2010-06-26
はてなの起業と成長を通じて学んだこと
京都大学VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)の授業「新産業創成論」で「はてなの起業と成長を通じて学んだこと」という話をしてきました。週替わりでいろんな会社の社長が来て話す授業で、先週はDeNAの南場さんが話されたそうです。
今回工学部の学生さんが結構いらっしゃると聞いていて、僕自身理学部出身なので「京大の理系学部を出たベンチャー志望の青年に対してアドバイスを」というイメージで話しました。もっと言うと、「起業した25歳当時の自分に今会ったらどんなことをアドバイスするか」ということをイメージしました。
まず、前提として「ベンチャー」という言葉の定義から始めました(会場で聞いてみたら「お金が無い」という意見もあっておもしろかったです)。定義は人によって違うと思いますが、僕はベンチャーを「急成長を志向する中小企業」と考えています。あえてベンチャーと言うからには当然ある程度の成長スピードを目指しているわけで、既存のカテゴリーのビジネスを小規模でやるだけではベンチャーでない、それは普通の中小企業であると考えています。
で、そうしてベンチャーを作った理学部出身の近藤青年に今会ったら「これが必要」と教えたい事として「マネジメントの重要性」を挙げました。
マネジメントについては、本当に教科書に書いてあるようなことですし、なんだそんなことか、と思われるかもしれませんが、自分自身を振り返るとはてなをやってきた9年間は、マネジメントを学ぶ9年間でもあったと感じています。
気の合う仲間10人くらいでやっていくならマネジメントはそんなに要りません。でも会社の規模を大きくして業績も伸ばしていこうと思ったときには、当たり前だけどマネジメントが必要になります。
そもそもベンチャーを目指す人には「大企業のタテ社会みたいなものに入りたくない」って気持ちもあると思うのですが、やっていくうちに、やっぱりマネジメントは必要だなあって思う時期が来るものです。その時までにマネジメントを専門分野としてしっかり身につけておくか、専門の人とやるかしないと、一定の規模は超えられません。僕たちはてなの経営もまだ完成していないのですが、そういうことを日々実感しています。
正直なところ「上司から指示されて仕事するのやだなあ」とか「根回しするような社会なんてやだなあ」とかすごく思うわけですが(笑)、でもやっぱり人間の行動には一定の法則がある。その人間どうしで組織を作っていくためにどうすべきかという方法には必然性があるんだなあと思います。はてなの起業から今までを振り返ってみると“本当にユニークな自分たちなりの価値を出すべき部分”と“ある程度標準的な方法を取り入れるべき部分”とを見極めてきた9年間だったなあと思います。
起業当初僕の中では「ありとあらゆるものを自分で工夫を凝らして、自分たちのやり方でやりたい」みたいなイメージがありました。でも、必ずしも全てに工夫を凝らさなくてもいい部分と、自分たちでとにかく考えて考えてユニークであるべき部分は、とても差があると思うようになりました。特にマネジメントの部分は、本当に昔から、ある程度こういうふうにすべきだって疑われなくなっているような内容があります。何十年も前に出版されていまだに売れているような本に書いてあるような内容です。例えば目標を定めて、それがちゃんと達成されていることが管理されることによって人は成果をあげられる、みたいなことです。そういう内容は、人間行動学的に正しい解なのだと思います。
会社をやっていくうちにそういったことが不変の法則なのだと分かり、そんなところでユニークさを競ってもしかたがないなあと感じました。どういう目標を決めるか、どういう未来を描くか、戦略とかビジョンとか言い方はいろいろありますが、「こっちに行くんだ」ということを考えるのにはどれだけ頭を使って良いのですが、組織の動かし方については、ある程度マネジメントの教科書に書いてあるようなやり方が有効な部分が多いと思います。
さらに、戦略について僕に誤解というか途中でハッと分かったことがあります。僕は理学部出身ですが、“唯一絶対の解”があるようなイメージがありました。理学部で物理なんかをやっていると、「正解は一つ」という感覚があります。基本的に科学はそうだと思うのですが、明らかな正解があって、その正解にたどりつくにはどれだけ議論を重ねていてもいいし、ヒエラルキーなんて関係ありません。どちらかというと意見の多様性が重要で、そのなかから正しい解に辿り着くという価値観がサイエンスの分野にはある気がします。実際それが正しいかどうかというのが全てなので、間違っていることを上司面して偉そうに言ったって何の意味もありません。
だけど経営には唯一絶対の解はありません。「こっちにいくんだ」という話を決めるときに、AのサービスでもBのサービスでも成長することはできる、じゃあどっちをやるんだ、という時に、最後は「決め」の問題になります。「どっちが成長できそうか」という議論を科学的に行うことは必要ですが、最後は証明ができないような部分を直感で決めなければいけません。研究室のようなフラットでオープンな議論とはちょっと違う意思決定が経営で必要になるのは、そういう場面だと思います。
さらに、それ以上議論していてもしょうがないことを決める時に「皆がよりどころにできる方針」がやっぱり必要になります。要は、はてなはこういうことをやる会社であってこういうことをやる会社ではない、という“決め”が必要なんだなということは、いくつかのサービスがヒットして、チームが増えて、さあ次に何をしていくんだ、という議論を重ねる中で重要性が分かりました。昔、ビジョンとか言ってうさんくさいなーって思ってたんですけど、なるほどそういうことなのか、と思いました。
・・・とまあ、そういったことをお話させていただきました。
で、この講義にはオチがあって、いらっしゃった学生さんは理系の方が多いのかと思っていたら、MBAコースに在籍されているわりとビジネス経験のある人が多かったようで、マネジメントの経験は僕なんかよりも豊富な雰囲気だったので、ネットサービスの話とかをもっとしたほうがよかったかなあと思ったのですが、もう遅かったです(笑)。
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