【 MAZDA RX-7 FD3S 】 y o s h i h i s a style
〜 海辺の秋風 〜
前後とも、横方向からの入力。
フレームが曲がっている可能性大。
エンジン及び配線の取り外し。
右フレーム
左側に曲がっているのがわかりますね。
左フレーム
リヤのフレームも曲がっていました。
フレーム修正
フロントフレームは左右とも取り除く。
この状態から、新しいフレームを組み上げていきます。
フロントフレームの部品寸法を確認。
以前付いていたフレームと比較すると約5ミリの誤差がありました。
メーカー供給の新品部品にもバラつきがあるのです。
返品?
何度返品しても、きっと似たようなものが届くと思います。
新品と言っても、精度はこの程度のものなのです。
完璧に見える新車と言えども、1台1台に微妙な誤差が生じているものなのです。
では、どうするか?
ここが板金職人のおもしろいところ。
ベストな位置を探って合わせていきます。
結果として、真っ直ぐ走る安定したクルマにしなければなりません。
また、外観の帳尻(隙間合わせ)も、重要な要素です。
悩みます・・・・。
真剣になればなるほど悩みます。
追求すれば追求するほど、また悩みます。
悩むことが、仕事です・・・。
1回目の塗装
2回目の塗装。
3回目の塗装。
目標は、新車からの塗装を再現していくこと。
雰囲気は出せているでしょうか。
完成 ↓
yoshihisa style
body: yoshihisa
paint: sato
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海辺の秋風
休日。
不思議と少し早く起きてしまう。
犬を連れ、クルマに乗り、三崎へと向かう。
橋を渡り、城ヶ島へ。
どうしても見たい景色があったのだ。
城ヶ島は、自然に囲まれている。
海と小高い岩山。
海岸線に連なる絶壁。
眼下に浜辺が広がる。
黄金色のすすきが茂り、もの寂しげな気配を漂わせている。
また秋がやってきた。
想い出の季節・・・
太平洋の遥か彼方を見つめる。
打ち砕ける波の飛沫が風に乗って頬を打つ。
冷たく感じるが、嫌な気はしない。
乾いた心を、うっすらと湿らせてくれるようで、むしろ気分がいい。
三浦半島近辺の海で、二番目に綺麗な場所だと思っている。
一番は、またいつか紹介したい。
まだ早い時間だからか、まだ、ここには私と犬以外、誰も来ていない。
潮風を大きく息を吸って、ゆっくり吐く。
思えば、ここ何年間・・・ たくさんの出来事があり過ぎた。
一生背負っていかなければならないこと。
宿命。
そういうことは、誰にだってあるだろう。
なにも自分だけが特別じゃない。
無さそうに振舞っている人であっても、何かしらはあるものだ。
そう思うと、他人を羨んだり、妬んだりすることに意味がないことに気づく。
徳川家康が、こう残した。
「人の一生は、重荷を背負って山道を登っていくもの」
学生の頃は、「そんな一生は嫌だね」と思ったものだ。
しかし、望んだわけではないが、それなりに困難な場面に出くわしてしまう。
1つ解決。
また、次の問題。
また1つ、やっとの思いでなんとか乗り切る。
また、致命的と思える問題が降りかかる・・・
「その人に解決出来ない問題は起こらない」
なるほど、そうかもしれない。
しかし、命を削る思いだった。
もうギリギリだった。
今、振りかえってみれば、確かになんとか乗り越えてきた。
おかげでたいへんな勉強になった。
こんな繰り返しが何回も続くと、ある意味、いくらかの覚悟というものが出来てくる。
「問題、これからもまだまだ来るね。」
「自分のキャパシティを越えるか越えないかというギリギリまで、また追い込まれるね。 きっと。」
「それでも、上を向いて生きていくしかないんだよ。」
いつしか、そう思えるようになってきた。
何かと「優しさ」ばかりを求められる時代の風潮。
確かに理想的に思える。
しかし、やってみて気づいたことがある。
「優しい」ばかりじゃダメだ。
「強さ」が、まず必要だ。
強さという裏づけを見失った優しさは、真の優しさではない。
遅ればせながら、今一度、そう考えさせられた。
見せかけの優しさを求めていては、
いずれ自身を傷つけることになるだろう。
優しさとは、瞬間的に優しいとは思えないものが結構ある。
後でじんわりと効いてくる優しさ。
そういう優しさは、それゆえに深い。
強くなるには、迷いながらも自らの足で歩き、つまづき、そして転び、
痛い思いをしながら、そうやって少しづつ身についていくもの。
意地を貫くばかりが強さではない。
そのためには、まず、自分を知ること。
目を背けたい真実の自分の姿。
隠しておきたい、忘れてしまいたい心の奥底。
逃げだしたくなる恐怖。
色々とあるだろう。
しかし、自分の弱さを認めなければ、いつまでたっても変わらない。
誰かのせいにしてばかりでは、なにも解決しないことに気付くだろうか。
人は誰かを傷つけ、また、誰かに傷つけられしながら心のしなやかさを学んでいく。
雲間から、陽射しが差し込む。
まるでスポットライトで照らされているようだ。
そこだけが眩しいほどに輝いている。
海と空の表情は、刻々と変わる。
だから何度も来てしまう。
あの日見た海はもう見られない。
ただ良い想い出だけが残るのみ。
海辺の秋風に吹かれて・・・。
「さあて、そろそろ行くか!」
私は犬に、そう呼びかけた。
y o s h i h i s a