怪しげなオークションサイトに気をつけろ(後編)
前編からお読みください。
前編ではペニーオークションのシステムについて説明した。さて、こういったシステムは法的にどうなのだろうか?
いまのところ摘発されたという話は聞かない。システムの説明は、多少わかりづらいが、一応サイトに書かれており、入札料だけとられて商品を手に入れられないことがある(というか、その方が多い)ことは理解した上でユーザが参加していることになる。宝くじを買うようなものだ。Webシステムを使う上で手数料を支払うことは他のシステムでも存在するわけだし、その金額が一般的な商習慣と比べて異常に高いのも、××円以上の手数料はダメという法律もないだろうし、金額もあらかじめ提示してある。問題ないという判断になるだろう。
このあたりは専門家の判断に任せたいが、これを法規制のあるクジとみなすのは難しく、おそらく現状は法的にグレー。法的に問題があるとすれば実際は多くの入札料が必要となるのに「99%OFFで人気商品が手に入る」と誇大広告を打っているあたりだろうか?
宣伝はともかくとして、システム自体はグレーというよりもむしろシロに近い方かもしれない。なんせ、東証一部上場企業であるゲオですらペニーオークション(GEOオークション)を運営しているぐらいだから。
GEOオークションは取られっぱなしの入札料に関する批判をかわすためか、入札した商品は、支払った入札料の分だけ通常価格から値引いて購入することが可能になっている。ただ、これは辞退するひとが多いだろうし、売れた場合でもいつも売ってる値段で普通に通販サイトとしての儲けになるので、全く損はない。うっかり不人気の商品を出して多少損を出すかもしれないが、先程も書いたように超人気商品で入札が殺到すれば1出品で7桁の利益を得る可能性があるので、多少の損は誤差範囲だ。ゲオが儲けようが、信頼を落とそうが知った事ではないが、上場企業も運営しているシステムだと言うお墨付きをうさんくさいサイトに与えることになるのが非常にイヤな感じ…。
さて、話を戻そう。
ペニーオークションのシステムが(あくまで私個人の意見だが)一般的な商売とはかけ離れていて胡散臭いと感じられ、法的には問題がなさそうなことはご理解いただけたと思う。
さて、この胡散臭いペニーオークションが最近になって急に増えてきたのはどういう事だろうか?
ある程度詳しい人が調べれば比較的に簡単にわかることなので、具体的な指摘は避けるが、ペニーオークションシステムは複数のシステム開発会社によってパッケージ化されている。つまり、金を出せば、誰でもこのシステムを動かして利益を得ることが可能だということだ。
これらの開発会社のうち一社はすでに100~150サイトぐらいペニーオークションのサイトを動かした実績があると宣伝している。誇大広告で水増ししている可能性もあるが、複数の開発会社がシステムを作っており、独自システムを自前で用意しているところもあるだろうから、現在、国内に3桁のペニーオークションサイトが動いている可能性が高いと推測される。軽く検索しただけでも数十サイトが簡単に見つかる。「××オク」という名前が非常に多い。名前がかぶりすぎだ。ちょっとは差別化しろよ。
ここからは根拠のない憶測になってしまうのだが、利用者の入札料を運営者が吸い上げるシステムよりも、さらに上のレイヤーで商売が行われているのではないだろうか?つまり、パッケージ化されたペニーオークションシステムと運営ノウハウの販売で利益を得る人たちが現れたと言うことだ。
私のペニーオークションに関する説明で「この商売はすごい!」と思った人もいるかも知れない。1台のiPadで100万円以上の利益を生む夢のようなシステムだから自分もやりたいと思うだろう。そうやって、良い側面だけ見せ続ければ、システム導入費が数十~数百万円(+売り上げの数%)という条件でも、あっというまに回収できると思って導入してしまう人も出てくる。
しかし、パッケージ化されたサイトのテンプレートそのままで運営して儲かるわけがない。同じパッケージを使ったサイトと差別化されていないのに一体誰がそのサイトの会員になるというのだろうか?ライバルは100以上あるのだ。入札合戦が起こることで多くの入札料を得るシステムなのだから、会員が多くないとまったく商売が成立しない。先行していてすでに顧客を多く獲得しているサイトはある程度の収益を得られるだろうが、後追いしたサイトが多くの利益を得るのは非常に難しい。先ほど例に挙げたiPadの入札料130万円はおそらく会員数が4桁以上ないと成立しないだろう。こんな怪しげな商売に対して、それだけのユーザを獲得し、維持するスキルがあるなら別の商売をしたほうがいい。
利益は出なくても、広告出稿費用やサーバ管理費毎月の出費はあるし、初期投資も回収しないといけない。するとどうなるか?このシステムで効率良く入札料を回収するには?商品を発送せずにすむ方法はないか?
自分が会員として参加して落札すればいい。"サクラ"だ。
この手のサイトのFAQには「サクラはいないので安心して下さい」と書いてあることが多い。わざわざ書いてあると言うことは、サクラがいると非常にアンフェアになるシステムだということを自供しているようなものだ。実際、サクラがいることで、運営側は効率良く収入を得ることが可能になる。一般参加者の落札は不可能、商品の発送も必要ない、比較的人気の無い商品を安値で落札し、低価格で売れたという実績を作ることもできる。そして、一般参加者は購入したポイントをすべてドブに捨てることになる。
また、本当にサクラが全くいないのなら、サービス開始時に一気にユーザをかき集めることができなかった場合、最初のユーザが全商品を1円+入札料1回分で購入可能になる。どうやってサクラを使わずサービスインさせるのか、そのノウハウを知りたいところだ。
実際、Yahooオークションでは当然のように行われている入札履歴の表示が、直近10件だけしか見られないシステムがほとんどで、あとで誰が何回入札したのか調べられないようになっている。定価10万円の商品に10万円以上入札料を払う不審なユーザがいてもわからない仕組みだ。ユーザごとの落札履歴を確認する機能もない。これは、システム的にサクラを許容している、むしろ推奨しているような仕組みになっているといえなくもない。
そうやってサクラを使っても、どこが運営しているかも分からない怪しげなサイトで100万円以上の利益が出るはずがない。元手を取り戻せなくなった人が、次に考えるのは他の人にペニーオークション運営を薦めることだ。おそらく、100万円を超えるシステムの販売を斡旋できれば、10万以上のバックマージンが得られる。自分が紹介された時のように、簡単に数百万稼げる、元手はすぐに回収できると言うだろう。そして、ねずみ講によく似たシステムが出来上がる。情報商材でよく見られるパターンだ。
ゲオはおいといて、こういったサイトを運営する企業がマトモなハズが無い。運営者情報もあやふやにしているサイトも多い。いくら倫理的に問題があっても、法的に問題がないのであれば、地道に警鐘を鳴らすしかない。
「人気商品が安く手に入る」「このシステムを動かせば数百万円儲かる」そんな良い話が転がってきたら、「あれ?本当にそうなのかな?なにか罠があるんじゃないの?」と考えよう。おいしい話には必ず裏があるものだ。