大手も見習うべき優良スーパーの効率経営
今年の1月、株式市場から静かに退場したのがオオゼキ。都内と神奈川県におよそ30店舗を構えている商品スーパーだ。経営陣による自社買い、いわゆるMBO(マネジメント・バイアウト)による非上場化だった。
そのオオゼキのパート比率は、およそ3割。7~8割が一般的な同業他社とは対照的に、異色の存在だった。何より20期連続で増収増益を実現。営業利益率も7%程度の高率を維持していた。
従業員約1000人の年間平均給与は487万円。平均年齢29才台ということを考慮すれば、スーパーでは上位クラスだったといっていいだろう。
スーパーの経営で、真価を問われるひとつは惣菜。やり方次第では、最も儲けを出しやすいとされる。その惣菜部門の直営化を図るなど「マス」を志向する大手とは異なり「個店主義」を採用、権限を与えられた各店舗がきめ細かい運営をしているのがオオゼキの強み。株式市場からの退場に対して、惜別の気持ちを抱いている投資家も少なくないだろう。
営業利益率7%ということは、100円のダイコン1本を売るごとに7円の利益を得ているということ。100円の販売で10円から20円の営業利益を獲得する靴のABCマートや「ユニクロ」のファーストリテイリング、家具のニトリなどには劣るものの、スーパーでは飛び抜けた存在だったことは、表を見てもらえれば一目瞭然。
国内のスーパーを代表する、イトーヨーカ堂の営業利益はたったの0.1円。ダイエーにいたっては、売れば売るほど赤字。ダイエーと同様にイオングループに入っている、マルエツが100円の販売につき2.3円の利益を確保している、というのが前期の状況だ。
いずれにしても、業界全体では売上高の対前年比マイナスが続き、ピーク時からは4分の3と1980年代の水準まで縮小したように、スーパー業界を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。
売上高2兆円企業を実現したヤマダ電機などの家電量販店、ホームセンターやドラッグストアなどに顧客を奪われていることに加え、地方では人口減少のダブルパンチ。たとえば、毎週1回は足を運び、5000円の買い物をする顧客を1人失うだけで、年間では24万円の売上減。10人なら240万円、100人なら2400万円も売上が減少するということ。空恐ろしい数字だ。
たとえば、かつては流通トップに立ったこともあるダイエー。02年度には2兆円台だった売上高が、08年度には1兆408億円に下落。従業員の平均給与の発表はまだないことから示さなかったが、09年度はついに1兆円を割り込んだ。
1兆円を超える減少。これは、企業ベースでの売上げ約3600億円の日本マクドナルドHDと、7000億円弱のファーストリテイリングが消えてなくなった、ということ。
イトーヨーカ堂も、グループの中核が持株会社のセブン&アイHDに移行したことで、3兆5000億円だった売上高が、1兆円台に下落している。
経営不振なのに給料上昇のカラクリ
気になるのは、社員の給料。だが、売上高の減少とは対照的に、右肩上がりとはいかないまでも微増傾向を示している。
そのカラクリは単純明快、従業員の減少だ。02年度と08年度で比較してみよう。ダイエーは02年度、単体ベースの従業員1万314人を抱えていたが、08年度は5984人とおよそ4割減。イトーヨーカ堂も同期間、1万3979人から9881人と、約3割の減員である。
一方、ダイエーが計上している「従業員給料手当」は、08年度745億円。これは02年度1097億円から、352億円の減少だ。イトーヨーカ堂も02年度の「従業員給与・賞与」1386億円が、08年度は1273億円と、マイナスになっている。
人員並びに人件費をカットしながらどうにか、在籍する従業員の給与アップを実現してきたという苦しい台所事情が、これらの数値からは明らかになってくる。
主要スーパーの給料比較
主要スーパーでは、持株会社の原信ナルスHDやトーホー、アークスが500万円台から600万円台。イオン897万円も持株会社従業員の数値。その他では、経営破綻から復活した旧ヤオハン、現マックスバリュ東海の608万円や、旧高島屋ストアを傘下に収めているイズミヤの573万円が上位クラス。
スーパー、とくに食品スーパーは近所に欠かせない存在だけに、「頑張れスーパー」とエールを送りたい。
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