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[19565] 怠惰な操り少女(オリ主もの・ある意味最強)
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/25 16:50
 いきなりで何ですが、私こと松田杏はとてもめんどくさがりです。あ、杏はあんずって読んでください。あんちゃんはだめです。

 まず、朝起きた時点で布団から出るのが嫌になります。一日の始まりが憂鬱なんです。学校とか本当に面倒で嫌になります。
 休日ならまだ目覚めようとも思えるのですが平日は、それはもう面倒で仕方がありません。勉強なんていいですって、最低限だけで。理科とか必要無いですよ。
 でもちゃんと学校に行かないと学校からうちの両親に電話が行ってしまうので休む訳にはいきません。
 両親は私が当てた宝くじのお金で世界旅行に行ってます。私は面倒なので行ってません。
 小学三年生の子供を置いて超長期旅行とか頭おかしいんじゃないかと思われがちですが、両親は私が一人でも何にも問題が無いと知っています。だからこそのこの状況です。知ってても普通は行きませんけどね。

「・・・起きなきゃ」

 十分ほど未練がましく愛しの布団とのひと時を過ごした後、誠に嫌々ながら起床して着替える事にします。
 でも着替えを出したり自分で着替えるのが面倒なので、着替えにお願いして自分で着させて貰います。
 ・・・いえ、別に頭がおかしいわけではありません。ただ、実際そんな状況なだけなんです。
 しいて言えば、超能力的な何かでしょうか?私は物心ついた頃には既に、物や植物等の『無機物・又は強い意志を持たない生物の声を聞いて、自在に操る』という不思議な力を持っていました。
 この能力のおかげで私がどれだけ堕落した生活をしても、なんだかんだで何とかなってしまいます。ちなみに両親は「すごいなぁ」で済ませてました。流石は子供を放って旅行にいける両親です。普通じゃありません。
 先ほどの『着替えに着替えさせてもらう』のもこの能力のおかげですね。

 着替えた後は学校に持っていく弁当と朝ごはんを作らなければならないのですが、これも食材や調理道具に指示を出して全自動にします。
 宙を浮きながら勝手に斬り分かれていく食材達、そしてそれを勝手に炒めたり揚げたりする鍋・・・そしてそれを横目に見ながら、私はソファーに座って優雅にコーヒーブレイクです。砂糖とミルクたっぷりですが。
 
 朝ごはんが出来るまで、とりあえず私は朝のニュース番組を見ます。別に世間の情報は気になりませんが、朝はそれくらいしか見るものが無いから見ているだけです。
 時々テレビ越しに能力を使って悪戯してみたりもしますが、それは流石に余程暇じゃない限りしないようにしています。あ、勿論生放送以外はそんな事不可能ですよ?
 ちなみに以前やった悪戯は生放送のホラー番組で、後ろのセットにあった電球がいきなり割れるという悪戯でした。あの時の騒然としたスタジオの空気は中々良い感じでしたね。

 朝ごはんと弁当が出来上がったので早速食事にします。今日の朝ごはんはベーコンエッグとトーストです。オーソドックスですね。
 台所の方では既に汚れが落ちている調理器具が棚に戻っていて、ゴミ箱には寄せ集めた汚れや油が入っています。この能力は掃除にも使えて本当に便利です。

 さて、結局起きてからまともに動いたのが『自室から居間への移動』だけだった朝のひと時ですが、此処から先は能力の使用を自重しなければなりません。
 そう、学校です。面倒です。歩きたくないです。でも歩かないで能力を使うともっと面倒な事になります。嫌な世の中ですよね。
 まあこっそり靴とか制服に力を貸してもらって最低限の労力で歩いているんですけどね。

「行ってきまーす」

 学校が割と近くなので五分程度で到着。疲れました。もう帰っていいでしょうか?ダメですよね。
 そんなことはさておき、私が通っているのは私立聖祥大付属小学校。そう、私立です。両親の母校だからという事で通っています。
 天然ボケな父と、しっかりしている様で密かに父よりもボケている母が通っていた学校で、更に私という奇妙な能力を持っている子供が通っている・・・漫画か何かだと、まず確実に色々厄介な生徒が居そうな環境です。
 というか通っています。同じクラスだけでも三人も、そういったお話の世界でヒロイン級な子が居ます。

 教室に入って席に座り、いつも通りだらーっとしていると目に入る仲良し三人娘の姿。
 この三人が件のヒロイン級少女達だったりします。

 一人目、アリサ・バニングスさん。なんとあの世界的企業であるバニングスグループの後取り娘でツンデレという、いかにもなキャラクターの持ち主です。
 その勝気な性格に寄るリーダーシップとカリスマ性はかなりのもので、学校行事などでは役員でもないのに大抵彼女がクラスを率いていたりします。
 まさしくトップで下を率いる存在。バニングスグループは安泰ですね。

 二人目、月村すずかさん。ここ海鳴の大地主だとか、名家だとか、何か色々言われててどれが本当か分かりませんが、とりあえず誰がどう見てもおしとやかなお嬢様。
 優しげな雰囲気を裏切らずにとても優しく穏やかな性格の持ち主ですが、なんと意外にも運動神経があり得ないほどに抜群。
 まさか現実にこんなパーフェクトな感じの大和撫子が存在するとは誰も思わないでしょうね。まだ幼いですけど。

 最後、高町なのはさん。
 前の二人と比べると平凡な感じがする外見ですが、それは仮の姿。実は結構凄い子です。
 何でしょう、先ほど言った様に平凡なのですが、何故か人を惹きつける力を持っています。これも一種のカリスマでしょうか?
 算数のテストでは毎回満点らしく、両親の仕事は海鳴で知らない人は居ないとも言われている大人気の喫茶店。
 何だかこの子の場合はヒロインというより、主人公的な感じがしますね。

 この三人は同じクラスはおろか他のクラス、果ては上級生下級生にも人気があります。でもその事に気付いてるのは多分バニングスさんだけ。
 月村さんはたまに目線に気付くみたいですが、そんなに頻繁ではないと思います。
 そして高町さんは全く気付きません。これはもしかして、主人公が持つという噂の鈍感スキルなんでしょうか。

 そんな益体も無い事をつらつらと考えていたらチャイムが鳴りました。面倒ですが授業の始まりです。

「で、ここの3が---」
「(眠い・・・)」

 授業はノートを取るのが面倒なので、手に持ってるだけの鉛筆にお願いして勝手に書いててもらってます。
 シャープペンもあるのですが、芯が細いので手を引きずってもらうと折れてしまいます。なので鉛筆です。
 そんな私の手はよ-く見ると不自然な動きをしていますが、そこまで私の手を気にして見る人なんていないので特にバレません。実際小学校に入学して三年間バレていませんし。
 そしてノートを自動筆記任せた私がやる事は特に無く、毎回その時思いついた暇つぶしをしています。
 例えば教室の床に落ちているホコリを一箇所に集中させてみたり、球状にした消しゴムを転がして教室内を旅させてみたり・・・
 でもいい加減やる事が無くなってきているので最近は眠くて仕方がありません。いっそ眠りたいです。でも授業中に眠って起こられるのはとても面倒なので眠る訳にもいきません。嫌になります。

「はい、それではここまでにします」

 知らず知らずのうちに半分意識が飛んでいた私がはっと意識を取り戻すと、丁度お昼休みになった時間でした。とてもいいタイミングです、流石私。
 お昼は移動するのが面倒なのでそのまま自分の机で食べます。時々隣の席の子と一緒に食べたりもしますが、基本的に一人です。
 一緒にお話しながらお昼を食べると楽しいんですけど、ちょっと面倒なんですよね。隣の子はそんな私の性格を知っている数少ない人なので、そう頻繁には誘ってきません。
 というか友達がその子しか居ません。それ以上はほら、面倒じゃないですか。唯一の友人である遠藤さんは空気が読めるいい人ですし、それだけで満足です。

 弁当を食べ終わったら寝ます。運動?面倒です。読書?眠くなければ読みますが今日は面倒です。勉強?面倒です。
 教室の中には他にもクラスメイトがそれなりに居ますが、先ほど紹介した遠藤さん以外は私に話しかけてきません。
 恐らく私ほどクラスメイトとのつながりが薄い生徒はそうそう居ないのではないのでしょうか。担任の先生にも色々聞かれました。面倒だと正直に答えたら呆れられました。

 そのままお昼休みが終わって授業が始まり、そして放課後になりました。
 掃除は面倒ですが、ちゃんとやらないともっと面倒な事になるのでしっかりやります。能力を大っぴらに使えれば早く終わらせられるんですが、面倒ですね。

 さて、登校時と同じ様に靴や制服に協力してもらって必要最低限の労力で下校します。帰って早くダラダラしたいです。

「・・・ん?」

 そんな感じで帰宅後のひと時について思いを馳せていると冷蔵庫に食材が少ない事に気が付き、仕方が無いので買って帰る事にしました。
 なので帰宅路から少し道を逸れて商店街へ向かい・・・そしてその途中で何やら道端に青い宝石のような物を発見しました。
 何となく気になったので手元に引き寄せ---ようとして屋外なのに気が付き、仕方が無いので自分で拾いました。面倒です。

「ふーん、結構綺麗な・・・宝石なんでしょうか」

 まあ本物の宝石ならこんなところに野ざらしで転がってる筈が無いだろうと思い、そのまま『声』を聞いてみようとすると---

「あの、それ、渡してもらえませんか?」
「え?」

 いつの間にか目の前に、赤い瞳と金色のツインテールが印象的な、何処か儚げな雰囲気を纏う女の子が居ました。
 儚げなのですがしかし、その目が「絶対に手に入れる!」と口に出さず叫んでいます。これは間違いなく面倒事。さっさと渡して買い物に戻りましょう。
 という訳でこの子に渡してしまう事にしました。平和が一番ですからね。

 しかし、世の中そう簡単にはいかなかったようです。

「え!?きゃっ!?」
「っ!発動したっ!?」

 突如光を放ち始めた青い宝石。そして何ともいえないゾワゾワした感覚。嫌な予感しかしない展開です。方向性はファンタジー。
 これが選ばれし者に力を与えるクリスタルだとしても、持ち主に呪いをかけるアイテムだとしても、とにかく面倒な展開が起こる事は必須です。
 そんな事はお断りです。私は日々ダラダラ過ごしたいのです。なので---

「何が起きてるのかよく分かりませんが、静かにしてくださいね」

 そう宝石に命令すると、途端に光が止んで大人しくなりました。どうやらファンタジックな物でも私の能力は通用するみたいです。
 ともかくこれで落ち着いたので、目の前の金髪の少女に宝石を渡そうとしてそっちに目をやると---

「・・・へ?あ、え?」

 その少女は大きく目を見開き、物凄くあり得ないモノを見た様な顔で私を凝視していました。
 ・・・おぉう、これはまさかやってしまったんでしょうか。ファンタジーな宝石の発光を見て事情を知ってるような反応をしていたので、能力を使っても同じファンタジー的な意味で問題ないかと思いましたけど・・・
 ううむ、面倒ですね。今の内に帰っていいでしょうか。


-----あとがき-----

チラ裏の「ふと思いついた~」内で連載していた作品を分離して移動しました。
これからよろしくお願いします。



[19565] 第2話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:52
 Q.目の前で困惑して頭を抱えながら「魔法?いやでも魔法陣が無かったし・・・」とか「願いが叶った?いやでも・・・」と考察状態に入っている金髪の子はどうすればいいでしょうか?
 A,どうにもなりません。現実は面倒です。

 いやはや不味ったみたいですね。ファンタジー住人かと早合点したのもそうですし、こんなに安易に能力を使ってしまったのもそうですし。
 私はこのめんどくさがりな部分を除けば結構しっかりしていると自負していたのですが、やはりあのボケボケ夫婦の娘だったという事でしょうか。
 両親にあまり似ていない私でしたが、今更になって相似点が判明するとは・・・ちょっとだけ嬉しいです。あんな親ですが大好きですし。

 さてと、このまま帰ってしまいたい衝動に駆られているのですが、流石にそんな事をするともっと面倒な事に巻き込まれそうですよね。この子はこの宝石を捜しているみたいですし。
 というかこの宝石は何なんでしょうか。あの発光現象からしてファンタジーな物という事は確実なんでしょうけど・・・うん、今のうちに『声』を聞いてみましょう。

「(というわけで、聞こえます?)」
『---』

 おお、ファンタジーな宝石なので言語形態的な意味で言葉がわからない思いましたが、そんな事は無かったようです。あ、ファンタジーだからこそなんでしょうか。
 とりあえずこれで意思疎通が可能ですね。それじゃあ色々教えてもらいましょうか。

「(それじゃあまずは・・・そうですね、お名前を聞いてもいいですか?)」
『---』
「(成程、ジュエルシードですか。宝石の種とはまた素敵な響きですね)」

 やはり土に植えたら宝石の花が咲くんでしょうか。栽培は面倒ですけど、ちょっと見てみたいかもしれません。

「(それじゃあ何て呼びましょうか。ジュエルさん?シードさん?)」
『---』
「(NO.5ですか?じゃあ五番さんって呼ばせてもらいますね)」

 しかし番号ですか・・・NO.5という事は、少なくともジュエルシードが他にも四つあるという事ですね。いったい何なんでしょうか?
 ううむ、ここはご本人に聞いてみるべきですね。

「(五番さん五番さん。さっき光ってたのって何なんですか?)」
『---』
「(魔力とは予想外です。本格的にファンタジーですね)」
『---』
「(魔力と聞いた時点で予想してましたけど、魔法も存在するんですか)」

 あ、ジュエルシードが魔法的な宝石という事は目の前の子は魔法少女なんでしょうか。
 どうしましょう、魔法少女は正体がバレたら魔法の国に帰らなきゃいけないと相場が決まっているのですが・・・ここは秘密にしておきましょう。話に巻き込まれたら面倒ですし。

「(あ、魔法って言ってましたけど、五番さんは何か魔法的な事が出来るんですか?)」
『---』
「(ほほう、お願いを叶えるですか)」

 よし冷静になりましょう。お願いを叶える。成程そんなものが最低でもあと四つですか。素晴らしいですね。
 こんな面倒そうな事情が無ければ今すぐにでも集めて私の怠惰ライフのお手伝いをしてもらいたい程です。

『---』
「(え?でも制御が大変だから大抵お願いが曲解されるんですか?それじゃああんまり意味が無い様な気がします)」
『---』
「(あちゃー・・・悲しいですね。お願いを叶える為じゃなくて唯のエネルギー炉扱いされてきたとは)」

 魔法の宝石も色々事情があるんですね。せっかく作られたのに本来の目的で使われないなんて・・・いくら使い方が難しすぎると言っても。
 しかし制御ですか。・・・もしかしたら、私のこの能力で何とかなったりしません?

「(ちょっと失礼しますね。・・・はい、自分じゃよく分かりませんけど、こんな感じでやったらちゃんとお願いが叶えられます?)」
『---』
「(おお、出来そうですか!じゃあえっと、お願いを叶えてもらってもいいでしょうか?)」
『---』
「(あ、はい。じゃあ調整して不具合が無くなった形のまま固定しますね)」

 願いを叶える宝石からお願いされたのは私だけじゃないでしょうか。まあでも代わりに私の願いも叶えてもらうので文句は無いですけどね。
 しかし、願いが叶うんですよね・・・最終的に金髪の子に渡さなきゃいけないですし、この場で叶えられて、かつこれからも機能し続けてくれる願いがいいですね。
 うーん・・・というか、そもそもどんな願いが叶えられるんでしょうか。

「(というわけで、どんな事が出来るのか聞きたいんですけど)」
『---』
「(ほほう、魔力で何とかなりそうな事なら全部ですか。万能ですね)」
『---』
「(いやいやお世辞なんかじゃないですよ)」

 しかし困りました。ここはいったいどんなお願いをすればいいのでしょう。色々思いついてしまって困ります。
 ・・・あ、そうです!ここは今後の私の生活の為になるこのお願いにしましょう!

「(あっと、今以上に筋力とか体力が低下しない様に、最低でも現時点を維持し続けるとか出来ますか?)」
『---』
「(おお、大丈夫ですか!お願いします!)」
『---』
「(はい。あ、低下させないだけで成長は出来る様にして下さいね?あと体脂肪に関しては低下出来る様にも。出来ます?)」
『---』
「(ありがとうございます!最高すぎです!)」

 五番さんが再び強く光を放ち始めました。何か金髪の子が光を見て我を取り戻したのか「また発動した!?」とか言ってますが、今の私には気になりません。
 そのまま光を放つ五番さん。そして光が収束して球の様になり、それが私の中へと入っていきました。
 体の中が一瞬ポカポカと暖かくなりましたがすぐにそれも消えて、五番さんの光も収まりました。

『---』
「(完了ですか、本当にありがとうございます!)」

 ああ、これで将来の体力に関する不安が消し飛びました!際限なくだらけても問題ありません!今日は何て素晴らしい日なんでしょうか!
 もう今日は帰宅した後は一切自力で動かない事にします!空飛ぶ座布団に乗って過ごします!ああ・・・幸せな生活が私を持っています。

「あの・・・」
「あ、はい?」
「だ、大丈夫?どこかおかしくない?」
「ええ、むしろとても気分が良いです。あ、この子が欲しかったんですよね。どうぞ」
「あ、ありがとう・・・?」

 何だか展開についていけてない様子ですが、今の幸せな私には全く気になりません。
 欲を言えばもっと色々叶えてもらいたかったんですけど、流石にこれ以上は金髪の子が見逃してくれなそうな気がしますし・・・心底残念です。
 あ、そうです。

「(五番さん、ジュエルシードって全部で何個あるんですか?)」
『---』
「(そ、そんなにあるんですか!?これは探すべきですね、面倒ですけど)」
『---』
「(はい、お仲間にあったらヨロシク言っておきますね)」

 よし、今度から周りを注意深く見て探してみましょう。わざわざ探しに行くのは面倒ですが、私の行動範囲内なら問題ありません。
 そして・・・持ち帰るのは面倒な事になりそうですし、今回の様にその場でお願いを叶えてもらってお別れした方がいいですね。よし、このプランで行きましょう。

「それでは、宝石探し頑張ってくださいね」
「あ、えっと、うん」

 そしてポカーンとしている金髪の子の横を通って、私は軽快な足取りのまま帰宅しました。足を動かしているのは靴と制服ですけどね。

 あ、買出しを忘れてました・・・今度ジュエルシードを見つけたら食事や栄養関係のお願いにしましょうか。
 とりあえず今日はもう外出するのも面倒ですし、このままソファーでコーヒー牛乳でも飲みながらのんびりテレビでも眺めましょう。
 この時間はワイドショーくらいしかやってないんですけどね。



[19565] 第3話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/25 16:53
「旅行に行くよー」

 いきなり両親が帰ってきたと思えばそんな事を言いました。まだおかえりとすら言ってないんですが。
 というか旅行ですか。貴方達はずっと旅行三昧じゃないですか。確かに今は連休なので旅行に行く家族は多いですけど。

「普段から杏は遠出しないだろう?だから偶にはね」
「それに久々に家族で温泉でも行きたいもの。勿論杏がめんどくさがらない様に近場よ?」

 その為だけにわざわざ世界旅行から帰還したんですか。いえ嬉しいですけどね。
 それにしても近場で温泉ですか・・・という事は、何度か行った事のある海鳴温泉旅館でしょうか。あそこは結構好きなので嬉しいですね。
 ご飯は美味しいですし、温泉も広いですし、自然も多いのでのんびりするには最高の場所です。最近ジュエルシード探しで疲れていたので、ゆっくり休むには丁度いいでしょう。
 まあ探すといっても、登下校の時に植物や石や聞き込みをするだけなんですけどね。

 そうそう、聞き込みで何度かジュエルシードの話を聞く事が出来ました。
 でもその殆どが例の金髪の子とか、そのライバルっぽい白い子が持っていってるみたいです。やはり魔法少女にはライバルがいるものなんですね。流石お約束です。
 しかしそのお陰で私がジュエルシードを見つけることが出来ません。もっと聞き込み範囲を広げれば別かもしれませんが、それは面倒なんですよね。
 ・・・とまあ、そんな感じで、普段より色々考えたり動いたりしていたので疲れているわけです。なので、今回の旅行の話はのんびりするには丁度いいですね。

「というわけで準備が完了しました」
「うん、後ろで色々飛び交ってるなぁとは思ってたけど、やっぱり準備だったんだね」
「相変わらず便利よねぇ~」

 父さんも母さんも相変わらずリアクション薄いですよね。問題は無いんですけど。

 さて、父さんが運転する車で旅館に向けて出発です。車内では今までの旅行で行った時の話しを色々聞いています。
 でも所々妙な話が出てきますね。紛争地帯でテロリストと飲み会したとか、ドイツで吸血鬼と月見したとか、香港で凄い特殊警察っぽいのに遭遇したとか、アメリカで超能力者に出会ったとか。
 最初のテロリストはまぁ理解できないでもないですけど、後は全部ファンタジーじゃないですか。あ、私もファンタジーでしたね。これは失敬しました。
 というか私の両親はどんな人脈を作り上げているんでしょうか。私も大概とんでもないですが、それよりもこの両親のほうがとんでもない気がします。
 まあお話が面白いので問題は無いんですけどね。私も魔法なんてものに遭遇した挙句お願いを叶えて貰ってる訳ですし。

 でもちょっと長い時間話をしてて疲れたので眠る事にしました。おやすみなさい。

「着いたわよ~」
「うぅ?はい~」

 母さんに起こされると既に海鳴温泉旅館に到着していました。それでは早速・・・

「森の中でお昼寝してきます」
「いってらっしゃーい」
「迷子にならない様にねー」

 迷子なんてなりませんよ。植物の皆さんに道案内してもらえばいいですし。

 さてさて、ここに来た時にいつもお昼寝している場所へとやってきました。
 周りには木があり、しかしそこまで密集している場所ではないので木漏れ日が降り注いでいます。近くには川があり、水の流れる音が何となく安らいだ気持ちにさせてくれるいい場所です。
 ここには昔私が作った木のベンチがあり、毎回ここでお昼寝しています。勿論作り方は能力を使ってです。木の温もり溢れる良いベンチですよ?
 さてお昼寝を・・・と思いましたが、せっかく遠出したので周りの植物にジュエルシードについて聞いてみましょう。何か良い証言が得られるかもしれません。

「---ということなんですが、何か知りませんか?」
『---』
「え?知ってるんですか?」
『---』
「おお、むしろすぐそこに落ちてるんですか!」

 どうやら今日の私はとても運がいいみたいですね。まさか旅行に来てジュエルシードが見つかるなんて思ってもいませんでした。
 とりあえず道案内してもらって、ジュエルシードが落ちている所に行きましょう。勿論、ベンチに座ったままで。歩くの面倒ですしね。

 僅か二分で到着しました。本当に近いですね。というか川にあったんですか。流れて行かなくて良かったです。雨が降ってたら海まで行ってたかもしれませんしね。
 ま、そんな事はさておくとして、まずはお話しましょうか。

「こんにちは。貴方の兄弟?の五番さんの友人です。杏って呼んで下さい」
『---』
「あ、はいそうです。NO.5のジュエルシードです」
『---』
「十八番さんですね。よろしくお願いします」

 さて、お願いを叶えて貰いたいんですが・・・ううむ、どんなお願いを叶えて貰いましょうか。一応今度は食事関係と考えていたんですが・・・

「とりあえず、ちゃんとお願いが叶えられる様に調整しておきますね」
『---』
「大丈夫ですよー五番さんのお墨付きですから」
『---』
「はい、ちょっと待ってて下さい・・・よし、完了です」
『---』
「いえいえ、お願いを叶えて頂ければそれでいいです」
『---』
「ありがとうございます。でも、まだお願いが決まってないので今考えますね」

