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[19646] ~M・N~ マテリアル・ネギま(ネギま×マテリアル・パズル)
Name: 古時計◆c134cf19 ID:d842e1e7
Date: 2010/06/19 00:52

ネギまとマテリアル・パズルのクロスオーバーです。

ネギまの世界に御風が行くことになります。

作中オリ設定が出るかも知れませんがご了承ください。

感想や意見がありましたらどんどんお願いします。作者のテンションが上がっていきます。

拙い作品ですがなるべく長く続けていきたいので出来れば寛容な眼で見て頂けると幸いです。

皆さまが楽しめるような作品にしたいので宜しくお願いします。



[19646] プロローグ
Name: 古時計◆c134cf19 ID:d842e1e7
Date: 2010/06/19 00:54





100年前、ある国にある3人の人間がいました。

その3人は傷つき今にも死にそうでした。

この大地からその存在を失おうとしていました。

でも3人はまだ死ぬわけにはいきません。

彼らは罪人だったのです。

死んでも償えない程の罪を犯した罪人だったのです。

まだ死ぬわけにはいきません。

でももう彼らにはこの大地に存在できる力がほとんど残ってません。

3人合わせてやっとひとり分しか―――




そこで3人はひとつの身体に自分達3つの魂を入れました。

そして3人はひとつの身体の中で生き続ける事が出来ました。

しかし、今度は逆に死ぬ事ができなくなりました。

まるで、






まるで呪いのように―――



解けない魔法にかかった3人は元の身体を取り戻すため、過去との決着をつけるため、再び悲劇を繰り返させぬため、女神と戦う道を選びました。

敵は女神とその三十の指、そして三つの神器。

敵は強大です。ですが彼らには共に戦ってくれる仲間がいました。

それが当たり前だと思える仲間達が。

そんな仲間の中に、ひとりの少年がいました。

強く生きたいと願い、友達とずっと一緒にいたいと、守りたいと願った少年が。






この物語は本来あり得なかったお話。

女神も大魔王もいない世界、けれど魔法使いがたくさんいる世界で、少年が新たな出会いをするお話。




それではその物語を綴るとしましょう。













[19646] 第1話 森とお面を被った少年
Name: 古時計◆c134cf19 ID:d842e1e7
Date: 2010/06/20 22:45



気がつくと少年は地面に倒れていた。

「う、くぅ」


起き上がろうとすると身体に痛みが走る。無理をしないようにゆっくりと立ち上がった。

辺りを見渡すとどうやら森の中にいるようだ。

深い森らしくどの方向を見ても視界に入るのはたくさんの木のみ。

空を見上げれば夜空に綺麗な満月が浮かんでおり、明りなくとも先までよく見えたのが何のおかげか分かった。

(…何でこんなとこに?俺は確か……!!)

ボケていた頭が一気に覚醒する。急いでもう一度周りを見て他に誰かいないか探す。

けれど仲間どころか戦っていたはずの敵の姿も何一つ見当たらない。


「皆、どこだ!?

 アクア!ティトォ!プリセラ!

 リュシカ!サン!」

叫んでもただ自分の声がむなしく響くだけだった。

それはまるでこの世界に自分一人しかいないような、そんな錯覚に陥らせる。

「……そんな、ウソだろ?

 おーい、誰か、誰かいないのか!?

