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前代未聞!NHK名古屋場所中継中止へ

 大相撲名古屋場所を前に立てられた御免札=愛知県体育館
 大相撲名古屋場所を前に立てられた御免札=愛知県体育館

 NHKが賭博問題で揺れる大相撲について、7月11日に初日を控える名古屋場所の中継中止を検討していることが23日、分かった。同局には、中継に反対する視聴者の意見が1300件以上、寄せられており、日向英実放送総局長は「名古屋場所が行われた場合でも、中継しないことを含めて検討している」と開催の有無にかかわらず、テレビ、ラジオの放送中止を視野に入れていることを明らかにした。場所開催中の放送中止となれば、NHKが大相撲中継を始めた1953年以降、初めての異常事態となる。

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 1953年から始めたNHKの大相撲中継。年6場所、15日間をすべて放送し、“連続出場記録”を更新してきた。阪神・淡路大震災などで中継が中断したケースはあったが、本場所が開催されている中で、全く中継をしないのは前代未聞。その星取表についに「や」の字が刻まれる可能性が出てきた。

 東京・渋谷の同局で日向総局長は「まだ最終判断はしていないが、重大な関心を持って見守っている」とし、「維持員席の問題があったのも名古屋場所だった。相撲協会の調査で、将来にわたっての抜本的な対策がどういう形で出てくるかが判断材料になる。納得できるような形で出るのか」と最後まで厳しい表情を崩すことはなかった。

 また、スポーツ担当の今井環理事も「今のままの状態だったら放送は難しいんじゃないか。名前を公表するとかしないとか、何もけじめがついていない。このまま『開催します』と言われても難しい」と相撲協会の遅々とした対応と閉鎖性をバッサリと切り捨てた。

 22日の時点では小丸成洋経営委員長が「中継しないわけにはいかないでしょう」と話していたが、続々と出てくる相撲界の影の部分に態度は一夜にして一変。内部から「コンプライアンス(法令順守)の観点から問題のあるものを、放送し続けていいのか」と声が強まり、福地茂雄会長も「重要な問題。中止も視野に入れて検討しましょう」と百八十度転換した“中止”という方向性を局幹部に伝えたという。

 また、昨年の名古屋場所で、暴力団幹部らが刑務所内の知り合いを励ますためにテレビ中継に映る特別席で観戦していたことが発覚したことも、同局幹部の不快感を大きくしている。

 NHKには6月14日から22日までの9日間で、視聴者から1889件の意見が殺到しており、そのほとんどが「大相撲中継に反対」という内容だった。反対派1314件に対し、「賛成」はわずか94件。日向総局長は「やめた場合、もっと大きな反響があると思う。慎重に考えたい」と相撲ファンの心情を思いやったが、NHKとしては多数の視聴者の声を無視することもできなかった。

 今後は相撲協会と話し合いを行い、最終的な結論を出すが、決断の時間は迫っている。名古屋場所開催の有無については、7月4日に開かれる日本相撲協会の臨時理事会で決定するが、放送局としては番組編成上の問題があり、NHKは開催の有無に関係なく独自に中止を判断することになるという。

 大相撲中継という半世紀にもわたって続いているNHKの伝統は、皮肉にも番組の主役たちの不祥事によって最大の危機を迎えている。

(2010年6月24日)





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