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Money does not hurt your heart このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-06-23

[]ずっと、はてなに入りたいと思っていた

エンジニアとして働きはじめて、まだ10年も経っていないけれど、ちょうどいい機会なので、この機会に振り返っておこうと思う。

武勇伝なんて派手な話は何もない地味なエンジニア人生だけど、自分が関わったものが誰かに使われているのを電車の中で見たりすると、ちょっと嬉しいです。id:naoyaさんや登大遊さんのように、カッコイイエンジニアになりたいなぁ、とあこがれます。

エンジニアとしての転機

皮肉なことに、エンジニアとして独り立ちしたな、と自覚するようになったきっかけは、リストラだった。それなりに大きな会社だったのだけど、事業部がリストラで解体されていく中で、若手の現場のエンジニアが減っていき、減ったエンジニアの仕事をやらざるを得なくなった。

事業部ごと解体されようかという勢いの中で、いきなりそれ新人の仕事じゃないだろう、という大きな仕事をふられて、右往左往して泣きながら必死で働いた。超神水みたいなもので、入社二年目で量産品の重要なモジュールの設計やテストを必死でやり抜いたことは、今思うととても幸運だった。辛かったけど。


リストラは現場のエンジニアにとってチャンス

リストラは、ネガティブな文脈で語られることが多いけれど、これまでリストラのたびに挑戦しがいのある仕事をするチャンスに恵まれてきた。現場にいる限り、リストラは必ずしも悪いことではなくて、仕事を選べるチャンスだと思う。

マネジメント層としても、我々現場の兵士が働かないと困るから、我々は平常時に比べてやりたい仕事を選ぶことができるし、やりたい仕事がこれまで未経験のことでも任せざるを得ないから挑戦することができた。


リストラだ、さぁ転職だ、という選択もありだとは思うけど、やりたい仕事が残っているならば船が沈むギリギリのところまでは粘ってもいいと思う。転職するとなると、これまで経験したことの延長線でしか仕事を見つけることは難しいけれど、リストラの嵐の中ではこれまでとは違う仕事に挑戦することができる。


リーマン・ショック以降、人が30%以上減る中でも、ずっとやりたかった、コードを書く、という仕事ができている。もし、リーマン・ショックみたいな予想外の出来事がなかったら、海外にオフショアに出していたコーディングの作業を内部で再開するようにはならなかっただろうし、ずっとコードを書いたことが無いソフトウェアエンジニアで終わっていたかもしれない。


やってみれば、できるものだし、やってみないとわからないことも沢山ある。

リストラの嵐の中で「これはムリめじゃね?」っていう仕事が意志に反して降ってきたとしても、どうせ他に仕事をふる人なんて残ってないんだから気楽に行けばいいさ、と考えてやってきたし、追い詰められたらできるもんだ。

選べるうちは大丈夫

沈みゆく船に残る以上は、逃げるタイミングを決めておいた方がよいと思う。以前は危うく逃げ遅れるところだった。あのまま前の会社に残っていたら、今頃は吸収合併分割に翻弄される毎日だったのかと思うとぞっとする。撤退戦略は予め決めて戦場に残るべし。


私は、会社を変えないといけないのは、選べなくなったときだと決めている。

景気の善し悪しに関わらず、仕事を選ぶことができなくなったら、環境を変えることを検討することにしている。選べないと言うのは、仕事に限らずリスクがある状況だと思うし、エンジニアにとって仕事を選べないと言うのはかなり危ない状況だろう。仕事が選べない状況で働き続けると、リストラが始まったときに真っ先に対象になるのを見てきた。

特に、社内向けの技術に特化した仕事を続けた場合や、コードがかけないソフトウェアエンジニアリスクが高い。社内向けの技術だと、いざリストラが始まったときに事業ごと無くなって外にも出れず中で異動するにも受け入れ先が無い、といった状況になる。

コードがかけないソフトウェアエンジニア、というと形容矛盾なようだけれど、大きめの会社だとそういう人たちがたくさんいる。ITバブル以降、大きな会社はコードを書く、という仕事をずっと外注に出し続けてきた結果、今の35-45歳ぐらいのプロパーはコードを書くという経験を積まずにマネージャになってしまって結局マネージメントもソフトが良くわからないのでグダグダ、みたいなことになっている。

ソフトウェアエンジニアとして仕事をして行く以上はコードは書けないといけないし、書き続けないといけないと思う。コードを書くのは外注やオフショア、要求だけまとめればいいんだ、というコンサルみたいな心意気で仕事をしていた結果、社内には一切技術が残っていない、外注先も切っちゃったから誰も分からない、みたいな事態を招いた。

コードがかけないソフトウェアエンジニアなんて料理ができないシェフみたいなものだと思う。そんな人の書くレシピで、料理する気になる?