 ジール・ボーイ!リゼル!師匠!」

声を張り上げる。とにかく誰かの声が聞きたい。そんな思いに応えるかのように少年の耳にかすかに自分の声と異なる音が伝わる。

「……………ん……」


空耳ではない僅かだが聞こえた声に少年の顔が綻ぶ。

「誰かいるのか!?返事をしてくれ!」

キョロキョロしながら声の主を探す。

「…ん、む、その声、御風ミカゼか?」

「師匠!良かった、何処にいるんです?」

「ここだ」

「何処です?」

少年、ミカゼの声を聞き目を覚ました齢を重ねた魔獣、獣面シシメの声がするがいくら探しても姿が見当たらない。

上の方から声がするが木に引っ掛かっているというわけでもないようだ。

「だからここだ」

「ここって…あれ?」

ふと違和感に気づく。

何か額のあたりから声が聞こえる気がする。

それだけではなくミカゼにとって顔や頭に非常に慣れ親しんだ感触がするような…

まさか?と頭を触る。

髪の毛とは違う獣の毛独特の触感が手のひらに伝わる。

軽く鼻を動かしてみる。

ピクピクと動くのが分かる。

間違いない。


「お面がもどってるうううう???」

以前ミカゼがある少女につけられて以来10か月近く取れなかったお面が何故か再びくっついていた。

手元に鏡はないが今自分がどうなっているかはっきり想像出来てしまうのが悲しい。

ふんぬー、と両手で掴み何とか取ろうとするが案の定取ることは出来なかった。

「落ち着けミカゼ。原因は分からぬがどうやら前に私が取り憑いていた時のような状態になっているようだ」

「一体どうして?」

「だから分からん。今はそれよりも気にせねばならんことがある。まずここは何処だ?」

師匠であるシシメに聞かれミカゼも考える。自分達は確か決戦の場所、パキ島にいたはず。

パキ島はすり鉢状の岩地ばかりで草木は一本も生えてない島だ。

こんな木が生い茂っている場所など一か所もない。

つまりここは少なくともパキ島ではないということになる。

「恐らくだが、ミカゼ。あの時の最後の光景を覚えているか?」

「はい」

忘れるはずがない。ついさっきまでのことだしそうでなくてもあんなのは忘れられない。

旅の最終地点になるはずだった。

女神、グリ・ムリ・アと三大神器の一人、クゥ。

彼らを倒して、皆で家に帰れるはずだった。

でもそれは叶わなかった。

あんなことが起きてしまったから―――

「あの時の衝撃で何処かに吹き飛ばされてしまったのだろう。思えば生きていられただけでも不思議なくらいの出来事だったのだからな」

「じゃあ他の皆は…」

「分からん。お前と同じく何処かに飛ばされているかもしれん。最悪の場合はあの時のデュデュマ達の攻撃に巻き込まれて……」

「そんな訳ない!きっと皆も何処かにいるはずです!」

シシメの言葉を遮って嫌な想像をかき消す。

ミカゼとてその考えがなかったわけではない。

シシメと自分はいるにも関わらず他の仲間の姿が見えないのはそういうことなのではないかと。

だがミカゼは信じたかった。

苦難を乗り越えてきたあの仲間達がそう簡単に死ぬはずがない、と。

共に家に帰ると約束した仲間達のことを。



「…そうだな。あの者達もきっと無事だろう。

ならば私達は私達のすべきことをやろう。どうやらこの辺りには私達以外には誰もおらんようだからまずはここが何処だかを確認するとしよう」

「…はい。その後は皆を探す。そうですよね師匠?」

ああ、と返ってくる返事にミカゼはざわついていた心が少し収まるのが分かった。

師匠がいてくれてよかった、とミカゼは思った。もし一人だったなら自分はどうなっていたんだろう、と。

不安を抱きながらも暗い森の中を一人と一匹は歩き始めた。











そこから少し離れた森の中のとある場所。

「茶々丸、撃て」

「はいマスター」

返答と同時にパラララと銃声が鳴り響く。

その場は一言で言えば異常だった。

夜遅い森の中だと言うのに多くの人影で溢れかえっていた。

人影のほとんどは角の或るものや一つ目の巨人、鳥の頭と羽をもつ者など異形の者達ばかりだった。

鬼と呼ばれる彼らは召喚した者の命令によりここ、麻帆良学園を襲撃に来たのである。

その数はおよそ三十。関東魔法協会を落とすには明らかに数は足りないがだからと言って油断出来るものでもなかった。

そんな普通の者が見れば恐ろしくて震えあがるような光景を見ても怯えるどころか颯爽と立ち向かうのはたった二人の少女だった。

一人は金色の髪に鋭い眼をした黒い服とマントを身に纏った十歳くらいの少女。

もう一人はライムグリーンの長髪と眼の無表情な少女。こちらの子は何故かメイド服を着ており手に機関銃を軽々と持ったまま乱射している。

「ぐわわ!?なんやこの嬢ちゃん危のうて近づけんわ!」

何体かが目の前で撃たれ為すすべなく消えていくのを見て運よく還ることを逃れた鬼が弱音を吐く。

「ならもう一人のおぼこい嬢ちゃんを狙えや!」

鬼達のリーダー格らしき体格の良い大鬼の命令を聞き何人かが金髪の少女へと向かう。

こん棒や大剣など一撃でもまともに食らえば簡単に死んでしまうような武器を持った敵に対し少女が持つのは実験などで見かける試験官のみ。

子供でもどちらが強いかなど直ぐに分かるだろう。

だがここは異常な空間。常識など通用はしない。

「ふん、舐めるな。魔法の射手 氷の5矢!!」

