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[19621] 【習作】VRMMOもの
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/26 21:41
初めてのSS執筆です。
いたらぬ点は多々あると思いますがよろしくお願いします。

・VRMMORPGもの
・デスゲームではありません
・とあるMMORPGでの経験をもとにしているので色々と影響されている部分が出てくると思います

誤字脱字はもちろん批評・酷評・突っ込みお待ちしております。

2010年6/17 初投稿
6/19 感想返しを本文最後に書くことにしました。それと全体的に微妙に改訂。ほぼ変化なし。

6/20 感想をフィードバックして4話と5話を少々修正。このフットワークの軽さはWEB小説の利点ですね。この小説は私と読者さんの合作とも言えます。どんどん突っ込みお待ちしております。

6/21 猫の世界修正・2話、5話、6話を少々修正。

6/23 8話メートル表記修正

6/26 作者メニューに板変更なんてあったのか!次回更新でオリジナル板に移動します。



[19621] 0:インタビュー
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/19 23:34
GamersONLINEインタビューより抜粋

完全に情報統制がしかれ秘密のベールに包まれたVRMMORPG『Curiosity Online』
6月1日オープンβを開始するという。
今まで秘匿されてきた情報を運営チームをまとめる山野辺徹氏に聞いてきた。

記者「本日はよろしくお願いいたします。Curiosity Online(以下CO)は6月にオープンβを開始するという話ですが現在の状況などをお聞かせください」

山野辺氏「そうですね、準備万端整ったというところですかね。実際始まってみないと分からない部分も多いのですが私たちは自信をもってこの作品を世に送り出します」

記者「ゲームに対する自信の程が伺えますね。今回オープンβということですが何か制限や未実装の部分などはあるのですか?」

山野辺氏「今回のオープンβの目的はバグの洗い出しや負荷テストなので製品版と変わらないクオリティでお届けしたいと思っています。もちろんオープンβ後も追加要素などは開発して良く予定です」

記者「なるほど、それは楽しみですね。それでは肝心のゲーム内容についてお話をお聞かせください。今までCOは情報を全く流さずにテストなどが行われてきたのですがその理由などは何かあるのですか?」

山野辺氏「それはこのゲームの根幹といいますか開発思想に基づいた対応ですね。このゲームのタイトルでもあるCuriosityは好奇心という意味なのですが、我々はこのゲームの最大の目的は好奇心を満たす事であるという考えでゲームを開発してきました。誰しもが子供の頃は好奇心の塊だったと思うんですよ。あの生き物はなんだろうとかあの場所からみる景色はどうなんだろうとかね。大人になるにつれて薄れていくそういう物を取り戻したい、開発陣一同そのためだけに頑張ってきました」

記者「好奇心ですか。それは具体的にはどのようにこのCOに反映されているんですか?」

山野辺氏「細かい物は色々とあるんですが大きな所でいくとチュートリアルといわれる物がありません」

記者「え?全くないのですか?」

山野辺氏「はい、ゲーム内どころか公式ホームページ上にも全くありません。さらにヘルプなどの機能もすべて排除してあります」

記者「それはなかなかない試みですね」

山野辺氏「ええ、これはこちらでも賛否両論で開始したらお問い合わせがすごいことになるんじゃないかって話です。まぁお問い合わせされてもゲーム上の事は何もお答えすることはないのですけどね」

記者「なるほど、しかしそれならば操作方法などはどう知ればいいんですか?」

山野辺氏「ユーザーのみなさんの楽しみをあまり奪いたくないので答えづらいのですが、基本的にはゲーム内で見聞きして知ってくださいとだけ」

記者「基本的な操作方法から自分で手探りで探す必要があるのですね。なかなか手ごわそうなゲームですね。しかしそうすると攻略サイトやWikiなどはみない方が楽しめそうですね」

山野辺氏「そこが私たちが一番頭を悩ませたところですね。Wikiなどの作成を禁止するわけにもいかないし。もしかしたら、そこが一番時間をかけた部分かもしれません」

記者「というと何か対策があるということですか?」

山野辺氏「対策会議でかなり長時間話しあったんですよ。攻略ページを作る上で何が大変なんだろうと。その結論が物量作戦ですね」

記者「物量作戦ですか?」

山野辺氏「ええ。編集する部分が10個なら簡単に攻略サイトが作れます。じゃあ100個なら?1000個なら?10000個なら?その考えのもとで力技で攻略サイトと戦うことにしました」

記者「それはクエストなどの数を増やすということでしょうか」

山野辺氏「それも含めてですね。武器や防具、スキルにクエストなどをこれでもかという位盛り込んでみました。さらにクエストには1つ攻略サイト泣かせな部分も作ったんですよ」

記者「といいますと?」

山野辺氏「我々の間ではユニーククエストと呼んでいるのですがCOには膨大な数の1度しか行われないクエストがあります。一人が行ったらもうそのクエストは発生しないので毎回手探りで行うしかないのです」

記者「なるほど、とてもやりごたえがありそうですね。私も少しワクワクしてきました」

山野辺氏「プレイヤーの皆さんの好奇心を満たせれば幸いです」

記者「わかりました、それでは本日はありがとうございました。COのオープンβに期待します」

山野辺氏「こちらこそありがとうございました」



[19621] 1:スイッチオン
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/19 23:35
『VR』いわゆるバーチャルリアリティの技術が実用化されてはや10年。
もともとこの技術は医学用に研究されていたものらしい。
初めは目の見えない人の為に直接脳に映像を送る技術から始まり嗅覚や触覚、味覚などを研究していった結果が現在の全感覚投入、いわゆるフルダイブ型VRだ。
この技術に目をつけたのは各国の軍。
フルダイブして訓練を行えば怪我がないし弾薬や設備も想いのままだ。
軍の潤沢な資金で研究開発を行った結果VR設備の大幅なコストダウンに成功しついに民間にもこの技術の恩恵がもたらされた。
初めはスポーツの練習施設や様々な研究機関で実験などに使われていたがこんないいものを日本がほおっておくはずがない。
自分も物語の世界に入り込むアニメや18歳未満はお断りな方面への使用もものすごい勢いで増えていった。
そしてその流れはもちろんゲーム業界にも訪れたわけで。




俺は電車から降りるとジョギングの速度に近いスピードで歩いていく。
周りの目が少々気になるが致し方あるまい。
現在の時刻は19時35分。
どうしても20時までには家に着かなければならないのだ。

「くっ、あのクソ課長が横槍を入れなかったら有給取って準備万端で待ち構えていたハズなのに」

なんども仮病で休んでやろうかと思ったが一応社会人の端くれ、仕事を放り出すことができなかった。
課長にハゲが進行する呪いをかけつつ歩いているうちにアパートが見えてきた。
時間は19時42分。

「オーケイ、寛大な心で七分ハゲで勘弁しておいてやろう」

玄関のドアをくぐりながら服を脱ぐ。

「飯を食う時間は…ないな」

買ってきた弁当を冷蔵庫に叩き込み部屋着に着替えた俺はVRヘッドセットの準備にかかる。
このVRヘッドセットというものは1つ5000万以上という恐ろしい値段がしたVRベッドをコストダウンして一般発売できる値段に抑えた優れものだ。
まぁそれでも基本的に20万前後はするのだが機能から考えるとお買い得な気がする。
ヘッドセットのセッティングを終え時計に目をやると19時57分。
なんとか間に合ったようだ。
今日は20時から日本初オリジナルVR対応ゲーム『CuriosityOnline』のオープンβ開始なのだ。
このCuriosityOnlineはほとんど事前情報がなく全くの未知数と言って良い物だ。
それにも関わらず、いやだからこそなのかもしれないがネットでの関心がものすごく高かった。
VRヘッドセットが20万前後するのにも関わらず注文が殺到し、どのメーカーでも入荷待ちが続くという現状だ。
オークションで転売されたものが50万近くの値がついたり、慌てて購入したらバーチャルボーイだったり。
いやバーチャルボーイはちょっと欲しいけども。
そんなことを考えていたらそろそろ開始時刻だった。
「さてさて、一体どんなゲームなのやら」
俺は顔が勝手ににやけるのを止められないままヘッドセットをかぶりベッドに横になった。
事前にCuriosityOnlineのクライアントはインストールしてあるのであとはスタートボタンを押すだけだ。
ボタンを押しプレイ中に寝返りとかうてるのかなとか考えている間に俺の意識は電子の海へと流されて行った。



[19621] 2:スタティナオンライン
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/21 23:51
気がつくと俺は綺麗な湖畔に立っていた。
湖の中央には巨大な城が見える。
周りを見渡すと林や草原もあるようだ。
生物は見える範囲にはいない。

「なるほど、これが全感覚投入というやつか」

息を大きく吸い込むと草の匂いがする。
意識しないとこれがバーチャルであることを忘れそうだ。
それにしても一体どうすればいいのだろうか。
公式のHPにはほとんど何も書いてなかった。
書いてあったのはクライアントのインストール手順とログアウトの方法くらいだ。
あそこまで何も書いてないと逆に清々しい。
俺は周りの景色を眺めながら湖へと近づいていった。
澄んでいてきれいな水だ。
魚とかいるのだろうかなどと考えながら水に手を伸ばしてみると。

「うぉ、手がない!」

手を見てみたらあるべき所には何もない。
というか体もない。
気分はまさに透明人間。
地面に生えている草をつかもうと思ったが見事なまでにすり抜ける。
なぜこんなことになっているかと思案していると目の前に突然一人の女性が立っていた。

「キュリオシティオンラインにようこそ。私の名前はスタティナと申します」

俺は突然のことにスタティナと名乗る女性を凝視することしかできなかった。
見た目は20代前半、軽くウェーブのかかった金色の髪にゆったりとした白いドレスのようなものを着ている。

「どうかなさいましたか?」

おっと見とれてしまっていたようだ。
なんとか気を取り直し返事をする。

「いっいや何でも無いです」
「そうですか、それではアカウントの作成を行いますね。まずはプレイヤーネームをお教えください」

ふむ、どうやらこのスタティナさんはNPCのようだ。
時折揺れる髪の毛や小首を傾げてこちらを見る表情が可愛らしい。
…NPCだよね?
あまりにも違和感がなさすぎて自信がなくなってくるが流石に一人ひとり対応する訳にはいかないだろう。

「えーっと、名前はイツカで。綴りはItukaでお願いします」

この名前は昔からゲームでよく使っていた名前だ。
愛着もあるしこのゲームでも使えるといいなぁ。

「かしこまりました、そのお名前が使用できるか確認しますね」

うーむ、ちょっとドキドキするな。
使えなかったらどうしようかなぁ。
流石に†とかつけるのは避けたいな。
すると他の名前ってことになるがいまいちピンと来ないし。
でもこのキャラネーム作成は変な名前をつけにくいな。
面と向かってスタティナさんに言わないといけないわけだし。
ある意味世界観をぶち壊すネーミングの抑制になっているのかな。
それにしてもやたら確認に時間がかかってる。
どうしたんだろう、イツカという名前は何かまずいのかななどと思いながらスタティナさんの方を見ると。

【LinkDead】

スタティナさんの頭上に神々しく光り輝く文字が!
あーなるほどね、回線が切断されてるのね。

「っておい!NPCがLDスンナ!!」

これは一体どうすればいいのだろうか。
というかアカウント作成NPCがLDするって結構な問題じゃないのか。
さすがオープンβ、想定外のことが起こるな。
というかなぜかリンクデッドしたスタティナさんはたったまますーすーと寝息を立てていらっしゃる。

「これ本当にLDしてるのか?」

確認しようにも俺の体は現在絶賛空気中。
とりあえず接続が復活するのを待つしか無い。
この仕様がプレイヤーにも適用されるとするとLDしたら顔に落書きとかされそうだな。
そんなことを考えながらぼーっと周りを眺めているとスタティナさんがビクっと動いた。