 さてどうしましょう。食事関係はちょっと我慢すれば何とかなるんですが・・・実はちょっと叶えてもらおうか悩んでいる事があるんですよね。
 実は私、物凄く身長が低いんです。132cmしかありません。130代のクラスメイトは他にもいるんですが、私は今の身長になってから全然伸びなくなりました。
 寝る子は育つという言葉が本当なら今頃私は170超えてもいいくらいな筈なんですが・・・せめて150cmは欲しいです。
 しかし、しかしですね?ジュエルシードにお願いしていきなり身長が伸びてしまったら、どう考えても面倒な事にしかなりません。
 徐々に伸びるようにして貰ったとしても、後々から自力で急激に伸びて決まった場合、身長が大変な事になってしまいかねないですし。
 それより何より、別に身長が低くてもちょっと視点が低かったり微妙に悲しい気持ちになったりするだけで、堕落した生活を送る上では問題が無いんですよね。
 うーん、どうしましょうか・・・二つのお願いを叶えるのもいいですけど、その途中で魔法少女がやってきたら面倒ですし。出来るだけ見つからないうちに逃げちゃいたいんですよね。
 えーとえーと・・・あ、そうだ。

「身長を3cm伸ばすってお願いなら、どれくらいの時間で出来そうですか?」
『---』
「おお、早いですね」

 よし、じゃあまず最初に食事関係のお願いを叶えてもらって、その後に身長を少しだけ伸ばしてもらいましょう。3cmくらいなら誤差のうちですよね。
 それじゃあどんなお願いを叶えてもらいましょうか・・・

「・・・よし、必要な栄養を勝手に毎日ちゃんと取れる様に出来ますか?最近買出しが面倒なんですけど、栄養面で考えるとこれ以上手抜き出来ないんですよね」
『---』
「おお・・・空気中にある魔力を栄養にしちゃうんですか。霞を食べて生きる仙人みたいですね」
『---』
「あ、はい。じゃあお願いします」

 十八番さんから青い光が放たれ始めました。多分、以前会った金髪の子か見た事無い白い子かはわかりませんが、これで気付いちゃうでしょうね。早めに逃げないといけません。
 それはまあ置いといて、光は前回と同じ様に収束して球体になり、私の中に吸収されていきました。
 これで私は栄養失調とは無縁の体に進化したわけですね・・・素晴らしいです。

『---』
「はい、ありがとうございます!・・・それで、もう一つだけお願いしたいんですけど、いいでしょうか?」
『---』
「ありがとうございます!えっと、身長を3cmだけ伸ばしてもらえないかなぁ、と」
『---』
「い、良いじゃないですか!気になるんですもん!」
『---』
「うぅ・・・はい。お願いします」

 十八番さんにからかわれました。魔法の宝石にからかわれるなんて多分私だけだと思います。うぅ、悔しい。
 でもお陰で身長が少しだけ伸びました!大きくなった瞬間いきなり視点の高さが変わってちょっと気持ち悪くなりましたけど、嬉しいので問題ないです。
 うふふ・・・135cmです。幸せです。

「それではそろそろ失礼しますね。多分もうそろそろジュエルシードを集めている魔法少女が来ると思うので、ご兄弟に会えますよ」
『---』
「あー・・・恩があるので叶えて差し上げたいんですが、巻き込まれるのはちょっとアレなんで。また他のジュエルシードを先に発見したら調整させて頂きますね」
『---』
「はい。それでは失礼します」

 さて、誰かがやってくる前に早く逃げてしまいましょう。ベンチさん全速前進です!
 そして今度こそお昼寝します!今なら幸せな気分で眠れるでしょうしね。

 その後、お昼寝を終えて旅館に戻り、美味しいご飯や温泉を堪能しました。
 何やら同じクラスの仲良し三人組がここに泊まっていたみたいですが、温泉以外では客室に篭ってたので全然遭遇しませんでした。
 しかし・・・私がお昼寝してる最中に魔法少女がバトルしていたと植物の皆さんが言ってたんですが、まさか白い子の方が高町さんだったとは・・・やっぱり主人公だったんですね。

 しかしそんな事はどうでもいいのです!今重要なのはもっと別の事!

「少し体重が増えました・・・」

 そうです。栄養が勝手に足りてしまうのに食事なんてしたら、そりゃあ栄養過多で太りますよね。今までは何だかんだで体質なのかあまり太らなかったんですが。
 今度見つけたらこの辺りを何とかして貰いましょう。そうしましょう。切実に願います。明日からは少しだけ頑張って探しましょう。面倒ですけど、今回は緊急事態ですし。



[19565] 第4話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:53
 由々しき事態です。大変由々しき事態です。
 めんどくさがりの私がわざわざ放課後に外を散歩してまで、全自動ダイエットの為にジュエルシードを探しているんです。
 それなのに今回に限ってタイミング良く見つかってくれません。大抵現場に向かう前に回収されるか、既に回収された後かのどちらかです。
 まあおかげで散歩のせいで体重が元に戻っちゃったので不幸中の幸いではあるんですが・・・なんだか納得出来ません。
 とりあえず体重が戻ったので今はもうあまり真面目に探してはいないんですけどね。

 そんな私ですが、最近はジュエルシード探しとは別によく公園のベンチで休憩しています。
 海鳴温泉近くの森の中でもベンチでのんびりしていましたが、この公園もなかなか気持ちがいいです。始めはジュエルシード探しで来たのですが、ここでのんびりする為なら少しぐらいは散歩しててもいいかもしれません。
 心地よい日差しと遠くに聞こえる波の音、囀る小鳥の鳴き声・・・ああ、癒されます。なんとなく緑茶でも飲みたくなる気分です。
 ・・・というか、良く考えたら、今日は植物や無機物に聞き込みしないで普通にのんびりしに来てしまいましたね。
 私はどうやらすっかり活動的なアウトドア派になってしまったようです。ジュエルシードが無くなれば外出なんてしなくなりそうですけどね。

「ふぁ~・・・んぅ、眠くなってきました」

 なんだかベンチに座ると眠くなってしまうんですよね。今までの行動による条件反射でしょうか?
 うーん・・・よし、今日はちょっとお昼寝してからジュエルシードの聞き込みを開始しましょう。欲求には正直に生きるべきだと思います。
 というわけで、おやすみなさい・・・


「ん~、なんなんですか・・・」

 何だか変な音が聞こえました。そして何か体が変な感じがします。おかげで目が覚めてしまいました。
 全く何がどうしたんで・・・

「・・・おおぅ」

 目を開くと何故か空中にいました。良く見ると木の枝の様なものが私を掴んで持ち上げています。
 そしてすぐ目の前にはモックとかゴンザレスとか呼ばれそうな感じの木の化け物が居るではありませんか。
 というかこの化け物からジュエルシードっぽい感じがしますね。もしかしてこれが願いが歪んで叶った状態なんでしょうか。何の願いを叶えたのか非常に興味がありますね。
 というか聞き込みをしない時に限ってこんな近くにジュエルシードがあったなんて運が無いですね。いえ、最近運が良すぎたんですし、今度は不運が続くんでしょうか?

「くっ!松田さんを放せぇー!!」
「アークセイバー!!」

 何やら声が聞こえたので後ろを振り返ると、白黒魔法少女コンビが枝を振り払いながら私を助けようとしているではありませんか。
 どうしましょう、別に苦しくもないし、能力を使えば普通に止められるんですけど・・・ここは空気を読んで助けてもらうまで我慢したほうがいいんでしょうか。

「そこんところ、どうしたらいいと思います?ジュエルシードさん」
『---』

 成程、ジュエルシードさんは願いを叶えただけなのでどうなっても知りませんか。そりゃそうですよね。

「あ、でもそれなら、何で私はこんな丁重?な扱いなんでしょうか?」
『---』
「おお、ジュエルシード達の間で噂になってるんですか」
『---』
「あ、はい。じゃあ七番さんって呼びますね」

 しかし一体どんなネットワークを用いて噂しているんでしょうか。やはり魔法的な感じで念話とかでしょうか?それとも私みたいに植物を介して?
 ここはやはりファンタジーらしく念話を推したいですね。

 さて、どうやら私が木の化け物の目の前に居るせいで強い攻撃が出来ずにジリ貧になってしまっているみたいです。
 これだと何時までたっても私はのんびり出来ませんね。仕方がありません。多少面倒な事になりますが、私が何とかしましょう。

「というわけのなので、七番さんそろそろ終わってください」
『---』

 途端、あちこちに枝を伸ばして暴れていた木はシュルシュルと音を立てながら小さくなっていき、最終的には普通の木に戻りました。
 私もそのまま地面に降ろされました。やっと地に足を付けれますね。苦しくないとはいえ、ずっと枝でグルグル巻きはちょっと勘弁でしたし。

『---』
「あ、いいですよ。すぐ調整しちゃいm「あ、あのー・・・」っと、はい?」

 七番さんにも調整のお願いをされたので早速やろうと思ったのですが、金髪の子に話しかけられてしまいました。どうやら二回目なのでそこまで驚かなかったようです。

「ちょっと待っててください。今この子を調整しますから」
「あ、うん」
「ありがとうございます。---はい、完了しました。どうですか?」
『---』
「そうですか。じゃあ今回はお願いは無理そうなのでこれで失礼しますね。はい、どうぞ」
「あ、えっと、ありがとう?」
「それでは」

 さーて今のうちに帰りましょう。今ならまだ余計な混乱に巻き込まれな「ええーーー!!!??」いで済みませんでしたね。惜しかったです。
 はぁ、面倒です。ジュエルシードでお願いが叶えられないなら魔法関連なんて一切関わりたくないんですが・・・

「い、いいいまジュジュ、ジュエルシードで、ジュエルシードが、ええー!?」
「すみません高町さん、日本語でお願いしたいのですが」
「あり得ない!?っていうか調整って言ってた!?ロストロギアの調整!?なんですかそれ!?」
「すいません小動物さん、違和感があるので動物らしい声で喋っていただきたいのですが」
「フェ、フェイトから聞いてたけど、本当に魔法無しで止められる人が居たんだね・・・」
「すいません犬さん、貴方も違和感があるので動物らしくお願いします。あとフェイトって誰でしょうか?」
「えっと、私です」
「ああ、貴女がフェイトさんでしたか。先日はどうも。というか落ち着いてますね」
「二回目だから・・・」
「成程。まあとりあえず色々面倒なんで私は帰りますね」
「「「「ダメ!!(です!!)」」」」

 ああ七面倒な。やっぱりもう少し待った方が良かったんでしょうか。完全に巻き込まれてしまいましたね。嫌になります。
 私はもう疲れたので、家に帰ってコーヒー牛乳でも飲みながらワイドショーでも見ていたいんですけど。意外と面白いんですよ、ローカル局のワイドショーって。

「あー君達、ちょっと良いかい?」
「「「「!?」」」」
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。君達に色々と聞きたい事がある」

 ああもう七面倒どころか二乗して四十九面倒な事態になりそうな予感がします。
 というか時空管理局って何ですか。アレですか、時空って事はタイムパトロールとかそんな感じですか。そうすると魔法の国は未来にあるって事ですか?
 というか・・・えと、しつむかん?とか明らかに何らかの役職に着いてる人がこんな子供なんでしょうか。魔法の世界は人材不足なんでしょうか?
 そんな夢やロマンが崩れる様な実態はあまり知りたくは無いんですが・・・

 そんな事を考えている間にフェイトさんと犬さんが逃げ出してしまいました。やはり高町さんが主人公でフェイトさんがライバルキャラだったんですね。
 しかしどうしましょう。時空管理局って多分警察みたいな組織でしょうし、私は事件に巻き込まれた扱いなんですよね?
 面倒です。ああ面倒です。四十九面倒どころか二乗して・・・えっと・・・とにかく面倒です。
 帰っていいですか?・・・ダメですかそうですか。
 あーもう明日からジュエルシード探しなんて止めてしまいましょう。今まで叶えてもらったお願いだけで十分です。これ以上事件に巻き込まれたく無いですし。
 ・・・とりあえず、アースラ?に着いていく事にしましょうか・・・



[19565] 第5話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:53
 さて、四十九面倒を二乗して二千四百一面倒なのですが、時空管理局とやらの人達が居るというアースラ?へ向かう事になりました。
 どうやら転送で向かうみたいです。いかにも魔法的ですね。ちょっとだけワクワクしてきました。
 ・・・あ、二千四百一であってますよね?ちょっと空いた時間で計算してみたんですけど。

 そんな事はどうでもいいですね。

 さて、転送してもらってアースラ?に来たわけですが・・・なんでしょうこの近未来的な場所。というか戦艦?宇宙戦艦なんですか?
 いやこれはこれでアリなのかも知れませんけど、私個人としてはもっとファンタジックな感じが良かったです。せっかくの魔法なんですから。

 まあそんなこんなで責任者らしき人とお話しすることになりました。
 途中でマスコットキャラの筈のフェレットが人間に変身したり、しかもそれが本当の姿だと高町さんが知らなかったりして大騒ぎになっていましたが面倒なので関わらない事にしました。
 そして通された場所はなんちゃって和室。和室で炬燵に入ってのんびりするのが大好きな私としてはちょっと許しがたいのですが、まあ魔法の世界の人なので仕方ないのかもしれません。
 でも今時外国人でもここまで中途半端に偏った作りには・・・ってなんという事を!?

「い、今何を緑茶に入れたんですか?」
「ミルクと砂糖だけれど?」

 くっ・・・ここは耐えるべきです。たとえ安らかな一時を演出してくれる緑茶が酷い飲み方をされていたとしても、それを指摘したら面倒な事になりそうです。
 そうです、きっと魔法の国の人は味覚がファンタジーなんです。きっとお菓子の家とかに住んでるせいで甘味が無いと口に出来ないんです。そうなんです。
 ・・・よし、落ち着きました。良く頑張りました私。ちょっと前ならすぐさま指摘してましたが、私も成長しているようです。さっさと帰りたいですから余計な話題は必要ありません。

「なるほど、そうですか。ジュエルシードを発掘したのはあなただったんですね」
「それで僕が回収しようと・・・」
「立派だわ」
「だけど同時に無謀でもある」

 いやいや、責任を感じて迅速に回収に来た人に言う台詞じゃ無い気がしますよ黒い人、たとえ事実だとしても。まあ面倒なので口には出しませんが。
 というかこの話に関しては私は全然関係が無いので全部スルーします。・・・あれ、私がここに来た意味って無いんじゃあ?

「(どうしましょうアースラさん、私流されて来ましたけどここに居る必要性がありませんでした。時間の無駄です)」
『---』
「(あー成程。じゃあアースラさんとお話する為だけに来た事にします。・・・いややっぱりそれも時間の無駄ですよ)」
『---』
「(拗ねないで下さいよ。だって実際来た意味が無いんですもん。確かにアースラさんとお話出来ましたけど・・・)」
『---』
「(いやいや流石にアースラさんと遊んだら面倒な事態にしかなりませんって)」

 アースラさん、宇宙戦艦なのに結構甘えん坊というか何というか・・・外見に相応しい強い心を持った方がいいんじゃないんでしょうか。
 でもまあやる事もありませんし、このままお話が終わるまでアースラさんとお話してましょうか。暇ですしね。
 ・・・はあ、ソファーでダラダラしながらテレビでも見ていたいです。今日は疲れたので帰ったらココアでも飲みましょう。

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます」
「君たちは今回のことは忘れてそれぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」

 おおっと、ずっとアースラさんとお話してたら気が付けば結論らしき言葉が。
 時空管理局さんがジュエルシード回収をする事になったんですか。それなら私もジュエルシード探しはもう終わりですね。
 まあお願いを二つも叶えてもらってますし、これ以上はちょっと欲張りになってしまいますから丁度いいといえば丁度いいでしょう。

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」
「でも!」

 何故か高町さんが抵抗を示していますが・・・ああ、魔法少女卒業が嫌なんでしょうか?でもどこかの美少女戦士みたいに高校生にもなってセーラー服で戦う様な事態になるよりは今卒業したほうがいいと思いますよ?
 まあ私はたとえ協力要請されても絶対に手伝いませんけどね。面倒ですし。
 ジュエルシードを放置しておいたらちょっとだけ危険みたいだと今回知りましたけど、組織が出張るならもう海鳴の平和は乱されないようですし。
 なら私はいつも通りの堕落した生活を送るだけですね。
 最近はあり得ないくらい精力的に活動してましたし、明日からはひたすらだらけましょう。ああ、楽しみです。

「まあ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。今夜一晩ゆっくり考えて二人で話し合って、それから改めてお話をしましょう」

 え?いやいや今の高町さんを見たら手伝いたがるのは当たり前だと思うんですけど、なんでわざわざそんな事をするんでしょうか?
 ・・・まあどうでもいいですね、私には特に関係のない話ですし。考えるのが面倒です。

「さて、次に・・貴女にお聞きしたい事があります」
「あ、私ですか?」

 話が終わって帰れると思ったら話しかけられました。あー、やっぱり能力に関してでしょうか。あからさまに私がジュエルシードを止めてましたもんね。
 うーんどうしましょう。正直に話しても面倒事になりそうな予感がしますし、離さなくても面倒な事になりそうな予感が・・・もうどうでもいいですね。
 よし、聞かれた事に答えてしまいましょう。消極的に。

「まず、あの時ジュエルシードに何をしていたんですか?普通はあんな簡単に押さえ込めるものではありませんが・・・」
「お話して落ち着く様にお願いしました」

 周りの空気が停止しました。ああ、やっぱり誤魔化した方がいいんでしょうか。でもわざわざ嘘を考えるのも面倒なんですよね。

「もう一度、教えてもらってもいいかしら?」
「ジュエルシードさんとお話して、落ち着いて止まってくれる様にお願いしました」
「あり得ない!?」
「そんな事言われましても事実ですし」

 緑の髪の責任者さんが手で頭を押さえています。頭痛でしょうか。大変ですね。
 黒い人は「そんな事不可能だ!!」とか言ってますけど、私には事実ですとしか言い様が無いんですよね。なので反論されても困ります。
 ちなみに高町さんと元フェレットさんは呆然としています。まあそんなものでしょうね。
 しかし、初めて家族以外でまともに私の能力を明かしてしまいました。大雑把にではありますけど。面倒な事にはならないで欲しいですね。

「と、とりあえず・・・貴女はジュエルシードと会話が出来て、なおかつ暴走を止める事が出来るのね?」
「暴走を止めるというか、意のままに操れるといいますか、むしろ使いこなせますね」

 今度はさっきの比ではない位に空気が停止しました。ピシッという擬音が響き渡った様な感じもしました。
 今のうちなら帰ってもバレない様な気がしないでもないですけど、どうでしょう?

「・・・ゴメンなさい、流石に到底信じられないのだけど」
「じゃあ証拠見せますね。七番さーん来てくださーい」
「何を・・・なっ!?」

 確かそっちの黒い人が持ってましたよね?まあ今持って無くても聞こえる範囲に居たら出てきてくれる筈ですが・・・ああ、出てきてくれました。
 なにやら放っている青い光の力が弱い気がしますけど、どうしたんでしょう?病気ですか?あ、物に病気はありませんか。

「何か元気が無いですね。どうしたんですか?」
『---』
「封印?成程、じゃあ解いてあげますねー」
『---』
「はい解けましたよ」

 途端に七番さんがいつも通りのジュエルシードらしく強い光を放ち始めました。うんうん、やっぱりこれくらいの元気が無いとダメですよね。
 でも周りの人達が慌て過ぎですね。何をそんな慌てているんでしょうか?・・・ああ、そういえばジュエルシードって危ないって思われているんでしたっけ。

「仕方ないですね。じゃあちょっと大人しくしててもらえますか?」
『---』
「ありがとうございます」

 お願いすると七番さんが快諾してくれました。ふぅ、これで何も問題はありませんね。

「何だか頭痛がしてきたわ・・・」
「母さん、僕は疲れて夢でも見てるのかもしれない・・・」
「ユーノ君、私結構苦労して今まで集めてきたのに、何だったんだろうね・・・」
「なのは、比べちゃいけない。これは非常識だから比べちゃいけないよ」

 む、元フェレットさんが失礼ですね。確かにちょっと非常識な力ではありますけど、魔法なんてものを使ってる人には言われたくないです。
 まあ高町さんの心に無用なダメージを与えてしまった事については少しだけ心苦しいですが・・・あまり気にしない事にします。面倒ですし。

「・・・背に腹は変えられないわね」
「艦長?・・・まさか!?
「ええ、想像通りよクロノ。・・・貴女のその力で私達に協力して貰えないかしら?」
「嫌です」

 本日三度目の時間停止のお時間が参りました。どうやらここだけ時間の流れが不安定なようですね。時空管理局ならちゃんと時空を管理してください。
 というかこんな近未来な戦艦で時空がどうのこうのって、魔法じゃなくてSFですよね。あれですか、発達しすぎた科学は魔法と変わらないって事なんでしょうか。

「何で?松田さん、何で手伝ってあげないの?」
「いやいや高町さん、さっきジュエルシードに関しては時空管理局の方々が解決するって言ってたじゃないですか。それに一般人が関わるべき事でもないと」
「でも!」
「なら高町さんが私の代わりにお手伝いしてあげて下さい。私は譲りますよ?」
「にゃ!?」

 だって面倒ですし。

「何故、嫌なのか聞いてもいいでしょうか?」
「面倒だからです」
「・・・そ、それだけですか?」
「はい、面倒なだけです。私は面倒な事が大っ嫌いなんです。自宅のソファーでダラダラしながらテレビを眺めている事が私の幸せなんです」

 全員顔が引きつってます。失礼な人達ですね。私がどんな事を好んでいても人の勝手じゃないですか。

「あの、じゃあいつも学校でボーっとしてたり寝てたりしてるのって・・・」
「動くのが面倒だからです。人間は言葉を発するのにもカロリーを消費するんですよ?今でさえ帰りたくて仕方が無いくらいなんです」
「さっき暴走体に捕まってた時に暫く自分で何とかしようとしてなかったのは・・・」
「だってこの能力の事がバレたら面倒になるじゃないですか。実際面倒な事になってますし」

 というかもう帰っていいですよね?協力しないって言いましたし、もうここに残る理由はありませんよね。

「いい加減帰りたいので帰りますね。というわけで七番さん、送ってくれませんか?」
『---』
「ありがとうございます。では、みなさんお疲れ様でした」

 そして私は七番さんの放った青い光に包まれ、その直後には自宅の玄関に転移していました。
 何か途中で全員が何かを叫んでた気がしますけど気にしない事にします。面倒ですし。

 さて、ココアを飲みながら今日もテレビでも見ましょうか。



[19565] 第6話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:54
 あの宇宙戦艦会議以降、何だかんだで時空管理局が私に接触してくる事はありませんでした。
 絶対関わろうとするんだろうなぁと思っていたので予想外ですが嬉しいです。

 後日、学校に行くと高町さんが家庭の事情で学校を暫く休むと担任の先生が言っていました。
 恐らく時空管理局の手伝いをするんでしょう。ぜひとも私の代わりに頑張っていただきたいものです。
 そして私の方に面倒事を持ってこないようにして下さいね。

 それにしても、ここ最近は面倒に、巻き込まれてばかりだった気がしていたので今の平穏がとても素敵に感じます。
 ジュエルシードでお願いを叶える事はもう出来ませんが、十分なくらいの効果は既に手に入れているのでそこまで悔しくはありません。
 願わくばこのままジュエルシードも集め終わって、何の事件にも巻き込まれずにいつも通りにダラダラと過ごしたいものです。
 何か事件が起こったとしても私を巻き込まなければどうでもいいんですけどね。

