イベント情報
板橋1次予選 特派員レポート
by 梅咲 直瑛&高橋 純也
はじめに~大会のご紹介 by 梅咲 直瑛
DCI認定Lv3ジャッジの梅咲です。
普段は、東京都・板橋で毎月1回『五竜杯』というスタンダードの大会を『五竜杯実行委員会』として開催している他、ウィザーズ主催で行われるプレミアイベントの東京地区における運営責任者を担当しています。
開催している大会の特色をひとつ挙げるとすると、最終成績が「4勝2敗1引分」以上のプレイヤーにはもれなく賞品としてパックを配布しているという大会スタイルです。
「優勝を狙って大会に参加する人」「勝ち越し以上を狙って参加する人」など、人それぞれによってプレイスタイルも、目標も違うと思うのですが、なるべく多くの人が最後まで賞品パックを目指して大会を楽しめるよう、このような設定になっています。
他の大会と比べると途中ドロップする人の率が低く、ライトなユーザーの方には特に好評を頂いています。
プレミアイベントは、「プロツアー予選」「グランプリ・トライアル」と名前だけ聞くと上級者向けのイベントというような印象を受けるかと思いますが、東京地区のプレミアイベントは『五竜杯』同様の賞品システムで、ライトなユーザーの方でも1日マジックを楽しめるイベントとなっています。
色々なフォーマットの大会を開催していますし、『五竜杯』では初心者講習会なども行っているので、大会に行ったことがないという方も、是非一度遊びに来てみて下さい。
幸いなことに、この「板橋1次予選」は参加者208名と、非常に熱気あふれる大会となりました。その参加者のひとりであるラッシュ(高橋 純也)に、日本選手権への思いと、参加レポート、結果の分析まで語ってもらうことにしましょう。
日本選手権に出たい! by 高橋 純也
皆さんは、『日本選手権2010』というトーナメントにどのような印象を持っていますか?
「日本で最高のプレイヤーを決める大会?」
グランプリやプロツアーに並ぶ大きな祭典である『日本選手権』では、厳しい予選を突破したプレイヤー達によるハイレベルなゲームが繰り広げられます。その勝者はきっと「最高」かつ「最強」のプレイヤーである事でしょう。
「『世界選手権』への関門?」
『日本選手権』の上位4名に残ったプレイヤーには、今秋の千葉は幕張メッセで開催予定である『世界選手権2010』に「日本代表」として参加する権利が与えられます。世界中のプレイヤーの頂点を決める『世界選手権』は多くのプレイヤーの憧れです。しかし参加するための関門は狭く、『日本選手権』で勝利する事もその条件の一つであるため、世界を目指すプレイヤーはこの険しき登竜門に挑むのです。
「憧れのプレイヤー達とのゲーム?」
普段はイベントカバレージのページでしか見ることの無い有名プレイヤーや強豪プレイヤー達がこぞって参加するイベントであるため、否が応でも彼らと対戦する機会が訪れます。自信のある方は腕試しも兼ねて世界レベルの実力を体験してみるのもいいでしょう。強いプレイヤーとのゲームはとても刺激的でエキサイティングになることは必至です。
「初めてのビッグイベント?」
僕がマジック・ザ・ギャザリングというゲームと付き合い始めてから、もうすぐ10年が経過しようとしています。その長い時間の中には多くの出来事があり、今でも鮮烈に思い出せるエピソードが幾つかあります。その中でも、自分とMTGの付き合い方に大きな影響を与えた『日本選手権2003』の予選大会は、今でも昨日のように感じるほど強烈です。僅か20名の通過枠を目指して700人を超えるプレイヤーが池袋のサンシャインビルに集まり、約10時間もの時間をかけて「真剣」にゲームをする。間違いなく僕の中でのMTG観が変わり、「真剣」に戦える場であるトーナメントの魅力に取りつかれる切っ掛けとなったイベントでした。
このように幾つかの例を挙げましたが、これはあくまでも一例であり、異なる印象を持っている方も多いかと思います。かく言う僕も、上で挙げた印象より「毎年参加する恒例のイベント」だというイメージが強く、全国のマジック仲間と顔を合わせる事ができる数少ないお気に入りのイベントでもあるのです。
ところが今年は、前年に負け込んだツケが回ってきたのか、招待枠(レーティングとプロ・ポイントによる招待枠が存在し、予選に出場しなくとも本戦に参加できる権利が与えられる)から外れてしまい『日本選手権』への参加権を持っていないのです。
そこで、『日本選手権』に参加するには幾つか行われる予選大会を勝ち抜く必要があるため、近場で開催される板橋1次予選に出場する事を決めました。
抜けなければ!!