「ハッ!ねね寝てないですよ?」

何も言っていないのに言い訳を始める姿を見て軽く不信感を抱きつつも声を掛ける。

「えーっと、名前のチェックはどうなりました?」

すると彼女は満面の笑みを浮かべながら言った。

「はい、大丈夫です。タメゴローは使用可能です!」
「ふざけんな!バグってんのか!」

思わず大声で突っ込んでしまった。
タメゴローなんて名前一体どこから拾ってきやがったんだ。

「え、え、間違えちゃいましたか?」

オロオロしながら尋ねてくるスタティナさんはちょっと可愛いななどと思いつつもタメゴローは嫌なのでもう一度確認をお願いした。

「タメゴローじゃないです。イツカですItuka!」
「はい、かしこまりました。そのお名前が使用できるか確認しますね」

なにやらデジャビュを感じつつも待っているとスタティナさんの目がとろんとしてきた。
これはまさかまたLDするつもりじゃ。

「まった、寝るな。寝るんじゃない!」
「わたしはNPCですよぉ、ねたりしないれふぅ」
「いやヤバいって、どう見てもお休み3秒前だって!」

俺の説得も虚しくスタティナさんの頭上にはまた無常にも【LinkDead】の表示が灯る。
…俺は一体いつになればゲームを始められるんだ。





この現象はアクセスが集中してサーバー負荷が高まったのが原因だったそうだ。
掲示板ではアカウントが作成できない人々が書き込みしまくりすごい勢いでスレが消費された。
このひたすらスタティナさんが居眠りするのを見るしかなかった現象は『スタティナオンライン』と呼ばれるようになった。
一部メーカーのVRヘッドセットに付いている撮影機能によりこの模様がアップロードされキュリオシティオンラインの人気上昇に一役勝ったとか。
確かにあれは尋常じゃない可愛さだった。



[19621] 3:ゲームスタート
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/19 23:35
「はい、Itukaは登録できるお名前です。このお名前で登録してよろしいですか?」

長かった、本当にここまで長かった…
スタティナさんが居眠りすること5回にしてようやく名前の登録ができるようだ。
LDする度にタメゴローにしようとするあたり何か運営チームの作為が見える。

「はい、それで登録お願いします」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」

なにやら空を見上げて受信しているようだ。
改めて観察するとスタティナさんはかなりの美人さんだ。
そういえばVR内のキャラは3次元に含めていいのか?
それとも2次元に含まれるのだろうか。
間を取って2.5次元?
これはなかなか難しい問題になりそうだ。

「…を…てく…さい」

それにしてもスタティナさん可愛いな。

「もう一度おねがいします」

極上の笑顔を浮かべてスタティナさんがそう言ってきた。
まさか声に出てしまっていたか。
軽く赤面しつつもここで言わなきゃ男がすたるってもんだ。

「スタティナさん可愛いなって言いました」
「はい、結構です。パスワードの設定が終了しました」
「…え?」

しまったぁ、今のはパスワードの確認だったのか。
他人には絶対教えられないパスワードになってしまった。
まぁパスワードなんて他人に教えるものではないが。
軽くへこんでいる俺を不思議そうに見つめながら彼女は話を続けた。

「続きましてキャラクタークリエイトに移ります」

お、ついにキャラ作成か。
というか事前情報が全くなかったからどんな種類のキャラが作れるかわからないんだよね。

「まず初めに種族の設定をお願いします。種族をこの中からお選びください」
「うぉっ」

突然目の前にウィンドウ画面のようなものが出てきて少し驚いた。
ウィンドウを見ると男女ペアで画像が写っている。
画面をスクロールして確認する。
画像しか無いので見た目だけで判断する。

ヒューマン:見た目は完全に人間。中肉中背で特に目立った特徴は見当たらない。
エルフ:ファンタジーの王道エルフ。ほっそりとした体つきに尖った耳。やたら美形。
オーガ:大柄な体で筋肉質。見るからにパワー型と言ったところ。男はガチムチ、女は姐御って感じの見た目だ。
ドワーフ:低身長だが骨太というかがっしりしている。長いヒゲがダンディ。女性は肝っ玉母さんを地で行きそうだ。
ホビット:身長はドワーフと同じ位だがこちらは子どもっぽい見た目。というかショタ&ロリだ。これは人気が出そうな予感。
ライカンスロープ:ネコミミ!その一言に尽きる。男性は狼っぽいけど選べるのだろうか。とりあえずもふもふしたい。
リザード:まんま爬虫類。体は鱗におおわれしっぽが生えている。モンスターに間違われそうだ。

画像から得られる情報はこれくらいだな。
うーむ、非常に迷うところだ。
特にゲーム情報が無くゲーム内でのキャラクターの方向性も決めていないのでどの種族にするか決め手にかける。
おそらくどの種族にも得手不得手があるのだろう。
ライカンスロープは毛皮きてるから暑さに弱そうだし逆にリザードは爬虫類だから寒さに弱そう。
オーガとエルフは近接戦闘と魔法使いといった感じか?
ドワーフは鍛冶系の職人としてホビットは何なんだろう。
しばらく悩んだ結果ヒューマンにすることにした。
大抵こういう種族の人間タイプは万能なものと相場が決まっているし応用力が高そうだ。

「はい、ヒューマンですね。次に性別と容姿の設定を行います」

これは女にするとどうなるんだろう。
今しゃべってる声はリアルと同じ声だが女を選ぶとボイスチェンジャーでもかかるのだろうか。
んー性別は男でいいとして容姿の設定か。
俺の美的センスを発揮してやるぜ!
…と思ったがいじればいじるほどクリーチャーと化していくばかり。
設定できる数値が多すぎていじればいじるほどワケの分からないことになっていく。
胸だけでパラメーターが20以上あるぞ…
調整次第ではネカマではなく本当にオカマプレイもできそうだな。
おや、声の調整もここで出来るのか。
なるほど、自由度がたかいですな。
まぁ設定いじるのも飽きたので声以外はランダムにまかせよう。
そんなに突飛な姿にはならないはず。
いやタメゴローとか言ってくるのを考えると若干不安は残るが。

「これでキャラクターの設定は終了です。それではキュリオシティオンラインの世界をお楽しみください」

あー長かった、ついにゲームを始められますよ。
多少の達成感と多大なる疲労感に苛まれながら俺はキュリオシティオンラインの世界へと落ちていった。



[19621] 4:フリーフォール
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/20 01:21
気がつくと俺は階段の上に立っていた。
どうやら無事ゲームを開始することができたらしい。
目の前には綺麗な街並みが広がっている。
ここはいわゆる始まりの街というものだろうか。
とりあえず自分の姿を確認する。

「うん、よかった。ちゃんと手がある」

指をにぎにぎしながら体の動きを確かめていく。
身長はリアルと違和感を感じないから175センチ前後ってところであろう。
体は意外と筋肉質。
社会人生活で衰えの見えるリアルとの違いに軽く打ちのめされる。
筋トレしようと心に決めて改めて周囲の様子を伺う。
背後を振り向くと大きな神殿のようなものが見えた。
ここに出現したということはここが復活の位置なのかな。
この神殿は街の中でも少し高いところにあるらしく街を一望できる。
うーむ、ワクワクしてきたな。

「ふふふ、これから俺の冒険がはじまギャー!」

突然何かに弾かれるようにして俺の体が階段から真っ逆さまに落ちていく。
スタントマンの如く華麗に階段を転げ落ちた俺を周りの人が覗き込む。
恥ずかしさもあるがそれ以上に痛みに驚いてしまって少しの間動くことができなかった。
VRって痛みを感じるんですね。
もちろん30段近く転げ落ちた割にはダメージは少ないが確かに痛みを感じる。
なぜ階段を転げ落ちる事になったのかと思い先程まで立っていた所を見上げると大柄な女性がこちらを驚いた表情で見つめていた。
あの人はオーガかなと思っているとその女性が降りてきて不安そうな顔で声をかけてきた。

「あっあの大丈夫ですか?」

見た目にそぐわない可愛らしいアニメ声だったので少々驚いた。

「大丈夫…だと思う。だが一体何が起こったんだ?」

転げ落ちたときに打った部分をさすりながら俺は起き上がった。

「私にもよく分からないんですが此処にワープしたと思ったらあなたが転げ落ちていくのが見えたんです」

ふむ、どうやら俺が出現位置でぼーっとしていた為に他の人が出現した場所に重なってしまったようだ。

「でも本当に大丈夫でしたか?」
「うん、平気平気。まぁゲームだしね」

体のいろんな部分にしびれるような感覚はあるが特にコレといって問題はなさそうだ。

「そうですか、それならよかったです。じゃあ私は行きますね」

彼女もゲーマーの性を抑えられないらしくソワソワとあたりを見回しながら離れていった。
開始早々ひどい目にあったがいくつか気づくこともできた。
このゲームはどうやらダメージを負うと痛みとして反映されるようだ。
しかしその痛みはある程度軽減されている。
あとダメージを負った箇所は何かしびれるような感覚がある。
それもじっとしているとだんだん薄れていく。
チャラチャチャーン
ん?何だ今の音は。
周りを見ても特に何もない。
まぁいいか。
しかしこれは戦闘をするときは注意しないといけないな。
ダメージ量によっては泣いちゃうくらい痛いかもしれない。
今の階段落ちがどれくらいのダメージだったのかは分からないが。
そこでふと俺は思った。
このゲームはステータスとかはどうやって確認するんだろうか。
普通のゲームだとステータスウィンドウとかがあってそこから確認するものだがこの世界にも存在するのだろうか。
そこでふとキャラクタークリエイトの時を思い出す。
そういえばあの時ウィンドウ画面が出てきてたな。
ということはステータスウィンドウもあるかもしれない。
使い方を探さねばならないな。
たしかガメオン(GamersONLINE)のインタビュー記事でゲーム内で聞けみたいなことが書いてあったな。
ということはそこら辺のシステムを解説してくれるNPCなり書物なりが存在するってことか。

「まずは情報収集からだな」

とりあえずは街の構造を覚えがてらうろついてみよう。
石畳の道をぶらぶらと歩いていく。
雰囲気的には中世ヨーロッパといったところか。
ファンタジーの王道だなと思いながら周りを見ていく。
するとNPCとプレイヤーの見分け方がわかった。
NPCは数秒間見ていると頭上に名前が表示される。
どのNPCもものすごく人間くさい動きをするのでこうしないと見分けが全くつかないな。
お、あの兵士みたいな格好してる人もNPCか。
ああいう武器や防具はどこで売ってるのかなぁ。
兵士さんをジロジロと見つめていると突然こっちを向いて立ち上がった。
ちょっと不躾な行動だったな。
なんとなく気まずくなり足を速める。

「おい、君そっちは」

げげ、声をかけられた。
現状自分の戦闘力もロクに分からない。
それに見るからに兵士さんは強そうだ。

『おいおい、にぃちゃん。何ガン飛ばしとんねん。喧嘩売っとんのかわれ!ほれ、その場でジャンプしてみんかぃ。』

そんな妄想が頭の中を駆け巡る。
絡まれる前に逃げてしまおう。
そう思い急いで踏み出した右足が地面につくことはなかった。

「へ?」

ジェットコースターの落ちる瞬間のような内臓が持ち上がる感覚。
うん、現在進行形で落下中です。
落下しているということはいつかは着地するということで。
「ぬぉぉぉおおおおおおお!!!」
ドグシャッ!
チャラチャチャーン
これはやばい。
痛すぎる。
さっきの階段なんか目じゃない痛みだ。
例えるならサッカーボールを蹴ろうとしたら間違えて小指でタンスを蹴ってしまった痛みが全身に起こっているような感じだ。
これは駄目だ、あかんですよ。
涙が出ちゃう、だって男の子だもん。
痛みをこらえていると不思議なことに気がついた。
やばい、動けない。
なんか全身がしびれてます。
2時間くらい正座した後のように全身がビリビリしてます。

