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写真:株式会社ジークレスト

2009年夏、「mixiアプリ」のサービスが始まった。ゲームやチャットなどでユーザ同士のつながりをより楽しく、便利にするソーシャルアプリケーションが続々とリリースされている。ジークレストもこの新しいプラットフォームに参入した1社。
mixi アプリの運用のために選んだのが、日立ソフトの『Game Cloud Service』。これからのオンライン・ゲームビジネスを全面的にバックアップする、確かな品質の国産クラウド・サービスだ。

オンライン・ゲーム業界にクラウドの風が吹く

 mixiアプリでは、ネットワーク・インフラは登録プロバイダが用意するのが原則。mixiはあくまでも“入口”を用意するにすぎず、実際のゲームは、プロバイダが用意するサーバ上で動くことになる。それでも、mixiが持つ1,600万人ともいわれるユーザ数は魅力で、これまでPCや携帯向けにオンライン・ゲームを開発・配信してきたプロバイダが、こぞって参入し、ユーザの獲得を競っている。

 オンライン・エンタティンメントの総合企業をめざすジークレストでも、12月に「バルビレッジ2formixi」をリリースした。「バルビレッジ」は、フクロウとクマが組み合わさった不思議なキャラクタ「オウルベア」を操り、着せ替えやゲームが楽しめるコミュニケーションアプリ。これまでのPCプラットフォームでは累計100万人のユーザを獲得していた。mixi版ではマイミク同士でのチャットやユーザ評価機能など、コミュニケーション機能が強化されている。

 ジークレストはこれとは別に2006年からオンラインゲームポータルサイト「@games」を運営しているが、サーバの調達・運用は自社で行っていた。mixiアプリのリリースでも当初はその方法も検討されたが、そこにクラウド・コンピューティングの風が吹いてきた。
「クラウドについては、昨年 @games の英語版サービスを北米中心に展開することになり、そのインフラとしてAmazonEC2のサービスを利用したのが初めての経験でした。北米に限ったサービスならレスポンスも問題ないという感触を得ており、国内のサービスにおいても、クラウドの検討を始めることになりました」

 と言うのは、システム開発部運用グループの中野武志チームマネージャーだ。

サーバ購入では変動リスクに対応できない

 なぜクラウドの検討が重要課題になったのか。それは、自前のデータセンタで運用するのであれ、データセンタにハウジングやホスティングするのであれ、リアルにサーバインフラを持つ場合、いくつかのリスクが避けられないからだ。

写真: 中野 武志 氏

システム開発部
運用グループ
チームマネージャー
中野 武志 氏

「オンライン・ゲームは実際に稼働してみなければ、ヒットするかどうかわからないもの。リリース当初はユーザが殺到するが、すぐに飽きられ急減してしまうタイトルも少なくありません。
 変動要因の多い事業ではあるものの、最初からサーバへの負荷が逼迫してゲームが動かないのでは元も子もありませんから、ある程度のサーバリソースを充てざるをえない。これを自前で準備するとなると、初期投資額がかさむのは避けられない宿命のようなものでした」

 と、中野氏は言う。その“宿命”はオンライン・エンタテインメント業界に共通するものだと言うのだ。
「また、オンライン・ゲームの“寿命”は短く、ヒットしなかったタイトルは速やかに終了しなければなりませんが、サーバを購入していると、リソースが余ってしまうことも。つまり未使用のサーバを遊休資産として抱えてしまうリスク。当社でもそういう例がありました」

 このような需要の増減に柔軟に対応したサーバ調達、それを通じた事業のリスクヘッジ。それがクラウドで可能になるのだ。

 複数のクラウド・サービスの提案を検討しながら、最終的に日立ソフトの『GameCloudService(ゲームクラウドサービス)』を選定した理由を中野氏は次のように話す。
「最初からオンライン・ゲームのような BtoCサービスを意識したビジネスモデルになっていたこと。提案書にはオンライン・ゲーム業界がサーバインフラについて抱える悩みが詳細に分析されており、よくわかっているなあと、感心したものです」

『GameCloudService』─SecureOnline活用の特化型サービス

『ゲームクラウドサービス』は、日立ソフトが提供する統制IT基盤提供サービスSecureOnlineを活用した、ゲーム業界向けに特化したクラウド・サービスだ。サーバ仮想マシンを月額で提供する統制IT基盤提供サービスに、サーバリソースの推移を収集・蓄積する「運用基盤(監視)サービス」 と、蓄積したサーバリソース情報を提供する「リソース適正化支援サービス」を付加している。

 月額で提供するサービスのため、サーバを自社購入する場合に比べ、初期コストを抑えることができる。「ゲームユーザが急激に増えた」「イベントでサーバを増設したい」などリソースが必要になった時に必要な分だけリソースを増強できるし、リソースが不要になった時にその分をすぐに解除できる。将来的には、ポイント決済やユーザ認証管理などのサービスをオプションとしてラインアップし、よりオンライン・ゲーム業界への最適化を強める予定だ。

 利用を訴える市場は、PC、携帯ゲーム事業者に限らず、アーケードゲームの事業者も対象。最近のアーケードゲームや、ダーツ・バーなどに設置されているナイトゲームは対戦記録をネットを介して競うサーバ機能が用意されていることが多く、その運用にも『GameCloudService』の仕組みは活用できる。当然、ゲームコンテンツの開発環境としても、サーバ購入費用を意識することなく活用できる。