『日本選手権』に出場するためには、参加した予選で、16人に一人の割合で増加する通過人数以上の順位に喰い込まなければなりません。人によって感覚は異なるかもしれませんが、僕にとってはとても厳しい予選に思えました。実際にその板橋1次予選に参加したプレイヤー数は200人を超え、スイスラウンド8回戦でわずか16人の通過枠を巡るトーナメントとなったのです。
そんな選抜トーナメントへのお供として僕が選んだのは、「徴兵バント」と呼ばれる青緑白のコントロールデッキでした。《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》や《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》から早いターンに多くのマナを捻出し、《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》やプレインズウォーカーを高速展開していくデッキです。
5 《森/Forest(10E)》 2 《平地/Plains(S00)》 2 《島/Island》 4 《天界の列柱/Celestial Colonnade》 1 《活発な野生林/Stirring Wildwood》 1 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove(M10)》 4 《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》 4 《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》 2 《セジーリのステップ/Sejiri Steppe》 -土地(25)- 4 《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》 4 《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》 4 《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》 4 《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》 3 《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》 3 《不屈の随員/Dauntless Escort(ARB)》 3 《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》 -クリーチャー(25)- | 2 《エルドラージの徴兵/Eldrazi Conscription(ROE)》 3 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》 3 《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》 2 《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura(ROE)》 -呪文(10)- | 4 《否認/Negate(MOR)》 3 《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle(ZEN)》 2 《静寂の守り手、リンヴァーラ/Linvala, Keeper of Silence(ROE)》 2 《天界の粛清/Celestial Purge(M10)》 2 《忘却の輪/Oblivion Ring(ALA)》 2 《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage(ARB)》 -サイドボード(15)- |
このデッキの魅力は何と言っても「《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》コンボ」にあります。
《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》の賛美時の誘発能力は「オーラをライブラリーから探して、賛美を受けているクリーチャーにつけて良い」というものです。つまり、《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》の力を受けて攻撃したクリーチャーは、その瞬間に《エルドラージの徴兵/Eldrazi Conscription(ROE)》が装着されるため、少なくとも10点以上ものダメージを僅か1ターンで叩きだす事ができるのです。
このコンボをマナ加速によって早いターンに実行できるため、どのデッキよりも早く、どのデッキよりも高い攻撃力を秘めています。また、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》や《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》といった強力なプレインズウォーカー達もこの戦略をバックアップしてくれるため、序盤戦が過ぎた中盤戦でも安定した実力を発揮できるのもポイントです。
それでは、このデッキの動きや弱点は以下の対戦レポートにて解説していこうかと思います。さあ、チャレンジ開始です!
