ビチャッ、ビチビチッ、ボトッ……。 
生々しく赤い鮮血が、男が手に持った塊から滴っていた。 
 
「………ぃ……ひぃ……は、ぁぁ……」 
完全に、思考は停止している。 
 
「おお……これが、不老不死の秘密と言われる、女の肝か」 
「見事な子宮ですね……ははっ、卵巣が垂れ下がってますよ」 
 
私の内臓は、子宮は……男達の手で、引き抜かれた。 
 
「………………」 
 
思考は、停止している。 
閉じない瞳は虚ろなまま、遠い天井の向こうを眺めていた。 
 
「………ぁ………か………」 
 
「普通の女ならば、とっくに死んでいただろうな」 
「でもすぐに新しい臓器が生えてきますよ。 
 コイツの体液は、特別ですから」 
私を電撃で焼いた妖魔が、頭を撫でられているのが目に入った。 
 
私、は、停止、して、いる。 
 
視界に映るもの、耳や鼻で感じるもの、全身の神経で感じるもの。 
その全てが、私の中で停止していた。 
 
「ところで、この汚いクソガキはどうしますか?」 
「例の場所に繋いでおけ。我々のような、か弱い人間の手には余る生き物だ」 
「ははは、まったくですね。了解しました」 
 
誰が、か弱いというのだろう。 
 
(…………きくか) 
 
一番恐ろしい生き物は、妖魔なんかじゃない。 
妖魔すら飼い慣らし、何百年も生きてきた退魔師の私達を陥れ 
それでも、自分達を『か弱い』などと表現できる。 
 
(菊花は、どこ…に………いる、の?) 
 
人間ほど恐ろしい生き物は、いない。 
 
(……き…く、かぁ……) 
 
何もかもが麻痺しきった心と躰で 
私は、世界でただ1人の、私の仲間の姿を求めていた……。 
 
 
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