【社説】中国も朝鮮戦争の歴史的事実を認めよ
中国国営の新華社通信が発行する国際先駆導報は24日、韓国戦争(朝鮮戦争)開戦60周年特集記事の中で、「1950年6月25日、北朝鮮の朝鮮人民軍が38度線を越えて攻撃を開始し、三日後にソウルを占領した」と報じた。中国共産党機関誌の人民日報が発行する環球時報の英字版も、冷戦時代の歴史を研究している華東師範大学の沈志華教授へのインタビュー記事で、「韓国戦争はは韓半島に親ソ連政権を樹立しようとしたスターリンと、統一を目指す金日成によって起きた」と報じた。
中国政府は韓国戦争について、「南北間の内戦」という公式の立場をとっている。そのため、中国政府や共産党を代弁する国営メディアが、数十年にわたり世界が認めてきた事実を今になって報じているのは、注目に値する。しかし、中国政府による韓国戦争の公式の立場そのものがすぐに変わるとは考えられない。国際先駆導報の特集記事でも、「北朝鮮が攻撃を加えた」という文言は、韓国戦争日誌に1回登場するだけだ。それでもこの記事が注目を集めると、国際先駆導報や新華社通信のホームページ、中国国内のポータルサイトなどから、これらの文言が一斉に削除されるという騒動が起こった。
韓国戦争は現在の中国と北朝鮮との関係を生み出した母胎だ。温家宝首相が昨年10月、毛沢東の長男・岸英の墓がある中国人民支援軍烈士墓を訪問したように、中国の要人は北朝鮮を訪問すと必ず、韓国戦争で戦死した中共軍兵士の墓を訪れる。韓国戦争には70万人の中共軍が参戦したが、これについて中国政府は「米国に対抗する北朝鮮を支援し、社会主義の大家庭と国家を守るための『抗米援朝保家衛国』」という立場を守っている。
中国も以前は北朝鮮が主張する「北進説」を額面通り受け入れていたが、1990年代初めに旧ソ連の極秘文書が公開され、関係者の証言が次々と明らかになると、修正主義史観に基づいて「韓国戦争内戦説」へと立場を変え、その後は一貫してこれを守っている。中国では教科書にも、「韓国戦争は南北間の内戦」と記載されている。
中国も韓国国内の左派勢力と同様、自らの政治的、イデオロギー的な尺度に基づき、韓国戦争についての客観的事実を歪曲(わいきょく)曲している。北朝鮮政府が住民への弾圧、核開発、哨戒艦「天安」への攻撃などといった数々の奇行を行っているにもかかわらず、中国政府がこれらを擁護し続けているのも、「韓国戦争に関するでっち上げられた記憶」が、中国の政策決定に影響を及ぼしているからだ。中国も今や東アジアと世界秩序を主導する国へと発展したのだから、今後は冷戦的な思考にとらわれることなく、韓国戦争の誤った記憶も正々堂々と正すべきだ。
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