間関係を荒らしてきた。ところが、事件の本質は知れ渡っている。元警察官と元編集者だけが自動車窃盗、賃貸不動産の不法占拠と叫んでいる。元警察官は法律を知らないために自称専門家の下編集者に頼る。それを元編集者が利用しつくしている状態である。
 そこでプランナーはエースの登場を依頼した。エースとは右翼の大物で、元警察官の大学の先輩に当たる。プランナーはエースに情報を全て渡して「ご自由にどうぞ」と言った。エースは動くべきと思ったら、すぐに面会を取り付け、議論で交渉を終わらせるスーパータフネゴシエイターである。
 後で振り返っても襲撃事件には気持ち悪さを禁じ得ない。元編集者がプランナーを排斥しようとした動機は理解できる。元編集者に悪口を吹き込まれた元警察官がプランナーに反感を抱いていたことも理解できる。彼らが正しいとは思わないが、彼らが腹を立てたことは理解できる。
 しかし、プランナーの自宅近くまで出張してリンチすることは常軌を逸している。元警察官自身が「なぜ襲撃しようと思ったのか、実は自分でもはっきりは分からない。ドラスチックな事件が起きる現場にいたいという欲求があっただけである」と述べている。
 また、大家の母親が家賃値上げに了承しないプランナーに腹を立てていたことも、その当否は別として理解はできる。しかし、元警察官と連絡をとり、リンチの手引きをすることは、やはり常軌を逸している。元警察官や元編集者にしても、大家の母親にしても、プランナーに腹を立てることとリンチには飛躍がある。そこには悪徳不動産業者の暗躍が見え隠れする。表面的には悪徳不動産業者とは全然関係ないトラブルで潰すこともできるという悪徳不動産業者からのメッセージであった。

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