「おい、大丈夫か!?」

さっきの兵士さんが縄梯子のようなもので降りてきて俺の方に近づいてくる。
やばい、今体に触られるのは非常にまずいなぜってそれは。

「生きてるか?大丈夫か?」

らめぇぇぇぇぇ触っちゃらめぇぇぇビクンビクン。
しびれた体は非常に敏感なのですよ!
くうう、悔しいけど動けないので兵士さんのなすがまま。

「これを飲むんだ」

なにやら怪しげな小瓶に入ってるものを俺に飲まそうとしてくる。
なにこれ?やたらドロドロしてるんですけど。
こっこんなに飲めないよぅ。
などとダメージで錯乱した頭もその謎の液体を飲んだら治まってきた。

「・・・ふぅ。あのこの液体はなんですか?」
「あぁこれはHPポーションだよ。体力を回復する薬さ」
「なるほど、助かりました。ありがとうございます」
「いや気にしないでくれ。というか俺も謝らないといけない」
「なんのことです?」
「実は俺は警備の仕事をしていたんだ」
「警備?何を警備していたんですか?」
「何をというか君が落ちたこの穴に人が落ちないように警備するのが俺の仕事だったんだよ、あはははは」

豪快に笑ってごまかそうとしているな、この人。
俺がジトっとした目で見つめていると

「とっ取り敢えず上に戻ろうか」
「…そうですね。戻りましょうか」

縄梯子を登って俺と兵士さんは地上に戻った。
というか何だこの穴、15メートルくらいあるぞ。
よく生きていたもんだ。

「ということで申し訳なかったね」
「いえ、俺も不注意でしたし。ところでこの穴は何なんですか?」
「この前地震があったときに崩れたらしい。下の空間がなんなのかはこれから調査するようだ」
「そうですか、まぁ今後は足元にも注意して歩きますよ。あ、そうだ一つ聞いてもいいですか?」
「なんだね、俺が分かる範囲でよければ何でもお答えするよ」
「この街に図書館か本屋はありますか?」
「本屋の場所はちょっと分からないが図書館なら神殿の近くにあるぞ」
「神殿っていうとあのちょっと小高いところにある?」
「そうそう、神殿を出て目の前の通りを南に進むと聖堂があってそこの一階にあるはずだ」
「なるほど、分かりました。行ってみますね」
「ああ、今度は落ちる前に声をかけるよ」
「是非ともそうしてください!」

この兵士さん結構いい性格してやがるな。
それにしてもさっきのダメージはやばかった。
まさかあんなに痛いとは。
アレじゃゲームにならないから何かしらの回避手段でもあるのかな。
取り敢えず図書館に行けば説明書とはいかないでも何かヒントがあるかもしれない。
俺は不必要に足元を凝視しながら神殿へと戻っていくのであった。



[19621] 5:賢者の授業
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/21 23:55
この街は開始位置だった神殿を中心に東西南北に大通りが伸びている構造になっているようだ。
迷ったら取り敢えず神殿に向かえばなんとかなりそうだ。
先程兵士さんに教えてもらったとおり神殿から南に伸びている通りを歩いていく。
どうやらスタティナさんの居眠りの壁を超えた人が増えてきたようでずいぶんとプレイヤーが増えてきたようだ。
今のところリザードの人を見かけないがやはり人気は低いのだろうか。
そんなことを考えながら歩いているとなにやら荘厳な建物が見えてきた。
これが聖堂ってやつかな?
何を祀っているのか気になるな。
大きな扉をくぐるとエントランスのようだ。
正面の大きな扉が礼拝堂だろうか。
とりあえず目的は図書室なので左右にある扉を調べていく。
一つ目の扉は…これは懺悔室なのかな?
椅子と仕切られた壁が見える。
この部屋は違うな。
次の扉を開ける。
すると本の匂いというか紙の匂いが充満している。
ここが図書室だろう。
中に入っていくと机と椅子が1セット、あとは視界を埋めるかのように本棚が並んでいる。
軽く本の海に放心していると背後から声をかけられた。

「何かお探しですかな?」

突然声をかけられ驚いて背後を振り向くとそこにはローブをきた白髪の老人が立っていた。
長く白い髭はまさに賢者といった風格だ。

「お邪魔しています。すこし本を見たいと思いまして」
「そうですか、それは嬉しいですね。私はこの図書室の司書のようなことをしているヴァンダレンともうします。ですがこの図書室は少々特殊なのですよ」
「俺の名前はイツカです。特殊ですか?それは置いてある本がってことですか?」
「それもありますがそれ以上に変わっている部分があるんです。少々説明してもよろしいですかな?」
「あ、はい。お願いします」
「この図書室はできた当初は普通の図書室だったと言われています。ただある日有名な魔術師が亡くなった時に遺族の方が魔術師の保管していた蔵書を寄付なさったのです。その中には強力な魔道書と呼ばれる本が混ざっていたようでその日から図書室は変わってしまいました」
「魔道書?」
「ええ、魔法の力を宿した本を魔道書と呼びます。あとから分かったのですが魔術師は魔道書を保管するときに本棚に魔法を封印する魔術をかけるそうです。そうしないと魔道書同士干渉してしまい予想外の効果が現れるとか。その予想外の効果がいまここに現れているわけなんです」
「一体どんな効果が…?」
「それはこの本棚を見てみてください」
「あれ?背表紙に書いてある文字がちょっと読めないんですが」
「ええ、私も読めません。1つ目の効果がその認識障害です。一冊抜いてみますね」

老人が一冊赤い色の本を抜き取ると一瞬本が光った。

「ほら、見てみてください」
「…マイクとジェシーのラヴラヴ交換日記?」
「このように本棚から抜くと効果が消えます」

苦笑しながら本をもとに戻すとまた背表紙が読めなくなった。

「2つ目の効果なんですが今の本を抜いてみてください」

さっきの赤い本を俺は抜いてみた。
すると先ほどと同じように光ったかと思うと手には青い本がのっていた。

「あれ?さっきと違う本だ。読むだけでぐんぐん集中力が増す本?なんだこれ」
「おや、なかなか当たりの本を引いたみたいですね。今のが2つ目の効果の蔵書移動です。本たちは気ままに本棚を移動していくのですよ。せっかくなのでその本を少し読んでみてください」
「あ、はい。分かりました」

本を開いて読んでみる。
なになに

『諦めんなよ!諦めんなよ、お前!どうしてそこでやめるんだ、そこで!!もう少し頑張ってみろよ!もっと熱くなれよ…!!熱い血を燃やしていけよ…!!人間熱くなった時がホントの自分に出会えるんだ!言い訳してるんじゃないですか?できないこと、無理だって、諦めてるんじゃないですか?駄目だ駄目だ!諦めちゃダメだ!できる!できる!絶対にできるんだから!』

…何だこの本。
やたら熱いな。

チャラチャ、チャラチャチャーン

ん?また何か音が聞こえたような。

「スキルは上がりましたかな?」
「スキル?何のことです?」
「おや、もしかしてあなたは異世界からの旅人ですかな?」
「ええ、おそらくそれだと思います」
「それではスキルやステータスの説明が必要ですかな?」

ヨッシャー!キタコレ!!!
本を元の位置に戻しながら心のなかで叫ぶ。

「ええ、お願いします。基本的なことも何も分からないので。」
「分かりました、それではステータスの説明からいたしましょう。オープンステータスウィンドウと言ってみてください」
「オープンステータスウィンドウ」

すると目の前にキャラクタークリエイトの時に出てきたようなウィンドウが広がった。
なにやら色々書かれている。

名前:Ituka
クラス:異界の旅人
HP100/100 MP50/50 ST50/50
攻撃力10
防御力10
魔力10
命中力10
回避力10

属性抵抗値はすべて0か。

ステータスはわかりやすいな。
STってのは何に使うんだろうか。

「すみません、このSTというものはなんですか?」
「それはスタミナですな。行動するときに必要なものです。それが減ると動いたりすることも難しくなります」
「なるほど」
「ステータスについてはいいですかな?良ければ次の説明をしましょう」
「ええ、お願いします」
「では次にオープンスキルウィンドウと言ってください」
「オープンスキルウィンドウ」

さっきと同じようにウィンドウが開く。

集中力:3.0
自然回復:0.4
落下耐性:0.1
解読:0.1

集中力はさっきの集中力が増すという本の効果か?
もしかしてあの変な効果音というかチャイムみたいなのはスキルに関係していたのだろうか。

「スキルの欄に名前が幾つかありますかな?」
「はい、4つありますね」
「その名前を手で触れてみてください」

取り敢えず一番上の集中力に触れてみる。
するとまたウィンドウが開いた。

集中力:ランクE
説明『物事に集中する力。なにか行動を起こそうとしている時に妨害が入っても失敗しにくくなる。また行動の速度も早くなる』
取得状況:『読むだけでぐんぐん集中力が増す本』を読んだ。

「おそらく初めに表記されているランクというものは全部で10段階で表されています。最低がJランク、最高がAランクです。このランクはそのスキルを所持している人が少なければ上がり多ければ下がります」
「ということはEランクだと2人に1人くらいの割合ってことですかね?」」
「そうですな、だいたいそのくらいになるでしょうね。取得条件が珍しいものほどやはりランクが高いですね」

ふむ、どうやら集中力のスキルはそんなに珍しい物でもないようだ。
俺は他のスキルも見てみた。

自然回復:ランクJ
説明『体力を回復する力。何も行動を起こしていないときにHPやMP、STを回復する』
取得状況:ダメージを受けた後じっとその場で我慢した。

落下耐性:ランクA
説明『落下した時の衝撃に耐える力。高所から落下したときのダメージを軽減する』
取得状況:HPの99%を超える落下ダメージを受け死亡しなかった。

解読:ランクG
説明『記された物事を読み解く力。古文書などを読むためには必須』
取得状況:『読むだけでぐんぐん集中力が増す本』を読んだ。

おお!落下耐性はAランクだ!!
開始早々幸先が良い。
次に落下耐性の取得状況を見てさらに驚いた。
どうやら俺は穴に落ちたときに瀕死の重症を負ったようだ。
どおりで痛かったはずだ。
99%以上ということは残りHPが1以下になっていたということか。
危なく間抜けな死に様を見せることになるところだった。
しかしそのおかげでランクAのスキルを入手することに成功したわけなのでまぁいいとしよう。
もっとももうあんな痛みは感じたくはないが。

「Aランクのスキルが一つあるですよ!」
「おぉ!それは素晴らしい。ですが少々おちつき」
「これの取得状況なんですが!!」
「ですから少々落ち着きなさい。私を信頼してくれるのは嬉しいですがスキルの取得状況はあまり他言せんほうがいいですな。特に貴重なスキルならなおさらです。それは交渉材料になりますから秘匿しておいた方がいいですぞ」

確かに、冷静に考えるとこの秘密主義というか情報が封鎖されている世界においてスキル情報やクエスト情報はかなり重要な物だな。
スキル取得が嬉しすぎて舞い上がっていたようだ。
きを引き締めなければ。

「ああ、なるほど。確かにそうですね。ご忠告ありがとうございます」
「いえいえ、では最後にもう一つお教えいたしましょう。オープンログウィンドウと言ってみてくだされ」
「オープンログウィンドウ」

するとまたウィンドウが開く。
ウィンドウを除くとなにやら書かれている。

自然回復のスキルを発見した。
落下耐性のスキルを発見した。
クエスト:賢者の授業 を開始した。
『読むだけでぐんぐん集中力が増す本』を入手した。
集中力のスキルを発見した。
解読のスキルを発見した。

ふむ、名前の通りログが表示されているようだ。
ん?クエスト??