 そんな事を考えていたのがいけなかったんでしょうか。

「ごめんなさい、母さんが貴女と会って話したいって・・・」
「面倒なので嫌です」
「あの、でも母さんが・・・」
「嫌です」

 目の前には縁があるのか何かと出会うフェイトさんとオレンジの犬。しかも今回はご指名ですよ。絶対面倒事です。
 それにしても母さんですか、この子はジュエルシードで何か企むようなタイプとは思えませんし、多分その母さんが黒幕なんでしょうね。
 ・・・ってことは、私の能力を当てにしてるって事ですか?うわぁ、やっぱりあの時能力使わなければ良かったです。止め処ない後悔の波が押し寄せてきますよ。

 しかしどうしましょう。フェイトさんは儚げな雰囲気を纏いながらも何だかんだで意志が強いみたいで、今回も瞳が「絶対連れてかなきゃ!」と自己主張しています。
 これは恐らく私が一緒に行くというまで付き纏われそうですよね・・・面倒ですけど付き合わなきゃいけないんでしょうか。

「ああもう、用件が終わったらさっさと帰りますよ?そしてもう付き纏わないで下さいね、面倒ですから」
「あ、うん!ありがとうございます!」

 はぁ・・・何時になったら以前と同じ様な平穏が戻ってくるんでしょうか。ソファーとテレビが恋しいです。

 というわけでフェイトさんの実家?に転移してきました。なんか凄い立派な建物ですね。お嬢様なんでしょうか。
 というかなんでこうも身近にお嬢様ばかり居るのか・・・ああ、私も資産だけで言えばお嬢様と言えなくも無いんでした。私が生放送の抽選会に干渉して当てた宝くじのお金ですが。

 とりあえずフェイトさんが先導してくれているのでそのまま着いていく事にします。
 気が付けばオレンジ色の犬が犬耳のお姉さんに変身していましたが、まあ魔法ですしフェレットも人間になってましたから気にする事でもないですよね。
 ・・・しかし、外見は豪華ですけど何処となく寂れた感じがしていますね。隅の部分なんかには埃も溜まってます。
 ちゃんと掃除しているんでしょうか?こんなに大きい家だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれませんが、もったいない気がします。

「母さん、フェイトです。連れてきました」

 さて、大きい扉を開くとそこには玉座に座る女性が居ました。さてまずはどこから突っ込めばいいんでしょうか。
 いかにも悪い魔女にしか見えない服装とメイクをしたフェイトさんの母さんに突っ込めばいいのか、一般家庭に玉座の間がある事に突っ込めばいいのか。
 というか物凄く不機嫌そうにしてますね。正直怖いです。なんというか、明らかにラスボスっぽい感じがします。命の機器すら感じますよ。

「(あの、物凄く怖いので、何か危険な事になったら皆さん助けてくれませんか?)」
『『『---』』』
「(ありがとうございます、安心できました)」

 とりあえず身の安全は保障してもらいました。周りの強力を得た時の私はたとえ戦車が相手でも無傷で過ごす自信があります。戦車操れますけど。

「・・・フェイト、下がりなさい。二人っきりで話がしたいの」
「あ・・・はい」

 空気がヤバイです。もしかしてこの母さんってフェイトさんの事嫌ってたりするんでしょうか?物凄く険しい目つきで睨んでるんですけど。
 こんな家庭環境最悪な親子にはなりたくないですね。家みたいな放置系も問題ではありますけど、こんな空気になる親子は流石に・・・
 ああ、フェイトさんが部屋を退出してしまいました。物凄く心細いです。命の保障は既に取れているんですけど、あまり長居したくないですね。
 まあそんな事を言いながら全然焦ってはいないんですけど。

「さて、貴女。ジュエルシードを使いこなせるというのは本当かしら?」
「あ、はい。もうお願いを叶えてもらった事がありますし」
「なっ!?本当に!?」

 あ、空気を気にしすぎてうっかりバラしてしまいました。でもまあそんなに問題は無いですよね。

「どんな願いを叶えたというの!?」
「えっと、最大限怠けてもいい様に最低限の身体能力を確保する事と、食事が偏っても問題ない様に必要な栄養を毎日自動的に摂取する事です」
「・・・そ、そう」

 思いっきり引きつった顔で短くコメントされました。まあそんな反応だろうなとは思ってましたよ。でも便利なんですからいいじゃないですか。

「とりあえず、ジュエルシードを制御して願いを叶える事が出来るのね?」
「はい、出来ますよ」
「・・・実は、どうしても叶えたい願いがあるの。協力して貰えないかしら?」
「面倒なので嫌です」
「・・・もう一度言ってもらえないかしら?」
「面倒なので嫌です」

 というかいきなり知らない人にそんなことを言われても困りますし。
 どんな願いかは知りませんけど、自分でジュエルシードを制御して願いを叶えればいいじゃないですか。・・・あ、そういえば普通は暴走するんでしたっけ。
 でも面倒なんですよね。黒幕の願いなんて世界制服とかでしょうし、そんな願い「ズガァンッ!」ッ!?危なっ!?
 うわ、いきなり魔法使うとか危ないじゃないですか!?ああ、最初に周りのものにお願いしておいて助かりました。ありがとうございます、飛び出た床材さん。

「・・・何をしたの?」
「いやこっちの台詞なんですが」
「ふん、まあいいわ。私はどんな事をしてでも願いを叶えるのよ。痛い目を見たくなければ大人しく従いなさい」

 おおぅ、悪役過ぎます。なりふり構わない人は怖いと漫画やテレビで聞いた事がありましたが、実際に遭遇すると本当に怖いですね。
 こんな人の相手なんてしたくないです。早急に帰りたいんですが。

「ですから、面倒なんで嫌です」
「言っておくけれど、私に従わない限り家に帰してあげるつもりは無いわよ?」

 最悪じゃないですか、両親に心配はかけたくないんですけど。・・・仕方が無い、お願いを聞いてさっさと帰らせてもらったほうがよさそうですね。
 はぁぁ、面倒です。ジュエルシードと関わった事は後悔してませんが、これが今までの幸せの代価なんでしょうか。

「・・・はぁ、わかりました。早くお願いを教えてください。そして早く私を帰らせてください。ワイドショーでも見ながらだらダラダラしたいんですから」
「・・・もう少しやる気は出さないのかしら?」
「出るわけが無いです。いいから教えてください」

 随分イライラしてるみたいですが、私だっていい加減イライラしてるんですよ。こんな半ば無理やり連れてくるような事されて気分悪いんですから。
 これで下らないお願いだったら帰りますからね。たとえあらゆる物を操ってでも。

「叶えられなかったら、別の願いに協力してもらうわよ?・・・私が叶えたい願いは---」
「わがままですね。・・・願いは?」
「---私のたった一人の最愛の娘、アリシアの蘇生よ」

 ・・・最早面倒とかそういう次元の話じゃなくなってきてしまいましたね。本当に勘弁してください。



[19565] 第7話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:55
 フェイトさんの母さんである悪い魔女さん、プレシアさんの願いを、娘自慢の様な与太話と共に聞きました。
 なんと、昔死んでしまった娘さんを復活させたいという願いです。まあ願いが叶うアイテムがあれば誰もが叶えようとする事ですね。ありきたりです。
 本来ならばジュエルシードで蘇生させるつもりは無かったらしいのですが、私が自由に操れるという事でプランを変更したらしいです。
 実際に死者蘇生が可能なのかわからないのですが、無理だった場合はアルハザードという世界への道を開いてくれればいいとの事です。

 ところで娘さんの話を聞いていて「たった一人の娘」と言ってた事に気付いたので、フェイトさんは娘ではないのかと聞いてみました。
 するとフェイトさんは娘さんのクローンで所詮人形だと言われてしまいました。
 ちょっと気になって聞いただけでしたが、まさかそんな重すぎる事実を知ってしまうとは思いませんでした。
 同世代の子では唯一の友人である遠藤さんの次に仲がいいであろうフェイトさんが母親から嫌われてるなんて、流石に面倒とか関係なく何とかした方がいいのだろうかと考えてしまいました。
 まあ家族関係に干渉するわけにもいかないので保留する事にしたのですが。

「では、とりあえずジュエルシードに蘇生が可能か聞いてみますので貸してください」
「ええ、五つで足りるかしら?」
「聞いてみなければ判りませんね」

 という事でジュエルシード達と死者蘇生に関して会議を開く事になりました。

「おや、お久しぶりです五番さん」
『---』
「はい、物凄く面倒な事に巻き込まれて嫌になってますけど元気ですよ」
『---』
「あ、多分効果が出てます。以前より体が楽な感じがしないでもありませんし」
『---』
「ええ、そうですね」
「・・・何を話してるのかわからないけれど、早く聞いてもらえないかしら?」

 おおっと、そうでした。久々にあったので盛り上がってしまいましたよ。・・・無機物のほうが友人が多いってちょっと悲しく感じました。
 まあそんな事はさておいて、確認に移りますか。

「お聞きしたい事があるんですけど・・・」
『---』
「はい、お願いに関してです。死者蘇生って出来ますか?」
『---』
「あ、複数あれば出来るんですか」
「本当なの!?」
「はい、可能みたいですよ」
「ああ、アリシア・・・これで、これでまた会えるのね・・・アリシアァ・・・」
『---』
「ただ五つじゃ少し足りないみたいです。完全を期すならもう少し集めた方がいいみたいですね」

 聞いちゃいません。完全にトリップしてしまってます。見た目が魔女のメイクのままなので物凄く怖いです。
 しかし複数個必要なんですよね・・・よし、さっさと帰りたいですし集めちゃいましょう。

「えーっと、高町さんや時空管理局の方が封印したもの以外のジュエルシードをここに転送して集めたり出来ます?」
『---』
「じゃあお願いします」

 ということで暴走しない様に私が調整しつつジュエルシードを召喚しました。高町さん達から奪わなかったのは単に面倒な事になりそうだったからです。
 そして現在の個数が十三個になりました。つまり高町さん達は八個持っているって事ですね。

「十三個で足りますかね?」
『---』
「それは良かったです。早く帰りたいですから」

 さて、後は蘇生する為に娘さんの死体をどうこうしなければなりませんが・・・死体、死体ですか。
 インターネットでグロテスクな画像を見た事があるので多少は耐性がありますが、実際に見て気分が悪くなったりしたらどうしましょうか。昔の死体みたいですし、間違いなくミイラか白骨ですよね。
 少し気が滅入ります。何で平和な世界でぬくぬく生きてきた小学三年生が死体を蘇らせるなんてイベントをこなさなければならないんでしょうか。

 と考えていたのですが、死体は物凄く近未来的なカプセルに保管されていて綺麗だったので、そこまで気分が悪くなるものではありませんでした。
 むしろ娘さんの死体よりも、既に涙を流して泣いていたり「失敗したらコロス」と言いたげな凶眼で見つめてくるプレシアさんの方が嫌です。
 でも我慢しなければなりません。これが終われば私は平穏を取り戻す事が出来るんです。その為ならば私も多少は頑張ります。・・・面倒ですけど。

「じゃあいきましょうか」
『---』
「はい。皆さんお願いしますね」

 ジュエルシード達から放たれる凄まじいまでの青い光。流石に十三個もあるおかげか、魔法が使えないし魔力もわからない私でも何かとてつもないものを感じます。
 明らかに凄まじいパワーを感じてこんなものを制御できるのかと不安になりましたが、何の問題も無く制御できました。ジュエルシード以上に私の能力はあり得ないものだったみたいです。
 まあ悪い事ではないので問題は無いですよね。

 ジュエルシードから全方向に解き放たれていた青い魔力が、娘さんの体へと収束して包み込んでいきます。
 魔力が原因か、それとも様式美なのか、娘さんの体が中に浮かび上がっています。いかにもなエフェクトですね。
 しかし結構時間がかかってます。今で大体三分くらいでしょうか。プレシアさんの目がヤバイ事になってるので早く終わって欲しいのですが。

 そしてそのまままた三分経過した所で、娘さんを包み込んでいた青い魔力が爆発するように、閃光と共に周囲に飛び散っていきました。
 目が痛いです。何となく光りそうな気がしたので目を瞑っていたのですが、それでも瞼を貫通する勢いで光ったのでダメージを受けました。
 そして目をゆっくり開けると・・・既にプレシアさんが娘さんの体を抱きしめて号泣していました。この人は目を傷めなかったんでしょうか。魔法でしょうか。

「生きてる・・・本当に、生きてる・・・アリシア!アリ、シアァァ・・・!!」

 うん、幸せそうな光景・・・ですが、やっぱり納得できませんね。
 フェイトさんもクローンとはいえ娘ですし、面倒ごとを持ってきてますが割りと嫌いではないので何とかしてあげたいものです。
 うーん・・・よし、せっかくここまで関わったのですから、アフターサービスと称してフェイトさん達が家庭円満になる様にプレシアさんを何とかしてあげましょうか。

 説得が面倒なのでジュエルシードで洗脳して。



[19565] 第8話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:55
 さて、プレシアさんの娘さんであるアリシアちゃんが蘇生していろいろあってから数時間が経ちました。

「ふふっ、どうかしら?久しぶりに料理したけれど、そう腕は鈍ってない筈よ」
「美味しい!」
「うん、美味しい・・・母さんの料理初めて食べた・・・」
「プレシアの料理は私以上の腕前ですからね」
「くぅ・・・悔しいけど美味しい・・・」

 目の前には色々変わったり増えたりしている愉快なテスタロッサ一家が勢ぞろいで夕飯を食べています。
 お礼と称して私も夕飯を食べていく事になったのですが、なんというか、つい先ほどまでの静寂感というか、そんな感じのものが皆無です。



 アリシアちゃんを蘇生させた後、早速私はプレシアさんを説得する事にしました。ええ、説得です。
 説得用にジュエルシードを用意して、何か変な事になる前に先制攻撃です。

「というわけで、お願いします」
『---』
「アリシア!アリシ・・・」

 よし。かかりました。
 さて、事細かに記憶や認識を弄繰り回すのは面倒なので、その辺はジュエルシードにお任せして勝手に整合性が取れるようにして貰いました。
 どんな展開になるかはわかりませんが、とりあえずフェイトさんと仲直りできる様になるならどうでもいいですし。

 その結果、プレシアさんはこんな感じになりました。

「ああ、わ、私は、フェイトになんて事を、私は、わたしは・・・!?」

 何だか良く分からない事になったので、五番さんに詳細を説明してもらいました。
 とりあえずプレシアさんが辿った変えられない過去の記憶は改変するとちょっとおかしくなるので、アリシアちゃんの死とフェイトさんの誕生に関しては弄らない事にしたようです。
 この部分で改変したのはプレシアさんの状態認識。アリシアちゃんが死んだ事を認識した瞬間から狂気に囚われた様な感じにしたようです。
 そして狂気の赴くままクローンという禁忌的な研究に手を染めてフェイトさんが誕生。しかしそれはあくまでフェイトさんでアリシアちゃんでは無く、それ故に狂気が暴走してフェイトさんを虐げていたという設定。
 そしてアリシアちゃんの蘇生と共にその狂気も収まって、自分がもう一人の娘であるフェイトさんに今までしてきた行為を自覚して絶望しているとの事です。

 フェイトさんが嫌われている事はわかってましたが、虐げていたとはまさか虐待でもしていたんでしょうか。さっきまでの悪役そのものなプレシアさんならあり得そうで怖いです。
 それと、家族関係を改善させる為にやったのに絶望なんてさせたら自殺しかねないんじゃないんでしょうか。今のプレシアさんは本気でヤバい事になってますけど。

『---』
「え?なんとかなるんですか?この状況からどうやって・・・」
「母さん!?今の魔力って!?」

 あ、今フェイトさんが来たら・・・

「フェイト・・・フェイトぉ・・・」
「母さん!?ど、どうしたの母さん!?」

 あー、プレシアさん号泣し始めましたね。フェイトさんに抱きついてひたすら「ごめんなさい」を連呼してます。フェイトさんは困惑。ついでに遅れてやってきたオレンジ犬さんも困惑。
 まあ、とりあえず暫く親子は放置しておきましょう。五番さんが何とかなると言ったのなら何とかなるでしょうし。
 その間私は・・・

「ちょっと、一体どうなってるんだい?」
「そうですね、落ち着くまで時間がかかりそうですし説明させて頂きますね」

 オレンジ犬さんに説明する事にしました。正直もうほっといていい様な気もしますが、自分から手を出した事なのでせめて終わるまでは待っていようかと思います。
 まずはフェイトさんがアリシアちゃんのクローンだと説明し、プレシアさんがジュルシードを集めていたのはアリシアちゃんを蘇生させる為だと説明。
 するとオレンジ犬さんが本気で怒り出したのでジュエルシードで縛り付けました。今あの二人に突撃する様な空気が読めない行動はちょっといけません。
 ぎゃーぎゃー騒ぐオレンジ犬さんを横目にフェイトさんを確認すると同じ内容を話してもらったのか、顔色が真っ青でした。しかしそれをプレシアさんが抱きしめて何か色々言っています。
 暫くそのままでいるとフェイトさんも号泣し始めました。表情から考えるに嬉し涙のように感じるので、まあ仲直りは成功したみたいですね。

「・・・ちょっと、一体どうやってプレシアを説得したんだい?」
「説得というか、面倒だったので洗脳しました」

 物凄く怖いものを見る様な目で見られました。失礼ですね。

「これは私の予想なんですが、一度でもフェイトさんを愛してしまえば洗脳が解けても大丈夫だと思っています」
「理由は?」
「まず、死んでしまったアリシアちゃんを弔うのではなく蘇生させようとしていたプレシアさんは、きっと愛が重たい人です」

 そうでもなければ死という運命に逆らう様な常識外れな行動なんて取らないでしょう。まさしく愛に生きる人ですね。
 そして愛が重たすぎる故に、似ているけど別人のフェイトさんにつらく当たっていたんでしょう。
 しかし、一度でも愛してしまえば問題はありません。

「その愛の重さがこの場合はプラスに働きます。おそらく今のプレシアさんはフェイトさんとアリシアちゃんを姉妹として扱うでしょうから、たとえ洗脳が解けても既に二人セットで愛してしまっているので変化は無いでしょう」
「いや、だからって洗脳はどうなんだい?」
「洗脳を選んだのは単に説得が面倒だからです」

 今度は胡乱気な目で見られました。何なんでしょう、この人も洗脳して欲しいのでしょうか。あ、人じゃなくて犬でしたね。

 暫くすると二人とも落ち着いたようで、抱き合いながら小声で会話しています。どうやら仲直りは成功のようですね。

「んぅ・・・あれ、おかあさん?」
「アリシア!?アリシアァァァ!!」

 あ、また号泣しながら抱きつきましたね。アリシアちゃん物凄く混乱してますよ。というか苦しそうです。
 しかしプレシアさんはまた「ごめんなさい」の連呼ですか。何か怖いです・・・あ、アリシアちゃんが貰い泣きし始めました。あ、フェイトさんまで貰い泣き。
 なんという事でしょう、泣き声三重奏が始まってしまいました。何故かオレンジ犬さんも涙目なので、もしかしたら四重奏になるかもしれません。
 ・・・そろそろ帰っても大丈夫でしょうか?

 面倒だったのでジュエルシードで強制的に落ち着かせました。

 プレシアさんがアリシアちゃんに事情説明。まだ五歳くらいに見える子に理解できるのか疑問でしたが、どうやら何となく理解したようです。
 流石クローンを作れる科学者の子供ですね、頭が良いみたいです。
 そして問題になったのは、フェイトさんとアリシアちゃんのどっちがお姉さんか、という物凄くどうでもいい事でした。
 面倒だったのでジュエルシードを使って双子に見える年齢まで強制的に成長させようかと思いましたが、結局外見を考慮してフェイトさんが姉になったみたいです。

「あれ?おかあさん、リニスは?」

 リニスというのはアリシアちゃんが昔飼っていた猫で、アリシアちゃんと一緒に死んでしまった後には使い魔として暮らしていたそうです。
 しかし色々あって契約を解除して普通の死体に戻り、今はもう居ないらしいのですが・・・

「リニス・・・しんじゃったの?・・・ヒッグ・・・」
「お願い!リニスも蘇生して!!」

 今までずっと忘れてたくせに必要になったら思い出してお願いをするなんて、何様のつもりなんでしょうか。
 というか流石に死体が無いと蘇生も何も・・・あるんですか。何であるんですか。死体収集癖でもあるんでしょうか。
 死んでしまったのなら普通に埋葬してください。

 仕方が無いので蘇生しました。使い魔は魔法で作った人口の魂を死体に入れて作り出すらしいので、ジュエルシード一つで何とかなりました。
 突然復活したリニスさんは色々混乱していましたが、事情を知ると涙を流しながらも喜んでいました。ちなみに事情説明に時間をかけるのが嫌だったのでジュエルシードで強制的に記憶をぶち込みました。
 本当に頼りになりますね、ジュエルシード。

 さて、今度こそこれで万事解決という事で、帰ろうと思った瞬間でした。

「ゴホッ!ゴホッ・・・カハッ!!」
「母さん!?」
「お母さん!?」
「血!?」
「まさかプレシア、まだ病気が治っていなかったんですか!?」

 あーはいはい治せばいいんですよね。治しますよーここまで来たら最後まで付き合ってあげますよどうせ今日以降関わる事は無いでしょうし。
 もうどうにでもなーれー。



 とまあそんなこんなで、お祝いとお礼という事でお食事会へとなった訳です。
 長い回想でした。なんで私はこんな面倒な事を思い出していたんでしょうか。思い出すだけで疲れました。

「さてもう食事も終了したので帰りますね」
「え?杏、もうちょっと・・・」
「お断りします。フェイトさんはどうか知りませんが、もう面倒です。帰って寝ます」

 色々あった割に名前を教えていなかったので今更ですが食事中に自己紹介をしました。
 アリシアちゃんに杏お姉ちゃんと呼ばれたときはちょっと嬉しかったです。ほら、私一人っ子ですし。
 本物の妹は色々面倒そうなのでいりませんけど。

「ジュエルシード、お礼にあげましょうか?」
「いや確かに欲しいですけど、もう時空管理局とか面倒なのに関わりたくないので遠慮します」
「そういえば管理局が居たわね。なんとかしなきゃ二人がゆっくり暮らせないわ・・・」

 プレシアさんが何か悩み始めましたが、私にはもう関係が無い事なのでスルーさせていただきます。
 それにしても、ジュエルシード欲しかったですね。管理局が居なければ貰っていたんですが・・・仕方が無いので色々お願いを叶えて貰った後にプレシアさんに押し付けましょう。

「というわけで、最後なのでお願いしてもいいでしょうか?」
『---』
「はい、勿論他のジュエルシード達も調整しますよ」
『---』
「ありがとうございます」

 というわけで、以前考えていた体重の事で、身長に応じた平均体重より少し軽いくらいを維持し続けるようにしてもらいました。
 ふふふ、これで私はどれだけ際限なくだらけても不健康にも肥満体にもなりません!まさに夢の様です。ジュエルシードの皆さん愛してます!

