どれだけ努力しても逃れようもない距離まで近付いたミミズが、唇に触れた。 
(うぐっ、いっ…いやっ……!) 
ネタネタしたミミズの口先とキスをする。 
(気持ち悪…いっ……) 
ねっとりした体液の糸を絡ませながら、ゆっくり唇が抉じ開けられる。 
それはまるで、ディープキスのような行為。 
「むがっ、がぼぼぼぼっ、ぐぇっ!!」 
 
秘部にミミズを挿され、口から吐き出している菊花は…… 
「ぐちゅっ、びちゃっ、れろ……む、ふぐぅ、うっ…んぅぅン、ふぅ、はあぁぁ」 
嬉しそうに顔を揺すって、ますます私にミミズを近付けてくる。 
「うっ、ううっ、んんんっ、い、いやぁぁ……!」 
蕩けそうな表情の菊花から、嫌悪は感じられない。 
(本当に、気持ちいいの……?こんな事が、気持ちいいの!?) 
 
いったい菊花の躰のどこを通ってきたんだろう。 
菊花の肉を裂いて、口から吐き出されたように見えるミミズから 
なぜか血の臭いはしない。 
あるのは、熟しきった果実や、満開の花が出すような 
キツく、どこか甘さのある、クセのある臭い。 
(これ……なんの、臭い…なの……?) 
それは妖魔が出す臭いのようにも、人間の臭いのようにも思えた。 
 
上下で食い縛った歯列の間、強引に隙間を作り 
舌の上へと、喉の奥へと、ミミズの頭が入ってくる。 
「ふぐっ……おっ、おえぇっ!!」 
(やだ、汚いっ!うぅっ、気持ち悪…い……顎が、外れ…るぅ) 
舌の上いっぱいに広がる粘液のまずさ。 
まずくて、嘔吐感が込み上げて、胃の中のもの全部吐き出してしまいたい。 
 
「ぐぅっ、んぐっ、うっ、ぐぐぐぐっ!!!」 
喉ちんこをミミズの頭が突いた。 
(む……りっ!) 
涙がどっと溢れて頬を伝う。 
とても口内には収まりきらない、唾液なのか妖魔の体液なのか分からない液体が 
ミミズの頭と、唇との間に強引に隙間を作って、ドロドロ流れ出した。 
(いやっ、これ以上は、死んじゃうっ、息がぁ……あぁぁ、息、できない!) 
苦痛ばかりに犯される思考を、止めるだけの理性がない。 
辛くて、苦しくて、口もお尻も気持ち悪くて、もう……。 
 
(首から上も……腰から下も……いらない) 
どうして私の肉体は、心臓だけじゃないんだろう。 
こんなに苦しくて辛いのに、胃が。 
胃だけが、熱くて苦しい。 
重い。 
(胃……の、奥で、熱く…なって…る、の……?) 
 
何かが胃の奥底深くで、発熱していた。 
「ぐっ、ごがっ……」 
アレだ。 
さっき菊花から口移しで飲まされたもの。 
(あの、妖魔の亡骸が、あ…熱い!全身が……あ、熱く、なるぅっ) 
 
ズリッ……ズズズッ、ジュグズズッ!! 
「んみ゛ぎぃっ!!」 
そのヌルヌルした表面で喉ちんこを擦りながら 
ミミズの頭が喉から胃の中へと、一気に侵入してきた! 
「むぎぎぎぎっ、いぎっ、おぶっ、ごぉっ、おぁっ、んごごっ、ぐっ」 
食道を擦りながら熱く熱く煮え滾った胃の中にミミズの頭が飛び込み。 
 
『………バクンッ!』 
 
「っ!!!」 
胃液や消化されかけた食物ごと、妖魔の亡骸を飲み込んだ。 
(胃……胃を、犯され、てるぅ……) 
 
ズビュズビュッ、グブッ、ズヌグボオォォォォッ!!! 
「―――――ッッ!!!」 
私の中の妖魔を飲み込んだ事で、より一層太く、ミミズの胴体が肥え太った。 
 
(……わ、わかっ…た) 
菊花が飲ませた、アレ。 
アレはきっと、餌。 
ミミズの贄となり、ミミズの活動を促進する餌だ。 
 
ズモッ…グモモッ、ヌプッ、グプッ……グチュッ、ニチャッ。 
「んむぅぐうぅぅうぅぅぅぅおぉぉぉっっ!!!」 
 
ミミズが、胃を、突き抜けた。 
 
(死ぬっ……壊れるっ!内臓がっ、千切れるうぅうぅぅっっ!!!) 
 
腸の中には、蛇の頭。 
今もグチュグチュ蠢き続ける、はらわたを漁る大蛇。 
(いやあぁぁっ!いやああぁぁあぁぁぁぁっっ!!!!) 
その大蛇とミミズが出会ったらどうなるのだろう。 
ウロボロスの輪のように、蛇とミミズが食い合ったりするのだろうか? 
私の、肉体の中で……! 
(そんなのっ、絶対にぃ…いやあぁぁぁ) 
これ以上、私の肉体を妖魔の好きにさせたくなかった。 
だけど……。 
 
ズブズヌッ!ヌププッ、グッ! 
「んもがあぁぁっ!ぐっ、うみ゛いぃぃっ!!」 
なぜ? 
どうして? 
ミミズと蛇は、肉壁を隔てて擦れ違う。 
「ぐっ、うっ!」 
 
腹が今まで以上にボコッと膨れる。 
目の前にいる菊花の腹と同じ……ううん、それ以上かもしれない。 
苦しい。 
お腹がいっぱいで身動きが出来ない。 
それなのに、まだまだミミズは私の中へと入ってくる。 
この肉体に自分の胴体を通そうと、愉しげにうねっている! 
そして……。 
 
(助、け……) 
その祈りを、最後まで考える事すら出来なかった。 
 
ビチビチビチビチビチビチビチイィィィィッッ!!! 
「―――――――ッッッ!!!!!」 
 
 
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