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強盗殺人等:志村裕史 元日大生による強盗殺人事件・控訴審第一回公判

【被告人名】志村裕史
【日時】2009/12/10 1010~
【場所】東京高裁
【罪名】窃盗未遂、強盗殺人

07年に隣家の住民2名を刺殺した、元日大生の裁判です。
一審は死刑が求刑されながらも無期懲役!
http://shadow9.seesaa.net/article/123541449.html

 こちらの裁判、一審をほとんど傍聴し、霞っ子のブログに詳細を書いておりましたが、今はもうありません。
 かわりに、と言ってはなんですが(宣伝ですが)拙書「あなたが猟奇殺人犯を裁く日」にわりかしダイジェストな感じで収録されております。

 このときのシマダ検事、本当に輝いていました!若いくせに一筋縄ではいかないこの被告人とのガチンコ勝負、思い出してもドキドキします。
 あ〜最近ぜんぜん心奪われるやり取りをする検察官がいないよ〜

 どんなに傍聴したい裁判でも、10時台のものは見逃してしまう、という根っからの夜型人間、または社会不適応者の自分ですが、この日は目覚ましにくわえ傍聴仲間からのモーニングコールを依頼していたため、無事に起きる事ができました。
 フゥ〜

 気合いを入れて傍聴券交付所へ!(この裁判は傍聴券アリでした)
 しかし、ものすごい定員割れであっさり傍聴券をゲットできました。
 電気代を気にするアッパーな傍聴人もおらず、ホントに早起きは三文の得ですね・・・(この後、まさに早起きは三文の得と言った出来事が起こりますが、後述します・・・ってか怖くて書けないかもしれません!)

 一審のときは、長過ぎる&ウェッティすぎる前髪と、その間からのぞく目が非常に不気味だと評判だった被告人ですが・・・
 この日も相変わらず前髪は長過ぎ(かつてのチェッカーズかと思いました!)、かつウェッティ、と、初心を忘れぬ出で立ちでした。服も一審のときに着ていた黒いジャケットに黒いズボン、中は白いシャツです。

 検察官控訴かと思っていたのですが、双方が控訴を申し立てていたようです。
 検察官の控訴趣意はもちろん量刑不当です。対する弁護人は色々言いたい事があるようで、量刑不当にくわえ事実誤認、また事件当時責任能力がなかった、反省しているなどアレコレ述べておられました。

 犯行当時は責任能力がなかったけど今は反省してる…って都合がいいなと思うのは自分だけでしょうか。

 また今回、弁護側は時代の新しい流れを利用してきました。

http://sad-taikenki.net/2009/05/ssri.html
 SSRI系、SSNI系の抗うつ薬で攻撃性が増す症状が起こる事がある、という厚労省の注意改訂のニュースなどを持ち出し、被告人は犯行以前、医者からこれ系の薬を出してもらっていたから攻撃性が増していたと言うノリの主張をしてきました。
 でも上記リンクをみたところ、この症状が出るのはごく一部の患者に過ぎないようです。

 事実取り調べ請求は検察側から「被告人が、偽装工作で捜査をかく乱していたことを示す資料」が出たのですが残念ながら弁護側の不同意により却下されていました。
 これ採用してほしかったよ〜
 ご遺族の現在の被害感情を示すための調書などは採用され、要旨の告知が行われます。

 弁護側は、一審で2回もやった精神鑑定を性懲りもなくまたやれと請求してきました(やりすぎだよ!)。
 あとは上記SSRIなどの抗うつ薬についての資料などです。これは立証趣旨を限定され採用になっていました。で、問題の精神鑑定、また被告人質問は留保になっています。裁判長が「抗うつ薬の専門家に意見を聞きたい」的なことを言っていたので、抗うつ薬の影響を真面目に考えるっぽいです。
 こちら、検察側が専門家に意見書作成を頼んでおり(ぬかりないです!)、出来上がった頃、また公判が開かれる事になりました。