「ぐぉ!?」

「ぬが!!」



呪文と共に投げ出された試験官が割れ敵に五つの氷弾が着弾。

油断していた鬼達は防御も出来ずに全弾命中し霧のように還っていく。

「まったく、『闇の福音』『不死の魔法使い』と恐れられたこの私を雑魚扱いとは全くもって許しがたいな」

見た目とはかけ離れた言動をする金髪の少女。

それもそのはず。彼女達もまた人間ではないのだから。

不死の吸血鬼である魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マグダウェル。

その『魔法使いの従者』、人類の科学の粋を集めて作られたガイノイド、絡繰茶々丸。

鬼達を召喚した術師は知るよしもないが今のエヴァンジェリンはある理由から最強と呼ばれていたころの力の大半を封じられている。

だがそれでも数百年の時を生きてきたのは伊達ではなく、二人は麻帆良学園に侵入した鬼達を次々と還していく。

「全く。呪いさえなければこんな雑魚ども一瞬で消し去ってくれてやるというのに。まあいい。茶々丸。こっちはあらかた片付いたがどうだ?」

「問題ありません。こちらもほぼ終わりました」

そう言うと茶々丸は消えていく大鬼を背に主であるエヴァンジェリンの元へと歩いていく。

「やれやれ、面倒な呪いのせいで苦労する。まあ満月であったしいい運動になったと思えばよしとするか。よしではさっさと術師を捕らえて帰るぞ」

「はいマスター。サーチしたところ術師はこの先50メートル先の木の陰に隠れているようです」

「そうか。む?」

術師の方へ向かおうとするとそちらの方向に何かいるのに気づいた。

「ほう、しぶとくまだ残っていたか」

不敵に笑ったその先には呆けてこちらを見つめる狐の顔の人型がエヴァ達に近づく姿だった。















[19646] 第2話 キツネと魔法使い
Name: 古時計◆c134cf19 ID:d842e1e7
Date: 2010/06/21 02:54

月が高く上りその光は何処か温かさと安らぎを感じる。

誰もが夜の帳に身を休め人も獣も草木すらも寝静まる頃。

そんな静寂をぶち壊すようにキツネと空飛ぶ少女達は森の中で追いかけっこのごとく暴れまわっていた。




「喰らえ!!リク・ラク・ラ・ラック・ライラック・氷の精霊7頭・集い来たりて敵を切り裂け・魔法の射手・連弾・氷の7矢!!」

「どわわわわわわ!?」

自身に向かってくる魔法の射手をぎりぎりで全て躱しながらその威力に目を見張る。

「し、師匠。何すかアレ?」

(恐らくは魔法の類だろう。正体が掴めん以上は下手に受けず逃げに回った方が良いぞ)

「は、はいってうお!?」

シシメと話をしている間にも次々と攻撃が飛んでくる。

魔法が飛んだかと思えばその次には弾丸、と休まる暇がなく躱しながら走り続ける。

「ククク、独り言とは余裕だな妖狐よ」

「よ、妖狐?だから違うって。俺は人間だってば!」

「馬鹿か貴様?その顔の何処が人間だ!?明らかにキツネだろうが!」

「これはお面だー!」

「そんな表情がころころ変わるお面があるかー!」

余裕があるのかないのか口げんかをしながらも攻撃の手を休めることのないエヴァとそれを必死に躱し続けるミカゼがそこにはいた。





時間は少し遡る。


とにかくここが何処かを確認しようと歩きだしたはいいが目的となる方向が特にないため一向に森から抜け出せる気配がなくミカゼ達としても困っていた。

そこでシシメの助言により人の匂いのする方向へ行けば森から抜け出せるのではないかとミカゼは鼻を使い辺りをかぎ始めた。

もし森から抜け出せなくても人に会えれば何らかの情報が手に入るというシシメの考えだった。

そしてその考えは的中することとなる。

「クン、クンクンクン、ん!?師匠!あっちの方向に何か人っぽい臭いがします」

「よし。ではそちらへ向かうとしよう」

犬のように四つん這いになりながら臭いをかぐ姿は獣そのものだったが幸か不幸かこの場にそれを突っ込む者はおらず先ほどまでとは違いまっすぐに方向を見定めてミカゼは駆けだした。




数分後。常人離れしたスピードで森の中を走っていると少し先の木に寄り添う形で前方を見ている中年の男の姿が見えた。

どうやらあの男が臭いの元らしいと判断したミカゼは速度を落とすとなるべく驚かせないようにゆっくりと男に近づいた。

男は後ろから近づくミカゼのことなどまるで気づいた様子なく前方の何かを見ていら立っているようだった。

「くそっくそっくそっ!!何だあのガキ共は!?こんな話聞いていないぞ!?」

変な人だなーと思いつつもミカゼはまずここが何処だか聞こうと男に声をかけた。

「あのー」

「嫌がらせ程度にひっかきまわしてくれば良いだけの楽な仕事だったはずなのにこの私の鬼がまるで相手にならんではないか?

くそ、こうなったら逃げるしか…だがしかし…ん?何だお前は?」

ようやくミカゼに気づいた男は振り返ると訝しげな目を向けた。

「いや、実は気がついたらここにいたんですけどここがどこだかわかんなくて。教えてもらえますか?」

「何?」

男はもう一度ミカゼを観察する。

ごわごわとした毛のキツネの顔。

明らかに日常生活で着ないような荒い作りの黒と緑の服。

むき出しの手足。

若干感じる妖気。

結論。



(ああ、私が呼んだ妖狐か)




