「例の作戦、間もなく開始する様です…」
「聞いたよ。クロノから直々に報告があった」
「「…」」
「すまないな。あの怪我で任務を継続させてしまって」
「いえ…」
「お父様。今ならまだ間に合います!お父様が命令して頂ければ直ぐにでも任務の妨害をっ!」
「ロッテ…私は悲劇を繰り返さないために此処までやって来たんだ。復讐のためではないよ?」
「でも!」
「もう、終わりにしよう。悲しみの連鎖を…」
きっと彼もそうしていただろう。
私は、嘗ての部下の最後を思い出す。笑顔で逝った部下。未練はあったろう。愛する妻と息子を残して逝ったのだ。だが、彼の笑顔は多くの命を護ったという誇りで満ちていた。彼はきっと復讐を望んでいない。私だってそうだ。
「クロノが事件が終わったら伺いたい事があるそうだ。きっと八神はやての事についてだろう」
ヴォルケンリッターの共闘案が出てすぐに水無月彩への襲撃。クロノはそれを不審に思ったのだろう。地球の臨時司令部を知っているのは管理局の人間のみ。ヴォルケンリッターもその存在を知らなかったとなると身内を疑うのは当然と言える。それに八神はやての身元引受人を調べてしまえば直ぐに分かってしまう。
「お父様は何も悪くないっ!」
「いいや、罪の無い少女の未来を奪おうとした。鳥かごに閉じ込め孤独な思いをさせた。これ以上に無い罪だ」
「でも、それには理由が…」
「どんな理由があろうと、幼き少女を殺して良いという理由にはならない…分かっていたんだよ。こんな事はしてはいけないって事ぐらい」
だが、私にはこれしか方法を思い浮かばなかった…。
でも違った。あのイレギュラーは、水無月彩はゼロに等しい状況から最良の選択を探し出した。友を救いたいと言うだけの単純な思いで…。
時代は移り変わるもの。古き者は用無しと言う事だ。なら託そう。未来を、デュランダルを。せめて、若き者達が輝かしい未来を掴み取る事を願おう。
デュランダルは既にクロノに渡してある。彼なら上手くアレを使ってくれるだろう。良い方法で…。
『どうもグレアム提督。お久しぶりだね』
「「「っ!?」」」
「君は…」
意外な人物からの通信に目を丸くする。
「どうしたんだね?突然…」
私の知る限り、彼は出所後行方知れずと聞いていたが…。
『いや何、私の最愛の妻が貴方にどうしても頼みたい事があるらしくてね』
スーツしっかりと着こなした男は以前とは想像が出来ない程爽やかな笑みを浮かべながらとんでもない事をほざいてくれる。
妻、だと…。
「結婚していたのかね君は…」
奥さんも随分物好きな物だ。戦闘機人で13人の妹を造った元犯罪者もとい変質者と婚約を結ぶなど…。
当時の新聞記事を思い出しただけでも頭が痛くなる。逮捕したのが私と言うのだから尚更だ。
『婿養子だがね。義父上殿から会社を引き継ぎ頑張っているよ。家族にも恵まれて来年には春には子供が生まれる予定さ。養子が13人も居るのに大家族だねぇAHAHAHAHA!』
別にそんな事聞いていないのだが…。
それにしてもムカツク笑い方である。
『話が逸れたね。で、頼みと言う事なのだが…』
彼が話した内容に怪しみにながら耳を傾けると、その内容にまた目を丸くし、しばらくした後大きく頷き一人納得をする。
「ふむ、成程…分かった」
どう言う経緯で知り合ったかは知らんが、老人が一つ余計な世話を焼かせて貰うとしようか。
「アリア、ロッテ…やって貰いたい事があるんだが…」
彼女には、最後まで見届ける義務がある。
第11話「悪夢の終わり、なの」
――――Side Sai Minaduki
12月8日 AM 10:30
ハラオウン家
「お留守番、ですか?」
昨日から一夜明け、私はリンディさんの家に訊ねると、なのはちゃん達やはやてちゃん達の姿は無く、リンディさんだけが家で私を待っており、突然私にそんな事を告げてくる。
「ええ、この戦いはとても危険な物になるでしょうから。貴女を連れて行く訳にはいかないの」
「で、でも!遠くで見守るとかは…」
リンディさんだってアースラのブリッジで指揮を執ると言っていた。なら私も…。
「何が起こるか分からないから…それは許可できないの」
それは分かる。とても良く分かるのだが…。
「私が一緒でも駄目ですか?」
私の足元で待機しているアイリスがリンディさんに問うが返って来るのは同じ答え。『NO』だ。
「貴女の実力はシグナムさんに聞いているけど…彩さんが、ね」
「足手纏い、ですか…」
この身体だ。そう思われても仕方が無い。でも、ここまで関わったら私も最後まで見届けたい。この事件の結末を。破滅か封印。それとは別の答えを導き出した者としての責任もある。
「どうしても、ですか?」
「貴女は此処まで頑張ったわ…だから、後は私達に任せて、ね?」
どうやらリンディさんも譲るつもりは無いらしい。多くの命を背負っている。彼女にも立場と言う物があるのだろう。
「…はい」
私は大人しく引き下がる。リンディさんを困らせても仕方が無いだろう。
私は玄関までリンディさんに送られ、一歩外に出ると直ぐに振り返りリンディさんに一つだけお願いをした。
「皆で、帰って来て下さいね?」
「ええ、その時はパーティでもしましょうか?」
「祝勝パーティですか?良いですね」
「それじゃあ…また、後で」
「…はい、また後で」
パタンとドアの締まる音、そしてその後直ぐドアの向こうからはリンディさんの気配が無くなってしまう。アースラに向かったのだろう。
「…」
「母様…」
「少し時間が空いてしまいましたね。そう言えば最近図書館に行ってませんでした。少し付き合って貰えますかアイリス?」
本を読んでいれば少しは気が紛れるだろうと思い。私は悔しい気持ちを抑え込み、無理やり笑顔を作りアイリスに微笑みかける。
「…はい。何処までも御供します」
アイリスは何も言わない。私の気持ちを知っていても、知っているからこそ何も言わない。彼女は私と共に歩くのみ。
「でも犬の姿では入れませんね。アイリス、人の姿になって下さい」
「はい」
隣で魔力が膨れたかと思うと右手に小さな手の指が絡まってくる。
「人の姿になるのはこれで二度目ですね」
「家にはお父様とお母様がいますから滅多に人の姿にはなれませんし…すみません、肩身の狭い思いをさせて…」