参加レポート
ラウンド1 『vs. 青白黒コントロール』
このゲームを何年やっていても、トーナメントの1回戦目の緊張感には慣れません。オポーネント・マッチ・ウィン・パーセンテージ(※)を考えても序盤の数ラウンドは非常に重要なのですが、何よりも「その一日を集中してプレイできるか」が懸かっているように感じてしまいます。一戦目がダメだったから一日中ダメ、なんてことは決してあり得ないのですが、始めの一歩は幸先が良いに越した事はないでしょう。
(※編注:同勝ち点の際に順位を決める指標で、その大会での対戦相手の勝ち点が多いほど高くなる。序盤で負けると数値が低くなることが多く、不利になりやすい。)
ダイスロールで僕は後攻となり、手札に土地が1枚も無かったため2回のマリガンをすると、
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》
《天界の列柱/Celestial Colonnade》
《天界の列柱/Celestial Colonnade》
《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》
という5枚に巡り合えました。枚数が減って少し心許無いですが、十分に勝つためのプランが備わった悪くない初手でしょう。
対戦相手は《秘儀の聖域/Arcane Sanctum(ALA)》を置き、続くターンも《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》と《前兆の壁/Wall of Omens(ROE)》を展開してきたため、概ね「青白黒コントロール」だと思われます。こちらはと言うと、1~2ターン目のドローが土地であったため、4マナ域を唱えられるだけのマナは確保できたものの緑マナには巡り合えず、やや遅いゲーム展開を強いられます。
しかし、相手もコントロールだったという事もあって《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》をプレイして優位な場を構築できました。《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura(ROE)》を出されたものの、僕も偶然同じものを引いていたためプレインズウォーカー・ルールによって相殺でき、場の優位は一層僕に傾きました。
そんな余裕が不運を招いたのか、相手のプレイした次なる脅威は《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle(ZEN)》だったのです。
僕のデッキでは《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》でしか対抗する事が出来ない最悪のクリーチャーです。普通はスピードの速い「バント」に対しては有効ではないカードなのですが、一度長引いてしまえば「対象にならないパワー5の飛行クリーチャー」が弱いわけがありません。なんとか対抗策を用意しようと画策するものの、1ターンに1枚ずつプレインズウォーカーが壊されてしまっては戦線を保つ事ができません。たった2ターンで状況をひっくり返されてしまった僕には反撃するリソースは残っていませんでした。
0-1
2ゲーム目は先ほどとは違い、僕にとって非常に良い展開でした。1ターン目に《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》。2ターン目に《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage(ARB)》。そして、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》を続けて展開する事が出来たのです。
《忘却の輪/Oblivion Ring(ALA)》への対抗策である《クァーサルの群れ魔道士/Qasali Pridemage(ARB)》ですが、単体での攻撃力も十分に期待できます。それを示すように、あっという間に相手のライフは危険水域にまで下がり、仕方なくプレイされた《忘却の輪/Oblivion Ring(ALA)》ではクリーチャーとプレインズウォーカーの両方を対処する事はできず、何とか勝ち星を挙げる事ができました。
1-1
3ゲーム目は対戦相手の『作戦勝ち』だとしか言えませんでした。
上で述べたように、《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle(ZEN)》はコントロールや「ジャンド」に対しては非常に有効なカードではあるものの、「バント」には重くてサイズも足りないクリーチャーであることから余り有効なカードではありません。
しかし、僕はコントロール相手へのサイドボードとして《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》をサイドアウトしていたため、《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle(ZEN)》に対する実質的な解答を失っていたのです。それを知ってか知らずか、ゲームの展開もそれをお膳立てしたように動いていきました。
最序盤にマナクリーチャーを除去されたものの、更なるマナ加速からのプレインズウォーカーの連打で優位に立った僕は、手札に2枚の《否認/Negate(MOR)》を持っている事で完全にゲームに蓋をしたと考えていました。後はゆっくりとアドバンテージに差をつけ、右から順番に手札を消化するだけで勝てるのですから。
ところが、7ターン目に対戦相手が引いた《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle(ZEN)》がまたも場を崩壊させました。てっきりサイドアウトしたものだと考えていた事もあり、その衝撃は非常に大きく、1ゲーム目の内容を踏襲するかのようなプレイバックを見せつけられました。結局2枚の《否認/Negate(MOR)》は完全に無駄となってしまい、《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》の身を挺した時間稼ぎも実を結びませんでした。
1-2
ラウンド2 『vs. ジャンド』
