中国で「韓中日通貨同盟論」が浮上
これは、中国政府のシンクタンク的な役割を果たす清華大国際問題研究所が提案したもので、環球時報、国際金融報、解放軍報など新聞各紙を通じて広がっている。
A3通貨同盟の趣旨は、東アジア地域で経済力が強い韓中日3カ国が主導し、アジア版のユーロ圏を創設するというものだ。3カ国がまず通貨を統合し、そこに東南アジア諸国連合(ASEAN)を加え、欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)といった「東アジア通貨共同体」を創設する構想だ。域内人口はEUの5倍に当たる20億人を擁し、域内総生産(GDP)は7兆ドルで、EUの70%に達する。
東アジアが共通通貨を使用することになれば、域内の貿易取引が安定し、通貨危機の危険が大きく低下する効果がある。しかし、その一方で、各国の財政政策における裁量権が制限されることにもなる。
こうした構想が浮上する背景には、欧米向けの輸出が多い韓中日が金融危機のたびに最大の被害者になっているとの認識がある。日本は、米国経済が「双子の赤字」に苦しんでいた1980年代にプラザ合意で急激な円高が進み、90年代には「失われた10年」をもたらした。韓国も、97年と2008年の金融危機で外貨準備が危機に陥り、米国債を大量に保有する中国も今回の金融危機でドル安が進み、国富が目減りした。
清華大国際問題研究所の閻学通所長は、「ドルを基軸通貨とするアジア3カ国は、金融危機のたびに最大の被害者となっている。人民元が基軸通貨となるのは早いため、韓中日3カ国が通貨同盟を創設し、ドルへの依存から脱却しなければならない」と主張した。
駐中韓国大使館の劉光烈(ユ・グァンリョル)財経官は、「中国と日本による協力など難題は少なくないが、域内の内需市場拡大、通貨危機リスクの低下など韓国の実益も少なくない。長期的には米国への過度の依存を軽減できるという点でも、方向性は正しい」と指摘した。
しかし、上海社会科学院金融研究センターの潘正彦副主任は、「経済理論上はそうだが、(米国の反対など)大きな政治的困難が伴うため、可能性は極めて低い。韓中日は3カ国にすぎないが、欧州の数十カ国よりも意見の一致を見るのが困難だ」と述べた。
北京=崔有植(チェ・ユシク)特派員