【コラム】北朝鮮サッカーの善戦を願うワケ(下)

 その後、金正日(キム・ジョンイル)総書記はサッカー強化を再び推進した。W杯の英雄を再びサッカー界に呼び寄せ、4・25チームを結成した。このとき、選手全員の名前を覚えるほど、サッカーへの関心は深かった。だが、金総書記はチームがW杯出場に何度も失敗すると、徐々に恨みを持つようになったという。94年の米国大会予選では、本大会に出場すれば選手たちにベンツと1万ドル(現在のレートで約89万円)の賞金を与えると約束し、金総書記の義弟・張成沢(チャン・ソンテク)氏は現金が入ったかばんを準備していたという。しかし、カタールで行われた最終予選で韓国に3-0で敗れるなど、結果的に本戦出場は果たせなかった。すると金総書記は、「サッカーで恥をかいたため、10年は外に出ず、国内で実力を磨け」と指示した。そのため北朝鮮サッカー代表は、6年間にわたり海外で試合することができなかった。

 張成沢氏も、自ら不遇な時期にサッカーチームを訪れ、多くの時間を過ごしたと言われるほどのサッカー好きだ。張成沢氏の熱心な説得により怒りをとどめた金総書記は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)系選手たちの合流を認める、という破格の措置を行った。これにより、北朝鮮代表の実力は向上し、ブラジルとの試合ではその真価を発揮したが、ポルトガル戦では現実の壁を再び思い知らされた。

 W杯出場とブラジル戦での善戦は、北朝鮮政府と苦痛にあえぐ住民たちに、「過去の栄光」を思い起こさせたはずだ。ところが、ポルトガル戦ではそれが一気に恥と絶望へと変わってしまった。これが再び金総書記の怒りを呼び起こした場合、どのようなことが起きるかは予想もできない。カタールで韓国に0-3で敗れた北朝鮮代表選手たちは、平壌の順安空港に到着するや、荷物も下ろさないまま炭坑に直行した。今回の試合後、ポルトガルの選手たちは口々に、「北朝鮮の選手たちが罰を受けないか心配だ」と話していたというが、これは決して杞憂ではない。そのため北朝鮮出身のわたしは、北朝鮮の選手に最後の試合でぜひとも善戦してほしいと願うばかりだ。

姜哲煥(カン・チョルファン)記者

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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