いきなり負けてしまった上にその負け方も相まって、「バイバイ、僕の日本選手権」といった精神状況でしたが、ここから全てのマッチを勝てば通過する事は十分に可能です。とりあえず、負けた事は忘れて(負け方は忘れてはダメですが)次なるマッチに向かいました。
このデッキの特徴は幾つかあるのですが、その中でも最も重要であるのが『ジャンド以外には大体有利に戦える』というメタゲーム上の優位性です。いきなり1戦目で負けてしまってはいるものの、「青白系コントロール」と「ネクストレベル・バント」に対してはかなり有利にゲームを進める事ができます。
ところが、負けられない2ラウンド目の対戦相手がセットした土地は『「ジャンド」生まれ』である事を示す《野蛮な地/Savage Lands(ALA)》でした。これは厳しそうだと思いながらカードを引いてみると《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》が。
1ターン目:《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》
2ターン目:《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》→《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》を起動して3マナを捻出→《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》
3ターン目:《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》を起動して3マナ→《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》→賛美のついた《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》の攻撃で13点ダメージ(除去カードは《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》が《セジーリのステップ/Sejiri Steppe》を持ってくる事で回避できる)
夢と一人回しでしか見られないと思っていた光景ですが、みんなの大好きなマーフィーも言っているように、起こる可能性のある事は起こってしまうようです。ただのラッキーで苦手な「ジャンド」に対して1ゲームを先取できたのは肩の荷が下りるようでした。
1-0
2ゲーム目は、対戦相手が不運な事にタップイン土地を3枚引いてしまった為に3→4という綺麗な動きが叶わず、僕の《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》→《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle(ZEN)》という展開を許してしまった所で決着がつきました。
「徴兵バント」は、1ターンでもこちらに干渉できないと一瞬でゲームを終わらせてしまうだけの展開力を有しているため、今回のように相手が少しもたついた瞬間に決着してしまう事も少なくありません。こちらの幸運が多くを占めていましたが、それも含めてデッキの良さと考えても悪くないと思います。
2-0
ラウンド3 『vs. ネクストレベル・バント』
「ネクストレベル・バント」と呼ばれる中速の青緑白コントロールは、《復讐蔦/Vengevine(ROE)》を中心に構築された長期戦に強いデッキです。そのため、中盤戦までを焦点にして構築されている「青白コントロール」や「ジャンド」に対しては悪くないゲームを展開できるのですが、一つだけ猛烈に相性の悪いデッキが存在するのです。
それが今回僕が使用した「徴兵バント」なのです。理由はいくつかあるのですが、簡単に一言でまとめると『「ネクストレベル・バント」のほとんどのカードが「徴兵バント」に対して有効でないから』になります。おまけに「徴兵バント」のカードの多くは単純にカードパワーが高いため、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》や《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》といったサブのクリーチャーさえも致命的となる「ネクストレベル・バント」にとって、「徴兵バント」は天敵とも言っていい存在なのです。
今回の1ゲーム目もその通りのゲームとなり、お互いにマナ加速からプレインズウォーカーを展開するものの、相手のマナが全てタップされて無防備になった所を《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》が止めを刺しました。
1-0
2ゲーム目はこちらが1回マリガンしたものの、《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》といったクリーチャーが揃っていたため、《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》と《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》を高速で展開する事ができました。《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》は相手の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の-1能力で手札に返されてしまったものの、《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》がジェイスを討ち取り、再び着地した《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》がそのままゲームを終わらせました。
2-0
ラウンド4 『vs. 青ジャンド』
詳しいデッキ内容までは把握していないのですが、通常の「ジャンド」に4色目として青をタッチする事で、《セドラクシスの死霊/Sedraxis Specter(ALA)》等のパワーカードを使えるように調整されたデッキかと思われます。
通常の「ジャンド」に比べてどれ程のメリットとデメリットを抱えているのかは分かりかねますが、4色目を足した事で除去カードが減っていればこちらにとって有利に働く事でしょう。
