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きょうの社説 2010年6月26日
◎大和小松店閉店 地域の浮沈握る責任重い
大和の店舗削減計画で、4月の上越、長岡店に続き、小松、新潟店が25日で閉店し、
同社は香林坊、富山、高岡の3店舗体制で経営再建に踏み出すことになる。小松市など閉店した地元では、跡地の活用に頭を痛める姿がみられ、百貨店の撤退が一企業の経営問題にとどまらず、地域に大きな影響を及ぼすことがあらためて浮き彫りになっている。経済情勢は製造業などで明るい兆しがみられるものの、日本百貨店協会が発表した5月 の全国百貨店売上高は、27カ月連続で前年水準を下回った。都市部では前年水準を超える大型店舗がみられる一方で、中小規模の店舗や地方店舗は苦戦を強いられている。 高額消費の低迷などが背景にあるとはいえ、旧来の百貨店経営では消費者の心をつかみ 切れない構造的な要因も指摘されている。店舗閉鎖で区切りをつけたからには、大和は地域の浮沈を握る責任の重さを胸に刻み、危機感をもって経営改善に取り組んでほしい。 大和は昨年10月に経営再生計画を発表し、不採算4店舗の閉鎖と大規模なリストラに 踏み切った。新潟県からは完全撤退し、残る3店舗に経営資源を集中させることになる。小松市では、同じく閉鎖したコマツの小松工場で跡地計画が決まったが、中心市街地再生の展望は依然として見いだせていない。そうした苦境のなかでの大和撤退である。地域の一番店が地元経済に与える影響の大きさを考えれば、小松店閉店の現場にトップの姿がなかったのは残念である。 百貨店業界は、価格帯を下げて幅広い顧客層をターゲットにするか、あるいは高級路線 を維持し、専門性に磨きをかけて多様なライフスタイルを提案するか、生き残りをかけた模索が始まっている。時代の変化を読み取り、新たな成長モデルを描けた企業が勝ち残るだろう。 大和は旗艦の香林坊店をはじめ、富山、高岡店はいずれも中心市街地に位置し、街の顔 になっている。都心の回遊性を高め、にぎわい創出の重要な拠点である。地域を愛し、街づくりに貢献する姿勢を忘れず、思い切った経営戦略で再生を図ってほしい。
◎サミット開幕 経済成長重視の主張を
カナダで開幕した主要国(G8)首脳会議(ムスコカ・サミット)は、主要議題となる
ユーロ危機への対応について、成長を重視する米国と、財政立て直しを主張する欧州諸国の対立が懸念される。菅直人首相は、サミット出発に先立つ会見で、「わが国が経済成長と財政再建の両立をやろうとしていることを伝えて、各国に参考にしてもらえればいい」と語ったが、矛盾する二つの目標を掲げていては説得力を欠き、米欧どちらの理解も得られないのではないか。成長も財政再建もという虫のいい目標を並列させるのではなく、経済成長重視の姿勢をはっきりと示してほしい。ギリシャからスペイン、ハンガリーなどに飛び火した財政危機の影響で、欧州連合(E U)は財政立て直しが急務となっている。リーマン・ショックから回復途上の世界経済にとって、欧州の財政不安は新たなリスク要因となっており、欧州各国は国家財政の信頼性回復のために、まず財政健全化を優先すべきと考えている。 これに対し、米国は欧州諸国が財政赤字を大幅に削減すれば、世界経済の回復を阻害し かねない点を懸念している。特に米国はドイツが目指す過去最大の歳出削減策に強く反対しており、ドイツと同様、経常黒字国である日本や中国に対しても内需拡大策に力を入れ、必要以上に歳出削減しないよう求めている。 中国は既に人民元の弾力性を高める方針を発表し、元高誘導によって内需を拡大させる 狙いを明確にした。菅首相は日本の財政再建計画や経済成長戦略について説明し、理解を得たい考えのようだが、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を一体として実現していくとの説明に各国首脳が納得するとは思えない。矛盾をはらんだ目標を掲げ、どの政策課題も実現できないリスクにもっと目を向けるべきではないか。 外交・安全保障では現実路線を選択したといわれる菅政権も、経済政策に関してはリア リズムを欠いているように見える。理想主義的、非現実的と批判された鳩山外交の二の舞にならないか心配だ。
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