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嵐を呼ぶアスカのニンシン
作者:あり
事の発端は第壱中学校2-Aで交わされたサードチルドレン碇シンジとその友達である
鈴原トウジ、相田ケンスケ、洞木ヒカリとの会話だった。
秋も深まり寒さも本格的になった11月頃……と言いたいところだが、
セカンドインパクトにより日本は常に常夏となっている。
この際季節は関係ない。確実な事は惣流・アスカ・ラングレーの誕生日が近づいていると言う事だ。
トウジとケンスケはアスカの逆鱗に触れることを恐れて、かなり前から計画的に貯金をしてプレゼントを予約していた。

「ワイらはセガサターンを予約して来たんや。ケンスケと半分ずつ金を出しおうてな」
「セカンドインパクト以前のゲーム機の復刻版で、発売日は以前と同じ12月3日!ギリギリ間に合ってくれて助かったよ」
「多分、アスカは喜ばないと思うよ」

即答したシンジにトウジとケンスケは動きを止めた。シンジからその理由を聞くと、トウジとケンスケは顔色が悪くなった。

「アカン、ワイら惣流に殺されてしまう……」
「惣流はゲームが好きだから行けると思ったんだけど、予想外の展開だな」

ヒカリは最初手作りのエプロンをプレゼントしようと思っていたが、姉や妹たちの世話で時間が取れなくて
アスカの誕生日まで完成させることができそうにないので、思い切ってシンジに相談することにした。

「あのね碇君。私はアスカの誕生日の料理やケーキを作ってあげようと思うの」
「それはいいね委員長。アスカもきっと喜ぶと思うよ」
「碇君が料理とかケーキとか作りつもりでいるなら重なってしまうかと思って」
「大丈夫、僕は別のプレゼントをあげるから」

固まっていたトウジとケンスケはやっと動き出し、シンジをからかう余裕も出て来た。
そこで冷やかすようにシンジに質問を浴びせる。

「センセは惣流へのプレゼント、どないするつもりや?」
「高い洋服とかアクセサリーとか買わされるんじゃないのか、惣流のやつブランド物とか好きそうだからな」
「そんなお金で買えるようなものじゃないよ。」
「手作りのペアルックのお洋服とか?」

ヒカリはそう言って自分でほおを上気させている。自分がトウジと同じ服装をしているという妄想の世界に旅立ってしまったようだ。
しかし、次に言ったシンジの言葉にヒカリは現実世界に呼び戻された。

「アスカには僕の子供をプレゼントしようと思うんだ」

トウジたち三人はシンジが言った事を聞き間違えたと思って、まばたきを繰り返していた。

「僕の子供、アスカはきっと喜んでくれるだろうな」

今度はシンジの方が妄想の世界に旅立ってしまったようだ。いやらしそうな(トウジ主観)笑いを浮かべている。
シンジの旅は怒気をはらんだトウジたちの叫び声によってさえぎられてしまった。

「センセ、そりゃマズイやろ!」
「イヤーンな感じ」
「碇君、不潔よー!」

教室の隅で本を読みながらシンジたちの会話を聞いていた綾波レイはほんの少しだけ暗くなった表情で、呟いた。

「碇君は私より、セカンドを選んだのね……」

そこへ用事で教室を離れていたアスカが戻って来た。顔を真っ赤にして激しく首を振っているヒカリと
シンジをジロジロと見るだけで話しかけないトウジとケンスケの様子に違和感があったアスカはシンジに原因を聞いてみる。

「いったい、何があったの?」
「アスカの誕生日に例の物をプレゼントしようと思って」
「やったあ!バカシンジったら、プレゼントの相手をファーストにするかアタシにするかで散々悩んでいたものね……」

アスカの言葉にシンジはただ乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

「シンジから授かった子供なら、アタシ一生懸命育てるからね!」

このやり取りを聞いたトウジたちは嬉しそうなシンジとアスカに声を掛けることができなかった。
学校で監視を行っていたネルフの諜報員は、慌てて葛城ミサトに報告をいれた。








