テレビ・新聞が報じない上海万博の舞台裏
経済援助は合わせて9100億円也
一人勝ち中国にいまだ「偽装ODA」援助して欲しいのはこっちの方だ
(SAPIO 2010年6月9日号掲載) 2010年6月24日(木)配信
国際機関を通じて
日本から隠れ援助
前述の通り、世界銀行、ADBを通じた経済援助は続いており、その額は各4216億円と4800億円。ODAとは別の迂回ルートになっている。「偽装ODA」と合わせて経済援助は9100億円也!
また、ADBは一貫して日本の財務省出身者が総裁に就任し、“財務省の植民地”とまで形容される機関である。日本政府の意向は反映し易いはずだが、中国向け融資は増える一方だ。
ADBの現総裁は黒田東彦氏で、当然財務省出身だが、彼の中国観は「中国は覇権国ではない」というもので、さらに、アジア共同通貨構想にも前向きな東アジア共同体論者として内外で知られる。
ADBの中国向け融資で問題なのは、政治的にデリケートな少数民族地域のプロジェクトも多く含むことで、チベットと都市部をつなぐ内陸道路建設への融資などはダライ・ラマのチベット亡命政権から強い抗議があったにもかかわらず、実行されている。この件でADBに取材したところ、「ADBは国際援助団体であり、そうした政治的なことは関係ない」とそっけない返事が返ってきたばかりである。
現在ADBが最重要視している開発プロジェクトに中国の新疆ウイグル自治区と中央アジアを結ぶ新シルクロード開発構想がある。ADBが主導権をとって関係各国と協調して行なう予定だが、構想実現には次のような背景があると開発関係者は語る。「ADBは黒田総裁の下に副総裁が4人いる。最近はこのポストのうち1つに中国人が就任している。で、彼が受け持っているのが『中央アジア地域』で、事実上、中国人がこの地域開発のイニシアティヴを握っている。仮に、この交通網が整備された場合、一番利益を得るのは中国。周辺の国に中国製品が氾濫するのは眼に見えている。そればかりか中央アジアは資源の宝庫。中国の浸透に拍車がかかるのは言うまでもない」(前出の関係者)。
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