「構いません。子犬の姿の方が私としては役得ですし」
「え?」
「お母様に抱きしめて貰えます。これは私のだけの特権です!」
はっきりと宣言するアイリスに私はきょとんとするが、直ぐにそれは笑みへと変わりくすくすと笑いだす。
「…ふふふ♪そうですか♪」
「そうなんです!」
気を遣ってくれているのか、それとも唯本心を言っているだけなのか、どちらにしても先程まで落ち込んでいた気持ちは少しだけ紛れていた。
「行きましょうか?」
「はい!」
手を繋いだまま私達は歩き出す。心の端には大きな不満と不安を忍ばせて…。
――――風芽丘図書館
「初めて来ましたが、大きいですね…」
「ですね。今まで色んな所に引っ越して来ましたが、この規模は珍しいです」
そう言うと私達は図書館の中へと入って行く。
・
・
・
「…っ!」
本を読み始めて30分は経過しただろうか。幾ら本を読んでも、読書に集中出来ない。頭の中はなのはちゃん達の事で9割以上占められていた。心配、不安、自分の無力感、疎開感、それらの全てが私の中で蠢いている。
分かってる。私が行っても何も意味が無い事ぐらい…。
目の見えない私が一緒に行った所で何もならない。寧ろ邪魔なだけだろう。シグナムさん達の力を疑っている訳でも無い。あの人達は強い人だ。約束通り必ず帰って来ると信じている。唯悲しいのかもしれない。一人蚊帳の外にされるのが…。
危険な事ふだというのは分かってる。私のためだと言う事も分かってる…。
でも、最後まで見届けたかった。例えこの目が何も映さなくても…。
「母様…」
「…」
心配そうなアイリスの声に私は何も返す事は出来ない。唯俯くばかりだ。
「あら?珍しく今日は一人…じゃなくて初めて見る子も一緒ね。お友達?」
「…工藤さん?」
最早聞きなれた女性の声。此処で司書をしている工藤詠さんが此方にやって来て声を掛けて来る。
「どうも、こんにちわ」
「…」
アイリスは何も話さない。工藤さんに接しようとしない所か何かに警戒しているような怯える様な、そうな風に思える。
「あらあら…嫌われちゃったかしら?」
「いえそんな事は…アイリス?どうしたの?」
「…何もないです」
答えになって無い返答。アイリスは短く答えると何も話さなくなる。それでも敵意を放つのを止めはいない。工藤さんはそんな事気にも止めず私に話しかけて来る。
「それでどうしたの?落ち込んでいたみたいだけど?」
「…そう、見えましたか?」
「ええ、どんよりとした空気が貴方の周囲に漂ってました」
それはまたご迷惑をお掛けして…。
「それで、何があったの?お姉さんに話してみなさい。何か解決するかもしれないわよ?」
気持ちは嬉しい。だとしても、魔法の事を話す訳にもいかない。私は適当に話を誤魔化す事にする。
「いえ、お友達に置いてけぼりになっただけですから…」
「…ふぅ~ん」
嗚呼、疑われてます…。
「その目が関係してるのかな?」
「…まぁ、そうですね」
「その友達と一緒に行きたかった?」
「…はい。でも、無理を言う訳にも行きませんから」
「貴女がそれで良いの?」
「…」
「不満は?」
「あります…でも」
私が行っても邪魔になるのは事実だから…。
私には『力』が無い。
私が望むのは『平穏』他人を傷つける『力』なんていらない。でも、今だけはそれが欲しいと…都合の良い事ばかり考えていた…。そんな事、許される筈が無いのに…。
「しょうがないって?貴女の顔にはそう書いては無い様だけど?」
「っ!?」
慌ててぺたぺたを自分の顔を触る私に、工藤さんは可笑しそうに声を殺して笑う。此処が図書館で無ければそれはもう盛大に笑い声を上げていただろう。
「ぷっ!くくくくっ!…本当に顔に書いてある訳無いでしょう?可愛いわねぇ」
「…っ!///」
「ごめんなさい。でも、それで貴女は本当に良いの?後悔はしない?」
勿論納得はいって無い。だが私が行ってどうなる?恐らく彼女達は私が居なくても作戦を成功させるだろう。結果は変わらない。観客が居るか居ないかの差ではないか…。
「…」
「…まぁ、答えを決めるのは貴女次第。はい、コレ」
工藤さんは私の手を無理に引っ張りだすと、掌に何か小さな物を置いてくる。私はそれを手に取り形を確かめると金属で輪の様な形をしていた。これは…。
「指輪?」
「のように見える?」
「違うんですか?」
「まぁ、指輪何だけどね」
ガクッ…
工藤さんはどうも人をおちょくって楽しむ癖がある様だ…。
「でもこの指輪には不思議な御呪い(プログラム)が籠められてるの」
「御呪い、ですか?」
まさかつけたら取れ無くなる呪いのアイテムじゃ…。
「何を想像してるかは知らないけど、呪いとかそんなんじゃないからね?」
な、何故私の考えた事が…。
「その指輪の名前は『リンク』。きっと貴女がその御友達のために何かしたいと願った時に応えてくれる筈だから」
「はぁ…」
「あら、信じて無い?フフフ、まあいいけど…それじゃあ、私は失礼するわね」
私の頭をぽむぽむ軽く叩くと、工藤さんはこの場から去って行く。
「ああ、最後に確認」
と思いきや、足を止めて私に最後にと質問して来る。
「行きたいの?行きたくないの?どちらか答えて」
真剣な声。多分、工藤さんは私の本当の気持ちを聞いているのだろう。此処は真実を答えなければいけない。なんとなく、私はそう思ってしまった…。
「…行きたいです」
「…そっか」
短い返事の後、工藤さんは今度こそこの場から何も言わずに去って行く。一体、あの人は何を言いたかったのだろう?
「…あの女性は」
「アイリス?」
「…いえ」
先程から様子のおかしいアイリス。工藤さんの事を気にしていた様だが…。
「それより母様。その指輪何か変わった所はありませんか?」
変わった所と言われても、私指輪なんて触った事なんてお母様の婚約指輪を興味本位で触らせてもらったぐらいしかないのだが…。
とりあえず慎重に用心深く指先を動かし指輪を確かめてみる。何の模様も飾りも無いリング、金属独特の感触、指で軽く弾くとキィンと言う音が私の耳に届く。そしてそれによって私の導き出した答えは…。
…分からないです!
工藤さんは何が目的で私にこんなものを渡したのだろう?