「それでは帰りますね」
「うん、ばいばい杏。またね」
「またね杏お姉ちゃん!!」
「フェイトを助けてくれてありがとうね」
「プレシアも、ありがとうございました」
「本当にありがとう。また近いうちに会いましょう」

 何で皆近いうちに会うと宣言してくれるのでしょうか。もう面倒ごとは嫌だと散々食事中に言ったんですが。

「・・・もういいです。ジュエルシードさん、自宅まで送ってください。今までありがとうございました」
『---』
「はい、それでは」

 そして私の体はいつかの様に青い魔力に包まれ・・・一瞬で、愛しの我が家へと帰還する事が出来ました。

「疲れました・・・もー魔法関連には関わらない様にしましょう」

 普段動かないせいで私はスタミナが全然無いんです。おかげでもう限界です。まだお風呂に入ってませんが・・・もう寝てしまいましょう。幸い明日は休日ですし。
 今日眠って、明日目が覚めたら誰にも脅かされる事の無い平穏で退屈な日常の再会です。ああ、楽しみで仕方がありません。
 もう十時ですし、さっさと寝てしまいましょう。

 では、おやすみなさい。



[19565] 第9話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:55
 朝、カーテンの隙間から漏れた日の光で目が覚めました。
 普段なら暫くの間寝ぼけ眼のまま愛しの布団との時間を堪能するのですが、今日はとても清清しい目覚めです。
 そう、今日からようやく、ようやく!魔法やら何やらの面倒事に遭遇する事のない平穏で退屈な日常が再開されるんです!
 そのおかげで気分は最高潮。とはいえ目覚めが早いだけで、着替えも移動も調理も全部能力でそれぞれ操っているんですけどね。
 フライング座布団はなかなか楽でいいです。もう自宅の中では歩く必要すらありません。

 ソファーに沈み込むように腰掛け、いつもと同じ様に朝のニュース番組を眺めながら、砂糖とミルクがたっぶり入ったコーヒーをゆっくりと味わいます。
 最近の私は色々とイベントが多かったのですが、ニュースを見る限り日本国内はいつも通りだったみたいですね。相変わらず政治家がどうとか交通事故がどうとか。
 ・・・そういえばちょっと前に海鳴で動物病院が倒壊したとか巨大な樹が現れたり消えたりしたとかやってましたけど、アレは今思えばジュエルシードが原因だったんでしょうか。
 ふむ、結局ジュエルシードの危険性がいまいち分からないまま終わってしまったせいで全然実感がありませんね。皆さんいい人・・・じゃなくていい宝石?ですし。

 さて、今日も学校です。いつも通り歩いて登校する事になりますが・・・ジュエルシードにお願いして転移魔法でも使えるようにしてもらえばよかったでしょうか。歩くの面倒です。
 この世界にも魔法が存在していれば私も歩かないで登校出来るんですが、なんとかならないものでしょうか。
 いっそ漫画みたいに魔法の強制認識とかでも起こってしまえばいいんですけどね。

 学校はいつも通り・・・とはちょっと違うみたいです。
 高町さんが居ないせいでしょうか、バニングスさんと月村さんの元気がいつもよりもありません。
 高町さんも手伝うのは良い事だと思いますけど、友達を心配させるのはダメでしょうに。まぁ、私には特に関係のない事なんですけどね。
 私の友達は遠藤さんしか・・・あぁ、そういえばフェイトさんとアリシアちゃんも友達になったんでしたね。アリシアちゃんはどちらかというと友達の妹ですが。
 しかし、友達ですか・・・まさか私に友達が増えるとは思いませんでしたね。両親も喜んでくれそうです。
 まぁ、もう魔法関係には関わらないのでそうそう会う機会なんて訪れないでしょうけどね。

「遠藤さん、久しぶりに一緒にお弁当食べませんか?」
「え?珍しいね、松田さんが誘ってくるなんて・・・普段は面倒とか考えて行動しないのに」
「今日は気分が良いですからね」

 ええ、とても気分が良いんです。多分明日になると以前までと同じ様なテンションになるでしょうし、今のうちに貴重な友人と親睦を深めておく事にしましょう。
 ・・・しかし、調理器具任せの料理も美味しいですけど、やっぱり誰かの手作り料理の方が美味しいですね。能力で作ると美味しいんですけど、何というか無難な味付けにしかならないんですよね。
 それに比べて昨日のプレシアさんの手料理は美味しかったです。見た目魔女だったあのプレシアさんがあんなに美味しい料理を作るとは思いませんでした。
 というかアリシアちゃんを蘇生して病気を治してから雰囲気変わってましたね。多分数日したら魔女から普通のお母さんになりそうです。

 しかし手料理ですか。自分で作るのは面倒で嫌なんですけど、やっぱり食べるなら美味しいものの方が良いですよね。
 どこかにメイドさんでも落ちてたりしないものでしょうか。出来ればメイドロボだと色々と楽なので嬉しいのですが。
 ・・・魔法があるなら、どこかに存在しない事も無いかもしれませんね。面倒なので探しませんが。

 それにしても平和です。退屈な日常が大好きな私でしたが、これからはもっと大好きになれそうです。
 学校も面倒ですが、魔法関連の厄介な事件に巻き込まれる事と比べたらまだマシですし。
 願わくばこのままの生活が続いて欲しいものです。

 まあ、今思えばそんな事を考えていたのがフラグだったのかも知れません。

 あれから二日後、学校から帰宅すると家の前に数人の人影が見えました。
 それを見た瞬間その場から逃げ出そうか悩んだのですが、このパターンだとどうせ捕まるだろうと思うのでそのまま立ち向かう事にします。
 この人達には何だかんだで関わってしまいますしね。こっちを見て嬉しそうな笑みを浮かべている金髪のお嬢さんを筆頭に。

「再会が早すぎませんか、プレシアさん」
「あら、私たちはまたねって言ったわよ?」

 本当に、テスタロッサ家は鬼門と言ってもいいのかもしれません。



「で、何の用ですか?」
「冷たいわね、せっかく会いに来たというのに」
「何度も言ってますが、私は面倒な事が大っ嫌いなんです」

 仕方が無いので家の中に招き入れ、リビングでお話を聞く事にしました。
 フライング座布団や勝手にコップに注がれるジュース等を見て最初は皆さん呆然としていましたが、流石に慣れてきたらしく今ではあまり気にしていません。
 あ、でもアリシアちゃんは未だ興味深々らしく、飛び交うものを笑いながら目で追っています。ちょっと可愛いので暫く何か飛ばしていましょう。

「もう魔法関連から手を引けると思ってたんですけどね・・・」
「大丈夫よ、ある意味魔法関連とも言えなくは無いけれど、厳密にはそんな事ではないわ」
「はぁ、そうですか」

 でも面倒事には変わりないんですよね?それが嫌だと言っているんですけど。
 というかどれだけ面倒な事になるんでしょうか。フェイトさんとかリニスさんが物凄く申し訳無さそうなを顔している気がするんですが。

「実は、フェイト達を暫く預かって欲しいのよ」
「はぁ、面倒なんで断りたいんですけどとりあえず、一体何故そんな事を?」
「・・・今回のジュエルシードの事件を終わらせて、フェイトとアリシアに平穏な生活をさせる為なのよ」

 今回の事件の発端であるジュエルシード。これを運んでいた次元航空艦・・・まあ宇宙船みたいなものですが、それを撃墜したのがプレシアさんらしいです。何してるんですか貴女。
 勿論これは明らかに犯罪です。それにロストロギア・・・ジュエルシードを不法所持していますし、管理局もフェイトさんがそれを集めていた事を知っています。
 ジュエルシードを集めていた理由やフェイトさんが管理局から逃げた理由は誤魔化せますが、流石に撃墜した事は不可能。それに過去のクローン研究も犯罪なので、まず常識的に考えて普通の暮らしをする事は現状不可能らしいです。
 そこで司法取引です。ジュエルシードを返還し、違法研究に協力していた人物や科学者の情報を提供し、クローン研究の過程で完成させた医療に転用できる技術の提供する。
 そして管理局に数年間の勤労奉仕をして罪を償い、影でこそこそ暮らさなくてもいい様にするらしいです。

「これで、少なくともフェイトが罪に問われる事は無くなるでしょうね」
「成程。そして数年間帰る事が出来ないから私に預かって貰いに来た、と」
「ええ。この世界に戸籍や人脈があれば何とかなるから家も借りられるでしょうけど・・・」
「はぁ・・・あれ?じゃあジュエルシードを探していた時って、フェイトさんをアルフさんは何処に住んでたんですか?」
「あの時はアルハザードに行くつもりで全部切り捨てるつもりだったから、残っていたお金を殆どつぎ込んでマンションの管理人に無理やりなんとかさせたわ」
「力技ですね・・・というかそのマンションに住めば良いのでは?」
「数ヶ月借りる契約だったのよ。もうすぐ期限切れだから、せいぜい一ヶ月が限度でしょうね」

 とりあえずうちに頼った理由はある程度納得できました。でもまだ聞きたいことがありますね。
 あ、アリシアちゃん暇ならテレビ見てて良いですよ?

「プレシアさんが居なくなったとしても、リニスさんが居れば何とかならないんですか?」
「リニスを置いていければ問題無いでしょうけど、ミッドで働いてお金を稼いでもらわないと生活費が無いのよ」
「まさかそこまで貴女に迷惑はかけられませんし・・・ここに戸籍があればこの世界で働いて家も借りられるのですが」

 つまりこの世界に戸籍さえあれば何とかなりそうという事ですか。戸籍、戸籍ですか・・・

「話は聞かせてもらった!!」
「人類は滅亡するわ!!」
「「「えぇ!?」」」
「お父さん、お母さん。いきなり帰ってきたかと思えば変な事を言わないで下さい。後フェイトさんとアリシアちゃんと、後何気にアルフさんも信じちゃってますから撤回してください」

 というかいつから聞いていたんでしょうか。犬の使い魔と猫の使い魔がいるのに盗み聞きがバレなかったってどういうことでしょうか。
 本当に謎すぎる両親です。

「で、このタイミングで出てきてそんな発言をするという事は何とか出来るんですか?」
「勿論。ちょっと友達に頼めば何とかなるよ」
「家も友達に頼めば何とかなると思うわよ~」

 相変わらず不思議すぎる人脈を持っている両親ですね。さすが吸血鬼と月見したりするだけの事はあります。

「っと、いきなりすみません。どうやら杏がお世話になっている様で」
「・・・はっ!?い、いえいえ、むしろ私達の方が娘さんの世話になりっぱなしです」
「それにしても杏の友達が増えるなんて思わなかったわ。めんどくさがりだからもう増える事は無いって思ってたもの。一人しか居ないみたいだったし」
「杏お姉ちゃん、友達居なかったの?」
「面倒だっただけですよ」
「えっと、私、友達で良かったのかな・・・」
「友達だと思ってましたけど、もしかして独りよがりだったんでしょうか。流石にショックなんですが・・・」
「あ、ううん、友達だよ!私の始めての友達!」
「・・・お互い友達が少ないですね」
「・・・そうだね」
「フェイトも杏お姉ちゃんも私も、友達少ないね・・・」

 私はあまり気にしていないんですが、どうやら二人はちょっと気にしているみたいです。
 ちなみにアリシアちゃんがフェイトさんの事を呼び捨てにするのは、実感が無くても本当は自分が姉だかららしいです。何気にフェイトさんが残念がってました。

「・・・というわけで、三日後にまた来てください。その頃には用意が済んでると思いますので」
「本当にありがとうございます。なんとお礼を言っていいのやら・・・」
「いえいえ、杏のお友達の為ですから」

 気が付けば話が纏まったようです。
 というか、一体どんな用事があって突然世界旅行から帰ってきたんでしょうか?

「なんとなく、帰った方がいい気がしたのよね~」

 本当にこの両親は謎です・・・まさか魔法使いだったりしないですよね?

 ともかく、そんな感じでテスタロッサ一家が地球住む事となりました。
 まだ何処に住むのかは分かりませんが・・・この両親の事ですから、恐らくこの家の近くなんでしょうね。
 結局魔法関連から離れる事は出来ないわけですか。

 ・・・でもまあ、貴重な友人と会いやすくなる訳ですし、別にいいでしょう。面倒ですけどね。



[19565] 第10話
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Date: 2010/06/15 15:17
 テスタロッサ一家が地球に住む事が決まってからは手続きの為、両親が暫く日本に滞在する事になりました。
 前の連休以来の一家団欒ですね。手続きが終わったらまた旅行に行くらしいので、今のうちに甘えておきましょう。
 一人でも大丈夫ではありますが、やはり両親がいないのは多少寂しいですし。・・流石に恥ずかしいので直接言いませんけどね?

 それにしても、やはり手料理は美味しいです。特別料理が上手な訳ではないと思いますが、とても私好みというか・・・ああ、これがお袋の味というものなんでしょうね。
 両親がいるのにお袋の味に飢えているとは、流石に家庭環境に問題がある様な気がしてきました。
 まあだからといって両親は旅行を止めませんし、私も止めないんですけどね。中々歪んだ家族です。嫌いじゃないですが。

 さて、家族との団欒を楽しみつつだらけながら生活を続け三日が経ちました。
 どうやら当初の予定通りに手続きは完了したらしく、今は両親と一緒に雑談しながらコーヒーを飲んでいます。
 何やら両親がエジプトで未発見のピラミッドに侵入してきたとか言っていますが、それが本当ならとんでもない事なのではないでしょうか。
 というか、もしかして私の両親の職業はトレジャーハンターだったりするんでしょうか。遺跡で聖杯とか探してても違和感が無い両親ですし。

 暫くするとプレシアさんとフェイトさんとアリシアちゃんがやってきました。
 アルフさんとリニスさんはどうやら自宅で色々忙しく準備しているらしく、今日は来ていないみたいです。
 これから詳しい話し合いになるのですが・・・とりあえずアリシアちゃんが暇しそうなので、アリシアちゃんの指示に従う自動操縦のぬいぐるみを派遣しておきましょう。
 ぬいぐるみの種類は猫と犬とアルマジロです。何気にアルマジロのぬいぐるみが一番もふもふしています。割とお気に入りです。
 あ、ちなみに両親にはもう魔法関係について話してあります。全然驚いてはいませんでしたけど。

「・・・というわけで、身分は説明した通りです」
「ええ、ありがとうございます」
「次は住宅なんですが・・・」

 本当に戸籍も何とか出来たんですね。戸籍っぽいものの実物を見るまで信じきれませんでしたが・・・本当に底知れない両親です。
 で、住宅は・・・あれ?ここってもしかして。

「これってうちの隣の空き家ですよね?」
「そうよ。近いし丁度良かったからね~」
「何が丁度いいのかよく分かりませんが」
「友達の家が近いと遊びやすいだろう?少しでも遠いとめんどくさがって遊ぼうとしないだろうし」

 否定はしません。むしろ肯定しましょう。何せ家の中を歩く事すら面倒な私なのですから。

「とまぁ、こんなものですね。仕事に関しては流石に勝手に決めるわけにはいきませんでしたので、そちらでお探しください。」
「何から何まで本当にありがとうございます。・・・それで、あの事に関してはどうでしょうか?」
「勿論そちらも問題なく手続き出来ました」

 む、あの事?何でしょう、何かこっそりと進めていた事でもあるんでしょうか。

「うふふ、はい、フェイトちゃんとアリシアちゃんにプレゼントよ」
「え?なになにー?」
「あ、えっと・・・ありがとうございます?」
「ほら、二人とも開けて御覧なさい」

 あ、箱を見てわかりました。あれと同じものを私も持っていますし。

「あ、これって・・・」
「杏お姉ちゃんが着てた制服と同じ?」
「やっぱり聖祥の制服ですか。まあ日本に住むんですから、義務教育はちゃんと受けなくちゃいけませんしね」
「じゃ、じゃあもしかして私とアリシアも学校に!?」
「そういうことね。こっそりお願いしておいたのよ。驚いたでしょう?」
「わぁ~・・・あれ?でもわたし五歳だよ?学校って六歳からじゃないの?」
「大丈夫、戸籍上は六歳だから」

 それは大丈夫ではないと思います。いや、何とかなっていますから大丈夫なんでしょうか?
 ・・・大丈夫なんでしょうね。一歳くらいなら誤差の範囲内といっても問題は無いでしょうし。気にしない事にしましょう。きっと悩むだけ無駄です。
 しかし、フェイトさんとアリシアちゃんも学校に来るんですか・・・高町さんが混乱しそうな気がしそうです。
 ・・・ん?高町さん?そういえば、まだ学校を休んでますね。もしかしてまだジュエルシードを探しているんでしょうか?

「プレシアさん、時空管理局に連絡ってしました?」
「まだよ。昔あってた研究や科学者の情報を整理している途中なのよ。ついでに昔の研究仲間で外道な事ばかりしてた連中と連絡を取って管理局に売ろうと行動してる最中だから、出頭はもう暫く先ね」
「流石プレシアさん。若々しくなっても思考は魔女ですね。違法研究していただけの事はあります」
「うるさいわね・・・昔の事は言わないで欲しいわ」

 まあ色々な意味で黒い歴史ですしね。あまりネタにしない様にしましょう

「ねえねえ!学校っていつからいけるの!?」
「二日後の月曜以降ならいつでも大丈夫だよ」
「やった!フェイトフェイト、帰ったらいっしょに学校の準備しよーね!」
「うん。えっと、ペンとノートはいっぱいあったと思うから・・・」
「ふふっ、どうやら管理局に行く前に軽く引越しを済ませた方が良さそうですよ、プレシアさん」
「ええ、そうね。リニスに念話で連絡しておくわ」

 それにしても本当に嬉しそうですね。私は学校なんて面倒としか思えませんが・・・まぁ初めての学校みたいですし、仕方ないかもしれませんね。
 願わくばこのまま魔法なんて関係ないイベントだけが続いてくれれば嬉しいんですけどね。
 そして私を過度に巻き込まなければなおベストです。とはいえ・・・

「杏お姉ちゃんもいっしょに学校いこうね!」
「うん、杏も一緒。面倒とか言いそうだけどね」
「確かに面倒ですけど学校にはちゃんと行ってますよ」

 巻き込まれるのか確実なんでしょうけどね。ちょっと面倒です。

 そして二日後の転入時、フェイトさんやアリシアちゃんと私の出会いを聞かれたり学校の案内を任されてしまったり、そこから世話焼きなバニングスさんと月村さんに関わったりと面倒事がありました。
 そして遠藤さんに「松田さんに友達が増えた!?」と大いに驚かれたりしました。失礼ですよね。
 あ、バニングスさん達にも友達になろうと言われたんですが・・・

「二・三人以上居ると付き合いが面倒そうなので遠慮しますね」
「なっ!?」
「め、面倒なだけで友達を拒否されちゃった・・・」
「杏、それは流石に酷いと思うよ」
「まあ松田さんらしいけどね」

 そんなこんなで結局友達にされてしまいました。二人のお嬢様と友達に・・・面倒な事に巻き込まれなければいいのですが。

 ところで高町さんはまだ戻らないのでしょうか。プレシアさんに事前連絡する様に言った方がいいでしょうか。・・・いや、面倒なので放っておきましょう。
 暫くしたらプレシアさんが出頭して判明するでしょうし。



[19565] 第11話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:56
「ふぁ・・・ぁふ。おはようございます・・・」
「おはよう杏」
「最近はいつもより少し早めに起きてるわねぇ」
「早めに起きないとアリシアちゃんに飛び掛られますから・・・いくら軽いといっても寝起きでアレは流石に苦しいです」

 テスタロッサ一家・・・というよりもフェイトさんとアリシアちゃんとアルフさんが引っ越してきてから、私は少しだけ起床時間が早くなりました。
 テスタロッサ一家で料理が出来るプレシアさんとリニスさんは本格的な引越しの準備や情報の整理で忙しく、それ故に朝食と学校の弁当はうちが作っているのですが・・・その時に私が眠っているとアリシアちゃんが起こしに来るんです。
 よりによって妹キャラにありがちなダイビングで。結構ダメージが大きいんですよアレ。止める様に言っているんですが。
 まあ懐かれて悪い気はしないですが。・・・というか自分でも知りませんでしたけど、意外と年下には優しかったんですね。基本的に他人にはあまり関わらなかったので今まで気付きませんでしたが。

「おはようございまーす!」
「おはようございます」
「おはよー」
「おはようございます、フェイトさんアリシアちゃん。アルフさんも」
「おはようございます」
「おはようございます。娘がお世話になりました」
「あ、プレシアさんとリニスさんもおはようございます。情報整理は終わったんですか?」
「ええ、昨日地球に来ている管理局の次元航空艦に連絡を入れたわ。今日の夜に向かうつもりよ」
「あら、そうなんですか。じゃあ二人とも今日はたっぷりプレシアさんに甘えておかないとね~?」

 ともかくこれで本格的にジュエルシード事件は終了ですね。何だかんだで割と時間がかかりましたが、これで一安心です。
 さて、今日以降はそう簡単にプレシアさんに会えなくなるでしょうし、せいいっぱい親子の団欒をさせてあげましょうか。
 いえ、これで静に朝ごはんが食べれるなんて思ってないですよ?親子の団欒を邪魔しちゃいけませんから。ええ、朝から元気なアリシアちゃんの相手をしなくていい事にちょっと安心しているのは確かですが。
 朝はゆっくりしたいですしね。いえ、朝だけと言わず年中ゆっくりしたいんですが。

 というか知ってたわけでもないのに、なんでお母さんはこの人数に足りる分の朝ごはんを作ってあったんでしょうか。
 まるで予知・・・あ、常識的に考えれば電話か何かで事前連絡しますよね。最近ファンタジーばかりでちょっと常識が吹っ飛んでいたみたいです。気をつけないと。

「では、行ってきます」
「行ってきまーす!」
「行ってきます」

 さて、今日も憂鬱な気分で登校です。学校なんて無くなればいいのに。

「お昼ごはんたのしみだなぁ」
「今日は母さんが作った弁当だもんね」
「プレシアさんの料理は本当に美味しいですしね」

 料理もクローンもなんでもござれな人ですからね。研究して作るという行為に対する天性の才能でもあるんでしょう。
 アリシアちゃんは絵が上手ですから、多分そっちの才能を引き継いだんでしょうね。そして魔法の才能はフェイトさんなんでしょう。
 ・・・という事は、アリシアちゃんは将来あれほど美味しい料理を作れるようになる可能性があるわけですか。可愛くて元気で料理上手とは優良物件にも程がありますね。
 フェイトさんも将来綺麗になりそうですし・・・私はどうなんでしょうか。せめて身長が150cmを超えてくれればそれでいいのですが。

「またお昼にね~!」
「ばいばいアリシア!」
「頑張ってくださいね」

 学校に到着し、学年が違うアリシアちゃんを別れて教室へ。
 フェイトさんはやはり人気が高いらしく、一緒に歩いていると様々な方向から視線を感じます。フェイトさんは気付いていないみたいですけどね。
 しかしあの美少女ヒロイン三人組にフェイトさんが加わったんですよね・・・お陰で他のクラスからのお客さんが増えたような気がします。
 その集団に私が居るのは正直どうかと思いますが。特別可愛い訳でもありませんし。覇気も皆無ですしね。

「さて、寝ます」
「相変わらずだね・・・おはよう杏ちゃん、フェイトちゃん」
「はい、おはようございます。希さん」
「おはよう希」

 遠藤さんとはバニングスさんと月村さんの友達騒動の時に、何だかんだあって名前で呼び合う事になりました。
 ちなみにバニングスさんと月村さんを苗字で呼ぶのはささやかな抵抗だったりします。大して意味はありませんが。

「最近アリシアちゃんのせいで寝不足です・・・」
「十分くらいしか変わらないって言ってなかった?」
「朝起きてからの二度寝の十分は何ものにも変えがたい至福の時間なんです」
「ちょっと気持ちが分かるかな。二度寝気持ちいいし」
「私は寝起きが良いみたいですぐ目が覚めちゃうから・・・」
「フェイトさんはちょっと勿体無いですね。今度二度寝してみるべきです」

 朝の学校でこんなに会話する様になったのも魔法関連に関わったからなんですよね。もう少しだらける時間を確保したいのですが。

「とりあえず会話が面倒になったので寝ます」
「あはは・・・お休み杏ちゃん」
「時間になったら起こしてあげるね」

 うん、やはり持つべきは協力的な友人ですね。これがバニングスさんだったら眠らせてもらえなかったでしょうから。
 さて、今度こそ惰眠を貪りま・・・

「全く、一体何処に行ってたのよ!」
「にゃはは・・・色々ありまして・・・」
「なのはちゃん疲れてるみたいだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫なの!」

 あぁ、考えてみればそうですね。昨日時空管理局に連絡を入れたんですから、今日から高町さんが来る可能性がありましたね。
 まぁ私にはあまり関係が・・・あ、フェイトさんは思いっきり関係ありました。
 ちょっと気になったので机から顔を上げると、フェイトさんは物凄く驚いた顔で高町さんを見ています。・・・あ、高町さんも気付いて急停止しました。

「なのは?どうしたのよ?」
「なのはちゃん?・・・あ、あの子はちょっと前に来た転校生のフェイトちゃんだよ」
「てんこう、せい・・・?」
「そうよ。・・・もしかして知り合いだったの?」
「あ、あはは、あははは・・・」
「え、ちょっとなのは?なのは!?」
「なのはちゃん!?」

 あ、壊れて崩れ落ちて真っ白になりました。凄いです。人間って本当に真っ白になるんですね。実際に色が変わったわけではないんですが、雰囲気が真っ白です。
 しかしあそこまで驚くなんて、どうしたんでしょうか?存在しないジュエルシードを探しただけじゃあフェイトさんを見てもああならないと思いますけど。

「何か心当たりありますか?」
「ふぇ!?えぇっと・・・そういえば、お話がしたいって言ってたような」
「ああ、成程。そういうことですか」

 高町さんの事ですから多分友達になりたかったんでしょうね。という事は、ジュエルシードを探していたフェイトさんと会う為に今までずっと頑張っていたんでしょうか。
 それなら仕方が無いですね。なにせそんな事をしなくても学校に来たら友達になれたんですから。ご愁傷様です。

「うぅ・・・ジュエルシード探しはいきなり終わっちゃうし、フェイトちゃんは学校に居るし、散々なの・・・」
「よく分からないけど、本当に大丈夫なの、なのはちゃん?」
「それにしても杏の他になのはもフェイトの知り合いだったなんて、世間は狭いわね」
「あん、ず?」
「うん、松田杏ちゃん」

 あ、ちょっと、今それ言ったら間違いなく面倒な事に・・・

「あ、あ、あ、杏ちゃーん!!」
「いきなり名前で呼ばれるとは思いませんでした」
「そんな事はどうでもいいの!それより聞きたい事があるの!!」
「面倒ですから一つだけですよ」
「ジュエルシードが見つからなかったのって、杏ちゃんが全部集めたんでしょ!?」
「はい」
「にゃぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!!」

 あ、完全に壊れました。というか魔法関係の単語を叫ばないで下さい。後で困った事になっても知りませんよ。

 それからお昼まで高町さんは真っ白でした。お疲れ様です。
 ちなみにお昼にアリシアちゃんと遭遇して高町さんがまた混乱していました。お疲れ様です。
 そしてお昼に事情説明するととうとう反応を返さなくなりました。本当にお疲れ様です。

 あ、でもフェイトさんとアリシアちゃんの二人と友達になれた時はとても嬉しそうでした。良かったですね。



[19565] 第12話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:56
 あれから結局高町さんも友達?になってしまいました。もう増えなくてもいいと言っているのに話を聞いてくれません。
 以前なのはさんが使っていた魔法もそうでしたが、一切合財を無視して直進する事が好きなんでしょうか。真っ直ぐな人といえば聞こえはいいですけど、私からするととても面倒です。
 ただなのはさん自身も私に苦手意識があるらしく、持ち前の一直線な行動もちょっとだけ弱くなってる様な気がします。
 具体的に言うと、

「むー・・・杏ちゃん、いい加減名前で呼んで欲しいの!」
「何故でしょうか?」
「だって友達・・・」
「私は別に友達じゃなくても良いんですが」
「いや、あの・・・」
「はい」
「えっと・・・うぅ・・・」
「なんでしょう」
「・・・」

 といった感じでしょうか。
 まあこの後アリサさんに怒られたりして結局色々面倒になって名前で呼ぶ事になったのですが。全く強気キャラは鬼門です。
 というか関わってしまった時点でもう手遅れだったんでしょうね。今のところは学校での朝とお弁当後のお昼寝は何とか死守出来ていますが、これもいつ侵食されてしまうのか・・・
 特にお昼寝はアリシアちゃんに起こされる事も多いですからね。フェイトさんだけが頼りですけど、何だかんだでやはりアリシアちゃん優先な部分がありますし。
 希さんは他の友人グループへ行く事が多いらしく頻繁には助けてもらえませんし。ああ、面倒です。

 その一方で、自宅では比較的以前までと同じ様なだらけた生活が満喫できています。
 家の中での移動は勿論フライング座布団。それも三枚連結して主に寝そべったまま移動です。移動するその姿はまるで人間ロケットだとはアリシアちゃんの言葉。
 ちなみにアリシアちゃんもフライング座布団がちょっとお気に入りだそうです。魔法が使えないみたいですから空を飛べて嬉しいそうです。
 フェイトさんは私に影響されたのか、特に何かをする訳でもなくのんびりする事が結構好きになったみたいです。曰く、「今までこうやってのんびりした事無かったから」だそうです。なんて勿体無い人生でしょうか。
 アルフさんは専ら犬型でのんびりしています。が、最近怠けすぎだとリニスさんに怒られたらしく、今はバイトを探しているようです。ニートなんて羨ましい生活をさせない為に協力しようか悩みどころです。
 リニスさんはプログラム関係の仕事に就職したみたいです。まあ魔法もプログラムみたいなものらしいので、フェイトさんに魔法を教えていたリニスさんには丁度良い仕事ではないでしょうか。
 ・・・何となく察する事が出来ると思いますが、テスタロッサ家の皆さんは基本的に私の家に集合しています。
 私の両親は既に世界旅行を再開しているので私は一人だけですし、リニスさんも仕事があるので平日の日中はアルフさん一人。
 学校が終わったらフェイトさんとアリシアちゃんは大抵こっちに遊びに来るので、アルフさんも着いてきて・・・と、まあそんな感じで全員集合しています。
 全員集合してもやる事はのんびりするかゲームくらいしか無いのですが、アリシアちゃん曰く、「人数が多い方がとりあえず楽しいから」だそうです。
 まあ強制的に外出させられる訳でもないので、その点については賛成しないでもありません。

 そんなこんなで夏休みに突入しました。しかしやはり基本的に外出はしません。
 というか暑いのに外に出る理由がわかりません。自分から苦しもうとするなんて、変態なんでしょうか。

「やはり夏がクーラーの効いた部屋でだらだらするのが一番ですね」
「ミッドは涼しかったけど日本は暑いね・・・」
「杏おねえちゃーん、アイスたべていい?」
「あ、あたしも食べて良いかい?」
「良いですよ。ついでに私の分も持ってきてくださいね。あ、フェイトさんも食べます?」
「あ、うん」

 この頃になると全員のんびりする事が好きになっています。見事に私に影響されてますね。良い事です。
 まあフェイトさんとアルフさんは魔法の腕が鈍らない様に練習していますし、アリシアちゃんはリニスさんから貰った教科書で魔法の勉強をしているみたいですから完全にだらけている訳では無いみたいですが。
 ・・・ちなみに私に魔法が使えるか聞いてみたところ、魔法を使う為に必要なリンカーコア?が無いので不可能だと言われてしまいました。残念です。
 とはいえ完全に無理な訳でも無いんですけどね。フェイトさんのバルディッシュにお願いしてフェイトさんの魔力で勝手に魔法を発動させる程度なら可能です。
 それを見たリニスさんは「これは流石に非常識過ぎます!」だとか言ってましたが気にしません。

 ある日、すずかさんの家でお茶会をするという事でお誘いを受けました。
 お茶会です。なんという貴族的な響き。現代日本人の小学生が誘ってくる様な行事では無い気がします。やはり良家のお嬢様は住む世界が違うのでしょうか。単純なお金なら私の家も結構あるんですが。
 ともかくお茶会です。勿論断ろうと思ったのですがフェイトさんとアリシアちゃんにも誘われてしまい断れきれませんでした。将を射んと欲すればという奴ですね。
 別に断ろうと思えば断れたんですが、まあ成り行きとはいえ、友達になった相手の家に一度も行かないのもどうかと思ったので。
 あ、勿論遠藤さんの家にも行った事はありますよ?めんどくさがりですけど、その辺は割とちゃんとしているので。まあ一回しか行ってませんが。

 そしてお茶会当日。私の家に迎えが来るという高待遇です。これがあったから参加した様なものです。真夏に外を歩くなんて苦行をする気はありまえんので。
 アリシアちゃんはすずかさんの家に始めて遊びに行くという事で楽しそうです。フェイトさんは以前ジュエルシードを探している時に不法侵入した事があるらしいですが、ちゃんとお客さんとして行くのは始めてらしいのでやはり楽しみにしています。
 ちなみにアルフさんはバイトが決まって働きに行っています。何の仕事かは知りませんが。

 インターホンが鳴りました。迎えが来たようです。

「さて、行きましょうか」
「楽しみだね」
「猫がいっぱいいるんだって!」

 アリシアちゃんは猫好きの様です。使い魔にする前のリニスさんを飼っていたのもアリシアちゃんらしいですね。
 私も猫は好きなので楽しみですね。わざわざ移動するのは面倒ですけど。

 しかし、まさかこんなものに遭遇するとは思いませんでした。

「杏様、フェイト様、アリシア様。お迎えに上がりました、月村家メイドのノエルと申します」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「よろしくおねがいしまーす!」
「・・・あぁ、えっと、よろしくお願いします」

 予想外です。何処からどう見ても人間にしか見えませんが、能力がある私には分かります!この人は本物のメイドロボじゃないですか!?
 凄まじいですね月村家。まさかこんな現代科学の最先端でも実現不可能と思われる様な完全なメイドロボが存在しているなんて、実は魔法に関わりのある一族だったりしないんでしょうか?
 うーん・・・私の手で触って中身をあちこち見たら色々わかるんでしょうか。ジュエルシードはあまり理解出来ませんでしたが操作や改造自体は可能でしたし、少なくとも操る事は可能でしょうが・・・
 しかし生物では無いとはいえ強い意志があるでしょうし・・・いやでも操作できたバルディッシュさんもAIとはいえ強い意志がありましたし・・・ううむ、興味深いです。弄繰り回したい。

「あの、何かございましたか?」
「あ、いえ、なんでもないです」

 まぁ実験する訳にもいかないので諦めましょう。それに多分操作可能でしょうし。
 万が一操作したことがバレて向こうに私の力のことがバレたら面倒な事になりそうです。何せメイドロボを問答無用で服従させる事が出来る天敵の様な存在ですからね。
 ここは手を出すべきではありません。ジュエルシード事件で学んだ事です。変な事をしたら面倒な事態が発生しますから自重しましょう。

 その後、普通にお茶会をしながら猫と戯れました。もふもふは癒されます。これだけで来た甲斐がありました。
 でももう行かない方が良いかも知れません。何故ならメイドさんが気取られぬ様に私を凝視していましたから。こと非生物に関しては私を誤魔化す事は出来ません。
 ・・・やはり初対面であからさまに驚いてしまったのがいけなかったんでしょうか。証拠は無いので接触してくる事は無いと思いますが、もう面倒事は嫌なので絶対に回避しなければ。

「またいきたいなー」
「じゃあ、また今度お呼ばれしたら一緒に行こう」

 ええ、たとえフェイトさんとアリシアさんに誘われても行きません。行きませんとも。



[19565] 第13話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 20:57
「少しは自力で動いたらどうですか!」
「お断りします」
「そんなに怠けてばかりで、筋肉が弱って大変な事になりますよ!」
「ジュエルシードでサポート済みです」
「・・・そんな事だと、将来どうやって働くつもりですか!」
「私は宝くじの抽選生中継で抽選番号を操作出来るんですよね」
「そ、それは卑怯です!倫理的に問題があります!」
「私は倫理より欲望に生きます」
「リニス、杏のは何言っても無理だと思うよ」
「杏おねえちゃんのダラダラはもうなおらないよ」
「しかし、しかしですねぇ!流石にこれは!」

 どうも、松田杏です。夏休み中に際限無くだらけきっていたら、本日休日のリニスさんに怒られました。他人の家庭の方針に口を出すなんて問題ですよね。
 まあ私もテスタロッサ家に口を出したのですが、それはそれ、これはこれです。気にしてはいけません。
 しかし何が引き金だったんでしょう?寝転がりながらテレビを見つつ夏休みの算数の宿題をしていただけなのですが。

「バルディッシュに計算させて、その答えを鉛筆に書かせるだけで自分は何もしていないではないですか!」
「能力は使ってますが」
「頭を使って自分で解きなさいと言っているんです!アリシアだって自分でやっているんですよ!?」
「よそはよそ、うちはうちという言葉が日本にはありましてですね」
「もう、ああ言えばこう言う・・・」
「あ、やっぱりこの二人は兄妹でしたか」
「昼ドラなんて見ていないで話を聞いて下さい!」
「うるさいですよ」
「ごめんねリニス、もうちょっと静かにしてくれないかな?」
「リニスうるさーい」
「リニス落ち着きなよ。テレビの音が聞こえないじゃないか」
「どうして全員昼ドラ見てるんですかー!!

 そんなの面白いからに決まってるじゃないですか。このドロドロっぷりと何度も大逆転する展開がたまりません。
 まあ私は今の昼ドラよりも前回の昭和時代を舞台にした昼ドラの方が好きでしたけどね。最終回の色々な投げっぱなしっぷりは認められませんが、それ以外は中々でした。
 今の悪くは無いんですけれどね。今後の展開に期待です。

「昼ドラのDVDでも買ってみましょうか・・・」
「あ、私も見たい。買ったら貸してもらえないかな?」
「わたしはアニメがいいなー」
「普通に映画にしないかい?」
「あ、貴方達は・・・」

 そうピリピリしない方がいいですよ。人生は余裕を持ってのんびりダラダラ楽しんだ方がお得です。私はそれを両親を見て学びましたから。
 ・・・さて、昼ドラも終わりましたし、リニスさんが説教している間に算数の宿題も終わりました。次は・・・

「お昼寝します」
「私は・・・もうちょっとテレビ見るね」
「宿題しよーっと」
「散歩でも行こうかねぇ・・・今日は比較的涼しいみたいだし」
「もう、もういいです。私はバルディッシュのメンテナンスでもします。・・・うぅ、こんな生活で大丈夫なんでしょうか。フェイトとアリシアの将来が・・・」

 なんとかなります。きっと。ほら、フェイトさんとアリシアちゃんはいざとなれば持ち前の才能を活かして時空管理局に就職したらいいじゃないですか。
 今はプレシアさんも勤労奉仕で働いてますし、コネの一つくらいなら出来ると思いますし。
 まあその時空管理局にどんな職種があるのかわからないんですけどね。興味もありませんし。



 とある日、以前すずかさんの家に遊びに行ったので今度はアリサさんの家に行く事になりました。勿論お迎えつきです。
 アリサさんは苦手です。リニスさんは何だかんだで口だけに留めてくれるので楽なのですが、アリサさんは容赦なく実力行使に出ます。流石にそこまでされたら動かざるを得ません。
 ・・・という訳でバニングス家へやってきたのですが、月村家に負けず劣らず大豪邸です。フェイトさんとアリシアちゃんの・・・実家?の時の庭園も結構な豪邸ですし、私の身の回りの人は皆お金持ちですね。
 なのはさんの家はそれなりの大きさがあるけど普通の家と言っていましたが・・・道場のある家は普通じゃないです。敷地面積どれくらいなんでしょうか。

 それはともかくアリサさんの家です。
 アリサさんはすずかさんと双璧を為すように犬が大好きで、やはりバニングス家も犬天国と化していました。もふもふです。
 うぅむ、やはり犬も可愛いですね。難点は吠えるのがうるさいという事でしょうか。躾られているのであまりうるさくしないのですが、流石にこうも犬が多いと至る所から犬の鳴き声が聞こえてきます。
 これで可愛くなければ帰っているところです。もふもふです。

「杏って動物が好きなの?すずかの家でも猫にもふもふしてたけど」
「気持ち良いじゃないですか、もふもふ。個人的には猫のもふもふの方が好みですけど」

 でもペットは飼いません。ペットの世話なんて数分で投げ出す自信があります。
 アルフさんやリニスさんみたいに全部自分でやってくれるなら喜んで飼いたいのですが、そんなペットは居ませんしね。だからといって魔法に関わって使い魔を作るというのはちょっと勘弁ですが。
 まぁリンカーコアが無いので不可能なんですけどね。多分。



 とある日、今度はなのはさんの家に行く事に・・・と言いたい所ですが、家ではなくご家族が経営している翠屋へ行く事に。お迎えはありませんでしたが、美味しいデザートの為なら仕方ありません。
 といいつつも衣服や靴まかせで殆ど自力では歩いていませんが。難点は暑さだけですね。嫌になります。

「私の両親もそうですけど、海鳴に住んでいる大人の人は何故こうも若い人ばかりなんでしょうか」
「にゃ、にゃはは・・・そういえばそうだね」
「母さんもアリシアが生き・・・えっと、海鳴に来る様になってからちょっと見た目が若返ったしね」
「フェイト・・・」

 フェイトさん油断しましたね。アリシアちゃんがニヤニヤしながら見つめてますよ。
 というか自分の生死に関わる話をニヤニアしながら見るとは恐ろしい小学一年生ですね。死んで生き返ったことをこうも軽く簡単に受け止めるなんて。
 実感が無いだけなのかも知れませんが。

 なのはさんのご両親がサービスしてくれるという事で 、オススメのシュークリームを食べてみました。
 これは凄いです。人気の店と聞いていても混んでいたら嫌なので来ていませんでしたが、これなら混んでいても納得です。こんなものが都会じゃなくて海鳴で食べられるとは・・・
 これの為なら多少歩くのも許容出来るかもしれません。でもやっぱり面倒なので食べたくなったら誰かに買ってきて貰いますか。
 フェイトさんとアリシアちゃんの分も買うと言ったら喜んで買ってきてくれそうです。満面の笑みで食べていますし。

「ふわぁ・・・」
「へぇ・・・」
「くすっ」

 何か三人娘に笑われました。何だというのでしょうか。

「あんたの満面の笑みが珍しかっただけよ」
「にゃはは、杏ちゃんっていつもだるそうな顔してるから」
「普段から笑ってればいいのに」

 ・・・なんでしょうこの妙な恥ずかしさは。勘弁してください。



 そんなこんなでイベントをこなし、残りの夏休みは殆ど自宅の中で過ごしつつも満喫しました。そして早くも明日から二学期です。
 このまま人生ずっと休んでいたいのですが、義務教育くらいはきちんと終わらせないと流石に恥ずかしいので頑張りましょう。
 休みさえしなければ良いんですから。たとえ寝ていようが話を聞いてなかろうが。あ、テストもちゃんとしますよ?

 さて、このまま平和が続くといいのですがね。



[19565] 第14話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/14 21:55
 どうもこんにちは。松田杏です。
 春先には魔法的な出来事に巻き込まれたり魔法の宝石でお願いを叶えてもらったりとファンタジーなイベントが多々ありましたが、それも終わった今では平和な日が続いています。
 テスタロッサ一家もすっかり日本の暮らしに慣れた様です。まあ海鳴はとても住みやすい町ですしね。

 最近は夏の暑さも過去のものとなり、おかげで外出した時も不快な気分にならずに済んでいます。いえ、外出するという行為だけで個人的にはちょっと深いというか、面倒なんですけどね。
 まあともかく季節は秋も終盤、というか冬でそろそろ雪が降るこの時期にも私は堕落の秋を満喫し、そして堕落の冬を継続しています。次点で満喫しているのは食欲の冬でしょうか。やはり翠屋のシュークリームは魔性です。体重が増えないので食べ放題なのがとても嬉しいですね。
 ・・・しかし体重が増えないからといって安心する事は出来ません。何故なら身長も変わる気配を見せていないからです。
 私の今の身長は135cm。ジュエルシードで3cm伸ばしてもらっているので実質132cmです。そんなにすぐ伸びるものではないのは確かですが、それでもクラスメイトを見ると順調に伸びてきている人も居ます。
 男子には春から比べると4cmくらい伸びてそうな人も居ます。ジュエルシード分を追い抜かしてしまう成長速度。妬ましいです。
 まあ恐らく小学校高学年から中学入学くらいの時期には私も身長が伸びると思うのでまだ余裕がありますが・・・伸びなかったらどうしましょう。もしアリシアちゃんに追い抜かされたりしたら流石にショックで引き篭もるかもしれません。
 まあ、放課後や休日は基本的に引き篭もっているのであまり生活リズムは変わらないでしょうけどね。

「やっぱりフェイトちゃんは早いの」
「でも、なのはの砲撃も凄いよ」
「そうですね。でも、二人とももう少し防御魔法をしっかりしましょう。ダメなわけではありませんが、流石に偏りすぎです」
「「はーい」」

 なのはさんは夏休みが終わった頃にフェイトさんに誘われて、リニスさんから一緒に魔法訓練を受けています。リニスさん曰く「感覚だけで魔法を組み上げる天才タイプ」らしいです。
 確か魔法ってプログラムみたいなものなんですよね?プログラムを感覚で組むとか頭がどうにかなっているんじゃないでしょうか。私には理解できません。
 まあ、そんな私も機械にお願いして人間には到底組めない様な完全に無駄の無いプログラムを組んでもらったり出来るわけですが。おかげで私の家のパソコンは処理能力が異常です。難点は常に全力稼動なので熱が溜まりやすい事でしょうか。
 機械の修理自体は簡単なものならリニスさんが出来るらしいので問題ないのですが・・・とりあえず壊れたら大変なので、今は速度より安全性を重視したプログラムで処理してもらっています。
 ちなみにバルディッシュで似たような事をしようとしたら止められました。下手に弄られるとメンテナンスの時に訳がわからなくなる可能性が高いかららしいです。それなら仕方ないですね。
 ・・・そういえば最近、リニスさんはミッドチルダの最新魔法理論を勉強してプログラムを組む勉強をしているみたいです。もしかして悔しかったんでしょうか。

「コーヒー淹れてくるね。杏も飲む?」
「はい、お願いします。砂糖とミルクたっぷりで」
「うん。待ってて」

 フェイトさんは先ほど言った通りなのはさんと魔法訓練をしていますが、それ以外でも色々しているみたいです。
 アルフさんと一緒に散歩に行く日もあればアリシアちゃんと一緒に魔法の勉強をする日もあり、私と一緒にのんびりテレビを見る日もあれば一人で本を読んでいたり。
 散歩以外は基本的に屋内で過ごしている辺りは私の影響なんでしょうか。何気にテスタロッサ一家の中ではフェイトさんは一番一緒にのんびりする事が多いんですよね。
 訓練の話を聞いていると若干バトルマニア的な片鱗が見え隠れしていたのですが・・・バトルマニアとインドア派って両立出来るんでしょうか?