英語はできた方がいい

エンジニアは英語ができた方がいいと言うか、英語ができないエンジニアは詰んでいると思うけど、英語ができることが評価されるのはまずいとも思う。

技術書の翻訳業で食べていけている人っていないと思うのだけど、いっそのこと技術書の翻訳はやめた方がいいのではないだろうか。技術書が翻訳されるのは早くて1年はかかるし、遅いと4年後だったりする。4年も経っていたら陳腐化している技術だってあるだろうし、なによりも日本語で技術書が読めてしまうと言うのはエンジニアスポイルする。

日本以外の国のエンジニア母国語技術書が読める人たちは少ないし、そういう海外のエンジニアと戦わないといけないと言う状況の中で、日本語に翻訳された技術書というのはメリットがデメリットを上回っているのかどうか疑わしい。

オライリーのだったり、他の技術書本が翻訳されるまでの間のタイムラグを使ってコンサルをする、みたいなワケの分からない仕事ができてしまったりしている。そんな仕事、誰も幸せにならないと思うけどな。

とはいうものの、これまで散々「英語で情報を仕入れられる」ことで甘い汁を吸ってきたのでブーメランだな。日本だと、英語がちょっとできるだけでもエンジニアの市場価値が高く評価される会社はあるから。TOEICの課長昇進の基準点が700点とか生ぬるいこと言ってる会社がごろごろしている。TOEIC700点なんて、仕事で使う英語力と心もとなさ過ぎる。逆に、非エンジニアで英語を仕事で使わないならTOEICとか英語の勉強なんて時間の無駄だろう。

英語ができない人に限って「英語は道具だから」とか「英語ができても仕事ができなきゃしょうがない」って言うけれど、日本人で英語ができて仕事ができないエンジニアって少ないんじゃないだろうか。

上述したように、英語ができることは日本のエンジニアにとってタイムラグによる利得がとても大きいから。英語ができないと、海外で出版された本の情報を直接仕入れることができないので、それだけでもかなり不利だろう。翻訳された本が数年越しに出たけどなんだか日本語が不自然すぎて読むに耐えない、みたいな翻訳書もあるし。


相対的な話ではあるけれど、英語ができると日本ではエンジニアとしてかなり大きなアドバンテージになってしまっている。そういう状況に甘えてきた、という反省もあるので海外にでないといけないのかな、とも思う。

基礎はしっかり

頭でっかち、と馬鹿にする人もいるけれど、困っていることはだいたい本に書いてある。車輪の再発明が好きな人っているけれど、それは遠回りだよね。

エンジニアの不安と壁 - naoyaのはてなダイアリーでもなおやさんが書いているように、技術に関しては基本的な部分の経年劣化がとても少ない。

私は学生時代に詰め込んだ知識が未だに役立っているし、これからも役立っていくのだろうと思う。アルゴリズムであるとかコンパイラとかCPUの仕組みとか情報理論とか。もっとも、それらの点が線になったと感じたのは,仕事をし始めてずいぶんたってからだったけれど。

railsiphone SDKソーシャルアプリだ、とどれもこれも手をつけてはHello world!やっておしまい、みたいな流行りもの技術ミーハーになるのではなくて、railsなら何でもいいのでサービスインまで持っていく、iphone SDKならアプリリリースまでやる、というようにしっかりと技術を押さえながらやっていきたいと思うのだけど、結局つまみ食いばかりで余暇を使ってもひとつも身にならない。


技術に対する情熱を持ち続けることができるか

2004年ぐらいから、ずっとはてなに入りたかったのだけど、はてなでやっていけるほどの技術力はないしな、とずっと遠くから見ていた。ずっとはてなに入りたいと思っていたし、はてなの役に立ちたいと思っていた。そういうふうに思った会社は、結局はてな以外には見つからなかった。

ウェブって楽しそうだな、と今だって思うし、モノを伴なうソフトウェアは、ソフトウェアとしては制約がきつすぎると思う。物理的制約に縛られたソフトをやってきたから、もっと上のレイヤのソフトを作ってみたいと思う。

最近は、はてなに入りたいと思っていたあの頃の技術への情熱は、いつまで持ち続けることができるだろう。エンジニアとして最新の技術を追っていくことに息切れを感じ始めたら、どうすればいいのだろう。

正直なところ、もう、学生の頃みたいに食事も睡眠も忘れて2日間徹夜でコードを書くことに没頭する、なんていうことは今後の人生ではなさそうだ。

リストラの進む中、一緒に働いてきた仲間たちが一人また一人と減っていく中で、自分だけで仕事をするのは寂しかったな。困ったときには相談したいし、つかれたらスタバで一緒にお茶したりしたいと思っていた。

はてなみたいな楽しそうな会社で、仲間たちと一緒だったらそういう素敵な仕事人生が送れたのかもしれないと思う。

KLab×はてな エンジニア応援ブログコンテスト

武勇伝、っていうのははてならしいテーマ設定だと思うけれど、地味な仕事をコツコツやり続けているエンジニアも多いのではなかろうか。

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