ダイスロールの結果で後手となりましたが、《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》→《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》と動くことの出来る好ハンドがきました。喜んでキープすると、《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》は《稲妻/Lightning Bolt》で対処されてしまいました。
2ターン目に行動できなかった上、対戦相手の3ターン目に展開された《朽ちゆくヒル/Putrid Leech(ARB)》が厳しく思えましたが、返しにダメ元で繰り出した《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》が生き残ったままターンが帰ってきました。《セジーリのステップ/Sejiri Steppe》の関係上、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》は真っ先に倒さなければならないクリーチャーなので、今回除去されなかったという事は対戦相手の手札に除去は無さそうです。
そうとわかれば引かれる前に倒してしまおう、という事で《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》と《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》を無警戒で並べてみると、無事に対処されずにゲームを終わらせる事ができました。
1-0
しかし、真に「ジャンド」との戦いが厳しくなるのは、サイド後に軽い除去が追加されてからです。マナ供給の基盤がしっかりしているように見えながらも、実はそこを突かれると機能不全に陥ることの多い「徴兵バント」にとって、大量の軽い除去で序盤のマナ供給クリーチャーを潰されてしまうのが多くの場合の負けパターンとなります。
再び《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》→《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》の展開が期待できる手札を2ゲーム目でももらえました。しかし、対戦相手の行動も再びの《稲妻/Lightning Bolt》。2ターン目に《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》を出すことは叶いません。
それでも3ターン目の《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》も再び除去されなかった事でこちらの勝勢が見えたのですが、《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》を追加した4ターン目に対戦相手が引いたカードが一気に盤面を揺るがします。
《消耗の蒸気/Consuming Vapors(ROE)》です。マナクリーチャーを処理された後のこのカードは凄まじい威力を発揮し、こちらの《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》による《セジーリのステップ/Sejiri Steppe》の加護をすり抜けて大型クリーチャーを奪っていくのです。1発目は場に残っていた《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》を生贄にする事で事無きを得ましたが、次のターンの反復は厳しくなりそうです。
しかし、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》が生きているため、ミシュラランド(《活発な野生林/Stirring Wildwood》と《天界の列柱/Celestial Colonnade》)をサーチし、クリーチャー化する事で回避できます。
返しのターンに何も引かなかったのでそのプランを取ったところ、対戦相手の残り1枚の手札であった《グリクシスの魔除け/Grixis Charm(ALA)》(《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》は大きくなっていたため打つ場所が無かったらしい)で《活発な野生林/Stirring Wildwood》が倒されてしまい、《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M10)》を失ってしまいました。しかし、対戦相手の手札はこれからドローするたった1枚のカードのみで、僕の場には《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》がいるのでまだまだ有利でしょう。
ところが、そんな心の緩みをとがめるように、ライブラリーの上から捲れたカードは2枚目の《消耗の蒸気/Consuming Vapors(ROE)》でした。これによって主力クリーチャーを失い、ライフも安全圏内に戻されてしまったため、次のターンに「ちょっと来るタイミングが遅い」《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》を引いた所で天秤は大きく傾き、追い打ちをかけるような《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》と《怒り狂う山峡/Raging Ravine》を止める事ができませんでした。
1-1
3ゲーム目は非常にあっさりと決着がつきました。《極楽鳥/Birds of Paradise(M10)》に《稲妻/Lightning Bolt》。《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》には《狡猾な火花魔道士/Cunning Sparkmage》の能力。タフネス1の封じられた状況で起死回生の一手で展開した《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》には《大渦の脈動/Maelstrom Pulse(ARB)》。全てのマナ基盤を対処された後、何故かウヨウヨと集まってくる《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》と《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》。