「…特にコレと言った特徴も無いですし…唯のリングですね」
「そうならいいのですが…っ!?」
「?」
何かに驚いた様な声を上げるアイリスに私は何事かと首を傾げるが、それは直ぐに理解する事になる。
近づいて来る2つの足音。図書館の中には何人もの利用者が居り、複数の足音が存在するが、聞こえて来る足音は私に向かって真っ直ぐに近づいて来ている。そしてこの気配。私はこの気配を持つ人につい最近あった事がある。
「…仮面さん?」
「だから、仮面じゃないってば」
聞こえて来たのは予想を反して女性の声。初対面の人にとても失礼をしてしまった。その女性の声を聞いて慌て頭を下げて謝る私。この気配、仮面の人に似ていたのだが…。
「す、すみませんっ!見ず知らずの方に失礼な事をっ!?」
「…謝る必要ありません母様。こいつ等は昨日母様を襲った連中で間違い無いですから」
「え?」
でも、仮面の人は男性だったような…。
「私は母様より更に鼻が良いです。騙されるとでも思っていたんですか?」
敵意剥き出しの言葉を二人に放つアイリス。しかし、アイリスの言う事を疑う訳ではないがこの人達が昨日の仮面さん達だなんて…。
「騙すつもりはないわよ。これが元々の姿。それに昨日の姿で来ちゃうと通報されちゃうじゃない」
「流石に、此処の世界の警察に補導される訳にはいかないんだよねぇ」
「自分達が怪しい恰好をしているのは自覚してたんですね。良かったです。あれがカッコいいとか思っている趣味が悪い連中だったら母様の半径1km以内に近づけさせませんでした。趣味がうつります。母様には美しい姿でいて貰いたいので」
ア、アイリスが毒舌です…。
「さ、流石にそれは心外なんだけどなぁ~…」
「もしかしてアレが少しでもセンスが良いと思っていたので?それは悪い事を言いました。すみません。謝るので母様から離れて貰います?」
「こ、この餓鬼っ」
「ロッテ落ち着きなさい…」
「ア、アイリスもっ」
ふるふると震える声で怒りを堪えるロッテと呼ばれた女性。これ以上何か言ったら即爆発してしまいそうだ。とりあえず私もロッテさんの御連れの人と同じくアイリスを宥めておこう。
「「…ふんっ!」」
見えませんが、きっとお互いにそっぽ向きあってるんでしょうね…。
頬を膨らませて視線を合わせようとしない二人の姿が容易に想像が出来る。
「話が逸れましたね。あの、どう言った御用件で?私達を邪魔をするのが目的でしたらもう…」
「知ってる。もう邪魔をするつもりは無いよ」
「だったら…」
なんで私に会いに来たのだろうか?もしかして報復…。
「私達は、貴女をお友達の許に連れて行くために此処に来たの」
「「っ!?」」
彼女が言った台詞は、私の予想を大きく上回る内容だった。私はその言葉を聞いて目を大きく見開き驚くが、直ぐに冷静さを取り戻し、目を細くして彼女に問う。
「それは、足手纏いの私をなのはちゃん達の許に連れて行くと言う事ですよね?それは邪魔をすると同義だと思うのですが?」
「ありゃりゃ、何言ってるのかねこの子は…」
あの、ぺしぺし頭を叩かないで下さい。というか何で皆さん私の頭を叩くんですか?叩きやすい位置にあるんですかそうなんですか?
「アンタは私達の邪魔をした。なら、責任を取って貰わないと」
「…何をするつもりだ?」
…アイリス、口調が怖いです。
さも言う私も少し視線が鋭くなっているかもしれないが…。
「アンタは元々あったシナリオを狂わし書き変えてしまった」
「貴女はこの物語を見届ける義務がある。紡ぎ手であり読み手である者の義務が、ね」
「…私に何をしろと言うんです?」
「何も、私達は貴女に唯見届ける事を望んでるだけ。それ以外は貴女の好きにすれば良い」
「…」
嘘は吐いていない様だ。でも、この人達の意図が読めない。私に何をさせたいのだろう?
「…母様を危険な場所に連れて行って危険な目に遭わせようとしてるとしか思えません」
「そのための使い魔でしょ?」
「他人任せですか。無責任ですね」
「貴女達に言われたくないわね。此処までシナリオを壊しておいて」
「っ!」
「それこそ貴女方の都合でしょう?母様は助けたい人のために頑張っただけの事です。貴女方にどうこう言われる筋合いはありません」
「そう?まぁ、良いけど…でもどうするのかなぁ?フェイトちゃんだっけ?あの子まだ全快じゃ無いのに…」
「え?」
「リンカーコアを蒐集されたのは昨日だからね。昨日の今日で回復する訳無いじゃない」
「そんな…」
「それで母様に何をしろと?フェイトさんの代わりに戦えと?」
「さぁ?私はそこまで聞かされて無いから」
「聞かされて無い?」
「そっ!まぁ、誰かは教えられないけどね」
「…」
「ますます怪しいですね。正体を明かさない人の言う事を従うとでも?」
「使い魔に聞いてるんじゃないわよ。私は主である水無月彩に聞いてるの」
「私に…」
「私が聞きたいのは行くのか行かないのかその答えを聞きたいだけ。どうするの?」
「…」
同じだ。先程の工藤さんの質問と。偶然なのだろうか?それとも、この二人に命令したのが工藤さんと言う可能性も…いや、だったら何でさっきそれを私に言わなかったのか。わざわざ二人に伝言を頼まなくても自分から伝えれば良いのにだ。それにアイリスが工藤さんを警戒していた。これも偶然?それは余りにも都合が良すぎる様な…。
「工藤 詠さんに頼まれたんですか?」
「「?」」
思い切って訊ねてみる。しかし二人は予想と違う反応を示す。
「誰?その人」
「私はそんな名前の人は知らないけど。この世界の人の知り合いはあんまり居ないし…」
私の勘違い?それとも二人が嘘を言っている?どちらだろうか。私には二人が嘘を言っているようには思えないのだが…。
「その人が何処の誰かは知らないけど、行くの?行かないの?早く答える3,2,1、はい!」
「い、いきます!連れて行って下さいっ!」
いきなり制限時間を付けられ問答無用で迫られた私は、慌ててちゃんと考えもせずに答えてしまう。
「はいOK♪んじゃ、行こうか」
掴まれる腕。はんば強引に引っ張られ椅子を倒しながら私は立ち上がり図書館の出口へと走り出す。
「ちょっ、まっ!?」
「時間が無いから急ぐよ~!」
「待ちなさいっ!母様を何処に連れて行くつもりですかっ!?」
「さっき言ったでしょう。オ・ト・モ・ダ・チの所よ」
彼女がそう言うと同時に私の身体は浮遊感に囚われ、図書館から一歩出た瞬間海鳴から姿を消した…。
――――Side???
