民主党の鳩山新代表は昨日、党執行部の人事を発表しました。代表選を争った岡田氏の幹事長起用は予想されましたが、「さて、どうするんだろう」と注目していたのが、小沢一郎前代表の処遇でした。あまり重要なポストを与えると、「小沢院政」「傀儡」批判は免れませんし、どうでもいいポストをあてると小沢氏がへそを曲げて、今後の党内運営に支障が出るからです。いずれにしても、小沢氏のくびきから鳩山氏が自由になっていないことの証左とも言えますね。
ともあれ、鳩山氏としては、代表選でも全面的なバックアップも受けているし、いまさら小沢氏と明確に距離を置くわけにはいかないけれど、かといってせっかく代表になったんだから、小沢氏に好き勝手やられるのも面白くない、という難しい立場にあります。小沢氏の民主党内権力の源泉は人事と(党の)カネだったわけですから、これをいかに小沢氏のメンツを立てながら自分が握るかに頭を悩ましたことと思います。
鳩山氏は事前に、「小沢氏にも執行部に入ってもらいたい」と表明していましたが、果たしてどうする気なのかと私も考えました。党のカネと選挙を仕切る幹事長にはあてられないだろうし、党の政策責任者である政調会長なんて論外。小沢氏サイドが選挙を仕切りたがっているのは分かっていましたから、代表特別補佐兼選対委員長なんてこともあるかなあ、でも選対委員長にしてしまったら、選挙の全権を与えるようなものだしなあ…などなど。先輩記者の一人は、「法皇か上皇じゃないか?」と笑っていましたが。
で、蓋を開けてみると、小沢氏のポストは選挙担当の筆頭代表代行というものでした。まあ、無難な方でしょうね。鳩山氏は、これまでの「小沢・鳩山・菅」各氏に岡田氏を加えた「トロイカプラスワン」という表現を使っていましたが、実際はさらに輿石東参院議員会長も入れた5人による集団指導体制をとるようです。
これは、苦肉の策なのだろうと思います。今朝の産経2面には、この5人が手を重ね合う写真が掲載されていました。ある民主党議員は「これで小沢は5分の1になったからそうは暴れられない。いいんじゃないか。カネは鳩山と岡田が仕切り、菅も監視すれば小沢もそう勝手なことはできない」と権力分散を評価していました。でも、「船頭多くして船山に登る」ことを懸念する声も聞こえます。いずれにしろ、鳩山氏の舵取り、リーダーシップ発揮は難しそうだなあという印象です。
小沢氏は昨夜、新人事発表後は記者団を避け、わざわざ非常階段を使って党本部を出ました。当面は、沈黙を守る気なのかもしれません。小沢氏の側近は、「代表時代はいろいろ制約もあったが、これで選挙に専念できる」と語っていましたが…。でも、選挙担当の代表代行とは言っても、岡田氏も幹事長として選挙戦のあり方を決めたいでしょうし、別に選対委員長もいるわけです。さて、今後、この当たりの調整はどうなるのか。やっぱり小沢氏が主導権を握るのか。なんだかなあ。
随分前置きが長くなりましたが、本日はこの「5人体制」の一人である毎度おなじみの輿石氏についてです。実は輿石氏は代表選が行われた16日の午前は地元の山梨県にいて、山梨市で開催された山梨県教職員組合の定期大会に出席し、「きょうの来賓は私の選挙で前面に立ってくれた人たちばかりだ。午後には民主党新代表も決まる。(政府・与党は)教員免許更新制度などとふざけたことを言うな。PTAと手をつなぎ、自信を持って進もう」とあいさつも述べていました。
この大会は、ちょっと民主党支援集会のような雰囲気もあったそうです。その中で、注目してほしいのは、山教組の坂野修一委員長のあいさつなのです。坂野氏はこう述べました。
「教育施策は政治の場で決まる。政治を抜きに教育は語れない。子供や教職員を無用な競争へ追い込まない社会にするためには政権交代しかない」
この言葉を聞くと、どうしても輿石氏が1月の日教組の会合で言い放ったセリフを連想してしまいますね。国会でも取り上げられ、私もこのブログで紹介した以下の問題発言です。
「教育の政治的中立などと言われても、そんなものはありえない。政治から教育を変えていく。そんな勇気と自信を持ってもらいたい。私も、日教組とともに戦っていく。永遠に日教組の組合員であるという自負を持っている」
まあ、輿石氏は元山教組委員長であり、現在も山教組を「支配」している人ですから、輿石氏と坂野氏の言葉に通底するものがあっても何も不思議ではないのですが。大会では、次期衆院選に向けて山梨3選挙区で民主党公認の立候補予定者3人を支援することも確認されています。なんだかなあ。
新代表の鳩山氏も1月の日教組会合で「日教組の今日までのご活動に、敬意と感謝を申し上げる。日教組とこの国を担う覚悟だ」とあいさつしていますから、盛り上がるのも分かります。でも、輿石氏を支援した山教組の選挙活動をめぐっては、何度も書いているように刑事告発されて、幹部らが罰金刑を受けたほか、県内の教員ら数十人も処分を受けているのです。懲りないというか反省しないというか、面の皮が厚いというか…。
知人の山梨県の教員は、昨今、政治家の「世襲」が問題になっていることについて、「組合組織による地盤、看板を引き継いだ事実上の世襲もある」とメールしてきました。そういえば、公明党幹部が「うちには世襲議員は一人もいない」と威張っていましたが、これも宗教団体によって計算できる票があらかじめ積まれているわけですから、なんだかなあ。
by RAM
政府答弁書とJR総連と民主・…