父親に強姦?
この話は転勤してきて直ぐ6年生を担任した時の失敗談です。
2学期のある日、C子の顔に打たれた痕があるのです。理由を聞いても黙っています。それから数日経ってから、C子の近所のお母さんが私のところに来られて、
「C子のお父さんは酒乱で、酔えば娘に性的関係を迫るのです。言うことを聞かなければ暴力を振るって強姦しているのです。お風呂でC子の体を見ると処女でないことが分かりますし、お尻にあざがついているので、後ろから攻められていることが分かるのです。先生、C子ちゃんを救ってやって下さい!」
と悲痛な気持ちで支援を求めにきたのです。
実は、C子の母親は数年前に入水自殺を図っているのです。父と兄とC子の三人暮らしで、父親は酔うと、わけの分からないことを口走りながら、刃物を振り回すということも近所のお母さんから聞いていたのです。
私は、父親の会社に帰宅時間を聞き、早速、家庭訪問をしました。驚いたことに、父親は静かな物腰でいつも娘がお世話になっていると感謝の気持ちを述べました。温和でまるで仏様のような人柄でしたので、この父親が娘を強姦しているとは思うことができませんでした。
まだ、30代前半の私は、事実関係を聞き出す勇気がなかったのです。
帰りがけ、父親が「娘がお世話になっているので、一度先生のお宅にお礼に伺いたいので住所を教えて欲しい」とのことでしたが、もし酔って来られたら大変なことになると思い、「その気持ちだけをいただきますので、我が家に来られなくても結構です」と慌てて応えました。
C子の顔には時々手の痕がついていることがありましたが、理由を聞き出すことはできませんでした。3学期に入ってからは風邪と言って休むこともありました。時には、青い顔をして月経痛を訴え保健室で休養をとることもありました。
私は、いつもC子のことが気になっていましたが、月経があるので妊娠していないことが分かり、少し安心していました。
5月に入って、C子が進学した中学校の養護教諭から電話です。
「C子を児童養護施設に入所させました。C子は兄の友達数人から頻繁に強姦されていたのです。貴方は担任として、一体何をしていたのですか」とのお叱りの言葉。
恥ずかしい話ですが、私はその時はじめて児童養護施設という存在を知りました。勤務校の生徒指導主任や学年主任も認識していませんでした。
私はC子に申し訳ないと思いながら、児童養護施設について調べてみました。
児童養護施設とは、児童福祉法第41条に規定されており、乳児を除いて、保護者のない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて自立を支援することを目的とする施設だったのです。
もし私が、事前にそのような知識を持ち合わせ児童相談所と連携を図っていれば、もっと早くC子の苦痛を和らげることができたわけですし、私自身も不安な日々を送る必要もなかったわけです。
今思うと、当時(昭和46年)は本当に未熟だったわけです。
《いつもクリックで背中を押して下さり恐縮です!》
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コメント
インターネット上でこのようなお話、ありがとうございます。
性的虐待は、本人の羞恥心や社会的差別を受けることより当事者から語られることはまれです。周りが気づいてあげられなければ問題は長期化します。これは自己責任を問えるものではありません。
さらに、「発達を歪める」という視点が必要で、親からの強姦でさえ多大な影響を与えるのに、「発達を保障し、促す」教育者が早期に発見できなければ、発達の歪みは深刻化します。
教育は、知識を教授すれば、社会化を促せば、よいのではないのです。「発育発達する者を対象」にしていることに深く考えを及ぼすこと、学習面や社会化の面でしか捉えられない教員はもっと「考え」なければならないと思います。
臨時的任用の養護教諭でした。
投稿: み | 2010年2月 3日 (水) 20時19分
ごめんなさい。もう1つ発言したいことが出てきました。本題とは離れますが、ごめんなさい。
教員資格を取得する上で必要な「教育心理学」で学んだことです。
現実の学校教育で行われている教育は、一斉学習、発見学習や学習理論など組み合わせたものですが、子どもたちの未知の可能性に焦点を当て、教育が行われているのは事実のことです。ただ、私には、子どもたちの、ヴィゴツキーの考え方における「発達の最近接領域」を考慮した学習を行っているか、疑問です。
教員の多忙化が叫ばれています。その世界の別の世界で、サービス業となり、命をかけて命のために働く人々がいます。
私は矛盾を抱え、教育界にいます。
投稿: み | 2010年2月 3日 (水) 22時28分
ご指摘ありがとうございます。
いずれにしても苦悩の多い教育現場です。
「未熟でした。ごめんなさい!」で済まされないところに教育の難しさがあるのです。
矛盾を抱え、教育の限界を知りつつクリアしようと努力する姿だけは評価してあげたいですよね!
投稿: appochan | 2010年2月 4日 (木) 11時24分