「以上で簡単ですが私からの説明は終わりですかな」

お、ログに何か追加された。

クエスト:賢者の授業 を終了した。

あぁ、なるほど。これもクエストだったのか。

「また何か聞きたいことや読みたい本があったら声をかけてくだされ。ここの図書室は特殊すぎてなかなか人が近よらんで寂しく思っておった所なんですよ」
「ええ、また本を読みに来ますよ」
「おっと、いい忘れておったがここの本は24時間で一冊しか読むことができんので注意してくだされ」
「はい、分かりました」

なるほど1日一冊ランダムで本が読めるのか。
でも交換日記とか読んでもスキル上がるのかなぁ。
そんなことを考えながら俺は聖堂の扉をくぐって外に出た。
今日はこれくらいにしておくか。
アカウント作成にずいぶんと時間を取られたしな。
続きはまた明日にしよう。

「ログアウト」

すると頭上にログアウトまで残り30秒と表示された。
そのカウントダウンが0になったとき俺はこの世界から切り離された。




-----------------------------------------------------------------------------------------------------
あとがき
やっとゲームっぽさが出てきたような気もします。
説明セリフだらけなのが気になりますが。
読むと書くとは大違いでござるよ。


感想返し

>>赤楝蛇さん
確かにそんなスレが立ちそうですな。
スキルの種類もどんどん増やして行きたいところですね。

>>ドランチさん
確かに主人公がちょっとお馬鹿っぽいですね。
スキルの説明関係も少々修正を加えてみましたがそれでもお馬鹿要素はあまり変わってない気も…

感想&突っ込みありがとうございます。



[19621] 6:乙女のピンチ
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/21 23:57
ログアウトしたあと俺はそのまま眠ってしまっていたらしく気がついたら次の日の昼近くだった。
取り敢えず昨日の弁当を食べながら軽く掲示板を眺める。
スタティナオンライン?
あぁ、あの居眠りしてたやつか。
あれのおかげでスレの消費速度が恐ろしいことになってるな。
でも意外と本気で文句を言ってる奴が少ないのは、あの居眠りLDの効果かもしれないな。
…まさか運営はそこまで考えて?
スレを適当に眺めていると何人か戦闘について書き込みしている人がいるな。
なになに

58 名前:名も無き冒険者[sage] 投稿日:2030/06/8(土) 4:25:52 ID:WrKr6LBr
なんかでかい牛みたいな奴殴ったら一撃で殺されたwww
マジパネェっすよwww
デスペナはわかんねぇな、取り敢えず気がついたら神殿だったわ

ふむふむ、デスペナはこの人がスキルとかもってたら下がってたかもしれないとして気がついたら神殿ってのが気になるな。
この書き込みから見ると俺が受けたような痛みはなかったような感じだ。
死んだときは痛みを感じないのかな。
この人が書いてないってだけかもしれんが。
その辺は死んだ時に確認できるか。
いやでもあの痛みをまた食らうとなるとちょっと確認したくないかも。
食べ終わった弁当のゴミを片付け、VRヘッドセットの準備をする。
ベッドに横になりスタートボタンを押すと俺は湖畔に立っていた。
ログインするときはどういう風なのかなと思いながらキョロキョロしていると目の前にスタティナさんが現れた。

「お帰りなさいませ、イツカさん。パスワードをお願いします」

なるほどアカウント管理とログイン管理はスタティナさんなのね。
というかまさかパスワードってアレか。
非常に言いづらいけど仕方がない。

「スタティナさん可愛いな」
「はい、ありがとうございます。キュリオシティオンラインにログインしますか?」
「ええ、お願いします」
「それではキュリオシティオンラインの世界をお楽しみください」

昨日と同じように俺はキュリオシティの世界へと落ちていった。


気がつくと聖堂の扉の前に立っていた。
そうかログインした場所で再開できるんだな。
街の外ではどうなんだろうか。
今度試してみよう。
でもその前に街の探索が先だな。
また適当にうろついてみよう。
図書室みたいになにかクエストが起こるかもしれないしな。
取り敢えずこの神殿から南に続く大通りを真っ直ぐ行ってみるか。
周りを見ながら歩いていくとどうやら方角によって街の雰囲気が違うみたいだ。
昨日穴に落ちたあたりは飲食店が並んでいて割と賑やかな雰囲気だったが、このあたりは静かな高級住宅街といったところだ。
まぁ聖堂とかがあるような場所だからかな。
そう思いながら歩いていくと少し人通りも増え賑やかになってきた。
このあたりは中級層の住宅地のようだ。
たまに子どもが走り回っていたり洗濯物を抱えたおばさんなどを見かける。

「だ…たす…て」

ん?なんか聞こえたような。

声は集合住宅の隙間の道から聞こえているようだ。
声を頼りに俺は細い路地裏を進んでいく。

「誰か~助けて~~」

どうやら助けを求める声だったようだ。
くねくねと入り組んだ路地を進んでいく。
これ帰れるかな…
若干不安になりつつも進んでいくと通路いっぱいの巨大なリュックサックが目に入った。

「誰かぁあぁ、助けてぇぇぇぇええぇぇ」

このリュックサックが声の主らしい。
恐る恐る声をかけてみた。

「あの~大丈夫ですか?」
「え?まじ!?助けに来てくれたの?ヤッター、神様ありがとう!」

えらくテンションの高い人のようだ。
声からすると若い女性だと思うのだがリュックサックで全く見えない。

「一体どうしたんですか?」
「いやーそれがちょっと近道しようと思ったら思いのほか道が狭くて。カバンが引っかかっちゃったんですよ。まいったまいった。でもあなたが来てくれて助かったヨ!」
「え~っと、でどうすればいいんですか?」
「ちょっとこのカバンを持っといてくれない?その間に私は一旦脱出するからその後でまたカバン返して」
「このカバンをですか?ものすごく重そうなんですが」
「だいじょぶだいじょぶ!私が持てるくらいだから平気よ」
「う~む、不安だがやってみよう」
「ありがと、じゃあカバンもってくれる?うん、そうそう。じゃあ私離すね」

その瞬間ありえないほどの重量が俺の腕にかかる。

「ちょっ!これやばい。ムリムリムリムリ!!!」
「平気平気、頑張れ男の子!でさ、私がなんで近道しようとしてたかっていうと実はものすごくトイレに行きたかったんだよね」
「え?」
「ということでしばらくお願い!」
「いや無理だって!」
「あ、そのカバンの中身結構高価なアイテムも入ってるから落としちゃだめだよ。落としたら弁償ね。じゃっ!」
「待って、行かないで」

俺の懇願も虚しく女性はどこかへ走り去っていった。
というかマジこのカバンやばい。
見た目からして重そうなのはわかっていたがなにが入ってやがるんだ。
ぬぉぉぉ、腕がプルプルしてきたぞ。
チャラチャチャーン
ってなんかスキルが!
でも確認する余裕なんてねぇぇぇぇぇぇ!!!
早く、早く帰ってきてくれぇぇぇぇ。
ピコーン
なっ何だ今の音。
なんかスキル取得とは違う音がなったぞ。
ピコーン
うぉ、またなった。
なんだ、一体なんなんだ。
すでに俺はいっぱいいっぱいなんだぞ。
ピコーン
これはまさかカラータイマー的なものか?
俺の腕が限界に近づいているんじゃ。
ピコーン
ギャー、だめーーーーー!
俺の腕頑張ってーーー。
ピコーン

「誰かぁぁぁぁぁぁ、誰か助けてくださぃぃぃぃぃぃ」

ピコーン




「いやぁありがとう。助かった、助かった。もうちょっとで漏らしちゃうかと思ったヨ」

疲労困憊でうずくまっている俺のそばで軽々とカバンを背負ったヒューマンらしき女性はにこやかな笑顔を振りまいていた。

「一体何がはいっているんだそのカバンは。死ぬほど重かったぞ」
「あっそうか、自己紹介まだだったね。私は道具屋のジェシカ。ジェシーって呼んで」
「俺はイツカだ。道具屋でそんだけ荷物持ってるってことは行商かなんかか?」
「ううん、私ちょっと前まで実家の道具屋手伝ってたんだけど今度この街で支店を開くことになったの。だからこの荷物は引越しの荷物みたいなもんなの」
「なるほどね、どおりで凄まじい重さな訳だ」
「え~そんなに重くないと思うんだけどなぁ。だって女の子の私が持てるんだよ?多分君が貧弱なんだよ」
「ぐっ、助けた恩人になんという仕打ち。そんなんじゃ商売上手くいかないぞ!」
「ごめんごめん、そうだお礼にうちの試供品あげるよ」

ジェシーがそういうと目の前にウィンドウが現れた。
トレードウィンドウと書いてあるな。
そこに兵士さんが俺に飲ませたポーションと同じようなものが表示される。

「早く受け取ってよ」

受け取る?
どうすればいいのか分からずにオロオロする俺。

「あれ?もしかしてトレード初めて?」
「あっああ、初めての経験だ」
「じゃあ取り敢えずウィンドウの承諾って書いてある場所触って」

よく見るとウィンドウの下部に承諾と拒否と書かれた部分がある。
承諾と書かれた部分に触れるとウィンドウが消えた。

「おっけーおっけー、今のでトレード終了だヨ」
「すまんがトレードのやり方を教えてもらっていいか?」
「あいあい、助けてもらったしそれくらいはお教えしましょう。トレードは2つの方法があるのです。一つ目は相手を見ながらオープントレードって言うの。でもねこの場合人がいっぱいいるところや真っ暗で目が見えない状態とかだと使えないの。そんな時は二つ目の方法としてオープントレードって行った後に名前を言うの。例えば私とトレードするときは『オープントレードジェシカ』って感じ。試しにやってみて」
「ああ、わかった。オープントレードジェシカ」

するとトレードウィンドウが出現した。

「そうそう、そんな感じ。トレードしたアイテムはアイテムボックスの方に入るから注意してね。アイテムボックス一杯だとトレードできないよ」
「アイテムボックス?本当に申し訳ないがアイテムボックスとやらも教えてくれないか?」
「もー本当に何もしらないんだね。アイテムボックスっていうのはねこの世界の誰もが持っている見えないポケットみたいなものだよ。オープンアイテムボックスで確認できるの。基本的にこの中に入るものは15個でおんなじ種類のポーションとかはまとめて1個と見なされるの」
「基本的にってことは多かったり少なかったりするのか?」
「へへへ、それは秘密ぅ。もうちょっと仲良くなったら教えてあげないでもないヨ。で説明に戻るけどアイテムボックス以外にもアイテムを入れておけるものがあるの。アイテムポーチとかって呼ばれているものなんだけど私のこのカバンもそれなんだヨ」
「ポーチというには凄まじいサイズだな」
「まぁこれは例外的なものだけどね。使い方はアイテムボックスと一緒でオープンアイテムポーチでオッケー」
「アイテムボックスとアイテムポーチはなんか違うのか?」
「うん、これが全然違うのさ!まずポーチは裁縫屋さんとか服屋さんとかで買えるの。物によって入る量が違うんだヨ。でねでねアイテムボックスはいちいち開いてアイテム選んで取り出さないと行けないんだけどポーチは直接使えるんだよ」
「どういう事だ?」
「例えばボックスに入ってるポーション使おうと思ったらボックスを開いてポーションに触ってその後個数を指定するっていう手順なんだ。だけどポーチの場合ポーションって言うと一つ手に出てくるの。これはかなり便利なの」
「確かにそっちの方が全然いいな」
「ただしポーチにも良くない点があるの。それは体力が0になると中に入ってたもの全部その場に落としちゃうの。だから大事なものはボックスに入れておくんだよ」
「なるほどねぇ、勉強になったよ」
「うむうむ、私をもっと褒めるといいよ」
「はいはい、ジェシーさんはすごいですよ。そういえば一つ気になったんだが」
「ん?なぁに?」
「ジェシーは俺にトレードするときに何も言わずにしなかったか?」
「おっとイツカさんなかなか鋭いですな。実は思考操作って言って声に出さなくてもできるの。ただし音声操作に比べて難しいからなかなか出来る人いないんだよ」
「ジェシーって意外とすごい人なのか?」
「はっはっはー、もっと尊敬したまえ」
「うーむ、トイレを限界まで我慢してた人だからなぁ」
「そっそれは言わないで!ってだいぶ時間経っちゃったな。お店の準備もしないといけないからそろそろ私は行くよ」
「おお、色々教えてくれてありがとうな」
「そう思ったらうちでお買い物してね。北西区にお店あるからさ。名前は『ジェシーのプリティーアイテムショプ』だよ」
「…ちょっと入りづらい名前だな。まぁそのうち行くよ」
「うん、待ってるからね。それじゃ!」

