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[読売社説] はやぶさ帰還 歴史的快挙を次に生かそう(6月15日付・読売社説)
[読売社説] はやぶさ帰還 歴史的快挙を次に生かそう(6月15日付・読売社説)
宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ」が帰ってきた。宇宙開発史に残る快挙と言える。
2003年5月に地球を出発した。05年11月に3億キロ・メートル離れた小惑星イトカワに着陸し、砂などのサンプル採取を試みた。帰還まで、宇宙の旅は7年の長きに及んだ。
初めて月以外の天体に探査機が着陸して帰還したことになる。
はやぶさ本体は大気圏突入で燃え尽きた。採取したサンプルを収めるカプセルは突入前に分離、豪州の砂漠に着地した。日本に運び内部を確認する。
小惑星の砂や石は、酸化などが進んだ地球の石と違い、太陽系の初期の状態に近い。太陽系の歴史を探るヒントになるだろう。
残念ながら、装置の不調で確実にサンプルが採取できたかどうか分からない。だが、着陸時に舞い上がった砂がカプセル内に入った可能性はある。
そもそも帰還自体が奇跡だ。地球―太陽間の40倍にあたる約60億キロ・メートルの飛行で、機体は各所が故障し、満身創痍(そうい)だった。
まずイトカワ離陸後に燃料が漏れた。制御不能になり、通信も途絶した。06年、幸運にも復旧し帰路についたが、長期の飛行で、ぎりぎりの運用が続いてきた。
活躍したのは、搭載された日本独自の新型エンジンだ。
イオンエンジンと呼ばれる。高圧ガスを噴く化学エンジンなどと比べて推進力は小さい。地上で1円玉を動かす程度の力だが、少ない燃料で長期間動く。これが、のべ4万時間、機体を制御した。
小惑星着陸を成功させた自動制御技術とともに、技術の高さを世界に示した。海外の探査機や衛星への売り込みも期待される。
心配なのは、次の計画だ。開発に約130億円をかけた「はやぶさ」の教訓を生かし、ほぼ同じ規模の予算で、別の小惑星の高度な探査を目指す「はやぶさ2」の開発が滞っている。
民主党が進める高校無償化に4000億円近くかかり、そのしわ寄せで、文部科学省の宇宙予算が大幅に削られたためだ。はやぶさ2の今年度予算は、政権交代前の概算要求額17億円が、3000万円まで圧縮された。
ばらまき予算よりも、意義のある計画に予算を投じるべきだ。
地球と小惑星の位置関係を考えると、次の探査機までに10年以上の空白期が生じかねない。経験が風化してしまう。貴重な技術を次世代につなぎ、発展させる取り組みを後退させてはならない。
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