「……何ですって!?」

諜報部から報告を受けたミサトはハンドルを切り損ねて運転していたルノーを電柱に衝突させてしまった。
ミサトが聞いた報告に比べれば車など些細な問題だ。ミサトは頭を抱え込んでしまった。

「……司令にばれたら減給……いえ、あたし一人じゃカバーしきれないか。こうなったらばれるのを覚悟でリツコに頼るしか……」

ミサトは持っていた携帯電話で赤木リツコに緊急回線で連絡を入れた。




「……何ですって!?」

ミサトから連絡を受けたリツコはコンソールの間違ったスイッチを押してしまっていた。

「先輩、それはベークライトの噴射スイッチです!早く止めてください!」

リツコは電話を耳にしたまま固まってしまい、動こうとしない。
業を煮やした伊吹マヤがリツコの側に駆け寄って停止スイッチを押そうとした時にリツコの呟きが聞こえてしまった。

「アスカが妊娠ですって……」
「いやー!アスカちゃん不潔よー!」

パニックになったマヤは取り乱して手当たり次第いろんなスイッチやレバーをいじりまくる。

「マヤちゃん、それはブレーカー……」

青葉シゲルの呟きの後、ネルフの施設は一部停電し、その報告は入りこんでいたスパイによってゼーレや日本国政府に伝わった。




ネルフの総司令、碇ゲンドウはゼーレの緊急会議の呼び出しを受けていた。
キールをはじめ、人類補完委員会のメンバーは険しい顔をしている。

「碇。弐号機が使えなくなるとはお前の監督不届きにはあきれてものが言えんな」
「弐号機はパイロットを補充すれば問題なく使えます」
「そう言う事を言っているのではない。零号機パイロットまで使い物にならなくなったらどうするのだ」

キールは反省の色を見せないゲンドウを見てため息をついて、諦めたように言った。

「弐号機パイロットの代替として、フィフスチルドレン渚カヲルをそちらに送る。それでいいな」

ゼーレの会議が解散した後、ゲンドウは急いでシンジを司令室に呼びつけた。
シンジが司令室に入ると、怒った表情の冬月コウゾウといつもより殺気が少し感じられるゲンドウが待ち構えていた。

「父さん、突然呼び出して何の用?」
「シンジ君。君はここに呼ばれた理由がわかってないのかね」
「……シンジ。お前はセカンドチルドレンにプレゼントをするそうだな」
「そんなの、父さんには関係ないじゃないか!」

シンジは怒って司令室を出ようとする。振り返ったシンジをゲンドウが呼びとめた。

「そのポケットに入っているものは何だ」

決定的証拠を見られたシンジは観念してゲンドウに全てを話すことにした……。

「……なるほどな。では赤木君に頼んでお前の子供をパワーアップさせよう」
「やめてよ!だから父さんに話すのは嫌だったんだ!」

怒ってシンジが出ていった後、ゲンドウはリツコに電話を掛ける。

「赤木博士か。至急手配してほしいものがあるのだが……」

その通話を側で聞いたコウゾウは顔色を変えた。

「碇、それでは人類補完計画が台無しだぞ!」
「先生も人類補完計画などを止めて我々の仲間にはいりませんか」

コウゾウがいくら説得しても、ゲンドウは主張を変えなかった。コウゾウはため息をつくことしかできなかった。

「……この事は俺の方から委員会に報告するぞ。ゼーレは確実に敵に回る」
「先生、問題はありませんよ。アメリカ支部はすでにわれらの味方です。ゼーレも敵対行動を起こさないでしょう」
「……だといいんだがな」

コウゾウは直ちにゼーレの会議招集を要請し、緊急会議が開かれた。
議場でゲンドウは人類補完計画の中止を宣言し、議会は騒然としたが、
ゲンドウが理由を説明すると、事態は丸く収まった。




