家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」拡大の懸念が消えない宮崎選挙区(改選数1)は24日、非常事態宣言下での選挙戦に突入した。「演説会は可能な限り自粛を」「衣服、車両の消毒を」-。宮崎県選管は立候補届け出を予定する3陣営に、事前に異例の申し入れをした。
これを受け、自民現職(43)陣営は宮崎市内の出陣式会場に集まった支援者を霧吹きで入念に消毒。消毒用タンクを積んだ1トントラックを遊説先に先回りさせ、防疫を徹底させた。共産新人(41)の選挙事務所入り口は、消毒用の酢のにおいが充満。選挙カーに、長靴と除菌スプレーを常備した。宮崎市などで発生農家周辺の掲示板のポスター張りを見送るという。
民主新人(32)が出陣式に臨んだ選挙事務所前は、消石灰がまかれ、雪が降り積もったよう。出陣式後、支援者と握手した候補者は、選挙カーに乗り込む前も消毒を欠かさなかった。
各候補者の訴えも「(早朝)必勝祈願では真っ先に、一日も早い終息宣言、宮崎再建をお願いした」(自民現職)、「国がすべての被害と経営再建について責任を持つべきだ。党派を超えて救済を」(共産新人)、「宮崎が沈没する危機。政権与党の一員として再興に全力を挙げる」(民主新人)と口蹄疫問題が中心となった。
宮崎の隣県、鹿児島選挙区(改選数1)でも、陣営が口蹄疫に神経をとがらせた。自民現職(66)は、防疫対策として選挙カーに随伴する消毒液300リットル入りタンクを積んだ車を準備。宮崎県境に近い地域で休憩時や演説する際に選挙カーを消毒するという。
JA鹿児島県経済連によると、同県でも牛や豚の競りは再開見通しが立たず、被害額は少なくとも100億円規模に達する見込み。畜産農家の苦しみが続いている現状を見つめ、陣営幹部は「選挙中と言えども口蹄疫対策は待ったなしだ」と話した。
=2010/06/24付 西日本新聞夕刊=