あんな巨大なカバンを背負ってジェシーは走っていった。
元気なお方だ。
そういえば新しいスキルを入手していたな。
そうだ思考操作とやらでログを開いてみよう。
むむむむむ。
…だめだ開かん。

「オープンログウィンドウ」

若干何かに負けたような気がしつつもログを眺める。

クエスト:乙女のピンチ を開始した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
筋力スキルが0.1上昇した。
HPポーション(試供品)を入手した。
クエスト:乙女のピンチ を終了した。

入手したスキルは筋力か。
カバンを持っている時になっていたカラータイマーはどうやらスキルが上がった音だったようだ。
スキルはどうなっているかな。

「オープンスキルウィンドウ」

筋力:1.1
集中力:3.0
自然回復:0.4
落下耐性:0.1
解読:0.1

筋力が新たに追加されてるな。
筋力のスキルを見てみよう。

筋力:ランクJ
説明『筋肉の力。攻撃力などを上昇させる。持ち運ぶことができる重量にも効果がある』
取得状況:ジェシカのカバンを一定時間持ち続けた。

これはランクは低いけど結構重要なスキルだな。
攻撃力を上昇させるということは。

「オープンステータスウィンドウ」

おー攻撃力が11になっている!
なるほどね、こうやってクエストをこなしていけば基礎的なスキルは手に入りそうだ。
レアなスキルは特別なクエストか落下耐性みたいにまぐれで入手ってことだな。
これはスキルを収集するのが楽しみになってきた。
ふふふ、クエストフラグを立てまくってスキルを集めていくとしますか。






---------------------------------------------------------------------------------------------------
あとがき
いろんな人が感想でくれた文章量の少なさをすこしずつ改善していきたい。
どれくらいが適正量なのでしょうか。


感想返し
>>通りすがりの日本人さん
ギクッ鋭い。
感性というか趣味が似ている気がします。
私の好みで書いていきますがお楽しみあれー。

>>赤楝蛇さん
素早い報告ありがとうございます。
言われたら猫の世界にしか見えなくなったにゃー。
やはり序盤は何やっても楽しい感じがいいですよね。

感想・指摘などなどありがとうございます。



[19621] 7:青ルビエの花
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/23 22:38
スキル集めを誓ったはいいが現在地はどこだろう。
ジェシーの声を頼りに歩いたから一体ここが何処なのやら。
とりあえず一旦神殿に戻るか。
神殿の天辺がうっすら見える方向へと歩いていく。
そういえばアイテムボックスを確認してなかったな。
こういうゲームは初期に何らかのアイテムが入ってたりしないかな。
練習をかねて思考操作を行ってみる。
むむむむ。
うーむ、難しいな。
何かコツというかうまいやり方があるのかな。
ジェシーは簡単そうに行っていたし。
思考操作って言うくらいなんだからその行為を強く考えたらうまくいきそうなんだが。
路地を歩きながら一心不乱にアイテムボックスを開こうとする。
集中力が足りないのだろうか。
集中力といえば図書室で見たあの本は集中力の本だったな。
よし、藁にでも縋る気持ちでやってみるか。

『諦めんなよ!諦めんなよ、お前!どうしてそこでやめるんだ、そこで!!もう少し頑張ってみろよ!もっと熱くなれよ…!!熱い血を燃やしていけよ…!!人間熱くなった時がホントの自分に出会えるんだ!言い訳してるんじゃないですか?できないこと、無理だって、諦めてるんじゃないですか?駄目だ駄目だ!諦めちゃダメだ!できる!できる!絶対にできるんだから!』

「ぬぉぉぉぉおおおおああああああああああ!!!!!」

懇親の力を込めてアイテムウィンドウを開くことのみを考えた。
するとついに目の前にウィンドウが!

ピコーン

「やった!!ついにできゲフゥ」

あまりにも集中しすぎた結果T字路の壁に激突した。

「あいたたたた」

なんとかアイテムボックスは開いたがこのやり方は何か違う気がする。
全力で集中してようやく出来るんじゃ使い道はないしなぁ。
今度ジェシーにコツを聞いてみるとしよう。
そういえば何かスキルが上がる音が聞こえたな。

「オープンログウィンドウ」

全く苦労せずに開くログウィンドウをみて若干苦笑する俺。
ログウィンドウを見る。

集中力スキルが0.3上昇した。

おお、集中力が上がったか。
さすが読むだけでぐんぐん集中力が増す本なだけある。
書いてあることを実践しただけで効果があるとは。
これで集中力は3.3だな。
そういえば苦労して開いたアイテムボックスをまだ確認していなかったな。
何が入っているのかな。
ウィンドウを確認するとHPポーションと何かナイフのようなものが入っている。
ポーションはジェシーにもらった試供品か。
このナイフは初期装備なんだろうか。
ん?
ウィンドウの下部に何かあるな。
この絵はゴミ箱と隣に表示されているのはGold?
これはお金か!
Gold:1000 と表示されているということは1000ゴールドあるということか。
これはお買い物が出来そうだな。
とりあえずナイフを取り出してみよう。
え~とたしかボックスは一度アイテムに触れるんだったかな。
ウィンドウのナイフのアイコンに触れると右手が光った。
その光が収まると小ぶりなナイフが握られている。
これはなんだろう。
じっと見つめているとウィンドウが開いた。

初心者用剥ぎ取りナイフ
説明『剥ぎ取り用ナイフ。モンスターなどに刺すことにより死体を素材へと変える。戦闘には使用できない』

ふむ、名前そのままな効果だな。
倒したモンスターに刺すだけで解体してくれるのかな。
確かに倒したモンスターをわざわざ解体していたら大変だな。
特に人型モンスターなんかいたら精神的に厳しいものがある。
今のところ必要はないからアイテムボックスに戻しておこう。
ナイフをしまいしばらく歩いたところ大通りまで戻ってこれた。
特に目的地は決めていないが一度神殿まで戻ってみるかな。
そういえば神殿の内部を見ていないことを思い出した。
何があるのか気になるので次の目的地は神殿に決定だ。
大通りをてくてくと歩いていくとあっという間に神殿にたどり着いた。
昨日この階段を転げ落ちたんだなぁと思うとなにやら体がムズ痒くなる。
階段を上り神殿の入口にたどり着いた。
中に入ろうとすると入り口に立っていた兵士に声をかけられる。

「神殿にいかなる用事かな、青年よ」
「いや特に用事って訳ではないですが中がどうなってるのかなぁっと思いまして」
「申し訳ないが安全のため正式な用事が無い者は入ることができないのだ」

ふむどうやらこの神殿は何か特殊な施設のようだ。

「ああ、そうなんですか。分かりました」
「うむ、すまないな」

兵士を乗り越えてでも入りたいというわけでもないのであっさりと引き下がる。
でも正式な用事とか言っていたな。
そのうちクエストとかで入れるようになるのかな。
なにやら重要な施設みたいだしレアなイベントが起きそうだ。
覚えておこう。
しかしいきなり目的が頓挫してしまった。
どうしようかな。
そう思いながら階段を見つめていると落下耐性スキルの事を思い出した。
この階段を使えばスキル上げできるのではないだろうか。
取り敢えず一番下まで降りて実験してみる。
まずは1段だけ上りそこから飛び降りてみる。
…何もなし。
2段目。
…何もなし。
3段目、4段目と増やして行き5段目。

グキッ!
ピコーン

お、スキルが上がった。
慌ててログを開く。

落下耐性スキルが0.1上昇した。

おーしっかりと上がっているな。
ステータスを見るとHPが99/100となっていた。
もう一度やってみよう。

グキッ!
ピコーン

よしよし、しっかり上がる。
痛みもなんか踏んだかな位の軽微なものだ。
痛みはダメージに比例するのだろう。
よしさらにもう一回!
…あれ?
ダメージが無いな。
もしかして落下耐性が上がったから5段じゃダメージがなくなってしまったのか。
じゃあ6段目なら。

グキッ!
ピコーン

予想通りみたいだな。
しかしこれは楽しい。
スキルが上がりまくりだぜ!
そんなことを繰り返し7段目までいったところでふと視線を感じる。
周りを見渡すと何か遠巻きに皆俺をみている。
冷静に考えるとここは街のど真ん中でさらにプレイヤーのスタート地点。
ものすごく人通りの多い場所だ。
そんなところでひたすら階段を上り飛び降り続ける人がいたら流石になんだこの変な奴はとなるな。
その変な奴とは俺のことだが。
急に恥ずかしくなってきた。

「なっなんか足の調子がおかしいかなぁ」

誰に言ってるのか分からない言い訳をしながら神殿を離れていく。

イツカの羞恥心が10.0上昇した。

そんなログが脳内で流れた。
落下耐性のスキル上げは人目の付かない場所で行おう。
スキルウィンドウを見ると落下耐性が1.2まで上がっていた。
1.2で階段6段分か。
スキルを上げていけば昨日落ちた穴でもノーダメージで降りれるようになるのかな。
ああ、そうだ。
若干足がしびれてるな。
HPはどうなってるのかな。
ステータスウィンドウを開くとHPは60/100となっていた。
地味にダメージを食らっていたようだ。
取り敢えずその場に座り込み回復するのを待つ。
立っているより座っている時の方が回復スピードは早いようだ。

ピコーン

ピコーン

定期的にスキルが上がる音がする。
確認すると自然回復スキルが上昇していた。
体力が全回復する頃には自然回復が0.9になっていた。

「さて、次は何処に行こうかなっと」

そう独り言をつぶやきながら立ち上がる。
そういえばお金はどうやって稼ぐのだろうか。
モンスターを狩って素材を売り払うのかな。
でもこういうゲームには冒険者ギルドのようなところがあってそこで依頼を受けられると相場が決まっている。
ちょっくらギルドを探してみますかな。
でもこの広い街を当てもなくうろうろとさ迷っても見つけられなさそうだ。
というか存在しなかった場合完全に無駄になるな。
うーん、どうしようかな。
悩んでいると女の子の声が聞こえた。

「お花いりませんか?一つ2ゴールドですー」

10歳くらいの女の子がカゴに花を入れて立っている。
花売りのようだ。
そうだ彼女にギルドの場所を聞いてみよう。

「お嬢さん、ちょっと尋ねていいかな?」
「はい、なんでしょう?」
「その冒険者ギルドみたいなものってこの街にあるかな?」
「はい、ありますよ」
「その場所を教えてもらえないかな」
「お花一つ2ゴールドです」

可愛らしい笑みを浮かべてそう言ってくる。
この子なかなか商魂たくましいな。
将来が楽しみだ。

「オーケイ、一つ買うよ」

アイテムボックスを開きGoldの部分に触れる。
すると数の入力を求められたので2と発言するとコインが2つ手に現れた。
それを女の子に渡し、交換に青い花を受け取る。

「ありがとうございます。冒険者ギルドは北西区にあります。入り口に大きな剣の看板があるからすぐ分かると思いますよ」
「ありがとう。またね」

ぺこりと頭を下げた女の子と別れると俺は歩き出した。
さっき神殿から離れるときに西の大通りに向かったからここから北のほうへ向かえば北西区とやらに出られるかな。
俺はさきほど買った青い花の匂いを嗅ぎながら北へ向かう。
この花いい匂いがするな。
花をじっと見るとウィンドウが開いた。

青ルビエの花
説明『温暖な気候の地に生えるルビエの花。色により香りの効果が違い青ルビエには鎮静の効果がある。調合などに用いられ香水の原料などにももちいられる』

確かになにやら落ち着く香りがするな。
この匂いは好きかも。
今度あの子を見かけたらまた買おうかな。
そんなことを思いながら冒険者ギルドへと足を進めるのであった。




現在のスキル値

筋力:1.1
集中力:3.3
自然回復:0.9
落下耐性:1.2
解読:0.1

所持金:998Gold






----------------------------------------------------------------------------------------------
あとがき
こいつ外にでないなぁ。
ひきこもり型主人公のようです。
イツカが戦闘する日はくるのか!

