テレビ・新聞が報じない上海万博の舞台裏
経済援助は合わせて9100億円也
一人勝ち中国にいまだ「偽装ODA」援助して欲しいのはこっちの方だ
(SAPIO 2010年6月9日号掲載) 2010年6月24日(木)配信
文=青木直人(ジャーナリスト)
世界経済が疲弊する中、ひとりバブルを謳歌する中国。現在開催中の上海万博は、まさにその「わが世の春」と言ったところだろう。その中国に、いまだ日本が「途上国」という名目で経済援助を続けているとしたらどうだろうか。たしかODA(政府開発援助)は多くの非難にさらされ終了しているはず。いまだ中国に言われるまま垂れ流し続ける「偽装ODA」ほか経済援助の実態を明かす。
上海万博が盛り上がりを見せている。中国国内で初めて開催される万博は、中国が30年間の市場経済を通じて、貿易額、外貨準備高ともに世界一、GDP第3位の経済大国に上り詰めたことを内外にアピールする一大イベントと位置づけられている。
日本のテレビや新聞は、万博会場からいかに中国が繁栄し、豊かになったのか、を繰り返し報道し、スタジオのコメンテーターは、「21世紀の大国は中国だ」「日本の今後の成長には中国との協力が必要だ」と異口同音に発言する。だが彼らは肝心なことはなにも言ってはいない。
それはすでにGDPで今年中にも日本を抜いて第2位になると見られるその中国に対して、いまも日本の経済援助が続いているという事実である。
多くの国民は08年度を最後に日本の対中ODAは終了したと思っている。だがこれは厳密に言えば錯覚なのである。終わったのはODAの90%を占めていた円借款だけで、これ以外の無償資金協力と技術協力は今も続いている。
そればかりではない。確かに外務省が仕切るODAは激減しているが、今度は逆に各省庁が個別に中国との交流を名目にして、それぞれ予算を獲得しているのである。これでは「偽装ODA」と言われても仕方ない。
円借款中止で、国民の中にあるODA批判を封じ込め、その一方で目立たないように省ごとに援助予算を計上するという巧妙な手口なのだ。
そもそもこれまでの日本の対中経済援助がどれほど膨大なものであったのか、ここで整理しておく。まずODAの総額が3兆円超、さらにODAとは別に国際協力銀行が融資する資源開発ローンという公的支援が3兆円、合計で6兆円である。この金額は世界最大であり、中国政府が海外から借りている公的資金のうち、実に30%を占める。
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