「良かったのかい?君から聞いた彼女の性格からして争い事は向かない様だが…」
「良いんじゃない?彼女の本心では事件に関わりたかったようだし…それに、何も出来ないで待ってる方が辛いでしょう?」
「やけに彼女に入れ込むじゃないか…何故だい?」
「…何でかしら?他人の様な気がしなかったからもしれないわね」
「他人の様な気がしない?どう言う事だい?」
「さあ?私が聞きたいくらいよそれは」
初めて彼女に会った時、何か引かれるというか繋がっているというか、なんとも言えない妙な感覚に囚われた。今までに会った事は無い、全くの初対面だ。だと言うのに、私の足は彼女の許へと向かっていた。無意識にだ。
「運命、かしらね…」
「ほう?それは素晴らしいね。私も運命を信じているよ!きみと出逢えた事もまた運命さっ!」
隣で無駄に騒がしい夫を無視して少女が消えた場所を無言で眺める。恐らく、私が彼女に話しかけるのは今回で最後だろう。夫の事はもう終わった事だが、管理局に目を付けられたら色々と面倒だ。私も『平穏』を望んでいるのだから…。
だから、最後にこれだけは言わせて…。
「どうか、ハッピーエンドでありますように…」
私の呟きは、雲一つ無い青空に消えて行った…。
――――Side Signum
12月8日 AM11:40
管理外世界:荒野
「…」
誰も居ない荒野に私達は佇む。何も言わず、ただ黙って時が来るのを待つ。それは作戦の開始時間。この長き戦いの終焉を告げる時間…。
彩…。
私の思考は一人の少女に埋め尽くされていた。
平穏を願い、自分の身を挺して私達の幸せを願った少女…。
もうすぐだ。もう直ぐ終わる。そしたら、また一緒に遊ぼう。あの時の約束を果たそう…。
「…そろそろ始めようか」
長い沈黙をクロノ執務官が破る。それは、作戦の開始を意味した。
一斉に各々のデバイスを起動し騎士甲冑を、バリアジャケットを身に纏う。
「…フェイト。本当に大丈夫なのか?アースラで待機した方が…」
「大丈夫だよクロノ。少し魔法か使い辛くて、身体が重たいだけだから」
それはこれから始まる戦いにとっては致命的なもおとなるのだが…。
確かにテスタロッサの魔力は異質だ。他の魔導師に比べるなど馬鹿馬鹿しくなる位の…。例えそれが本調子で無くても並みの魔導師ではテスタロッサの相手に為らないだろう。だが、今回の相手は並みじゃ無い。異常なのだ。一瞬の油断が命取りになる相手なのだ。
「シグナム。大丈夫だから…私が、私達が彩の分まで頑張らないと」
「…そうだな」
此処には居ない少女の名前をテスタロッサが言うと、この場にいた全員が反応する。やはり置いて来たのが心残りなのだろう。だが、それは皆の相違なのだ。これ以上彩の平穏を壊す訳にはいかない。あの優しい少女に戦場の空気を吸わせてはいけない。慣れさせてはいけない。
「闇の書の項は残り1ページ。収集する対象だが、本局から許可を得てこの魔物を蒐集する事となった」
そういうとクロノ執務官はポケットからボールの様な物を取り出して私達に見せて来る。
「「「「「「「?」」」」」」」
ボール、としか言い様の無い丸い球体。これが収集対象とでも言いたいのだろうか。
「ある管理世界の博士から3つのボールの中から一つ好きな者を選べと言われてね。散々迷った挙句このボールを選ぶ事にした」
こいつ、何気に主人公の権利を得ていないか?
「も、モン○ターボール…実在したんだね。驚きだよ」
「知ってるのか雷dんじゃなかった…なのはっ!?」
妙なテンションで高町に訊ねるヴィータ。お前は今何を言おうとした?
「確かこの中央のボタンを押せば…わわわっ!?出て来たよっ!?」
パカリとボールの蓋が空いたかと思えば赤い光が飛び出し地面へと着地する。そして、光から現れたその姿は…。
「ピ~カ~ピ○チュウ♪」
「きゃ~♪ピ○チュウだぁ♪」
黄色い鼠を見た途端、黄色い鼠に黄色い悲鳴を上げながら抱き着く高町。
「…何故かな?この子とは何か近しい物を感じるよ」
「電気鼠だからな」
成程、凄く納得した。
「…充電出来るかな?」
…幾ら不調だからと言って電気でリンカーコアを充電できる訳無いだろう。
「そろそろおふざけは終わりにしろ…始めるぞ」
ザフィーラが一歩前に出て来るとピ○チュウを口に咥えてシャマルの前に連れて行く。
「ピカ?」
「えっと…罪悪感が…」
「今更だろうがよそれは」
「今までどれ程の魔獣を蒐集して来たと思っているんだ?確かにこんな可愛らしい魔物は初めてだが…」
「…シグナムは全然平気そうだね?」
テスタロッサが不思議そうに私に聞いて来るので、私はキッパリと思っている事を口にする事にした。
「彩以上に可愛らしい物は無い。故に罪悪感など感じん」
―――………。
世界が停止する…。
「…?どうした?」
「おめぇ…そこまで…」
「妙に彩ちゃんに熱心だと思ったけど…」
「…病気だな」
「あははは…愛は人それぞれだよね」
「物は言い様だな、ユーノ」
「…うるさいよ」
周りの反応が妙だが…何か可笑しな事を言っただろうか?
「あのさ、いい加減始めないかい?」
痺れを切らしたアルフに指摘しされ、漸く作戦を開始する私達。
「では、蒐集します…」
「ピカ~♪」
「ごめんなぁ?私達の勝手な都合で…」
主が鼠の頭を撫で頭を垂れる。そんな主を見て鼠はピコピコと主の許へ近づき下げられた頭をぺしぺしと叩いて笑った。
「ピ○チュウ~♪」
気にするな。こちらが勝手に解釈しただけかもしれないが、私にはこの鼠はこう言った様な気がした…。
「ごめんなさい…蒐集!」
シャマルが闇の書を手にそう告げると同時に、鼠からリンカーコアが摘出され、闇の書がそれを蒐集した。ページは666項。それは闇の書の完成を意味していた…。
「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
闇の書から黒い光が溢れ出し、膨大な魔力が膨れ上がって行く。これは…。
「暴走が始まっているっ!」
そう、暴走だ。これまで幾多の戦いの果て、それを何度も私達は経験してきた。そしてその最後は必ず破滅が待っている。このままでは主はやては今までの主の様に…。
「はやて!」
「うん!私の出番やなっ!?」
闇の書を、ぎゅっと両腕で抱きしめ目を閉じる主。しかし、黒い光は止まらない。寧ろ書から溢れ出して来た闇が主を包んで行っている…。
「はやてっ!?」
「駄目なのかいっ!?」
「いや、まだだよっ!たぶんこれは、闇の書が持ち主を主と認証するための前段階何だと思うっ!それより皆離れてっ!闇に呑まれるっ!」
「馬鹿言ってんなっ!はやてを見捨てれる訳ねぇだろっ!?」
「ヴィータちゃん落ち着いてっ!今はユーノ君の言う通り離れてっ!」
「っ!」
高町に止められ引っ張られる形で主から離れるヴィータ。私達も闇から逃れるため主から距離を離す。
闇が完全に主包み込み、黒い球体となる。此処までは今までと同じ、彩の…私達の予想が外れれば、闇の書は主を喰らい、暴走を開始するだろう。
そうすれば…私達はどうなるのだろうな。
主の消失と共に消えるのか?それとも、闇の書の消失と共に?どちらにせよもうあの幸せな生活には戻れない。主と、家族と、彩と微笑み合っていた頃には戻る事が出来ない。つまり、今の私の死だ…。
それは、嫌だ…。
今の生活を失うのは嫌だ。今の暖かな感情を失うのは嫌だ。これから訪れるであろう未来を失うのは嫌だ…。
主…。
「お願いします…」
護るべき主に縋るなど守護騎士として言語道断。だが、今は…今だけは縋らずにいられなかった…。
――――Side Hayate Yagami
???
暗闇の世界。全てが暗闇に支配され暗闇しか存在しない世界。その世界には何も無く、私は唯一人闇の中を漂っていた…。
此処は…闇の書の中?
