欠損金の繰越控除

 青色申告の承認申請書(詳しくは、こちらのページまで)を提出しますと、確定申告書を提出した法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度に生じた欠損金額は、その事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入(繰越控除)されます(法法57)。
 

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

 青色申告の特典である「赤字(欠損金)の7年繰越」のメリットは大きいです。赤字(欠損金)が出ても、その赤字を7年間繰り越せるという制度です。例えば設立初年度において赤字が500万円生じたとします。翌期は業績をもち直して黒字(所得)が300万円出ても、繰り越された赤字500万円のうち300万円と相殺できるため、納税をする必要がありません。また、残りの赤字200万円は、さらに繰り越すことができます。翌々期に黒字が300万円出た場合、繰り越された赤字200万円と相殺できるため、差し引き100万円に対してだけ税金がかかるのです。このように、赤字(欠損金)の繰越ができることは、税金の面で大きいです。そのため、「青色申告の承認申請書」は忘れずに提出しましょう。
 

 

繰越控除ができる法人

 欠損金の繰越控除ができる法人は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人です。
 欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度について提出した確定申告書が白色申告書であっても、この繰越控除の規定が適用されます。
 

繰越控除される欠損金額

 控除される欠損金額は、各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額で、「欠損金の繰戻しによる還付」の規定(法法80)により還付を受けるべき金額の計算の基礎とされた部分以外の金額で、かつ、その欠損金額の生じた事業年度から繰越控除の適用を受ける事業年度の前の各事業年度の所得の金額の計算上、この「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」の規定により損金の額に算入された部分以外の金額です。
 また、繰越控除する欠損金額は、その事業年度の所得金額を限度とします。
 例えば、繰越欠損金の額が500万円で、その事業年度の所得金額が300万円の場合には、500万円のうち300万円が繰越控除されて損金の額に算入されます。
 

損金算入の順序

 繰越欠損金がその事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度のうち2以上の事業年度において生じている場合には、最も古い事業年度において生じたものから順次損金算入をします(法基通12−1−1)。
 

デメリット

 平成16年度税制改正により青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間が7年(以前は5年)とされたことに伴い、平成13年4月1日以後に開始した事業年度においては、従来保存期間が5年間とされていた帳簿書類については7年間に延長されました(法規59)。
 また、法人税の更正の期間制限については、欠損金額に係る更正の期間制限を5年から7年に、脱税以外の場合の過少申告に係る更正の期間制限も3年から5年(脱税分に係る期間制限は7年)へと延長されることになったのです(通法70)。つまり、税務調査で過少申告加算税などを追徴課税される期間が長くなったということです。
 税制改正により、欠損金の繰越期間の延長とセットで、帳簿書類の保存期間と更正の期間制限も延長されることになったのです。
 
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