「リニス、ここって・・・でもってここは・・・」
「いえ、ここは・・・するとこうなって・・・」

 アリシアちゃんは正直天才過ぎて引きました。なんでもう中学生の数学を勉強をしてるんですか。やはりクローンを作れるプレシアさんの子供だからでしょうか。
 アリシアちゃんはリンカーコアを持っていないのに何故魔法の勉強をしているのか疑問でしたが、どうやら魔法やデバイスの研究者になりたいんだそうです。目指すは母親プレシアさん。
 言ってる事はとても子供らしいんですが、やってる事は既に子供ではありません。アリシアちゃんとリニスさんの会話が専門的過ぎてついていけません。フェイトさんもたまに理解できない部分があるらしいです。
 やはり魔法資質を受け継がなかった代わりに知能を受け継いだのでしょう。数年後にはいっぱしの研究者になっていそうで怖いです。

 リニスさんは仕事が順調らしく、最近は趣味と実益を兼ねてプログラム関係の資格の取得にも力を注いでいるようです。
 資格取得が趣味の人が存在するのは知っていましたが、まさかリニスさんがその類の人になるとは思いませんでした。というか勉強が好きなんですね。流石テスタロッサ家で最も真面目な人です。
 しかし勉強だけに意識を割いている訳でもなく、家事もとても頑張っています。本当に働き者です。
 私も手作りの夕飯を食べさせてもらっている身なので、恩返し的な意味でたまにテスタロッサ家の掃除をしたりしています。勿論能力を使ってですが。
 ほこりや汚れなんて私の思い通りなんですよ、ふふふ。ゴミと会話するという構図があまり好きではないので無駄話はしませんが。

「そういえば最近・・・佐藤さんでしたっけ?結構一緒に出かけてますよね」
「あぁ、信二かい?そうだねぇ、何でか知らないけどそういえば結構誘われるね」

 アルフさんはバイトが楽しいらしいです。何のバイトをしているのか聞いてみると、建設現場での作業でした。まあ似合っているというか何と言うか。
 作業場の同僚達も気の良い方々ばかりらしく、笑い話をしながら楽しく働いているそうです。たまにお酒を飲んで帰ってくる事もあります。人生を満喫していますね。
 そして、最近良くアルフさんにお誘いの電話が来ている事を私達は全員知っています。アルフさん本人はただ一緒に遊んでいる認識のようですが、まあ普通に考えてそれは無いでしょう。
 この先アルフさんが色恋に目覚めるかどうか・・・という話以前に、使い魔と人間が交際して大丈夫なのかみんなでドキドキしながら見守っています。アルフさんは美人ですがやはり根底は動物ですし、妙な価値観の違いで相手の男性が可哀想な事になりそうな気がします。
 この予想出来ない展開が待っていそうな感覚、まるで昼ドラを見ているようです。・・・ちなみにこれに関してはリニスさんも興味津々でした。交際は無いだろうと確信している様ですが。
 ともあれ面白そうなので頑張ってください、佐藤さん。

 アリサさんとすずかさんと遠藤さんは時折一緒に遊んでいます。
 フェイトさんとアリシアちゃんがお呼ばれした時に私も誘われるのですが、何とか断り続けています。流石に遊びには強制的に付き合わされる事が無いので逃げ切る事が出来ています。
 その代わりに学校では逃がしてもらえなくなりました。まあ、月村家に行ってメイドロボに監視されるよりはマシです。面倒事は勘弁ですから。
 まあそんなこんなでそれなりの友人関係を保っています。・・・今普通に友人って言っちゃってましたね。友人はもう増えなくていいとか自分で言っておいて思いっきり絆されてるじゃないですか。まあいいですけど。
 しかし遠藤さんしか友人が居なかった私がいまやこんなに友人が居るとは・・・悪くは無いのかもしれません。今のところ面倒な事には巻き込まれていませんし。

 というわけで冬の十二月。赤い服を着た老人が空を徘徊する季節です。

「寒いです」
「寒いね・・・でも、夏の暑さよりは我慢できるかも」
「フェイトも杏おねえちゃんもだらしないよー!そんなにさむくないよ?」
「私がだらしないのは常の事です」

 ただいま下校中の私達は冬の道をテクテクと歩いています。寒いです。確かにフェイトさんが言った様に夏の暑さよりはマシだと思いますが、それでも寒いのは嫌です。
 しかし当初の危惧とは裏腹に春から今まで平和に過ごす事が出来ました。魔導師と友人になった事でそういった事件に巻き込まれやすくなるかと思っていたのですが。ほら、魔は魔を呼ぶとかよく言いますし。
 とはいえ油断してはいけません。天災は忘れた頃にやってきます。ならば忘れなければやってこない筈です。心の片隅で常に注意を・・・するのは面倒なので、まあただ忘れない様にしておきましょう。
 リニスさんがそんなに心配する事はないと言ってましたから問題ないとは思いますけ・・・ど・・・?

「結界!?」
「あー、油断したら本当にやってきましたね」
「ねえ、何でリンカーコアのないわたしと杏おねえちゃんが中にいるのかな?」
「そうですね・・・私はジュエルシードで色々サポートしてもらってますし、アリシアちゃんはジュエルシードで生き返ってます。恐らくその辺が関係しているんじゃないでしょうか」
「あ、そっか。わたし死んでふっかつしたんだったね」
「えっと、杏とアリシアももうちょっと警戒して欲しいんだけど」

 いや、魔法の使えない私達が魔法関連の出来事で警戒してもどうしようもないと思いますけど。確かに何とかしようと思えば能力で色々出来ますけど、やっぱり魔法には魔法ですよ。
 というわけで。

「「がんばれー」」
「う、うん。頑張る。バルディッシュ、セットアップ!」
『Set up!』

 さて、今度は一体どんな事件に巻き込まれる羽目になるんでしょうか。出来ればジュエルシードの時の様に、私に得のある事件だととても嬉しいのですが。
 まあ期待しないでおきましょう。そう何度も美味しい話があるわけもありませんしね。
 ・・・あ、誰か飛んできました。

「・・・幼女ですね」
「わたしと同じくらいかな?」
「でも、油断しない方がよさそう」

 おぉう、フェイトさんがそう言うとは、やっぱり強いんでしょうか。
 というかあの子ハンマー持ってませんか?あれもデバイスだと思いますけど、ハンマーは魔法の杖扱いでいいんでしょうか。斬新です。フェイトさんの鎌も似たようなものですけど。

「三人?・・・まあいい、お前らの魔力を貰うぞ」

 三人のうち二人は魔力持っていないんですけどね。



-----あとがき-----
A's編突入まで投稿しました。
杏ちゃん活躍にご期待ください。



[19565] 第15話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/15 20:41
 さて、何やら魔力をよこせと言われたのですが・・・この紅い子は魔力を持っている人間と持っていない人間を見分ける事が出来ないんでしょうか。
 私とアリシアちゃんはリンカーコアなんて持っていないんですけど。
 ・・・というか、この子人間じゃないですね。かといって月村家のメイドロボとも違いますし、何というか、漫画とかの言葉を借りるとしたら情報体みたいな感じでしょうか。
 ともかく操作は出来そうなので警戒はそんなにしなくていいですけど。

「とりあえず、私とアリシアちゃんは魔力を持っていないんですけど、そこの所はどうなんでしょうか?」
「は?・・・って、何でリンカーコアの無い奴が結界に・・・」
「魔法バレイベントだねー。まんがだったらオコジョとかカエルにされちゃうのかな?」
「えっと、杏?何でそんなに落ち着いてるの?アリシアも」
「何とかなりそうですから」
「杏おねえちゃんがおちついてるから、もしかしてーっておもって」
「あ、そうなんだ」
「何の話をしてんだ!っつーか魔法も使えない奴があたしを何とかするって、馬鹿にしてんのか!?」

 いえ、馬鹿にしているわけではないんですけど、仕方ないじゃないですか。貴女が人間じゃないからそんな評価なんですし。
 諦めてください。生まれは選べないものですしね。

「まあいい、さっさとぶっ倒して魔力を蒐集させてもらうぞ」
「お断りします」
「断っても関係無い!!」

 ハンマーで襲い掛かってきました。魔法と言っていたのでこの子も魔導師だと思いますけど、鈍器で殴る行為には非殺傷設定が存在しているんでしょうか。
 というか問答無用とは随分と血の気の多い子ですね。将来が心配です。あ、その前に成長するんでしょうか?体の情報を弄れば大きくは出来そうですけど。
 ・・・ともかく、こんな面倒な事には付き合っていられません。お引取り願いましょうか。

「止まってください」
「止まれと言われて止まるかぁ!」
「あれ?」
「えっ?」
「くっ!?プロテクション!!」

 おぉう、これは予想外。お願いしても止まらないとはどういう事でしょうか。やっぱり意思が強いんですかね?
 まあ、お願いが無理でも方法が無いわけでは無いんですけどね。

「ど、どどどどうしよう杏おねえちゃん!フェイトが!?」
「大丈夫ですよー。というわけで今度はお願いじゃない形で・・・『止まりなさい』」
「ぐっ!?」

 ふっふっふ、強制的に操作するのはあまり好きではないので普段はお願いという形で使ってましたけど、命令すれば物体の意思を無視して強制的に操作できるんですよね。
 命令を最後に使ったのは何時だったでしょうか・・・ああ、宝くじの中継生放送で番号操作した時ですね。あの抽選機械は自分の仕事に誇りを持っているみたいでしたし。
 まあお金の為に折れて貰いましたけど。私は必要な時には容赦しませんからね。

「な、何をしやがった!?」
「命令ですけど」
「あり得ねぇだろ!?何で主以外の奴があたしらに命令出来るんだ!?」
「成程、貴女の他には主が居て、更に仲間も居るわけですか。という事は全員を何とかしないと平和は帰って来そうに無いですね」
「なっ!?」
「杏、どうしよっか?」
「そうですね。じゃあとりあえず、私の家に連行して事情を洗いざらい話して貰いましょうか。・・・あ、一応『仲間と連絡を取らないで、暴れないで、私達に従いなさい』」
「ぐっ・・・一体何なんだよお前は!?」
「怠け者ですけど」

 さて、連行しましょうか。

 という訳でお話の時間です。抵抗は不可能な尋問とも言います。
 最近仕事に余裕が出てきて自宅勤務が増えてきているリニスさんが帰宅していたので一緒に尋問をしましょう。と、思っていたのですが。

「主・仲間・魔力の蒐集・・・もしかして闇の書の守護騎士でしょうか?」
「え?リニスさん知っているんですか?」
「ええ、恐らくですけど」
「ふむ、どうなんですか?その闇の書?の子なんですか?『答えなさい』」
「・・・そうだよ」

 という事なので、まずはリニスさんから教えてもらう事になりました。

 闇の書。古代ベルカ時代にて作られたデバイスの一つで魔力・魔法を蒐集する機能を持っていて、完成させると主に物凄い力をもたらすようです。
 それだけなら別に問題は無いと思われますが、なんとこの闇の書は完成すると暴走し、周辺世界を巻き込んで破壊を撒き散らすらしいです。迷惑にも程があります。
 その上破壊しても無限転生機能というトンデモ機能が働いて、新たな主の下にて再生されるらしいです。
 一応デバイスなので改造してそういった機能を止めようとした人もいるらしいですが、主以外の存在が闇の書に干渉しようとすると主を巻き込んで暴れて逃げるという面倒な機能をも持っているとの事です。
 おかげで時空管理局も闇の書を追っているのですが、出来る事といえば破壊して暴走を食い止める程度。根本的な解決が出来ないまま今まで来ているらしいです。

「そんな、嘘だ!?そんな訳が・・・そんな・・・っ!!」
「あれ、何か物凄い否定されてますよ?」
「覚えてないんじゃないですか?こんな記憶があったら魔力蒐集なんてしませんし」

 成程、魔力蒐集する存在が嫌がらない様にする為の処置でしょうか。中々に悪どいデバイスですね。闇を名乗るだけの事はあります。

「前回は今から十年程前でしたか、確かアルカンシェルで消滅させられた筈です」
「アルカンシェルって、前に聞いた反応消滅がどうこうってアレですか?そんなとんでもないもの受けても転生出来るとか、どんな技術を使っているんでしょうか」
「うー、いじってみたい・・・」
「ダメだよアリシア、弄ったら暴走しちゃうよ?」
「そうですよ。私も興味ありますけど、そんな危険な事をする訳にはいきません」
「まあ私がその機能を止めたら問題無いでしょうけどね」
「「それだ!!」」

 おぉう、アリシアちゃんはともかくリニスさんもですか。まあ研究者としては確かに興味がそそられそうな物ではありますけど。
 ・・・そうですね。アリシアちゃんはともかく、リニスさんにはいつもお世話になっていますし、お礼代わりにちょっとだけ協力しましょうか。

「という訳で闇の書を渡してください。蒐集に来たんですから、多分持ってますよね?」
「だ、誰が」
「『闇の書を渡しなさい』」
「ぐぅぅぅぁぁぁああああ!!!!!」

 必死の抵抗もむなしく闇の書をゲットしました。私達に襲い掛かってきたのが運の尽きでしたね。
 さて、ちょっと弄りましょうか。

「えーとまずはお話しますか。もしもーし?」
『な!?主以外の者が何故私と会話出来る!?』
「そういう能力があるから仕方がありません。諦めてください。」

 というか他のデバイスとか物と比べて随分とはっきりした意思がありますね。この紅い子と似た様なプログラムで意思が作られているんでしょうか。

「それはともかく、ちょっと未来のデバイス技術とデバイスマイスターの為の礎になって頂きたいんですが」
『止めろ!そんな事をしたら・・・』
「安心してください。・・・っと、こうこう、こうですか?こうですね」
『・・・は?』

 能力で干渉した瞬間闇の書がちょっとだけ不穏な空気を発しましたが、何か起こる前に暴走するプログラムを押さえ込みました。
 それにしても防衛プログラムが暴走の原因だなんてとんだ皮肉ですね。まあおかげで防衛プログラムを機能停止させただけで殆ど無害になりましたけど。

『は?えっ、ん?な、何が・・・?』
「防衛プログラムが暴走の原因みたいだったので一時的に機能停止させただけですよ。安心してください」
『ちょ、ちょっと待て!・・・ほ、本当に止まっている!?』
「いいですか?それじゃあ実験に付き合ってあげて下さい」
『待て!?待ってくれ!?』

 何ですか、うるさいですね。アリシアちゃんとリニスさんがうずうずしているんですから早くしてください。というかうずうずしてるリニスさん可愛いですね。写真に撮りたいです。
 あとフェイトさん、前に友達が増えたのが嬉しかったからってその赤い子と友達になろうとしなくてもいいと思いますけど。
 紅い子物凄く睨んでますよ?私を。

『頼む!その能力で私を・・・夜天の書を修復して欲しい!もう破壊を・・・主を苦しませたくないのだ!』
「夜天の書?闇の書じゃ無いんですか?・・・まあどうでもいいですね。面倒ですけど、アリシアちゃんとリニスさんの実験が終わったら何とかしてあげますよ。危ないものじゃ無くなればいいんですよね」
『本当か!?・・・感謝、する』
「いいですよーこれから散々弄繰り回されるでしょうから。という訳で・・・どうぞ、お好きなだけ弄繰り回してください」
「よしリニスいこう!」
「ええ行きましょう!」

 受け取った瞬間凄まじい速さでテスタロッサ家へと走っていってしまいました。本格的な研究室は向こうにしかありませんしね。
 闇の書・・・夜天の書でしたか。ともかく修復するまで無事だといいですね。二人ともキラキラ輝く満面の笑みを浮かべていましたし。

「さて、私達はどうしましょうか?」
「・・・お前、本当に闇の書を何とか出来るのか?」
「はい。もう暴走は抑える事が出来ていますし、特に問題は無いと思いますが。あと正式名称は夜天の書らしいですよ」
「夜、天・・・それよりも、本当なんだな!?はやては助かるんだよな!?」
「はやてって主ですか?まあ後でちゃんと弄れば問題は無いと思いますよ」
「本当か!?はやてが酷い目にあったら絶対ぶっ飛ばしてやるからな!!」
「はいはい。ちゃんと直しますから落ち着いて下さい。あと暴れないで下さいね」

 さて、あの二人が帰ってくるまでテレビでも見ましょうか。暇ですし。

「杏、アイス食べる?」
「あ、はい。・・・そこの紅い子にもあげておいて下さい」
「うん、わかったよ」

 冬に暖房器具で暖まりながらアイスを食べるのは最高の贅沢です。些細な幸せですね。



[19565] 第16話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/16 22:27
 自宅待機しているとお客さんがやってきました。

「ヴィータ!」
「大丈夫!?ヴィータちゃん!?」
「無事か!?」
「『騒がず暴れず落ち着いて大人しくテレビでも見てなさい』」

 はい、対処完了しました。お疲れ様です。

「さて、紅い貴女は他の仲間に事情説明をお願いします」
「あ、おう・・・」

 さて、何だか新規でやってきた三人が、特にピンク髪のポニテさんが何やらうるさいですが無視してインターネットでもしましょうか。
 勿論自分でマウスやキーボードを動かすわけがありません。むしろ、パソコンを直接操作しているので繋ぐ必要すらありません。便利ですね。
 さーて、なにをしましょうか・・・迂闊に変な事をするとサイバーテロみたいなことも出来てしまうのでイタズラは出来ないんですよね。
 というか私の能力はどこまで出来るんでしょうね。調べるのも考えるのも面倒なので詳しく調べた事は無いですけど、意思が強くても守護騎士を操れましたし・・・生物は無理というのは確定なんですけど。
 でも植物も一応生物なのにお話も操作も出来るんですよね。いまいち基準がわかりません。やはり調べた方がいいんでしょうか?
 ・・・ともかく、インターネットじゃなくてソリティアでもしましょうか。マインスイーパーはイライラするので却下です。

「杏、とりあえずあの四人にコーヒー淹れるね。杏も飲む?」
「ミルクと砂糖たっぷりでお願いします」
「待ってて」

 フェイトさんは気配り上手ですね。まあ淹れるコーヒーは我が家のものなんですけど。
 いえ、好きなだけ飲んでいいとも言ってありますし、むしろ別荘扱いでもいいと両親公認で言ってあるので今更なんですけどね。
 ・・・あの紅い子はコーヒー飲めるんでしょうか。見た目アリシアちゃんと同じくらいですし・・・あ、でも昔から存在している闇の書から生まれてる存在だから実際は凄まじい年齢なんでしょうか?
 という事はあの子は漫画でよくあるロリババァという事に・・・うぅむ、ファンタジーと言えばいいのか、SFと言えばいいのか。科学的な魔法なので少し不思議の方のSFが丁度良さそうですね。

 あ、赤い子がコーヒーをブラックで飲んで・・・アリシアちゃんも砂糖とミルクをちょっと入れて程度でしたし、私の周りに居る幼女は何故こうも苦味に強い子ばかりなんでしょうね。
 ちょっと悔しいです。訓練した方がいいのでしょうか・・・いや、面倒なのでやめましょう。自分が美味しいと思う飲み方で問題ありませんし。
 ・・・何気に金髪の人が一番砂糖とミルクを入れてますね。アリシアちゃん以上私未満の量ですが。

 しかしあのポニテの人何とかなりませんかね。明らかに気を張りっぱなしで見てるだけで疲れるというか何というか。
 確かに他の守護騎士もある程度警戒はしているみたいですけど、ポニテの人は特別それが・・・性格なんでしょうか。
 まあ見た目と雰囲気からしてまさしく騎士な人みたいですし、お堅い人なんでしょうね。プライベートではどうなのかわかりませんけど。

 それに引き換え金髪の人は緩いというか・・・いえ、違いますね。紅い子から話を聞いて警戒しても無駄だと理解しちゃったんでしょうか?
 となるとそれでも警戒しているのは逃走とかに関してでしょうか。直接触って色々しないと何となくしか考えが読み取れないから困ります。
 ・・・それにしても、そんなに苦そうにコーヒーを飲むなら砂糖とミルクを増やせばいいと思うんですけど。

 そして唯一の男性の・・・犬耳だから、使い魔でしょうか?男の犬耳とはなかなか斬新です。体格もいいですし、もしかしてそういう趣味の人の為に作られたのでは・・・
 可能性は否定できません。何せ他のメンバーがロリっ娘と真面目な姉御と優しげな若奥様ですし。というか狙いすぎな気がしないでもありません。どこのアニメですか。
 ・・・それはともかく、この人は一番落ち着いてますね。目を瞑って話を聞きながらコーヒーを飲む姿がカッコいいです。これで半裸に近い格好では無ければキマっていたんですが。

「ただいまー・・・あれ?誰だいあんた達」
「アルフさんお帰りなさい。この人達は魔法絡みの事件を持ってきた迷惑な人達です」
「ふーん。まあフェイト達に危害を加えないなら別にどうでもいいか」
「アルフお疲れ様。コーヒー飲むよね」
「ありがとうフェイト」

 うんうん、アルフさんもだんだん落ち着いてきましたよね。始めのうちはあんなに騒いでいたのに・・・まあ話によるとまだ二歳くらいらしいから当たり前かもしれませんが。
 しかしフェイトさんはコーヒーを淹れるのが好きなんでしょうか。フェイトさんの淹れるコーヒーはインスタントなのに妙に美味しいので特に問題は無いんですが。

「・・・って訳なんで、今闇の書は持ってかれてるからその後に試すってさ」
「いまいち信じられんが、実際こうやって操られてる身だから信じないわけにもいかないか・・・」
「それにしても災難なのか僥倖なのか・・・本当に何とかなるのなら後者なんでしょうけど」
「・・・何れにしても、主が助かる可能性が高いならそれに賭けた方がいい。無理なら再び蒐集を再開するだけだ」
「あ、その場合は海鳴では暴れないで下さいね。魔法関連の事件は面倒過ぎるのであまり関わりたくないんです」
「蒐集自体は止めないのか?」
「どうでもいいです。現時点でもう暴走はしない事が確定していますし、勝手に集めて下さい。私は自分の周囲が平和なら他の世界が吹っ飛んでも気にしません」

 まず他の世界に関わるなんてそうそう無い事ですしね。何かのきっかけで時空管理局に行く事でも無い限りは。
 ・・・いや、テスタロッサ一家と一緒に他の世界に行く機会もあるかもしれませんね。まあでもどうでもいいです。遠くに旅行に行くのは面倒ですし。

「杏、リニスから「今日一日闇の書を借りたいって伝えて欲しい」って念話が来たけど」
「という事らしいですけど、どうでしょうか」
「無理に決まっているだろう!」
「みたいですよ」
「うん、伝えるね。・・・今日中に修復するからどうしても貸して欲しいって」
「修復するの私なんですが」
「・・・本当に可能なら、修復後に主との相談次第では可能かも知れないが・・・」
「わかった。伝えるね」

 修復するのは私なんですが。というかリニスさんが他人の意見を無視する様な事を言うなんて珍しいですね。よっぽど興味深いんでしょうか。

「持ってきました!さあ杏、修復してください!!」
「・・・とりあえずそのおかしなテンションを何とかしてください」
「リニスすごく楽しそうだったよー・・・あ、なんかふえてる」
「じゃあリニスさんとアリシアちゃんはそこの守護騎士と一緒にコーヒー飲みながら待っててください」
「はい、淹れてきたよ」
「ありがとー」
「あっと、ありがとうございますね、フェイト」

 フェイトさんは本当に気が利きますね。我が家のメイドさんとして雇いたいくらいです。料理はちょっと苦手みたいですけど、それも唯単に経験が無いだけだと思いますし。実際コーヒー淹れるの上手ですしね。

「さて、どうでしたか?」
『あ、あそこまで弄繰り回されたのは初めてだ・・・過去に改造された時もあそこまで色々見られたのは中々無いぞ・・・』
「お疲れ様です。でも主との交渉次第ではまた弄繰り回されるんですけどね」
『何!?』
「さて、とりあえず一切危険が無い様にすれば良いんですよね?夜天の書がどんなのか分からないので、とりあえず危険が無くなる様に好き勝手やらせて貰います」
『ちょっと待て、好き勝手ってどういう・・・』

 何か言ってるみたいですけど無視です。今回はそこまで面倒な事になってないとはいえ、私の平穏を妨害したんですからちょっとくらい自由にさせてもらいますよ?
 別に危険な事をする訳でもありませんし。むしろ、より凄いデバイスにしてあげます。