感想返し

>>通りスカ裏さん
確かにスタミナ減っててもおかしく無いですね。
ステータス確認してなかったからその間に回復しちゃったってことにしておいてくだs

>>通行人Dさん
確かに突然逆にログが表示されると違和感があるかもしれませんね。
LinkDeadも自分が普通に使ってたから違和感を感じなかった!
貴重なご意見ありがとうございます、修正しておきます。

感想ありがとうございます。



[19621] 8:初心者への依頼
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/23 22:38
青ルビエの花をアイテムボックスにしまい、冒険者ギルドへと向かう。
北西区にあると言っていたがそういえばジェシーの店も北西区と言っていたな。
冒険に必要な店が集まってたりするのだろうか。
冒険者ギルドの近くには初心者向けの武器屋とかあるだろうし少し楽しみだ。
北へ向かって歩いて行くと少し大きめの通りに出た。
看板を見るとアドベンチャラーストリートと書かれている。
どうやらこのへんが冒険者向けの地区のようだ。
入り口に大きな剣があるらしいがいったい何処に…
あった!
凄まじいサイズの剣が入り口に突き刺さっている。
長さは俺の身長を優に超え2メートルを超えそうな剣だ。
一体誰がこんな剣を使えるんだろうか。
剣を眺めながら入り口の扉を越える。
冒険者ギルドというからてっきり酒場みたいなイメージをしていたがこざっぱりとしていて落ち着いた雰囲気だ。
なんとなくお役所みたいというか図書館みたいというか。
キョロキョロ見渡していると受付のお姉さんに声をかけられた。

「こんにちは、冒険者ギルドは初めてですか?」
「はいっ、ちょっと物珍しくて」
「ご要件はクエストの受注ですか?それとも依頼ですか?」
「えーっと受注の方ですね」
「ギルドカードはお持ちでしょうか?」
「いや持ってないです」
「新規登録ですね、かしこまりました。それではこちらの用紙の方に必要事項を記入してください」

用紙と鉛筆を受け取り記入する。
えーっと名前はItukaっと。
得意武器?
んー保留。
戦闘経験…なし。
推薦状…なし。
その他特技…なし。
なんだこの恐ろしく白い登録用紙は。
とっとりあえず武器の話を聞いてみるか。

「あの~得意武器が無いというかそもそも戦闘をしたことがないんですがどうすればいいですか?」
「空欄でかまいませんよ。その欄はギルドランクを決定するために必要なだけなので正直に書いていただければ結構です」

ギルドランク?
まぁ後で説明があるかな。

「わかりました。じゃあこれでオッケーです」
「はい、お預かりいたします。イツカさんですね。ギルドカードを発行いたしますので少々お待ちください」

いくら始めたばかりとはいえちょっとは鍛えてから来るべきだったかなぁ。
でもどの武器を使うとかまだピンとこないな。

「お待たせしました。こちらがギルドカードとなります。それでは基本的な説明に入りたいと思いますがよろしかったですか?」
「はい、お願いします」
「長々とお話ししても仕方が無いと思いますので簡単に説明させて頂きます。この冒険者ギルドの活用方法は大まかに分けて2点。クエストの受注とクエストの依頼です。クエストの受注は冒険者ギルド内に貼り出されている掲示板にある依頼を受注し、それをこなす事により報酬を得る事です。クエストの依頼は逆にお金を払い、他の冒険者さんに目的を果たしてもらうものです。戦闘を行うことができる人は受注、生産者などは依頼が多いですね」
「へぇ、自分で依頼を出すこともできるんだ」
「はい、そちらの詳しい説明を行ないましょうか?」
「いえ、今のところ依頼する用事はないのでいいです」
「そうですか、それでは受注に関する説明を行ないますね。まずはこのギルドカードを見てください」

カードを覗き込む。

名前:Ituka
クラス:異界の旅人
ランク:E
ギルドポイント:0
受注依頼:なし

「このランクは?」
「冒険者ギルドでは登録なさった冒険者をAからEの5段階に分けてあります。この評価は冒険者の実力や信頼度などを総合して決められています。その下のギルドポイントは依頼をこなすことによって増えていきギルドランク昇格の判断材料になります」
「ギルドランクってあがると何かいいことがあるんですか?」
「冒険者ギルドの依頼はすべてギルドランクと同じようにランクで分類されています。受注することができる依頼は自分のギルドランクと同レベルまでなのでギルドランクを上げることによりより多くの依頼を受注することができますね」
「つまり今はランクEの依頼しか受けられないわけか」
「はい。それに追加いたしましてイツカさんは戦闘経験が無いということなので討伐系依頼を受ける前に講習を受ける必要があります」
「講習?」
「新人冒険者を支援するための制度です。講習を受けることにより安全にある程度戦闘スキルを鍛えることができます」
「へー、そいつはいいな」
「ただし受けることができる講習は1つだけで武器の種類によって講習料がことなります」
「え!?お金取るの?」
「申し訳ありませんが必要経費がある程度かかりますので。講習の予約をなさいますか?」
「うーん、取り敢えずは保留にできますかね?」
「はい、先程もご説明したとおり討伐系の依頼は受けることができませんがそれ以外なら受けることができますので」
「それじゃあ保留で。とりあえず受けれる依頼を探してみようかな」
「本来ならば掲示板から依頼書をはがしていただいてこちらで受注という形ですが初回ということで、よろしければこちらで調度良い依頼をお選びしましょうか?」
「お、お願いしようかな」
「かしこまりました、それではこの依頼などはいかがでしょうか」

机の上にスッと1枚の依頼書が出された。

依頼:酒場手伝い
依頼主:酒場ゴーレムフィスト店長ラルゴ
依頼内容:酒場の開店準備手伝い
報酬:1000Gold
ギルドポイント:5

ふむ、酒場でのお手伝いか。
それで1000Goldももらえるならいい気がするな。
これなら安全だろうし講習を受けるにもお金がいるから取り敢えずこれを受けてみよう。

「オッケーです。この依頼を受注します」
「はい、かしこまりました」

受付のお姉さんがギルドカードに手をかざすと受注依頼の欄に『酒場手伝い』と浮き上がった。

「これで受注完了です。この依頼書を持って現場に向かってください。場所は依頼書に書かれている地図の所です。依頼を達成・失敗にかかわらず終了時にはここにもどってきてくださいね。それでは頑張ってください」

お姉さんに見送られ冒険者ギルドを出た。
依頼書を見るとここからそんなに離れていない場所のようだ。
地図を見ながら歩いていく。
すると拳骨とともにゴーレムフィストと書かれた看板を見つけた。
ここだな。
入り口のウエスタンドアを押しながら店の中にはいる。

「おい坊主、まだ準備中だ!夜になったらまたきやがれ」

全身筋肉と言わんばかりのマッチョな男がカウンターでグラスを拭いていた。
オーガなのだろう、身長も2メートルを超える圧倒的な存在感だ。

「いや客じゃないんだ。冒険者ギルドの依頼で来たんです」
「なんでぇ坊主はそのなりで冒険者なのか?まぁひよっこはしかたがねぇか」

確かに俺の今の装備は初期装備のただの服だ。
だけどもちょっと傷つく。

「俺はこの店の店長のラルゴだ。坊主、お前の名前は?」

坊主坊主と言われるがそんな年でも無いと思うんだがな。
あ、でもこのキャラの顔を確認してないな。
もしかして童顔とかなのかな。

「あー俺の名前はイツカです」
「ふむ、イツカだな。よしじゃあ早速仕事だ。ちょっとこっち付いて来い」

店長はカウンターの横の地下に向かって続く階段を降りていく。
俺はその後ろを慌てて付いていく。
階段を降りていくとそこは酒蔵になっているようだ。

「今回の依頼はこれを運んでもらうことだ」

ぽんぽんと酒樽を叩きながら笑顔で話しかけてくる。

「それって空樽ですよね?」
「空樽を酒蔵においとくわけねぇだろ。安心しろ、満タンだ」

おいおい、まじかよ。
この酒樽西部劇の村にでもおいて有りそうなデカさだぞ。
一体何リットル入るんだよ。

「じゃあこれを五樽上の酒場まで運んでくれや」

いきなり依頼を破棄するわけにもいかないしやるしかないか。
見た目より軽い事を祈りつつ樽に近づく。

「よいしょおぉおおっぉあぁぁぁぁあ」

掛け声と共に一気に持ち上げる。
なんとかギリギリもてなくもない。
これなら運べるかも。

「大丈夫そうだな、俺は上で開店準備してるから終わったら声をかけてくれ」

店長に返事する余裕もなくよたよたと階段へ向かう。
これは…中身が液状なので歩くとなかの酒がたぷんたぷんと動く。
そのせいでバランスが取りにくく余計に疲労する。

ピコーン

この音はスキルアップか。
どうせ筋力だろう。
こんな重いもの運んでいるんだからせめて筋力ぐらい上がらないとやってられない。
スキルアップの音をBGMに一歩一歩確実に歩んでいく。

「くそぉぉぉなぜ俺はゲーム内で肉体労働しているんだぁぁぁ!!!」


その後一時間ほどかけてなんとか五樽運び終えた。
酒場の一回に思わず座り込む。
ステータスを見るとSTが3/50になっていた。
途中で休憩を挟みながらやっていたのにこの有様だ。

「おぅ、坊主運び終わったか」
「は・・・はぃ、なんとかぁ」
「結構結構。依頼書を寄越しな」

店長は依頼書にサインをすると俺に返した。

「これで依頼は達成だ。ひよっこにしてはまぁまぁ気合見せたな」

そう言いながら俺の運んだ酒樽を肩に軽々と担ぐとカウンターの方へ運んでいった。

「俺が運ぶ必要ないじゃん!」
「はっはっは、この依頼はひよっこのための依頼だからな」
「どっどういうことです?」
「これは公然の秘密なんだが冒険者なりたての奴が勧められる依頼ってのは実はギルド側からだしてる依頼なんだよ」
「なんだってそんな事を…」
「まぁ初心者支援の一環ってやつだな。簡単な依頼で仕事に慣れることができるし、基礎スキルも鍛えられてさらにお金ももらえる。そうすれば初めに挫折する奴も減ってギルドも仕事がやりやすいって事だ」
「はぁ、それを聞いたら何かどっと疲れましたよ」
「まぁまぁいいじゃねーか、これでギルドに報告に行けば小銭も入るしお前も飲みに来いよ」
「ええ、考えておきますよ。それじゃあギルドに戻ります。ありがとうございました」
「おうよ、また仕事に来いよな」
「気が向いたらきますよ」

店長の話を聞いている間にSTも回復したのでゴーレムフィストをあとにする。
スキルを確認したら筋力が5.6も上昇していた。
それに伴いステータスも攻撃力が1上昇し12に。
まぁ確かに安全にスキルをあげれてさらにお金ももらえるとなると悪くないかもしれないな。
初めてのお給料にワクワクしながら冒険者ギルドの扉を開いた。





現在のスキル


筋力:6.6 ↑up
集中力:3.3
自然回復:2.4 ↑up
落下耐性:1.2
解読:0.1


所持金:998Gold




----------------------------------------------------------------------------------------------
あとがき

コツコツとスキルアップ。
それにしても未だに説明セリフばっかりだな。
いつになったら冒険するんだこいつ。
そういえば1万PV突破しました。
拙いSSを見ていただきましてありがとうございます。


感想返し

>>雪林檎さん
効果音は痛そうだけどダメージは1なんで痛みは極微量ですね
自然回復は体力を回復するスキルなんで回復時に上がる設定にしていたのですが違和感ありますかね?