ミカゼはお面を被った人間である。

格好も彼の普段着である。

妖気はシシメから感じられるものである。

有体にいえば勘違いである。

だがそのことにお互い気づくことなく話は進む。

「ここは麻帆良だ」

「マホラ?えっとどの辺にあるんすか?」

「そんなことは気にしなくていい。それよりお前もこんなところにいないでさっさと向こうに行け」

「……向こう?」

指差された方に目をやるが木の所為で先がよく見えない。

「向こうに行けば何かあるんすか?」

「当たり前だ。余計なことを言ってないで速く行け」

何処か偉そうに言う男に少しむかっと来たミカゼだったが教えてくれたことには一応感謝して男の言った方向へ向かった。



それからほどなく木が一部減った広い場所が見えてきた。

何やら人の話し声も聞こえるため進む足も速まる。

暗闇で良く見えなかった人影が雲からもれた月の光に当たりはっきりと視界に移る。

その姿を見た時ミカゼは自然と動きを止めた。

「……アクア?」

そこにいる人物が自分の良く知る大切な仲間である少女に見えた。

「ほう、しぶとくまだ残っていたか」

声にハッとするとそれまでアクアに見えていた姿が全く違う人物として移る。

よく見れば全然似ていない。

アクアは黒髪だがこの子は金髪だ。

歳の感じは近いがせいぜいそれだけだ。

なのに何故この子をアクアだと思ってしまったのだろう。

「おい貴様。聞いているのか?」

「あ、えっと悪い。聞いてなかった。何だ?」

「…ふん、まあいい。一人残ってものこのこ出てくる位だから少しは期待できるかと思ったが、どうやら期待外れのようだな」

少女、エヴァはつまらなそうに呟くとおもむろに試験管をミカゼに向かって投げつけた。

「……?何だ(ミカゼ、下がれ!)ッッ!?」

シシメの声に反射的に後ろへ跳ぶ。

すると先ほどまでミカゼが立っていた場所が一瞬で凍りついていた。

「こ、凍った?」

「……ほう、今のを避けるか。ククク良いぞ、少しは面白くなりそうだ。行くぞ茶々丸」

「はいマスター」

「は?へ?」

驚きと混乱で状況が掴めなかったミカゼだったが目の前の二人が敵意を持って近づいてくると分かると再び飛んできた攻撃から逃げるために後ろへと走り出した。



そしてそれは今に至る。




「あーどうしましょう師匠?」

(ふむ。先ほどから見ていたがどうやらあの金髪の少女のほうは氷系の魔法使いのようだな。

だが正直威力はそこまで高くない。隙を見て反撃に移れば恐らく勝てるぞミカゼ)

シシメからアドバイスをもらうがそのことにはミカゼも気づいていた。

だがどうにも抵抗があるのだ。

ただでさえ女の子と言うだけで戦いづらいというのに妙にアクアを連想させるこの子を攻撃するのはさらに気が引ける。

そのため逃げ続けているのだがこの時逃げた方向はミカゼが一度通った道だった。

つまりこのままいけば―――

「随分と粘るがこれで終わりにしてやろう。氷爆!!」

(ミカゼ、来るぞ。しかもこれは恐らくさっきまでより強い!)