対戦相手の動きとこちらの手札が全て噛み合ってしまった3ゲーム目でした。やはりサイドボード後に追加される除去と、1ターン目に打たれる《稲妻/Lightning Bolt》はゲームの展開を大きく変えてしまいます。このゲーム展開が想定できる以上、「ジャンド」とのマッチアップは決して有利だとは言えません。「ジャンド」の持ち味を最大限に生かされたマッチでした。
1-2
敗北から学び、勝利からも学ぶ~注目デッキ分析
以上の通り、2勝2敗という成績から上位16名に入賞する事が不可能となったため、4回戦途中棄権という形で僕の板橋1次予選は終わりました。
しかし、あくまでも「1回の予選」が失敗で終わっただけです。今年からの『日本選手権予選』は同じプレイヤーが複数の予選に参加しても良くなったため、再び『日本選手権』へとチャレンジ出来るのです。そうと決まれば今回の反省を生かし、次なる予選に備えなくてはなりません。
また、自分の反省だけでなく、勝者である16名のプレイヤーの成功した理由と戦略を、そのデッキからより多く学びとる事が必要でしょう。最後に、16名の通過者の中からピックアップした注目のデッキリストにスポットを当てて、勝利へのヒントを探りだし、今回は筆をおきたいと思います。
7 《山/Mountain》 5 《平地/Plains》 4 《乾燥台地/Arid Mesa》 4 《湿地の干潟/Marsh Flats》 4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 -土地(24)- 4 《ゴブリンの先達/Goblin Guide》 4 《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》 2 《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》 4 《板金鎧の土百足/Plated Geopede》 4 《地獄の雷/Hell's Thunder》 4 《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》 -クリーチャー(22)- | 4 《稲妻/Lightning Bolt》 4 《流刑への道/Path to Exile》 2 《焼尽の猛火/Searing Blaze》 1 《壊滅的な召喚/Devastating Summons》 3 《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》 -呪文(14)- | 4 《コーの火歩き/Kor Firewalker》 4 《狡猾な火花魔道士/Cunning Sparkmage》 4 《忘却の輪/Oblivion Ring》 3 《バジリスクの首輪/Basilisk Collar》 -サイドボード(15)- |
少し季節を遡った頃に活躍していた「上陸ボロス」が再び帰ってきました。
《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》と《板金鎧の土百足/Plated Geopede(ZEN)》による強力なクロックを火力と除去でバックアップするデッキです。以前の形に投入されていた《コーの空漁師/Kor Skyfisher(ZEN)》は影を潜め、代わりに《地獄の雷/Hell's Thunder(ALA)》が採用されていたりと、より一直線な構成へと変化しています。
サイドボードの《狡猾な火花魔道士/Cunning Sparkmage》+《バジリスクの首輪/Basilisk Collar》のコンボは強烈で、「バント」を始めとして環境に多く存在する「緑白系クリーチャーデッキ」への明確な解答となっています。直接火力が少ないのが少し心許無いのですが、4枚に増量されている《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos(ALA)》によって常に盤面に供給されるクリーチャーの群れで押しきれてしまう瞬間も少なくないでしょう。
4 《平地/Plains》 1 《山/Mountain》 1 《島/Island》 1 《森/Forest》 4 《古代の聖塔/Ancient Ziggurat》 3 《海辺の城塞/Seaside Citadel》 3 《ジャングルの祭殿/Jungle Shrine》 2 《氷河の城砦/Glacial Fortress》 3 《乾燥台地/Arid Mesa》 2 《霧深い雨林/Misty Rainforest》 -土地(24)- 4 《ハーダの自由刃/Hada Freeblade》 4 《カザンドゥの刃の達人/Kazandu Blademaster》 4 《アクームの戦歌い/Akoum Battlesinger》 4 《オラン=リーフの生き残り/Oran-Rief Survivalist》 4 《ヘイラバズのドルイド/Harabaz Druid》 4 《カビーラの福音者/Kabira Evangel》 3 《城壁の聖騎士/Talus Paladin》 2 《海門の伝承師/Sea Gate Loremaster》 -クリーチャー(29)- | 4 《否認/Negate》 3 《忘却の輪/Oblivion Ring》 -呪文(7)- | 3 《オンドゥの僧侶/Ondu Cleric》 1 《城壁の聖騎士/Talus Paladin》 4 《二股の稲妻/Forked Bolt》 4 《無傷の発現/Emerge Unscathed》 3 《統一された意思/Unified Will》 -サイドボード(15)- |
去年の冬、多くのプレイヤーを沸かせたデッキの中に「ナヤ・同盟者」と呼ばれる赤緑白の3色で構成された同盟者デッキがありました。しかし、今回の予選を突破したこのデッキは『青』というもう一つの色が追加されているのです。その追加された内容は《海門の伝承師/Sea Gate Loremaster(ZEN)》《否認/Negate(MOR)》といったサポートカードが多く、以前の形に投入されていた《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》や《暴力的な突発/Violent Outburst(ARB)》といった攻撃的なカードとは役割を変えたものになっています。