感想ありがとうございます。



[19621] 9:初心者講習
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/23 22:37
冒険者ギルドに入り受付へと向かう。

「いらっしゃいませ、ご要件はクエストの受注ですか?それとも依頼ですか?」
「受注した依頼が終了したんで戻ってきたのですが」
「依頼の終了報告ですね。ギルドカードと依頼書をお見せください」
「はい。これです」

カウンターの上にカードと依頼書を置く。

「はい、結構です。依頼の達成を確認しました。ギルドポイントが上昇したことを確認ください」

カウンターの上のカードを確認するとギルドポイントの欄が5になっている。

「次に報酬ですがこの場での支給と銀行への振込みどちらになさいますか?」
「銀行?そんな所あるんですか?」
「はい、このギルドの建物の裏手にございます。そちらに口座があれば報酬を振込みで受け取ることが可能です。お金も軽いとはいえ重量がございますから」

お金にも重量あるのか。

「あー、口座はまだ無いので現金でお願いします」
「かしこまりました、トレードウィンドウを開かせていただきますね」

そう言うと目の前にウィンドウが開く。
この人も簡単そうに思考操作を…
くそぅ、俺もそのうちほいほい開けるようになってやるぞ。
ウィンドウのGoldの欄が1000になる。

「間違いがなければ承諾をお願いします」
「わかりました」

チャリーン

なにか小銭を落としたような音がする。
確認の為にアイテムボックスを開く。
無論音声操作で。
Goldが1998になっている。
しかしまだ青ルビエの花以外買ったことがないから物価がわからないな。
そういえば講習もお金がかかるって言ってたっけ。

「すいません、講習の代金とかって聞けますか?」
「はい、わかりました。良い機会ですし講習の説明もお聞きになりますか?」
「じゃあお願いします」
「かしこまりました、それではこちらの紙を御覧ください」

何か表のようなものが書かれた紙が出てきた。

「こちらが受けることができる講習の種類と値段の表です。この講習の目的は最低限戦うことのできるスキルを鍛えることです。受けた講習によりその武器スキル及び関連スキルの訓練が行えます。例えばこの片手剣講習をお受けになると片手剣スキルの他に盾スキルなども教えてもらえるそうです」
「へぇ、それは有難いな」
「講習を終えると平均的に10前後までスキルが上がるそうです。ただし講習は1種類しか受講することができませんのでご注意下さい」

うーん、なやむなぁ。
片手剣が300Goldで片手槍が400Gold。
ん?
この剣総合900Goldってのはなんだろう。

「すいません、この剣総合ってのはなんですか?」
「そちらは片手剣や小剣、大剣など剣スキル全般の講習です。そのかわり補助スキルなどはあまり教えてもらえないそうです」
「あーだからちょっと高いのか」
「そうですね、ですが講習を受けた武器はギルド公認のショップで初級武器を値引きしてもらえるので剣総合講習をお受けになるとその分多くの武器が安くなるというメリットもございます」
「うーむ、悩むなぁ」

講習の数も非常に多く未だ使用武器を決めていない身としてはなかなか難しい選択だ。
そう思いながら紙を眺めていると一番下に気になるものがあった。
総合1800Gold。
なんだこのやたら高い講習は。

「この一番下の総合ってなんですか?」

なにやらお姉さんが少し苦笑したような気がする。

「それはこちらで受けることのできるすべての武器を対象とした講習です」
「え!?全部教えてもらえるんですか?」
「はい、その代わりに関連スキルや補助スキルは一切なしです。さらに上昇スキルも5前後らしいです。大きな声じゃ言えませんがあまり人気のある講習ではないですね」

なるほどだからさっきの表情だったのか。

「あのー例えばスキルなしで武器を使うとどうなるんですか?」
「スキルなしでですか?私は戦闘の経験がないので聞いた話ですがなかなかあたらなくて大変だそうです。スキルも最初の発見までが大変らしいとのことです」

うーむ、ただ武器を使っただけではスキル発見にならないのかもしれないな。
ということは無条件でスキルを発見できそうな講習は非常に重要ってことか。
そうすると使用武器を決めていない今、選択肢を多くしておいた方がよい気もする。
でも1800Goldかぁ。
よし、決めた。

「総合でお願いします」
「…総合ですね、わかりました。講習代金は1800ゴールドになります」

さっき受け取った報酬も一瞬で出て行く。
さらば酒場での1時間よ。

「はい、確かに受け取りました。講習はあちらの階段から地下に降りて4番訓練室です」
「わかりました」

階段を降りていくといくつかの扉が見える。
扉の一つ一つに大きく数字が書かれている。
え~っと4番はっと。
あーここか。
少し緊張しながら扉を開く。
中は円形で土がしかれている。
なにやら小規模なコロシアムみたいな雰囲気があるな。
周りを見ていたら入ってきた扉の反対側にある扉が開いた。
入ってきたのはほっそりとした銀髪のエルフだった。

「あ、あなたが総合講習を受講なさるイツカさんですか?」
「はい、そうです」
「私は総合講習を受け持つロイエンタールと申します。気軽にロイとお呼び下さい」
「はい、ロイさんお願いします」
「いえいえ、こちらこそ。講習を受けてくれて本当にありがとうございます。この講習なぜか全然人気がなくてこまっていたんですよぉ。今までに受けた人は数えれるくらいなんです。片手剣とかの講習はあんなに人が入っているのになぜなんでしょうか」
「やっやっぱり値段とかじゃないですかね」
「そうなんですかねぇ、でもあなたがうけてくれたので久しぶりに仕事ができます!気合入れて教えちゃいますよ」
「ありがとうございます」

不人気講習ってのは本当だったみたいだな。
まぁ戦闘経験無い人しか受けられない上に1800Goldだからなかなか受ける人もいないのかもしれない。

「まず初めにスキルについてのお話をしましょう。イツカさんはどれくらいの知識がおありですか?」
「えーっとウィンドウの見方とかランクとかその辺は分かります」
「ふむ、なるほど。ではスキルの上限が100だということは知っていますか?」
「え!100までしかないんですか?」
「ええ、そうです。どのスキルも100まであげるとそれ以上は増えないそうです。またスキルの合計数も実は上限があります」
「合計にまであるんですか」
「はい、覚えているスキルの合計値が1000になるとそれ以上スキルが上がらなくなります」
「ということは使わないスキルは発見しない方がいいんですかね?」
「いえ、スキル値は上げるだけでなく下げることもできます。スキルウィンドウを開いてみてください」

言われるがままウィンドウを開く。

「スキルの名前の横に上向きの三角形のマークが有りませんか?」

確認してみると確かに▲のマークがある。

「それが上昇のマークです。それが上向きの間はスキルに対応した行動をとるとスキルが上昇します。次にその三角に触れてみて下さい」

筋力の▲に触れると〓の表示になった。

「横棒2本の記号になりましたよね?その状態だとスキルが固定されて上昇も下降もしません。それではもう一度触れてください」

〓に触ると▼になった。

「これはスキルが下降するってことですかね?」
「はい、その通りです。その状態にしておくとスキル合計値が1000を超えている場合下降していきます。取り敢えずはまだ必要ないと思うので上昇に戻しておくといいでしょう」

もう一度触り▲に戻しておく。

「スキル上限が100で合計値の上限が1000ってことはスキルは10個ってことですかね」
「そういうスキルの人もいると思いますが別にスキルを100まで上げなければいけないわけではありません。例えば魔法使いが筋力を100まで上げてもそんなに使い道はないですよね?かと言って0にしてしまうとアイテムなどをあまり持ち運びすることができません。なのでこれと言ったスキル構成はなく人により最適のスキル構成が違うということです」
「なるほど、ただ上げればいいって訳でもないのか」
「ええ、でも上げたほうが効果が高いことは間違いありません。武器スキルを例に説明しましょう。武器を使うとそれに対応した武器スキルがあがります。しかしスキルを上げたからと言って攻撃力が上がるかと言ったらそれは違います。攻撃力はあくまで筋力や武器の性能によります。それでは武器スキルを上げる意味がないかと思われるでしょうがちゃんと上げる意味があります。まず武器スキルをあげると武器の扱いがやりやすくなります。ステータスの命中力があがったり攻撃時の隙が少なくなります。次に武器の装備制限の解除があります。少しこの剣を振ってみてください」

ロイさんが腰の剣を抜き俺に渡してきた。
綺麗な装飾が施されている剣だ。
手に握り振りかぶってみる。

ビュン

ストン

この剣はすごい。
石の壁に刺さっている。
ただ問題は振った瞬間すっぽ抜けてロイさんの顔をかすめて後ろの壁に突き刺さったことだ。
若干ロイさんの表情がこわばっている。

「えーっとなんかすみません」
「いえ、大丈夫です。いま振ってもらったように武器の装備制限以下のスキルの場合まともに扱うことが出来ないのです。この剣の装備スキルは70なのでイツカさんには扱えなかったというわけですね」

なるほどね、いい武器を装備したかったらスキルを上げろって訳だ。

「他にもスキルにはテクニックと呼ばれるものが存在します。一つ例を見せましょう」

ロイさんは壁に突き刺さった剣を抜き部屋の真中に置かれている巻藁に向かった。

「ハードスラッシュ!」

声を上げたかと思うと上段から袈裟懸けに巻藁を切り裂いた。
攻撃があたった瞬間なにか光ったような気がしたがあれはなんだろうか。

「今のが剣スキルの初級テクニックのハードスラッシュです。普通に切るよりも敵に与えるダメージが大体1.5倍ほどですね。テクニックによっては色々な効果があります。このテクニックにもスキル制限がありそれを超えないと使用することができません」
「今のテクニックってこの講習で教えてもらえるんですか!」
「ははは、残念ですがここでは教えることができません。片手剣講習とかだと教えてもらえるそうですがこの講習はすべての武器についてお教えしないといけないので時間的に無理なんですよ。すみませんね」

しまった、講習選択をミスったか!
しかししょうがない、テクニックというものがあるということを知ることができただけでもよしとするか。

「それではまず片手剣の説明からいきましょう」
「はい、おねがいします」

これから始まる講習に胸を踊らせながらロイさんの言葉を待つのであった。



現在のスキル


筋力:6.6
集中力:3.3
自然回復:2.4
落下耐性:1.2
解読:0.1


所持金:198Gold





--------------------------------------------------------------------------------------------------
あとがき

ついに戦闘スキルを取得するよ!
でもこの展開だとイツカは色物スキル構成になる予感がプンプンする


感想返し

>>ぐるーにーさん
ありがとうございます、期待にお答えできるように頑張ります!


>>雪林檎さん
自然回復のスキルはあくまで行動を行っていない時の回復能力なので戦闘スキルが低い状態で高くなってもいいかなぁっと。
後出しですが9話の説明にあるように合計値の上限の問題もあるので平気かと思ったんですがいかがでしょうか。

>>はきさん
表記方法は会話文はカタカナで地の文はアルファベット表記にしようと思っていたのですが最後の所がカタカナ表記に成っていましたね。
修正しておきます。

>>通りスカ裏さん
依頼料の方はギルドからのご祝儀ってことにしておいてくださいw
クエスト期間の指定は確かに長時間働かされそうですね。一応期限のあるクエストには依頼書に入れるようにしておきます。
隠しパラメータ…面白そうですね!