初日のトラブルを未然に防いだ雲の向こうの人たち

 mixi向けソーシャルアプリの本格提供を機にクラウド・サービスを利用することになったジークレストだが、現場に不安がなかったわけではない。
「現場は、予算が許せばリアルサーバを購入したかったというのが本音です。これまでの私たちの経験がそのまま活かせますから。ただ、英語版@gamesをクラウドで動かしてみて好感触を得ていたし、なにより経営トップの“クラウドは、これからのビジネスに必須。その柔軟性を引き出すように努力しろ”との一声が大きかった」と、中野氏は振り返る。

 トップの檄を受けて“雲”の中に飛び込む、システム開発部の面々だったが、サービスのリリース当日は思わぬ緊張を強いられた。
「オープン初日の夜、テスト段階では問題がなかったプログラムが一部暴走を始めました。CPUの負荷が高まったまま一向に減る気配がない。システムダウンの危険性も出てきたので、深夜に大急ぎで日立ソフトに連絡を入れました」

 サーバーリソースの増減に、日立ソフトは「なか3日」で対応すると契約書に謳っている。しかしこの日はオープン初日、たまたま担当者が社内に残って、サーバーの挙動を監視していた。
「無理かもしれないと思って、CPUの追加を頼み込んだら、その場で対処してもらえました。あくまでも例外とはいえ、臨機応変の対応もしてくれることに、大きな安堵感を持ちましたね」(中野氏)

 その後、トラブルの切り分けに成功し、プログラムは修復され、オープニング・ユーザの殺到も難なく切り抜けることができた。リリースからわずか1カ月で6万5,000人のユーザを獲得するなど、「バルビレッジ2」は好調な滑り出しだ。

 しかし、「もしも初日にサーバがダウンしていたら……」と思うと、中野氏は今でも冷や汗をかく。
「日立ソフトの『GameCloudService』の担当者は、海外のクラウド・サービスに比べたときの利点を、“日本人のビジネスの機微のわかった日本的クラウド”とか、“雲の合間に、働いている人が見えるサービス”という言葉で表現していました。これはよくわかりますね。

 海外のクラウド・サービスはたしかに国内のものより価格は安いかもしれませんが、いざというときのサポートや相談する相手がいない点に不安を感じることもあります。将来は私たちも使い分けていくことになると思いますが、同じクラウド・サービスでも企業の考え方の違いが出ていて面白いなと思いました」

 というのが、中野氏の『GameCloudService』運用1カ月目の感想だ。

比べものにならない人的コストのセーブ

 いま、企業のクラウド・サービス導入の視点はリソースのコスト削減に向けられているが、それは単なるサーバ資源にとどまるものではない。見逃せないのは、運用にかかわる人手、人件費コストだ。
「mixiという新しいプラットフォームに対応するのに、私たち運用チームは人を増やしていません。サーバを購入して自前でセットアップ・運用した場合と比べたら、その人的コストは比べものにならないぐらい」と中野氏は明かす。
「また、開発チームがいざテストを始めようというときに、サーバインフラが用意されていないので、しばし待機状態に入ってしまうという無駄がこれまでありましたが、すぐにサーバを用意できるクラウド・サービスを利用すれば、そんな心配をする必要もありません」と、社内人材リソースの適正運用にも、クラウドの導入は効果があることを指摘する。

 サーバ運用の責任者として、データセンタのある場所から遠く離れることができず、「海外旅行もままならなかった」中野氏の勤務状態も、これからは少しは改善されるかもしれない。クラウドの活用で、システム運用のために割いていた人的負荷が大幅に軽減されたからだ。「余った時間で、社内情報システムの高度化など、もともとやりたかった業務にも取り組めるようになりました」。クラウド効果は、システム開発担当者の業務の質の向上にまで波及している。

写真: ゲーム

 ジークレストでは、今後、複数のゲームタイトルを、mixi や他のモバイルプラットフォーム向けにリリース予定。その多くで、クラウドを利用することになりそうだ。
「大手企業はサーバを買い足したほうが、長期的にはコストメリットが出るのかもしれませんが、当社のような中小規模の事業者にとっては、初期費用を抑えることができるクラウド・サービスの利用は今後、必須となるでしょう。スピード、コスト、リスクヘッジの3つの点で、クラウドの有用性は十分すぎるほどわかりました。これからはサービス提供事業者のなかで、“話のわかる”事業者を選ぶことが、重要な鍵を握ると思います」

 と、中野氏は、オンライン・ゲーム業界におけるクラウド・サービス利用の将来像を描いている。

USER PROFILE

  • 株式会社ジークレスト

    所在地:東京都渋谷区道玄坂2丁目11番1号サイバーエージェントビル5F

    オンラインゲームの企画、開発、運営、販売携帯電話向けコンテンツの企画、開発、運営、販売などを行う。2003年設立。サイバーエージェントの子会社。2004年、携帯電話向け競走馬育成シミュレーションゲーム「ドリーム★ダービー」を皮切りに、複数のタイトルをリリース。2006年以降は、オンラインゲームポータルサイト@gamesを独自に運営。同サイトは、WebMoney Award 2008にて「Best Games 賞」を受賞。他の人気タイトルに「トリックスター0-ラブ-」「バルビレッジ」などがある。

関連する製品・ソリューション

  • ゲーム会社向けクラウドサービス

    Game Cloud Service

    ゲームタイトルの特性にあわせ、柔軟にVM・リソースを増減でき、適性な状態でサーバを運営。今までの無駄なコストを軽減。


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