(W杯、24日 デンマーク1―3日本)
デンマーク戦後、肩を組んで喜ぶチームメートの方へ、ピッチの反対側からゆっくり走っていった1得点1アシストの本田圭佑。しかし歓喜の輪には加わらなかった。
「うれしいですけど。思ってたよりなぜか喜べない。もっと喜べると思ってたんですけど、満足できないです」
ヒーローとは思えないコメントがテレビカメラの前に立った本田の口から出た。
記者の取材を受けるミックスゾーンでは「喜べない」という言葉の理由を聞かれたが、語りたがらなかった。引き留めるとようやく本音を言った。
「そうなんです、もっと苦労すると思ったから。ちょっとあっけなかったですよね」
強豪国も苦しむ関門としてイメージしていた1次リーグ最終戦が、ただの通過点に感じられた。
1次リーグ初戦のカメルーン戦の前日に誕生日を迎えた24歳。大会前にこう言っていた。「サッカー選手としてはもう若いと思っていない。人は短期間で成長したと言ってくれるかもしれないが、自分としてはもっと成長した選手が世界にはいるはずだと思う。僕は、日本人がだれも想像しなかったような世界に到達したいと思っている。だから今、感じているのは焦りなんですよ」
急成長のきっかけとなったオランダのフェンロからロシアのCSKA(チェスカ)モスクワへの移籍も、理由は「焦り」だった。「オランダのアヤックスやPSVからもオファーはあったが移籍金が折り合わなかった。フェンロで立ち止まるつもりはなかったから、移籍金を出してくれるモスクワに飛びついた。あとは自分次第だと」
はるかな高みを目指すうちに力がついている。「(W杯で)大事な試合を3試合も経験してますから、もう慣れてきてますよ」
上昇志向の強い本田とFKを奪い合い、2点目をあげたのは遠藤保仁。「本田がけりたそうなそぶりを見せていたけど、1点取っていたから、今度は『オレけるよ』って」。活躍が目立つ本田について「前を向くと力を出す選手。そうさせてあげるのが僕の役目」と言っていた。押し出しは強くないが、場面によっては、自己主張をいとわない芯の強さが遠藤にはある。
日本を決勝トーナメントに導く力となったFKを決めた2人に象徴されるように、日本に個性のハーモニーが生まれてきている。(編集委員・忠鉢信一)
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