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番組バックナンバー
目次 > 2010年6月23日放送の番組バックナンバー


水害の町に若者の力を…佐用町に学生村

特集です。水害に見舞われた過疎の町で、新たな人のつながりが力になりそうです。

去年8月の豪雨で大きな被害を受けた兵庫県佐用町に、学生村がオープンしました。
町を元気付けようと活動する、若者の姿を追いました。 


今も水害の爪あとが残る山道。この道をたどった先に、小さな集落があります。
兵庫県と岡山県の県境にある、佐用町若州地区。
かつては100人ほどが暮らしていたというこの地区は、今は住む人がいなくなりました。ところが、一軒の古い民家から、何やら物音が・・・。

「おはよう」「ハハハ」(学生たち)

ここは、先月、開村したばかりの「学生村」。
兵庫県や岡山県の大学の有志が、空き家を借りて自分たちの手で運営しています。

 

 


「食器はもともとここの家にあるのを使わせていただいてるんですよ」(学生)
「いただきま〜す」(学生たち)

地元の人が差し入れてくれた、採れたての野菜で作った朝食です。

「びっくりしました。川の音しかしないのがすごい新鮮でした」(女子学生)
「イメージ通りの日本の家屋」(男子学生)

学生村の事務局長を務めるのが、関西学院大学の榊原昌彦さん(24)。
町づくりについて研究する榊原さんは、ことし2月、学生仲間を誘って、佐用町で大雨の被害などについて聞き取り調査を行ないました。
そこで「必要なサービスは何か」というアンケートをしたところ、8割以上の住民から意外な答えが返ってきたといいます。

「何のサービスがほしいですかと聞いたら、『若者がほしい』と言われたというのが何件もあって・・・。それで学生たちが『あれ、自分たち、実はここで必要とされてるんちがう?』と言い出したんですよ」(榊原さん)

学生たちは、佐用町の町づくりに参加していこうと、学生村という拠点を作ったのです。



学生村では、大学のゼミ合宿などを受け入れて、防災について学びにくる学生を増やしたいと考えています。
この日、学生たちを案内してくれたのは、洋品店を営む千種和英さん。


町の中心にある商店街は、更地が目立つようになっていました。


「(肉屋さんは)ちょうど1本だけある交差点の角っこで電気が点いているということで、すごい賑わいにはなっとったんやけど、残念なことにこの水害を機に廃業されてしまいました」(千種さん)



1700軒以上の家屋が被害を受けた、去年8月の大雨。
商店街も多くの店が浸水し、大量の泥とゴミの中で、懸命の復旧作業が続きました。

「お蕎麦できとるで、ある分だけよばれて」(千種さん)
「あんたとこも大変やのに」(商店街の人)
「みんな一緒や、頑張ろうな」(千種さん)

商店街の人たちは炊き出しなどを行って、互いに励まし合ってきました。




「ここが事務所やったんですよ。もう2度とこんなことがあったら困るんで、事務所を上(2階)に変えて・・・」(商店街の人)

床上まで浸水し、事務所を2階に移した店。高い位置に設置されたエアコンの室外機。
そうした備えのそばに、こんなステッカーが貼られています。
水害を乗り越えていこうという願いをこめて、千種さんたちが作ったものです。

 



「すごく気にしたのが、やっぱり住民の方にすれば“忘れたい過去”なんやな。『何でいつも、こんなとこまで水があったことを覚えておかなあかんの』『忘れたい』という方もいらっしゃるけど、やっぱり僕らの中では風化させたくない」(千種さん)

水害の記憶には、支えてくれた人たちへの感謝の思いも、深く刻まれていました。

「復旧作業の時、役立ったものってありますか?」(女子学生)
「幸いなことに親戚に大工さんがおって、すぐ飛んできてくれてね。洗う機械から全部持ってきてもらって、助かりました」(商店街の人)
「若い方の力もすごい元気をもらえてると聞けたので、私たちにもいま何かできるんじゃないかとすごく思いました」(女子学生)



町では、こんな取り組みも行われていました。佐用高校の生徒たちが、神戸の絵画教室と協力して描いた、ヒマワリの花です。
毎年大勢の人でにぎわうヒマワリ畑も、水害でなぎ倒されたのです。



「みんなで描いたヒマワリを見て、佐用町の人が元気になれたらいいなと思いながら描きました」(生徒会長・池田裕美さん)



夏の訪れを前に、生徒たちの思いは一面のヒマワリを咲かせました。
「頑張って描いたんやな思うわ。私ら見るだけでもね、涙出たわ」(町の人)
「難しいことを考えずに、できることからやっていくんだというのを再確認できました」(学生村事務局長・榊原さん)




学生村の若者たちは、過疎化に悩む町を助ける面でも、自分たちにできることがないかと考えました。
まず始めた活動が、週末などを利用して山里のお年寄りを訪ねることです。

「こんにちは」(男子学生)
「ここらへんってこの時期ホタル見れるんですか?」(女子学生)
「橋の下にいっぱいおる、ようけおるわ」(村のお年寄り)
「へえ〜!」(学生たち)


「僕らに期待してることとか、やってもらいたいこととかありますか?」(男子学生)
「ええことやな、遠いところから来てしてもらういうことは、こんな田舎に来てな。それこそ、ふれあいサロン(集会)に来て、してもうたらええな、いろんなこと」(お年寄り)
「若州はええな思って、学生の若い人が来てええな思う。声かけてくれるだけでも心強いんちがう?年寄りばっかりおるんやでな」(お年寄り)
「また遊びにきねえ、何かごちそうしたげよ」(お年寄り)
「やったー!」(学生たち)

若者たちの新たな挑戦を聞いて、兵庫県内で町づくりに携わっている人たちが学生村の視察に訪れました。

「非常に自主的で、自分たち自身もしっかり楽しんでいて、いいなと思いました」(兵庫県の人)
「維持管理費にお金がいりますやんか。学生の子たちが(塾などをして)子どもを育てるのにここを使ってもらって、それに対して補助できたらいいんちゃうかな」(淡路島の町づくり関係者)

学生村の今後の活動に向けて、学生たちはそれぞれのアイデアを持ち寄っています。

「いちばん考えているのがゲートボールを大会形式にして、住民の方にも同好会があるので一緒にできたらいいなと思ってます」(女子学生)
「大学でも農業サークルをやってるので、農業のお手伝いをやってみたい」(男子学生)
「人が減って参拝者が少ない神社を使って、イベントできないかなということも言ってます」(佐用学生村事務局長・榊原さん)

水害の町と都会の若者に、新たなつながりを芽生えさせようとしている、学生村。
いま、一歩一歩、活動の輪を広げています。

2010年6月23日放送

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