 そしてご遺族の調書です。こちらのご遺族、海外に居住していたなど、状況だけでクレバーなニオイが漂ってきますが、調書もすごくロジカルでした。しかし読み上げが早くメモが追いつかなかったため、以下は抜粋みたいな感じです。あのロジカルぶりを再現できないのが残念です。

○被害者・新一郎さんの妻
「一審は傍聴しておらず、判決だけ傍聴しました。正直、判決は予想外ではありませんでした。犯人がまだ若く、精神的に病んでいたことがあったと聞いていたからです。しかし判決では2つの点で疑問を感じました。
 1つは、私と息子が犯人の父親からの8000万円を受け取ったことが、犯人を許しているかのように述べられていたこと、そしてもう1つは、犯人が反省していると判断されていた事です。
 まず8000万円を受け取ったのは、一家の働き手を殺され、生活に困っていたことと、葬式のためにカナダと日本を何度も往復していたためです。人が殺されている家なのですぐに売る事もできませんでした。また私達がお願いしていた弁護士さんにも『遺族がお金を受け取るのは当然のこと』と言われました。
 反省については、判決で犯人の態度を見ていて、心から反省しているように見えないと感じました。まるで人ごとのようでした。
 判決で初めて、犯人が『殺すつもりはなかった』と言っていたことを知りました。夜中に人の家に忍び込んで2人を殺そうとした人間が、『殺すつもりがなかった』というのは……(メモとれず)
 犯人の態度を見て、死刑がふさわしいと思うようになりました。反省していない志村が出所したら、再び同じ事をやるのではないかと思います」

○新一郎さんの息子さん(なぜか英語の文面だったそうです)
「判決から時間が経った今もショックです。事件が起きてから、眠りが浅くなりました。
 判決の日、家族と結果を聞いて動揺しました。あの殺人者が将来、道ばたをうろついていると思うと母が心配です。
 あんなに簡単な刑で済むのは理解に苦しみます。
 他人の家に忍び込み、何も関係のない寝ている老婆を殺し、長男も殺し、こんなに軽い刑で済むとは思えません。
 犯人は反省していないと思います。この裁判で最も悲劇的なのはその部分です。
 人は誤った事をしたら、反省し、許しを請い、変わらないといけない。
 金で解決もできないし、私の許しをあなたの父親の金では買えません」

↑本当にその通りだとおもいます

○被害者富恵さんの長女
「判決を聞いてショックでした。死刑にしてほしい気持ちは叶いませんでした。
 判決では、犯人が悪いことをしたと長い事述べていたのに、なぜか途中から調子が変わって、反省しているとか挙げていました。犯人から私達に謝罪の手紙を送っている事が反省しているかのように言われていました。しかし、謝罪の手紙は弁護士さんのところに届いたと連絡がありましたが、私も、他の親戚も誰も読んでいません。
 受け入れていない手紙が、なぜ、罪を軽くする事になるのでしょうか。
 裁判で犯人が述べた最後の言葉も、裁判長から促されて言ったものでした。
 また、判決で言い渡しの後、裁判長が犯人に『被害者の冥福を祈るように』と言うと『ハァ?』と、他人事のように返事をしていました。
 犯人は事件を受け止めてもいないし、反省もしていないのです。
 裁判長は判決で、犯人が若く、前科がないことを挙げていました。でも、金目当てに2人も殺して、それで許されるなんて許せません。
 8000万円については、裁判の最初の頃から、賠償金の申し出がありました。親戚はみんな『金で解決しようとする態度だ』と怒っていました。
 示談を拒否している遺族もいます。その遺族の気持ちを考慮してくれているのか不安です。
 犯人が、子供達が行きているうちに刑務所から出てくると思うと不安です」