「えーっと、これは・・・主を取り込む機能ですか。じゃあこれと守護騎士プログラムと無限転生機能を結びつけて、主が死んでもプログラム体として復活出来る様にしましょう」
『は?』
「ついでに破壊された後も主ごと転生復活出来る様にして・・・他人を取り込んで夢を見せる機能?じゃあこれは任意で人を収納開放出来る様にしましょう。本型輸送艦みたいな感じで」
『ちょっ』
「この夢を見せる機能は相手の記憶を読み取って夢を見せるみたいですし、プログラムを流用して蒐集で記憶も読み取れる様にしましょう。サイコメトラーもびっくりです」
『待て!何とんでもない事をしている!?』
「防衛プログラムを放置するのは勿体無いですね。ここは暴走しない様にきちんとプログラムを組んで・・・そうですね、起動時は常に主を守る障壁を張る様にしますか。オートガードの完成です」
『は、話を聞け!?夜天の書の原型が無くなってきてるぞ!?』
「あ、でもこれだと守護騎士があまり必要無くなってしまいますし・・・あ、蒐集してある魔法を守護騎士も使える様にしますか。適正の問題はありそうですけど何とかなりますよね」
『落ち着け!?このままではブラックボックス的な意味で闇の書になってしまう!?』

 ふふふ、何だか楽しくなってきました。魔改造って結構面白いですね、嵌りそうです。今度バルディッシュも・・・いや、バルディッシュでやったらリニスさんに怒られてしまいますね。
 じゃあなのはさんのデバイスを借りて魔改造してみましょうか。何となくで闇の書に使われてるプログラムを組み込んだらどうなるか興味がありますし。

「ユニゾンプログラム?じゃあ主を基本にして守護騎士全員と合体するスーパーモードとか面白いかもしれませんね。あ、防衛プログラムとも合体してスーパーアーマーでもいいかもしれません」
『止めろぉぉぉぉ!?』

 面白い、面白いです。どんどんネタが浮かんできます。ふふふ・・・この私の能力の粋を尽くして、闇の書を最大限に強化しちゃいましょう。
 そして夜天の書改め闇の書改め・・・そうですね、魔天の書とか暗黒の書とかどうでしょうか。うん、いかにもラスボス的な雰囲気です。
 時空管理局とは敵対している様なものらしいですし、別に問題は無いでしょう。主がどんな人なのかわかりませんけど、まあ強くなる分には拒否しないでしょうしね。多分。

 あ、改造しすぎてリニスさんとアリシアちゃんが弄れる場所が無くなる可能性もありますね・・・まあ、一部は見れますし問題無いでしょう。



[19565] 第17話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/17 18:35
 ふぅ、思うがままに弄りすぎてしまいました。こんなに一つのものを弄ったのは初めてかもしれません。おかげで疲れてしまいましたね。

「あ・・・あぁ・・・夜天の書が、跡形も無く・・・」

 ちょっとやりすぎたんでしょうか、いつでも実体化出来る様にした管制人格さんが光を失った目から涙を流しながら崩れ落ちている事に今気が付きました。
 銀色の髪をもった非常に美人なのですが、現状を見るとその美しさが今の異常な状態と相まって恐ろしさしか感じる事が出来ません。
 流石に少しだけ可哀想になりましたが・・・でも結局主が死ななくなりましたし、破壊を撒き散らす事も無くなったので問題無いですよね、きっと。
 一度集中が途切れてしまったので、元に戻すのが面倒なんです。

「ところで何故守護騎士の方々は何故そんな驚愕している様な顔をしているんですか?」
「驚くに決まってんだろーが!?あたしらまであり得ない強化されてる上に蒐集した魔法まで使えるようになってるんだぞ!?」
「守護騎士という役割からするととても良い事だと思ってやったんですが」
「あ、ああ、これなら確かに守護に関してはほぼ確実に失敗はしないだろうが・・・」
「あ、ははは・・・何でしょうかこれ、私達にあるリンカーコアの魔力精製の速度がとんでもない事に・・・」
「ありえん・・・というか何だこの巨狼モードとは」

 凄いでしょう?頑張りましたよ、主に私が満足出来る様に。

「ともかくこれで闇の書は安全・・・安全?・・・主が暴れない限り安全な物になりましたし、そのはやてとかいう主の所に行って報告でもしてきて下さい。ついでに書を借りれるかどうかもお願いしますね」
「あ、ああ・・・わかった」
「またね、ヴィータ」
「あたしは出来るだけもう来たくねーよ、フェイト・・・ここに居るとどんな事になるか・・・」

 何時の間にフェイトさんと紅い子は名前で呼びあう程仲良くなったんでしょうか。ともかく友達になれてよかったですね。
 アルフさんも犬耳男さんとそれなりに仲良くなってるみたいですし・・・うーん。このまま使い魔同士くっ付いたりしたら面白いかもしれません。佐藤さんには申し訳無いですが。

「すまないが、事情説明の為に一緒に来てもらいたいのだが」
「面倒なのでお断りします。改造内容についてはそこで呪いのオブジェみたいになっている管制人格さんが知ってますし」
「呪いのオブジェ・・・いやしかし、改造内容以外にも話す事もある」
「あ、じゃあリニスさんが行ってはどうでしょうか?直接闇の書を貸してもらえるか交渉出来ますよ?」
「そうですね、ならば私が行きましょう」
「そうか、助かる・・・最早我らには何がどうなっているのかわからないからな。そちらの者が居ると説明も楽になる」
「そうでしょうね。私も杏に蘇生してもらったばかりの頃は常識が破壊されて色々大変でしたし」
「ちょっとまて蘇生って何だよオイ!?」

 早く行ってくれないでしょうか・・・集中が切れたせいか疲れが一気に襲ってきているのでゆっくりしたいんですが。
 ともかくソファーでゆっくりとテレビでも・・・あ、その前に・・・

「はい、ミルクと砂糖たっぷりのコーヒー。疲れたみたいだから持ってきたよ」
「フェイトさん結婚してください」
「私、女の子だよ?」

 能力でコーヒーを淹れようとすると、私の行動を先読みしたのかコーヒーを持ってきてくれたフェイトさん。本気で天使の様に見えました。私は百合属性はありませんがフェイトさんなら嫁にしたいです。
 本当に素晴らしいですね。美人で頭もアリシアちゃん程では無いにせよ良い方で、運動も得意で優しく気が利いて、魔法が使えて家族や友人思いで・・・完璧じゃないですか。こんな人が現実に存在するなんて奇跡じゃないでしょうか
 何より私を甘やかしてくれるのが最高です。おかげで怠惰ライフが満喫出来ます。

 さて、守護騎士の方々とリニスさんはようやく出発してくれました。これで本格的にゆっくり出来ますね。

「そういえばアリシアちゃん、闇の書を弄って何かためになる事がありましたか?」
「うーん、まだわたしにはむずかしーことばっかりだったから・・・でもリニスはいろいろわかったみたいだよ」
「あ、それはそうですよね。ロストロギアって言われてる程のデバイスについてなんて簡単にわかる筈ありませんし」
「でもアリシアなら案外一年くらいでわかる様になるんじゃないかい?何か良く分からないくらい頭がいいし」
「アルフさんが言った可能性が全然否定出来ませんね」

 本当に頭がいいですからね。聞いた話だとミッドチルダは就業年齢が低いみたいですけど、その理由ってもしかして頭の良い優秀な子供が多いからなんでしょうか?
 現にアリシアちゃんもフェイトさんも互いに方向性は違うとはいえ優秀みたいですし・・・あ、そういえばなのはさんも魔法の才能に関しては天才ってリニスさんに言われてましたね。
 もしかしてリンカーコアのある人は基本的に普通の人よりも優秀なんでしょうか。何やら複数の事を同時に考えるマルチタスクとかいう思考技術が魔導師の基本みたいですし。
 ・・・否定する要素がありませんね。以前聞いたミッドチルダでは魔導師が優遇されるというのは、こういった部分が関係しているのかもしれません。
 実際マルチタスクが使えたら便利そうですしね。日常生活でも仕事でもかなり役に立つでしょうし。

「ねえ杏、なのはから念話が来たんだけど・・・」
「なのはさんから?」

 一体なんでしょうか、このタイミングでの念話なんて面倒そうな気がするんですが。

「えっと、ちょっと前に海鳴で変な魔力の反応があったらしくて、たまたま他の事件の調査で近くに来てた時空管理局の執務官が来てるみたい。それで何か知らないかって」
「ちょっと前に?・・・それって最初に闇の書を弄った時に光ったアレでしょうか?」
「やっぱりそう思う?どうしよっか・・・もう危険なものじゃないけど、ロストロギアだから教えるのもちょっとね」
「そうですね・・・いっそ全部事情説明しちゃいましょうか?所有権を放棄しない限り主が変わらない様にもしてしまったので没収も出来ませんし、話しても問題無いと思いますけど」
「そうかな?・・・そうだね。ヴィータも今の主は戦いとかを望んでないって言ってたから、案外何とかなるかも」
「フェイトいつの間にそんなにあの子となかよくなったの?」

 私も気になります。というか最近のフェイトさんはいつの間にか何かをしている事が多いですよね。
 まあそれはともかく時空管理局に説明する事で決定ですね。守護騎士側の詳しい事情はわかりませんが、戦いを望んでいないなら問題も起こしていないでしょうし問題無いでしょう。
 別に時空管理局にバラすなとも言われてませんしね。

「という訳でフェイトさん、説明お願いしますね」
「うん、なのはが翠屋で待ってるみたいだから行ってくるね」
「あ、暇だしあたしも行くよ。杏は来ないだろうし、アリシアはどうするんだい?」
「んー、闇の書いじって疲れたからいかなーい」
「あ、フェイトさん翠屋に行くならお土産お願いしますね」
「うん、じゃあ行ってきます」

 しかし時空管理局がまた関わってきましたか。面倒な事になりそうですけど、私はただ闇の書を安全なものに改造しただけですし関係ないですよね?
 守護騎士もきっと事件なんて起こしてないで・・・あ。

「そういえば私達って襲われかけたんでしたね」
「あ、そういえば・・・あれ?じゃあもしかして・・・」
「時空管理局が調査に来ていた事件って、守護騎士絡みかもしれませんね。魔力を集めてるみたいでしたから、既に事件扱いされるくらい被害者がいるのかもしれません」
「・・・どうしよっか」
「・・・考えても仕方がありません。なるようになるでしょう」
「それってかんがえるのがめんどーなだけじゃ・・・まあいっか」

 ええ、きっとどうにかなるでしょう。いざとなればプレシアさんみたいに時空管理局に協力すれば大した罪には問われないでしょうし。多分。



[19565] 第18話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/19 19:48
 現在私とアリシアは二人っきりです。何気にこの二人だけが家に残るというのは珍しかったりします。
 普段ならアリシアちゃんはフェイトさんと一緒に行ったでしょうけど、疲れて行かなかったという事はよほど闇の書弄りが楽しかったという事でしょうか。
 現に今はソファーに寝そべってふにゃふにゃになっていますし。というか勝手に私の足で膝枕にしないで頂きたいんですが。

「ん~、杏おねえちゃんのひざまくらって、けっこうきもちいいかも・・・」

 うん、ちょっと嬉しかったので許してあげましょう。ふふっ。

「それにまえからおもってたけど、このソファーもきもちいいよねぇ」
「そうでしょうそうでしょう。私が一日の大半をダラダラする大事な家具ですから吟味したんですよ」
「わたしもほしいかも・・・」
「ほぼ毎日こっちに来てるのに新しく買うんですか」

 というかほぼじゃなくて毎日ですよね。向こうの家って人気無さ過ぎだと思いますけど、配達とか来たらどうするつもりなんでしょうか。まさか荷物もこっちに来たりしませんよね?
 ・・・そんな事より、いい加減足が痺れてきました。いくらジュエルシードで最低限の筋肉を維持しているからといっても、基本的に私の体は貧弱なんですから負担をかけないで貰いたいです。
 自業自得?知りませんね。

 それにしても、リニスさんもフェイトさん達も随分と説明に時間がかかってますね。闇の書に関して説明しているリニスさんは仕方が無いのかもしれませんけど、フェイトさんの方はそこまで詳しく説明する理由も無いでしょうし・・・
 せいぜい「闇の書の守護騎士に襲われたけど止めて、ついでに頼まれたので安全な物に改造しました」程度で済むと思っていたんですが・・・

「そこの所どう思いますか?」
「ロストロギアをかいぞーしたって言ったら、杏おねえちゃんになれてない人はかたまるとおもうよ?」
「ああ、そういうものなんですか」
「うん、たぶん」

 そうでしたか。そういえば守護騎士も呆然としたりしてましたし、そうなんでしょうね。私もテスタロッサ一家もすっかり慣れていたので全然気にしていませんでした。
 この能力を私と両親しか知っている人が居ない時はもう少し自重していたんですけどね・・・うーん、その内無意識に使って誰かに見られたりしてしまいそうです。気をつけないといけませんね。

「「ただいまー」」
「「おじゃまします」」
「おじゃましまーす」

 あ、フェイトさん達が帰ってきましたね。他に誰か着いて来ているみたいですけど。一人はなのはさんみたいですけど・・・後の二人はどこかで声を聞いた事がある様な・・・?
 というかフェイトさん物凄くナチュラルにうちにお客さんを入れましたよね。ここ私の家なんですけど。いや、別に問題は無いんですけどね。
 実質ここは松田家兼テスタロッサ家と化していますし。

 フェイトさんたちがリビングまで入ってきました。やはり一人はなのはさんでしたね。
 あとの二人は・・・あれ、何処で見たんでしたっけ?どこかで見た覚えはあるんですけど。

「杏ちゃん、また何かとんでもない事したって聞いたけど・・・」
「大した事では無いですよ。ちょっと弄っただけですし」
「聞いただけで頭が痛くなる様な改造をしておいてちょっとは無いだろう・・・ともかく、直接話を聞かせて貰いたい。闇の書は管理局にとって見過ごせない件だからな」
「そうですか?まあそれはさておき、もうすぐリニスさんが帰ってくるのでその時にでも話しますね。リニスさんが」
「君じゃないのか・・・」
「面倒ですし。あ、多分闇の書も借りてくると思いますよ。リニスさんのデバイスマイスターとしての血が騒いでるらしくて色々弄りたいみたいです」
「・・・どこから、どこから突っ込めばいいんだっ・・・」
「クロノ、きっと考えたらダメなんだよ。フェイトから話を聞いた時点でなんとなく判ってたじゃないか」
「しかしなユーノ・・・」

 あ、そうでした。確か黒い人は宇宙戦艦アースラに乗った時に見た時空管理局の人でしたね。それでこっちの人は・・・フェレットの人でしたっけ?今日はフェレットじゃないんですか。
 まあともかく役者が揃うまではゆっくりしてましょう。焦ってもいい事はありませんよ?

「あ、そうでした。面白そうなので今度闇の書を弄った経験を生かしてなのはさんのデバイスに闇の書にあったプログラムを組み込んでみたいんですけど、どうでしょうか?」
「にゃ!?レイジングハートを!?」
「ちょっと待て!?何とんでもない事をしようとしているんだ!?」
「っていうかそんな事出来るの!?」

 あれ、物凄く驚かれてしまいましたが。もしかしてまだ私の認識が甘かったんでしょうか?
 ただ守護騎士プログラムの一部とユニゾンプログラムを詰め込めるかどうか試したかっただけなんですけど・・・他のプログラムはちょっとよくわかりませんでしたし。
 いえ、実際はプログラムに関しては何にもわかってないんですけどね。ただ何となく感覚的に覚えてるもので流用出来そうなのがこのプログラムだっただけで。
 この能力のおかげで色々考えるだけで好き勝手弄れますし。いわば過程を飛ばして結果を得る要領でしょうか。

「本当はバルディッシュさんでもやりたいんですけど、あまりやりすぎるとリニスさんに怒られそうですし」
「レイジングハートでもやりすぎたら私が怒るの!!」
「えー」
「にゃああぁぁ!!」
「落ち着いてなのは。はい、なのはは紅茶で良かったよね?」
「あ、うん。ありがとうフェイトちゃん」

 流石フェイトさんです、気が付けば飲み物を用意しているとは。
 でも翠屋の紅茶を飲んでいるなのはさんが市販のティーバッグで満足できるんでしょうか?・・・あ、普通に飲んでますね。良かったです。
 ・・・しかしリニスさんが遅いです。何かトラブルでもあったんでしょうか?フェイトさんにお願いして念話で連絡でも---

「ただいま戻りましたー」
「おじゃましますー。ほら、みんなもちゃんと挨拶せなあかんで」
「「「「「おじゃまします・・・」」」」」

 あれ、リニスさんはともかく何かいっぱい来ましたね。守護騎士と管制人格さんの声は判りましたが・・・残りの一人が主なんでしょうか?声を聞いた限りだと女の子みたいでしたけど。
 てっきり主は男の人だと思ってましたが、今思い返してみれば誰も主が男だって言ってなかったですね。 守護騎士のメンバーを見て勝手に男性向けかと思ってました。
 ほら、こういったものってやっぱりハーレムがどうとか考えそうじゃないですか。漫画とかだと大抵そんなものですし。

「杏、闇の書の主の子がお礼を言いたいと言っていたので連れてきま・・・なんで時空管理局の執務官が?」
「なっ!?」
「管理局だと!?」
「『落ち着いて大人しくしていなさい』・・・じゃあ後は全部お願いしますねリニスさん」
「丸投げですか!?」
「勿論です」
「杏おねえちゃーん、ひまだからゲームしよー」
「そうしましょうか」
「ちょっと・・・はぁ、まあいいです」

 よし、それじゃあ何のゲームをしましょうか。



[19565] 第19話 後半方針転換用追加文あり
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/20 16:22
「ほんまにありがとうな。色々突っ込みたい事はあるんやけど、ともかく私も皆も無事で居られるのも杏ちゃんのおかげや」
「・・・え?すいません聞いてませんでsってアリシアちゃんストップです、今主さんと話を---」
「ストップしたよ。リモコンばくだんではさんだけど」
「くっ・・・キックもプッシュも無いというのに、何という鬼畜の所業・・・」
「いや話聞いてな、お願いやから」

 アリシアちゃんと爆弾で相手を爆殺するゲームをしていたら途中で闇の書の主さんに話しかけられ、余所見したその隙にリモコン爆弾で挟まれてしまいました。詰みです。
 能力を使って無敵処理をしたらこの程度の逆境なんてものともしないのですが、以前対戦で使ったら酷い目にあったので自粛します。
 ・・・で、何でしたっけ?何か私に突っ込むとか何とか言ってた様な気がしたんですが。

「いやちゃうから。お礼を言ったんよお礼を」
「ああ、気にしなくていいですよ。あそこまで好き勝手弄り回すのはなかなか面白かったですし」
「・・・まあそのお陰であの子はあんなんなっとるけどな」

 何やら主さんが横に目を移したので釣られて目をやると、また呪いのオブジェと化している管制人格さんが体育座りでブツブツ何かを呟いていました。
 事情説明をしていて思い出してしまったんでしょうか。可哀想に。

「いや改造した本人がそれ言うのはあかんやろ」

 私は気にしません。

「あ、そういえばさっきからずっとポニテさんに抱かれてますけど、足が不自由なんですか?」
「あぁ・・・これも闇の書が原因だったらしいんやけどな。もう問題ないみたいやし、後はリハビリするだけや」

 そうなんですか。なかなか苦労しているんですね、足が動かないなまま生活なんて私にはとても出来そうに・・・あれ、能力を使ったら普通に出来そうな気がします。
 ともかく大変そうですね。・・・あ、そういえば。

「今すぐ歩ける様になる方法もありますが」
「ホンマに!?」
「肉体を捨ててプログラム体になればいつでも健康体ですよ」
「いやあかんやろそれ」

 さいですか。将来的にはプログラム体になるんですし、今なってもあまり違いが無いと思いますけど。プログラムとはいえ基本的には人間と大差ありませんし。
 ・・・さて、管理局の人はまだリニスさんに説明を受けてる最中ですか。何やら頭を抱えたり溜息を零したり首を横に振ったりしているのが見えますけどどうしたんでしょうか。
 元フェレットさんも何だか遠い目をしていますし・・・お客さんで唯一闇の書に興味を示していないなのはさんはフェイトさんとお話中ですか。何やらちらちらと主さんの方を見ていますけど、やはり友達になりたいんでしょうか。
 ・・・しかしいい加減管制人格さんの闇のオーラがうざったくなってきましたね。ちょちょっと操作をして無理やり・・・

「フフ・・・フフフ・・・フハハハハ・・・フハハハハハ!!ハハハハハハハハ!!!!」
「な、何だどうした!?」
「壊れた!!コイツ壊れちまった!?」
「あぁ!?リインフォース!?」

 あ、明るくなる様にテンションを高くしたら呪いっぽい状態のまま元気になってしまいました。あれではただの怖い変な人ですね。
 ならば悲しみを打ち消すくらいの幸せを感じるようにして・・・ついでに喜びも感じるようにしてと・・・

「ハハハ!?フヒャヒャハヤヒャアヒャヒャヒャヒャ!!!!アヒャーヒャヒャ!?」
「リイン!?リインー!?」
「うーむ、これは流石に失敗でしたか・・・どうしましょう」
「またお前か!?何してんだよ!?」
「いえ、いい加減うざったくなったのでちょっと操作して精神を元気にしたんですが、やりすぎました」
「いいから早く直してぇぇ!?」

 そうですね。では弄った部分を元に戻してっと。はい、これで元に戻りました。

「もう嫌だ・・・遠き地にて闇に沈んでしまいたい・・・」
「リインそれはあかん!?」

 面倒なので後は向こうに任せておきましょう。何となくギャグ時空っぽくなったので多少マシになりましたし。

「何をしていたかは詳しく聞かない事にするが・・・ともかく、話は粗方聞かせて貰ったよ」
「あ、お疲れ様です。後はあちらで混沌としている闇の書チームとご相談下さい」
「いや、残念だがここまで色々されてしまうと君を放置出来なくなってしまうんだ」

 ・・・嫌な予感がします。放置出来ないって言ってましたよね。もしかして、ちょっとやりすぎましたか?