『その通りです。我が主…』
突然暗闇の世界に響く凛とした女性の声。私はこの声を聞いた事がある。銀髪で真紅の瞳を持つ女性。そう、彩ちゃんが言っていた闇の書の管制人格だ。
「アンタが闇の…夜天の魔導書さんか?」
『…その名で呼んでくれるのですね』
「彩ちゃんが教えてくれたんよ。それで、夜天の魔導書さんを助けてって頼まれた」
『そうですか…彼女が』
夜天の魔導書は何処となく嬉しそうに呟く。
『此処に主が来たという事は…見つかったのですね?』
「うん。彩ちゃんが頑張ったからな!」
『…ありがとうございます。主』
「辛かったやろ?勝手な都合でプログラム書き換えられて、危険物扱いされて…名前を変えられて…」
『はい、はい…っ!』
夜天の魔導書は何度も頷くと瞳から涙を流す。それは悲しみからなのか、嬉しさからなのか私には分からない。永遠の時の中で苦しんできた彼女の気持ちを私が理解出来る筈が無い。でも、その苦痛から介抱してあげる事は出来る…。
「終わりにしよ?今度こそ終わりに…もう、誰にも闇の書何て呼ばさへん。災厄扱いさせへん。今日、此処でアンタは生まれ変わるんや」
『主?』
「だから、新しい名前をあげる。災いやなく。皆に祝福を与える存在に…」
私は彼女に手を伸ばし彼女の涙で濡れる頬に触れる。
「祝福のエール…リインフォース」
闇が、悪夢が晴れる…。
――――Side Signum
「何も起こらないじゃんか…あの中はどうなっているんだよっ!?」
あれからどれ程の時間が流れただろうか?10分?それとも30分?いや、それ以上か。どちらにしても主を包みこんだあの漆黒の球体には一切の変化は見られない。
「駄目だっ!前例が無いから何が起こるか分からない。アレに触れるのは危険すぎるっ!」
スクライアの言う通りだ。今まではこの様な事など無かった。だからこそ何があっても可笑しくない。些細な行動でも、それが原因で大惨事を引き起こす原因になりかねないのだ。
「…私達には、唯見守る事しか出来ないんですね」
「でもっ!」
「ヴィータ、主を信じろ」
それに、我等には祈る他出来る事は無いのだから…。
「む~っ!叩き割るって方法は…」
「アルフ、大人しくしてようね?」
「わ、わかったよぉ…」
とんでもない提案はアルフの主であるテスタロッサにより阻止される。無論、誰も賛同する筈も無いが。
「でも、結構時間が経ってるのに何にも変化が無いと…」
「はやて…大丈夫かな?」
「大丈夫に決まってんだろっ!」
「ヴィータちゃん…うん、そうだよね。きっと大丈夫だよね」
『でも、あの球体の魔力値はドンドン上昇してる』
アースラで此方の状況を見守っているエイミィが会話に参加して来てそう告げて来る。
「ああ、もう暴走段階に入っているのか…それとも」
「はやてちゃん?」
「ああ、はやてが何か仕出かしている可能性もある…が、恐らく前者だろうな。浸食のスピードは遅いが前回の闇の書事件の暴走時と似ている」
「…」
それを聞いてこの場に居る全員が表情を歪める。もし、主が管理者権限を取得するのに失敗すればその先待っているのは前回と同じ結末。つまりそれは…。
「…お前達、そろそろ気を引き締めろ」
「ザフィーラ?」
「…始まるぞ」
静かに、しかし力強さの籠るその声でザフィーラは告げ、そして一斉に球体へと視線が集まりそれは起こった。
「…あ、球体にっ!?」
「…罅?」
球体のからピシリと音を立てて亀裂が入る。それはまるで雛が卵を割って出て来る姿を重ね合わせてしまう様な光景…。
出来た罅の隙間から光が漏れ出し、段々とそれが広がり始める。
中央から出て来た罅は徐々に上へと昇って行き。そして、天辺に辿りついた瞬間…。
白い光が球体を突き抜き、天へと昇って行ったのだ。白い光の後を目で追いこの場に居る全員が空を見上げる。そして、皆の視線の先にあったものは…。
「主っ!」
騎士甲冑を身に纏った主の姿だった。
「はやてっ!はやてええええっ!」
主の姿を見た途端主に向かって飛び出し、抱き着くヴィータ。主はそれを笑顔で迎え入れると両手でそれを抱きしめ優しく頭を撫でた。それを見てこの場にいた者達は次々に主の許へ駈け寄って行く。
「良かったぁ、良かったよぉ…はやてちゃん」
「頑張ったね。はやて」
「やったじゃないかっ!」
「はやてちゃん…やりましたねっ!」
「流石です。主」
「良くぞ御無事で…」
「嫌やなぁ…皆褒め過ぎやで?」
皆に囲まれ、四方から褒められ照れる主。そんな微笑ましい光景に場の空気が軽くなるがまだ終わった訳では無い。これからが本番なのだ。
「すまないが話は後だ」
「クロノ、空気読もうよ…」
「だから!そんな事言ってる場合じゃないんだっ!見ろ!球体をっ!」
クロノ執務官が指差す先には、割れた部分から先程とは違いどす黒い靄が物凄い勢いで噴き出している球体があった。
『あれが、切り離されたバグの部分です』
この声は…。
「リインフォースや。新しい家族やで?」
「…成程」
「良かったわね?新しい名前を貰って」
『…はい』
「これより切り離されたバグを破壊する。皆、覚悟はいいな?」
「うん!」
「了解」
「…始まったか」
静かに呟かれたザフィーラの言葉が、始まりの合図となった。
球体から溢れ出した黒い靄が少しずつ収束して行き、異形の姿へと形を変えていく…。
「球体の形が…変わってる?」
「…暴走が始まる」
今までに蒐集して来た化け物が影響しているのか、所々に見覚えのある物が存在する。頭部、背中にある翼、鋭い爪、牙、身体の彼方此方から触手。そして、中央には女性を象った…いや、あれは。
「…彩?」
馬鹿な…何故?
『…恐らく、彼女の魔力が大きく影響しているのでしょうね。項を100も埋める魔力です。何ら不思議ではありません』
「うわ、やり難ぇ…」
「彩本人じゃ無い。戦闘に集中するんだ」
「だけど…」
「…」
なかなかに厳しい事を言う。此処に居るの人間の殆どが彩と親しい物ばかりだと言うのに…。高町達も彩に瓜二つのアレに戸惑っている。あの状態では大きなミスを仕出かしてしまう可能性がある。それは死に繋がる。しかし、だからと何もしないと言う訳にもいかない。何もしなければ此方がやられるのだから。仕方ないと私は戸惑う高町達声を張り上げて喝を飛ばす。
「どうしたっ!?彩との約束を忘れたのかっ!?帰るのだろう?彩とまた遊ぶのだろうっ!?」
そう、彩が待っているのだ。私達の無事を祈って。ハラオウン艦長からパーティの話を聞いている。帰ったら彩を一緒に皆で楽しむんだ。それが彩への恩返しなのだ。
「彩が…待って居るんだぞっ!?」
「「「っ!」」」
空気が変わる…。誰もが武器を握り締め、情け無い表情から戦意に満ち溢れる表情へと切り替える。
「…やるよ、彩ちゃんが待ってるもんっ!」
「だね。今月末にはクリスマスパーティが控えてるんだっ!まだプレゼントも買って無いっ!」
「そうやなぁ、何買お?彩ちゃん、喜んでくれるやろか…」
「はやて、その前にコイツぶっ潰さねぇと」
「そうですよ。話はその後です」
…それで良い。
戦う準備が整うと同時に、まるで待ってかの様にバグ…闇の書の闇が、彩の形を象ったモノが唄い始める。まるで、苦しんでいるかの様に、悲しんでいるかの様に…。
「闇の書の闇…か。醜い姿だ」
まるで、夜天の魔導書を狂わした者の心を再現している様だ…。
「終わりにしよう…」
この繰り返される悲劇を、狂った運命を、此処で終わらせる。私達の手で。
戦いが始まる。最後の戦いが…。
「チェーンバインドッ!」
「ストラグルバインドッ!」
「縛れ!鋼の軛っ!」
何も無い空間から鎖と縄が、地面から青白い柱が突然現れて触手を拘束し、引き千切り、貫く。いきなりの先制、それによって奴の動きが一瞬止まる。
…動きが止まった!