○新一郎さんの弟さん
「なぜ判決が無期懲役なのか分かりません。裁判長は犯人が反省している事を挙げていましたが、全然反省していないと思います。
 裁判では、弔いの気持ちがあるのかと聞かれたとき『死後の世界を信じてないので、2人を弔う気持ちはない』と犯人は述べていました。人をバカにしています。
 お前のお袋や弟が刺し殺されたときも、弔う事はできないと言ってやりたいです。
 犯人からの謝罪の手紙は読んでいません。裁判長は判決で、犯人が反省の言葉を述べていたと挙げていましたが、犯人から率先して反省を述べた事はありませんでした。
 8000万円の件ですが、犯人は事件の前に、犯人の母親の通帳から30万円を勝手に引き出して使おうとしていた事件を起こしています。このとき、家庭内で何らかの対処をしていたら、この犯罪は防げたのではないかと思います。
 (と、このように犯人の家族もこの事件に関わっているのだというニュアンスの言葉が述べられたあと)なので、犯人の父親が犯人に代わり、賠償金を支払うのは当然だと思っています。
 しかし、判決で、お金を払った事が減刑の理由として挙げられるのであれば、お金さえ払えば許されてしまうとも思えます。
 お金を受け取ったのは3家族のうち、1家族だけです。2家族の意向を無視しています。
 つぎに判決では犯人が若いと、年齢について挙げていましたが、若いのであれば許されるという気がしてしまいます。
 どうか裁判官がたには、1謝罪の手紙を書いた、2反省を述べた、3初犯である、4犯行当時21歳と若い、5倍賞金を払っている、これらの理由で減刑をすることがないようお願いいたします(ちょっとこの辺あやふやです)。
 強盗殺人で免罪符を与えられるのはよほどの場合だと思います。
 遊ぶ金欲しさに隣人を殺害し、何も知らず寝ていた老女も手にかける。初犯とは思えないほどです。
 遺族の苦しみは延々と続いています」

 この事件を一審から傍聴してきた自分の意見としては、、、、(本にも書いてましたが)
 ご遺族もおっしゃっているように、「2人のために冥福は祈らない」だの「バレなければ犯罪じゃないと思ってた」とか最後の最後に言っていたような被告人ですし、さらに逮捕当時は「取り調べ担当刑事に暴力を振るわれた」などウソと思われる記述を被疑者ノートにしていたり、母親から説得されるまで否認を通していたり(初犯かつ若年とは思えない狡猾ぶり)、鑑定後の被告人質問では「侵入する妄想をした」など精神状態に問題があるかのような白々しい発言を繰り返し、犯行後はヘタな芝居で記者になりすまし捜査状況を把握しようとしたり、挙げ句、殺して奪った金はパチンコに消え・・・
と、もうホントにどれをとっても、この人ダメだろう、という感じの被告人だったと思っています。
 なので、死刑じゃなかったときは心底驚きました。
 で、ご遺族と同じように「あ〜金さえ出せばいいんだ、なるほどな〜」と感じたものです。しかも自分の金じゃなくて親の金でも減刑されるんだ〜みたいな・・・。なんか司法にガッカリっつ〜か、そんな感じでした。でもお金は、被告人のお父さんと家族が苦労をして作った金なのであって、被告人は被害者のために何をしたかというと、手紙を書いただけです。
 わたしも被告人から反省は感じ取れませんでした。

 そういえば、ちなみに、私がこっそり傍聴し続けている仙台の刑事裁判(控訴審)ですが、ご遺族から民事訴訟を起こされ、なんと驚きの2億7000万円の支払いが言い渡されています。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090127/crm0901271904028-n1.htm
↑でもこの事件は被害者の男性がちょっと・・・という、イワクつきの事件なのですが。。。
(次号のマーダーウォッチャーに掲載される予定です)

 なので、今回のように、刑事の裁判が進行中のときにお金を受け取るよりも、全て終わってから民事訴訟を起こした方が、被害者やご遺族に取っては有利なのかもしれないと感じました。

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で、冒頭に書いた「早起きは三文の得」の話ですが・・・あまりにも恐ろしいので1月のイベントでお話しします!(と、引っ張る)

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