宮崎県の家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」の防疫業務で、作業員が感染を防ぐ消石灰に触れてやけどをしたり、吸い込んでのどの痛みを訴えたりする被害が増えている。家畜の殺処分や埋却現場では消毒用の消石灰を大量に散布し、ウイルスを封じ込める必要があるためだ。県は各地の保健所を通じて、畜産農家や住民にも体調不良を訴える人がいないか調べている。
県は感染の疑いのある家畜が初めて確認された4月20日から、職員延べ約3万人(6月13日現在)を発生地域に派遣。現地入りした職員を対象に5月末までの健康状態を調べたところ、消毒剤による体調不良は133件に上った。内訳は「消石灰によるやけど」が83件、「消毒液による皮膚の炎症」が50件だった。
殺処分や埋設には畜産農家や自治体職員、獣医師、農協職員などが参加。作業前には、消石灰や消毒液が皮膚に付着すると炎症を起こす恐れがあることを伝え、吸引しないよう呼び掛けている。
作業員は防護服や手袋を着けているが、消石灰が手首から手袋の中に入り、大量の汗と反応してやけどをすることがあるという。暑さで作業員がマスクを外し、消石灰を吸い込むこともある。
県によると、これまで防疫作業で骨折したり、消石灰によるやけどで手術が必要になったりした重傷者は3人。県職員への調査では、頭痛、発熱44件▽腰痛35件▽すり傷12件▽打撲7件‐などの報告も寄せられ、慣れない作業で疲労が蓄積している状況がうかがえる。
県内では、処分対象の家畜約27万6千頭のうち、まだ約4万5千頭が残っている。県は「個人差はあるが、消石灰を大量に吸い込むと呼吸器に影響が及ぶこともある。けがや事故を引き起こさない手順を再度検討したい」と話している。
=2010/06/24付 西日本新聞朝刊=