そのころシンジの爆弾発言を聞いたミサトとリツコは対策を練るためにリツコの研究室で話し合いをしていた。

「アスカの身体検査の結果はどうだったの?」
「性交渉の痕跡は見られなかったわ」
「じゃあ、シンジ君はアスカの誕生日にアタックをしかけるつもりなのね」
「しかも、アスカの方も承諾している。これは由々しき問題ね」
「アスカの誕生日はあたしが厳重に見張らないとね」
「フェイントを掛けてずらす策略かもしれないわよ」
「……それは勘弁してほしいわ。あたしが毎晩眠れなくなっちゃうじゃない」
「でも、シンジ君が約束の時間を破るとは考えにくいわね」






そして、様々な人々を巻き込んで……嵐を巻き起こした運命の日、アスカの誕生日がついに訪れた。

「ハッピーバースデー、アスカ」
「おめでとう」
「めでたいなあ」
「おめでとう」
「クェッ、クェッ」

コンフォート17の葛城家ではヒカリたちも集まって、アスカの誕生日パーティが行われていた。
TVアニメ版の最終話のラストのように拍手と祝福の言葉がアスカを包み込む。そしていよいよプレゼントが渡される。
はじめはトウジとケンスケだ。

「惣流。ワイらからのプレゼントや」
「二人で一つなんて……ケチくさいわね」
「まあ、そういうなよ」

アスカが箱を開けると、中からゲーム機の本体が出て来た。

「これって最新機種じゃない。値下がりしたとはいえ高いのよねー。ありがと、相田、鈴原」
「お……おおきに」
「ま、まあな」

アスカから自分たちに向けられた笑顔にトウジとケンスケは困惑してしまった。
その様子を見たヒカリがちょっとピリピリしながらアスカに携帯のストラップを押しつけた。

「はいアスカ、プレゼント!」
「あ、ありがとう」

少し驚きながら受け取った緑の恐竜のストラップをアスカは優しくなでまわした。

「あたしと加持とリツコからはこれよん♪」
「これってファイアーエムブレムね。アタシやってみたかったの!」
「難易度は100段階まで設定できるように改造してあるわ」

リツコは胸を張って誇らしげに答える。シンジはやはりリツコにばれなくて良かったと胸をなでおろした。

「シンジ君は何をプレゼントするのかしら?」
「恥ずかしいから、アスカと二人っきりになってからプレゼントします」

リツコはカマを掛けるつもりで質問したのだが、これは相当ヤバイ。そっとミサトに合図を送るとミサトも神妙な顔で頷き返した。




夜が深まり、アスカの誕生日パーティは解散となった。静かになった葛城家でシンジはこっそりとアスカの部屋に入り込む。
ミサトもすかさずシンジの後をつけ、アスカの部屋の様子をドア越しにうかがう。
すぐに踏み込んではダメだ。せめて服を脱がせるなどの現行犯逮捕ではないととぼけられるだろう。
ミサトは固唾をのんでアスカの部屋で交わされるシンジとアスカの会話を聞いた。

「シンジ、早く差し込んでよ」
「まってよ、そんなに慌てると穴に入らないよ」

何ですって!いきなり本番かい!ミサトはパニックになってアスカの部屋のドアを開けた。








……すると驚いてミサトの方を見るアスカとシンジの手にはゲームボーイが握られていた。

「ま、まさかシンジ君のプレゼントって……」
「ええ、ポケモンでミュウの子供をゲットしたのでアスカにあげようと思って」
「シンジからもらった子供なんだから大切に育てるわ」

ミサトはその場に崩れ落ちてしまったが、その直後に怒りがこみ上げて来た。

「紛らわしい言い方しやがって……このバカシンジがーーーー!」

シンジはミサトに思いっきり投げ飛ばされてしまった。



そのころ、ゼーレの定例会議では、マリオカートで遊ぶキールとゲンドウたちの姿があった。

「接戦だったのに、ゴール直前でキノコでダッシュとは卑怯だぞ碇!」
「死海文書にない事も起きる。老人のあなたにはいい薬です」

人類補完計画もゼーレのエヴァ量産機もネルフ本部に襲撃してくることも無く、なんとなく使徒を倒して世界はおおむね平和になったと言う。
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