ズグッ……ズズズズズズズズッ! 
「がっ……―――――――ッッ!!??」 
 
一瞬、何をされたのか分からなかった。 
目の前が真っ赤になるほどの激痛。 
そして妖魔の頭を入れられた時とは違う、独特の圧迫感。 
太い、男の腕。 
白い手袋。 
……白くなる、視界。 
 
「ぁ……ぁ、が、ぁぁ……がが」 
引き攣った、カエルの潰れたような声が、ひりつく喉から漏れた。 
男の手が、私の膣内に入っている。 
両手を開いたまま、手首までが入っている。 
 
ジュブッ、グズッ、ズググググッ、グジュウゥッ。 
「ひ…ぎっ……ぃ、ぃぃ……いぎ、いぅ、んがぁぁ……ッ!」 
私の苦痛の声など全く気にも留めない。 
 
「ふむ。子宮は思ったよりも手こずりそうだが……」 
膣の中で、男の手がグリッと回された。 
「ぎゃあああぁああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!」 
脳まで焼かれるような激痛に絶叫する。 
心臓が止まらない方がおかしい。 
(こん、なのっ……痛みで、死…ぬっ……!) 
散々に火傷を負わされた膣内で受けるには、あまりにも強すぎる刺激。 
ショック死していないのが不思議なぐらいだ。 
 
「むっ……すまない、少し手伝ってくれ」 
「はい」 
 
男の手が。 
……グチッ。 
膣内で。 
……ズグッ。 
子宮を。 
……ニチャアァァッ! 
掴んだ。 
 
「はっ、あっ……あぎいいぃいいいぃぃぃぃぃぃっっ!!!!」 
 
ダメだ。 
死ぬ。 
絶対に死ぬ。 
違う。 
どうして? 
(どうして、私、まだ、生きて……) 
 
「引き抜くぞ、引っ張れ!」 
「はいっ!」 
 
子宮の裏側にある内臓や筋肉が、骨にへばりついている。 
だから、子宮を掴んで引っ張られると、筋組織や骨まで痛い。 
痛いなんてものじゃない。 
(から…だぁ……ば、ば、ば、ばら……ばら、ばら……にぃ) 
 
ビチッ、ビキッ……ギチュギチギチッ! 
「ひっ……ぎぃっ……!」 
 
子宮が、伸びた。 
「がっ、アッ…あぁあぁぁぁ」 
筋肉が引っ張られる。 
内臓の裏側に張り付いている部分と、男の手が掴んでいる部分。 
そのちょうど真ん中の筋が、細くなっていく。 
 
(き…切、れる) 
 
内臓が2つに千切れていく。 
ブチッ、ブチンッと、子宮と内臓を繋ぐ組織が破壊されていく。 
1つの大きな塊でしかなかった子宮の組織が切れるたびに 
大きな1本の筋だったものが 
1本から2本、2本から4本、7本、9、10、14、27…… 
数え切れないほど細く大量の筋に分けられていく。 
そのたびに血管が切れ、膣口を通して、血液が私の胎内から失われている。 
 
(しきゅう…が……わ、わたしの、内臓…がぁ……) 
 
「よし、そのまま一気に引っ張れ!力強くだっ!!」 
「はいっ!」 
 
力が。 
男の引っ張る力が。 
(内臓、剥がれ、ちゃう……!) 
内臓が子宮を繋ぎとめる強さを、上回った。 
 
 
ジュブジュブグチュズチニュ、ギチギチギチッ、ブチイィィィッ!!! 
「ぎゃああああぁぁああぁぁぁあああァァァァァアアアアァァァァァッッッ!!!!!」 
 
 
断末魔。 
 
こんな声が、私の中にあったのか。 
絶叫を超える悲鳴をあげながら、いっそ滑稽なほどに、私は現実を受け入れていた。 
現実を受け入れる代わりに………一切の思考を、放棄した。 
 
 
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