「ええ分かっていま――」

避けようとするが先ほど声をかけた男性が木に隠れたままこちらを見て青ざめているのが見えた。

この攻撃を避ければ間違いなく目の前の男に当たる。

考えた時には跳びかけていた足を止め大地を踏みしめつつ振り返った。

これに驚いたのは魔法を撃ったエヴァのほうだった。

これで終わりにするとは言ったが先ほどまでの動きを見て今の魔法をこのキツネが避けられることくらい予想がついた。

だからこそ逃げて体勢が崩れたところを茶々丸と自分の同時攻撃で仕留めるつもりだった。

そんなことは知らないミカゼは眼前に迫った危機に動じることなく右掌を伸ばした。




自らを空虚とし身体の中に魔力の滝を発生させその流れに魔法を飲ませる。

流れの入り口である右掌に魔法が触れる。

魔法の衝撃が体内の道を通っていく。

魔法の威力が対角線上の左足の裏の出口まで達し、地面を強く踏みしめた瞬間、

全ての魔力が足の裏から放出される。



それがミカゼの持つ対攻撃魔法奥義

「万象の杖!!」

ミカゼに直撃するはずだった魔法はミカゼには傷一つつけることなく

代わりにミカゼの左足付近の地面が凍り吹き飛ぶのみとなった。

「……何だ……今のは……」

視界が戻ると唖然とした表情の少女が空に魔法を放った姿勢のままとどまっていた。

驚いているのは何となく分かるが攻撃をやめてくれた今なら話が出来ると思いミカゼが声をかけようとした時

「ふはははは!!これはいい、良くやったぞ妖狐よ。流石この私が召喚しただけのことはある」

ミカゼでもシシメでも二人の少女のものでもない声がその場に響いた。

音源はミカゼの後ろ。

木に隠れていた男が高笑いしながら前に出てきた。

「あ、おっちゃん大丈夫だった?」

「うむ。よくぞ私を守った。ではこの調子であの生意気な小娘達をさっさと倒してしまえ」

「………は?」

首を向けつつ後ろに立っていた男の無事を確認したミカゼだったが男の言葉に疑問符を浮かべる。

男はそんなミカゼの反応にも気にせずにべらべらと溜まった鬱憤を晴らすかのように喋り続けた。

「まったく召喚した鬼がほとんどやられた時にはどうしようかと思ったが最後の最後でマシなのがいたか。

これで依頼も果たすことが出来る。

ほら何をやっている。私はコイツらを殺せと言ったんだ」

「…………なんで?」

「はあ?決まっているだろう。私はここの奴らの戦力の確認とあわよくば殺すためにお前らを呼んだんだ。

命令にはさっさと従え」

問うたミカゼの声が先ほど安否を確認した時よりも低くなっていることに男は気づかない。

そして続く男の言葉に向きを変えたことも。

「さあゆけい!わが忠実なるしもぶぅっ!?」

みなまで言わせずミカゼの蹴りが男の顔面に決まった。

きりもみ回転しながらそのまま木に突き刺さり男は静かになる。


「ったく、助けてやったと思ったら意味の分かんねえこと言ってるし。おまけに女の子達殺そうとしてるってなんだよ」

あきれるように蹴った男を見た後ミカゼは先ほどから動きを止めたエヴァ達に向き直った。



「えっと大丈夫か?何かあのおっさんに命を狙われてたみたいだけど……」

「…………」

返答はない。

「…………」

「…………」

「………なあ、なんか言ってくれよ」

「………なぜ未だいる?」

「は?」

何言ってんの?とミカゼは首をひねる。

そんなミカゼの態度にギリッと歯を鳴らしながらエヴァはミカゼに詰め寄った。

「召喚主を攻撃するという時点で妙ではあったが問題は何故その召喚主が気絶した状態で未だに貴様は現界しているんだ!?

用が無くなったならさっさと還れ!」

「帰れって……俺も早く帰りたいけどまずは皆を、俺の仲間を探さなきゃいけないんだ。

っと、そうだ。悪いんだけどここってどこなんだ?さっきのおっさんに聞いてもマホラってだけでどの辺にあるか教えてくれなかったし。

アクロア大陸か?それともアルカナ大陸か?」

「はあ?何を言っている?ここは日本だ。召喚されたならその位分かるだろうが?」

「ニホン?…聞いた事ねえな。えっとメモリアからはどのくらいのとこにあるんだ?」

「メモリア?何だそれは?」

「は?」

「む?」

少女の言っていることがミカゼにはよく分からない。

一応一般常識くらいは持っているつもりだが聞いたことがない言葉ばかり出てくる。

会話が出来ているからとんでもなく閉鎖的な地方に来てしまったというわけではないと思うのだが。

よく見ると少女の方もミカゼと同じように不思議そうな顔をしている。

沈黙を破ったのは二人の会話中静かにしていたもう一人の背の高い少女だった。

武器をこちらにむけたまま金髪の少女に近づく。

「マスター、少しよろしいでしょうか?」

「ん?何だ茶々丸」

茶々丸と呼ばれた少女は無機質な声音のまま淡々と述べる。

「先ほどからそちらの方を調べてみたのですが彼は妖狐ではなく人間です。感じられる妖気は彼が被っているというお面から感じられます。

またアクロア大陸、アルカナ大陸、メモリアというワードを調べてみましたが旧世界。魔法世界、いずれも該当する地名、単語はありませんでした」

「何?」

お面と聞きミカゼに近づいた少女はじっと見つめた後両手でほおを引っ張ってみる。

むにゅーっと伸びる。

毛がふわふわしていてなんかあったかい。

軽く握ってみる。

もふもふする。

しばしその触感の良さに触り続ける。

何処となくその行動が見た目相応になり茶々丸も「ああマスターが楽しそうに」と主の動きを録画し始める。

触られてるミカゼとしてもどうしようか悩んだ頃ようやく我に返ったのかはっとした少女は思いっきり引っ張って手を離す。

ギャッと言うミカゼをよそに先ほどの自分の行動をごまかすかのように腕を組み眉を寄せながら少女はその事実を吟味する。

少し涙目なミカゼだったがそのことには触れずに流してあげることにした。

……下手に突っ込むと不味いことになる、という経験からくる予感がしたのも理由ではあるが。

しばらく待っていたが少女からの反応がない。

「あのー………」

「うるさい。少し黙ってろ。……おい貴様、質問に答えろ」

「どっちだよ」

「何か言ったか?」

「いいえ」

ギロリと睨まれおとなしくなるミカゼ。

なんで俺はこんなんばっかなんだろうと思いつつも従ってしまう。

「貴様は人間なんだな?」

「だから最初からそう言ってんじゃんか」

「何でここに来た?」

「俺が聞きたい。気がついたら仲間とはぐれてここにいたんだ」

幾つかの質問をした後、苦い顔をした少女は傍に立つ茶々丸に気絶した男を捕らえるように命じると再びミカゼに顔を向けた。

「………全く、せっかくの満月だと言うのに本当に面倒なことにしおって。

本来なら不法侵入者は捕まえるんだが仕方がない、ジジイの元へと連れて行くか。

おいキツネ。ついてこい」

「キツネじゃない。ミカゼだ」

「ミカゼ……ふん、それがお前の名か。いいかミカゼ。これからお前をここの管理者に会わせてやる。詳しくはそこで話せ」

返答も待たずにさっさと歩いていく少女に当たり前のように捕らえた男を担ぎながらついていく茶々丸。

いまいちよく状況が分からないミカゼは少女を呼び止めようとするが名前が分からないことに気づく。

「えーっと、そういやあんたらの名前は何なんだ?」

既に大分先へ進んでいたがちゃんと聞こえていたらしく振り返ると歳に似合わぬ不敵な笑みを浮かべながら名乗った。

「私達か?私はエヴァンジェリンA・K・マグダウェル。そこにいるのが絡繰茶々丸。最強の魔法使いとその従者さ」





こうして、異世界より来た少年、ミカゼは魔法使いと出会った。

奇しくもそれはミカゼが初めて会った魔法使いと同じ、不老不死の少女だった。




不老不死の少女アクアと出会い彼の冒険が始まったように



不老不死の少女エヴァと出会ったことで




この世界の彼の冒険が始まった。









[19646] 第3話 魔法と『魔法』の違い
Name: 古時計◆c134cf19 ID:d842e1e7
Date: 2010/06/24 20:48




あれから、

エヴァ達に連れられ夜の森を抜けた後、女子中等部にある学園長室に向かうことになったミカゼだったが、街を進む際あちこちに眼を奪われてしまいついついペースが遅れがちだった。

