きょうの社説 2010年6月24日

◎参院選公示 政権交代の意義問い直す機会
 民主党政権が初めて国民の審判を受ける参院選は、与党が過半数を獲得して政権安定化 の基盤を築くのか、それとも過半数割れに追い込まれて国会の「ねじれ」状況が再び出現し、政界再編の序章につながるのかが焦点となる。結果によっては、連立の組み替えや9月の民主党代表選にも影響する。現政権の中間評価にとどまらず、今後の政治の潮流を方向付ける大きな転機になることは間違いないだろう。

 昨夏の衆院選は国民が自民党にノーを突きつけ、戦後初の本格的な政権交代が実現した 。民主党にすれば政権基盤を整え、政策で有権者に変化を実感してもらい、参院選で政権のお墨付きを得るはずだった。だが、鳩山政権でマニフェストに掲げた政策が迷走し、普天間飛行場移設問題も暗礁に乗り上げた。鳩山由紀夫前首相や小沢一郎前幹事長の政治とカネの問題は政治不信に拍車をかけた。

 首相が菅直人氏に交代し、内閣支持率が回復したとはいえ、民主党政権が抱える本質的 な問題が変わったとは思えない。国民の期待を裏切った9カ月の政権運営から何を学び、その反省をどう生かすのか。政権交代の意義が、日本の政治をより良い方向に変える一歩であったとすれば、参院選はその意義を問い直す機会である。一言でいえば、政権交代が本当に良かったのかどうか、国民の判断が問われることになる。

 与野党の公開討論会では、9党首が並んだこともあって論戦は深まらなかった。これで 判断をと言われても有権者は戸惑うばかりだろう。民主党が政策で現実路線に舵を切り、自民党との違いが狭まった印象も受ける。国会で論戦の機会が失われたからには、選挙戦を通じて各党は対立軸を明確にし、有権者に判断材料を示す必要がある。

 行政の無駄削減や公務員改革、政治改革が進まないまま、消費税増税論議が先行する状 況には違和感を覚える。民主党が衆院選で掲げた国会議員の定数削減にしても法案提出の動きはみられなかった。野党も議員定数削減を公約に掲げているが、歳費や政治資金問題も含め、増税の前に自らが身を切る覚悟をまず語ってほしい。

◎小松うどん 地域ブランドに育てたい
 300年の伝統を誇る「小松うどん」を再興し、全国に売り出す試みが小松市で始まっ た。小松うどんは藩政時代には将軍や藩主に献上され、「奥の細道」の旅で小松を訪れた俳聖・松尾芭蕉にも贈られたといわれる。今はやりのB級グルメとは一線を画し、郷土の食文化に改めて光を当て地域活性化のテコにしていく狙いという。町民文化が息づく小松の庶民の味を、新たな地域ブランドに育てたい。

 いわゆるご当地グルメの先進地を見ると、だれよりも自分たちが興味を持ち、レシピづ くりや食べ歩きを楽しんでいるところが共通している。単なる観光客誘致のための話題づくりだったら、成功は難しい。小松うどんについても、自分たちの伝統の味を再発見し、新たな名物料理をつくるという意気込みで取り組んでほしい。

 うどんは、江戸時代初期に全国に製法が広がり、旧加賀藩では小松と氷見の干うどんが 名物とされた。現在の小松うどんは、麺(めん)が細めでつるつるとした食感が特徴とされ、昆布やサバ節などでとっただしを薄口しょうゆで仕上げた関西風の味付けが主流といわれる。だが、小松うどんの知名度はそれほど高いわけではなく、氷見うどんに遅れをとっている印象がある。小松の名物として売り出していく価値は十分にあるだろう。

 新ブランドの発信には、分かりやすく、参加しやすいルールをつくり、その上で各自が さまざまなアイデアを発揮できる余地を残すことが肝要だ。民間主体の認証団体「小松うどんつるつる創研」が先ごろ、小松うどんについて、▽小松市内で製造された麺▽だしはウルメ、ムロアジ、サバなどを主に用い、コンブをふんだんに使うなど8カ条を定めた。小松うどんを定義し、飲食店などがまとまって売り出すための統一的な基準として適当と思われる。

 小松市は、市制70周年記念事業として10月10日に小松うどんのレシピ公募を予定 している。これは普及活動の底辺を広げ、市民の参加を募る絶好の機会になるだろう。斬新なアイデアを出し合い、小松うどんの名を高めてほしい。