きょうの社説 2010年6月25日

◎公立高推薦枠縮小 学力重視の流れに沿う
 石川県内の公立高入試で、推薦枠の縮小傾向が鮮明になってきたのは、学力重視の流れ に沿う望ましい動きである。2011年度入試では、全日制普通科で新たに6校が推薦入試を取りやめ、この3年間で廃止は11校となる。

 高校の推薦入試は、受験生を多面的に評価する狙いのもとで1980年代から導入が進 み、専門学科から普通科へと広がった。だが、学力を問わない推薦枠が拡大すれば「勉強しなくても進学できる」といった意識も広がり、ひいては中学全体の学力低下につながりかねない。

 全国学力テスト実施や「ゆとり教育」からの転換をめざす新学習指導要領への移行など 、学力向上の取り組みは教育界の大きな潮流である。高校入試もそうした観点から見直しが求められている。

 県教委は普通科の推薦枠について、一部で定員の30%以内になっていたのをすべて2 0%以内とし、専門学科は上限を50%から30%に引き下げる。普通科の推薦入試は2008年度に21校まで増えたが、09年度は19校、10年度は16校と減少した。来春入試で6校が廃止すれば残りは10校となる。総募集定員に対する推薦枠の割合も、2005年度の24・0%から09年度は21・5%まで下がった。

 推薦入試は、調査書(内申書)と面接、小論文などの評価で選抜し、学力試験は原則行 わない。スポーツや芸術などを得意とする生徒には有利な仕組みといえ、多様な能力を評価するプラスの面はある。

 だが、入試の本来の姿は、受験生が同じ条件で競い合うことであり、とりわけ進学指導 を重視する高校では一般入試の合格機会を広げる必要がある。高卒者を受け入れる企業からは、基礎学力の不足を指摘する声もあり、専門学科でも入り口段階で一定レベルの学力を求めるのが望ましいだろう。

 推薦入試は中学校側の裁量で推薦する生徒を決めるため、学校によって基準に差が生じ る問題も指摘されている。縮小は全国的な流れにあり、すでに一般入試に一本化した県もある。県教委も縮小による効果を見極めながら、入試制度の一層の改善を進めてほしい。

◎IWC総会決裂 存在意義が問われている
 モロッコで行われているIWC(国際捕鯨委員会)総会は、捕鯨国と反捕鯨国の主張を 取り入れた議長案をめぐって紛糾し、加盟国間の合意が得られないまま議論が打ち切られた。日本沿岸での商業捕鯨再開に道を開く議長案は、来年以降の総会に先送りされる。反捕鯨の急先鋒であるオーストラリアなどが強硬な姿勢を崩さなかったからである。

 IWCは「鯨類資源の保存と有効利用、捕鯨産業の健全育成」を目的に設立された。ク ジラを環境保護のシンボルに祭り上げ、「一頭たりとも捕獲すべきではない」と主張するオーストラリアや欧州の一部の国との交渉は不毛であり、空しさが募るばかりである。IWCの理念は既に形骸化しており、その存在意義が問われているといえよう。

 こんな状態が続くならフィリピンやカナダなどと同様、IWCからの脱退を選択肢とし て考えてもよいのではないか。ノルウェーのようにIWCにとどまったまま、日本の自主的判断で沿岸小型捕鯨を再開する道もある。

 今回のIWC総会は、画期的ともいえる議長案に注目が集まっていた。2009年度で 約850頭だった南極海での調査捕鯨枠を、今後10年間で200頭まで減らす代わりに、禁止されていた日本沿岸でのミンククジラの捕獲を認める内容である。

 ニュージーランドなど一部の反捕鯨国もこの提案に基づく議論を受け入れていたが、オ ーストラリアなど強硬な反捕鯨国は、たたき台の議論すら認めなかった。オーストラリアは先月末、日本の調査捕鯨廃止を求めて国際司法裁判所に提訴しており、そもそも話し合う気がないのではないか。

 IWC科学委員会は、南氷洋のミンククジラの生息数を76万頭と認め、毎年2千頭か ら4千頭程度を捕獲しても何の影響もないと結論付けている。こうした科学的根拠を無視して「捕鯨は野蛮」と言い続けている一部の反捕鯨国と、議論が成立するだろうか。1年間の「凍結期間」の間に、歩み寄る気配が見られぬなら、IWCに見切りを付ける潮時かもしれない。