「ちゃんと合わせろよっ!高町なのはっ!」
「ヴィータちゃんもねっ!」
ヴィータの言葉を合図に、高町達の攻撃が開始される。
「鉄槌の騎士ヴィータと!鉄の伯爵グラーフアイゼンッ!」
カートリッジをリロードし、グラーフアイゼンの形が大きなハンマーへと変形する。ヴィータがそれを振りかぶるとそれは更に大きくなり闇の書と並ぶほどの巨大なハンマーへと変貌する。そして、ヴィータはそれを敵に目掛けて振り下ろした。
「轟天爆砕ッ!ギガントクラークッ!!」
振り下ろされた鉄槌が、敵の防壁に激突。その激しい攻撃に耐えきれず、防壁に罅が入り音を立てて砕け散る。まずは一枚目。残るは3枚の防壁。
「高町なのはと、レイジングハートエクセリオン!行きますっ!」
そう名乗りを上げると、杖を天に掲げる高町。それと同時に足元に魔法陣が展開し桃色の光を放つ翼が高町の足に、杖に現れる。
「エクセリオン…バスタァーーーッ!!!」
魔法の名を叫ぶ高町だが、闇の書は攻撃をさせまいと鋭い先端を持った触手を伸ばし、高町にその複数触手を一斉に襲い掛からせる。質量を持った触手。幼い高町に当たれば当たれば致命傷は確実だろう。しかし、それは白き魔導師の相棒によって阻まれる事になる。
『Barrel shot.』
機械音と共に放たれる衝撃波。その衝撃波により触手共が引き裂かれ、闇の書の動きもその風圧によって封じてしまう。
「ブレイク…シュートッ!!」
膨れ上がる魔力の塊が5つに別れて一斉に闇の書に襲い掛かりまた防壁を破壊する。残り2つ…。
では、私が続くとしよう。
「剣の騎士。シグナムが魂…炎の魔剣レヴァンティン」
相棒を高く掲げる。陽の光を反射して輝く白銀の刃。我が半身にして我が魂…。
「刃の連結刃に続く、もう一つの姿…」
鞘を剣の柄合わせると同時にレヴァンティンの形が変化し弓へと変わる。
『Bogenform.』
弓を構え、右手に魔力を集中し矢を生成し闇の書に向けて照準を合わせ…。
「駈けよ!隼ッ!」
『Sturmfalken.』
魔力の塊である矢を放った。紫の光となって放たれる矢。一直線に飛ぶ矢は防壁に直撃すると巨大な爆発を起こし防壁を撃ち砕いた。
残り、1つ…。
「フェイト・テスタロッサ。バルディツシュザンバー…行きますっ!」
斧から金色の光を放つ大剣へ形を変え、テスタロッサは回転しながらその大剣を振り回しかまいたちを生み出し闇の書周辺の触手を薙ぎ払う。これで彼女の邪魔をする物は居なくなった。そう思われたが…。
私は、彼女の表情が苦痛に歪んでいるのを確かに見た。
まさかっ!?
「くっ…!(これだけの魔法で眩暈が…っ!)」
やはり無理をしていたのかっ!?
攻撃の手が止まる。一瞬だった。しかし闇の書にとってその空白の間は再生するには十分すぎる程の時間だった。
「フェイトッ!避けるんだっ!」
「…えっ?」
クロノ執務官の声に、漸く自分に向かって来ている脅威に気付く。何時の間にか再生していた触手が、テスタロッサに目掛けて振り下ろされていたのだ。
目前に迫る触手に、彼女は何もせず唯呆然とそれを眺めていた…。
「…っ!(駄目…魔力が上手く操作出来ない)」
「テスタロッサッ!」
「フェイトちゃんっ!?」
無意識に身体がテスタロッサの方へと駆け出すが間に合わない。余りに距離が離れ過ぎている。「無理か」誰もがそう諦めてしまう。しかし、そこに此処に居る筈の無い人物の声が響いてきた…。
『魔力は私が如何にかします。フェイトちゃんは防壁を』
「っ!?」
『Round Shield.』
直接に響いてくる少女の声。誰もがそれに驚くが、テスタロッサはこれまでの戦いの経験の御蔭か、無意識にその声に従い、前方に全力で防壁を展開する。しかし、現れたのはテスタロッサの魔力光である黄色の防壁では無く。薄い黄緑色の魔力光の、しかも驚異的な程の強固な防壁だった…。
激突する触手と防壁。とんでもない質量を持つ触手に、防壁は一切ぶれる事すら無く悠然と構えてテスタロッサの身を護っている。
あの魔力光。私は一度だけ見た事がある。いや、でもまさか…。
その魔力光を持つ本人は此処に居る筈は無い。しかし、先程聞いた声は確かに私の知っている人物と同じ物だった…。
『フェイトちゃん、もう一度攻撃を。魔力は私に任せて全力でお願いします』
「彩…なの?」
「何故此処に…いや、今何処に居るんだっ!?」
『見つけましたっ!皆から5キロ程離れた丘の上に居ますっ!何で?どうして此処にっ!?』
そうだ。彩は今は海鳴に居る筈だっ!何でこんな危険な場所にっ!?どうやって来れたっ!?