サポートカードにスロットを譲ったことにより、同盟者の数を維持できているのかが少し疑問ですが、攻勢の盤面を維持できる《否認/Negate(MOR)》は何よりも頼もしいカードでもあります。サイドボードも特定のマッチアップで大活躍しそうなカードが選択されており、非常に良く練られている印象を受けました。
《古代の聖塔/Ancient Ziggurat(CON)》を採用しているが為にプレインズウォーカーを採用できず、崩れると脆いデッキだという事で徐々に数を減らした「同盟者」でしたが、この構成ならば復権もあり得るかもしれません。
3 《島/Island》 3 《山/Mountain》 1 《沼/Swamp》 4 《崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis》 4 《忍び寄るタール坑/Creeping Tar Pit》 1 《溶岩爪の辺境/Lavaclaw Reaches》 3 《水没した地下墓地/Drowned Catacomb》 3 《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》 4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》 1 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 -土地(27)- 4 《巨怪なオサムシ/Monstrous Carabid》 -クリーチャー(4)- | 4 《稲妻/Lightning Bolt》 4 《終止/Terminate》 2 《紅蓮地獄/Pyroclasm》 3 《乱動への突入/Into the Roil》 2 《本質の散乱/Essence Scatter》 4 《二重否定/Double Negative》 4 《予言/Divination》 4 《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》 2 《地震/Earthquake》 -呪文(29)- | 3 《吸血鬼の呪詛術士/Vampire Hexmage》 4 《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》 2 《死の印/Deathmark》 2 《破滅の刃/Doom Blade》 4 《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》 -サイドボード(15)- |
少し変わった形の「クルーエルコントロール」です。《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》をフィニッシュ手段として据えているため7マナまでいかにして到達するかが問われ、多くの妨害手段とドロー呪文がデッキの根幹を担います。また、《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》で回収できるクリーチャーを投入したいのですが、基本的には『妨害』か『ドロー』以外のカード選択をしたくないため、その種類の選択については常に議論の的となっています。最近では《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch(ZEN)》や《セドラクシスの死霊/Sedraxis Specter(ALA)》がメジャーでしたが、今回のこのデッキでは新たなる選択肢が提示されています。
《巨怪なオサムシ/Monstrous Carabid(ARB)》です。「妨害」か「ドロー」を担うクリーチャーで無ければならないという条件の中、最も軽いマナでその役割を担っているクリーチャーであるといえるでしょう。サイクリング能力でデッキを回転させ、《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》を打った後であれば如何なるクリーチャーであろうとも勝利に直結するため、クリーチャー自身のスペックは問われない事が多いのです。そういった意味では余り目にする事の無かった《巨怪なオサムシ/Monstrous Carabid(ARB)》は非常に興味深いアプローチだと思われます。
また、このデッキには《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が投入されていない事も特徴的です。確かに7ターン目にまで突入してしまえば安心してゲームを進める事ができるため、厳密にいえば4~6ターン目でしか有効にプレイ出来ないのですが、このパワーカードを無視してまでも軽い妨害カードにスロットを割いてデッキとしてのバランスを重視する構築には、昨今のスタンダード環境からは見えにくい『こだわり』を感じる事ができました。
こういった練習や実戦経験から得たような『自分だけの調整』というものは非常に重要です。「変わった事をするべきだ」という事ではなく、常識だとされている構築手法の中から疑問点を探し出し、自分なりの解答を見つける事が必要なのです。
あなたのデッキのそのカードは、本当に「あたりまえ」なのでしょうか。デッキの進歩や理解は、そういった小さな疑問点から始まると思います。皆さんも是非とも「自分だけの解答」を見つけてみてください。たとえそれが正解で無くとも、次の調整へのフィードバックが得られるはずです。
次の予選では、皆さんなりの「解答」と出会える事を楽しみにしています。では、何処かのトーナメント会場でお会いしましょう。
大会を終わっての感想 by 梅咲 直瑛
参加者208名によるスイスドロー8回戦と、長丁場の戦いになった本大会。個人的な感想としては、「グランプリ・仙台」の結果を受けて優勝デッキの「Next Lebel Bant」を使用するプレイヤーが非常に多かったのに、結果として1人の通過者も出なかったことが非常に印象的でした。
ジャッジとして印象に残ったのは、注意を促すマイクアナウンスをしても、相手の土地にエンチャントした《広がりゆく海/Spreading Seas》を試合後に返してもらうのを忘れるという事件が多発していたことでしょう。
試合前と試合後には、是非ご自分のデッキに問題が無いか御確認下さい! (サイドボードの戻し忘れなども防げます)
参加者の方々は長丁場の戦い、お疲れ様でした。
通過された方は、是非本戦でも頑張って下さい!