そのため何度もエヴァに怒鳴られ速度を上げるという行為を繰り返していたが無理もない。

麻帆良の町並みを見たことでより自身のおかれてる状況が分からなくなってしまったのだ。

ミカゼが以前滞在した国であるメモリア王国は全世界の中で最高峰の文明を誇る国だった。

都市部においてはレールやビジョンなど他のどの国にもないほど進んだ技術があったがこの街はそういうことに疎いミカゼから見てもメモリアと同等、下手をすればそれ以上の文明を持っていそうだ。

だがそれほど進んだ国ならもっと有名になっていても良いはずだがマホラという言葉を何度思い返しても聞いたことすらなかった。

(師匠、一体どういうことなんでしょう?マホラなんて場所知ってますか?)

(…………)

(師匠?)

(………あくまで予測でしかないが私にはここがどういう場所かは想像がついた)

(!!本当ですか?ならここは何処なんですか?)

さすが師匠と感心するミカゼだったが対するシシメの反応は鈍いものだった。

(まだ確定したわけではない。まずはこの者達についていき情報を確認したい。もしも私の考えが正しければそこで分かるはずだ。

気をつけろよミカゼ。案内するようなことを言っているが少なくともそこの娘は魔法使いだ。何が起こってもいいようにしておけ)

(そうでしょうか?確かにさっきは襲われましたけどそれも俺をあのおっちゃんの仲間だと勘違いしていたみたいですし悪い子達ではなさそうだと思うんすけど)

お面に宿るシシメと心中で会話しながらミカゼは目の前を堂々と歩くエヴァとその横でぐるぐる巻きになって気絶している召喚師の男を肩で担ぎながら歩く茶々丸を見て答える。

(確かにそうかもしれんがな。お前は気づいていないだろうがこの二人は人間ではないぞ。魔法使いの娘は恐らく私のような魔性の者だ)

「え?人間じゃない?」

意図せず口にして驚いてしまう。あわてて口を手でふさぐが幸いにも前を歩く二人には聞こえなかったようで振り返ることなく建物の中に入って行った。

胸をなでおろしながらもシシメの言葉が気にかかる。

(人間じゃないってどういうことですか?)

(そのままだ。人ではない魔の気配を感じる。見かけはまだ小娘だが実際の年齢は多分お前よりも年上かもしれん。

もう一人の方もどこか生物じみていない。霊気も感じん。魔法で出来た人形か何かかもしれんな)

