蚊に刺されるとかゆいのは何故だろう?

 かゆいのが苦痛だから、ヒトは蚊取り線香を焚き、殺虫剤をまき、蚊帳を吊る。

 蚊がもう少しスマートに仕事をしてくれれば、ヒトももう少し穏便な対処をしただろう。
 どうせ吸われる血液は少量だ。
 それぐらい分けてやってもいいというヒトだっているかもしれない。
 マラリアのような病気を運んで来たり、しつこいかゆみを残していかなかったら、ちょっとぐらいは吸わせるままにする酔狂なヒトも出てきたかもしれない。
 駆除されず、共生を選ぶヒトも出て来たかもしれないのに。
 
 しかし蚊は、実はもう十分スマートに仕事をしているのだ。

 蚊に刺されても、チクリとした痛みは無い。
 これは麻酔成分を含む唾液を、蚊がその仕事のはじめに流し込んで来るからだ。
 蚊が血を吸うためには、毛細血管に届く深さまで針を刺す必要がある。
 しかし深く刺すことは、痛みを感じさせるリスクが高まり、蚊の命が危機に陥りかねない。
 この危険を回避するために、麻酔をかけて感覚を鈍らせてから,仕事にかかるのである。

 さらに蚊への「輸血」の間、血液が凝固してしまうこともない。なぜか?
 糖分を分解する酵素類と血を吸いやすくするための血管拡張物質や抗凝固物質など20種類以上もの酵素を、蚊はさっきの麻酔成分とともに流し込んでいるのだ。

 そして《かゆみ》とは、これら異物に対するヒトのアレルギー反応に他ならない。
 

 以下、実用的な知識をほんの少しだけ。
 
 蚊が我々の体内に流し込む、これらの酵素は熱に弱い。
 だから熱いシャワーなら十秒ほどで、かゆみが消える。
 風呂でも熱めの湯なら同じくらいの時間で、効果がある。




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