『話は後です。今は彼女を…解放してあげて下さい』
『…分かったわ。彩さんの説教は後にします。今は闇の書をどうにかしましょう』
『ありがとうございます』
「…お前達、今攻撃をされている最中だと言う事を忘れたのか?触手の数が1本から4本に増えているぞ」
テスタロッサの襲った触手は一本だったはず。だと言うのに会話に気を取られていつの間にか4本に増えている。それでもビクともしない防壁には恐れ入る。それ程彩の魔力は強大だと言う事だろう。脅威を排除しようとしたのか、テスタロッサが軽く大剣を振っただけで触手共が一瞬にして残骸と化してしまう。しかし、やはりおかしい…。
「彩、何故お前は魔法を使えるんだ?」
彩に使えるのは精々念話程度。デバイスの補助無しで素人同然の彩があの強固な防壁を展開出来る訳がない。
『それは私の魔法では無いですよ?フェイトちゃんの魔法です』
「しかし、この魔力光は…」
『魔力光の事は良く分かりませんが、それは私の魔力をフェイトちゃんに送ってるからだそうです』
だそうです?何か変な言い回しだな…。
「レアスキル?『魔力供給』か…いや、だからと言ってそれも魔法を良く知らない彩が出来る筈が…」
クロノ執務官がぶつぶつと何やら独り言を呟いているが、私もそれには同意見だ。レアスキル持ちだからと言ってそう易々と使える筈も無い。デバイスの補助が、それもその能力に特化したデバイスで無ければ不可能の筈だ。
…気になるが、話は後だ。
「テスタロッサ…決めろ」
「…うん!バルディッシュ!」
『Yes, sir.』
大剣を天に掲げると、大剣は黄色から薄い黄緑色へと変色し、黄緑の雷を大剣に纏う。
「撃ち抜け、雷神ッ!」
『Jet Zamber.』
雷鳴が轟き、大剣の刃が伸び闇の書の防壁を紙の様に容易く切り裂き、防壁に守られていた闇の書本体ごと切り裂いてしまう。
「うわ、凄…」
「彩の魔力が影響してるのかな?威力が凄まじく上昇してる…」
『私の様なものでしょう』
ユニゾンデバイス…か。確かにそれに似ているな。違うとすれば魔導師と融合しないと言う事ぐらいか。しかし…。
私は闇の書へと視線を落とす。テスタロッサによって切り裂かれ、パカリと割れた身体でなおも再生し身体の形を変え続ける闇の書。あれだけのダメージを受けたと言うのにアレはまるでダメージなど受けていないと言いたげに触手を再生させ此方に鋭い先端を向けて来る。
「…まだ動くか。盾の守護獣ザフィーラ!攻撃なんぞ撃たせんっ!!」
ザフィーラの咆哮と共に地面から柱が現れ触手を串刺しにし、攻撃を未然に防ぐ。そして、主がザフィーラに続いた。
「はやてちゃんっ!」
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け」
白い魔力光を放つ三角形の魔法陣。そのベルカ式特有の魔法陣が主の足元に展開し、それに呼応するように空に魔法陣と複数の光の玉が現れる。
「石化の槍、ミストルティン!」
主が杖を振り降ろすのと同時に光の玉が槍と化し闇の書を串刺しにし、突き刺さった部分から身体を石と変貌させて行く…。
ミシミシと音を立てて浸食して行く石化。それは止まる事無く全身を石となるまで続き。その巨大な身体は、何も言わぬ石像となってしまう。そして、数秒後音を立てて崩れ落ちて行く…。
終わったか?誰もがそう判断する。しかし現実はそう甘く無く。それどころか欠けた部分からまた再生して行き、更に凶悪な姿へと変貌して行くでは無いか。焼け石に水とは正にこの事である。
「うわ…」
「凄い事になってる…」
『やっぱり、並みの攻撃じゃあ通じない。ダメージを入れた傍から再生しちゃう!』
「だがダメージは通っている筈。プラン変更は無しだ…行けるな?デュランダル」
『OK, Boss.』
「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」
『クロノさん。私の魔力を…』
クロノ執務官の魔力光が薄い黄緑に変色し、それと同時に爆発的に魔力が上昇する。
「なっ!?これが彩の魔力か…これならっ!」
杖を振り下ろし杖の矛先を闇の書へ向け叫ぶ。
「凍てつけ!」
『Eternal Coffin.』
一瞬。そう、一瞬だった。一瞬にして辺り一帯が純白により支配される世界と化し、闇の書が居た場所には天まで届きそうな程の氷山が存在していた…。
―――…やり過ぎ。
この場にいた全員の声が重なる。これではまるで北極ではないか。唖然と氷山を見上げる全員。と思いきや、一人だけ妙に嬉しそうな人物が一人…。
「これが、オーバーSランクの魔力か…凄い!」
冷静沈着のイメージを持つ彼とは思えないほどのハイテンションだ。余程彩の高魔力を使えて嬉しかったのだろう。一人はしゃぐ彼を少し冷たい目で見守っていると彼は漸く正気に戻り咳払いをして誤魔化す。
「っ!?ごほんっ…次で終わらせる。なのは、フェイト、はやて」
「うん!」
「まかせとき!」
「了解!…彩?」
『大丈夫です!思いっきりやって下さい!』
「うん!全力全開だね?」
「あっ!フェイトちゃんそれ私の台詞だよ!」
「ふふふ、一度言って見たかったんだ…行こう!なのは、はやて…彩!」
「「うんっ!」」
『はいっ!』
それぞれ己のデバイスを構え魔力を収束して行く。桃、黄緑、白。3つの光が膨れ上がり臨界ギリギリまで圧縮される。アレに当たれば普通なら非殺傷でも当分は病院で生活を強いられるだろう。
「全力全開!スタライトォーッ!」
「雷光一閃!プラズマザンバァーッ!」
「ごめんな…お休みな?響け終焉の笛!ラグナロクッ!」
「「「ブレイカーッ!!!」」」
3つの光が闇の書目掛けて放たれる。目を開けていられない程の眩い光と耳を塞ぎたくなる程の爆音。消滅と再生の繰り返しが光の中で行われていた。哀れ。その光景を見て誰もがそう思う。楽になりたいのになれない。傷付いても再生を繰り返す肉体。だが、もうそれも終わりだ。今日で終わりだ…。
「本体コア、露出…捕まえたっ!」
旅の鏡から現れる黒い光を放つコア。これが闇の書の闇のリンカーコアだ。
「長距離転送!」
「目標軌道上!」
厳重に3重にも重ねられる魔法陣。そして…。
「「「転送!」」」
天に…軌道上へ向けてコアは飛ばされた…。
『アルカンシェル…発射ッ!』
ハラオウン艦長の合図と共に空が光で埋め尽くされた。それはアルカンシェルが放たれた証拠。光が晴れ、この場には静寂のみが残り、アースラからの結果報告を緊張した雰囲気のまま待つ…。
『効果空間内の物体、完全消滅…再生反応…ありませんっ!』
『「「「「「「「やったーーーーっ!!!!」」」」」」」』
アースラからの報告を聞いて一斉に歓声を上げる高町達。それぞれにハイタッチをしたり抱き合ったりをしたりして喜びを分かち合っている。そんな彼女達を暖かな目で眺めながら、私やクロノ執務官、ザフィーラは地面に降り深く疲れた様な溜息を吐いて手頃な岩に腰を下ろして笑い合う。
「ふぅ…何とか成功したか」
「心臓に悪いな、これは…」
「こう言うのはこれで終わりにしたい物だ」
『良かったです…』
「彩…こっちに来ないのか?」
お前も皆とはしゃぎたいだろうに…。
『でも…遠いですし』
お前はそんなのでどうやって此処まで…そうだ!忘れていたっ!
「お前はどうやって此処まで来たんだっ!?」
そうだ、魔法を碌に使えない彩がどうやって此処までやって来たか聞いていなかった。
『えっと…連れて来られたと言うか…連れて行って貰ったと言うか…』
「誰だ?」
『え~と…良いんですか?あ、はい。分かりました』
誰と話しているんだ?
『アリアさんとロッテさんです』
…誰だ?
「…そうか」
クロノ執務官はそれを聞いてデュランダルに視線を落とし一人納得したように呟く。
何だ?何をクロノ執務官は一人で納得しているんだ?