「そんな…」

眼前の少女は自分よりも年下にしか見えず、にも関わらず歳が自分より上。

ますますアクアに似ている、とミカゼは顔を曇らせる。




どこにいるんだろう。俺が守ると約束したアイツは。あの時まともに動くことも出来なかったはずだけど無事なんだろうか。

アクアだけじゃない。ティトォも、プリセラも。他の皆も。

不安で押しつぶされそうになる。

メモリアの王子、グリンはよく友達を失うことを恐れていた。

今ならその気持ちがよく分かる。

早く見つけないと―――




「―――い。おい。おい!」

「ぐおっっっ!!?」

何度呼びかけても反応しないミカゼにいら立ったエヴァはその足を思いっきり踏みつけた。

綺麗に決まったらしく悶絶しているミカゼを見てざまあみろといったように鼻を鳴らす。

「な、何しやがる」

「ぼうっとしていた貴様が悪い。ほら、そんなことより着いたぞ。ここがこの麻帆良の管理者であるジジイがいる場所だ」

ぷるぷる震えながらのミカゼの文句を聞き流したエヴァは目の前の立派な扉を指差す。

茶々丸は男を別の場所へ連れて行くらしくその場でエヴァとミカゼに礼をするとそのまま廊下を進んでいった。

「ジジイ入るぞ」

ノックもせず中からの返答も聞かずにズカズカと部屋に入っていくエヴァを見て呆れながらもその後に続く。

だが予想だにしなかった。

まさか入った後のほうが呆けることになるだなんて―――



「ふぉ、エヴァか。わざわざ侵入者の相手なんぞさせてすまんかったのう」

「そう思うんならさっさとこの腹立たしい呪いを解けクソジジイ」

「ふぉふぉふぉ、これは手厳しいわい。それで、後ろにいるのがさっき茶々丸君から連絡があった奇妙な侵入者かの?」

笑いながら自分を見つめる老人の姿は分かりやすく言えば仙人のようだった。

長い髭に具体的な年齢が想像つかぬ風貌。

飄々としているが肌に感じる威圧感。

それでいてその実力を測らせない底の深さ。

だが何より眼を引くのはその後頭部だった。

長い。

明らかに長い。

常人のそれとは比べ物にならない。

仮に中身が脳みそだとしたら間違いなく変形しているだろう。

初対面であるにも関わらずその姿を見たミカゼは思わず本音が口から洩れた。

「化物?」

「いきなり失礼な子じゃのう。そういう君こそ本当に人間かの?どう見てもキツネにしか見えん」

「んなっ!?俺は人間だ!」

「ワシだって人間じゃ」

「後頭部が変じゃんか!」

「顔全体がキツネの君には言われとうないわい」

傍から見ればぬらりひょんとキツネ人間が口げんかしているようにしか見えなかったが残念?なことに両方とも人間だった。

しばらく意味のない会話が続いたがそんなのはどうでもいい、と近いほうにいたミカゼの足を再び踏みつけ黙らせると強引に話を進めた。

「くだらんことばかり言ってないでさっさとやるぞ。ジジイ、連絡で聞いているだろうがコイツは原因は知らんが何故かここに迷いこんだらしい。

最初は侵入者の召喚した妖狐かと思っていたがどうも違うようでな。

事情を聞いても良く分からんから連れてきた。

ほっといても良かったがコイツの使った技にも興味があってな。それについても詳しく聞かせてもらうぞミカゼ」

「ふむ。なるほどのう。さっきはすまんかったの、ミカゼ君……で良かったかの?」

「イテテ……はい、御風と言います。俺のほうこそすいませんでした」

足をさすりつつも謝るミカゼだったが視線はエヴァの方へ向いていた。

その意味は語るまでもないだろう。

「ワシはこの麻帆良学園の学園長であり関東魔法協会の長である近衛近衛右門という。

それでは早速いくつか聞きたいんじゃが、まず君は魔法使いかね?」

「え…いいえ俺は魔法使いじゃ……あ、いや、やっぱり魔法使いです」

「何だそれは?」

「つい最近なったばかりなんだよ」

「素人か」

「うるせえ」

自分でも自覚があるのかミカゼは口をとがらす。

来客用のソファに移動したエヴァはそんなミカゼの反応が面白いのかにやにや笑いながら足を組んでいる。

「ふぉふぉ。それでは裏に関することは大丈夫そうじゃの。では次の質問じゃがミカゼ君は何処から来たんじゃ?」

「えーっとミルネシアのミルホット村からです」

「ふぉ?どこじゃと?」

「あー、今はきのこ村って名前になってるはずです」

巨大なきのこが村に生えても平然としていた故郷を思い出し望郷ではない理由で泣きそうになるがぐっと我慢する。

「…?聞いた事ないのぉ」

「またか。さっきからこんな感じで会話がかみあわんのだ」

不思議な顔をする学園長と面倒くさそうな顔をするエヴァ、そしてまたもや聞き覚えのない言葉が増えたため混乱しているミカゼ、と三者三様の反応を見せた。

その時

(ミカゼよ)

ミカゼの頭にシシメの声が響く。

(師匠、何すか?)

(今から私が言うことをそのまま聞いてほしい)

「分かりました」

「何がじゃ」

「ああいや何でもないです。

えっと……ちょっとこっちからも聞きたいんすけど……えっと…今はいつですか?」

「む?今日は2003年の1月30日じゃが」

「……は?…2003?何言って…え、はい…分かりました。次の質問なんすけど”メモリア””女神の三十指””大魔王デュデュマ”っていう言葉は聞いたことありますか?」

「いや…すまんが聞いたことがないのう。女神や大魔王と言う言葉の意味は分かるがのう」

「……最後なんですけどさっき魔法協会?って言ってましたけどここには魔法使いがたくさんいるんすか?」

「まあのう。学生や教師達も含めればそれなりの数にはなるかの」

「……それは自力でなった魔法使いですか?」

「……?当たり前じゃろう。まあ例外的に修行もせんで使える者もいるが」

「……どういうことです師匠……え?な、そんなこと…いや……確かにそうですけど…でも……信じられないです……」

「何をごちゃごちゃ言ってる。結局それがどうだと言うんだ?」

ミカゼの言動にイライラしてきたエヴァが催促するがミカゼとしてもシシメの出した答えは信じられない。

だがそれしか考えられないと分かったミカゼは顔を上げるとそのままシシメからの結論を伝えた。

「えーと、俺、どうやら別の世界から来たみたいです」








「アホか貴様頭大丈夫か。そうか頭がおかしいからそんなお面なんか被ってるんだな」

「俺も信じられないんだけどそれしか思いつかないからだから眼をやめろ」

お面もしたくてしてるわけじゃない。

可哀そうな物を見る眼をミカゼに向けるエヴァに暗い顔で返す。

学園長はただふぉふぉふぉと笑いながらその根拠をミカゼに確認した。

「えーと、俺の記憶じゃ今はA.D.1680の6月20日のはずなんです。それにメモリアは世界最大の王国なのにそれを知らないって言うのも変です。

女神と大魔王デュデュマの伝説は子供でも知っているはずなのにそれも知らないんすよね?

