殺人事件で起訴され、無罪を主張している男の裁判で、大阪地方裁判所は、判決に先立って有罪か無罪かを決める異例の方法で審理を行い、23日、有罪と判断したうえで、刑の重さを言い渡すことになりました。裁判員裁判にとっても、事実認定と刑の重さをわかりやすく仕分けする方法として注目されます。
この事件は、去年4月、大阪・中央区で、インターネット広告会社の36歳の社長が殺害されたもので、殺人の罪で起訴されている元社員で韓国籍のコウ・スンボン被告(28)は「別の男による犯行だ」と無罪を主張しています。裁判員制度が始まる前に起訴されたため、裁判官だけで審理され、大阪地裁の杉田宗久裁判長は、有罪か無罪かの事実認定を先に行ってから、有罪の場合、後に刑の重さを示す異例の方法で審理を進めてきました。23日の法廷で裁判長は、被告は有罪との判断を示したうえで、刑の重さの審理に入り、検察が懲役20年を求刑しました。被告の弁護士は、特に意見を述べず、裁判は23日で結審し、来月2日の判決で、刑の重さが言い渡されることになりました。裁判員裁判では、被害者の感情などに影響されずに、有罪か無罪かを的確に判断することが求められており、大阪地裁の審理の進め方は、事実認定と刑の重さをわかりやすく仕分けする方法として注目されます。関西学院大学法科大学院の川崎英明教授は「これまでは事実認定と刑の重さに関する証拠が混じった状態で審理されてきたので、予断を防ぐ意義深い試みだ。今後、裁判員裁判での運用の仕方などについて議論を深める必要がある」と話しています。