「別に罪に問われる等は無いだろうが・・・闇の書について上に報告すると君の事も説明しなければならないんだ。そうなると間違いなく管理局は君を放置しないだろう。一部には強硬な人間も居るみたいだからな・・・」
「すいませーん!闇の書貸して下さい!今すぐ改造前の危ない形に戻して全部無かった事にします!!」
「いやダメだろうそれは!?」

 嫌ですよなんでそんな面倒な事になるんですか!あーもうこれだから魔法に関する事に関わるのは嫌だったんです!ジュエルシードの時も色々良い事はありましたけど、結局面倒事が多かったですし!
 これなら一切合財無視して帰していればよかったです。あ、でもそれだと世界の危機だった可能性もあったんでしたっけ・・・あーもう面倒です。三年生になってからイベントが多すぎなんですよ。

「でも杏おねえちゃん改造してる時ノリノリだったよね」
「黙秘します」
「ジュエルシードの時も自分で関わって、後から面倒だって言ってたよね」
「なんですか姉妹揃って。何か言いたいんですか?」
「「自業自得」」

 うるさいです。八つ当たりしますよ?何故かドアというドア全てに挟まれる様にしますよ?怒られたら面倒なのでやりませんけど。

「ともかく近いうちに艦長と話をして貰いたい。時間の取れそうな日は?」
「いつでも忙しいです」
「杏は放課後ならいつでも家でダラダラしてますよ」

 リニスさんの裏切り者・・・



 後日、アースラで艦長さんとの話し合いとなりました。議題は私が将来的に管理局に来ないといけないのではないかという事について。
 とりあえず通るかどうか判りませんが私の意見を言っておこうと思います。

「働きたくないので拒否したいんですが」
「理由はともかく、そこが問題なのよねぇ」
「艦長?問題って、ここまでだと今までの前例からしても流石に放置など出来ないと思いますが・・・」
「これが魔法で起こした事ならその通りなんだけれど・・・それにここが管理外世界なのも問題ね」

 何でも、時空管理局が管理しているのは主に魔法によるものらしく、魔力も無く魔法の反応も無い私は管理局法で言えば一般人という事になるらしいです。
 今まで何度か物凄く珍しいレアスキルが見つかった事はあり、しかもその見つかった世界が管理世界だった為に管理局で保護なり就職斡旋なりとしてきたらしいですが、今回は完全に例外。
 そんなわけで本来ならばこっそり見逃す事も出来たらしいですが、今までに類を見ないほどに強力な能力な上に闇の書を改造するという異業・・・もとい偉業を達成してしまったせいで、闇の書事件の報告の関係上見逃すのが難しくなってしまったそうです。

「でも杏さんの能力だとどう考えても一部の上層部に悪用されそうなのよね・・・」
「あ、やっぱり管理局でも私利私欲に走る人は居るんですね」
「そういえば少し前にも査察で横領が発覚した部隊があったな・・・」

 というわけで困っているという現状な訳ですね。どうしましょうか。

「何とか誤魔化せないんですか?面倒なのは嫌なんですけど」
「そうね・・・闇の書に関して尤もらしい言い訳でも出来ればいいのだけれど・・・」

 言い訳ですか・・・結構やりたい放題弄ってしまいましたからそう簡単にはいかないんでしょうね。やっぱり元の危ない闇の書に戻すべきでしょうか。
 でも主さんと知り合ってしまった以上見捨てるのもちょっと気が引けますし・・・うーん、私の都合良くお願いを叶えてくれる人でも現れてくれないでしょうか・・・あ。

「ジュエルシードのせいにしましょう。ジュエルシードと闇の書が反応して何か凄い現象が発生して機能が運良く安全な方向に狂った事にすればいいんです」
「そんな適当な・・・第一、いくらジュエルシードの暴走でも新しいプログラムを闇の書に組み込めるとは思わないんだが」
「新しいプログラムなんて組み込んでませんよ?私全然魔法に詳しくありませんし。やった事は異常を何となくで直して、他のプログラムと混ぜ合わせたものを追加しただけです」
「・・・少し苦しいけれど、もう少し練れば無理でもなさそうね」
「そうなると問題はいつジュエルシードに接触したか、だな・・・」
「その辺は面倒なのでそちらに丸投げしますね」

 何か黒い人が嫌な顔をしてこっちを見ていますけど関係ありません。面倒なものは面倒です。
 ともかくこれでやっと円満解決ですね。早く帰って砂糖とミルクたっぷりのコーヒーを飲んでゆっくりしたいです。

「あ、でももし管理局で働きたくなったら是非連絡してね♪」
「私がまともに働くなんて小数点以下に七十桁くらいゼロが続く様な確立でしょうけどね」
「君は本当に働く気が無いんだな・・・」

 当たり前じゃないですか。私を誰だと思っているんですか。



[19565] 第20話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/23 22:38
 さてさて、闇の書の件も私達から見て無事に終了して平穏が戻ってきました。数日経った今では既に以前までののんびりとした生活が繰り広げられています。
 何やら闇の書の主のはやてさんは後見人がどうこうという話でアースラの方々と色々大変みたいですが、私には、まったく関係が無いので問題はありません。
 そんな私は現在、特に意味も無く教育テレビを見ています。たまに見ると面白いんですよね。海外ドラマとか。

「杏、これどうかな?」
「はいはい・・・ん、美味しいですね。流石にまだリニスさん程ではありませんが」
「うん、まだまだだからね」

 フェイトさんは最近料理とお菓子作りを始めました。着々と理想のお嫁さん道を突き進んでいる様で、将来結婚する人が実に羨ましいです。
 フェイトさんは間違いなく尽くすタイプですからね。それこそ堕落しても見捨てずにいてくれる気がします。これで男性だったなら結婚を申し込みたい程なんですが。
 ちなみにアリシアちゃんも料理を始めようか迷ってるみたいです。物作りの才能があるアリシアちゃんなら料理も美味しいのを作ってくれるんでしょうか。是非挑戦してもらいたいです。
 ・・・そういえばはやてさんも料理が得意なんでしたっけ。そのうち食べてみたいですね。家に作りに来て貰えないでしょうか。はやてさんの家に行くのは面倒なので。

 で、アリシアちゃんとリニスさんは闇の書弄りで手に入れた知識を元に色々研究しているみたいです。というかアリシアちゃんはもう普通にリニスさんの研究に着いて行ける知識を手に入れてしまったんですね。天才というのはとんでもないです。
 最近はユニゾンデバイスと呼ばれる類のデバイスの再現に挑戦しているみたいですが、流石に相当厳しいのか難航しているようです。
 ただユニゾンさせるだけなら私が闇の書のプログラムをちょちょいと真似して他のデバイスに写せば何とかなりそうですが、それでは意味が無いと二人に言われてしまいました。やはり自分達で完成させる事に意味があるんでしょう。
 でもちょっと気になっているので近いうちに勝手にバルディッシュに機能追加してみようと思います。ユニゾンプログラムと守護騎士プログラムをなんとなーく覚えてるのでそれを組み込めば何とかなるでしょう。多分。

「杏、これお願いしてもいいかな」
「んー、まあ美味しいものの為なら吝かではありませんね」
「ありがと」

 さて普段から面倒面倒と連呼している私ですが、最近は何だかんだで何かをする事が多くなってきました。といっても、大抵はただ能力を使うだけなので自分が動く事は相変わらず滅多にありませんが。
 今回フェイトさんに頼まれたのはリンゴの皮むきです。私はリンゴと包丁の双方にお願いをして操作するので一切の無駄なく皮を剥く事が出来るので、結構重宝されてたりします。
 他にも飾り切りなんかも簡単に出来てしまいますし、正確無比な長方形に野菜を切り分けるのも可能です。まるで漫画の様に切った野菜を飛ばして皿に盛り付ける事だって可能です。流石に素材を光らせる事は出来ませんが。
 ともかく、この能力のおかげでよくお願いされてしまいます。以前までなら確実に面倒だと言って断っていましたが・・・やはり誰かが作る手作りの美味しいものが嬉しいので時間短縮とお礼代わりに手伝っています。まあ私自身の労力を割いている訳でも無いからというのもありますが。

「という訳でリンゴの皮むきの世界記録を更新するレベルで剥いてみました」
「そんな記録あるの?」
「ギネス記録は主に無駄なものばかりですから」
「地球って面白い事が多いよね」

 他の世界にはこういった技術を競うものは無いんでしょうか。一見無駄に見えて意外と応用が利くものも結構あるので面白いと思いますが・・・とはいえ本当に意味の無いものも存在してるみたいですが。
 ともかく、やはり魔法がある世界と無い世界では色々と差異があるみたいですね。聞いた話によると車や飛行機すら魔力で動くみたいですし。
 一体どうやって魔力で動かしてるんでしょうか・・・というかそのシステムを使えばリンカーコアが無い人でも魔法が使えそうな気がしますがどうなんでしょう?
 近いうちにリニスさんに相談してみましょうか。もし可能なら私も魔法を使える様になるかもしれません。使えるからどうだという訳ではありませんが。

 しかし平和です。今のこの平穏も束の間の休息となる可能性がありますが、それでもやはり平和なのはいいことです。
 それでも二度ある事は三度あるとも言いますからね・・・また魔法的な事件に巻き込まれそうでちょっと不安にです。漫画で魔は魔を引き寄せると言っていましたが、やはり事実なんでしょうか。
 私がジュエルシードに関わってから魔導師やらロストロギアやらとどんどん魔法関連に関わってますし・・・でもジュエルシードの怠惰サポートを捨てる気はありませんが。せっかくお願いを叶えて貰ったのにキャンセルなんて勿体無いですし。キャンセルうしたら身長下がりますし。
 というか大抵の子供が成長しやすいであろう小学三年生という時期なのに身長がジュエルシード以外で伸びません。流石に中学高校辺りで伸びるとは思いますが、少々不安になります。
 まさかずっとこのままだったりは・・・いや、流石にそれは無いでしょうか。両親共に人並みの身長を持っていますし。

「よし、後は焼くだけ・・・」
「リンゴで何を作ってたんですか?」
「アップルパイだよ。本を見ながらだし、初めてだからちょっと失敗してると思うけど」
「成程・・・洋菓子ならなのはさんのお母さんが翠屋で作ってるみたいですから、色々聞いてみるのもいいかも知れませんね」
「そっか、なのはに相談してみようかな」

 ふふふ、頑張って下さいね。そして私に美味しいお菓子をいっぱい食べさせて下さい。

 ちなみに今回のアップルパイはうっかり調味料を間違えていたせいで物凄い事になりました。うっかりフェイトさんが涙目でしたが、まあフェイトさんらしいといえばらしいです。
 そして最初に食べて犠牲になったアルフさんお疲れ様でした。安らかにお休み下さい・・・

「い、いきてるよ~・・・」

 おっと、これは失礼しました。



[19565] 第21話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/24 22:40
 時は年末31日。一年の終わりの日となった訳ですが、流石にプレシアさんは今年中に帰って来る事は出来なかった様です。全員揃って年を越すのはまた来年という事になりますね。
 フェイトさんもアリシアちゃんもとても残念がっていましたが、まあ今回は仕方がありません。リニスさん曰く来年には懲役が終わって勤労奉仕に切り替わるらしいので、そうなったら頻繁に会えるだろうとの事です。
 流石に一緒に住めるかどうかは判らない様ですが・・・その辺りは今後の展開次第ですね。

 さてさて、そんな事より年越しです。両親も帰ってくるかと思っていたのですが、今日の朝に電話が来て「北極点で年越しをする」等と言っていました。
 せめて年末くらいは子供と居ようと思わないんでしょうか。判っていた事ではありますが、やはり親としては問題がある我が両親です。だからといって嫌いにはなりませんがね。
 それに恐らくですが、フェイトさん達が居るから寂しくないだろうと判断しての事なんでしょう。実際その通りなのであまり気にしていません。両親と年越し出来ないのは少々残念ですけどね。

 そういえば何やらなのはさん達やはやてさん達がみんなで集まってどうこうという話があった気がしていますが、結局どうなったんでしょうか?私は面倒だったので断ったんですが、フェイトさん達がここにいるという事は結局普通に家族と過ごす事になったんでしょうか。
 まあはやてさん達は守護騎士達が現れてから初めての年越しな訳ですし、そういった事は来年の年越しの時になりそうですね。

 そんな我が家なのですが、相変わらずテスタロッサ家が集合しています。最近はフェイトさんとアリシアちゃんがこっちに泊まる事も多くなってきているので、向こうの家は殆ど大人組みの寝床兼魔法研究施設と化しています。
 今日に至っては全員こちらに泊まる様で、着替えやら色々用意して全員でコタツに入っているところです。我が家のコタツは大きいので全員で入っても問題が無いのです。元々は大きいコタツを独り占めしたいという考えから買ったものでしたが、みんなでゆっくりするのもいいものですね。

「さて、私の家では年末にはお雑煮とお汁粉の両方を作っていたんですが・・・」
「流石に日本の料理は作り方が判りませんね・・・」
「リニスさんの料理は基本的に洋風な物が多かったですよね」

 どうやらミドチルダの料理は地球で言う所の洋風料理が多い様なのです。日本の料理は過去にミッドに行った日本人のおかげでそれなりにあるらしいですが、今回のお雑煮とお汁粉は知らなかったみたいですね。
 緑茶やラーメンはあるらしいんですが・・・ともかく、このままでは今年の年末は年越し蕎麦だけになってしまいますね。

「仕方がありません。私が作りましょうか」
「実際に作るのは杏じゃなくて能力で動く調理器具じゃないのかい?」
「いえ、今回は私が自分で作りますが」
「「「「えぇー!?」」」」

 そこまで驚きますか。いや、気持ちは判りますけどね。私が自分でちゃんと料理するなんて滅多に無い事・・・むしろフェイトさん達と会ってから一度もしていない事ですし。
 それでも作り方も知ってますし、実際に作った事もあるんですよ?初めて作った時は両親も驚いていましたが。

「杏、料理出来たの?」
「多少はですが。別に調理器具まかせでもいいんですけど、せっかくみんなで年越しするなら手作りの方が良いと思いませんか?」
「杏お姉ちゃんがまともなことを言ってる・・・」
「失礼ですね。私は何時だってまともです。私基準で」

 という訳で本日の夕飯時にお雑煮とお汁粉を作りました。フェイトさんが手伝ってくれましたが、何やら「私より手際が良い!?」等と言って落ち込んでいました。
 手際が良いのとはちょっとだけ違うんですけどね。ただ余計な仕事が増えるのが嫌なので無駄な事をしない様にしただけなんですが。それに片付けに能力を使ってましたしね。
 ちなみに出来はまあまあです。流石にお母さん程美味しくは作れませんね。精進するべきか、いやしかし面倒ですし・・・まあどうにでもなりますよね。

「前から思ってましたが・・・杏はだらけているせいで気付かれにくいですけど、結構万能ですよね」
「あ、うん。ちょっとおもってた」
「学校の勉強も適当なのにテストは問題無いよね」
「普通子供が知らない様な事も知ってたりするしねぇ」

 そうでしょうか?勉強に関してはノートは取って貰ってますし、テストも授業をそれなりに聞いていて、テスト前に教科書やノートを見返せば何となく思い出せますし。
 普通の子供が知らない様な事を知っているのは単純にテレビとか漫画とがインターネットが原因ですしね。そう疑問に思うことでも無い様に思えますが。

「さてテレビは・・・ああ、年末は特番が多くてちょっと微妙なんですよね。紅白は興味ありませんし」
「そう?地球の歌は良い歌が多いと思うけど」
「そういった台詞を聞くたびに『ミッドはそんなに娯楽関係が弱いのか』と考えてしまうのですが」
「ははは・・・ミッドも悪くは無いんですけどね」

 結局最近の年末恒例になっている、笑ってはいけないシリーズを見て過ごす事になりました。これが生放送だったら遠隔操作で色々面白い事を起こすんですが・・・
 いつか生放送でやって欲しいものですね。その時は・・・ふふふ。

 そして全員でまったりとテレビを見続けて日付がもうじき変わる頃、アリシアちゃんがちょっと眠そうでしたが年越し蕎麦を用意して全員で食べる事になりました。
 食べながら年を越すのが正しいんでしたっけ?年を越してからでしたっけ?・・・まあ、どちらでもいいですよね。

 そして時計の二本の針が12の所で重なり、私達は新たな年を迎えました。

「「「「「あけましておめでとうございます!」」」」」

 今年ものんびりダラダラと平和によろしくお願いします。



[19565] 第22話
Name: KYO◆55de688e HOME ID:f4ff1fd1
Date: 2010/06/25 16:53
「よし、改造します」
「にゃ?いきなりどうしたの?」
「多分暇だったんじゃないかな」
「暇になったら改造するんか・・・」

 フェイトさん大当たりです。最近のんびり出来て幸せな日々を送っていたんですが、最近ちょっと暇だったのでデバイス改造がしてみたくなったのです。
 改造するデバイスはなのはさんのレイジングハート、フェイトさんのバルディッシュ、はやてさんのシュベルトクロイツです。ちなみにバルディッシュに関しては、ちょっと前に後で元に戻す事前提でフェイトさんから許可を貰っています。

「私の許可は!?」
「私もなん!?」
「ありがとうございます」
「「何も言ってないのに!?」」

 という訳で、バルディッシュと同じく後で元に戻す事を前提に改造する事になりました。ちょっと残念ですが、まあ暇つぶしなんで別にいいでしょう。
 それにもし気に入っていただけたらそのまま使ってくれるかも知れませんしね。

「最初はレイジングハートから弄りますね」
「だ、大丈夫かなぁ・・・」

 何やら不安そうな顔をしているなのはさんは放置しておきまして。
 今回ははやてさんの闇の書を借りて中にあるプログラムを流用する形で色々弄る事になります。守護騎士プログラムを主に使う予定です。
 という事でまずは闇の書のプログラムを色々探ってみましょう。何か面白そうなものが・・・ん?

「未使用の人格プログラムがありますね」
「え?そうなん?リインからは何も聞いてへんけど・・・」
「防衛プログラム側にあるみたいなので気付かなかったのかもしれませんね。今回はこれを使いましょう」
「人格・・・じゃあレイジングハートの性格が変わっちゃうの?」
「そうでしょうね。まあ後で元に戻すので安心して下さい」
「安心出来ないよ・・・」

 ともかく人格プログラムが複数、今回はこのプログラムを元にして色々組み込む事にしましょう。
 レイジングハートには・・・そうですね、どんな人格になるかはわかりませんがこのプログラムを組み込みましょう。
 そして守護騎士プログラムと同じ様に人型になれる様にしておいて・・・外見データはバリアジャケットの要領で簡単に作れる様にしましょう。今回はマスターの2Pカラーになる様にしますが。
 さて、これで外見と性格が完成しましたが・・・後はもう適当でいいですよね。

「という訳で一応完成です。異常はありませんか?」
『問題ありません』
「あ、本当にいつもとちょっと違う」
『新たにプログラムを組み込まれましたので』
「何かクールな感じになったね」

 さて、次は人型になってもらいましょうか。基本はなのはさんに似る筈ですが、あくまで基本ですしどうなるんでしょうかね。

「では人型になってみて下さい」
『了解しました』

 その返答と共にレイジングハートからなのはさんと同じ色の魔力光が溢れ出し、宙に浮かび上がりました。何ともらしい演出です。
 そして一際強く光を発した後にピンク色の光は収束し・・・そこにはなのはさんにそっくりな少女が立っていました。
 ただし、

「「「黒い・・・」」」
「な、何で黒いの?」
「改造者から流れ込んできたイメージを基にした結果です」
「杏ちゃん!?」

 おや、確かに白なのはさんの相棒は黒なのはさんがいいのではないかと考えてましたが、それが伝わっているとは思いませんでした。
 しかし・・・何というか、凄いですね。内なるなのはさんと言っても良い様な出来です。いや、元はなのはさんの相棒のレイジングハートなのである意味なのはさん本人と言っても過言では無いかもしれません。
 よし、ちょっと質問してみましょうか。

「好きな事は何ですか?」
「戦闘です」
「得意な魔法は何ですか?」
「砲撃です」
「好きな戦法は何ですか?」
「バインドで拘束した上での砲撃です」
「なのはさんですね・・・」
「なのはだね・・・」
「フェイトちゃんも杏ちゃんも酷いの!?」
「なのはちゃんってそんなに危険な思想の持ち主やったんか?」
「マスターは砲撃魔ですので」

 ちょっとだけ見た魔法訓練でのフェイトさんとの模擬戦でも砲撃しまくってましたしね。
 ともかく、これは思っていたよりも面白い結果になりました。次のバルディッシュさんがとても楽しみです。現時点でのバルディッシュさんの性格は寡黙で頼れるお兄さんといった感じですが・・・
 という訳でレイジングハートと同じ様な改造を施します。ただし今回は違う種類の人格プログラムを組み込んでみました。
 さっきのはクールで少し物騒な人格でしたが、今度はどんな性格になるでしょうか?

「よし、完成しました。どうでしょう?」
『大丈夫、僕は何も問題無いよ』
「バ、バルディッシュ?」
「これは・・・面白い結果になりそうでワクワクしてきました」

 どことなくアレ気なオーラが漂っている気がしてきました。普段のバルディッシュさんとはちょっと違う雰囲気です。期待が止まりません。
 フェイトさんはちょっと不安そうですが・・・はやてさんはニヤニヤしてますね。とても楽しそうです。
 そしてなのはさんとレイジングハートさんは全然こっちに注目していませんね。まあバルディッシュが人型になったらこちらに興味を示すでしょうけど。

「では、お願いします」
『さあ、僕の姿を見せてやる!』

 思わずギャップに噴出しそうになりましたが何とか堪えて光を放ち始めたバルディッシュさんを見続けます。こちらもフェイトさんと同じ色の魔力光ですね。
 さて、今度もフェイトさんの色違いになるんでしょうか?フェイトさんのバリアジャケットは黒ですから、今度は白くなるんでしょうか?
 そして光が収束して現れた姿は・・・

「普通の2Pカラーですね」
「ちょっとインパクトが足らへんな」
「レイジングハートみたいな感じがしないの」
「せっかく僕が人型になったのに失礼じゃないか!?」
「なんか妹?が増えた感じかな」
「違う!僕が一番上だ!」

 水色の髪のフェイトさんでした。バリアジャケットは細部に違いがありますが、基本的には同じですね。
 しかしレイジングハートさんはクールでカッコいい感じでしたが、バルディッシュさんは何となく残念な感じがします。しいて言うなら、アホっぽい感じが・・・いえ、これは子供っぽいんでしょうか?
 この子も内なるフェイトさんと考えると・・・まあ、フェイトさんは色々と我慢する傾向があるので、それを開放するとこんな感じになるのかもしれません。

「さて、最後にはやてさんのシュベルトクロイツですが・・・はやてさん、今の心境は?」
「不安もあるけれど、それよりも期待が大きい感じやな。勿論ネタ的な意味で」

 ありがとうございました。それでは改造に移ります。
 残っている人格プログラムはあと一個なのでこれを組み込んで・・・ふふふ、いったいどんな性格になるんでしょうか。
 クール、子供っぽい、と来たので・・・ツンデレ?いや、素直な子?期待が膨らみますね。

「さて、どんな感じですか?」
『我に気安く話しかけるとは何様だ、塵芥め』
「削除しますね」
「そやな」
『ま、待て!?そんな事をしていいと思っているのか!?』
「残念な子ですね」
「容赦無いねレイジングハート・・・」
「うっ・・・ちょっとカッコいいかも」
「バルディッシュ!?」

 どうしましょう?何だか妙に偉そうな性格みたいですけど、やっぱり人型になってもらった方がいいんでしょうか?
 確かに人型を見てみたいんですけど、こういった子はこのまま暫くからかう方が面白そうですし・・・

「まぁ、せっかくですし人型を見てみましょうか」
『ふ、ふん!仕方が無い、我が姿を現してやるとしよう!』
「嫌なら別にかまへんよ?無理はさせられへんしな」
『ぐっ、いや、うぬらの期待に答えてやるのも王たる我の務めだ』
「王様・・・くっ、でも僕の方がカッコいいに決まってる!」
「バ、バルディッシュ・・・」

 何だかバルディッシュさんが可愛いですね。フェイトさんは複雑そうですけど、ちょっとだけ優しい眼差しになってますね。本当に妹みたいに考えてるのかもしれません。
 さて2Pカラーはやてさんの姿はどんな感じなんでしょうか。はやてさんのバリアジャケット姿に関しては全然知らないので予想が出来ませんが、やはり王様らしい姿なんでしょうか。
 そんな事を考えているうちに変化が済んだ様で光が収束して来ました。

「へぇ、はやてさんのバリアジャケットってこんな感じなんですか。羽があるんですね」
「少し色が違うけど、大体は同じやね」
「何故我の姿を見て我ではなく主に反応を示すのだ!?」
「からかわれているだけでは?」
「駄目だよレイジングハート!そこは黙っててあげないと!」
「か、カッコいい・・・こうなったら、君を倒して僕は飛ぶ!」
「バルディッシュ、それって攻撃して逃げるって事?駄目だよ危ない事しちゃ」

 なんだか物凄くにぎやかになってしまいました。それにしてもクール系とアホっぽい子供と自称王とはバラエティ豊かな人格ですね。
 一体プログラムを組んだ人は何を考えてこの人格を選んだんでしょうか。とても気になります。

 とりあえず人格を戻す事にはなりましたが、皆さん意外と気に入ったらしいのでプログラム自体は圧縮してデバイス内に残しておく事になりました。
 はやてさんのデバイスは元は非人格型らしいのでそのままにしておこうかと思いましたが、ずっと一緒だとちょっと疲れそうだからという事で遠慮されてしまいました。
 まあはやてさんには管制人格のリインさんがいますし、その方がいいでしょうね。

 ・・・自称王の人格をレイジングハートに組み込んだら、砲撃魔王黒なのはさんが生まれるんでしょうか。ちょっと面白そうです。
 いつかこっそり試して見ましょう。


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