[19621] 10:講習の成果
Name: Ione◆2fe557b6 ID:0e633f31
Date: 2010/06/26 02:54
「はい、以上で講習は終了です。お疲れ様でした」

ロイさんが少し疲れた顔で言う。
俺も疲れているので軽く会釈するだけだ。
肉体的にはゲーム内なので暫く座っていれば勝手に回復する。
しかし精神的な疲れはどうしようもない。
なぜそんなに疲れているのかというと武器の数が多かったのだ。
まさかあんなに武器があるとは、総合を侮っていた。
俺が講習を受けた武器を羅列すると

小剣、大剣、片手剣、斧、片手槍、両手槍、棒、ハンマー、ナックル、弓、銃

全部で計11種類各30分ぐらいの講習だったので合計で5時間半。
疲れるはずだ。
若干ロイさんの表情が強ばっているのは疲労というより俺が原因だったかもしれない。
例をあげると

~大剣~
「じゃあこの剣を振ってみましょう」
「はい、って重!」
「あれ?あーその剣ちょっと必要スキルが高かったかな。じゃあちょっとこの剣とかえってなんでこっちにくるんですか!」
「けっ剣が重すぎて姿勢が保てないんですよ!」
「剣を持ったままこっちにこないで!剣を手放して!!!」
「あーそうですね、じゃあぽいっと」
「こっちになげないでーーー」


~銃~
「じゃあさっき説明したとおりあの的を狙って下さい。まずは一発でいいです」
「はい、わかりました」

ダーン

ダーン

ダーン

「結構反動強いんですね、腕がかなり跳ね上がりましたよ」
「ええ、そのせいで私のマントに穴が開いたんですね。というか一発でいいっていったじゃないですか!」
「いやぁ反動の性で指がトリガーにあたっちゃって」

うん、だったかもじゃないな。
確実に原因は俺だな。
まぁ初めての戦闘スキル取得で少し舞い上がっていたということで勘弁してもらおう。
こっちは初心者だしね。

「まぁ色々ありましたがイツカさんはすべての武器の講習をしっかりと受けていただけたということでプレゼントを上げましょう」
「え?マジですか!講習って何か貰えるんですね」
「おそらくこの講習だけだと思いますよ。まぁ今まで最後まで全部講習を受けてくれた人がいないので渡すのは初めてなんですがね」

まぁ5時間半もの拘束時間を考えると途中で離脱する人もいるのかもしれない。

「プレゼントなんですがこれです」

ロイさんは一冊の本を取り出した。
タイトルは『ハーレムパラダイス伝説』

「ロイさん、あなたってそういう人だったんですか。むっつりスケベですね」
「ちちち違うんですよ。別に私の趣味ってわけじゃないんですよ!読んで貰えれば分かります」
「いやそんな、こんな恥ずかしいタイトルの本を人前で読むだなんて。ロイさん、自分の性癖を人に押し付けるのは良くないことですよ?」
「そんな性癖じゃないですよ!読んで!この場で読んでみて!」
「もう、しょうがないですねぇ」

えーっとどんな本なのかな。



「ちょっと!あなたいったい誰が本命なのよ!」
「そうですわ、私というものがありながら他の娘にまで気をやるなんて!」
「おにぃちゃんが好きなのはもちろん私よねぇ?」
「何を言ってるんだ、僕に決まってるだろ!」
「あらあら皆さん往生際が悪いですねぇ」
「あぁ?ふざけんな俺が本命にきまってんだろが。ぶっ飛ばすぞ!」
「私はご主人様に一生尽くしてよいと許可を得ました。なので私がいれば他の方々は必要ありません」
「何言ってんのよ、私だって一生そばにいるって言ってもらったんだから!」
「まぁまぁみんな聞いてくれ。僕はみんなを愛している。ひとりだけを選ぶなんてできないよ。だから平等に全員に等しく愛を与えるよ。それじゃいけないかい?」

ニコリ

「「「「「抱いて!!!!」」」」



…なんだこの頭の悪い本は。

ピコーン、チャラチャ、チャラチャチャーン

おや、何かスキルを発見したようだ。

「スキルは発見できましたか?」

え?
驚いてロイさんを見る。

「武器総合というスキルを発見しているはずです。確認してみてください」

慌ててスキルウィンドウを開くと確かに追加されている。

総合武器:ランクA
説明『すべての武器を扱うことのできる力。スキルを所持していなくても武器を扱うことができる。ただしクラスが器用貧乏時しか効果は発動されない』
取得状況『武器スキルを10個以上取得した状態で『ハーレムパラダイス伝説』を読んだ。

おおおおお!
これはすごい。
ランクAってのも嬉しいが効果が凄まじい。
これひとつで武器を使い放題か!

「その表情だとちゃんとスキルを発見できたみたいですね」
「はい!でもこのスキルすごいですね。これさえあれば武器スキル無くていいだなんてチートじゃないですか」
「チート?」
「あぁ、反則って意味です」
「なるほど、しかしそううまくはいかないんですよ」

ロイさんは苦笑しながら説明する。

「武器総合スキルと一緒に他のものも発見しませんでしたか?」

他のもの?
ログを見てみる。

解読スキルが5.0上昇した。
総合武器のスキルを発見した。
クラス【器用貧乏】を発見した。

「クラス器用貧乏…?」
「ええ、クラスの知識はありますか?」
「あーギルドカードとかに書いてあるやつですよね?」
「ええそうです。そのクラスというものはスキルと同じように特定の条件により入手することができます。クラスには何かしらの効果がありそれを付け替えることにより効率よく物事をすすめることができます」
「なるほど、でもこの器用貧乏ってクラスはなにかあんまりよくなさそうなイメージがあるんですが」
「効果はステータスのクラスを触れば確認できますよ。自分の目で確認してみてください」

言われるがままステータスを開く
クラスの欄に触れてみると別にウィンドウが開いた。

クラス:異界の旅人
説明『異界からさまよい渡りし旅人。何者でもいがゆえ何者にもなることができる』
効果:なし

クラス:器用貧乏
説明『あちらこちらに気をやる浮気性なあなた!どれも中途半端になってはいませんか?そんなあなたにぴったりでしょう』
効果:攻撃力が0.8倍 初級武器しか扱うことができない 初級テクニックしか扱うことができない

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!」

驚きだ、この器用貧乏とかいうクラスはデメリットしかないじゃないか。

「こんなクラス一体誰が使うんだ」
「武器総合の説明に書いてあったでしょう?クラスが器用貧乏であることが前提条件になっているんですよ」
「でもこのクラスじゃ強い武器を見つけても装備できないってことじゃないですか」
「ええ、そうですね。でも使い方次第ですよ。講習の最初に私の剣がスキル70の剣を持っていることは言いましたよね?私は武器総合スキルもありますが片手剣スキルも上げているんですよ。今はイツカさんに講習するために器用貧乏クラスをつけていますけどね。クラスは付け替えることができるのでうまく活用するのが冒険者の常識なんです」

なるほど、奥が深いな。
まぁ選択肢は大いに越したことはないしランクAのスキルなんだから喜んでおくか。
最悪使わないという選択もあるし。

「その本返していただいていいですか?そんな本ですが結構貴重なものなんですよ」

確かにこの本は内容は酷いがランクAのスキルを覚えるのに必要なんだからレアなんだろうな。
持っていることがばれると少し恥ずかしいだろうが。
そんなことを考えつつ本を返す。

「それではこれで本当に講習はおしまいです。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」

ロイさんに別れのあいさつをして訓練室をでる。
受付のお姉さんに一応報告しておくか。

「あ、講習終わりました」
「お疲れ様です。講習を終えられましたので討伐系の依頼も受注することができるようになります。お受けになりますか?」
「えーっと取り敢えず武器がないのでまだいいです」
「そうですね。装備でしたらギルドの向かいの通りにあるエッグブレイカーというお店がよいかと思います。初心者向けの装備を扱っているところで値段もお手頃です。イツカさんは総合講習を終了なさったのでこの紙を持っていけば割引してもらえます」
「ありがとうございます。じゃあちょっと見に行ってきますね」
「いってらっしゃいませ」

ギルドをでて教えてもらったエッグブレイカーを探す。
すこし周りを歩いていると卵から剣が突き出ているデザインの看板を見つける。
名前からしてここかな。
なかに入ると所狭しと武器屋防具などが置かれている。
巨大な剣やポーションが入ったびんなどを珍しげに眺めていると声をかけられた。

「おい、坊主。なにか探しものか?」

振り向くとそこには見覚えのあるガチムチマッチョのオーガが立っていた。

「ラルゴさんここでなにしてるんですか?お店は平気なんです?」
「ん?お前は弟の酒場へ行ったことあるのか?」
「へ、弟?」
「ああ、俺の名前はゴルン。ここエッグブレイカーの店長をやっている。酒場のラルゴは俺の弟だ」

言われてみると少しこのゴルンさんのほうが背が高い気もする。
しかしそっくりだな。

「で坊主は何か探してんのか?」

ゴルンさんにも坊主呼ばわりされるのか。

「えーっと先程冒険者ギルドで講習を受けまして。受付のお姉さんにこのお店を紹介されたんですよ」
「なるほど、坊主は卵からくちばしが出てきたくらいか。なんの武器を使うんだ?」
「武器はまだ決めてないんですよ」
「講習受けた武器でいいんじゃねーのか?」
「総合の講習受けたんですよ」
「お前変わった奴だな。んーだったらいくつか武器を使って合う奴をさがすしかねーな」
「そうですねぇ、取り敢えず遠・中・近3つの距離で戦える武器が欲しいですかね」
「そーすっと一般的なところでは片手剣に槍に弓ってとこか」
「銃ってあるんですか?」
「あることはあるがひよっこにはおすすめしないぞ。銃自体が少し高価だってのもあるが撃つための弾が結構するんだよ。だからある程度稼げるようになってからのほうがいいとおもうぜ」
「なるほど」
「坊主、予算はどれくらいなんだ」
「えーっと…198ゴールド?」
「よし、帰れ」

ゴルンさんは俺に向かいしっしと手を振る。

「そんな!この店は客を差別するんですか!」
「あほか、198ゴールドじゃポーションも買えんわ!」
「えーそうなんですかぁ。というか物価がいまいち分からないんですが」
「うちの商品でいったらそこのダガーが2000ゴールドだ。片手剣は盾とセットで2500、槍は2000で弓が2200って所だ」

ぐっ結構するんだな。
ラルゴさんとこでの仕事が1時間で1000Goldだったのを考えると7時間くらい働かないと装備が揃えれない。

「あ、割引券あるんですが198ゴールドで買えちゃったりしませんか?」
「一昨日きやがれってんだ」

くそー、しょうがない。
ギルドで仕事して稼ぐしか無いか。

「わかりました、お金稼いでまた来ますよ」
「おぅ、ちゃんと割引はするから頑張って稼いできな」

新たな目標ができたな。
そういえばさっき気がついたんだがステータスのウィンドウに時計が付いている。
これはどうやら現実の時間を表しているようだ。
時刻は深夜2時35分。
さすがに疲労感があるな。
講習も6時間近くかかったしな。
そろそろ一旦現実に戻るか。
「ログアウト」
明日からはお金稼ぎだな。
そんなことを思いながらログアウトのカウントを眺めていた。





現在のスキル



筋力:10.2 ↑up
集中力:3.3
自然回復:8.7 ↑up
落下耐性:1.2
解読:5.1
小剣:5.1 New!
片手剣:5.0 New!
大剣:4.9 New!
斧:5.1 New!
片手槍:4.8 New!
両手槍:5.3 New!
棒:4.5 New!
棍棒:4.7 New!
素手:5.3 New!
弓:6.0 New!
銃:5.4 New!
総合武器:0.1 New!







-----------------------------------------------------------------------------------------
あとがき
講習終了、無事戦闘スキルをゲットしました。
まぁまだ装備何もないので意味ないですが。

話数も10話と区切りがいいのでそろそろオリジナル板に移ってみようかなんて考えております。
おそらく次回更新時に多少手直しをかけてオリジナル板に移動していると思います。
沢山の感想ありがとうございました。
もしよろしければオリジナル板のほうでもかわいがってください。


感想返し

>>通りすがりさん
確かに花売りの少女は涙目ですね
一般NPCと冒険者関係とでは消費するGoldが違うということにしておきましょうw

>>雪林檎さん
一応スキル全部ひっくるめて1000です。

>>kntさん
発見したスキルは0.0に下げてもそのままです
なので割と廃人プレイヤーとの垣根は低くなる…はず

>>はきさん
今回の講習は取り敢えず主要武器なだけで何種類あるのかは私にも不明ですw
修行風景大幅にカットしてしまって申し訳ない!

>>通りすがりの日本人さん
完全に読まれきってましたね
名前も全く同じとかオマエハオレカ



あれ、板移動するときはこっちは消していくのかしら?


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