マツダ工場暴走事件で、殺人未遂などの疑いで逮捕された同社の元期間社員引寺(ひきじ)利明容疑者(42)=広島市安佐南区上安2丁目=が、事件の約1カ月半前の5月上旬、知人に「殺したいやつがいる」と話していたことが24日、分かった。広島県警の捜査本部も同様の事実を把握。引寺容疑者がこの時期に何らかの理由で殺意を抱き、工場内での犯行につながった疑いがあるとみて経緯や動機の解明を急ぐ。
知人によると、引寺容疑者は5月上旬に相談に訪れ、「実は殺したいやつがいる。本当に殺してしまいそうだ」と話したという。
また、引寺容疑者がマツダ勤務時の4月上旬、県警にも相談していたことが捜査関係者への取材で分かった。「誰かが自宅に侵入し、物を動かしている」「盗聴器が仕掛けられている」などと申告。警察官が容疑者宅まで出向いたが、被害を確認できなかったという。
知人によると、引寺容疑者は事件前日の21日に再び相談に訪れた。マツダ勤務時の人間関係をめぐる悩みと併せ、県警への相談内容も打ち明けた上、「誰が嫌がらせをしているのか分からない」「秋葉原(連続殺傷事件)のように車で集団に突っ込んでやろうか」と話したという。
捜査本部は、引寺容疑者が次第に被害感情を募らせる中、当初は一部の個人への強い恨みが、不特定多数の社員を次々と車で死傷させる計画にエスカレートしていった可能性があるとみて、心理状況の変化に注目している。
捜査本部によると、引寺容疑者は調べに対し、「大変なことをした」と供述しているという。引寺容疑者が事件前日に広島市内の量販店で、事件当時に所持していた包丁を購入していたことも判明した。
捜査本部は24日、新たにマツダ社員男性(22)が被害に遭っていたと発表。本社地区(広島県府中町)の歩道で、左肩にかけていたバッグを車にひっかけられ、軽傷を負った。はねた現場は計8カ所となった。同日、犯行に使ったとみられる車を広島南署で検証した。
【写真説明】引寺容疑者が犯行に使ったとされる乗用車を調べる広島県警の捜査員(24日午前9時25分、広島市南区の広島南署)
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