【社説】拷問は国家の恥だ
ソウル陽川警察署内で取り調べ中の被疑者に対し拷問が行われた疑いがあるとして捜査を行っていたソウル南部地検は21日、問題となっている警察官5人の逮捕状請求に踏み切った。
この事件は今月16日、国家人権委員会が「昨年8月から今年3月まで、陽川警察署で取り調べを受け、拘置所に移された麻薬・窃盗容疑者32人から話を聞いたところ、22人がなぐられたり、いすの背もたれを抱える形で後ろ手に手錠をかけ、ちり紙を口に押し込み、テープで口や首をぐるぐる巻きにしてさるぐつわをかませ、腕を上に引っ張る『翼折り』の拷問などを受けていたことが分かった」と発表し、これらを実際に行ったとされる警察官を検察に告発したことから、問題が表面化した。
検察は、陽川署に勤務する警察官が今年2月26日、ある被疑者の取り調べを行う過程で、「翼折り」の拷問を行った事実をすでに把握しているという。問題となった複数の警察官は、「一部で物理的な行為が確かに行われたが、これは被疑者が抵抗したり、自害することを阻止するためのやむを得ない措置だった」と説明している。
警察庁による独自監察でも、拷問を受けたとされる22人から無作為で選んだ4人はいずれも具体的かつ一貫した内容の証言を行っているという。検察も、人権委員会の発表が行われる前の4月初めから独自に内偵を行い、陽川警察署の監視カメラに内蔵されたハードディスクを押収した。ところが被害者が暴行を受けたと主張する今年3月9日から4月2日までの25日分は、録画が行われていなかった。3月9日は人権委に陳情を行った被害者3人が、陽川署で拷問を受けたと主張した日であり、4月2日は検察が陽川署警察官による拷問行為についての情報を入手し、捜査を開始した日だ。これでは監視カメラに手が加えられたと疑われるのも無理はない。
大韓民国の国民は、誰もが拷問を受けない権利が保障されている。これは、犯罪容疑が掛けられていても変わらない。世界人権宣言の内容を調べるまでもなく、拷問は非常に野蛮な犯罪行為だ。大韓民国は異民族の圧政から開放されてすでに65年もの歳月が過ぎたが、今なお国内で拷問が行われているとすれば、われわれはなぜあれほどの犠牲を払ってまで独立を勝ち取らねばならなかったのだろうか。拷問の追放は、現代の民主主義国家における基本的な義務だ。この義務さえ果たせないのであれば、政府は政府としての役割を怠っていることになる。これでは北朝鮮や中国の人権侵害を問題視することさえできなくなるだろう。
今回の問題に関しては、麻薬犯などの被疑者に対して取り調べ行う過程で、やむなく物理的な力を行使したものが拷問と見なされてしまったのか、あるいは組織的な拷問行為が実際に行われたのか、さらにその後に警察による組織的な隠ぺい行為があったのかなど、検察は状況を徹底して明らかにしなければならない。この問題は、現政権が名誉を懸けて取り組むべき課題であることを忘れてはならない。
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