最後に魔法使いは本来才能ある人が何十年も修行してそれでもなれるかどうかってもののはずなんです。

ただ直ぐに魔法使いになる方法もありますけど女神の三十指でもないのにそんなにたくさんいるはずがない。

だからそもそもここは俺のいた世界とは違う別の世界だと思ったんです」

(これでいいんですよね師匠?)

(うむ。もし他の可能性があるなら向こうから何か言ってくるはずだ)

しかし、予想と違い二人はしばらくの間無言となった。

無理もないと思う。ミカゼ自身シシメに言われなければ出てこなかった考えなのだ。だがミカゼには自分の世界とは違う他の世界があることを知っている。

その世界から来た者がいることも知っている。だからシシメの言葉を聞いて認めたくなくても信じることが出来たのだ。




「とてもではないが信じられんわい。だが嘘を言っているようにも見えん。

すまんがミカゼ君。もし君の言う通りワシらの魔法と君の魔法が違うと言うならどう違うか見せてくれんかの?」

「……あー、すみません。俺、魔法はちょっと使えないんです」

魔法使いなのに魔法が使えないなどというのは実に矛盾した回答だった。

もちろんそんな返答に納得出来るはずもなくエヴァはソファから身を起こすとアホか―とミカゼに飛び蹴りをかました。

そのまま倒れたミカゼの上に乗りふんぞり返る。

「ふざけてるのか。さっき自分で魔法使いになったと言っていただろう!!」

「仕方ないだろ!俺の魔法は俺でもどう使うか分からないんだから!」

「何だその欠陥魔法は。てんで役に立たんじゃないか」

「欠陥とか言うな。これでも禁断五大魔っつうすげえ魔法の一つなんだぞ!最強剣『命七乱月いのちななつみだれつき』ていう伝説の魔法なんだぞ!」

「知るかそんなもの。使えんのなら結局は欠陥だろうが!!」

ああ確信した。こいつドSだ。やっぱりアクアそっくりだ。

一方的にボコスカ殴る蹴るを繰り返すエヴァに知られれば余計ひどくなりそうな感想を抱くミカゼ。

そんなミカゼの怪我には一切触れずに学園長は話を進めた。

「ならミカゼ君や。せめてお主達の世界の魔法がどんなものか教えてくれんかの」

「あーそれなら言えます。えーっと確かアクア達が言うには…」

ボロボロになったミカゼは自身の良く知る魔法を例に挙げて説明し始めた。




そもそも魔法とは、自然界の力や人間の力を変換する事。

自然界を取り巻くあらゆるパワーや生物を流れる霊気オーラ

それらを司る最も根本的なマテリアル・パワー

魔力…マテリアルパワーは何にだってある。

木にも草にも花にも水にも火にも

石にも鉄にも紙にも人間にも大地にも

それを自由に組み立て新エネルギーを作り出す事

この世に新たな法則を作り出す事

それが魔法

『マテリアル・パズル』

アメ玉の魔力を変換し破壊のエネルギーを作り出す魔法『スパイシードロップ』

炎の魔力を変換し癒しと強化のエネルギーを作り出す魔法『活力の炎ホワイトホワイトフレア

風の魔力を変換し羽を作り出す魔法『エンゼルフェザー』

作った人の数だけ魔法の種類はある。

そしてその魔法を使うことが出来る者のことを魔法使いと呼ぶ。



「……っと、確かこんな感じでした」

「……存在の力を組みかえるだと?そんな方法が…」

説明を終えるとエヴァもさっきの雰囲気とは違い神妙に考え込んでいる。

「エヴァ達のやっぱり魔法は違うのか?」

先ほどの戦闘中に見たいくつかの魔法を思い出す。

魔力らしきものは感じたが何処か自分の知る魔法と違う気がしていたため万象の杖を使うこともためらったのだ。

結果として使用できた時点で魔法だと確信できたわけではあるが。

「……お前の言っていることが本当だとすれば随分違うものだな。

マテリアル・パワーだったか?それは恐らくこちらで言う『魔力』と『気』だな」

エヴァが言うにはどちらも森羅万象、万物に宿るエネルギーのことだが

『魔力』は大気に満ちる自然のエネルギーを精神の力と術法で人に従えたものであり

『気』は人に宿る生命のエネルギーを体内で燃焼させているものなのだそうだ。

その説明からするとこの世界の魔法使いはマテリアル使いのようなものかな、と漠然とした結論を出しているとそれまで静かだった学園長がおもむろに口を開いた。

「ワシらの魔法とミカゼ君の魔法が違うのは良く分かった。

ミカゼ君が異世界から来たというのも恐らくは本当じゃろう。そんな荒唐無稽な嘘をついても仕方ないしの。

じゃがそうなるとどうしてミカゼ君はこの世界に来たんじゃ?」

尤もな疑問だった。

何故異世界に飛んだか。

それもシシメが予測ではあるが教えてくれた。

だがそれを話すにはまず元の世界で何があったか話さなければならなかった。

「えーと、何から話そうか。

 それじゃ時代を追って順番に―――――」









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