「提督には聞く事が増えたな」
『あの…それは…』
「もう何も良い。彩は悪くないさ」
…話が読めん。
『でも、帰ったら説教よ?』
『あぅ…』
彩の情け無い声に、荒野に皆の笑い声が響いた…。
ハッピーエンドに終わる。誰もがそう思っていた。しかし、それは夜天の魔導書…リインフォースの呼び出しにより砕かれる事になる…。
アースラの会議室に集まったメンバー達。何故呼び出されたか理解出来ず不思議そうにしている高町達。
そして、その理由はリインフォースによって明かされた…。
――――Side Sai Minaduki
12月8日 PM02:30
アースラ:会議室
「夜天の魔導書を…破壊する?」
リインフォースさんの言葉に、シグナムさん達、ヴォルケンリッターと一部の人達を除くこの場に居た全員が言葉を失った。
「…何でや?何でそんな事言うん?」
震える声で、はやてちゃんがリインフォースさんに尋ねる。この場に居る全員が同じ気持ちだろう。
「主達の御蔭で防御プログラムは破壊出来ました。ですが、夜天の魔導書が再び防御プログラムを再生してしまうのです。今度は主が浸食されてしまう可能性が高い。夜天の魔導書が存在する限り危険は消えない…」
「で、でも!それじゃあ…」
私は隣で座っているシグナムさんの手を握る。
約束、したのに…。
「安心して下さい、彩。シグナム、守護騎士達は消えません。逝くのは私だけで十分です」
「でも、貴女は…」
「主から名前を頂いた。悪夢から解放して頂いた。もうそれだけ十分です」
…違う。私はこんな結末を望んだんじゃないっ!
「駄目や!そんな事許さへんっ!他に方法はないんっ!?」
「バグを直そうにも、夜天の魔導書の本来のデータが無いんじゃ…ごめん」
ユーノさんが申し訳無さそうに謝る。
何か…何か方法は…。
私は必死に頭の中で思考を巡らす。しかし出て来る答えは何一つ出て来ない。きっとクロノさん達もどうにかしようと考えた筈だ。それで見つからんかったのに私がどうにか出来る筈も無い。
「…そう言えば、何でシグナム達は消えなくて良いの?」
「私が夜天の魔導書のプログラムから切り離した。個として存在しているため、夜天の魔導書を破壊しても消える事は無い」
「…そう、なんだ」
「リインフォースさんも同じ方法は出来ないの?」
「私は管制プログラム。謂わば夜天の魔導書自身だ。夜天の魔導書の破壊は私の破壊を意味する。切り離す事は不可能だ」
「そんな…やっと解放されたんやで?これからやのに…」
「はやてちゃん…」
管制プログラムの破壊。治そうにも夜天の魔導書自体のデータが存在しない。放置すれば再びはやてちゃんを浸食し始めてしまう。
…あれ?
『夜天の魔導書』を破壊しなければはやてちゃんの命が危ない。はやてちゃんを助けるにははやてちゃんから夜天の魔導書を切り離す、破壊する必要がある。それは防御プログラムが無い今しかチャンスは無い。リインフォースさんを切り離そうにも彼女は夜天の魔導書自身。
でも、彼女を形成している心は…プログラム何でしょうか?
そうだ。もしかしたら…。
まだ、私には出来る事があるかもしれません。
「貴女の心は記憶は切り離す事は出来ないんですか?」
「…彩?」
「…可能かもしれん。だが、何処にそれを保管すると言んです?その入れ物を完成させるまでの時間はありませんよ?」
「あるじゃないですか。此処に」
私は自分の胸に手を当てる。
「闇の書に繋がっていた私なら、きっと」
はやてちゃんにも可能だろうが、夜天の魔導書をはやてちゃんの身体に残す訳にはいかない。なら、私の身体に…。
「…」
「どうですか?可能性はあるのはないでしょうか?」
「浸食してしまう可能性は?」
「いや、彩はちゃんとした形でに闇の書と契約した訳では無いのでその可能性は低い…だが、絶対に無いとも限らない」
「仮に浸食したとして、浸食まで時間は掛かるでしょう。それまでにきっと方法は見つかってますよ。それに、ほら今更身体の何処が悪くなっても…」
「彩、そんな悲しい事を言うな」
「シグナムさん…」
「そうよ、彩さん。貴女にこれ以上の事があれば御家族がどれ程悲しむと思っているの?」
リンディさんが私の両肩に手を置き、真剣な声で私に語りかけて来る。でも、私の決意は揺るがない。
「それでも、可能性があるならそれを試してみたい。私はそう思っています」
「彩さん…」
「リインフォースさん。貴女はどうなんですか?生きたくは無いのですか?これからはやてちゃん達と共に…」
少なくとも、はやてちゃんと私はそれを望んでいる。
「…これ以上、貴女に迷惑を掛けられない。これまでどれ程貴女に辛い目を…」
「気にしてません。私が選んだ事です。貴女が言う辛い目も、私が選んでやった事の結果です。それは全て私の責任です。これからやる事も…」
「彩。貴女は…」
苦しげなリンフォースさんの声に私は微笑んで両腕を広げて迎え入れる。
「どうぞ、こんな器で申し訳ないのですが…」
「っ!本当に貴女と言う人は…どうしてそこまで…」
「私は、誰かが苦しむのも、悲しむのも見たくない。偽善かもしれない。でも、それでも私は自分の出来る事をしたい…だから」
私は広げた両腕でリインフォースさんを捕まえて抱きしめる。
「一緒に、生きましょう…」
こうして、この日。私の中にもう一つの命が宿り、夜天の魔導書ははやてちゃん達の手によって破壊された…。
本編ブチ壊しなおまけ♪
この話は本編と(以下略
―――此処はミッドチルダ地上本部の秘密のお部屋。
「あのバカ息子から電通が届いたとな?」
「はい。何年ぶりでしょうか?」
「まったく…出所したかと思えばそのまま家でしおって。これで仕送りを寄こせと言ってきたら縁を切ってやるわい」
「…で?その電通の内容は?」
「今から読みます…え~と『パパになりました♪貴方方はおじいちゃんですね♪』」
「「「イヤッホ~~~イッ!!!」」」
「お祭りじゃっ!パレードじゃ!」
「祝砲じゃ祝砲を上げいっ!」
「丁度レジアスのエインヘリアルの申請書が」
「今直ぐ完成させろ!ミッドにでっかい花火を打ち上げてやるわい!」
今日もミッドは平和でした…。
~今日の駄目駄目シグナム2~
「リインフォースは彩の中に居るんだな?」
「はい…リンフォースさんは此処にいますよ?」
そう言うと彩は自分のお腹を擦る。どうでもいいがそれはやめておけ、ムラムラする。
『…どうかしたのか?(何だか嫌な予感がする)』
「今日から私の事をお父さんと呼べ」
『「…はい?」』
「母さん。娘の顔が楽しみだな♪」
「あの、えっと…シグナムさん?」
「ア・ナ・タ♪だろ?彩♪」
『駄目だコイツ早く何とかしないと…』
あとがき
ご都合主義?褒め言葉だねっ♪
こんばんは!&おはようございます&こんにちは!金髪のグゥレイトゥ!です。
さてさて、闇の書事件は設定無視で終了してしまった訳ですが…。申し訳無い!
次回からは私生活メイン!リンディさんの『彩ちゃん御嫁に来て大作戦』をお楽しみください!(嘘…かな?
あ、彩の能力やデバイスの事も次回の予定です。